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ことを想定しているが これは既に違反対象物の公表制度を実施している消防本部の運用実態等を参考に 当該制度の実施に伴う事務負担やその効果等について検討を行った結果 特に都市部における建物の利用者数等による火災危険性が高いことを考慮したものである なお その他の消防本部においても政令指定都市の消防本部の

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隣地境界線126 第 3 章消防用設備等の設置単位 さいたま市消防用設備等に関する審査基準 消防用設備等の設置単位消防用設備等の設置単位は 建築物 ( 屋根及び柱又は壁を有するものをいう 以下同じ ) である防火対象物については 特段の規定 ( 政令第 8 条 第 9 条 第 9 条の


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目次 4. 組織 4.1 組織及びその状況の理解 利害関係者のニーズ 適用範囲 環境活動の仕組み 3 5. リーダーシップ 5.1 経営者の責務 環境方針 役割 責任及び権限 5 6. 計画 6.1 リスクへの取り組み 環境目標

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国務院は国家質検総局の主要職責 内部機構設置及び人員編成の十三項目の主要職責と 18 の内部機構を批准 国務院弁公庁はこのほど 国務院が認可した 国家質量監督検験検疫総局主要職責 内部機構設置及び人員編成の規定 ( 以下 三定 という ) の通知を公表 配布した 三定 規定は 国務院機関設置に関する

すぐ連絡! すぐ実施! 杉並消防署からのお知らせ 自衛消防訓練を実施しましょう 自衛消防訓練は 火災が発生した場合に消防隊が現場に到着するまで 自衛消防 活動により 迅速 的確に人命の保護と災害の拡大防止の措置をとれるようにする ことを目的としています 訓練の種別 自主的に訓練することが必要です!

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( 考慮すべき視点 ) 内管について 都市ガスでは需要家の所有資産であるがガス事業者に技術基準適合維持義務を課しており 所有資産と保安責任区分とは一致していない LPガスでは 一般にガスメータの出口より先の消費設備までが需要家の資産であり 資産区分と保安責任区分が一致している 欧米ではガスメータを境

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別紙 1 事故データベースへ登録する事故報告書の提出対象事故について 事故の定義は以下のとおりとする 事故の分類 事故の定義 労働災害 ( 工事作業が起因して 工事関係者が死傷した事故 ) もらい事故 ( 第三者の行為が起因して 工事関係者が死傷した事故 ) 死傷公衆災害 ( 工事作業が起因して 当

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2 経口移行加算の充実 経口移行加算については 経管栄養により食事を摂取している入所者の摂食 嚥 下機能を踏まえた経口移行支援を充実させる 経口移行加算 (1 日につき ) 28 単位 (1 日につき ) 28 単位 算定要件等 ( 変更点のみ ) 経口移行計画に従い 医師の指示を受けた管理栄養士又

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事務連絡 平成 27 年 3 月 31 日 各都道府県消防防災主管課 東京消防庁 各指定都市消防本部 御中 消防庁予防課 認知症高齢者グループホーム等の火災対策の充実のための介護保険部 局 消防部局及び建築部局による情報共有 連携体制の構築に関するガイドラインに係る執務資料の送付 認知症高齢者グルー

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第 3 章 1. の既往調査研究 1で紹介した 小規模多機能サービスに関する調査報告書 にも指摘されていたように 小規模多機能サービス事業所の整備にあたっては 建築基準法 消防法上の取り扱いの点で検討の余地を残している これに関して 2006 年 1 月に長崎県大村市の認知症高齢者グループホームで発

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5 仙台市債権管理条例 ( 中間案 ) の内容 (1) 目的 市の債権管理に関する事務処理について必要な事項を定めることにより その管理の適正化を図ることを目的とします 債権が発生してから消滅するまでの一連の事務処理について整理し 債権管理に必要 な事項を定めることにより その適正化を図ることを目的

平成  年  月  日

- 2 - 引き起こす可能性がある このような状況の中で 我が国における国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与するためには 管理組合によるマンションの適正な管理が行われることが重要である この指針は このような認識の下に 管理組合によるマンションの管理の適正化を推進するため 必要な事項を定め

目 次 第 1 はじめに 2 1 ガイドライン策定の目的 2 2 ガイドラインの対象となる防犯カメラ 2 3 防犯カメラで撮影された個人の画像の性格 2 第 2 防犯カメラの設置及び運用に当たって配慮すべき事項 3 1 設置目的の設定と目的外利用の禁止 3 2 設置場所 撮影範囲 照明設備 3 3

消防災第 71 号 平成 22 年 2 月 24 日 各都道府県消防防災主管部長殿 総務省消防庁国民保護 防災部防災課長 ( 公印省略 ) 公務員の消防団への入団促進について ( 通知 ) 消防団員は 普段はそれぞれに他の職業をもつ地域住民により構成され 非常災害が発生した際に 自らの地域は自らで守

今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

ください 5 画像の保存 取扱い防犯カメラの画像が外部に漏れることのないよう 一定のルールに基づき慎重な管理を行ってください (1) 取扱担当者の指定防犯カメラの設置者は 必要と認める場合は 防犯カメラ モニター 録画装置等の操作を行う取扱担当者を指定してください この場合 管理責任者及び取扱担当者

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<はじめに> 退職後, 民間企業等に再就職した者による現職職員への働きかけ規制などにより, 職員の退職管理を適正に行い, 職務の公正な執行及び公務員に対する住民の信頼を確保するため, 地方公務員法が改正され, 平成 28 年 4 月 1 日に施行されました 本市では, 改正法の施行に伴い, 旭川市職

川越地区消防局 消防署組織図 消防局長 消防局 ( 代 ) 総務課 総務担当 消防団担当 財務担当職員担当 管理担当 予防課 予防担当 査察指導担当 保安担当 警防課 警防担当 装備担当 救急課 0

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ISO13485:2005 と本邦における QMS との違いについて ( いわゆる追加的要求事項と呼ばれる事項について よく質問があります 品質マニュアル ( 品質管 理監督基準書 ) 作成の際に参考になると幸いです 条項ごとに解説を記載しましたので 参考にしてください 追加的要求事項 1: 製造所

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できない場合は 代表消防機関代行の倉敷市消防局又は津山圏域消防組合消防本部の職員をもって充てるものとする 4 岡山県大隊に 消火 救助 救急等の任務単位毎に中隊を設けることとし 各中隊を 消火中隊等 と呼称するものとする なお 中隊長は 岡山県大隊長が指定するものとする 5 各中隊に 各車両又は付加

資料 7-1 特殊車両の通行に関する指導取締要領の一部改正について 国土交通省関東地方整備局道路部交通対策課 1 (1) 特殊車両通行許可制度 2

Transcription:

No.07-001 No.08-035 2009.02.25 災害リスク情報 < 第 28 号 > 中国における消防体制と改正消防法の概要 I. はじめに 二けた成長率で経済発展を続けてきた中国は 発展に伴う急激な社会の変化に法制度やその実行機関 社会インフラやその運営組織 ルールなどの策定 拡充が追いつかず 格差による不満や歪の増幅による社会の不安定化をもたらす要因となっています 社会の安寧 秩序の砦であるべき公安や消防の組織も例外ではなく 克服しなければならない多くの課題を抱えています そんな懸念の中 2 月 9 日夜 北京市中心部長陽区で建設中の中国中央テレビ局 (CCTV) の高層ビル (30 階建 高さ 159m) で火災が発生し 全棟が火に包まれて焼け落ちる報道映像をご覧になった方も多いと思います 火災の原因は CCTV 自身が企画し 打ち上げた花火 ( 同地域では打ち上げが禁止されている A 類の大型花火を無許可で打ち上げたもの ) の火が屋上に落下し 可燃性の高い建設資材に着火したことが原因といわれていますが 一方 出動した北京市消防局の消防隊も消防用水の水量 水圧不足や高層ビル火災に対応できる高所放水塔車の不足など消防力の不足が原因で効果的な消火活動が行えなかったと報道されています 本年 5 月 1 日から施行される 改正消防法 は急変する社会に適合し得なくなった現行消防法の条項を見直すものですが 一方で中国の消防体制が抱える現在の問題点を改革するものと見ることができます 中国の現行消防法体系と消防体制を概観し 今回の消防法改正のポイントから現在の中国消防の問題点を抽出します II. 中国の消防法体系と消防体制 1. 中国の消防法体系現行の消防法体系は下表 1 のとおり 消防行政管理法規 と 消防技術規範 の 2 本柱で構成されています 表 1 名 称 消防法律 消防行政法規 ( 日本の 政令 に該当するもので 条例 実施条例 等の名称が付される ) 消防行政規章 ( 国務院所属の部 委員会が法律規定の範囲内で職権により制定 公布する行政の執行規定 監督規定など細則を定めたもの ) 地方性消防法規 地方性消防規章 消防行政管理法規 制定主体 : 全国人民代表大会例 : 消防法 安全生産法 行政処罰法 制定主体 : 国務院例 : 森林防火条例 化学危険品安全管理条例 制定主体 : 国務院主管部 委員会例 : 消防監督検査規定 火災事故調査規定 易燃易爆品 化学品消防安全監督管理規定建築工事消防監督審査管理規定など約 20 等 制定主体 : 省 市 自治区人民代表大会例 : 省消防条例 市消防安全管理弁法 など約 60 制定主体 : 省 市 自治区人民政府例 : 市消防処理管理処罰弁法 ** 市消防管理規定 消防技術規範 国家標準 GB ( 上級の法律 法規等を敷衍 具体化するもので全国的に統一制定された技術要求で 中国標準体系の主体 建築消防の国家標準は公安部消防局が作成し 建設部が批准したものを国家標準化管理局が批准し国家標準化したもの 強制性国家標準的の略称は GB 推薦性国家標準の略称は GB/T と表示される ) 例 : 建筑設計防火規範 GB50016-2006, 自動噴水滅火系統晒水噴頭的技術要求和試験方法 GB5135-93 など約 200 1

中華人民共和国消防法 (1998 年 9 月 1 日施行 ) は中国消防行政の基本法であり 現行消防法は 総則 火災予防 消防組織 消火救援 法律責任 付則 の 6 章 54 条から構成されています 消防の責任主体 消防の主管組織 中央政府と地方人民政府の責任 消防組織 など日本では消防組織法に規定されている諸事項や 新 増築建築物への設計審査 防火対象物への立入検査 査察など消防の業務 権限の規定や法人 個人の消防活動上の義務などが広範に規定されている反面 日本の消防法に見られる 危険物 や 消防設備 などの技術的な規定は全て建築設計防火規範以下の 消防技術規範に依る として本法では個別規定を設けておらず 行政的な管理法規と技術規定が区分されたすっきりとした法体系となっています 消防法の下位には国務院あるいは中央政府の各部門や各級地方人民政府により制定された 条例 規章( 多くは 弁法 と命名されている ) などの名称の行政法規があり これらによって消防行政が具体的に実施されています 一方 建築物の耐火性能や危険物管理 各種消防設備など消防上の技術的な問題は 国家標準 行業 (= 業種 ) 標準 という名称で政府各機関が制定した 消防技術規範 に沿って全てを決するよう消防法で定められています ( 消防法第 10 条 11 条 19 条 20 条など ) 建築物の構造 配置 消火設備 耐火性能等は強制力のある国家標準である 建設設計防火規範 GB50016-2006(2006 年施行 ) に従うこととされています 本防火規範では全ての建築物は種類 用途 大きさに応じて構造 耐火性能 離隔距離 消防設備の能力などの基準が定められており 日本の建築基準法 消防法及びその施行令などに規定されている消防関連の基準が概ねこの標準の中に規定されています 特に住宅や商業施設以外の工場 倉庫などの建築物に関する規定は日本の消防法 建築基準法などと比較しても極めて詳細に定められている点には留意が必要です ( 参照図 1 建築設計防火規範目次 ) 以下中華人民共和国消防法は 消防法 建築設計防火規範は 防火規範 と称します 図 1 建築設計防火規範目次 第 1 章 総則 第 2 章 用語 第 3 章 工場 ( 倉庫 ) 3.1 火災危険性の分類 3.2 工場 ( 倉庫 ) の耐火等級と構造の耐火時間 3.3 工場 ( 倉庫 ) の耐火等級 階数 面積と平面配置 3.4 工場の離隔距離 3.5 倉庫の離隔距離 3.6 工場 ( 倉庫 ) の防爆 3.7 工場の避難体制 3.8 倉庫の避難体制 第 4 章 甲, 乙, 丙類液体 気体貯蔵タンク ( タンクエリア ) と可燃物集積場 4.1 一般規定 4.2 甲, 乙, 丙類液体タンク ( エリア ) の離隔距離 4.3 可燃 助燃気体タンク ( エリア ) の離隔距離 4.4 液化石油ガス貯蔵タンク ( エリア ) の離隔距離 4.5 可燃材料集積場の離隔距離 第 5 章 民用建築物 第 6 章 消防車道 第 7 章 建築構造 7.1 防火壁 7.2 建築構造部材および配管設備 7.3 屋根 屋根裏と建物の隙間 7.4 階段室 階段および扉 7.5 防火戸と防火シャッター 7.6 渡り廊下 架空のコンベアラインと配管渠 第 8 章消防給水と消火設備 8.1 一般規定 8.2 屋外消防用水量 消防給水管及び消火栓 8.3 屋内消火栓等の設置場所 8.4 屋内消防用水量及び消防給水管 消火栓と防火水槽 8.5 自動消火システムの設置場所 8.6 防火用水池と消防ポンプ室 第 9 章 防煙と排煙 9.1 一般規定 9.2 自然排煙 9.3 機械防煙 9.4 機械排煙 第 10 章 暖房 通風と空調 10.1 一般規定 10.2 暖房 10.3 通風と空調 第 11 章 電気 11.1 消防電源及び配電 11.2 電力配線及び電器装置 11.3 消防用非常照明及び消防用非常誘導標識 11.4 自動火災報知システム及び消防制御室 2

2. 中国の消防体制中国の消防体制は公安消防隊を中核に専職消防隊 義務消防隊など多様な消防組織が公安消防隊の指揮監督を受けて消防活動を行っています (1) 公安部消防部隊 ( 正式呼称 : 中国人民武装警察消防部隊消防隊員 12.5 万人 ) 公安部消防部隊は人民解放軍に由来を持つ武装警察の一専門部隊です 人民解放軍や武装警察という属性の由来から 公安消防隊は公安部という公務員の組織内にありながら 現在でも準軍事組織としての性格を保持しており 隊員の身分は公務員ではなく軍人であり 兵役 (2 年間 ) として消防任務に就いているという特質を持っています 公安部消防部隊の組織は図 2のとおりです 図 2 公安部消防部隊組織図 < 公安部消防部隊組織図 > 総隊 : 省 自治区 直轄市 ( 北京 天津 上海 重慶 ) に設置 支隊 : 人口 100 万人以上の都市 その他人口の多い地区に設置 ( 管下の消防大隊の指導監督および大型防火対象物の消防設計審査を担当 ) 大隊 : 一般の都市 総隊の傘下に設置 ( 中国国内に約 270 大隊 ) ( 管下消防中隊の指導監督 消火活動指揮 一般の消防設計審査 査察業務を担当 ) 中隊 : 支隊 大隊の傘下および工業区 鉱山区等に設置 ( 約 1750 中隊 ) ( 日本の消防署に相当 消火活動や救急活動などに出動する 設計審査や査察などの行政的な業務は原則行わない ) 中華人民共和国公安部 公安部消防局 天津消防研究所 省 自治区公安消防局 ( 総隊 ) 直轄市公安消防局 ( 総隊 ) 国家固定消火系統及耐火部材質量検験測試中心 ( 天津 ) 公安部消防局火災原因技術鑑定中心 上海消防研究所 市 ( 地 州 盟 ) 公安消防局 ( 支隊 ) 区 県公安 ( 分 ) 局消防処 ( 科 ) 消防支隊 国家消防装備質量検験測試中心 ( 上海 ) 瀋陽消防研究所 国家消防電子産品質量検験測試中心 ( 瀋陽 ) 区 県公安 ( 分 ) 局 消防中隊 消防中隊 公安部消防局電気火災原因技術鑑定中心 消防処 ( 科 ) 大隊 四川消防研究所 国家防火建築材料質量検験測試中心 ( 四川 ) 天津 昆明 南京 西安 ウルムチ消防指揮学校 天津警官訓練基地 消防産品合格評定中心 中国消防協会 (2) 専職消防隊兵役制である公安消防隊は定員増強などの需要に機動的な対応が難しい為 火災現場での消防力増強を主目的に公募制で隊員を募集 採用し組織する専職消防隊が編成されています 専職消防隊には以下のとおり公設の消防隊と民間の消防隊の 2 種類の組織があり 設立に当たっては公安消防隊の験収が義務付けられ 消防活動や訓練においても公安消防隊の指揮 指導を受けることとなっています 1 県 市 区などの地方人民政府が消防法第 26 条 第 27 条の規定により人員を公募 採用し 合同 (= 契約 ) 制の隊員で組織した公設の専職消防隊 ( 消防隊員 1 万人 ) 2 引火性危険物などの生産工場 貯蔵施設など火災危険の大きな大型企業および空港 港湾 発電所等の公共施設などが消防法第 28 条の規定により自社施設の防災を主任務として従業員で組織した民間の専職消防隊 ( 隊員数 7.6 万人 ) 3

(3) 義務消防隊上記 (1)(2) のプロ消防隊を支援し居住地域や自社工場内での初期消火活動などを担う一般民間人の消防隊です 以下 2 種類の組織があります ( 隊員数約 1,000 万人 ) 1 郷 鎮 など下層の行政単位が住民を組織して編成する義務消防隊( 日本の消防団に近い組織 ) 2 企業 機関などの単位が従業員 職員で組織化する兼職の義務消防隊 ( 一般企業の自衛消防隊がこれにあたります ) 上記 (1)(2) の公設の消防署は中国全土に約 3,000 ヶ所 (1 級消防署 2,500 2 級消防署 240 特勤消防署 260 ) 設置されているといわれています 急激な都市化や産業の発展 広大な国土と人口を考えた場合 消防力の不足が目立ち 組織や要員の拡充 強化が極めて大きな課題となっています 消防署の設置基準を定めた 城市消防站建設標準 の分類で 1 級 2 級 特勤の各消防署の定義は以下のとおり 1 級消防署 : 都市部一般に設置される標準装備の消防署 2 級消防署 : 1 級消防署の管轄区域が広大なため管轄区域を補完するため設置するミニサイズの消防署特勤消防署 : 省 ( 自治区 ) 人民政府の所在都市や人口 50 万人以上の都市 経済発展都市などに設置され特殊火災に対応できる装備を持つ消防署 ( 参考 ) 日本消防の現状 H18.4.1 現在 < 消防体制 > 消防組織法で規定している 消防の責任は自治体が負い 市町村長が消防機関を設置 管理する自治消防制度 国や都道府県は消防防災政策の企画 立案や各種法令 基準の策定 国 市町村相互の調整などを行い 直接消防責任を負うことはなく 市町村消防への指導 助言を行うのみでこれを管理することもない < 消防機関 > 消防機関には常備消防である 消防本部 ( 消防本部の業務実施機関が消防署 ) と非常備消防である 消防団 がある 全国で 811 の消防本部 1,706 の消防署が設置され 市町村消防の常備化率は市町村数で 97.7% 人口比率では 99.9% となっており 常備消防がほぼ完成している 消防団は民間人により構成される非常備の消防機関 全国で 2,584 組織化され 団員数は約 90 万人 < 消防職員 > 消防吏員は自治体職員であり地方公務員 ( 一般行政職 ) で現在数約 16 万人 消防団員は普段は別の仕事をしてい る民間人で有事の際のみ非常勤の公務員として消防業務に従事する ( 参考資料 : 総務省消防庁 HP) 3. 消防の担当業務消防の担当業務としては (1) 火災予防活動 (2) 消火活動 (3) 救援活動の3つの任務が定められています (1) 火災予防活動 建築物の消防上の要求基準は 国家標準 行業 (= 業種 ) 標準 などの 消防技術規範 で決することになっています 公安消防隊はこれら規定の遵守状況を設計審査 竣工検査 消防査察などの審査 検査業務により確認し 火災予防の実現を図ることとしており これらの行政的な任務は消防支隊 消防大隊が担当しています 又 消防設備や用品の粗悪品 未検定品が多く出回っている実情にありますが これらの性能検査 建築材料の耐火性能試験などは瀋陽 天津 上海 四川の各消防試験センターが品目ごとに分担して認証を行っており 消防法でもこの認証を得たもの以外の製造 販売 使用は禁止しています ( 第 19 条 ) 4

(2) 消火活動言うまでもなく消防隊の主要業務であり 公安消防部隊では消防中隊が担当し 専職消防隊 義務消防隊を指導しつつ消火活動を行っています 火災通報の電話番号は 119 で日本と同じです 消防署の設置基準を定めた 城市消防站建設標準 では 都市計画における消防署の配置条件は 1 出動指令後 5 分以内に消防隊が管轄区域の外縁に到達できることが原則 2 管轄区域の面積は7 平方キロメートル 郊外の消防署は 15 平方キロメートル以内 ( 城市消防站建設標準 10 条 11 条 ) とされています 公安消防中隊や専職消防隊はこの基準に沿って新設 増強が進められることとなっていますが 前述のとおり消防力の現状はこの基準とはまだ大きな乖離があるようです (3) 救援活動公安消防隊は火災現場での救援活動を主管すると共に その他の災害または事故 ( 自然災害や交通事故など ) の救援活動にも参加することが定められています ( 消防法第 32 条 第 34 条 ) 但し 火災以外の救援活動では消防隊は当該地人民政府の指揮下に入り救援活動を支援する立場となります 2008 年の公安消防隊の出動回数は全国で 51.2 万回 内 火災以外の救援活動が 37.7 万回と7 割以上 (73%) を占めています 四川大地震の現地報道でも解放軍に混じって建物倒壊現場で救援活動を行う消防隊員の映像が再々報道されましたが 消防隊の担当業務の中でも救援出動の重要性は年々極めて高くなっています 尚 日本と異なり救急業務 ( 傷病者の病院搬送 ) は消防の担当ではなく 衛生局管下の医療救急センターが対応します ( 電話番号は 120) 従って救急車は消防隊には配備されておらず 病院に配置されたものが救急センターの指示をうけて出動しています III. 改正消防法のポイント 第 11 期全人代常務委員会第 5 回会議は消防法の改正草案を批准 決定し 2009 年 5 月 1 日から施行するとの第 6 号主席令を公布しました 今回の消防法改正は現在の中国消防の課題を反映したものであり 解決の方向性を示したものでもあります 中国の消防の抱える主要課題は 1. 発展する社会の消防需要に質 量とも対応できていない 2. 都市部 / 農村部の消防サービスの格差 3. 救急 救援体制の未整備などが指摘されています 国務院は 2006 年 15 号文件 ( 国発 [2006]15 号 ) で 消防工作強化意見 を通達し 消防が抱える問題点の解決を関係者に求めていますが 改正消防法では この 15 号文件の項目を多く取り込んだ内容となっており 7 章 74 条で構成されています 今回の改正消防法では消防の基本原則を 政府の統一指導の下 各部門が法に基づく管理監督を行い 各単位が全面的な責任を負い 公民の積極的な参加の下で消防責任制を実施する と規定して 社会全体に消防への取り組みを求めると共に 地方人民政府各層の責任と義務を明らかにし 消防機構に対しては業務の見直しや権限の強化を行っています 5

改正消防法のポイントは以下のとおりです 1. 消防工作請負制で各層行政機関や組織の役割 責任を明記し 行政全体の取り組み強化を規定した 国発 [2006]15 号では消防安全工作請負制を各級人民政府とその関係部門 組織 企業 などに導入させ 消防安全への取り組み成果を組織指導者の人事考課に反映すると謳っています 改正消防法では組織各々の役割 責任を具体的に明記し 各層が連携して職責を遂行することで消防安全のネットワークを構築するよう強く求めています 特に 地方各級人民政府には 地域の消防力を常に適正なレベルに維持できるよう 消防署の建設や消防施設の設置など消防力整備を織り込んだ地域発展計画を策定し 必要な予算措置を行っていくよう求め 消防力整備が進まない地方の政府責任者に アメとムチ を使った働きかけを行っています 主な関連規定は以下のとおりです 国務院と地方人民政府の役割 ( 改正消防法第 3 条 ) 各級人民政府の消防行政責任 ( 改正消防法第 8 条 ) 地方人民政府の農村消防基盤強化の責任 ( 改正消防法第 30 条 ) 地方人民政府 村民委員会 居民委員会の防火活動推進 ( 改正消防法第 31 条 第 32 条 ) 機関 企業などの消防安全責任 ( 改正消防法第 16 条 ) 建設工程の設計機関 施工会社の設計 施工品質責任 ( 改正消防法第 9 条 ) 消防機構の消防設計審査の責任 ( 改正消防法第 11 条 ) 消防用品品質監督部門の責任 ( 改正消防法第 25 条 ) 消防技術サービス機関 人員の資格と業務品質の責任 ( 改正消防法第 34 条 ) など 2. 専職消防隊などの消防組織を拡充し 消防力の増強を行うよう規定した 県級地方人民政府に対し 城市消防站建設標準 の設置基準を充足するよう専職消防隊などの消防組織設置を義務付け これに必要な給与や社会保険などの福利の充実も求めています ( 改正消防法第 35 条 第 36 条 第 40 条 ) 又 専職消防隊の設置が義務付けられている企業に対しても消防隊の設置を指導 督励し 適正な要員確保 装備の配備 訓練を行うよう求めています ( 改正消防法第 39 条 第 40 条 ) 公安消防隊は兵役制のため隊員増強や消防隊新設は機動的に行うことが出来ません このため 地方人民政府は公募や退役消防隊員の採用などで専職消防隊を新設 拡充し地域の消防力整備を進めてきており 改正消防法でもその一層の推進を規定しています 尚 地域や自社構内での初期消火を担う一般民間人の消防隊は従来 義務消防隊 と呼称されていましたが改正消防法では 志願消防隊 と呼称が改められ ボランティア性が明確にされました 3. 監督検査活動の強化を規定した 大型ショッピングモールやサウナ カラオケなどの娯楽施設 工場の従業員宿舎などいわゆる 多合一 三合一 と呼ばれる人員密集場所での火災事故で多くの人員の死傷事故が増加傾向にあり これら施設への査察や検査の強化が消防には強く求められています 喫緊の課題である火災予防活動の強化を実現するため 改正消防法では第 2 章の 火災予防 の条項を追加 拡充すると共に ( 現行消防法は 18 条項 改正消防法は 27 条項 ) 新たに第 5 章 監督検査 を新設し 消防検査や消防教育への取組強化を地方人民政府や各地の公安消防に強く要求しています 6

第 2 章 火災予防 で追加 拡充されたポイントは以下のとおりです (1) 監督検査活動にあたる消防隊員不足の解消策消防部門と建設部門 ( 審図公司 ) が重複審査していた建築物の消防設計審査を 原則的に建設部門の審査に委ねる改正を行った 今後 消防部門は大型の人員密集場所など火災危険の高い特殊な建築物の審査と一般建築物のサンプリング審査のみを実施することとなり 審査件数の減少により生じる余剰人員を監督検査業務に投入する事とした ( 改正消防法第 10 条 ) (2) 特殊建築物に対する審査 検査制度の強化不特定多数の人員が利用する施設や工場宿舎など死傷者が多数発生する可能性の高い建築物の消防設計審査と竣工時の験収 営業使用前の消防検査などを強化した ( 改正消防法第 11 条 ) (3) 法人や消防安全重点団体の消防安全責任強化企業や事業単位にも自衛能力を高めるための責任と義務を強化した ( 改正消防法第 16 条 第 17 条 ) 各単位の主要責任者を消防安全責任者と定め消防安全管理体制確立を求めている 現行消防法上の職責に加え 救急 避難計画策定 消防設備の年 1 回の検査と記録保管の義務付け 消防演習の義務付け パトロールの毎日実施 などを追加し 検査 査察などを通じて順法状況をチェックする (4) 消防用品 建築材料の品質認証制度の強化品質基準の根拠規定や認証を要する品目 指定認証機関を具体的に規定に盛り込み 不良品の排除と消防用品 資材の品質確保を規定した ( 改正消防法第 24 条 ~ 第 27 条 ) 又 新たに加えられた第 5 章では主に 3 つの内容が定められています (1) 地方人民政府の監督責任を明記地方人民政府は管下消防機構の活動の監督者として責任を果たすよう規定し 火災潜在リスク解消へ地方人民政府を挙げた取り組みを求めた ( 改正消防法第 52 条 ) (2) 検査で発見した火災リスクの改善指導責任と処分権限の強化検査 査察中に発見した火災潜在リスクの改善指導責任を明記する一方 リスクを解消しない者に対し営業停止措置など強硬措置を採る権限を公安消防隊に与えた ( 改正消防法第 53 条 第 54 条 第 55 条 ) (3) 消防隊員の不正行為防止と監督規定の強化消防設計の審査 消防験収 消防安全査察を行う消防隊員の不正行為 ( 費用 請求や懇意のメーカー 販売店の利用強要など ) を厳禁し これら違法行為の告発を受けた監督者の対応責任を明記し 権力の乱用防止や順法性の保障を強化した ( 改正消防法第 56 条 第 57 条 ) 4. 消防機構の行政処分権限を強化した 検査 査察で発見された危険箇所の改善を確実に実施させるため 行政処分の権限を強化しています 現行消防法では違法行為に対する処罰は 期限付改善勧告 を行い 期限内にこれに応じない場合に適用するとしていますが 過去の重大火災事故の多くが この 期限付き改善 期間中に発生しており 違法状態が一定期間放置されることが重大な結果を招いた形となっています 改正消防法では 期限付き改善勧告 という猶予期間の条件を廃止し かつ違法行為の法的責任を拡大し罰金額も加重することで 違反行為の早期改善を促すことをめざしています ( 改正消防法第 57 条 ~ 第 70 条 ) 7

5. 応急救援を消防機構の業務と規定した これまで消防隊の主管業務とはされていなかったものの現場出動を求められていた火災現場以外の人命救助活動について 改正消防法では公安消防隊 専職消防隊の主要任務と規定しました ( 改正消防法第 1 条 第 37 条 ) これにより危険化学品の漏洩事故 交通事故 地震 建物倒壊 工場の災害 航空機事故 自然災害 鉱山事故などの人命救助は消防機構の主管する業務となります 既に消防隊出動件数の 7 割以上が火災現場以外の救援活動であるという実態を法が追認し根拠付けたものですが これに伴い地方人民政府は応急救援業務の要員や装備の充実を図ることが義務付けられています ( 改正消防法第 43 条 ) 6. 賠償問題の解決のため 火災公衆責任保険の付保督励を規定した 多数の死傷者を出した火災事故では 施設責任者などの賠償 補償能力の不備が社会問題化した事を踏まえ 人員密集場所 易燃 易爆品を生産 貯蔵 輸送 販売する企業 に対し火災公衆責任保険 ( 火災被害者への賠償責任保険 ) の契約を督励しました 但し 強制保険化まで踏み込むことには慎重な意見も多く 今回は保留されています IV. 結び 今回の消防法改正は現在の中国消防の課題を反映したものであり 解決の方向性を示したものでもあります 地方の消防力整備の遅れ は消防安全工作請負制( 地方人民政府の責任者に対する人事考課の アメとムチ ) で促進を図り 二重管理体制による責任 権限の不明確性 は各級政府の役割 責任を条文に明記することで曖昧さを排除し 公安消防の抱える組織 要員 消防技術上の問題点 は地方人民政府自身が採用 組織化できる専職消防隊の充実と拡充で打開し 喫緊の課題である火災予防活動強化 は公安消防の業務と権限の見直し 強化や公安派出所の活用などで要員確保と実効性を確保する等々 が改正消防法の条文には具体化され その方向性を示しています しかしながら 建築設計防火規範 第 8 章の基準に沿って水源を確保し 設置が進められているはずの都市の消防用水源と消火栓も 冒頭の北京市の高層ビル火災でも触れたように 実際には火災現場に出動した消防隊が消火栓から水が出なかったり 水圧不足の為に消火活動が出来なかったという事例が今でも聞かれます 中国進出企業にとって 製造拠点や従業員を火災危険から守る今回の 消防力整備の強化 の実現は勿論 期待し 歓迎すべきものですが 反面中国消防の 現状 を考えた時 当面は自衛消防体制の整備 強化が極めて重要な課題ということが判ります 改正消防法も 組織各々が役割 責任を果たし 各層が連携して職責を遂行することで消防安全のネットワークを構築するよう強く求めています 消防安全工作請負制 火災予防強化の改訂諸条項でも 消防演習や救急 避難計画 防火教育やパトロールなどの消防計画の策定と実施の確認をはじめ 危険物管理 消火設備の点検整備の強化などが求められており 消防や公安派出所による点検 査察もこれまで以上に頻繁に実施される可能性があります 又 査察後の改善勧告に従来以上の強制力が付与された点も留意を要します 今回の消防法改正を機に進出中国拠点の消防法遵守状況に問題がないか 自衛消防の体制や制度 消火設備が十分に機能しているかなど 防火体制の再点検を実施されるよう是非お勧めします 以上 8

< 参考資料 > 公安部消防局国務院 2006 年 15 号文件中国司法部法制日報同上警察網華商晨報南京広播電視集団網站総務省消防庁ホームページ 中国消防工作簡況 進一歩加強消防工作的意見 新消防法 解析消防法修訂草案七大変革由来 改革現行消防体制 中国消防事業的重大転折 解読新消防法 中央電視台ビル火災報道 消防行政の現状と展望 株式会社インターリスク総研は 三井住友海上グループに属する リスクマネジメントについての調査研究及びコンサルティングに関する我が国最大規模の専門会社です 株式会社インターリスク総研コンサルティング第二部災害リスクチーム千代田区神田駿河台 4-2-5 TEL:03-5296-8917 FAX:03-5296-8941 不許複製 / 株式会社インターリスク総研 2008 9