(1) 単純 X 線はいわゆる レントゲン である その基本的な仕組みは 身体に X 線を照射して 身体の後部のフィルムを感光させるというもので 身体組織ごとに X 線透過度が異なることによって陰影が映る 画像は原則として 透過度低い= 白く映る ( 骨 造影剤など ) 透過度高い= 黒く映る (

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(23 回) 10月2日 (火)

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

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神経叢 ) と ( 鎖骨下動脈 ) が通過する 4 鎖骨下動脈 subclavian artery は 右は( 腕頭動脈 ) から起こり 左は ( 大動脈弓 ) から起こる 5 甲状頸動脈の枝として 不適切なものを選べ 肩甲背動脈 肩甲上動脈 下甲状腺動脈 上行頸動脈 頸横動脈 6 鎖骨下動脈の枝を

第4回 循環器

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

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福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

総頚動脈 common carotid artery である. 5は気管 trachea である. 図の下半分は縦隔 mediastinum と呼ばれる領域にかかっているが, この内部では循環絡みの器官 ( 心臓, 血管, 気管 ) は前, 消化管である食道はその後ろである ( だから食道がんの手術

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第 31 回

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6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

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2005年勉強会供覧用

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靭帯付 関節モデル ( 全 PVC 製 ) AS-6~AS-12 骨格の靭帯部分を 個別関節モデルとしてお買い求め頂けます 弊社カタログでは多くの選択肢の提案に努めています ご希望に合わせてお選び下さい ( 経済型関節モデル靭帯付 AJ-1~7 も良品です )

臓器採取マニュアル ~腎~

本日の内容 1.CT 2.MRI 3. 血管造影

1981 年 男 全部位 C00-C , , , , ,086.5 口腔 咽頭 C00-C

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第二回小テスト範囲胸筋 前頚三角 背部筋群 肩甲部 肋間筋と肋間隙 腋窩第三回プレ講義 p23 p25 p175 問題 1 乳房 breast には 皮下組織中の汗腺が変化した( 乳腺 mammary gland) が含まれており 乳汁を産生する 乳房は ( 胸筋筋膜 ) の前方に位置しており 結合

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GM アフ タ クター & アタ クター どの年代でも目的に合わせたトレーニングができる機器です 油圧式で負荷を安全に調節できます 中殿筋と内転筋を正確に鍛えることで 骨盤が安定し 立位や歩行時のバランス筋力を向上させます 強化される動き 骨盤 膝の安定性 トリフ ル エクステンサー ニー エクステ

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超音波からのメッセージ第 43 話 ( 予習資料 ) 腹部エコーの見るべき所見 脾臓とリンパ節の病変 第 8 期 腹部エコーの見るべき所見 の今回は 脾臓とリンパ節の病変 がテーマ です 脾臓 リンパ節ともにその走査のコツからお話しします それぞれの見るべき所見と は 資料には keyword しか

第 447 回東京医科大学臨床懇話会 403 話 大 大 大 大 大 大 回 大 大 大 大 大 大 大 話 大 大 話 41 5 B 大 A B B A A 大 大 大 大 大 2 回 回 1 話 大 A B A 大 B 大 A B A CT 2009 大 A 大 大 大 1 大

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

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佐賀大学附属病院 高度救命救急センター                 阪本雄一郎

1. 来院経路別件数 非紹介 30 他疾患経過 10 自主受診観察 紹介 20 他施設紹介 合計 患者数 割合 12.1% 15.7% 72.2% 100.0% 27.8% 72.2% 100.0% 来院経路別がん登録患者数 がん患者がどのような経路によって自施設を受診し

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

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A 2010 年山梨県がん罹患数 ( 全体 )( 件 ) ( 上皮内がんを除く ) 罹患数 ( 全部位 ) 5,6 6 男性 :3,339 女性 :2,327 * 祖父江班モニタリング集計表から作成 * 集計による主ながんを表示

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26気道の構造 肺葉 肺区域と肺門の構造を説明できる 27縦隔と胸膜腔の構造を説明できる 28呼吸筋と呼吸運動の機序を説明できる 29各消化器官の位置 形態と関係する血管系の基本形を図示できる 30腹膜と臓器の関係を説明できる 31肝臓 胆嚢 膵臓の構造と機能を説明できる 32歯 舌 唾液腺の構造と

概要 214 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 215 ファロー四徴症 216 両大血管右室起始症 1. 概要ファロー四徴症類縁疾患とは ファロー四徴症に類似の血行動態をとる疾患群であり ファロー四徴症 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖 両大血管右室起始症が含まれる 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症は ファ

連続講座 画像再構成 : 臨床医のための解説第 4 回 : 篠原 広行 他 で連続的に照射する これにより照射された撮像面内の組織の信号は飽和して低信号 ( 黒く ) になる 一方 撮像面内に新たに流入してくる血液は連続的な励起パルスの影響を受けていないので 撮像面内の組織よりも相対的に高信号 (

老衰 2% 日本における主な死因 : 動脈硬化性疾患は 25% その他 33% 悪性新生物 ( ガン ) 26% 自殺 3% 不慮の事故 3% 肺炎 8% 脳血管疾患 ( 脳卒中など ) 11% 脳心血管系疾患 25% 心疾患 ( 心筋梗塞など ) 14% 厚生労働省 平成 15 年度人口動態統計

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特別条件付契約のしおり このたびは 当社に生命保険のお申し込みをいただき 誠にありがとうございます 本帳票は ご契約のしおり 約款 と共に大切に保管いただきますようお願いいたします

P26 3. 肩関節複合体の関節運動肩複合体の関節運動 P27 図 15 P28 4. 肩関節複合体の運動に関与する筋肩複合体の運動に関与する筋 P28 (2) 下制 3 行目 鎖骨下神経 鎖骨下筋神経 P28 下から 1 行目長筋神経長胸神経 P29 図 17 ( 誤 ) 2

「腎盂尿管がんに対する手術」説明および同意書

生物 第39講~第47講 テキスト

Transcription:

解剖実習配布資料解答と解説 文責 : 木下貴文 ( 医学科 2008 年度入学 ) 2009.7.12 初版公開 2009.7.27 追記と修正 APPENDIX を追加 以下の問題は解答を修正 2-2 2-6 3-7 3-8 3-12 4-7 4-8 2009.7.29 修正 以下の解答を修正 2-4 3-15 第三解剖の解剖実習中に配布 口頭試問された問題に 解答と解説をつけました 資料画像 ( 別ファイル ) 中の番号の割り付けおよび解説の方針は 木下のあいまいな記憶と独断によります 過年度の傾向では 実習中に配布された問題がそのまま期末試験に出題されることが多いようなので 重点的に対策すると得をするかもしれません 対策としては アトラスと比較しつつ画像にうつる構造物を確認していくことを推奨します もし間違いがありましたら ご指摘いただけるとうれしいです また内容についての批判やご要望や質問などもどうぞ 直接声をかけていただくか 以下までメールください xxax2002@yahoo.co.jp 資料の性質上 別ファイルの資料画像ファイルにはパスをかけています おそらく来年度にも同様の口頭試問が行われると思うので その妨げとならないよう 当資料の存在およびパスについてはみだりに口外しないよう配慮をお願いいたします 0 画像診断の基本知識 画像の orientation について CT 画像で最も多い横断面 ( 輪切り ) の画像の場合 足の裏側から当該部位を透視している 画像となる そのため画像の上側はふつう ( つまり背臥位での撮影ならば ) 腹側になり また画像の右側は患者の身体の左側になる たとえば胸部左よりに位置する心尖 apex of heart は 画像の右側に映る ようするに医師が向かい合って患者をみる視点で左右が決まっていると考えればよい 3 つの画像技術の整理 : 単純 X 線 CT MRI 1

(1) 単純 X 線はいわゆる レントゲン である その基本的な仕組みは 身体に X 線を照射して 身体の後部のフィルムを感光させるというもので 身体組織ごとに X 線透過度が異なることによって陰影が映る 画像は原則として 透過度低い= 白く映る ( 骨 造影剤など ) 透過度高い= 黒く映る ( 空洞など ) となり 筋や血管などの組織については 吸収経路が長い (X 線入射に対して厚みのある組織 ) ほど白くうつる また腫瘍はさかんに増殖して厚みのある組織をつくるため 周囲よりやや白い 影 がみえる X 線写真では 何がみたいかによって X 線照射量などのパラメータ調節や画像のコンピュータ加工を行う たとえば胸部 X 線写真の場合 照射量を上げれば肺内部の細かい血管まで造影可能だが そうすると画面全体が白っぽくなってしまい 縦隔の構造は逆に見づらくなる 下図左では肺の細かな構造までみえるが 縦隔付近を観察するには中央の画像がよい (2)CT(computer tomography) について 単に CT という場合 通常は X 線 CT を指す X 線 を 360 度の方向から照射し その結果をコンピュータ処理することによって画像を得る 詳しい 特徴は次項で MRI と比較しながら説明する 2

(3)MRI(magnetic resonance imaging( 核 ) 磁気共鳴映像法 ) は 磁場を与えて生体内の水素 原子に電気的な偏りを作りだし その偏りがもとに戻る時間が組織ごとに異なる ( 物質的組成 が異なる ) ことから 組織ごとに色分けられた像を得る 以下に X 線 CT と MRI の特徴を比較した表を示す X 線 CT MRI 時間 短時間 20-30 分ほどかかる 被曝 あり なし 空間分解能 中 高 時間分解能 高 低 利用例 胸腔 腹腔 脳 軟骨 筋肉 靱帯 その他 装置によっては横断面 ( 輪切り ) しか撮影できない 体内に金属があると使用できない 両者は一長一短で 目的によって使い分けられている たとえば : 原理的な問題ではないが CT 装置は横断面しか撮影できない場合が多い MRI は任意の切断 面で撮影できる 胸腔や腹腔では呼吸や腸管の動きなどがあるため 時間分解能の高い (= 短時間で撮影できる ) X 線 CT の方が ブレがないクリアな画像が撮影できる 一方 動きがない脳や関節などで よ り精度の高い画像が必要な場合には MRI が利用される ( 上図について 腹部では MRI の方が 見づらい画像となっている 一方 脳は MRI の方がより詳細な画像となっていることがわかる ) 1 上肢の問題 1-1 上肢の筋の支配神経 A: 橈骨 radial n. B: 尺骨 ulnar n. C: 肘 cubital(elbow) joint 3

D: 上腕筋 brachialis と上腕二頭筋 biceps brachii E: 小指 digitus minimus F: 内転 adduction G: 外転 abduction H: 肘部管症候群 cubital tunnel syndrome 上肢は腕神経叢 brachial plexus により支配されるが 皮膚の感覚神経の分布と 筋の運動神経の分布とではかなり異なる点にまず留意する 前者は 体幹部のデルマトームがそのまま延長された形状で分布すると考えてよい 後者は 上肢の筋群をいくつかの区画 compartment に分けて 各神経がそれぞれの区画を支配すると考えると分かりやすい 腋窩神経 axillary n. 上肢帯 ( 肩 ) の筋 ( 三角筋と小円筋 ) 筋皮神経 musculocutaneous n. 上腕前面の屈筋群 正中神経 median n. 前腕前面の屈筋群 橈骨神経 radial n. 上腕および前腕後面の伸筋群 尺骨神経 ulner n. 手内筋群 以上のようにおおまかに把握した上で 必要に応じて以下のような例外をおさえていくとよい 腕橈骨筋 brachioradialis は前腕後面の伸筋群に含まれ橈骨神経支配だが 肘関節の 屈曲 にはたらく 正中神経も手内筋( 特に母指側 ) を支配する 1-2 上肢の筋の神経学的検査 1 前鋸筋 serratus anterior 支配神経から判断するのは難しいが 作用から前鋸筋と考える 腕を突き出して壁を押す 動作のとき 肩関節や肘関節はあまり動かず 肩甲骨の前進がカギとなる点を理解しよう 肩甲骨の前進をは専ら前鋸筋である 1-3 上肢の筋の神経学的検査 2 上腕二頭筋 biceps brachii 反射 肘関節の屈曲 中枢は C5 上肢や下肢の神経学的検査でよく用いられるもの およびその反射中枢は 上肢 二頭筋反射 (C5) 腕橈骨筋反射(C6) 三頭筋反射(C7) 下肢 膝蓋腱反射 (L4) アキレス腱反射(S1) など 反射中枢をピンポイントで答えさせるのは定期テストならやりすぎと思うが 次のように だいたいこれくらい と検討をつけられるようにしておくと便利 上腕二頭筋 筋皮神経 腕神経叢の上位 (C5~C6 くらい ) 4

上腕三頭筋 橈骨神経 腕神経叢の中位 (C6~C7 くらい ) 1-4 上肢の筋の神経学的検査 3 上腕三頭筋 triceps brachii 反射 反射中枢は C7 1-5 手の掌側に入る神経 1 手根管 ( 症候群 )carpal canal syndrome 2 正中 median n. 3 横手根 transverse carpal lig. 4 母指 thumb 5 示指 index finger 6 中指 middle finger 7 環指 ring finger 横手根靱帯は屈筋支帯 flexor retinaculum の別名 正中神経は手では母指側 ( 母指 ~ 環指の半 分 ) の知覚や母指の屈曲にはたらく 2 下肢の問題 2-1 冠状動脈バイパスに使う静脈は 大伏在静脈 great saphenous v. 心臓の冠状動脈 coronary a. の機能障害で虚血性心疾患 ( 心不全 cardiac insufficiency や心筋梗 塞 myocardial infarction) が起こった場合 下肢の大伏在静脈を切り取って冠状動脈と大動脈 aorta をバイパスする術式がある 2-2 大腿部のリンパをみる 大伏在リンパ管 great saphenous lymph vessels と浅鼠径リンパ節 superficial inguinal lymph nodes 下肢のリンパの画像 この図では 坐骨の付け根のあたりにリンパの塊 ( 浅鼠径リンパ節 ) を 認めることができる 5

一般に 上肢や下肢や頚部などで大きな静脈が体幹部へと戻る周辺でリンパ節が発達している ことが多い 下肢では 大伏在静脈 great saphenous v. が大腿静脈 femoral v. に合流し 鼠径靱 帯 inguinal lig. をくぐるあたりにリンパ節が多数みられる 2-3 大腿部の血管をみる 1 大腿骨 femur 2 大腿静脈 femoral v. 3 大伏在静脈 great saphenous v. 4 膝窩静脈 popliteal v. 3 大伏在静脈だと分かれば静脈と決まる 膝窩静脈の映り方から 左下肢の背側からの画像であると分かる 下肢へ向かう静脈の本幹は 下大静脈 inf. vena cava 総腸骨静脈 common iliac v. 外腸骨静脈 external iliac v. 大腿静脈 膝窩静脈 前頸骨静脈 ant. tibial veins+ 後脛骨静脈 post. tibial veins+ 腓骨静脈 fibular v. の順に名前を変える 上肢と下肢の血管系は 非常に太い皮静脈があることが特徴で 下肢では (1) 大腿静脈から分かれて主に大腿内側部に分布する大伏在静脈と (2) 膝窩静脈から分かれて主に下腿後部に分布する小伏在静脈 small saphenous v. がある 2-4 筋肉注射するときに注意するのは F1: 上腕三頭筋 triceps brachii F2: 伸 extensor F3: 伸展 extention F4: 坐骨 sciatic n. F5: 腸骨稜 iliac crest F6: 大殿 gluteus maximus F7: 中殿 gluteus medius F8: 大腿二頭筋 biceps femoris F9: 半膜様筋 semimembranosus F10: 半腱様筋 semitendinosus F11: 屈 flexor F12: ヒラメ筋 soleus F13: 腓腹筋 gastrocnemius 25: 上前腸骨棘 sup. ant. iliac spine 26: 腸骨稜 iliac crest 27: 坐骨結節 iscial tuberosity 28: 恥骨 pubic tubercle 6

29: 坐骨神経 sciatic n. 筋肉注射時に注意する神経の理解を求める問題 腕神経叢 brachial plexus から出て上肢の主に背側を通る橈骨神経 radial n. も多くの筋 ( 上腕 前腕の伸筋群 ) を支配するが 腰仙骨神経叢 lumbosacral plexus で ( というより人体中で ) 最大の神経であり下肢背側を足まで貫通する坐骨神経 sciatic n. の支配域はさらに広く 大腿後面 下腿の前面と後面および足内筋まで支配している 2-5 どちらの十字靱帯? 前方引き出し症状 前十字靱帯 ant. cruciate lig. 後方引き出し症状 後十字靱帯 post. cruciate lig 脛骨の前 + 内側から後 + 外側 + 上方に伸びるのが前十字靱帯 より背側でこれと交叉するように位置するのが後十字靱帯 これは知っておくべき配置である PK やローキックをうつときにぴーんと伸びるのが前十字靱帯だと覚えておくと便利 ( このとき膝関節は内旋 + 伸展の方向に動くから これを制限するようにはたらくのである ) 膝関節の周辺は込み入っていて分かりにくいが 臨床的に重要度が高いのは (1) 前 後十字靱帯 (2) 内側 外側側副靱帯 colateral lig. (3) 内側 外側半月 meniscus の3 組だろう (1)(2) の作用は それが傷害された時にどうなるかを考えると分かりやすい 上図のように下腿を前面に引っ張った場合 正常だと動かないが 前十字靱帯を損傷すると下腿が前方に動いてしまう また内側側副靱帯の損傷した場合は 膝関節を伸展した状態で大腿を固定し下腿を外側の方へ押すと動いてしまう この二つの靱帯の損傷は スポーツ時のケガの中で非常に頻度が高い 2-6 足の関節をみる A: 後距腓靱帯 post talofibular lig. B: 踵腓靱帯 calcaneofibular lig. C: 前距腓靱帯 ant. talofibular lig. 足根部の関節では まず下腿 ( 脛骨 tibia 腓骨 fibura) と足根骨 ( 踵骨 calcaneus 距骨 talus) の接合面を理解する 両者をつなぐ靱帯としては 内側の三角靱帯 deltoid lig. と 本問で問われている外側の三つの靱帯が重要 7

3 胸部の問題 3-1 縦隔の横断面その1 1 右腕頭静脈 r. brachiocephalic v. 2 腕頭動脈 brachiocephalic a. 3 左腕頭静脈 l. brachiocephalic v. 4 気管 trachea 5 食道 esophagus 6 左総頚動脈 left common carotid a. 7 左鎖骨下動脈 l. subclavian a. 縦隔 mediastinum やや上部の横断面 両側に黒く映る肺 lung 中央を走る4 気管は容易に同定できる 気管の深部にあるのは5 食道で 普段は横に潰れたような形状をしており目立たないことに注意する 高さを決定する必要があるが 気管分岐部 肺動脈管 大動脈弓は映っていないからそれらよりも上 頚部( 左右の総頚動脈 内頚静脈のみ ) よりは下とわかる 残りの動静脈の同定は 大動脈弓が正中浅層 左深層へと走行しつつ三本の枝を出すこと 上大静脈 sup. vena cava が大動脈弓より浅層で左右に分かれることを理解しておけば迷わないだろう 3-2 縦隔の横断面その 2 12 大動脈弓 aortic arch 3 上大静脈 superior vena cava 草履と満月 というタイトルがついていた問題 大動脈弓は正中部浅層から左深層へ ステ ッキの柄のようなカーブを描き 椎骨付近まで達することをおさえる 3-3 縦隔上部の血管造影 1 右腕頭静脈 right brachiocephalic v. 2 左腕頭静脈 left brachiocephalic v. 3 上大静脈 sup. vena cava 動脈ではなく静脈であることを形状から判断する 上大静脈の下部には右心房 その右側には 肺動脈幹 pulmonary trunk~ 右肺動脈も映っている 8

3-4 肺の内部向かって左の画像 : 肺動脈 pulmonary a. 向かって右の画像 : 気管支 bronchus 形状から気管支 肺動脈 肺静脈を区別する 3-5 気管の走行 胸部を左斜め前方から撮影した画像で 気道 airway の形状が明確に分かるようになっている 細かい名称は答えなくてもよい とのことなので主要な構造のみ確認していく 上部には鎖骨と第 1 肋骨が映り 肺尖 apex of lung はこれらよりも上位にある 第 2 肋骨の高さで気管 trachea が分岐するが 左右で異なる形状を示し ( 右気管支 bronchi の方が太く傾斜が急で 誤飲したものは右へ入りやすい ) 右肺は上 中 下葉 左肺は上 下葉へと気管支が伸びる 肺の下面には 横隔膜を隔てて肝臓や胃 脾臓が接している( 右下に横隔膜 左下は胃底が映っている ) 気管と平行に走る 気道より細い管はカテーテルである 3-6 肺動脈 肺動脈幹 pulmonary trunk と左右の肺動脈 pulmonary a. 心臓から肺動脈幹が出て 左右の肺動脈に分かれて肺に入っていくところ 右鎖骨下動脈から カテーテルが入ってきている 3-7 肺の左上葉に腫瘍が 1 上行大動脈 ascending aorta 2 下行大動脈 descending aorta 3 肺動脈幹 pulomonary trunk 4 上大静脈 sup. vena cava 5 左心耳 left atrial appendage 6 左下肺動脈 left inf. pulmonary a. 56 は難しいので参考程度でいいと思う 写真 C D で分かるように 左肺に腫瘍がみられる 写真 A の 12 は上行 / 下行大動脈だと分かればだいたいの高さが決定できる 肺動脈の走行を立 体的に理解することが重要で 心臓から肺動脈幹が出たあと 深層に向かいつつ肺に入っていく 9

ことにとくに注意する 写真 A から 腫瘍がこれ以上大きくなると左肺動脈が圧迫されるおそれ があることが分かる 3-8 大動脈弓と上大静脈の形状変化をみる 大動脈弓と上大静脈 sup. vena cava が映る縦隔 CT で A~C はほぼ同じ高さのおそらく別人 の画像 呼吸および腫瘍による大血管の形状の変化を見極めさせるのが出題意図と思われる C の腹側の影は胸腺腫 thymoma で 上大静脈への浸潤 大動脈弓の圧迫がみられる A B はいずれも正常像で 呼吸による形状変化をみる A は肋骨の挙上と胸腔内圧の低下による静脈環流量の増加 ( つまり静脈が太い ) を認めるため 吸気時 B はその逆で呼気時 吸気時に肋骨が挙上して胸腔を拡大させるが このとき肋骨は水平に近くなり 実際に A では後から前までほぼ肋骨の全長が映っている 3-9 食道 esophagus を側方からみる 1 中食道狭窄 middle esophageal constriction 2 大動脈弓 aortic arch 椎骨や肋骨の映り方などから 胸腔を側面からみた画像だとわかる 食道には三つの生理的狭窄部があり それぞれ 上食道狭窄: 食道の入り口 中食道狭窄: 気管分岐部 大動脈弓に圧迫される 下食道狭窄: 横隔膜貫通部 ( 食道裂孔 ) に位置する これらの狭窄部は食道がんの好発部位としても重要 この画像には中食道狭窄しか映っていない 3-10 ならびかえ ( 縦隔の冠状断面 ) 腹側から A B D C 位置を決める重要な構造物をみていく (1)A B には左心室 l. ventricle と大動脈弓 aortic arch が映っているが A ではその上方に左腕頭静脈 r. brachiocephalic v. があり いっぽう B では腕頭動脈と左総頚動脈 l. common carotid a. を出している よって A B (2)C には気管分枝部と気管支 bronchi 左心房 l. atrium があり D は気管 trachea と上大静脈 sup. vena cava と右心房 r. atrium がみえる よって D C 10

3-11 奇静脈系その 1 1 奇静脈弓 arch of azygos v. 2 半奇静脈 hemiazygos v. が奇静脈に注ぐところ 奇静脈系 azygos system は肋間静脈を集めて上大静脈 sup. vena cava に注ぐ血管群で 左右で走行が異なるのが特徴 右の奇静脈が本幹であり 左は下部の半奇静脈と上部の副半奇静脈が奇静脈に注ぐ 画像で本幹が椎骨左にあることを疑問に思う方がいるかもしれない 1 奇静脈系の走行は個人差が大きいこと また半奇静脈と副半奇静脈が注ぐところでは本幹がやや左に蛇行する傾向があるから 本幹で間違いないと思う 3-12 奇静脈系その2 1 半奇静脈 hemiazygos v. 2 奇静脈 azygos v. 3 右肋間静脈 right post. intercostal v. 4 下大静脈 inf. vena cava 5 脊椎静脈叢 vertebral plexus 6 右腎静脈 right renal v. 7 上行腰静脈 ascending lumber v. 椎骨上を左右非対称に走る構造物だから奇静脈系だと検討をつける 画面上部の左右に映っているのはおそらく横隔膜 diaphragm ( 肝臓 liver のある右の方が高くなっている ) 横隔膜や腎静脈の位置から 奇静脈系の全体は映っておらず 上部は奇静脈と半奇静脈の合流部だと見当をつける 右図に奇静脈系の全体像を示す 椎骨右側に着目して下から追っていくと 奇静脈系は右総腸骨静脈 right common iliac v. に発し 上行腰静脈として腹腔を上行し ( 腰静脈は肋間静脈 intercostal v. の腹部における続きと考えると分かりやすい ) 奇静脈となって胸腔で肋間静脈を集めながら上行し 左側の半奇静脈 副半奇静脈と合流したあと 上大静脈に注ぐ ( 注ぐ前に特有のカーブを描く部分が奇静脈弓 ) 11

奇静脈系は上記のように下大静脈と上大静脈を連絡しているから 下大静脈の閉塞時には側副 路としてはたらく ( つまり 下大静脈を迂回して 奇静脈系を通り上大静脈から心臓に帰る ) 3-13 縦隔の正中部矢状断 1 気管 trachea 2 上行大動脈 ascending aorta 3 右肺動脈 r. pulmonary a. 4 左心房 l. atrium 5 左心室 l. ventricle 6 右心室 r. ventricle 正中部矢状断 = 正中断 食道はふつう前後方向に潰れた形をしておりあまり映らないから 1 は気管 2の上行大動脈 ~ 大動脈弓からは 上方に枝 ( 腕頭動脈 brachiocephalic a.) がみえる 気管と上行大動脈がほぼ正中部 肺動脈幹はそのやや左よりにあるから 3は右肺動脈である 大動脈につながる5は左心室 それに対して4 左心房は後方より 6 右心室は前方よりにあるという位置関係を把握する 3-14 胸部大動脈造影 1 上行大動脈 ascending aorta 2 右冠状動脈 r. coronary a. 3 左冠状動脈 l. coronary a. 4 内胸動脈 internal thoracic a. 縦隔上部の血管造影 上図と下図を比べると 大動脈弓が正中断の平面と約 45 度の角度をなしていることがよく理解できる まず 1について 大動脈弓からは上部に複数の枝が伸びており 左から腕頭動脈 brachiocephalic a. 総頚動脈 common carotid a. 左鎖骨下動脈 l. subclavian a. である 腕頭動脈はさらに上肢と頭部に向かう枝を出す ( だから 腕 頭 ) 腕頭静脈は左右あるが 腕頭動脈はひとつしかないことを 大動脈弓の走行とともに理解しておこう 大動脈弓は正中から左へと走るので 右側へ向かう枝は距離が長いから腕頭動脈がある と考えられる 次に23は心筋を栄養する冠状動脈であり 大動脈弁の直後に大動脈から分かれる 冠状動脈の不調が狭心症 angina 冠状動脈が詰まって心筋が壊死するのが心筋梗塞 myocardial infarction である 3 左冠状動脈はすぐに 下方へ向かう前室間枝 anterior interventricular branch と 側方をまわる回旋枝 circumflex branch に分かれる 最後に 4の内胸動脈は 左右の鎖骨下動脈から分かれて前胸壁 ( 肋骨の裏側 ) を下行し 肋間動脈を出す 12

3-15 縦隔の斜位矢状断 ( 上図 ) 1 気管 trachea 2 上行大動脈 ascending aorta 3 右肺動脈 r. pulmonary a. 4 胸大動脈 thoracic aorta 5 右肺 right lung 6 左心房 l. atrium 7 右心房 r. atrium ( 下図 ) 1 左肺 left lung 2 大動脈弓 aortic arch 3 右肺動脈 right pulmonary a. 4 左主気管支 left primary bronchus 5 右肺 right lung 6 胸大動脈 thoracic aorta 7 左心房 left atrium 8 左心室 left ventricle 9 右心室 right ventricle 大動脈弓の描く曲線を含む平面は 縦隔を右前方から左後方へと切断することをまずおさえる 画像タイトルから明らかなように 最初に大動脈の走行を特定すればよい ついで 大動脈弓にはさまれる形で肺動脈幹 左心房 気管 気管支が存在していることから これらが特定できる 最後に残りの心房と心室を決めていく 3-16 胸管 1 左鎖骨下静脈 left subclavian v. 2 胸管 thoracic duct 椎骨やや左を走行することと左鎖骨下静脈に注ぐことから 胸管だとわかる 胸管は人体最大のリンパ管であり 下肢や腹腔のリンパ管を集めた乳ビ槽 chyle cistern に発して 胸部では胸大動脈 thoracic aorta のすぐ右側を上行し 左鎖骨下静脈 ( 左内頚静脈と合流するところ ) に背後から注ぐ 13

4 腹部の問題 走行と作用 4-1 腹部における胎児期の遺残 / 迷走神経の E1: 下腹壁動静脈 inf. epigastric vessels E2: 臍動脈 umbilical a. E3: 膀胱 urinary bladder E4: 肝円索 round ligament of liver E5: 肝鎌状間膜 falciform ligament of liver E6: 臍静脈 umbilical v. E7: 静脈管 venous duct B1: 交感 ( 神経 ) sympathetic n. B2: 迷走神経 vagus n. B3: 反回神経 recurrent n. B4: 右鎖骨下動脈 r. subclavian a. B5: 大動脈弓 aortic arch B6: 声帯 vocal cord B7: 嗄声 hoarseness E は胎児期の循環系をおさえておく ( 解剖学講義の 24 ページ ) B は迷走神経の走行と作用について 反回神経が発生上の都合により左右で異なる走行をみせ ることを理解しておく ( 解剖学講義の 652 ページ ) 4-2 腹部横断 ( 基本 ) 1 門脈 portal v. 2 下大静脈 inf. vena cava 3 胸大動脈 thoracic aorta 4 胃 stomach 5 脾臓 spleen 腹部 CT の基本的な画像 右側の肝臓では 門脈と下大静脈の深さの違いをみておく 後者は胸大動脈のやや浅層 前者はかなり浅層で肝臓に流入する 胸大動脈の周りを囲むのは横隔膜 diaphragm である ( 大動脈が横隔膜をくぐるのは肝臓の下部で この箇所ではまだ 胸 自信がなければ 下行大動脈 と答えるのも手 ) 14

4-3 腹腔動脈幹の枝 1 脾動脈 splenic a. 2 腹腔動脈幹 celiac trunk 3 総肝動脈 common hepatic a. 4 胃十二指腸動脈 gastroduodenal a. 5 固有肝動脈 proper hepatic a. 腹部血管造影で カテーテルで腹腔動脈幹から造影剤を入れている 腹腔動脈幹 celiac trunk の主要な枝をおさえる 腹大動脈が消化器系へ出す大きな枝は次の3 本で いずれも無対性で大動脈の前面から出ている : 腹腔動脈: 胃 肝 脾 膵 十二指腸前半に分布 上腸間膜動脈: 十二指腸後半 ~ 横行結腸のかなり広い部分に分布 下腸間膜動脈: 下行結腸 ~ 直腸上部に分布 4-4 腸間膜 mesentery に分布する動脈 上が上腸間膜動脈 sup. mesenteric a. 下が下腸間膜動脈 inf. mesenteric a. 腹腔の血管造影 矢印の 2 箇所から造影剤を入れていると思われる 下腸間膜動脈は上と比べ てけっこう細い 4-5 腹部の動静脈 1 腹大動脈 abdominal aorta 2 肝臓 liver 3 脾臓 spleen 4 右腎 right kidney 5 門脈 portal v. 6 腹腔動脈 celiac trunk 7 上腸間膜動脈 sup. mesenteric a. 8 左精巣 ( 卵巣 ) 静脈 left testicular(ovarian) v. 通常の血管造影とは異なり動脈と静脈が両方映っているから 少しとまどってしまうかもしれない 順にみていくと : 1は腹腔動脈や上腸間膜動脈が出ているから腹大動脈で 左右の総腸骨動脈 common iliac a. に分岐するところまで確認できる 15

3の脾臓は血管を多く含む組織なので こうした画像では血管同様の発色を示してすぐ同定できることが多い 下大静脈 inf. vena cava は映っていないようだが 肝臓に注ぐ5はどうみても門脈で 上腸間膜静脈 sup. mesenteric v. と脾静脈 splenic v. が合流している 脾静脈に下腸間膜静脈 inf. mesentric v. が合流する様子は確認できない 4の腎臓 kidney には腎動静脈 renal a&v が向かうが 腎静脈から8 左精巣 ( 卵巣 ) 静脈が分岐している様子が確認できる なおこれ以外の精巣 ( 卵巣 ) 動静脈はすべて大動脈 大静脈から分岐している 4-6 腹部血管造影 1 腹腔動脈 celiac trunk 2 上腸間膜動脈 sup. mesenteric a. 3 総肝動脈 common hepatic a. 4 固有肝動脈 proper hepatic a. 5 胃十二指腸動脈 gastroduodenal a. 6 右腎動脈 right renal a. 7 左胃動脈 left gastric a. 8 脾動脈 splenic a. 腹大動脈 abdominal aorta から出る血管については (1) 前面から出る無対性のもの (2) 真横から左右に出るもの (3) 斜め後に出るものの三つを区別すると分かりやすい (1) には次の三つの大きな動脈がある 腹腔動脈: 胃 肝 脾 膵 十二指腸前半に分布 上腸間膜動脈: 十二指腸後半 ~ 横行結腸に分布 下腸間膜動脈: 下行結腸 ~ 直腸上部に分布 (2) は腎動脈 renal a. と精巣 ( 卵巣 ) 動脈 testicular(ovarian) a. (3) は腰動脈 lumber arterys( 肋間動脈の腹部における続きのような動脈 ) など 次にこれらの動脈が出る位置だが 大動脈が横隔膜を貫通した直後に腹腔動脈が出て そのすぐ下で上腸間膜動脈と腎動脈 少し間が空いて下腸間膜動脈が分かれる この画像では腹腔動脈の枝をさらに同定することが求められる また下腸間膜動脈は前三者よりも細い動脈で この画像では確認できない 4-7 腹部血管造影 ( 門脈 ) 1 脾静脈 splenic v. 2 上腸間膜静脈 sup. mesenteric v. 16

3 門脈 portal vein 肝臓 liver( 右上部にうっすらと輪郭がみえる ) に入る血管だが 動脈か門脈かで迷うかもしれない 4-3の画像と比較してみて欲しい 動脈の方が細くシャープな像をつくることに加えて 特有の曲線を描くことが動脈を静脈と見分ける決定打となる 動脈壁はある程度の固さと弾力性があるので写真のような蛇行が可能だが 静脈壁は一般に薄いため走行は直線的になる なお問題画像の矢印が何なのかは不明 門脈の枝がそこまで伸びているか ( 左 ) 肝静脈 hepatic v. の可能性もあるかもしれない 4-8 上腸間膜動脈の枝 1 上腸間膜動脈 sup. mesenteric a. 2 中結腸動脈 middle colic a. 3 空腸動脈 jejunal a. 4 右結腸動脈 right colic a. 5 回結腸動脈 ileocolic a. 6 回腸動脈 ileal a. この画像が 腸間膜なんたら であることは分かったとして 動脈 / 静脈 上 / 下をどう見分けるかで迷うかもしれない まず腸間膜静脈は門脈に合流する部分で特有の走行を示すから 動脈 次に左右両側に太い枝が伸びていることから 上腸間膜動脈であると判断する この問題ではその枝の名称を求められている ( が ここまで問うのか?) ほぼ垂直方向へ走る太い血管が上腸間膜動脈の本幹で ここから空腸 ~ 横行結腸まで左右に枝を出すが 腸管の折りたたみのため走行が分かりにくい 4-9 上腹部エコー ( 難易度高 参考程度?) ア : 肝左葉 left lobe of liver イ : 膵管 pancreatic duct ウ : 膵体部 body of pacreas エ : 脾静脈 splenic v. オ : 腹大動脈 abdominal aorta カ : 脾動脈 splenic a. キ : 下大静脈 inf. vena cava ク : 門脈 portal v. 腹部エコー画像からの出題だが かなり難易度が高いので参考程度と考えていい 17

4-10 下腸間膜動脈の枝 1 腹大動脈 abdominal aorta 2 下腸間膜動脈 inf. mesenteric a. 3 左結腸動脈 left colic a. 4S 状結腸動脈 sigmoid a. 5 上直腸動脈 sp. rectal a. 腹大動脈から直接出ていて 右と下のみに枝を伸ばしていることから下腸間膜動脈で決まり ( っ 造影剤を入れる位置からも動脈と分かる ) 下腸間膜静脈は脾静脈と合流することをおさえてお こう 4-11 腹部横断その2(T12 と L1) ( 上図 ) 1 門脈 portal v. 2 尾状葉 caudate lobe 3 下大静脈 inf. vena cava 4 右腎 right kidney 5 胸大動脈 thoracic aorta 6 胃 stomach 7 膵尾部 tail of pancreas 8 脾動脈 splenic a. 9 左腎 left kidney 10 脾臓 spleen T12 レベルの腹部 CT 画像 まず肝臓の特徴的な形態に着目する 右葉と左葉の間隙 肝門部の空洞が明確であるほか 尾状葉の突出が際立つことで全体として童話の おつきさま のような形になっている この高さで左右の腎臓が映ることをおさえる 膵臓の形態と位置にも着目したい 膵臓全体は短銃のような形をなし そのグリップ( 頭部 ) は門脈を抱きかかえる形になっており 銃身は深部へと向かい脾臓へとつく 膵臓の深部には脾動静脈が走るが 見分け方は : 脾動脈の方がより蛇行し 脾静脈は直線的 脾静脈には下腸間膜静脈 inf. mesenteric v. が合流する ( 下図 ) 1 胆嚢 gallbladder 18

2 胃体 body of stomach 3 幽門部 pyloric part of stomach 4 十二指腸 duodenum 5 膵頭と膵体 body and head of pancreas 6 門脈 portal v. 7 脾静脈 splenic v. 8 下大静脈 inf. vena. cava L1 レベルの腹部 CT 画像 T12 レベルと比較しながらみていくと : 肝臓は右側につぶれる 肝臓に胆嚢が映るようになる 腎臓が大きくなる( この辺りが最大 ) 胃が胃体から幽門部 pyloric part に移行し さらに十二指腸 duodenum になる 胃には造影剤がたまり液面が映っていると思われる ( 撮影はふつう背臥位でおこなう ) 十二指腸は屈曲してから深部に向かい 大動脈と同じ深さに達する( この画像はその途中 ) 膵頭と膵体の屈曲部が映っている その深層にみえるのは脾静脈 splenic v. 左上部には横行結腸 transverse colon と下行結腸 descending colon が映る これらは脾臓付近で吊り下げられた形になっており ( 結腸脾弯曲部 ) T12 レベルで確認できる 4-12 逆行性胆膵管造影 G: 胆嚢 gallbladder C: 総肝管 common hepatic duct PD: 膵管 pancreatic duct 1 胆嚢管 cystic duct 2 総胆管 common bile duct 3 大十二指腸乳頭 greater duodenal papilla 画面中央の太い管は内視鏡で 大十二指腸乳頭から胆汁 膵液の流れとは逆行する向きに造影剤を入れているので 両方の通路が分かる ( 逆行性造影 ) 胆汁 bile の通路の名称と ( 多くの場合 ) 膵管に合流後に十二指腸乳頭に注ぐことを確認しておこう 乳頭の周囲はオッディの括約筋 Oddi s sphincter という平滑筋があり 分泌調節を行っている 4-13 門脈圧亢進症 1 門脈 portal vein 2 脾臓 spleen 19

門脈系は消化管から肝臓へ流れるが 肝臓の前 中 後のいずれかの場所で血管が閉塞し 門 脈圧が上昇する症状を門脈圧亢進症と呼ぶ 図では肝臓に入って以降の門脈周辺に病変がみられ 脾臓 ( 血流が盛んで門脈に注ぐ脾静脈を出す ) にかなりの肥大がみられる 4-14 肝臓を連続断面で復習する SⅠ-SⅧ:Couinaud( クイノー ) の肝区域 1~8 SⅠ: 尾状葉 caudate lobe PⅠ-PⅧ: 門脈 portal vein1~8 UP: 門脈左枝臍部 umbilical portion 肝円索 round lig. of liver~ 静脈管索 venous ligament が貫くところ L/M/RHV: 左 / 中 / 右肝静脈 IVC:inf. vana cava 画像は左列上から1~3 右列上から45の順 解剖学では外観から肝臓を左葉 右葉 尾状葉 方形葉 quadrate lobe の4つに区分する いっぽう臨床的には門脈の支配領域による区分 (Couinaud の肝区域 ) がよく用いられ たとえば肝がんで肝臓を部分的に摘出する場合に 何番に腫瘍があるから何番は残せるな などと判断するときに使う この画像は復習用として配布されたので 上記の区分にはあまりこだわらず 横断面のレベルによって肝臓の形がどう変化するかをみておくといいと思う 5 骨盤部の問題 5-1 骨盤隔膜を構成する筋たち A: 尾骨筋 coccygeus B: 腸骨尾骨筋 iliococcygeus C: 恥骨尾骨筋 pubococcygeus D: 恥骨直腸筋 puborectalis 骨盤は 底が抜けた 形状をしている ( 出産があるから当たり前 ) この部分をお椀状に覆う筋と膜のセットが骨盤隔膜 pelvic diaphragm である B~D はまとめて肛門挙筋 levator ani という 尿道 urethra( と膣 vagina) は骨盤隔膜の前方の孔を通り その先でもう一枚の筋 + 膜のセットである尿生殖隔膜 urogenital diaphragm をさらに通過してから体外へ開口する 二枚の隔膜のうち この尿道と膣が通る孔の部分が構造的に脆弱となる 骨盤臓器脱 POP とは 骨盤臓器が膣道を通って体外に脱出してしまう疾患であり 特に中高年女性にある程度の頻度で見られる 20

5-2 骨盤断面をみる ( 難易度高 参考程度?) A: 子宮 uterus B: 直腸 rectum C: 卵巣 ovary D: 腹直筋 rectus abdominis E: 白線 linea alba F: 外腸骨動脈 external iliac a. G: 外腸骨静脈 external iliac v. H: 腸腰筋 iliopsoas I: 小殿筋 gluteus minimus J: 腸骨 ilium K: 梨状筋 piriformis L: 大殿筋 gluteus maximus 難易度が高く 参考程度と考えてよい 高さのレベルについて 大腿骨 femur は映ってないのでそれより上 腸骨のかなり狭いところ ( 腸骨稜 iliac crest) よりも下で切っている 膀胱 urinary bladder は見えていない ( もう少し下 ) 子宮が映っていることから女性である 腹部 下肢 骨盤の各所で実習した構造物がまとめて出てくるので 復習しつつ各々の位置関係を確認するのが有益だろう 6 頭頚部の問題 6-1 脳 脊髄をおおう膜と脳脊髄液 1クモ膜 arachnoid mater 2 軟膜 pia mater 3 硬膜 dura mater 4 黄色靱帯 ligamenta flava 脳脊髄液 cerebrospinal fluid(csf) とは 脳室系およびクモ膜下腔を満たす無色透明な液体であり 脳実質の形状の保持や物理的な緩衝材としてはたらく 脳と脊髄は三重の膜で覆われており 内側から 軟膜 ~( クモ膜下腔 )~クモ膜 ~ 硬膜 ~( 硬膜外腔 ) である 局所麻酔では クモ膜下腔か硬膜外腔に麻酔薬を投与することが多い ( 前者が脊椎麻酔 後者が硬膜外麻酔 ) なおこのあたりは後期の神経解剖学で詳しく扱う 脳脊髄液 (CSF, cerebrospinal fluid) は脳室系とクモ膜下腔を流れる液体で 脳の緩衝材としての作用を持っている CSF は脳室系の脈絡叢で作られて 第四脳室の孔から脳室を出てクモ膜下腔に流入したあと 脳を走る静脈系に回収される ( この辺りは後期の神経解剖の範囲 ) 21

6-2 頚部断面 1 甲状腺 thyroid gland 2 総頚動脈 common carotid a. 3 内頚静脈 internal jugular v. 4 前斜角筋 anterior scalene m. 椎骨前部の狭さから頚部と判断できる 内頚静脈と総頚動脈では 後者の方が細く また深層 内側にあるが これは大動脈弓 aortic arch の走行とそこからの分枝を考えると分かる 6-3 後頭下の筋 A 項靭帯 nuchal ligament B 僧帽筋 trapezius C1 頭板状筋 splenius capitis C2 頭最長筋 longissimus capitis D 頭半棘筋 semispinalis capitis 後頭下 ( 後頭骨の下 下顎骨の後面 ) の横断面 C2( 軸椎 Axis) の椎体が映っていることから高さと前後が分かる A は色が微妙でそもそも何なのか分かりにくいが 椎骨棘突起間を結ぶ棘上靱帯 supraspinous lig. が頚椎部で大きく発達した項靱帯である ( 項は うなじ の意 ) 筋群の識別も少し難しいが < 固有筋 intrinsic muscle ほど深層 non-intrinsic muscle ほど浅層にある>という一般的傾向にしたがって 次の三つの層に分けると分かりやすい 1 上肢帯の筋: 僧帽筋 2 固有背筋: 頭板状筋 頭最長筋 頭半棘筋 3 後頭下の固有筋: 上 / 下頭斜筋 obliquus capitis sup./inf. 大/ 小後頭直筋 rectus capitis posterior ma./mi. なお 固有 intrinsic とは以下のような意味である: たとえば背部に着目した場合に 背部に起始と停止がある筋群は背部に固有の筋であり 背部だけでなく肩や上肢にまで伸びている僧帽筋はそうではない 22

7 APPENDIX 以下では図を示さず口頭で問われた問題について簡単に答えていきます Q1: 縦隔 mediastinum とは何か A1: 左右の胸膜と横隔膜によって囲まれる部分で そこにある心臓や気管や食道や血管 神経 など重要な諸構造を集合的に指す Q2: 標本 ( 男性の膀胱周辺を後方からみる ) の主要な構造を答えよ A2: 右図参照 尿管 ureter 精管 ductus deferens 精嚢 seminal gland 射精管 ejaculatory duct 前立腺 prostate などを同定する Q3: 左下肢を挙上するまさにその時に 右下肢で重要な役割を果たす筋とその作用は? A3: 主に中殿筋 gluteus medius( あと小殿筋 gluteus minimus) の外転と内旋 左下肢を挙上するとき 同時に骨盤が傾けられる ( 骨盤左が上かつ前 ) このとき右下肢では 股関節の外転と内旋が起きている 少し分かりにくいと思う このとき地面に対して右下肢は固定されているが 骨盤の傾きにより骨盤と右大腿の位置関係が変わるから 股関節は外転 内旋していることになる 視点を変えて繰り返すと 左下肢の挙上は以下の二つの運動が同時に起こることによって可能になっている ということを理解しよう : 1 主に腸腰筋の作用で左股関節が屈曲 ( 大腿を前方に出す ) 2 主に中殿筋の作用で右股関節が外転 内旋 ( 骨盤が傾く ) Q4: 会陰を外から棒で貫くと何に突き当たるか? 前と後では? 23

A4: 会陰 perineum は恥骨結合 坐骨結節 尾骨でできる菱形のことで 前側を尿生殖三角 後側を肛門三角という 尿生殖三角を貫くと 尿生殖隔膜 urogenital diaphragm( 深会陰横筋など ) 骨盤隔膜 pelvic diaphragm( 肛門挙筋など ) 肛門三角を貫くと 骨盤隔膜 ( 肛門挙筋など ) Q5: 膝蓋腱反射とアキレス腱反射の反射中枢 かかわる筋肉とその支配神経は? A5: 膝蓋腱反射:L4 大腿四頭筋 quadriceps femoris 大腿神経 femoral n. アキレス腱反射:S1 下腿三頭筋 triceps surae 脛骨神経 tibial n. Q6: 直腸に分布する動脈について説明せよ A6: 上は下腸間膜動脈由来 中と下は内腸骨動脈由来である点をおさえる 詳しくは : 腹大動脈 下腸間膜動脈 上直腸動脈 sup. rectal a. 内腸骨動脈 中直腸動脈 内腸骨動脈 内陰部動脈 internal pudendal a. 下直腸動脈 24