アプリケーションノート: ジッタ解析の基礎・サンプリングスコープによるTJ, DJ, RJ 分離解析

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Application Note ジッタ解析の基礎サンプリングスコープによる TJ, DJ, RJ 分離解析 MP2100A BERTWave シリーズ

内容 1. はじめに... 2 2. ジッタとは... 3 3. ジッタ測定の目的... 4 4. ジッタ成分分離の必要性とその定義... 7 4.1 Level1 Jitter... 8 4.2 Level 2 Jitter... 11 5. MP2100A を用いた測定方法... 14 5.1 Level1 Jitter Analysis- Histogram Mode... 15 5.2 Level 1 & Level 2 Jitter Analysis - Pattern Search Mode... 18 6. まとめ... 21

1. はじめに データセンタ内のサーバー等で処理されるデータ量は急激に増加しており チャンネルあたりの伝送速度が 10Gbit/s を超えるハイスピードシリアル伝送の導入が盛んとなっています しかし 伝送速度の高速化と相反して低消費電力化, 低価格化要求が強く ジッタや波形の劣化が問題となっています Data-com, Computing 分野のハイスピードシリアル伝送規格である Fibre Channel や Infiniband, 10GbE, USB, PCI-e などでは ジッタを DJ, RJ 等 その性質毎に分離するジッタ分離解析が求められ サンプリングオシロスコープ (EYE Pattern アナライザ ) や BERT 等の測定器が用いられます 本アプリケーションノートでは 第 2 章から第 4 章において ジッタ解析についての歴史的背景や測定項目の定義などを説明します そして 第 5 章において アンリツ MP2100A のサンプリングスコープ機能による実際の測定手法を解説します 2

2. ジッタとは ジッタは ディジタル信号の時間軸方向の揺らぎです この揺らぎの周期が長周期である時 具体的には変調周波数が 10Hz 以下の場合はワンダと定義し 10 Hz 以上の変調周波数で揺らぎが発生する場合にジッタと定義しています 図 2-1 に理想的な信号と正弦波成分のジッタをもつ信号を示します このように ジッタ成分はディジタル信号の位相マージンを減らす原因となり エラーの発生原因となります そのため 各種デバイスが発生するジッタ量を正確に測定することが システムのエラー発生を回避するために重要です 理想的な信号 揺らぎのある信号 Tj = 1 / fm 正弦波ジッタ成分 ( 揺らぎの周期 Tj, 変調周波数 fm) 図 2-1. ジッタ変調周波数の例 ジッタ量の単位には ps, ns 等の時間単位のほか Unit Interval (UI) が用いられます UI とは 1bit あたりのジッタ 量の比率で Jitter 量を T j [ps], 1bit の間隔を T bit [ps] としたとき 式 2-1) によって算出されます Jitter [UI] = T j T bit 式 2-1) 例えば 10Gbit/s の信号であれば 1bit の間隔は 100ps です この信号に 10ps のジッタが存在すれば ジッタ量は 0.1UI と算出されます 3

3. ジッタ測定の目的 そもそもなぜ ジッタを測定する必要があるのでしょうか その理解の為には アウトプットジッタ ( ジッタジェネレー ション ), ジッタトレランス, ジッタトランスファの 3 者の関係を理解する必要があります 図 3-1 に 単純化した送受信シ ステムの概念図と Receiver 内の Clock Data Recovery のブロック図を示します TP1: Output Jitter TP2: Output Jitter TP3: Jitter Tolerance Transmitter Transmission Line Receiver Data Limit. Data Decision Data1 Amp. Circuit PLL Clock recovery Clock 図 3-1. 単純化された送受信システムと CDR - Output Jitter (Jitter Generation) DUT が発生するジッタ量を Output Jitter (Jitter Generation) と呼びます SONET/SDH 等の Telecom 分野の勧告を制定する ITU-T では デバイスまたは装置が発生するジッタを Jitter Generation と定義しています 伝統的な手法として 専用のジッタ測定器を用いて 被測定物が出力するデータ信号からクロックを抽出し クロック信号から fm 検波方式でジッタ成分を復調し さらに規定の帯域制限を加えます 例えば 9.95328Gbit/s の OC-192/STM-64 では 50kHz to 80MHz の B1 帯域と 4MHz to 80MHz の B2 帯域を測定対象としています ジッタがどんな成分であるかは解析せず 帯域内の総ジッタ量を RMS 及び Peak-to-Peak ジッタ量として計測します Data Signal SONET/SDH Jitter Result Jitter Analyzer - Limited bandwidth(80mhz @10G) - Jitter vs time - Jitter rms or Jitter p-p - Maximum jitter with 60s accumulation 図 3-2. SONET/SDH 向けジッタ測定器 ( 写真はアンリツ MP1590B) 4

一方 Fibre Channel, 10GbE, SATA/SAS, USB, PCIe 等の Data-com/Computing 分野では クロック抽出をせず データ信号のジッタ量を直接計測する手法が用いられます 測定器としては サンプリングオシロスコープ (EYE パターンアナライザ ), リアルタイムオシロスコープ, Bit Error Rate Tester (BERT), タイムインターバルアナライザ等が用いられます 測定器によって測定手法はそれぞれ異なりますが ジッタを DJ, RJ 等 その性質毎に分離して解析する点は共通しています 本アプリケーションノートでは このジッタ分離解析について解説していきます Data Signal Oscilloscope BERT Time Interval Analyzer - Jitter Histogram - BER Bathtub - Jitter Decomposition TJ, DJ, RJ, etc.. 図 3-3. Data-com/Computing 向けジッタ測定器 ( 写真左 : アンリツ MP1800A, 右 : アンリツ MP2100A) - Jitter Tolerance Receiver が Data を受信する際にどれだけジッタに耐えられるか その最大許容値は一般に Jitter Tolerance と定義されています Transmitter が発生する Output Jitter が Receiver の Jitter Tolerance を超えたとき エラーが発生します ジッタは Transmitter デバイスの出力部 ( 図 3-1 の TP1) だけでなく 伝送線路でも発生しますので その総ジッタ量 ( 図 3-1 の TP2) が Receiver の Jitter Tolerance 以下であることが求められます FC や Infiniband, PCIe 等の各種通信規格では Receiver のジッタトレランスを超えないよう Transmitter の Output Jitter の上限値を定めています - Jitter Transfer Clock Data Recovery 回路 (CDR) は Receiver 内の重要なブロックで 受信した Data 信号から PLL 回路により Clock を再生し 再生 Clock で Data を波形整形して出力します Clock の再生過程で Jitter を抑圧しますが その抑圧比を Jitter Transfer 特性と定義しています Jitter Transfer はジッタ変調周波数に対する関数であり 一般的に db 単位で表現します PLL の Loop 帯域によって ある一定のジッタ変調周波数以上のジッタを抑圧し 基本的にジッタ変調周波数が上昇するに従ってその抑圧比も上昇します Jitter Transfer(f) = 20 log ( Jout(f) Jin(f) ) [db] 式 3-1) 5

Jitter Transfer [db] 5 0-5 -10-15 -20 10 100 1000 SJ Freq [khz] 図 3-4. Jitter Transfer 測定結果の一例 Receiver 内で実際の Jitter Tolerance を決めている要素は この CDR であり 突き詰めればその PLL Loop 帯域の設計と Decision Circuit の位相マージンであるといえます 再生された Clock 信号のジッタ変調周波数が PLL の Loop 帯域よりも十分に低ければ そのジッタ量は元の Data 信号と同等のジッタ量であり その揺らぎも Data 信号と同期しているため Decision Circuit (Flip-Flop) の位相マージンを超えることはありません しかし ジッタ変調周波数が PLL の Loop 帯域を超えると Clock 信号と Data 信号のジッタ量には差異が生じ 位相差が生じます その位相差が Decision Circuit の位相マージンを超えたとき エラーが発生します Transmitter の Output Jitter と伝送線路で発生するジッタの総量が Receiver 内の Decision Circuit の位相マージンを超えないよう 設計段階, 製造段階でジッタを測定する必要があります 6

Level 2 Level 1 4. ジッタ成分分離の必要性とその定義 多くの通信システムは その通信品質として 1E-12 以下のエラーレートであることが求められます 従って ジッタ量も 1E-12 以下のエラーレートを保証できる Bit 数に対して規定値以下である必要があります 例えば 10G bit/s の伝送速度でジッタを測定するのであれば 1E+12 Bit を捕捉してその最大値を求める必要があり BERT を用いる場合 100 秒間の測定が必要です サンプリングオシロスコープの場合 サンプリングスピードは一般的には 30k~100ksps 程度であり 仮に 100ksps とすれば 10,000,000 秒間の測定が必要であるため 現実的な計測時間ではありません そこで FC のジッタ測定手法を検討する Fibre Channel MJSQ (Methodologies for Jitter and Signal Quality Specification) の Working Group において 短時間の測定によって得られた少量の測定サンプルから BER:1E-12 相当のジッタを予測する手法が考案されました それが DJ (Deterministic Jitter) と RJ (Random Jitter) へのジッタ成分分離解析です そして この分離解析には 2 段階の Level があり Level2 Jitter 解析においては DJ はさらに詳細に分離されます TJ Total RJ Random DJ Deterministic PJ Periodic DDJ Data Dependent BUJ Bounded Uncorrelated DCD ISI Duty Cycle Inter Symbol 図 4-1. ジッタの構成要素と解析レベル DDPWS Data Dependent - Pulse Width Shrinkage 7

4.1 Level1 Jitter Level1 Jitter 解析は ジッタの成分を Random Jitter (RJ) と Deterministic Jitter (DJ) とに分離し TJ (Total Jitter) に再合成する手法です 目的は Dual Dirac と呼ばれる簡素化されたジッタモデルに当てはめた TJ, DJ, RJ 値を算出する事です 上述のように短時間に規定の BER 相当のジッタ量 ( 多くの場合 1E-12) を推定する事ができます これらの測定結果は Effective Jitter ともよばれ Fibre Channel 等の通信規格に対する測定結果の統一性を重視しており 必ずしも物理的なジッタ量の真値とは一致しません 以下に TJ, RJ, DJ を詳しく説明します - TJ (Total Jitter) TJ は 文字通りジッタの総量を示しており 複数のジッタ成分から複雑に構成されています 全てのジッタ成分を完全にモデル化することは不可能ですので MJSQ Working Group において TJ を簡略化された Dirac 関数とガウス関数の合成として扱う手法が考案されました TJ(BER) = N(BER) RJ + DJ 式 4-1) 式 4-1) は TJ を構成する成分が ガウス関数を元にした RJ 成分と Dirac 関数を元にした DJ 成分から構成されていること示しています RJ には rms 値, DJ には Peak-to-peak 値が用いられます また RJ の係数 N は BER の関数となっており 推定する BER によってその値は異なります 多くの場合 BER:1E-12 に相当する N=14.069 が用いられます Infiniband で規定されている J2, J9 も TJ の一種で それぞれ J2:BER= 2.5E-3, J9:BER=2.5E-10 相当のジッタ量を意味します 求められた推定 TJ は,BER Bathtub Curve として可視化されます BER Bathtub Curve とは アイパターン波形の評価方法の 1 つとして 横軸を時間, 縦軸をエラー発生確率 ( 累積確率分布 ) として測定結果を表示するグラフです グラフの左右の端は アイパターン波形のクロスポイントの位置であり エラー発生確率が大きくなります グラフの中央部は アイパターン波形の中央部であり エラー発生確率が小さくなります このグラフの形状から Bathtub Curve と呼びます 図 4-2 は Bathtub Curve の表示例で Fibre Channel や InfiniBand 規格で定められている J2(99% ジッタ ), J9 や TJ (1E 12) などを示しています 図 4-2. BER Bathtub Curve と EYE Pattern の関係 8

- RJ (Random Jitter) 熱雑音などの外的要因によって発生するジッタです Peak-to-Peak は無限に広がる性質をもっており その広がりは正規分布に近似しています そのため 理論的には常に一定量である標準偏差 (σ) を用いて rms 単位で表現されるのが一般的です 式 4-1) において RJ 項には BER の関数である係数 N がかけられていました この N を乗算するという事は rms 値である RJ を peak-to-peak 値に変換するという事でもあります RJ の Peak-to-Peak 値は式 4-2) 及び 4-3) に示される通り BER(Bit 遷移数 ) の関数であり 推定 BER が小さくなるほどその値が大きくなる性質を利用しています RJpp(BER) = N(BER) RJrms = 2 Q(BER) RJrms 式 4-2) Q(x) 2 erf 1 [1 1 BER (x)] ρt 式 4-3) 上記式を暗記する必要はありませんが RJpp の値が BER の関数である事 そして RJpp が RJrms に対して BER に依存した一定の倍率を持つことの理解が必要です 表 4-1 に 式 4-2) 及び 4-3) から得られた BER に対する RJpp と RJrms の倍率を示します この既知の倍率を用いれば 取得した RJrms の値から BER=1E-12 相当の RJpp の値を推測するには RJrms 値を 14.069 倍すればよい事が分かります 表 4-1. RJrms に対する RJpp の倍率 推定 BER 倍率 : N = 2 Q(BER) Note 2.5E-3 5.614 = 2 x 2.807 J2 相当 1E-7 10.339 = 2 x 5.1695 1E-9 11.996 = 2 x 5.998 2.5E-10 12.438 = 2 x 6.219 J9 相当 1E-11 13.412 = 2 x 6.706 1E-12 14.069 = 2 x 7.0345 1E-13 14.698 = 2 x 7.349 1E-15 15.883 = 2 x 7.9415 RJ Histogram RJ-p @ BER 1E-12 = 7.0345 x RJrms = RJrms RJ+p @ BER 1E-12 = 7.0345 x RJrms Eye Pattern RJp-p @ BER 1E-12 = 14.069 x RJrms 図 4-3. RJ を含む波形の代表例と RJ のジッタヒストグラム 9

- DJ (Deterministic Jitter) RJ と対比して その広がりが有限であるジッタを DJ と呼びます DJ は 実際には後述する様々な成分の 集合体であり その分布は複雑な形状を示します しかし Level1 Jitter 解析では Dirac 関数を用いて一 対の DJ 成分に単純化する Dual Dirac 法が用いられます つまり TJ の項でも説明しましたが ジッタを構 成するのは一定かつ 1 対の DJ 成分と 正規分布する RJ 成分のみであるとする考え方です Dual Dirac 分布は 2 つの正規分布を合成した式 4-4) で表され グラフにすると図 4-4 のように表されます PDF = 1 2πσ [exp { (x μ L )2 2σ 2 } + exp { (x μ R )2 2σ 2 }] 式 4-4) DJp-p RJrms 図 4-4. DJ の代表波形と Histogram グラフの μ L と μ R が DJ 成分の Peak-to-Peak を表す Dual Dirac 線で RJ 成分の標準偏差 σ が 左右一対の Dirac 線に重畳している様子が分かります 前述のとおり Dual Dirac 法による DJ 解析値は Effective Jitter とも呼ばれ 複雑な DJ 成分を 1 対の DJ モデルにフィットさせたもので 物理的な真の DJ 値よりも小さく算出される傾向にある事に注意してください 10

4.2 Level 2 Jitter Level1 Jitter 解析では 通信規格に対する測定の統一性を重視して 複雑な DJ 成分を Dual Dirac という単純化されたモデルに当てはめていました しかし一方で DJ が実際にはどのような成分で構成されているのか詳細に解析し その発生原因は何か そして どうしたらそのジッタを抑圧できるかを検討する試みがなされました それが Level2 Jitter 解析 (Level2 DJ 解析 ) です 以下に Level2 DJ 解析で分離解析されるジッタ成分を説明します - PJ (Periodic Jitter) 文字通り周期的に発生するジッタです 代表例としては スイッチング電源のリップルや PLL 回路の発振等によって発生する Sinusoidal Jitter (SJ) があります SJ は一般的な Signal Generator でも発生可能ですので エンジニアにとっては馴染み深いものでしょう ヒストグラムは 両端にピークのある特徴的な形状になります SJ はデータ信号に対して同期していない データ非相関ジッタであると分類される場合もあります 図 4-5. SJ を含む波形の代表例とそのジッタヒストグラム 一方で データに相関がある PJ 成分も存在します MUX (Multiplexer) 回路の出力等に多く見られる Half Period Jitter (HPJ) がその代表例です 図 4-6 に示す通り 隣り合う EYE の幅が規則的に変化する場 合 Data Pattern と同期して 2 ビット毎にジッタが発生します 図 4-6. Half Period Jitter を含む波形の代表例とそのジッタヒストグラム 11

- BUJ (Bounded Uncorrelated Jitter) 近接する信号ラインからのクロストークなどの外的要因によって発生するジッタです ランダムジッタのようなランダム性をもちますが 有限な広がりになるため p-p で表現されます 近年の高速伝送システムでは QSFP+ モジュールによる 40GbE (4x10G) 伝送, CXP モジュールによる 100GbE (10x10G) 伝送, InfiniBand, PCIe, FibreChannel など 帯域幅の確保のために Bit Rate の高速化と共にパラレル化が進んでいます バックプレーンや Active Optical Cable (AOC) におけるクロストークによって発生する BUJ の評価は 重要度が増しています ジッタ測定器としては BUJ を DJ の一部として確実に捕捉し BUJ の増加が DJ の測定結果に反映される性能が求められます 一部のサンプリングオシロスコープでは BUJ を増加させても全く DJ 値に反映されない測定器もありますので 注意が必要です アンリツの MP2100A, MP1800A は BUJ の増加に従って DJ 測定値に反映されるため 正確な測定が可能です 図 4-7. BUJ を含む波形の代表例とそのジッタヒストグラム - DDJ (Data Dependent Jitter) 伝送線路の帯域不足や反射の影響等により Data Pattern に依存して発生するジッタです 図 4-8 に示す通り データに相関性のない成分を除去した上での 基準タイミングに対する各エッジの時間差を t n としたとき 式 4-5) から導出される Peak-to-Peak 値です DDJ はさらに DCD, ISI, DDPWS の 3 種に分けられます DDJ = max( t1, t2,, tn) min( t1, t2,, tn) 式 4-5) T t1 t2 t3 t4 t5 t6 t7 Jitter NRZ Data Signal Ideal Timing T=1UI 図 4-8. DDJ の概念 t8 図 4-9. DDJ, ISI, DDPWS を含む波形の代表例とそのジッタヒストグラム 12

- DCD (Duty Cycle Distortion) 送受信回路の電圧閾値のズレなどで発生します Logic: Hi のパルス幅と Low のパルス幅の差として定義されます Data Pattern に依存して発生する為 DDJ の一部に分類されます 図 4-10 には 信号の GND レベル (EYE Pattern に示した赤枠の部分 ) をジッタ測定点 (Threshold Level) とした場合のヒストグラムを示します 信号のクロスポイント部分を Threshold Level とした場合には DCD は無視されます GND Cross Point 図 4-10. DCD を含む波形の代表例とそのジッタヒストグラム - ISI (Inter Symbol Interference) 伝送路の帯域不足やインピーダンスミスマッチによる反射などでおきる現象で データに相関性のない成分を除去した上での 最も早い立ち上がりエッジと最も遅い立ち上がりエッジの差 もしくは最も早い立ち下がりエッジと最も遅い立ち下がりエッジの差として定義されます - DDPWS (Data Dependent Pulse Width Shrinkage) 伝送線路の帯域不足や反射の影響等により発生するパルス幅の減少を表します 図 4-8 及び式 4-6) に示す通り データに相関性のない成分を除去した上での 理想的な 1bit 幅と最小パルス幅との時間差として定義されます DDPWS = T min(t2 t1, t3 t2,..... tn + 1 tn) 式 4-6) T t1 t2 t3 t4 t5 t6 t7 t8 Ideal Timing T=1UI 図 4-11. DDPWS の概念 13

5. MP2100A を用いた測定方法 ここでは MP2100A BERTWave 用 Jitter Analysis Software, MX210001A を用いてジッタ解析する際の 実際の測定手順を解説します 前述のとおり ジッタの解析レベルには Level 1 及び Level 2 がありますが MX210001A では Level1 Jitter 解析に対応した Histogram Mode, Level1 及び Level 2 Jitter 解析の双方に対応した Pattern Search Mode があります 以下に それぞれのモード別に測定手順を説明します なお 測定器の残留ジッタの影響を回避する方法が ジッタ測定時の残留ジッタ補正法 ( テクニカルノート No. MP2100A-J-E-2) に記載されていますので 参照してください [ 測定系 ] 10.3125G の SFP+ Optical Transmitter を例に 図 5-1 に MP2100A を用いた測定系を示します DUT Sync. Out => Trigger Clock PPG DATA Out, XData Out DUT DATA Out => O/E In (Scope B In) 図 5-1. MP2100A を用いた測定系 1) PPG の Differential Data 出力信号を DUT TX に供給し DUT TX から出力された Optical Data 信号を MP2100A の O/E Input (CH_B Input) に入力します O/E Input の推奨入力 Power は -5dBm to -9dBm (1310nm, Average) です 過大入力による O/E コンバータの損傷に注意してください 2) MP2100A の Sync. Out と Trigger Clock In を接続します この例では サンプリングスコープを駆動するための Trigger Clock には PPG の Sync. Clock Output を用いますが Recovered Clock を用いることも可能です 14

5.1 Level1 Jitter Analysis- Histogram Mode MX210001A Jitter Analysis Software の Histogram Mode では 文字どおり EYE Pattern のクロスポイント部分のヒストグラムを元に Level1 Jitter を解析します PRBS31 を含む任意の Data Pattern を測定する事ができ さらにジッタ測定と同時に EYE Mask 試験や EYE Amplitude 等の EYE Pattern 解析も実行可能です [ ジッタ測定項目 ] Measurement Item 単位 ( 切替可能 ) Note TJ (BER= 1E-12) psp-p muip-p BER=1E-12 相当の TJ TJ (user specified BER) psp-p muip-p User 指定の BER 相当の TJ DJ (d-d) psp-p muip-p Dual Dirac 法に基づく DJ RJ (d-d) psrms muirms Dual Dirac 法に基づく RJ J2 psp-p muip-p BER=2.5E-3 相当の TJ J9 psp-p muip-p BER=2.5E-10 相当の TJ EYE Opening psp-p muip-p 1Bit 内のジッタの無い EYE 開口 [ 手順 ] MP2100A の設定は Initialize 後の初期設定状態からの操作を前提とします Initialize を実行するには System Menu を開き Initialize をクリックしてください 図 5-2. MP2100A の Initialize 1) Top Menu から PPG/ED CH1 を選択します PPG を Bitrate:10.3125Gbit/s, Test Pattern:PRBS 31, Data Output Amplitude:0.25V に設定し PPG Data 出力を ON にします 信号レベル等は DUT に合わせて適切に設定してください 2) Top Menu から EYE/Pulse Scope を選択し Scope CH_A を OFF に, CH_B を ON に設定します Auto Scale を実行し EYE Pattern が画面中央に表示さていることを確認します 図 5-3. PPG 及び Scope の設定 3) Scope の Measure タブから Amplitude/Time&Mask モードに設定し Mask および Mask Margin を表示します 15

4) Top Menu から Jitter を選択し Jitter 測定画面の Measure ダイアログを開き Algorithm タブを開くことで 測定モードの設定が Histogram モードであることが確認できます (Initialize 後の初期設定は Histogram モードです ) 5) Start/Stop ボタンを押下すると Histogram モードによるジッタ測定結果が表示されます EYE Pattern の Histogram からジッタを解析する為 取得サンプル数が多くなるに従ってジッタ解析結果が収束します DUT の状態にも依存しますが 安定した結果を得るには 1M サンプル程度の取得が目安となります 図 5-4. Histogram Mode の解析画面 16

[ 測定結果 ] ジッタ解析結果は 数値, TJ ヒストグラム, BER Bathtub として表示されます EYE Mask, EYE Pattern 測定結果も同時に表示されます 図 5-5 に 2 種類の DUT を Histogram 法でジッタ解析した結果を示します TJ Histogram グラフでは 実測 Histogram 及び Dual Dirac 法による DJ, RJ 分離後の推定 TJ Histogram が表示されます 2 本の赤縦線が Dirac 線を示しており その時間幅が推定 DJ(d-d) の Peak-to-Peak 値を示します 推定 TJ Histogram は, ジッタの成分を単純化された 1 対の DJ 成分と単一の RJ 成分に分離し 再合成したものですので 二つの Peak に理想的な正規分布が重畳されたように観測されます BER Bathtub グラフでは 推定 TJ Histogram に基づく BER Bathtub Curve が表示されます また BER=1E-12 相当のポイントでは EYE Opening の時間幅が表示されます ここで 図 5-5 の二つのジッタ解析結果を比べると DUT_A( 左側 ) の結果と比較して DUT_B( 右側 ) の DJ, RJ が大きい事が グラフ及び数値結果から分かります また DJ(d-d) は 9.15psp-p の差ですが 推定 TJ は J2 (BER:2.5E-3), J9(BER:2.5E-10), TJ(BER:1E-12) の順に大きく差が開いていく事が分かります これは 4.1 項で説明したとおり RJ が無限の広がりを持っており 推定 BER が小さくなるほどジッタ量が大きくなるためです 低エラーレートの実現には RJ の低減が重要である事が分かります 推定 TJ Histogram 実測 Histogram Dual Dirac 線 DJ (d-d) σ = RJ (d-d) 図 5-5. Histogram 法による解析結果の例 ( 左 :DUT_A, 右 :DUT_B) 17

Level 2 Level 1 5.2 Level 1 & Level 2 Jitter Analysis - Pattern Search Mode MX210001A Jitter Analysis Software の Pattern Search Mode では Level1 及び Level2 ジッタ解析が可能です PRBS15 相当の Data Length に対応しており 入力 Data Pattern に同期したジッタ時系列データを取得する事により DDJ や DDPWS 等の詳細なジッタ成分を高速解析します 詳細なジッタ解析により ジッタ発生の原因究明に役立てることができます [ ジッタ測定項目 ] Measurement Item 単位 ( 切替可能 ) Note TJ (BER= 1E-12) psp-p muip-p BER=1E-12 相当の TJ TJ (user specified BER) psp-p muip-p User 指定の BER 相当の TJ DJ (d-d) psp-p muip-p Dual Dirac 法に基づく DJ RJ (d-d) Psrms muirms Dual Dirac 法に基づく RJ J2 psp-p muip-p BER=2.5E-3 相当の TJ J9 psp-p muip-p BER=2.5E-10 相当の TJ EYE Opening psp-p muip-p 1Bit 内のジッタの無い EYE 開口 DDPWS Ps mui Data Dependent Pulse Width Shrinkage RJ(rms)* Psrms muirms Averaged Spectrum 法による RJ* PJ(p-p) psp-p muip-p Periodic Jitter DDJ(p-p) psp-p muip-p Data Dependent Jitter DCD Ps mui Duty Cycle Distortion ISI(p-p) psp-p muip-p Inter Symbol Interference *: RJ(rms) は アンリツ独自の Averaged Spectrum 法により算出される値で Dual Dirac 法に基づく推定 RJ とは異なり より物理的な真値に近い RJ を示します Averaged Spectrum 法とは 取得したジッタ時系列データを FFT 演算する事により得られたジッタスペクトルを複数回平均化する事により ジッタを PJ 成分と RJ 成分とに分離する手法です 18

[ 手順 ] 5.1 項での Histogram Mode による測定後の状態を前提とします 1) Top Menu から PPG/ED CH1 を選択します PPG を Test Pattern: PRBS 7 に設定します 2) Top Menu から EYE/Pulse Scope を選択し Time ダイアログを押下します Scale/Offset タブ内の Pattern Length - Tracking を On に設定します この設定により Scope 及び Jitter Analysis Software の Pattern Length 設定が PPG のパターン設定に自動追従します PPG が PRBS31 に設定されている場合は自動追従できません 図 5-6. Pattern Length Tracking 3) Top Menu から Jitter を選択し Measure ダイアログを開きます Algorithm タブの Measurement Algorithm から Pattern Search を選択します 4) Start/Stop ボタンを押下します Pattern Search Mode によるジッタ測定結果が表示されます 図 5-7. Pattern Search Mode の解析画面 19

[ 測定結果 ] ジッタ解析結果は 数値, DDJ vs Bit, 各種ヒストグラム, BER Bathtub として表示されます Pattern Search Mode では EYE Mask, EYE Pattern 測定結果は同時に表示されません DDJ vs Bit グラフを拡大させると Data パターンに同期したジッタの増減を観測する事が出来ます 画面の赤印は理想的なタイミングに対して最も遅れて遷移しているエッジ ( 時間遅れ方向に最もジッタが大きいエッジ ) を示しており 青印は 最も進んで遷移しているエッジ ( 時間進み方向に最もジッタが大きいエッジ ) を示しています データパタンと比較すると 赤印はデータパタンが 1010... と短い周期で繰り返している部分で発生していることがわかります 繰り返し周期が短いということは 信号の周波数成分が高く DUT の高周波特性の影響が出て移送遅れが発生しているということです 逆に 青印はデータパタンが 000000111111... と繰返し周期が長く 信号の周波数成分が低いため 比較的位相が進んでいることがわかります この結果から DUT の伝送帯域と DDJ(ISI, DDPWS) の間には 相関がある事が分かります 図 5-8. DDJ vs Bit の拡大画面 図 5-9. 数値結果 20

6. まとめ Data-com, Computing 分野のハイスピードシリアル伝送を対象に ジッタ解析の定義, 解析手法を解説しました Fibre Channel や Infiniband, PCI-e など 各種通信規格で解析が求められるジッタのパラメータは複雑さを増しています また Bit-rate の高速化と低消費電力化が同時に進行しているため デバイスの動作マージンは縮小傾向にあり ジッタ解析の重要度が増しています アウトプットジッタ ( ジッタジェネレーション ) の解析には TJ, DJ, RJ を求める Level1 解析と 更に詳細に DJ 成分を分離する Level2 解析があります Level1 解析には EYE Mask 解析を同時に実行できる Histogram を用いた方法が測定の効率化に有効です また Level2 解析には Data Pattern に同期してジッタを解析する方法により DDJ や DDPWS 等の より詳細なジッタ解析が可能となります MP2100A は 1 台にサンプリングスコープ, BERT, 光インターフェースを搭載する All-in-One-Box テスターです さらに MX210001A Jitter Analysis Software の使用により EYE Pattern, EYE Mask, BER, ジッタ分離解析等の様々な測定を 1 台で実現し 測定効率と設備コストの改善に貢献します 参考文献 : - アンリツ株式会社, テクニカルノート No. MP2100A-J-E-2 ジッタ測定時の残留ジッタ補正法 - アンリツ株式会社, アプリケーションノート No. MP2100A-J-F-2 EYE Pattern 解析の基礎 - アンリツ株式会社, テクニカルノート No. MP2100A-J-E-1 高精度 EYE パターン解析の実現 - アンリツ株式会社, アプリケーションノート No. MP1800A-Signal_Integrity-J-F-1 28 Gbit/s 高速ディジタル信号におけるシグナルインテグリティ解析 - Wolfgang Maichen, Digital Timing Measurements From Scopes And Probes To Timing And Jitter, Springer, ISBN-10 0-387-31418-0 21

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