第 29 章工業団地概要 : バタム島 1. 地域概要 (1) 概要 1インドネシア国内における経済的地位バタム島は リアウ諸島州を構成する島の 1 つで スマトラ島の西海岸中央付近 また シンガポールの南約 20km に位置する バタムの 2010 年の名目 GDP は 47.3 兆ルピア インドネシア全体の 1% 程度の規模である シンガポールに隣接する地理的優位性から バタム島はシンガポールへの輸出加工拠点として発展してきた 1971 年に工業地域に指定され 当初 主に石油 ガス関連産業を中心に開発が始まった 以後 1978 年にはバタム島全域が保税地区に 2007 年には自由貿易地域 (Free Trade Zone, FTZ) に指定され 輸出型産業向けの恩典を用意し シンガポールや日本企業をはじめとする外資企業の誘致を進めてきた インドネシア政府は 2006 年にバタム島および近隣のビンタン島 カリムン島の経済特区化推進についてシンガポール政府と協定を結んでいる 投資手続の簡素化などで協力することを通じ シンガポールの資金や技術の同地域への更なる誘致を狙うもので シンガポールにとっては 近接するバタム島でインドネシアの安価な労働力を活用し 競争力を高めることを狙いの一つとしている バタム島は 輸出産業にとっては税務上の恩典などがあり 進出のメリットがある 一方で バタム島から他の関税地域に商品を販売する場合には付加価値税等を納付する必要があり 自由貿易地域としてのメリットは少ない ジャカルタを中心に勢いを増す内需をターゲットとする業態にとっては 消費地から遠いこともあり 現在のところはまだ魅力は少ないと考えられる 朝市の様子 229
図表 29-1 バタム島 ( 地図 ) バタム島 ( 出所 ) 白地図 世界地図 日本地図が無料 より作成 2 工業団地 日系企業進出動向 2011 年 6 月までのバタム島への FDI 総額 ( 実行ベース ) は約 60 億ドル 進出外資企業数は約 1,300 社である 代表的な工業団地としては 島中央部に位置する Batamindo Industrial Park は シンガポールの政府系企業セムコープ社が開発 運営する工業団地で 進出企業数でバタム島内最大級であり 日系企業も数多く進出している バタム島に進出している日本企業の業種では 電気 電子部品製造が多く シンガポールを経由して日本やその他の国々に輸出している 230
(2) 進出日系企業から見た事業 生活環境やコスト 図表 29-2 は バタム島に進出した場合のメリットと留意点を整理したものである 図表 29-2 バタム島に進出した場合のメリットと留意点 メリット 留意点 輸出産業向けに輸入関税や付加価値税免除など恩典が用意されている シンガポールから 20kmと距離が近く フェリーでも 30 分 ~1 時間程度 シンガポールからの通勤は難しいが 家族をシンガポールに居住させることができる 経済特区としての恩典は輸出産業向けであり 島内で製品等を販売する際には恩典が適用されない インドネシアの内需は首都ジャカルタを中心として拡大しており ジャカルタから距離のあるバタム島で内需向けの事業展開は難しい 日本人学校はない ( 出所 )2011 年 12 月の現地調査より作成 バタム島は 西隣のカリムン島 東隣のビンタン島とともに 2007 年 8 月より自由貿易地域 (FTZ) に指定されている FTZ の開発 管理は バタムフリーゾーン監督庁 (Batam Indonesia Free Zone Authority, BIFZA) が行っている バタム島北部のフェリーターミナル バタムセンターに近接するスマトラ プロモーション センター ビルには BIFZA を始め BKPM や財務省 法務 人権省や自治体など関連施設が集められ 投資手続や輸出入手続のワンストップ サービスを提供し 手続の簡素化 短縮を図っている また FTZ では 輸入関税や輸入税の免除の恩典が用意されている ( 詳細は第 9 章 主要インセンティブ を参照 ) 以下では インフラ 物流 労働事情 生活環境について補足する 1インフラ 物流 電力 バタム島の電力供給は比較的安定しており 停電はあまり発生していない ただし 電圧は不安定で そのまま精密機械を利用するには無理がある また 電気が高いとの声が多く聞かれた 水道 島内に大きな川や湖など天然の水源がないため 大規模な貯水池を作り 水道水を供給している バタム島内で現在稼動している貯水池は 6 ヶ所で 総貯水量は約 1 億 m 3 供給能力は 1 秒あたり 2,640 リットルである 道路 道路事情では ジャカルタのような渋滞が発生することはなく 車での移動はスムーズである バタム島自体がそれほど大きくなく 各工業団地から港や空港までの所要時間も 30 分から 1 時間程度である 港湾 港湾については 4 つの商港があり その中で最大の Batu Ampar 港は 水深 6~12m 積載重量トン数 3.5 万トンのコンテナ船が入港可能である 231
図表 29-3 バタム島の商港 Batu Ampar 港 Sekupang 港 Kabil 港 Kabil Citranusa 港 対象船舶 (DWT) 35,000 10,000 35,000 30,000 埠頭総延長 (m) 1,250 177 420 176 水深 (m) 6~12 9 12 10 野積場 ( m2 ) 214,000 116,100 100,000 200,000 港湾倉庫 ( m2 ) 19,500 42,240 1,890 10,000 ( 出所 )Batam Indonesia Free Zone Authority(BIFZA) より作成 これらの商港の他に シンガポールやマレーシア 他の国内港とをつなぐフェリーターミナルが 6 ヶ所ある (1ヵ所は商港と併設) 空港 バタム島には Hang Nadim 国際空港があり ジャカルタを始めとする国内各都市との間で航空便が就航している ジャカルタ / バタム便は所要約 1 時間半で毎日数便が運航されている 日本との直行便はなく 国際便としては マレーシア航空と系列格安航空会社のファイアフライ航空がクアラルンプール近郊のセバンとの間に共同運航便を運航している 2 労働事情 人材 外資企業が多く進出しており 職を求めてバタム島に移住する者も多く バタム島の人口は拡大している BIFZA の資料によると バタム島の人口は 2003 年の 56 万人に対し 2011 年 6 月時点では 110 万人を超えており 7 年で倍近くに増えている 労働者採用にあたっても 一般ワーカーについては インドネシアの他の地域同様 特に困難となることはなく 買い手市場 である そのため 採用にあたっては 正社員 ではなく 契約社員 として最低賃金近辺での採用が一般的である 離職率も低い インドネシアでは 採用後 契約社員としての契約更新は 1 回のみ認められており さらに雇用を継続するためには正社員として契約しなければならない その場合 退職金額の増大など 負担が拡大するため 正社員としての再雇用は特に優秀な人材など最低限に抑えるケースが多い スタッフや技術者の採用についても特に問題はない ワーカーとは違い 当初から正社員として直接雇用するケースが多い 技術者については 離職率は比較的高い 賃金 人件費の上昇はバタム島でも同様である バタム島での 2012 年の最低賃金は 140 万ルピアとなり 2011 年の 118 万ルピアから約 20% の上昇となった なお バタムの最低賃金設定にあたっては 2011 年 11 月に大幅な引き上げを求める労働者により大規模なデモが発生 警官隊との衝突で負傷者を出すとともに 操業停止を余儀なくされた企業も出ている 232
3 生活環境 食事 インドネシア資本の大型スーパーマーケットやカルフール コンビニエンスストアも進出している 外食でも 和食レストランが 5~6 軒あり その他 世界的に有名なフライドチキンの店舗も複数出店している 一般 ゴルフ場も 6 ヵ所あり 単身者にとっては比較的住みやすいとの声もある ただし インターナショナルスクールはあるものの 日本人学校はなく 医療レベルも高いとは言えないことなどから 家族と共にバタム島に赴任する例は多くはないようである シンガポールがすぐ近くであることから 家族はシンガポールに居住し 日本人駐在員のみ平日はバタム島に居住 週末にシンガポールに戻って家族と過ごすケースが多い 図表 29-4 バタム島の工業団地 ( 出所 )Batam Indonesia Free Zone Authority Batam Industrial Estate Profile 233
2. 主要工業団地 (1) Batamindo Industrial Park (BATAMINDO) Jl. Rasamala No. 1, Muka Kuning, Batam 29435-Indonesia 事業主 Gallant Venture Pte Ltd PT. Verizon Indonesia Andy Hauw 電話番号 / FAX +62 770 611 222/ +62 770 611 432 andyhauw@bataminco.co.id Hang Nadim 空港まで車で20 分 Batu Ampar 港まで車で30 分 Batam Centerフェリーターミナルまで車で30 分 1990 年 320ha 管理棟 銀行 郵便局 レストラン / 食堂 モスク他 電力 115MW 非常用自家発電 10MW 12,000m3 下水 10,000m3 / 日 通信 2,000 回線 土地 交渉可 SGD8.00~12.00/ m2 / 月 SGD0.0916~1.20/ m2 / 月 通信 Rp300,000/ 回線 SGD1.70/ m3 インターネット 64Kbps:SGD570 128Kbps:SGD990 192Kbps:SGD1,400 256Kbps:SGD1,650 進出企業 住友電装 パトライト エクセル電子 シマノ 他計 74 社 バタミンド工業団地の風景 バタミンド工業団地の風景 バタミンド工業団地の風景 234
(2) Citra Buana Centre Park I Jl. Budi Kemuliaan, Seraya, Pulau Batam-Indonesia 事業主 PT. Citra Buana Prakarsa David Ricardo 電話番号 / FAX +62 778 428 500/ +62 778 430 005 david@citrabuanagroup.com Hang Nadim 空港まで車で30 分 Batam Centerフェリーターミナルまで車で20 分 1994 年 10ha フードセンター ミニマート プレイルーム他 SGD3.5/ m2 Rp350,000 電力 Rp985/kwh 進出企業 NOK 他計 65 社 (3) Puri Industrial Park 2000 Puri Industrial Park 2000, Block B,C,D,E, Jl. Engku Putri, Batam Center, Kelurahan Baloi Permai, Batam Kota, Batam-Indonesia 事業主 PT. Teluk Pantaian Indah Mr. Jasman Ang 電話番号 / FAX +62 778 469 000/ +62 778 469 900 jasman.ang@gmail.com Hang Nadim 空港まで車で20 分 Batam Centerフェリーターミナルまで車で4 分 2002 年 30ha 食堂 ミニマーケット 寮 フードコート 土地 SGD75/ m2 SGD4.25/ m2 / 月 Rp700/ 月 通信 Rp1,064/ 月 (PT. PLN Batam) Rp.10,000/ m3 (PT. ATB) 進出企業 パナソニックエレクトロニックデバイス他計 32 社 235
(4) Tunas Industrial Estate Jl. Engku Putri Blok 1A No.10, Kawasan Industri Tunas Batam-Indonesia Thomas 電話番号 / FAX +62 778 471 818, 471 222/ +62 778 471 819 sales@tritunas.net Hang Nadim 空港まで車で10 分 Batu Ampar 港まで車で30 分 Batam Centerフェリーターミナルまで車で5 分 2001 年 38ha 食堂 ミニマーケット ATM 銀行他 土地 SGD100/ m2 / 月 SGD3.50/ m2 / 月 SGD1,250/ m2 / 月 電力 Rp1,075/kwh 通信 Rp750,000/ 回線 Rp10,000/ m3 進出企業 計 37 社 (5) Union Industrial Park Blok AA No.7-8, Union Industrial Park, Batu Ampar, Batam-Island Indonesia 事業主 PT. Union Batam Abadi Arianto 電話番号 / FAX +62 778 413 188/ +62 778 413 996 unionbatam@hotmail.com Hang Nadim 空港まで車で45 分 Batam Centerフェリーターミナルまで車で25 分 2001 年 20ha ミニマーケット 土地 SGD120~170/ m2 / 月 SGD2~4/ m2 / 月 Rp600~1,000/ m2 / 月 電力 Rp1,065/kwh Rp10,500/ m3 進出企業 計 33 社 236