第 31 回日本道路会議 フランスの有料道路の経験 2015 年 10 月 Alain Estiot 元スペシャル プロジェクト担当取締役コフィルート (Cofiroute)- バンシ オートルート (Vinci AUTOROUTES) 1
バンシ コンセッションズ (Vinci Concessions) フランスの料金徴収コンセッション事業 料率 課題と今後の見通し 2
自動車道路 空港 駐車場 鉄道 競技場 その他 バンシ オートルート (VINCI Autoroutes) バンシ ハイウェイ (VINCI Highways) バンシ エアポート (VINCI Airports) バンシ パーク (VINCI Park) バンシ レールウェイ (VINCI Railways) バンシ スタジアム (VINCI Stadium) ASF コフィルート (COFIROUTE) エスコタ (ESCOTA) アルクール (ARCOUR) ドイツギリシャロシアスロバキア英国 フランスカンボジアポルトガルチリその他 14 カ国 500 都市 南欧大西洋高速鉄道 (SEA) ローヌエクスプレス (RHÔNEXPRESS) リエフケンスフク (LIEFKENSHOEK) サインレール (SYNERAIL) スタッド ド フランス (STADE DE FRANCE) アリアンツ リビエラ (ALLIANZ RIVIERA) MM アリーナ (MMARENA) ニュー ボルドー スタジアムロンドン オリンピック スタジアム エーヌ県とマーズ川のダムグッサンビル市街照明ルーアン市街照明 売上高 56 億 1,600 万ユーロ 過去 10 年間の獲得プロジェクト 32 件 従業員 18,267 人 主な統計バンシ コンセッションズ (VINCI Concessions) 純利益 9 億 3,400 万ユーロ 負債 200 億 1,000 万ユーロ EBITDA35 億 3,300 万ユーロ EBITDA 利益率 60% 2005-2013 年の新規契約 11 億 4,500 万ユーロ 2007 年から 2014 年までの建設工事収入 142 億 6,100 万ユーロ 女性 36.4% 無期限雇用契約 94% 3
バンシ モーターウェイズ (VINCI Motorways) コンセッション事業者 ASF コフィルート (COFIROUTE) エスコタ (ESCOTA) アルクール (ARCOUR) バンシ オートルート ( フランス ) 4,368 km (VINCI Autoroutes (France)) 徴収件数 2,260,000 回 / 日収入 47 億 5,500 万ユーロ EBITDA33 億 9,000 万ユーロ負債 16,807 ユーロ バンシ ハイウェイ - 1,000 km (VINCI Highways) ドイツ ギリシャ ロシア スロバキア 英国 米国 カナダ ジャマイカ 4
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フランスの有料高速道路の歴史 コンセッション契約は政府と民間事業者あるいは公営事業者の長期契約である コンセッション事業者は 建設 交通 運営 保守管理のリスクのほとんどを担う フランスでは 1955 年 4 月の設立法で開始された 最初の 1 キロと道路網の初期の拡大があったのは 60 年代と 70 年代初めであった 70 年代のオイルショックが混乱をもたらしたが 道路システムの発展が阻害されることはなかった 90 年代に入り 成熟中の道路網を担保に道路網を完成する大規模な投資計画が実施され 総延長は 70 年代末の 3,733km から 1999 年には 7,365km に達した 総延長の延伸には公的資金は投入されなかった この方法は アドスマン (Adossement) ( プール制 ) と呼ばれている 1961 年 1969 年 1979 年 1985 年 1999 年 48.5km 1,010km 3,733km 5,515 km 7,365km 6
株主の変化 1960 1970 年 : すべてのコンセッション事業者は国有であった 1970 年 : 最初の民間コンセッション事業者 コフィルート (Cofiroute) が設立された 2000 年 : 国有企業が普通会社になり 欧州ではすべてのコンセッション事業の入札が義務付けられた ( アドスマン (Adossement) の終焉 ) 2002 2006 年 : 民営化 2002 年 : 第一段階国は ASF グループ株式の半分を株式市場で売却 2005 年 : 第二段階 APRR グループとサネフ (Sanef) グループの LBO 2006 年 : 第三段階国が 3 グループの入札を実施し 売却代金は 140 億ユーロとなる ASF グループはバンシに売却 APRR グループはエファージュ (EIFFAGE) とマッコーリー (MACQUARIE) に売却 サネフ (Sanef) グループはアベリティス (ABERTIS) と HIT に売却 株主は変わったが 規則は変わっていない 公的な権利の授与者としての国と民間コンセッション事業者としての区別が利害関係者の関係を明確にする 国によるさらに正確な管理が可能になる コンセッション契約に加え 5 年間の契約期限 (5 年更新 ) が当事者の義務 ( コンセッション事業者の投資と補修 そして国による料金改定 ) を明確にする 7
今日のフランスの道路網 コンセッション料金を通じて 9,000 km を建設 コンセッション事業者 19 社 年間収入 :88 億ユーロ 主要コンセッション事業者の契約満了 :2028 2032 年 総負債 :311 億ユーロ 年間投資額 :17 億 7,000 万ユーロ 平均通行量 :27,017 台 / 日 フランスの成熟した都市間道路網の完成を可能にしたコンセッション方式 8
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料金引き上げ 料金で投資と保守管理費用が回収される 道路の使用料である 2015 年現在 LV( 乗用車 ) 分類 1 の料金は約 0.13 ユーロ /km である 料金は毎年引き上げられている 引上幅はコンセッション契約 そしてまた 5 カ年計画契約に契約項目として記載されている コンセッション契約の義務 : 自動車道路の建設 運営 保守管理 コンセッション契約に示された年次引上げを含む料金 (1) 5 カ年計画契約で見通された追加投資 追加的な料金引き上げ (1): ほとんどの契約でインフレ率の 70% 10
2013 年料金引き上げの手続き 使用者委員会への通知 2012 年 11 月 30 日 料率引き上げ グリッドの詳細な検証 グリッドの国への提出 グリッドの分析 協議の可能性 新料率の適用 インフレ率の確定 2012 年 11 月 14 日 12 月第 3-4 週 2013 年 2 月 1 日 区分 1 2013 年引上の内訳 2013 の料金引き上げ ASF 85%*i + 0.625%+ 0.175% 2.24% エスコタ (ESCOTA) 85% * i + 0,3% 1.74% APRR 85% * i + 0.5% 1.94% AREA 85% * i + 0.5% 1.94% サネフ (Sanef) 80%*i + 0.35% 1.71% SAPN I + 0.6% 2.29% SAPN A14 70% * i 1.18% コフィルート (COFIROUTE) 85%*i+ 0.48% 1.92% 11
変動料金の事例 バンシ コンセッションズ (Vinci Concessions) は重要な変動料金プロジェクトに関与している 手動料金徴収による変動料金は一般的ではない 1992 年から 1997 年にかけて週末に様々な実験が行なわれた というのは都市間道路網で週末の始まりと終りに渋滞が発生するからである 料金徴収は主に手作業で行なわれた 実験には特定の制約があり それはピーク時間に徴収された追加料金収入がオフピーク時間の減収で完全に相殺されなければならないというものであった ( ゼロサム ゲーム ) 変動料金と割引は通常 電子料金徴収をともなう 料率は 1 日の時間帯で変動するのが普通である 事前に公表される場合もあり ( 例 91 エクスプレス レーンや A86 トンネル ) 恒常的に変動する場合もある ( 例 ミネソタ ) ドイツではトラックの排ガス区分で料率が決まる 12
カリフォルニア州オレンジ郡 91 エクスプレス レーン (91 Express Lanes) フリーフロー料金の先駆者 世界中の管理レーンのモデルであり 世界初の完全電子料金徴収道路 米国で初めて渋滞料金 / 変動料金を採用 料金は事前に定められた料金表に従う 料金表はレーン毎の交通量が境界値を超えると自動的に更新され 6 カ月間固定される 1995 年開通全長 17 km 徴収地点 2カ所口座数 114,000 件証票数 171,000 個平均通行量 37,000 台 / 日年間通行料 3,200 万ユーロ変動料金 1ドルから9.95ドル従業員 75 人 13
フランス パリ市 A86 デュプレックス トンネル (A86 Duplex Tunnel) ユニークなプロジェクト 革新的なトンネルと変動料金 2 つに区切られた全長 10km のトンネルで それぞれの区画は 2009 年と 2011 年に完成した 総投資額は 22 億ユーロである 1 本のトンネルが 2 層に区切られ それぞれ片側通行 3 車線があり 利用は乗用車に制限されている ドイツ自動車連盟 (ADAC) に欧州で最も安全なトンネルと評価されている 出入口に無人料金所があり 出口までの中間点にフリー フロー ゲートがある 2009 年開通 全長 10km 徴収地点 3 カ所 投資額 22 億ユーロ 曜日と時間 ( ピーク / オフピーク ) で変わる変動料金制である 平均通行量 26,000 台 / 日 利用者 250,000 人 / 月 変動料金 1.50 ユーロから 10 ユーロ ETC 利用率は全トランザクションの 50% 14
ミネソタ州ミネアポリス Mn パス ネットワーク (MnPASS Network) HOT レーン プロジェクトはミネアポリス大都市圏の I-394 号線と I-35W 号線の 2 区画で構成されている セント ポールで I-35E 号線エクスプレス レーン プロジェクトが予定されている 初めてのダイナミック料金設定設備 ( 料率は 3 分ごとに更新 ) であり 初めてのバリアなしの ホット レーンである 料金は 無料レーン の通行量で自動的に変動する 2005 年開通全長 80 車線 km 口座数 24,000 件標章数 31,000 枚平均通行量 7,000 台 / 日年間通行料 250 万ユーロ変動料金 0.25ドルから8.00ドル 15
ドイツ 料金徴収 衛星を利用した初の全国規模貨物車輌料金徴収システム GPS GSM テクノロジーの組み合わせ 対象は 7.5 トン超のトラック (10 月 1 日以降 ) 排ガス区分に基づいた変動料金 ( ユーロ 6 からユーロ 1 の間で 1 から 2 まで変動 ) 取締に DSRC と赤外線を使用 高速道路 12,700km と国道 2,300km 強力な ISO 管理システム (9001/14001/27001/31000) に裏付けられた高度なデータ保護 2005 年開業 全長 15,000km 100 万台以上の車輌が登録し その内 47% がドイツ国外 車載器設置台数 776,000 台 年間通行料 44 億ユーロ 平均捕捉率 99.90% 10 カ国に 3,500 台の販売端末 16
フランスの料金割引 バンシ オートルート (Vinci Autoroutes) の料金割引の事例 ETC の使用が常に前提となる 乗用車向け - 都市間道路網では 2 種類の基本的な割引制度がある :( 地域に適合 ) プリファレンス 50(Preference 50): 移動距離 50km 未満について 毎月 6 回毎の使用が無料になる プリファレンス 100(Preference100): 移動距離 100 km 未満について 毎月 12 回毎の使用が無料になる - A86 の新しい割引制度 アクティブ T A86(Activi-T A86) は月毎の利用金額と連動する : 貨物車向け - 25 ユーロから 50 ユーロまで :20% 引き 50 ユーロから 130 ユーロまで :30% 引き 130 ユーロ以上 :50% 引き 割引は毎月の車載器 (OBU) 毎の利用金額と連動する コフィルート (Cofiroute):66 ユーロから 111 ユーロまでは 8% 引き 111 ユーロ以上は 13% 引き ASF:108 ユーロ以上は 13% 引き エスコタ (Escota):44 ユーロから 302 ユーロまでは 8% 引き 402 ユーロ以上は 13% 引き アルクール (Arcour):15 ユーロから 60 ユーロまでは 8% 引き 60 ユーロ以上は 10 ユーロ引き 一部のコンセッション事業者は排ガス区分に応じて値引きを提供している ユーロ 6 の値引率は 13% に達する場合がある 17
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業界が直面している課題例 テクノロジーは急速に発達しており 相互運用性が必須である 職種の変化 : 新しい職種のために従業員を研修する必要がある 環境と安全の重要性が高まっている 料金請求と料金徴収の役割は分離される傾向がある 料金変更に対する反発が起きる可能性がある 最近まで料金は新しいインフラと連動しており 支払額は移動距離 投資水準と連動することが多かった 既存の道路網に対する 課税 が終り 新しい対距離料金が必ずしも受け入れられなくなっており 場合によっては開通までに否決されることさえある ( 例 フランスの環境税 ) コンセッション事業は成熟期に入っているが キャッシュフローを生み出し 投資が可能である 19
電子料金徴収システム : 乗用車向け相互運用 フランスの民間コンセッション事業者は違反者に 違反切符を郵送 することが許されなかったため 80 年代後半に料金所向けに ETC を開発した 2000 年にコンセッション事業者 つまり料金請求者 (TC) はフランスのネットワークでリバー T(Liber-T) による乗用車向けの相互運用を開始した これは下記を意味した TC と顧客間の単一契約 TC 間のトランザクション清算 その現状は次の通り ETC レーン 4,633 カ所 加入者 650 万人 トランザクション 5 億 3,000 万件 乗用車トランザクションの 42% は ETC 20
フランスの乗用車向け ETC サービス プロバイダー EVA( エメトゥール バンシ オートルート )(Eméteur VINCI Autoroutes) EVA はバンシ オートルート (Vinci Autoroute) の料金サービス プロバイダーである カスタマー サービス センターの店頭ないしウェブサイトでの口座開設 証票発行 :50% はウェブサイト経由のオンラインで 50% はカスタマー リレー センター経由で発行されている 顧客は UPS キアラ (Kiala) を使って配達を待たず 近所のコンビニ ガソリンスタンド 新聞売店で荷物を受け取ることができる 4,500 店の販売代理店を活用している 独自のバックオフィス システム OPUS で顧客 証票 口座情報 請求を管理している OPUS は EVA ASF エスコタ ( Escota) コフィルートから情報を集めるクライアント データベースである フランスの有料道路網のどこを使っていても顧客に送られる請求書は 1 枚だけである 2010 年開業 250 万枚の証票を発行 フランスの ETC 市場の 45% 2014 年の証票発行数は 450,000 枚以上 ETC はすべてのトランザクションの 48% を占めている 260 カ所の駐車場と提携 21
欧州における ETC 相互運用に向けて 欧州で移動する時にはいつも 一つの OBU 一つの契約 がコンセプトであり 最初は貨物車向け 次が乗用車向けである 料金徴収は EETS プロバイダーによって行なわれる フランスでは 2005 年に同様な役割を果たす SHT が導入され トラックのトランザクション相互運用システム TIS-PL を管理している - SHT と顧客が契約を交す - SHT が TC( 料金請求事業者 ) のトランザクションを清算する - 現在 TIS-PL は下記の通り普及している 料金所 2,664 カ所 加入者 640,000 トランザクション 1 億 5,100 万件 HGV( 重量貨物車輌 ) トランザクションの 85% - SHT は下記を提供する 特定のディスカウント フリート管理のための新サービスへのアクセス 22
は (E)ETS プロバイダーの好例である アクセス (Axxès) は 2005 年にフランスの SHT として設立され EETS (European Electronic Toll Service: 欧州電子料金徴収サービス ) プロバイダーとなった 以来 DSRC システムと GNSS システムと連動する革新的なプロダクトと付加価値サービスを導入している アクセス (Axxès) はフランスの電子トラック料金徴収の最大手である 250,000 台の相互運用可能な装置を配布しており その内 125,000 台は GPS 搭載機である 顧客数 30,000 欧州パートナー 50 社 衛星プラットフォーム 1 基 トラック向けのサービスには下記が含まれる : フランスにおける時速 30km の高速料金徴収レーン フランス スペイン ベルギー ( リエフケンスフク トンネル ) ポルトガルの高速道路網すべてに共通の OBU 割引 : フランスで最大 13% スペインで 50% ベルギーで最大 27% 後払い 15 カ所の安全な駐車場の利用 ( フランスとスペイン ) 電波経由の車輌の特性と情報の更新 フリート管理アプリ ビアクシス SAT マネージャー (Viaxxès SAT Manager) と関連サービス 報告とデータ移転 23
明るい見通し : 効率的なシステムの活用 アドスマン (Adossement) ( 担保制度 ) は 契約規定にとどまらず 成熟した区間から利用可能なキャッシュフローを利用して公的資金に頼らずに新しい機会に資金を投じる新規投資の資金調達に役立つ 既存の有料道路を持つ成熟したコンセッション事業者には下記を目的とした効率的なレバレッジを利用するのに有利な環境が自然に生まれる 道路網の開発と近代化のための資金調達 安全性の向上 環境保護の強化 テリトリーのよりよい活性化 よりよい環境保護 ミッシングリンクの解消 渋滞区間への対応 HOT レーンの導入 グリーンフィールド プロジェクトのリスクの効率的な緩和 フランスのコンセッション事業者は高速道路上の大量輸送を重視し 都市周辺地域の高速道路でマルチモード アプローチを開発することを望んでいる 24
第 1 回 フレンチ ディール : グリーン投資パッケージ 2009 年の第 1 回 フレンチ ディール : グリーン投資パッケージ ( Le Paquet Vert ) は最も古い高速道路の環境改善工事の資金を調達した 強力な投資ツールであった 取引 :5 社のコンセッション契約の 1 年延長と引き換えの 10 億ユーロ以上に相当する工事 合意は EC に承認された 騒音 : 住宅 880 戸舗道 271km 水面 : 277 カ所 387 レーン パーク アンド ライド駐車場 1,271 カ所 交通管理 704km 休憩所 サービスエリアの 50% を近代化 バイオダイバーシティ投資 4,200 万ユーロ 25
目標は下記のような工事の資金を アドスマン (Adossement) 方式で提供し フランスの景気回復に大きく寄与することである 道路のレーン拡張 高速レーンのアップグレードと移動 ミッシングリンクの解消実現 コンセッション契約の 2 6 年延長と引き換えの 32 億ユーロのパッケージである この強力な投資ツールは公的財政に影響しない 2014 年 5 月 19 日に EC に通知した 第 2 回 フレンチ ディール : 高速道路活性化計画 2015 年 9 月 2 日にフランス当局との合意が署名された 事例 : トゥーロンでは既存の無料高速道路がエスコタ (ESCOTA) と無料で接続される バンシ オートルート (Vinci Autoroutes) が 6 億ユーロの投資資金を調達し 運用する 26
ご清聴ありがとうございました Thank You for Your Attention 27