資料 4 ドイツ フランスのスマートグリッド関連動向 ( スマートコミュニティアライアンス官民訪欧ミッションより ) 1. 官民訪欧ミッションの概要 2. ドイツのスマートグリッド関連動向 (1) ドイツがスマートグリッドに取り組む背景 (2)E-Energy プロジェクトの背景 目的 (3)E-Energy プロジェクトの概要 (4)MOMA(Model City of Mannheim) プロジェクトの概要 (1 2) (5)MOMA プロジェクト実証内容 (1 2 3) 3. フランスのスマートグリッド関連動向 EDF のスマートメーター導入 (1 2) 平成 22 年 12 月 16 日 商務情報政策局情報経済課
1. 官民訪欧ミッションの概要 目的 実証プロジェクトや国際標準化等 様々な分野における欧州との協力関係を深めるため JSCA 会員企業とともに官民ミッションを組成し ドイツ ベルギー フランスにおける欧州の主要な機関を訪問した 主催 スマートコミュニティ アライアンス (JSCA) ( 独 ) 新エネルギー 産業技術総合開発機 (NEDO) 経済産業省 参加者 民間企業 : 伊藤忠商事 ( 株 ) 東京ガス ( 株 ) 東京電力 ( 株 ) ( 株 ) 東芝 三菱電機 ( 株 ) ( 株 ) 日立製作所 パナソニック ( 株 ) トヨタ自動車 ( 株 ) 等 NEDO: 渡邊理事 ( 事務局長 ) 等 経済産業省 : 富田審議官 ( 商務情報政策局 ) 小井沢交渉官 ( 資源エネルギー庁省エネルギー 新エネルギー部 ) 村瀬課長 ( 商務情報政策局情報経済課 ) 等 全 13 社 ( 欧州現地法人含む ) 日程 2010 年 11 月 15 日 ( 月 )~19 日 ( 金 ) 11/15( 月 ) 移動 11/16( 火 ) ドイツ ドイツ経済技術省 (BMWi) 環境自然保護 原子力安全省 (BMU) 他との意見交換 NOW( 燃料電池水素機構 ) との意見交換 ジェトロ ベルリン勉強会 日独スマートグリッドセミナー 11/17( 水 ) ドイツ MVV( 電力会社 ) との意見交換 現地見学 (MOMA(E-Energy) プロジェクト ) 11/18( 木 ) ベルギー 欧州委研究総局との意見交換 欧州委エネルギー総局との意見交換 欧州委情報社会総局との意見交換 日欧スマートグリッドセミナー 11/19( 金 ) フランス ADEME 理事長との意見交換 EDF との意見交換 エコロジー省との意見交換 JBIC 勉強会 経済省との意見交換 日仏スマートグリッドセミナー
(1) ドイツがスマートグリッドに取り組む背景 日本と同様にドイツでは信頼性の高い電力システムへの再生可能エネルギー導入が課題 1 欧州最高レベルの 電力供給信頼性 ドイツにおける年間の事故停電時間 :36.5 分 (2006 年 ) 参考日本 :16 分 (2007 年 ) フランス :57 分 (2004 年 ) 英国 :100 分 (2006 年 ) 2 エネルギーセキュリティの向上 及び 温暖化対策 の必要性 固定価格買取りによる分散型再生可能エネルギーの積極導入 参考再生可能エネルギー発電量の消費電力量に対する割合 : 14.2%(2007 年 ) 3 丌安定な再生可能エネルギーを最大限活用するシステム の必要性 再生可能エネルギーの余剰は需給バランスを乱す要因 E-Energy プロジェクトによる新たなエネルギーシステム構築 リアルタイム料金やデマンドレスポンス等により エネルギーの供給だけでなく需要も積極的にマネジメント 電力会社がプロジェクトを主導
(2)E-Energy プロジェクトの背景 目的 個々の需要家が発電事業者となり (Consumer から Prosumer へ ) 自由に電力を融通する 分散型 双方向のエネルギーシステム を実現 1 背景 ドイツにおける再生可能エネルギーの導入目標 :30%(2020 年 ) 供給サイドからだけでは 再生可能エネルギーの受入れや制御が困難 電力会社が積極的に需要側のエネルギーマネジメントに取り組むモチベーション 2 目的 エネルギー 環境問題の解決 新たな雇用と市場の創出 イノベーションの推進 電力システムの転換 電力消費に合わせた供給 から 電力供給( 再生可能エネルギー ) に合わせた消費 へ 個々の需要家は Consumer( 消費者 ) から Prosumer = Producer( 生産者 )+Consumer ( 消費者 ) へ変化 発電 送配電 消費 の一方通行から 発電 送配電 消費 貯蔵 が相互に連携 補完する新しい電力システムを構築 将来的には需要家が参加できるエネルギーの自由な取引市場の形成を視野に入れている 出所 : ドイツ政府資料
(3)E-Energy プロジェクトの概要 ドイツ国内 6 地域において需要側に主眼を置いたエネルギーマネジメント実証を推進 1 プロジェクトの概要 経済技術省 環境省が主導 2008 年 9 月から地域特性に応じた 6 プロジェクトを開始 2013 年までの予算規模は総額 1 億 4000 万ユーロ 2 6 プロジェクトの特徴 (Ⅰ)eTelligence 再生可能エネルギー ( 風力 ) と冷蔵倉庫の連携 (Ⅱ)RegModHarz 再生可能エネルギー ( 風力 ) と揚水発電所の連携 (Ⅲ)E-DeMa 家庭におけるマイクロコジェネと家電の協調制御 (Ⅳ)SmartW@TTS 自治体主導による電力の取引市場モデルの構築 (Ⅴ)MOMA (Model city of Mannheim) リアルタイム料金及びホームコントローラによる家電の制御及び電力取引市場のモデル検討 (Ⅵ)MEREGIO リアルタイム料金及びホームコントローラによる家電の制御及び 2 地域間の連携 ( 風力 + 冷蔵倉庫 ) ( 風力 + 揚水発電 ) ( マイクロコジェネ+ 家電 ) ( 自治体による電力取引市場モデル ) ( リアルタイム料金 + 家電 電力取引市場 ) ( リアルタイム料金 + 家電 2 地域間連携 ) 出所 : ドイツ政府資料
(4)MOMA(Model city of Mannheim) プロジェクトの概要 1 リアルタイム電力料金情報をもとに Energy Butler( エネルギーの執事 ) が家電製品の稼働を制御し エネルギー利用を最適化 将来は近隣住宅とのエネルギー融通も可能に 1 プロジェクトの目標 エネルギーのセル ( 細胞 ) モデル 住宅 ( セル ) ひとつひとつがエネルギーの自給自足を行い 丌足する場合は隣の住宅 ( セル ) からエネルギー融通を受けることで 地域レベル ( マイクログリッド ) でのエネルギーマネジメントを実現 将来的にはマイクログリッド間での融通も視野に含む Energy Butler( エネルギーの執事 ) による家電制御 リアルタイム電力料金情報 (1 時間毎 ) 情報をもとに Energy Butler と呼ぶコントローラが需要家の設定に応じて家電製品 電気自動車 PV マイクロコジェネ等の稼働 (ON/OFF) をコントロールし 家庭内エネルギー利用を最適化 将来的な電力取引市場モデルの検討 個々の需要家の電力売買を可能とする市場を構築し 電力取引によるピーク調整を実現する一方 グリッドの供給信頼性の確保も実現 2 プロジェクト参加企業 MVV( ドイツ電力第 5 位 ) DREWAG( エネルギー 水供給の公益事業体 ) IBM フラウンホーファー研究所等 出所 :MVV 資料
(4)MOMA(Model city of Mannheim) プロジェクトの概要 2 今年度は 2 段階の電力料金提示による需要家行動の変化を検証中 次年度は 1500 世帯を対象に よりきめ細かい 30 段階の料金設定で家電制御の実証を予定 実証スケジュール 第 1 フェーズ ( システム動作確認 ) 2009 年 7 月 ~ 対象 : 住宅 20 戸 技術的な試験 第 2 フェーズ (2 段階の電力料金提示による需要家行動の検証 ) 2010 年 10 月 ~ 対象 : 住宅 200 戸 ( 実際は 105 戸 ) 1 時間毎の電力料金を通知 単純化のために電力料金は 2 段階 (15 25 セント /kwh) 1 時間毎の料金変化による需要家の行動変化を実証 Energy Butler による家電制御は無し 第 3 フェーズ ( 予定 :Energy Bulter による家電制御 ) 2011 年 8 月 ~ 対象 : 住宅 1500 戸 電力料金は 30 段階 Energy Butler による家電制御を実施 自動制御 / マニュアル制御は需要家が自由に設定 ( 例えば 料金が セント以下になったら 洗濯機を稼働させる等 ) Comsumer Prosumer 出所 :MVV 資料
(5) MOMA プロジェクト実証環境 1 実証環境 ( 視察先 ) マンハイム市内の一般の戸建住宅 ( 実生活環境 ) Energy Butler スマートメーター PV(150W) インターネットアクセス有 Energy Butler への情報提供は 電力会社経由 (Web) と スマートメーター経由 の双方が可能 よりリアルタイム性を確保できる方法で将来的に実装を検討 Energy Butler への料金表示 実証実験の対象となっている住宅 ( 視察先 ) エナジーバトラー 家電制御 (ON/OFF) 用アダプター 出所 : 官民訪欧ミッション撮影
(5) MOMA プロジェクト実証風景 2 MVV としては リアルタイム電力料金の提示は需要家の行動変化を促進するものであり きめ細かい料金設定と家電製品の簡便な制御による需要側のエネルギーマネジメントが重要と認識 実証環境 ( 視察先 ) 電力料金は 2 段階 ( 赤 :25 セント 緑 :15 セント ) この住宅では料金表を印刷し冷蔵庫に毎日貼り付け その結果 前年と比較して 1 年間の使用電力量は変わらないものの 電気代は 80 ユーロ (1 割 ) 減尐 理由は住民が緑色の時間帯に集中して洗濯機や冷蔵庫等の家電を動作させたため ( 例 ) 冷蔵庫は 温度センサーを見ながら極力緑の時間帯に過冷却しておくとのこと 電力料金は電力取引市場の価格及び需要予測を元に算定 風力発電が余剰の場合 電力の価格が極めて低くなることから 次年度以降のきめ細かい料金設定 (30 段階 ) による さらなる電気料金削減に期待が寄せられている 1 時間毎の料金表 ( 赤 緑 ) Web 上における時間帯別料金表示 25 セント 25 セント 15 セント 15 セント 出所 : 官民訪欧ミッション撮影
3. フランスのスマートグリッド関連動向 EDF のスマートメーター導入 1( ヒアリングより ) EDF が 40 億ユーロを投じてスマートメーター導入を急加速 スマートメーターの単価は 25 ユーロ ( 約 3000 円 ) が目標 ERDF(EDF の配電子会社 ) の配電網は配電自動化システムを導入済みで信頼性は高い それゆえ 再生可能エネルギーや EV 導入への対応が喫緊の課題 ERDF は配電自動化システムを導入済み ( カバー率 :100%) 一方 フランスでは 2020 年までに再生可能エネルギーの導入率 :23% が目標 2020 年までに 200 万台の EV を導入見込み ERDF は 3500 万個のスマートメーター導入のために 40 億ユーロを投入し 取組みを大幅加速化 ERDF は 2010 年初頭からスマートメーター実証を実施し 既に 15 万個を設置済み (11 年上期には 30 万個の設置を完了予定 ) 8 月 31 日付政令で電気料金算入によるコスト回収が認められたため 総額 40 億ユーロを投じて 積極的に導入を推進 スマートメーターの価格目標は実導入フェーズで 25 ユーロ ( 約 3000 円 ) メーターのデータは消費者がコントロールするものであり 同意を得て第 3 者提供も可能 スマートメーターの価格は実証段階で 50 ユーロ 実導入段階ではその半分程度を期待 ( この価格には中圧 低圧のコンセントレータの費用や工事費も含む ) スマートメーターの所有権は配電事業者が有するが スマートメーターによって得られるデータは消費者がコントロールするものとの認識 従って 消費者の合意が得られれば 第 3 者へのデータ提供も可能
3. フランスのスマートグリッド関連動向 EDF のスマートメーター導入 2( ヒアリングより ) EDF はスマートメーターの標準化 HAN との接続に関して日本企業との連携に前向き スマートメーターの標準化に関して 日本企業の参画を期待するとともに 日仏の実証の相互連携による成果の共有を期待 メーター自体は 20 年 30 年で更新するが IT の世界は 1 2 年で技術が進歩する 将来のイノベーションに適応可能なメーターを設計 導入することが重要 リヨンでは 5000~10000 件のスマートハウス実証を行う予定 日仏で実証に関する協力体制を構築し 消費者の反応や技術開発について成果を共有できれば 互いにとって有用 EDF は増加するエネルギー需要に対応するためにデマンドレスポンスを積極活用 家電等との接続に関して日本企業との連携を期待 フランスでは 電源の 90% が非化石 (75% が原子力 15% が再生可能エネルギー 1 0% が石炭 石油 ガス ) フランスの電力需要の伸び率は年間約 1GW( 約 1%) この 1GW 分の需要増への対応は 化石燃料を利用した発電所建設ではなく ピーク抑制 ピークシフトで実現したい EDF としては スマートメーターに価格シグナルを送り 気温低下時に暖房の設定温度を 1 3 低くすることを可能としたく 日本企業の技術に大きく期待 特に スマートメーターはベンダーによらない複数の家電製品と通信する必要があるため HAN の通信規格の共通化が必要 リヨンのプロジェクトで実証するとともに 日本におけるプロジェクトとの連携や日本企業の協力も大変期待