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食品安全に関するリスクプロファイルシート ( 検討会用 ) ( 化学物質 ) 更新日 :2012 年 12 月 5 日 項 目 内 容 1 ハザードの名称 / 別名 ポリブロモジフェニルエーテル ( 類 ) (Polybrominated diphenyl ethers: PBDEs) ( 臭素の数と位置の違いによって 209 種の化合物があり その総称である ) 1 臭素化体 : MDBE( モノブロモジフェニルエーテル ) (3 種 : BDE-1~BDE-3) 2 臭素化体 : DiBDE( ジブロモジフェニルエーテル ) (12 種 BDE-4~BDE-15) 3 臭素化体 : TrBDE( トリブロモジフェニルエーテル ) (24 種 BDE-16~BDE-39) 4 臭素化体 : TeBDE( テトラブロモジフェニルエーテル ) (42 種 BDE-40~BDE-81) 5 臭素化体 : PeBDE( ペンタブロモジフェニルエーテル ) (46 種 BDE-82~BDE-127) 6 臭素化体 : HxBDE( ヘキサブロモジフェニルエーテル ) (42 種 BDE-128~BDE-169) 7 臭素化体 : HpBDE( ヘプタブロモジフェニルエーテル ) (24 種 BDE-170~BDE-193) 8 臭素化体 : OBDE( オクタブロモジフェニルエーテル ) (12 種 BDE-194~BDE-205) 9 臭素化体 : NBDE( ノナブロモジフェニルエーテル ) (3 種 BDE-206~BDE-208) 10 臭素化体 : DeBDE( デカブロモジフェニルエーテル ) (1 種 BDE-209) 2 基準値 その他のリスク管理措置 (1) 国内 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 ( 化審法 ) 第 1 種特定化学物質 TeBDE ( 政令番号 25) PeBDE ( 政令番号 26) HxBDE ( 官報公示整理番号 3-2845 政令番号 27) HpBDE ( 政令番号 28) 一般化学物質 DeBDE ( 旧第 2 種監視化学物質 ) 官報公示整理番号 3-2846 MBDE, DiBDE, TrBDE( 既存化学物質 ) 官報公示整理番号 3-61 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律 ( 化管法 ) 第 1 種指定化学物質 DeBDE ( 政令番号 1-255( 旧政令番号 1-197)) 1

(2) 海外 EU 均質材料における PBDE の重量比が 0.1% を上回る電気 電子製品を EU 市場に出すことを禁止 (RoHS 指令 2005/618/EC) カナダ PBDEs のうち 4-10 臭素化体が Canadian Environmental Protection Act, 1999 の毒性物質のリスト (List of Toxic Substances, Schedule 1) に追加され カナダ政府が規制や汚染保護計画 環境緊急計画を進めることとなっている 3 ハザードが注目されるようになった経緯 環境中に放出された PBDEs がヒト母乳中に存在するというスウェーデンの研究者の報告により注目されるようになった PBDEs は次のような特徴を持つ もともと自然界には存在しない 燃えにくいため 繊維や電気器具を難燃化するために使われてきた 化学的に安定なため環境中に放出されても分解しない 直近 30-40 年間で環境中の汚染濃度が上昇している 4 汚染実態の報告 ( 国内 ) 厚生労働省は 2004-2009 年度に PBDEs を対象に魚介類 の含有実態を調査 魚介類の分類 ウナギ目 ( 天然 ) カレイ目 ( 天然 ) スズキ目 ( 天然 ) 採取地域 サンプル数 PBDEs 含量 (ng/g, w/w) 範囲 中央値 東北 1-0.26 中部 1-0.82 中国 四国 3 0.31-0.41 0.31 九州 1-0.11 東北 1-0.18 中国 四国 3 0.02-0.045 0.03 九州 0.04-0.08 0.06 東北 6 0.14-0.40 0.29 中部 10 0.03-2.9 0.37 中国 四国 6 0.04-0.41 0.073 九州 10 0.02-0.7 0.20 サケ目 ( 養殖 ) 東北 5 1.20-1.6 1.3 スズキ目 中部 4 0.19-2.8 0.55 ( 養殖 ) 中国 四国 1-0.3 5 サンプル以上調査した魚介類のみ抜粋 ( 詳細は別紙を参照 ) PBDEs 含有量は 23 化合物 (BDE-17, 28, 47, 49, 66, 71, 77, 85, 99, 100, 119, 138, 153, 154, 156, 183, 184, 191, 196, 197, 206, 207, 209) の総和 5 毒性評価 (1) 吸収 分布 排出及び代謝 1 排出 DeBDE: 経口摂取後 24 時間以内に 90.6% 3 日で 99% 以上が糞便及び腸内内容物から回収 ( ラット ) 2

経口摂取後 16 日間で 尿 呼気への排出は 1% 未満 ( ラット ) 2 代謝 PeBDE: 腎周囲の脂肪における半減期は 25-47 日 ( ラット 性差あり ) (IPCS, 1994) (2) 急性毒性 LD 50 DeBDE: > 5000 mg/kg bw ( ラット雄 経口摂取 ) OBDE: >> 5000 mg/kg bw ( ラット 経口摂取 ) PeBDE: > 7400 mg/kg bw ( ラット雄 経口摂取 ) PeBDE: > 5800 mg/kg bw ( ラット雌 経口摂取 ) (IPCS, 1994) (3) 短期毒性 DeBDE: 悪影響は知られていない OBDE: ラット ( 雌 ) への 28 日間の経口投与試験において 肝臓に影響 ( 重量増加 細胞質の粒状化 ) が観察されたことから LOEL を 5 mg/kg bw とした ( 同じ結果から JECFA では 8 mg/kg bw と計算 ) PeBDE: ラット ( 雌 ) への 90 日間の経口投与試験において 24 週間経過時点で肝臓に影響 ( 細胞の変成と壊死 ) が観察されたことから LOEL を 2 mg/kg bw とした (IPCS, 1994) (4) 長期毒性 1 発がん性 DeBDE: 総合評価はグループ 3( 分類できない ) 実験動物においては限定的な証拠が存在するが ヒトの発がん性に関する情報はなかった (IARC, 1990) 2 生殖毒性 BDE-99: 妊娠 6 日目の体重約 300g の雌ラットへの約 18 μg の単回投与試験において 雄の仔の精子細胞及び精子産生能に障害が見られたことから LOAEL を 60 μg/kg bw とした (RIVM, 2006) OBDE: 妊娠後 6 日目 -15 日目の期間の雌ラットへの経口投与試験において 胎児の平均体重の減少 胎児の死亡 ( 再吸収 ) 胎児にとって致命的な奇形 ( 心臓肥大など ) が見られたことから NOAEL を 10 mg/kg bw とした (IPCS, 1994) 3 その他 DeBDE: DeBDE( 純度 97~98%) を雌ラットへ妊娠後 0 日目 -19 3

日目の期間に 1000 mg/kg bw の用量で経口投与した試験で胎児毒性は観察されなかった 一方 不純物として他の PBDE を含む DeBDE(DeBDE:77.4%, NBDE:21.8%, OBDE:0.8%) を雌ラットへ妊娠後 6 日後 -15 日後の期間に 1000 mg/kg bw の用量で経口投与した試験では胎児毒性が観察された AhR( アリール炭化水素受容体 ) 活性化能は 2,3,7,8-TCDD( テトラクロロジベンゾ - パラ - ジオキシン ) の 100 万分の 1 以下であった (in vitro) 6 耐容量 (1) 耐容摂取量 1PTDI/PTWI/PTMI JECFA PBDEs について PTDI や PTWI を設定していない ( 理由 ) PBDEs が様々な種類の BDE の混合物であること 毒性についての知見が不十分であり 全ての PBDEs の暴露量を一つの化合物で代用して表す方法 あるいは TEF( 毒性等価係数 ) に基づく換算方法が確立されていないこと そもそも市販されている DeBDE OBDE PeBED や BDE-47 BDE-99 以外については十分な知見がなく それらについても NOEL を設定するに十分な長期毒性試験が行われていないこと いくつかの毒性データは不純物に由来すると考えられること オランダ BDE-99: 0.26 ng/kg bw/day (RIVM, 2006) 2PTDI/PTWI/PTMI の根拠 オランダ ラット生殖毒性 オス胎児にとって最も感受性が高いと考えられる妊娠 16 日目の母体の体重に基づき計算 ( 蓄積性の生殖毒性物質として 2,3,7,8-TCDD と同様の評価法を用いた ) (RIVM, 2006) (2) 急性参照量 (ARfD) 7 暴露評価 (1) 推定一日摂取量 JECFA PBDEs: ヨーロッパの食事データと北米やヨーロッパの汚染濃度から約 4 ng/kg bw/day と推定 4

( 参考 : 各国から提出された摂取量データ ( 抜粋 )) 国名 一平均摂取量 分析対象の PBDEs カナダ 30 ng/day (2002) 38 ng/day (1998) 28, 47, 99, 100, 153, 154, 183 米国 Females: 1.4 ng/bw kg Males: 2.0 ng/bw kg (<LOD=0 として算出 ) 17, 28, 47, 66, 77, 85, 99, 100, 138, 153, 154, 183, 209 日本 オランダ スウェーデン 113 ng/day (<LOD=LOD として算出 ) 13 ng/day (<LOD=0 として算出 ) 41 ng/day ( 女性 ) 47 ng/day ( 男性 ) (<LOD=1/2LOD として算出 ) 47, 49, 66, 99, 100, 119, 153, 154, 183 28, 47, 99, 100, 153, 154, 71, 77, 190, 209 47, 99, 100, 153, 154 ヨーロッパ 日本では魚介類が カナダ アメリカでは肉類が主要な摂取源とされている 米国 PBDEs(BDE-17, 28, 47, 66, 85, 99, 100, 138, 153, 183, 197, 206, 209): 45 ng/day ( 大人 ) ( 体重 70 kg の場合 約 0.6 ng/kg bw/day) (<LOD=0 として算出 ) (EPA, 2010) EU BDE-47 :0.29~ 1.91 ng/kg bw/day BDE-209:0.35~ 2.82 ng/kg bw/day ( <LOD=0 で算出した際の最小の国の値 ~ <LOD=LOD で算出した際の最大の国の値 ) (EFSA, 2011) オランダ PBDEs(BDE-28, 47, 66, 85, 99, 100, 138, 153, 154, 183): 1.7 ng/kg bw/day ( 中央値 ) 3.3 ng/kg bw/day (97.5%ile)(2003) (<LOD=1/2LOD として算出 ) (RIVM, 2006) (2) 推定方法 JECFA ヨーロッパの食事データと各国の汚染濃度の重量平均より計算 5

GEMS/Food 地域食事データから推計した摂取量 食品群 食事データ (g/day) PBDEs の摂取量推計 (ng/day) ヨーロッパ 北米 乳及び乳製品 336 10 24 卵類 38 2 8 油脂類 49 13 47 魚介類 47 84 40 肉類 217 17 66 その他 826 6 29 合計 (ng/day) 131 213 合計 (ng/kg bw/day) 2.2 3.6 (PBDEs の摂取量推計は <LOD=0 として算出 ) 米国 米国内の食品消費量 (USDA 公表値 (1995) 又は Exposure factors handbook(1997) に基づき算出されたもの ) と既存の調査結果 (Oros(2005) Schecter(2009)) における汚染濃度の重量平均より計算 (EPA, 2010) EU Comprehensive European Food Consumption Database の食品消費量とヨーロッパ全体での汚染濃度の重量平均より計算 (EFSA, 2011) オランダ Dutch National Food Consumption Survey の食品消費量と RIVM や RIVO の調査における汚染濃度の重量平均より計算 (RIVM, 2006) 8 MOE(Margin of exposure) 9 調製 加工 調理による影響 10 ハザードに汚染される可能性がある農作物 / 食品の生産実態 (1) 農産物 / 食品の種類 電気製品や繊維を難燃化するために使われた物質が環境中に放出されており あらゆる食品が汚染されている可能性がある 魚類 牛乳 母乳の汚染が知られている (2) 国内の生産実態 11 汚染防止 リスク低減方法 製造 輸入 使用の制限 環境への排出量の把握と排出抑制 6

12 リスク管理を進める上で不足しているデータ等 (c) 農林水産省 食品中の含有量のデータ 物質ごとの毒性データ DeBDE OBDE PeBDE についてはある程度のデータがあるが それ以外については皆無に等しい 13 消費者の関心 認識一部の消費者に環境問題として関心を持たれているが それほど広くは知られていない 14 その他 1) 塵などの吸入及び皮膚からの吸収による暴露や 電気器具 ( テレビなど ) や消火剤からの暴露が知られている 2) 家庭内のほこりに含まれる PBDEs の量が母乳中の PBDEs の量と相関することから ほこりからの暴露が有意であることが示唆されている 3) 食品からの暴露がヒトの総暴露量に占める割合がどの程度であるかはまだ不明である 7

表 1. 魚介類 ( 天然 ) 中の PBDEs 汚染調査結果 魚介類の分類 ウナギ目 カサゴ目 カレイ目 スズキ目 ( 注 1) 採取地域 ( 注 3) PBDEs 含量サンプル ( 注 2) 脂肪含量 (%) (ng/g, w/w) 数範囲中央値 東北 1 12-0.26 中部 1 12-0.82 中国 四国 3 3.40-13 0.31-0.41 0.31 九州 1 7.5-0.11 中国 四国 1 0.5-0.12 九州 1 0.37-0.05 東北 1 4.5-0.18 中国 四国 3 0.35-01.1 0.02-0.045 0.03 九州 2 0.30-01.4 0.04-0.08 0.06 東北 6 0.79-03.4 0.14-0.40 0.29 中部 10 0.46-14 0.03-2.9 0.37 中国 四国 6 0.51-02.3 0.04-0.41 0.073 九州 10 0.20-20 0.02-0.7 0.20 ダツ目 中国 四国 1 0.92-0.11 ニシン目 中国 四国 1 4.5-0.53 九州 3 0.74-01.8 0.09-0.17 0.13 ボラ目 中部 1 1.7-0.25 甲殻類 中国 四国 1 0.49-0.01 九州 2 0.12-0.19 0.01-0.033 0.022 中部 2 0.35-1.2 0.02-0.06 0.04 軟体類 中国 四国 1 0.26-0.02 九州 1 0.38-0.17 別紙 表 2. 魚介類 ( 養殖 ) 中の PBDEs 汚染調査結果 魚介類の分類 採取地域 ( 注 1) サンプル ( 注 2) 脂肪含量 (%) 数 ( 注 3) PBDEs 含量 (ng/g, w/w) 範囲中央値 サケ目東北 5 10.0-15 1.20-1.6 1.3 中部 4 4.1-17 0.19-2.8 0.55 スズキ目中国 四国 1 7.1-0.3 貝類中国 四国 1 2.3-0.05 表 3. 魚介類 ( 加工食品 ) 中の PBDEs 汚染調査結果 魚介類の分類 採取地域 ( 注 1) サンプル ( 注 2) 脂肪含量 (%) 数 ( 注 3) PBDEs 含量 (ng/g, w/w) 範囲中央値 甲殻類九州 1 1.0-0.05 ( 注 1) 各採取地域における採取地は以下の通り 東北 : 青森 石巻湾 女川湾 金華山沖 志津川湾 仙台湾 福島 8

中部 : 伊勢湾 三河湾 名古屋中国 四国 : 岡山 山陰 下津井 瀬戸内 日本海九州 : 天草 大分 鹿児島 熊本 長崎 ( 注 2)1-191 個体又は切り身で1サンプルとしている ( 注 3)PBDEs 含量は 23 化合物 (BDE-17, 28, 47, 49, 66, 71, 77, 85, 99, 100, 119, 138, 153, 154, 156, 183, 184, 191, 196, 197, 206, 207, 209) の総和詳細は以下の厚生労働省 HP を参照 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dioxin/index.html 9