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実践海洋情報論 84 4-5 植物プランクトンとクロロフィル 4-5-1 植物プランクトン 植物プランクトンは 海洋において最も基礎となる生産を行う生物である 個々の植物プランクトンを肉眼では見ることは困難である ほとんどの植物プランクトンは 2~3μm の小さいものから 20μm 程度の大きいものまで存在するが 目には見えない大きさである この小さな植物プランクトンがまとまった濃度になったとき 植物プランクトンの存在を肉眼で識別することが可能となる 宇宙から 微小な植物プランクトンを観察できるのは 集団で存在する植物プランクトンの微妙な色の違いから 植物プランクトンに含まれるクロロフィル-a の濃度を推定し クロロフィル-a の現存量として観察する方法である 植物プランクトンの種別の分布なども観測可能であると考えられるが ココリス等の特定種の観察に限定され 現在も研究が続けられている 表 4-4 にプランクトンのサイズ別分類を示す ミクロプランクトン ナノプランクトン ウルトラプランクトンが植物プランクトンのサイズ範囲である また ピコプランクトンにもクロロフィル色素を含有し 光合成を行うバクテリアも植物プランクトンに分類される 表 4-4 プランクトンのサイズ別分類 区分名称 英文名称 サイズ範囲 分類 マクロプランクトン macroplankton >2 mm 動物プランクトン ミクロプランクトン microplankton 20 μm - 2 mm 植物プランクトン ナノプランクトン nanoplankton 5-20 μm phytoplankton ウルトラプランクトン ultraplankton 2-5 μm ピコプランクトン picoplankton 0.2-2 μm バクテリア フェムトプランクトン femtoplankton < 0.2 μm ビールス 植物プランクトンは 海水中の炭酸イオンを吸収し 栄養塩と太陽光を利用し 細胞内のクロロフィル-a において光合成を行い 無機炭素を有機炭素へ変換する 植物プランクトンとして成長するものの 寿命は短く 成長した段階で動物プランクトンにより捕食され 食物連鎖のスタート点となる 一方 食物連鎖に乗らない植物プランクトンは そのまま海底方向へ沈降するか バクテリアにより分解され 無機炭素あるいは栄養塩となり 再び植物プランクトンの生産へ寄与する このような植物プランクトンの生態は 生物ポンプと呼ばれ 無機炭素を高次生態系へ輸送するか あるいは海底へ輸送するポンプの働きをもつ また 表層混合層あるいは表層の有光層の中において循環し 生態系を維持する

実践海洋情報論 85 4-5-2 植物プランクトンの分類 海洋の植物プランクトンの種類は大変な数となっているが 大まかな分類を学習しよう 分類では 真核生物 (Eukaryota) か真正細菌 (Bacteria) がドメインと言われる最も大きな分類である ドメインの下に界 亜界 門 綱 ( こう ) 亜綱 (Subclass) 目 (Order) 属あるいは科 (Family) と分類される これまでに様々な分類案が提案されてきたが 表 4-4 に示すように Adl 他 (2005) が真核生物の鞭毛を 1 本だけもつユニコンタを2つに 鞭毛を 2 本以上もつバコンタを 4 分類し 大きな流れを作った 珪藻 (diatoms): 珪藻は ダイアトムと総称され ケイ酸質の被革細胞をもる 1mm 程度の単細胞の大きさのものまで ミクロプランクトンの大きさである その種類は非常に多く 多くの研究者の研究対象となっている きれいな殻をもち 放射状に対称の形状を示す中心珪藻と 一つの軸に沿って左右対称の形状を示す羽状珪藻に分けられる これらの形状は海水中の沈降速度を低下すると考えられている また 珪藻の体はケイ酸で作られ その比重は海水より大きいが 浮力を維持するため水より比重の軽い油成分を体内にもつ 珪藻については 東京学芸大学生物学研究室のサイトを参照 http://www.u-gakugei.ac.jp/~mayama/diatoms/diatom.htm 渦鞭毛藻 (dinoflagellates): 多くの渦鞭毛藻は 珪藻より小型 ( ナノプランクトン ) であり 鞭毛 (flagella) をもつ 鞭毛により光合成を行うのに最適な深さへ移動すると考えられており 特定深度に集中する 多くの渦鞭毛藻の体はセルロースにより形成され 珪藻と異なり バクテリアにより分解されやすく 海底への堆積には貢献しない 多くの植物プランクトンは炭素を光合成により生成する独立栄養生物 (autotrophic) であるが 一部の渦鞭毛藻は有機物を捕食し炭素を取得する従属栄養生物 (heterotrophic) の形態をとるものもある 我々がニュースに見る赤潮を構成する代表的な植物プランクトンが渦鞭毛藻である 特に 沿岸域の養殖生簀の魚を呼吸困難にさせ 死滅されるほどの毒性種 あるいは ほたて貝に食べられ貝毒となる毒性種 全く無害だが海を赤く変化させるほどに大量に発生する種がある いずれも植物プランクトンの大増殖によるもので アルガエ ブルームと呼ばれ それらの中で 毒性種の大増殖をハームフル アルガエ ブルーム (HAB) と呼ぶ 渦鞭毛藻については 東京大学アジアセンターのサイトを参照 http://dinos.anesc.u-tokyo.ac.jp/ 円石藻 (coccolithophores): 円石藻は ナノプランクトンの大きさであるが 珪藻 渦鞭毛藻よりも小さく 現存量も少ない 特徴として円盤形状の炭酸カルシュウムの鱗片 ( 円石 ) をもつ この円石の機能については 浮力説 光強度制御説 捕食抵抗説などの諸説が挙げられている

実践海洋情報論 86 円石藻は外洋の貧栄養海域に生存し現存量は少ない しかし 北大西洋のエミリア ハックスレイ (Emiliania huxleyi) や太平洋のゲフィロカプサ オセアニカ (Gephyrocapsa oceanica) は 冨栄養状態で大増殖を示す ドーバー海峡に面した白亜と呼ばれる円石藻の堆積した隆起台地は 白亜紀に円石藻が二酸化炭素を固定し 海底に堆積したものである 一昔前の黒板に使用したチョークは この白亜から採取されたチョークである 以上の 3 種が主な植物プランクトンである この他に いくつかの海洋性植物プランクトンが存在する その中で 最も小さい植物プランクトンとして藍藻がある 藍藻 (cyanobacteria): 細胞膜をもつ真正細菌の中に藍藻が分類される シアノバクテリア門などと呼ばれるように バクテリアの仲間が存在する シアノバクテリアは 窒素固定能力を持ち 藍藻とよばれるように藍色 ( あいいろ ) を示すことから ブルー グリーン アルガエとも呼ばれる この藍藻の大ブルームは 衛星からも観測されることがある

実践海洋情報論 87 真核生物 (Eukaryota) 細胞の中に細胞核をもつ ユニコンタ (Uniconta) 鞭毛が 1 本バイコンタ (Biconta) 鞭毛が 2 本以上 表 4-4 微生物の分類 (ADL, S. M. 他 2005 から編集 Super-groups 1 次 2 次分類 例 アメーボゾア動物門 (Amoebozoa) アメーバ類と粘菌類 オピストコンタ界 動物 ( 後生動物 ) と真菌に加えて数グループの原生生物を含む 後方に鞭毛をもつ (Opisthokonta) リザリア界 ケルコゾア門 (Cercozoa) アメーバや鞭毛虫で土壌中の微生物 (Rhizaria) 有孔虫門 (Foraminifera) 網状仮足をもつアメーバ様生物 糸状 網状の仮の足をもつアメーバ様生物放散虫門 (Radiolaria) 軸足をもつアメーバ様生物 アーケプラスチダ界 灰色植物門 (Glaucophyta) 灰色藻 ( かいしょくそう ) 淡水にすむ単細胞真核藻類 (Archaeplastida) 紅色植物門 (Rhodophyta) 紅藻 ( こうそう海産多細胞性の藻類 海苔 川モズクなど 2 枚の膜に囲まれたプ 緑色植物門 (Chloroplastida) クラミドモナスなど単細胞の鞭毛虫 藻類と陸上植物など ラスチド ( 細胞小器官 ) クロムアルベオラー クリプト植物門 扁平なコメ粒型で 2 本の鞭毛をもつ タ界 (Cryptophyceae) Cryptomonadales, Goniomonadales (Chromalveolata) ハプト植物門 (Haptophyta) 細胞膜の表面に有機鱗片 炭酸カルシュウムの鱗片 珪酸質の鱗片をもつ ストラメノバイル亜界 (Stramenopiles) 不等毛植物門 (Heterokontophyta) 鞭毛に小毛をもつ不等毛生物 Pavlovophyceae, Prymnesiophyceae パブロバ亜綱 Diacronema Exanthemachrysis Pavlova Rebecca などプリネシウム亜綱ファエオキスチス目 (Phaeocystis) プリネシウム目 (Chrysochromulina Platychrysis など ) 円石藻目 (Calcidiscus Coccolithus( ( ココリス ) Syracosphaera など ) 褐藻綱 (Brown algae) 褐色の大型藻類珪藻綱ケイ酸質の被殻細胞 (Bacillariophyceae) 羽状目ササノハケイソウ科など Nitzschia など Diatom 中心目コアミケイソウ科など ( ダイアトム ) Coscinodiscus など黄金色藻 (Chrysophyta) 黄緑色藻 (Xanthophyceae) 卵菌綱 (Oomycetes) 菌類様の外見

実践海洋情報論 88 アルベオラータ上門 (Alveolata) 泡室 (alveoli) をもつ生物 アピコンプレックス門 (Apicomplexa) 頂端複合構造 (apical complex) をもつ寄生性の生物繊毛虫門 (Ciliophora) 全身に繊毛をもつ単細胞生物 ゾウリムシ ラッパムシ ツリガネムシなど 渦鞭毛藻門 ( うずべんもうそう ) (Dinoflagellates Dinoflagellates)( ダイノフラジレート ) 2 本の鞭毛をもつ単細胞藻類 有毒 有毒渦鞭毛藻 (Gymnodium breve Karenia breve など ) 褐虫藻 ( 従属栄養性 サンゴ ) 夜光虫 (Noctiluca) 赤潮 赤潮形成 (Heterocapsa Karenia Gymnodinium など ) 真正細菌 (Bacteria) 細胞膜をもつ原核生物 ( 真核生物以外 ) エクスカバータ界 (Excavata) 2 4 本あるいはそれ以上の鞭毛をもつ微生物 Fomicata, Malawimonas, Parabasalia, Preaxostyla, Jakobids, Heterobosea, Eugenozoa 藍色植物門 (Cyanophyta) Jakobids( ヤコバなど ) Heterobosea( ネグレリア アクラシスなど ) Eugenozoa( 例 : ミドリムシ トリパノソーマなど ) 藍藻 Cyanobacteria 藍藻門 ( らんそう ) シアノバクテリア門 プロテオバクテリア門 (Proteobacteria) など Chroococcales Pleurocapsales Oscillatoriales Nostocales Stigonematales 藍色細菌 窒素固定 窒素固定 Blue-green algae

実践海洋情報論 89 4-5-3 クロロフィル -a 海洋の植物プランクトンは 太陽光を受け エネルギを炭素同化作用に利用するとともに 有り余ったエネルギを蛍光あるいは熱として発散する 植物プランクトンには葉緑体が含まれ 炭素同化作用を行う 葉緑体は外膜と内膜の中に 明反応を行うティラコイドの集合体であるグラナと 暗反応を行うストロマの粘度の高い液体が含まれる 図 4-11 に葉緑体における明反応と暗反応の概念図を示す 1 明反応 (Light reaction) 個々のティラコイド膜は 受光機能と光化学系 II あるいは光化学系 I を持つクロロフィル a 分子 光化学系を持たないが受光機能を持ち補助色素として機能するクロロフィル-a 受光機能を持ち補助色素として機能するクロロフィル-b クロロフィル-c カロチノイド等の分子が含まれる 補助色素は 光子を受光し エネルギーを光化学系を持つクロロフィル a へ伝達するアンテナ複合体を構成する 植物プランクトンにより含まれる受光色素は異なるが クロロフィル a は各種植物プランクトンに共通して含まれる 光化学反応にともなう吸収スペクトルの変化の最大値から 光化学反応 I を P700 光化学反応 II を P680 と呼ぶ 光化学系 II では エネルギーを受け 水を分解し酸素と水素イオンをティラコイド ルーメン内に発生する さらに 光化学系 II と I とを結ぶ電子伝達チェーン (Elecron Transport Chain(ETC)) を通して水素イオンをティラコイド ルーメン内へ伝達する (Proton pumping) ティラコイド ルーメンで増加した水素イオンは ATP 合成酵素へ供給され ADP から ATP( 高エネルギ物質 ) が作られる 光化学系 I においては 光化学系 II から I へ供給される一部の電子と 自らが受光した光エネルギをもとに励起状態へ移り 電子をフェレドキシン フラビン タンパク質へ送り NADP から NADPH( 還元剤 ) を作る この一連の光化学反応において 電子伝達あるいは光化学反応に利用されなかったエネルギは 励起状態から基底状態へ戻るときに蛍光あるいは熱として放出される 実際に植物プランクトンへ光を照射したときに観察される蛍光は クロロフィル-a によるものがほとんどである このことから 補助色素から光化学反応 I と II までエネルギ伝達が 100% の効率であると考えられ 蛍光は光化学反応 I と II を持つクロロフィル-a から放出されると考えられている 2 暗反応 (Light independent reaction) 明反応系において作られた ATP と NADPH は ストロマによるカルビン回路 (Calvin cycle) と呼ばれる暗反応に利用される この暗反応は光の強度に依存しないことから暗反応と呼ばれる 暗反応では 二酸化炭素を取り込み ATP と NADPH によりグルコースを作る

実践海洋情報論 90 図 4-11 葉緑体における明反応と暗反応 3 蛍光光度計による海水中のクロロフィル-a 濃度測定蛍光光度計は 明反応において発光される蛍光 (In Vivo 蛍光 ) 強度を計測し クロロフィル -a 濃度を求めるものである In Vivo 蛍光はクロロフィル-a 以外の蛍光発光物質を分けて計ることができない また In Vivo 蛍光は植物プランクトンの光合成活性度に依存し 光合成活性度の高い昼間に弱い蛍光が計測され 逆に夜間は強い蛍光が計測される さらに 計測対象海域の植物プランクトンの種の構成により 蛍光応答が異なる しかし 蛍光強度とクロロフィル-a との間によい相関が認められることが多いため クロロフィル -a 濃度推定に利用される この場合 計測対象海域ごと あるいは計測時間について 適切な校正を行う必要がある 蛍光光度計測装置には 海水を連続的に汲み上げフローセルに流し続ける蛍光光度計と 現場海水へ装置そのものを投入する蛍光光度計が商品化されている 現場海水へ投入する蛍光光度計は 励起光を間欠的に発光させ 励起光に同期した蛍光強度測定を行い 背景光である太陽光の影響を最小限に抑える方式を採用している

実践海洋情報論 91 4 蛍光法によるクロロフィル-a 濃度の決定蛍光光度計を用い 植物プランクトン含有色素の抽出液からクロロフィル-a 濃度を決定する方が蛍光法として普及している 少量の採水海水によっても クロロフィル-a 濃度を決定することが可能である この方法は 現場海水を取水し グラスファイバフィルタなどで一定量をろ過し 植物プランクトンを捕集する アセトンあるいはジメチル フォルムアミドなどの有機溶媒により グラスファイバフィルタごと浸潤し 植物プランクトンから色素を抽出する 抽出溶液について 蛍光光度計により 励起された蛍光強度計測し クロロフィル-a 濃度を求める クロロフィル-a 濃度を直接読み取る Welshmeyer 法と 酸を加え連立方程式を解きクロロフィル-a とフェオ色素濃度を求める Holm-Hansen 法がある クロロフィル-a 濃度を直接読み取る Welshemeyer 法が普及しつつある Holm-Hansen 法 Chl-a = K (F m / (F m 1))(F b F a )(V e / V f ) Pheo-a = K (F m / (F m 1))(F m (F a F b ))(V e / V f ) ここで K は蛍光光度計の感度係数 V f はろ過した海水の濾過量 (L) V a はフィルタを浸潤した溶 媒の抽出量 (L) である F b は酸を添加する前の蛍光光度計表示値 F a は酸を添加した後の蛍光光度 計表示値 F m は計測系全体を考慮したアシッド ファクタであり純粋なクロロフィル-a の F b /F a から求める Welshemeyer 法 Chl-a = (F 0 V e ) / V f ここで F 0 は蛍光光度計の表示値 V f はろ過した海水の濾過量 (L) V a はフィルタを浸潤した溶媒の抽出量 (L) である 5 吸光法によるクロロフィル-a 濃度とその他の色素濃度の決定この方法は 蛍光法によるクロロフィル-a 濃度決定方法に比べると より大量の採水海水を必要とするものの クロロフィル-b -c カロチノイドの色素濃度を合わせて決定することができる 吸光分光光度計が安価で利用可能であり 最も簡単に運用可能な方法である 6 高速液体クロマトグラフィによるクロロフィル-a 濃度とその他の色素濃度の決定この方法は 蛍光法 吸光法と同様に 色素抽出液を用いるが 高速液体クロマトグラフィを用い 色素濃度を決定する クロロフィル各種色素のほかに 補助色素も合わせて決定可能である

実践海洋情報論 92 4-5-4 栄養塩 植物プランクトンの生産に必要なもののひとつが栄養塩であり 栄養塩が基礎生産を制限する律則因子の一つとなる 栄養塩の一つは 硝酸 (nitrate) イオン態 - (NO3 ) の窒素 亜硝酸 (nitrite) イオン態 - (NO2 ) の窒素 アンモニアイオン (NH4 + ) の窒素 あるいはアンモニア (NH3) の窒素である さらに リン酸 (phosphate) イオン態 3- (PO4 ) のリン オルトケイ酸 (H4SiO4) のケイ素と 鉄イオンである 無機窒素やリン酸が極端に少ない場合 有機窒素やリン化合物の窒素やリンを利用する また 独立栄養性 (autorophs) 以外の従属栄養性 (heterotrophs) の植物プランクトンは 有機化合物を摂取し 細胞を作る 湧昇海域や沿岸の湧昇海域では 有機化合物が少なく 従属栄養性植物プランクトンの生産性の律則となることがある 植物プランクトンは多孔質の被膜に覆われ 栄養塩イオンは拡散により植物プランクトンに取り込まれる 被膜の表面積に応じて栄養塩が取り込まれるため 栄養塩濃度の低い海域においては 表面積を大きくするため小さな細胞体となり 効率を上げていると考えられている また 栄養塩濃度の高い海域においては 光合成に利用する以上の栄養塩を体内に取り込み 栄養塩の減少に対して蓄積する機能をもつ 1 リンの循環リン 窒素 鉄 ケイ素はそれぞれ異なる速度で循環する 植物プランクトンが有機物として 動物に取り込まれ消費されるとき あるいはバクテリアなどの分解生物により分解されるとき リン 窒素 鉄 ケイ素の栄養塩として排出される リンは最も早い速度で循環し 窒素 鉄 ケイ素の順の速度で循環する リンの供給源のひとつは 陸上から供給される有機物あるいはリン酸イオンであり 河川流入水あるいは風雨をともなう大気により海洋へ供給される 陸から供給される有機物は バクテリアにより分解されリン酸イオンになる リン酸イオンの利用者は植物プランクトンに限定され 光合成により有機物となる 有機物としての植物プランクトンは食物連鎖の流れで 動物プランクトン 魚へと それぞれの高次生物による捕食の段階で酵素により消化され 有機物として捕食生体の体を作るとともに 不要な有機物はリン酸イオンとして排出される また それぞれの高次の生命体も最終的にはバクテリアにより分解されリン酸イオンになる 消化されずに海水中に残った有機物は海底へ堆積されるが 時間とともにバクテリアにより分解される 海洋中のリン酸は 海洋大循環 海洋湧昇 表層混合により 海洋全体における循環過程へ供給される

実践海洋情報論 93 リン酸の循環が早く 栄養塩として律則することは少ないと考えられ 時として過剰のリン酸により 富栄養化状態となることがある このため リン化合の合成洗剤の利用が控えられ 家庭から河川へのリン化合物の流出抑制の努力が続けられている 2 窒素の循環 窒素はアミノ酸として有機物を構成し 有機物が分解されるときに アンモニュウムイオン (NH4 + ) として排出される また 高次動物は 尿素あるいは尿酸の形で溶解状態の有機物として窒素を排泄する 尿素あるいは尿酸はバクテリアによりアンモニュウムイオンへ分解される さらに 特定のバクテリアにより アンモニュウムイオンが酸化され亜硝酸イオン - (NO2 ) となる また 別のバクテリアにより 亜硝酸イオンが酸化され硝酸イオン - (NO3 ) となる アンモニュウムイオンから亜硝酸イオン 硝酸イオンへの酸化速度は遅いが 深層では酸化が進み ほとんどが硝酸イオン態で存在する 表層混合層あるいは有光層においては 硝酸への酸化が間に合わず 時として 硝酸態窒素が植物プランクトンの生産を律則することがある その一方で 植物プランクトンは アンモニュウム 亜硝酸イオン 硝酸イオンから窒素を取得し 光合成に利用する 窒素は リンと同様に河川からの供給され 時として農業おける過剰な窒素肥料の施肥と過剰な余剰窒素の流出が海洋への負荷となることがある また 藍藻のように大気中の窒素を固定し 有機物を作る植物プランクトンは 硝酸イオンの律則となる海域では 貴重な窒素の供給機能をもつ 3 珪素の循環珪素は 珪藻の細胞を構成するケイ酸質の被膜 (SiO2) を作るために不可欠な栄養塩の一つである 珪酸質被膜をもった植物プランクトンは バクテリアにより分解されることはなく 科学的な分解を待ち リン酸 硝酸に比べ循環速度は非常に遅い 有光層において 珪素が光合成に利用されてしまうと 珪素の律則状態となり 珪素に依存する植物プランクトンの生産を抑制する 珪素も陸から供給される栄養塩である 大規模河川による供給は大きな因子となっており 中国大陸長江の中流域に作られた三峡ダム (2003 運用開始 ) により 懸濁物が上流側に堆積すると共に 懸濁物濃度の低下による珪酸態珪素の供給が減り 珪素の生産の抑制される状態が続いている 4 鉄の循環鉄イオンは リン酸態リン 硝酸態窒素 珪酸態珪素と同様に 栄養塩の一つと考えられるようになってきた 光合成において鉄イオンは不可欠の要素であり 鉄イオンが植物プランクトンの生産を律則する一つの栄養塩である 鉄イオンの供給源は陸であり 河川から供給される鉄イオンの恩恵に預かることが困難な外洋では 植物プランクトンの生産が低くなると考えられている

実践海洋情報論 94 5 レッドフィールド レシオレッドフィールド他 (1934) が 植物プランクトンが栄養塩の律則状態にないときに 炭素 水素 酸素 窒素 りんの原子比率 (C:H:O:N:P =) は 106:263:110:16:1 であることを報告した ここから 植物プランクトンの理想的な状態を表す比率として C:N:P=106: 16:1 表層の植物プランクトンでは 必ずしもレッドフィールド レシオが成立しないこともあるが 深層では安定してレッドフィールド レシオが適用可能である 一方 珪素を取り込む珪藻類の植物プランクトンは C:Si:N:P = 106:15:16:1 の原子構成比を示す 7 分析方法栄養塩濃度の定量のために吸光光度法が採用されている 硝酸塩 亜硝酸塩 リン酸塩 ケイ酸塩 アンモニア塩に対して 吸光特性を顕著にさせる反応試薬を組み合わせ 特定波長における吸光度から塩の濃度を決定する方法である 表 4-5 に栄養塩分析の試薬反応と反応生成物の分光吸収極大を示す この試薬反応と分光吸収極大計測を連続的に行うためのオートアナライザーが販売されている オートサンプラーは オートサンプリング部 サンプル送液ポンプ 試薬送液ポンプ 反応部 吸光光度計を組み合わせ 自動的にかつ連続的に栄養塩の濃度を測定する装置である 表 4-5 栄養塩分析のための試薬反応 ( 例 ) と反応生成物の分光吸収極大 分析対象イオン試薬反応反応生成物と分光吸収極大 亜硝酸イオン スフファニルアミド反応 ジアゾニウム塩 ナフチルエチレンジアミン反応 赤アゾ色素 =540nm の吸収極大 硝酸イオン還元剤との反応 亜硝酸イオン アンモニュウムイオン リン酸イオン 次亜塩素酸イオン反応 モノクロラミン フェノール脱塩酸反応 モリブデン酸反応 モリブデン リン錯体 還元 インドフェノールブルー =630nm 吸収極大モリブデン リン錯体還元体 =880-885nm 吸収極大 珪酸イオンモリブデン酸反応 モリブデン ケイ酢酸体 = 紫外吸収極大

実践海洋情報論 95 課題 8 クロロフィル -a と栄養塩の鉛直分布 1. サンプルデータ 2008 年 2 月 10 日のフィリピン パナイ島西岸沖合の採水海水の分析結果を表 4-5 に 2006 年 8 月 9 日の対馬西海峡の採水海水の分析結果を表 4-6 にそれぞれ示す この表の通り ラベルと数値をエクセルへ入力する 表 4-5 2008 年 2 月 10 日フィリピン パナイ島西岸沖合の採水海水の分析結果 Station Depth-m SiO2-S PO4-P NO3-N Chl-a 2008.02.10P 0 1.73 0.24 4.30 0.41 2008.02.10P 10 1.82 0.31 5.11 0.21 2008.02.10P 20 1.50 0.21 4.40 0.61 2008.02.10P 30 2.35 0.36 5.09 0.44 2008.02.10P 50 3.23 0.53 8.42 0.88 2008.02.10P 100 16.5 1.86 21.69 0.00 2008.02.10P μmol L -1 μmol L -1 μmol L -1 mg m -3 表 4-6 2006 年 8 月 09 日対馬西海峡の採水海水の分析結果 Station Depth-m SiO2-S PO4-P NO3-N Chl-a 2006.08.09T 0 3.45 0.07 1.48 5.94 2006.08.09T 10 4.40 0.07 0.66 11.60 2006.08.09T 20 6.65 0.07 1.00 10.30 2006.08.09T 30 8.17 0.07 1.00 9.42 2006.08.09T 50 9.07 0.18 2.99 4.87 2006.08.09T 100 16.15 0.74 9.81 0.92 2006.08.09T μmol L -1 μmol L -1 μmol L -1 mg m -3

実践海洋情報論 96 図 4-12 フィリピン パナイ島西岸沖のクロロフィル -a 栄養塩濃度深度分布 図 4-13 対馬西海峡におけるクロロフィル -a 栄養塩濃度の深度分布