目 次 1. 米卸売業の規制の変遷と現状 5. 精米工場の稼働率 2. 米卸売業の主な機能 6. 韓国における米流通 ( シンプルな流通形態 ) 3. 米卸売業の業界構造 7. 米流通の今後の方向 4. 米卸売業の経営状況

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Transcription:

資料 4 生産者に有利な流通 加工構造の確立に向けて ~ 米卸売業 ~ 平成 28 年 9 月 政策統括官

目 次 1. 米卸売業の規制の変遷と現状 5. 精米工場の稼働率 2. 米卸売業の主な機能 6. 韓国における米流通 ( シンプルな流通形態 ) 3. 米卸売業の業界構造 7. 米流通の今後の方向 4. 米卸売業の経営状況

1 米卸売業の規制の変遷と現状 食糧管理法 (~ 平成 7 年 ) 下では 国民の主食である米の安定的な供給のため 国による全量管理が基本であり 流通について厳格な規制を課していた 具体的には 生産者に対して政府への売渡義務を課すとともに 集荷 販売等については これを国ですべて実施することは困難であることから 一定の要件を満たす者にこれらの業務を行わせていた ( 許可制 ) こうした中 卸売業者には 国が買い入れた米を多数存在する小売業者に仕分け 分荷することや あらかじめ定められた販売先に適確に流通させることが求められており 横流しをした場合の罰則も課せられていた その後 消費者ニーズの多様化に対応するため 平成 16 年の食糧法改正により流通規制は原則撤廃され 法律上 卸売業者 小売業者の区分がなくなり 販売事業者の届出制に移行したが 新規参入の事業者に加え 食糧管理法時の許可卸売業者等もそのまま移行 存続し 多数の卸売業者が存在することとなっている 米穀の流通制度の変遷 比較 食糧管理法 (S17~H7) 現行食糧法 (H16~) 生産者 政府米 自主流通米 指定集荷業者 JA等)(指定法人 全農等)政 府 許可卸売業者 許可小売業者(消費者 生産者 届出出荷業者等 届出販売事業者等 消費者 流通規制の考え方 販売業者 食糧管理法 (~H7) 政府の直接売買により米の流通量をコントロール 流通経路を厳格に管理 集 出荷業者間 卸 小売業者間それぞれを厳格に区分した許可制 現行食糧法 (H16~) 消費者ニーズの多様化等に伴い 流通規制は原則撤廃 集 出荷業者間の区分 卸 小売業者間の区分のない出荷又は販売業者の届出制 1

2 米卸売業の主な機能 一般に 卸売業については 以下の左表に示す機能が考えられる 米の卸売業に当てはめた場合 一部の機能については一定の役割が認識されているものの 以下の右表に掲げるような課題が考えられるところ 卸売事業の一般的な機能 1 品揃え 分荷機能 産地から商品を買い入れ 保管するとともに消費者や実需者のニーズに応じて 必要な品目 量へと仕分け 送り届ける機能 2 加工機能 小売業者等が求める加工 (1 次加工等簡易なもの ) を行う機能 3 販売機能 産地から買い取った商品を 小売業者等多様なユーザー等に販売する機能 ( 輸出も含め 販売経路の開拓も ) 4 価格形成機能 需給動向等を反映した価格形成の一翼を担う機能 米の卸売業の場合 鮮度が重視され 小売店舗当たりアイテム数が多い青果物や水産物と比較して 保存がきき アイテム数が少ない米についてのこの機能について 今後どのように考えるか 量販店等高い品質管理が求められる需要先には 一定程度高度化された施設でのとう精が必要となるが とう精加工自体は高度なものではない中で この機能について 今後どのように考えるか 販売先の獲得 確保について 産地からは卸売業の一定の役割は認識されている しかしながら 販路の獲得については 今後は産地 集荷業 卸売業が共に取り組むべきではないか 米は相対取引が大部分を占めているところであり 卸売業の価格形成機能について 今後どのように考えるか 5 金融 危険負担機能 迅速かつ確実に販売代金の支払いを行う機能 ( 決済機能 ) 米は 取引当たりの取引額が比較的大きいことから 小口の取引の多くが前金制で行われる等 決済リスクを回避する仕組みはある程度浸透しているのではないか 6 情報受発信機能 需給に係る情報などを収集し 産地や小売事業者等に情報提供する機能 情報交換は様々な関係者間で行われており 卸売業が果たす役割について 今後どのように考えるか 2

3 米卸売業の業界構造 現在 全国で 260 以上の米卸売業者 ( 年間玄米取扱量 4,000 トン以上の販売業者 ) が存在 第 1 位の業者であっても年間取扱量 50 万トン以下 ( 全国シェア 8%) 上位 10 社の全国シェアでも合計は 35% と 上位の会社の全体の流通量に占める販売シェアは小さい 一方 年間取扱量が 1 万トン未満の卸売業者の数の割合は約 50% に上る これは 米の生産は各都道府県において広く行われており これを前提として県内流通を主とする卸売業者が存在してきたこと 食糧管理法時の許可卸売業者等が現在でもそのまま残存していること等によるものと考えられる 米卸売業の経営については 不動産業などの副業を営んでおり 米卸売業が不振でも経営を継続できる といった実態がある 米卸売業者の分布図 ( 本社所在地 ) ( 年間玄米取扱量 4,000 トン以上の販売業者 ) 全国 263 社 ( 平成 28 年 5 月末現在 ) 規模別業者数 ( 平成 28 年 5 月末現在 ) ( 年間玄米取扱量 4,000 トン以上の販売業者 ) 1 万トン未満 128 社 (49%) 年間取扱量 10~50 万トン 11 社 (4%) 5~10 万トン 10 社 (4%) 2~5 万トン 45 社 (17%) 1~2 万トン 69 社 (26%) 米卸売業者が現状のまま経営を継続する理由 ( 業界への聞取り ) 米卸売業者の販売量とシェア ( 平成 26/27 年 ) ( 年間玄米取扱量 4,000トン以上の販売業者 ) ( 単位 : 万トン ) 順位 事業者名 販売数量 シェア 1 A 卸 46 8% 2 B 卸 31 5% 3 C 卸 29 5% 4 D 卸 15 3% 5 E 卸 15 3% 6 F 卸 15 3% 7 G 卸 13 2% 8 H 卸 12 2% 9 I 卸 11 2% 10 J 卸 11 2% 上位 10 社 197 35% 全国 568 - 資料 : 米穀の取引に関する報告 等を基に農林水 産省が作成 ( 卸売業者間の取引を含む ) 一部の小規模な事業者においては 米卸業が不振でも他の 副業 による利益により米卸業を継続できる 米卸売業者を経営する者の中には 地元の名士が多く 現在も資産家が多い 経営不振になっても 不動産を担保に運転資金を借り入れることができる 精米工場の老朽化が進んでいる業者は 工場の償却が済んでいるため 経費への負担が少なく その結果 施設の集約や更新が進まない 3

4 米卸売業の経営状況 米卸売業は 玄米を仕入れ それをとう精して販売するという経営のため 付加価値を生み出しにくく 薄利多売により利益を出す傾向 このため 必ずしも経営基盤は安定しておらず 近年の消費減退や米価の変動等による経営への影響を受けやすく 毎年 全体の 2~4 割程度の米卸売業者が経常欠損を出している なお 米卸売業と同様の加工業である小麦粉製造業や糖類製造業においては 業界の再編が一定程度進み 経営の多角化や製造コストの削減等により 営業利益率は米卸売業者を上回っている 米卸売業者の営業収支 ( 総売上高に対する割合 ) の内訳 H22 年 H23 年 H24 年 H25 年 H26 年 売上総利益率 8.6% 9.2% 8.1% 7.3% 9.5% 米穀のみ 7.3% 8.0% 6.8% 5.6% 7.6% 販売費 一般管理費率 7.6% 7.8% 7.4% 7.3% 8.7% 営業利益率 0.9% 1.4% 0.7% 0.04% 0.8% 参考 : 経常欠損卸率経常欠損卸数 27.1% 21.9% 38.8% 45.8% 26.0% 出典 : 米穀安定供給確保支援機構が作成している 米卸売業者の経営概況 から引用 ( 参考 )H25 年の営業利益率が大幅に低下している理由需給緩和を背景に 平成 25 年産の米価は前年に比べ大幅に下落 高値で仕入れた平成 24 年産在庫の販売差損等により 営業利益が大幅に減少したもの ( 参考 ) 他業種の営業収支 ( 平成 22 年度 ) 小麦粉製造業 糖類製造業 売上総利益率 23.4% 22.6% 販売費 一般管理費率 19.1% 16.1% 営業利益率 4.3% 6.5% 出典 : 食品企業財務動向調査報告書 農林水産省平成 23 年度 6 次産業推進中央支援事業 6 次産業化財務動向調査の実施 注 : 糖類製造業とは 砂糖製造業 砂糖精製業 ぶどう糖 水あめ 異性化糖製造業である 4

5 精米工場の稼働率 精米工場の稼働率は 昭和 60 年では60% 以上 その後 年々下がり続け 近年では50% 程度で推移 一方で 年間とう精数量 5 万トン以上の精米工場は 稼働率が90% 以上 地域別には 全国各地域ともに5~6 割程度 稼働率の推移 昭和 平成 60 年 元年 5 年 10 年 15 年 20 年 25 年 26 年 稼働率 63% 55% 53% 42% 51% 57% 50% 52% 地域別稼働率 全国 稼働率 :52% 企業数 :263 社工場数 :289 工場 東海 北陸 北海道 稼働率 :55% 企業数 :13 社工場数 :16 工場 資料 :( 一社 ) 日本精米工業会からの提供データを基に作成 (1 馬力 1 時間当たりとう精能力 ) 年間とう精数量別稼働率 ( 平成 26 年 ) (1 日 ) (1 ヶ月 ) (1 年 ) 注 : 稼働率 : 年間とう精数量 /( 馬力数 48kg 8 時間 22 日 12 ヶ月 ) 九州 沖縄 稼働率 :60% 企業数 :40 社工場数 :47 工場 稼働率 :54% 企業数 :35 社工場数 :42 工場 東北 稼働率 :51% 企業数 :31 社工場数 :32 工場 年間とう精数量 5 万トン以上 3~5 万トン 1~3 万トン 1 万トン未満 関東 稼働率 91% 74% 55% 32% 資料 :( 一社 ) 日本精米工業会からの提供データを基に作成 ( 平成 26 年 ) 近畿 稼働率 :46% 企業数 :85 社工場数 :80 工場 中国 四国 稼働率 :54% 企業数 :23 社工場数 :35 工場 稼働率 :57% 企業数 :36 社工場数 :37 工場 資料 :( 一社 ) 日本精米工業会からの提供データを基に作成注 : 稼働率は 26 年 企業数 工場数は 28 年の値である 5

北海道 高橋商事 ホクレンパールライス工場 クワハラ食糧 ホクレンパールライス砂川工場 北海道中央食糧 江別精米工場 松原米穀 アサヅマ グラシス 食創精米工場 ほくべい 旭川食糧 東北 北陸地方 舞台アグリイノベーション 亘理精米工場 全農ライフサポート山形 全農秋田県本部米穀部精米センター 東北むらせ精米工場 米心石川 菅原精米工業 全農パールライス 新潟精米工場 新潟ケンベイ魚沼工場 JA ライフ富山米穀事業部精米工場 パールライス宮城本社精米工場 純情米いわて精米センター ナカリ 全農青森県本部パールライスセンター 藤井商店新潟精米工場 飯島米穀 精米工場 宮城ライス精米工場 諸長魚沼精米工場 神山物産 中橋商事 大潟村あきたこまち生産者協会 諸長見附工場 ライケット八戸精米工場 とやま食販 髙田食糧 ジェイエイてんどうフーズ 関東地方 ヤマタネ東京精米工場 ヤマタネ岩槻精米工場 神明東京工場 神明富士御殿場工場 伊丹産業 埼玉精米工場 伊丹産業 千葉精米工場 むらせ首都圏工場 田島屋土浦工場 田島屋つくばセンター 全農パールライス 神奈川精米工場 全農パールライス 八王子工場 全農パールライス 埼玉精米工場 ) カカシ米穀 マイパール長野 全農パールライス 千葉精米工場 武蔵糧穀鴻巣精米工場 全農茨城県本部パールライス精米工場 関東穀粉 北相米穀 相模原精米センター 栃木米供給総合センター精米工場 新橋産業 鹿嶋工場 ナオイ蕨精米工場 栃木県中央食販 小山センター はくばく精米工場 イトーセーブ精米工場 木徳神糧 桶川工場 千田みずほ 横浜工場 木徳神糧 本牧工場 神明精米関東工場 ベイクックコーポレーション ミツハシ本社工場 ナンブ川口精米センター ミツハシ 丸紅ライス 東洋ライス サイタマ工場 ユアサ フナショク 高瀬工場 杉田商店 浜松米穀 高林工場 実取商事 東海澱粉 遠州米穀磐田精米センター ミツハシ無洗米工場 名糖商事 東京山手食糧販売協同組合川越精米工場 高橋食品 ニューノザワフーズ (50) 大和産業 ヤマトライスセンター 精米工場一覧 ( とう精能力 50t/ 日以上の 137 工場 ) 東海地方 愛知県経済連パールライス安城工場 全農岐阜県本部米穀部製造課 ミエライス 近畿地方 伊丹産業 伊丹精米工場 木徳神糧 滋賀工場 京山長岡京物流センター 全農パールライス 兵庫工場 パールライス滋賀 阪神米穀 西宮浜工場 幸南食糧 神明西宮浜工場 津田物産 京山横大路物流センター 幸福米穀 大阪第一食糧泉佐野工場 神明阪神工場 ライスフレンド フジタ精米人 東洋糧穀 播州精米 ヒョウベイ精米センター 中国 四国地方 神明中四国工場 ( 広島 ) 広島食協 深川精米工場 全国農業協同組合連合会広島県本部 岡山パールライス 精米工場 JA アグリ島根パールライス工場 木徳神糧 岡山工場 ひめライス 山口農協直販 精米センター 下関食糧 下関精米工場 瑞穂糧穀 下関精米工場 香川県食糧事業協同組合 広島県東部食糧協同組合 糧配 鳥取県食 神明九州工場 九州地方 鹿児島パールライス 木徳神糧 福岡工場 JA 熊本経済連パールライス工場 エフコープライスセンター 全農福岡県本部ライスセンター サンフリード佐世保精米工場 九州むらせ 福岡工場 アグリック 坂本食糧 福糧 佐賀県食糧 福岡農産 マルヨシ物産 沖縄食糧 第一食糧 H28 年 8 月時点 調査対象 : 1: 全米販系及び全農系 ( 経済連含む ) 卸売業者の精米工場 2: その他 不作等による政府備蓄米放出時の特例販売の有資格者等 名古屋食糧飛島精米工場 名古屋食糧一宮第 2 精米工場 大榮産業 津島工場 近喜商事 ギフライス ( 参考 ) SQF 2 工場 FSSC22000 6 工場 ISO22000 3 工場 ISO9001-HACCP 1 工場 ISO9001 55 工場 HACCP のリスク分析手法を取り入れた規格 (12 工場 ) 大手量販店等への販売や輸出を行う際に 食品安全等に関して一定の品質管理規格を満たしていることが条件となる場合がある < 精米工場の分布図 > とう精能力 150t/ 日以上 23 工場 とう精能力 100~150t/ 日 35 工場 とう精能力 50~100t/ 日 79 工場 とう精能力 50t/ 日未満 152 工場 合計 289 工場 6

6 韓国における米流通 ( シンプルな流通形態 ) 韓国では 米の収集から乾燥 貯蔵 とう精 販売までを一貫して行う RPC(Rice Process Complex: 米穀総合処理場 ) が米の流通の中心 RPC は日本の集荷業者 とう精業者及び販売業者の機能を併せ持っており 3 段階の流通段階を経由するわが国とは相異なる シンプルな流通形態となっている 日本の米の流通形態 韓国の米の流通形態 生 産 者 100% 販売委託 64% J A 等 販売委託 48% 全農 経済連等 販売 48% ( 玄米 ) ( 玄米 ) ( 玄米 ) JA 系約 700 全集系約 1,100 JA 系全農県本部 34 経済連 8 全集系 34 組合 卸売業者 業者数 約 300 年間取扱量 4000トン以上 販売 76% 小売 中食外食業者等 販売 85% ( 精米 ) ( 精米 ) 販売 16% 13% 2% 1% 消 費 者 生 産 者 100% 買取販売 95% (R( もみ ) 集荷 とう精 販売業者 RPC 224 カ所 PC)販売 55% ( 精米 ) 販売 12% 小売 中食外食業者等 ( 精米 ) 消 費 者 農家直販 36% 15% 7% 14% 農家直販 5% ( 精米 ) 1 流通量には 加工用米 もち米 自家消費等を含まない 2 流通割合は 農林水産省 米をめぐる関係資料 を基に算出 ( データは 2014 年度 ) 1 流通量には 自家消費を含まない 2 流通割合は 韓国農業中央会資料等を基に算出 ( データは 2009 年度 ) 3 業者の在庫を含むことから 業者からの販売割合と生産者からの販売割合とは一致しない 4 韓国においても RPC から小売 中食外食業者等の間を経由する流通業者は存在するが とう精等を行う日本の卸売業者とは性質が異なる 7

参考 韓国の RPC( 米穀総合処理場 ) について RPC の概要 RPC(Rice Processing Complex) は 稲を収集 乾燥 保存して 加工 ( とう精 ) 包装した後に消費地市場に販売する 米穀総合処理場 ( 農協又は民間法人が運営 ) で 米産地流通の中核 90 年代初頭より 政府からの援助を受ける等 政策的な誘導のもとで整備が進められた ( 籾買入れ ) (RPC 全景 ) ( 精選包装 ) RPC 数の推移 RPC は 1991 年に 2 カ所開設され 2001 年には 328 カ所まで増加したが 現在 (2015 年 ) は 224 カ所が運営中である 1991 年 2001 年 2010 年 2012 年 2014 年 2015 年 箇所数 2 328 253 233 234 224 出典 : 韓国農林畜産食品部食糧政策官食糧産業課 RPC の加工 流通費用等 韓国農水産食品流通公社が 2014 年に行った調査によれば RPC による一般稲の籾買入価格 (2014 年産 ) は 1,275~ 1,525 ウォン /kg 籾となっており これに 加工費用 175 ウォン /kg 精米 包装費用 25 ウォン /kg 精米 流通費用 30 ウォン /kg 精米が加算される イメージ ( 単位 : 円 /kg 籾 円 /kg 精米 ) 籾買入価格加工費用包装費用流通費用 127.5~152.5 17.5 2.5 3 資料 : 韓国農水産食品流通公社調べ (2014 年 ) 注 :1 ウォン =0.1 円で換算 8

7 米流通の今後の方向 現在の米卸売業は 中小規模の企業が多数あり 過当競争となっており その結果 十分な利益が確保されておらず 経営基盤が不安定 このため 米流通において今日特に期待される機能 ( 実需者との価格交渉力を背景とした生産者への適切な対価支払や 生産者との安定取引 ) が必ずしも十分に果たされていない 流通の合理化によるコスト削減などを促進することで 生産者 消費者にとってより有利な安定取引を通じた農業の体質強化を実現 現 状 課 題 米流通の今後の方向 米卸売業は 中小規模の企業が多く 個々の経営規模は零細 米卸売業は 過当競争となっており 厳しい経営状況 JA 全農 卸売業者と多くの流通段階を経由していることにより 一定の流通コストがかかっている状況 需要を上回って米が生産されても JA 全農等により そのまま全量が集荷され 在庫が残って農家の手取が下がっても責任の所在が曖昧 米卸売業は 実需者との価格交渉力が弱く 結果 生産者の所得向上につながりにくい 米卸売業は 適正な利益が確保できず 米の付加価値向上を図るための体力が弱い 生産者が事前契約 複数年契約を進めようとしても 卸売業者は安定して契約を結ぶ相手になりにくい 生産者や JA 等が自ら販売先を開拓できず 直接販売が進みにくい (= 販売力がない ) 〇生産者 JA 等が 自ら販路を開拓するとともに 流通を合理化してコストを削減 〇生産者 JA 等と実需者との間で事前契約や複数年契約などの安定取引を促進 〇生産者 JA 等が 高度な衛生管理に対応できるとう精工場の設置 新業態 新商品開発等を通じて商品の付加価値向上に資する取組を実施 生産者 消費者にとっ てより有利な安定取引 9