平成 26 年 3 月 22 日版 愛知県臨床検査標準化ガイドライン 呼吸機能検査における手引書 第 1 版 平成 26 年 1 月 愛知県臨床検査標準化協議会 AiCCLS : Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
発刊によせて 愛知県臨床検査標準化協議会 会長 伊藤宣夫 厚生労働省の統計によると 2011 年の COPD( 慢性閉塞性肺疾患 ) による死亡順位は全体で 9 位になっている また 日本人の COPD 有病率は順天堂大学福地氏らの 2001 年 NICE スタディによると 8.6% 患者数 530 万人と推定されている しかし 2011 年の厚生労働省患者調査によると 病院で COPD と診断された患者数は約 22 万人であり COPD であるのに受診していない人は 500 万人以上いると推定される 多くの人が COPD に気づいていない または正しく診断されていない可能性が高い COPD の診断は呼吸機能検査の 1 秒量により判定されるので 人間ドックの受診により早期診断が可能である また 一般病院では呼吸機能検査は画像診断とともに呼吸器診療の根幹ともいうべき検査であり さらに手術前の検査としても実施されている 呼吸機能検査を必要とする被検者がどの医療機関でもどの検査者でも同レベルの結 果が得られることにより 医療の質の向上につながるので この手引書が皆さんに広 く利用され 呼吸機能検査の標準化に寄与することを期待する 2014 年 1 月
本手引書のねらい 呼吸機能検査をはじめ 生理機能検査は 検査者の知識と技術 被検者の理解と協力 によりデータが大きく変化します なかでも 呼吸機能検査は被検者の理解と協力があってこそ検査できる項目であり 検査方法や評価の仕方は施設や検査者によって差がでやすいと考えられます そして 呼吸機能検査に関する出版物として 日本呼吸器学会 呼吸機能検査ガイドライン や日本臨床衛生検査技師会 呼吸機能検査の実際 などが発行されています そこで本書では 施設間差 被検者間差をなくすために 機器の精度管理とメンテナンス 測定方法とポイント 検査結果の採択基準について記載しました 以前の標準化協議会アンケートにて 呼吸機能検査を行っているのは臨床検査技師と少数ですが看護師が担当の施設があることや 担当者が施設に一人のため メーカーや独学による検査実施となっていることを把握しています 本手引書を新人教育などにご利用いただき 呼吸機能検査を必要とする被検者がどの病院でもどの検査者でも同レベルの結果が得られるように活用していただければ幸いです また 巻末に本手引書で使用する用語集をまとめたので参考にしてください
目 次 頁 Ⅰ. 呼吸機能検査における用語の定義 1 Ⅱ. スパイロメータ 3 Ⅲ. 精度管理とメンテナンスについて 4 Ⅳ. 感染対策について 6 Ⅴ. 呼吸機能検査の準備 8 Ⅵ. 呼吸機能検査の実際 11 1. 肺活量 (vital capacity;vc) 11 2. 努力性肺活量 (forced vital capacity;fvc) 13 3. 肺活量と努力性肺活量の評価と主な疾患 17 4. 機能的残気量 (functional residual capacity;frc) 18 5. 肺拡散能力検査 (lung carbon monoxide diffusing capacity;dlco) 21 6. 気道可逆性検査 24 Ⅶ. 予測式について 27 Ⅷ. 用語集 28 Ⅸ 参考文献 29
Ⅰ. 呼吸機能検査における用語の定義 1. スパイロメトリー 呼吸機能検査の基本である肺気量分画は呼吸の深さにより予備吸気量 (IRV) 1 回換気量 (TV) 予備呼気量 (ERV) 残気量(RV) という 4 つの 1 次分画 (volume) と 2 つ以上の 1 次分画からなる 2 次分画 (capacity) とで構成され 2 次分画は全肺気量 (TLC) 肺活量(VC) 最大吸気量(IC) 機能的残気量 (FRC) の 4 つある ( 図 1) スパイロメトリーは呼吸機能検査のもっとも基本的な検査法で X 軸に時間を取り Y 軸に肺気量の変化を記録するもので この記録曲線をスパイログラム ( 図 2) 測定装置をスパイロメータという スパイロメトリーでは RV は直接測定できない ( 図 1 の網掛け部分 ) ので FRC や TLC は測定できない これらは FRC を求めることにより その結果とスパイロメトリーの組み合わせで TLC=FRC+IC RV=FRC-ERV として算出する 1)VC( 肺活量 ) %VC( 対標準肺活量 ) FVC( 努力性肺活量 ) 肺活量は測定の仕方により呼び方が異なる VC は ゆっくりと呼吸した際に測定される最大呼気位と最大 吸気位の間の肺容量変化のことで FVC との比較から Slow VC(SVC) ともよばれる ( 図 2-A) 性別 年齢 身長から求めた標準値に対する割合を %VC( 対標準肺 活量 ) という 最大吸気位からできるだけ速く最大努 力呼気をさせて得られるスパイログラムを努力呼気曲 線 (Tiffeneau 曲線 ) と呼ぶ この曲線の最大吸気位 から最大呼気位間の肺気量変化を forced VC(FVC) という ( 図 2-B) 2)FEV1(1 秒量 ) %FEV1( 対標準 1 秒量 ) 努力呼気曲線から単位時間あたりの肺気量変化を求 めることができ 努力呼気開始から 1 秒間の呼出肺気 量を FEV1(1 秒量 ) という ( 図 2-B) 性別 年齢 身長から求めた標準値に対する割合を %FEV1( 対標準 1 秒量 ) という 全肺気量 ( T L C ) 肺活量 ( V C ) 最大吸気量 ( I C ) 機能的残気量 ( F R C ) 予備吸気量 (IRV) 1 回換気量 (TV) 予備呼気量 (ERV) 残気量 (RV) 最大吸気位 (MIP) 安静吸気位 (EIP) 安静呼気位 (EEP) 最大呼気位 (MEP) 2 次分画 1 次分画 図 1 スパイログラムと肺気量分画の関係 TLC :total lung capacity VC :vital capacity IC :inspiratory capacity FRC :functional residual capacity IRV :inspiratory reserve volume TV :tidal volume ERV :expiratory reserve volume RV :residual volume - 1 -
L 6 肺活量 L 6 努力呼気曲線 1 秒 4 容 2 量 0 4 容 2 量 0 1 秒量 (FEV1) 努力性肺活量 (FVC) 0 20 40 秒 0 4 8 秒 図 2-A スパイログラム肺活量 図 2-B スパイログラム努力呼気曲線 3)FEV1/FVC(1 秒率 ) この指標は Gaensler の 1 秒率とも呼ばれる この他 2. フローボリューム曲線 (Flow-Volume 曲線 V-V 曲線 ) に FEV1/VC で得られる Tiffeneau の 1 秒率もある この Tiffeneau の 1 秒率は慢性閉塞性肺疾患 (chronic obstructive pulmonary disease:copd) 患者では空気のとらえこみ (air-trapping) により呼出しにくくなるので 1 秒率の参考となる 気流速度と肺気量の関係を図示したものがフローボリューム曲線であるが 最大吸気位から最大努力呼気したときに記録されるフローボリューム曲線 (Maximum Expiratory Flow-Volume Curve)( 図 3) のことを 単に フローボリューム曲線 と呼ぶこと が多い 流速 (L/S) PEF. V75. V50. V25 1)PEF(Peak Expiratory Flow: 最大呼気流量 ) フローボリューム曲線において 初期に出現する呼 気流量の最大値を表す.... 2)V50 V25 V50/V 25 FVC の最大吸気位を 100% 最大呼気位を 0% とし たときの 50% 肺気量位の呼気流量を V. 50 25% 肺気 75%VC 50%VC 25%VC 流量 (L) FVC を 4 等分 量位の呼気流量を V. 25 その比を V. 50/V. 25 で表す 図 3 フローボリューム曲線 - 2 -
Ⅱ. スパイロメータ ボリュームの測定方法により気流型 ( 図 4-1) と気量型 ( 図 4-2) に分けられる さらに 精密分析はガス分析計を有し ヘリウム分析計 一酸化炭素分析計 窒素分析計の 3 種類の分析計がある ヘリウム分析計は閉鎖式機能的残気量 (FRC) 測定時 一酸化炭素分析計は肺拡散能力 (DLco) 測定時 窒素分析計は開放式機能的残気量測定時とクロージングボリューム測定時に使用する 管の中を流体が通過する際に生じる圧の低下は流量に比例する に基づくものである 差圧計の種類には Fleisch 型と Lilly 型がある 2) 熱線流量計 気流が引き起こす温度変化に応じて熱線の抵抗値が変化することを応用した測定法である 流速は King の式より求める 熱線式はガスの組成 温度 湿度の 影響を受けやすく 滅菌や消毒がしにくい等の欠点も 1. 気流型 ( 流速型 流量型 ) あり注意が必要であるが 最近の熱線式のセンサーは 洗浄も可能であり使いやすくなっている 装置も小型化で電子スパイロメータと呼ばれる 差圧式流量計 ( ニューモタコグラフ ) や熱線流量計などを用い 流速を測定する 容積は流速を積分して算出する 装置は比較的安価であるが 測定項目は限られる 1) 差圧式流量計 回路に抵抗体を置き その入口から出口までの差圧 2. 気量型 ( 容量型 容積型 ) ベネディクトロス型とべローズ型の 2 種類があるが 現在ベネディクトロス型はほとんど用いられていない 容積変化により肺気量を算出する 流速は気量を微分して算出する 精密呼吸機能検査 (FRC DLco 気道抵抗など ) の測定が可能であるが 装置が高価である を測定することにより気流を測定する 気流の測定は Hagen-Poiseuille の法則 層流状態にある限り 細い 図 4-1 気流型図 4-2 気量型 ( べローズ型 ) - 3 -
Ⅲ. 精度管理とメンテナンスについて 最近の呼吸機能測定装置はコンピュータ内蔵で較正 ( キャリブレーション ) も半自動化されている しかし 較正シリンジ や既知健常者を用いて 機器が正確に作動していることを毎日確認することが精度管理 2) メンテナンス 検査終了後 センサーの洗浄を行い 清潔に保つ 洗浄方法は各説明書に従い 洗浄後は完全に乾燥させてから使用する 上重要である ( 表 1) 以下に一般的な精度管理及びメ ンテナンスについて述べるが測定機器や原理の違いにより異なるので 詳細は必ず機器に付属している説明書に従う 較正シリンジには容量が 3L あるいは 2L のものがあり 抱えるとシリンジ内の空気が暖まり不正確となるため 机などにおいて使用する また シリンジの引き終わりおよび押し終わりは 強く当てると誤差を生じるため注意する 気量が期待値の ±3% 以内であることを確認する 2. 気量型スパイロメータ 1) 精度管理 装置を安定させるため 電源投入後 30 分程度 ( ガス分析装置安定のため ) ウォームアップ時間をとる 気温 37 度 気圧 760mmHg と入力する (BTPS 係数を 1.00 にするため ) 毎日 検査前に 3L あるいは 2L の較正シリンジを用いて VC が ±3% 以内であることを確認する ( 図 6) FRC DLco は少なくとも週に 1 度は ±5% 以内であることを確認する 外れた場合は 1. 気流型スパイロメータ 回路上の漏れや 温度と気圧の入力ミスなどが考えら れる 1) 精度管理 装置 ( 熱線センサー ) を安定させるため 電源投入後 20 分程度ウォームアップ時間をとる 毎日 検査前に 3L あるいは2L の較正シリンジを用いて VC が ±3% 以内であることを確認する ( 図 5) 外れた場合は回路上の漏れやセンサーの汚れなどが考えられる 較正シリンジ 較正シリンジ 図 5 気流型スパイロメータの較正 図 6 気量型スパイロメータの較正 - 4 -
2) メンテナンス (1) 蛇管の洗浄 業務終了後毎日行う (3) シリカゲル 呼気中の除湿剤として使用する カラムの 2/3 が 青色から紫色に変色したら交換 ( 図 8-1) し ス ポンジが潰れないような量であること ( 図 8-2) (2) ベル内部の清拭 被検者毎に十分な回路内の空気の洗い出し操作を 行う 業務終了後清拭し乾燥させる ( 図 -7) (4) ソーダライム 機能的残気量測定とヘリウムや一酸化炭素分析計 に使用する 呼気の飽和水蒸気で固まり合うケーキング現象が起こるので 始業時に転倒混和し反応面を変える また 交換時期は使用頻度により異なるが一定期間で交換し 必ず死腔量 の測定を行う ガス分析用のソーダライムはシリカゲル交換時に交換し スポンジが潰れないような量であること ( 図 8-2) 図 7 装置の扉を開けた状態 死腔量測定は呼吸管やソーダライムを交換した 時に回路内の体積が変わるので必ず行う 検査前交換時期の変色状態スポンジが潰れない量であること ソ - ダライムシリカゲルソ - ダライムシリカゲル 図 8-1 図 8-2 表 1 機器の点検 毎日週に 1 回月に 1 回年に 1~2 回 使用前 十分なウオーミングアップ コンピュータの動作確認 機器の清浄が保たれていること 環境データ( 気温 湿度 気圧 ) 入力 気量の較正と精度管理 ガスホース接続確認 ガスの開栓と残量チェック ソーダライム シリカゲルの接続確認 既知健常者による測定値の精度確認 電源コードとプラグの安全点検 機器メーカーによる定期点検 使用後 電源スイッチ OFF 機器の清浄と消毒 ガスの元栓を閉める - 5 -
Ⅳ. 感染対策について 1. 感染対策のポイント 2. 感染者への対応 1) スパイロフィルターを使用することで感染者による装置の汚染を防ぎ また 1 被検者につき 1 個使用することで被検者間の感染を予防できる スパイロフィルターの種類を示す ( 図 9) 1) 結核または結核が疑われる患者の検査行わない 2) 飛沫予防策が必要な病原体 ( マイコプラズマ インフルエンザ 風疹など ) の感染 あるいは感染の疑いのある患者は検査を控えることを原則とす 1 2 る やむを得ない場合は順番をその日の最後とし 検査者はサージカルマスクを着用する 3) 接触予防策を必要とする病原体 ( メチシリン耐性黄色ブドウ球菌など ) が気道系に感染している患者 口腔内に明らかな出血や血痰がある患者は検査を控えることが望ましいが やむを得ない場合 1 シリコンマウスピースまたは紙マウスピースを接続して使用するスパイロフィルター 2 マウスピース付スパイロフィルター 図 9 スパイロフィルターの種類 は順番をその日の最後とし 消毒方法に従って消毒をおこなう また 検査者は必ずサージカルマスクを着用する 4) 感染者の検査後は装置の清掃と消毒を行う 以下 に消毒方法を示す ( 表 2) マウスピース トラン 2) マウスピースは患者ごとに交換し シリコンマウスピースを使用した場合は高水準消毒 あるいは流水下で確実な洗浄を行った後に高圧蒸気滅菌を必ず行う 3) ノーズクリップはティッシュペーパーなどでカバーして使用し カバーは患者ごとに交換する スジューサー 呼吸回路は高水準消毒を基本とするが 中水準消毒で結核菌その他の細菌 ほとんどのウイルスや真菌を不活化もしくは死滅させることができる 基本的に流水による洗浄が最も大切であり 乾燥 保管は汚染されていない場所で行う 4) 検査者はサージカルマスクを着用し被検者からの感染を予防し 被検者毎に石鹸と流水による手洗いおよび アルコールをベースとした速乾性手指消毒薬を使用する 5) 気量型では呼吸回路は被検者毎に空気の洗い出しを行い 回路を乾燥させる 6) 気流型のフローセンサーや気量型の蛇管は検査終了後 十分水洗し乾燥させる - 6 -
表 2 消毒方法 対象消毒回数消毒方法 シリコン製 マウスピース 患者毎 < 高水準消毒 > 洗浄熱水消毒機による熱水消毒 (80~93 3~10 分 ) 2% グルタラール 20 分以上浸漬 トランスデューサー 1 日の終了時 < 中水準消毒 > 0.1% 次亜塩素酸ナトリウム 10 分間浸漬 取り外しできる呼吸回路 感染が疑われるとき 消毒用エタノールまたは 70% イソプロパノール 10 分間浸漬 高圧蒸気滅菌 < 滅菌 > 酸化エチレンガス滅菌 過酸化水素プラズマ滅菌 取り外せない呼吸回路 流水洗浄できないもの 1 日の終了時 感染が疑われるとき 消毒用エタノール清拭と回路乾燥 机 床など汚染時消毒用エタノール清拭 0.1% 次亜塩素酸ナトリウム清拭 ノーズクリップ汚染時消毒用エタノールまたは 70% イソプロパノール 10 分間浸漬あるいは清拭 手 指患者毎石鹸と流水による手洗い アルコールをベースとした速乾性手指消毒薬 : 蓋付容器を使用し 換気を十分にして蒸気暴露に注意する : 低残留毒性であるが金属腐食性があり金属器具には使用不可 : 滅菌を第一選択にする必要はない 日本呼吸器学会呼吸機能検査ガイドライン 2004 引用 - 7 -
Ⅴ. 呼吸機能検査の準備 呼吸機能検査は被検者の努力に依存する検査であるため インフォームドコンセントの実践が重要な検査と言える 被検者の十分な理解と協力により 少ない回数で正確な検査結果を導くことになる そのために (2) 喫煙歴 (3) 会話からどの程度の理解力があるのか (4) 気管支拡張剤の服用もしくは吸入時間 (5) 酸素吸入の有無など は 検査者自身が各検査の意味をしっかり把握し 測 定技術や結果を判断する知識の修得が必要であり 被検者への十分な説明と理解を確認しながら検査を進める また 検査前に被検者情報の収集も大切なことである 3) 胸部レントゲン写真 胸部レントゲン写真から肺の大きさを客観的に推測することができ 病態についても情報を得ることができる 1. 被検者情報の収集 2. 測定体位と姿勢 被検者の性 年齢 身長 体重などの基本的情報や 病歴 検査所見を確認する 基本的に安全のために座位で行う 立位で行う場合 には安全性を考慮し すぐに座ることができるように 椅子を用意しておく また 体位によって肺気量分画 1) 前回の検査結果 前回値を確認することで 検査の進め方の参考になる 検査結果に 検査時咳込み多く 間隔をあけて検査を進めました など 測定時の工夫やエピソードなどを記入しておくことで 被検者の状態が把握しやすくなる が変化する ので標準的な体位を決めておき 異なる体位で行った場合には報告書に記載する 椅子に深く腰掛けてもらい 背筋を伸ばして検査するように指示する ( 図 10) 検査者は 被検者を見下ろさず目線があう位置で話しかける きつく締めつける下着 ベルト ネクタイ などはゆるめて測定をする 医療用コルセットに関し 2) 被検者からの情報収集 ては 外してはいけない場合もあるので注意する (1) 体調 耳の聞こえはどうか どのくらいの声で 聞こえるか 目の見え方はどうか 立位 座位 仰臥位のいずれの体位でも RV はほとんど変化しないが TLC と FRC は仰臥位で減少する (FRC の方がより多く減少する ) これは内臓が横隔膜を頭側へ押し上げるためである 立位あるいは座位での VC に比べ 仰臥位での VC では 7~8% 減少する 図 10 検査時の姿勢 - 8 -
3. マウスピースのくわえ方 上手にくわえられているかを確認し マウスピースをくわえた状態で口呼吸の練習をする そうすることにより 実際の検査での呼吸がスムーズとなる できない時には フーと息を吐いてください と まずは吐かせてから吸わせることにより口呼吸を促す マウスピースはつば付きのシリコン製マウスピース 1) シリコン製マウスピースのくわえ方周りは唇と歯ぐきの間に でっぱった部分は歯で軽く噛んでくわえさせる 唇をしっかり閉じて横から息が漏れないようにする 舌で穴を塞がないように説明する また ゆるみのある入れ歯は はずしてからくわえさせる ( 図 11) か円筒状の紙マウスピース ( 図 12) を使用 する 高齢者や顔面に麻痺のある被検者など漏れが生じやすい場合や FRC DLco など精密検査の際はシリコン製マウスピースを使用する 2) 紙マウスピースのくわえ方 唇を突き出すようにくわえてください と指示し 隙間がないようにくわえさせる 紙マウスピースを噛んでつぶさないように注意する また 舌で穴を塞が ないように舌を紙筒の下に置くように説明する また ゆるみのある入れ歯は はずしてからくわえさせる 図 11 シリコン製マウスピースとくわえ方 図 12 紙マウスピースとくわえ方 - 9 -
4. 検査説明 完全に聞こえない被検者に対しては 筆談での説明 後 手をあげたら息を吸って 下げたら息を吐いてく 被検者に合った説明の仕方を心掛ける 他の検査者 の説明の仕方を参考にし 施設内で対応方法を統一し ておく ださい など 身振り手振りでの合図の約束をして検 査を始める 予め 検査説明カードを用意しておくと 便利である 1) 嘔吐反射の強い被検者 紙マウスピースを使用したり 口を軽くあけてマウスピースを唇に押し当てるようにして 口の中に入れないで漏れがないように測定する どうしてもくわえることができない場合は無理強いせず 主治医に相談する 2) 目の不自由な被検者 身長計 体重計 椅子などの位置や段差に注意して患者の手を取り 声を掛けながら誘導する マウスピースやノーズクリップなど手に触れてもらいながら説明し 検査を進める 3) 耳の不自由な被検者 補聴器使用者はどのくらいの声で聞き取れるのかを 4) ストレッチャーで検査に来た被検者 枕をしたままでは顎が引けて最大吸気ができないので 枕をはずして仰臥位または側臥位て測定する 報告書に仰臥位または側臥位で測定と記録する 5) 子供 年齢や理解力を判断し 上から目線にならないように楽しく検査ができるように工夫する 例えば 風船は膨らませるかな? お誕生日のローソクは消せたかな? 目の前の紙を飛ばせるかな? と声かけをする また 親と一緒に検査室に入ってもらい不安を軽減させる しかし 子供によっては親と一緒だと甘えてできないこともあるので被検者に合った対応をする 確認し 大声を張り上げず ゆっくりと説明する - 10 -
Ⅵ. 呼吸機能検査の実際 1. 肺活量 (vital capacity;vc) 易い検査説明と 誘導する掛け声のタイミングが大切 となる 肺活量の測定は肺気量分画の最も基本となる検査で 肺の容積変化範囲を示す 測定は強制呼出させずに基本的にゆっくり行う 努力性肺活量 (forced vital capacity;fvc) と区別する意味で slow vital capacity;svc という言葉が使われることもある 最大呼気位から最大吸気したときの肺活量を吸気肺活量 (inspiratory vital capacity;ivc) 最大吸気位から最大呼出したときの肺活量を呼気肺活量 (expiratoryvital capacity;evc) という ( 図 13) 正常ならば IVC EVC であるが 閉塞性換気障害があると空気とらえこみ現象 (airtrapping) のため IVC >EVC となるため 必ず IVC から測定する 測定した最も大きい値をもって肺活量とする (1) 検査の説明 説明の例 この検査は胸一杯息を吸ったり吐いたりして 肺の大きさや働きを調べます 痛い検査や危険な検査ではありませんが 何度も行うと大変ですから 努力してできるだけ少ない回数で終わるように 一緒に頑張りましょう マウスピースを口にくわえてもらいます 鼻をつまみますから 口で呼吸をしてください はじめは深呼吸ではなくて 普通に楽な呼吸をして下さい 呼吸が安定したら 吐いて~ と言いますから吐け なくなるまで吐きます 1) 検査の実際呼吸機能検査は被検者の努力によって検査結果が大きく左右するため 被検者に検査の目的と検査のやり方を十分説明し 協力してもらうことが必要である 説明では無痛性 安全性 協力の必要性を伝え 最大限の努力を引き出すように ポイントを絞った分かり 吐けなくなったら 吸って~ と言いますから 吸えなくなるまで胸一杯に吸ってください 吸えなくなったら また 吐いて~ と言いますから 吐けなくなるまで吐いてください 掛け声を掛けますから 掛け声に合わせてください 途中で口を緩めると息が漏れてしまって やり直し になるので口を緩めないようにお願いします 全肺気量 ( T L C ) 肺活量 ( V C ) 最大吸気量 ( I C ) 機能的残気量 ( F R C ) 予備吸気量 (IRV) 1 回換気量 (TV) 予備呼気量 (ERV) 残気量 (RV) 吸気肺活量 (IVC) 呼気肺活量 (EVC) 最大吸気位 (MIP) 安静吸気位 (EIP) 安静呼気位 (EEP) 最大呼気位 (MEP) 2 次分画 1 次分画 図 13 スパイログラムと肺気量分画の関係 - 11 -
説明のポイント あまり長々と検査説明をすると かえって患者は不安になって緊張してしまうので ひと通りの説明後 掛け声を掛けるからそれに合わせて最後まで吐ききって 胸一杯吸えばいいことを伝える 測定のスピードはゆっくりと行うとした記述が多いが 患者の安静呼吸のスピードに合わせてそのままのスピードで最大呼出させる 患者の中には ゆっくり= 時間をかけての呼吸 と理解される人もいるので注意が必要である (2) 検査の進め方掛け声のタイミングを示す ( 図 14) 1 普通に楽な呼吸をしてください 2そのまま息を吐いて~~ 3 最後まで吐いて~ガンバレ~ 4もう一息 フーと吐いて~ 5 吐けなくなったら吸って~ 6 胸一杯に吸って~ 7もう一息 スーと吸って~ 8 吸えなくなったら吐いて~ 9 最後まで吐いて~ガンバレ~ 10もう一息 フーと吐いて~ 11 吐けなくなったら吸ってください 12 楽にしてください 安静呼吸を確認してから 測定モードに切り替える 7 もう一息 スーと吸って ~ 2 そのまま吐いて ~ 8 吸えなくなったら吐いて ~ 9 最後まで吐いて ~ ガンバレ ~ 1 普通に楽な呼吸をして下さい 6 胸一杯に吸って ~ 12 楽にしてください 3 最後まで吐いて ~ ガンバレ ~ 10 もう一息 フーと吐いて ~ 4 もう一息 フーと吐いて ~ 5 吐けなくなったら吸って ~ 11 吐けなくなったら 吸ってください 図 14 掛け声のタイミングと例 掛け声のコツ 被検者の呼吸に合わせて掛け声をかけることが大事である 図 14 のポイント点でのコツを示す 1 普段は鼻で呼吸をするので鼻をつまんで口で呼吸するのは難しく 深呼吸に近い状態の呼吸になることも多い 肩で呼吸をしたり 一回換気量が1L を超えるような時は安静換気ではないので 深呼吸ではなくて もう少し楽に呼吸してください と促す また 緊張により段々安静呼気位が上がってくる時はそこで検査を停止し マウスピースをはずして深呼吸を促し リラックスさせてから再度検査を開始する 2 安静呼吸を少なくとも 3 回以上した後 患者の呼吸に合わせて 患者が吐く時に そのまま吐いて~ と声をかける 4710 途中でやめてしまわないように もう一息 と声をかけ プラトー ( モニター上で 2 秒以上気量に変化がなく水平状態 ) を確認する - 12 -
(3) 測定に工夫がいる場合 一度に続けて呼吸できない場合 2. 努力性肺活量 (forced vital capacity;fvc) 2 段肺活量 ( 図 15) のように最大呼気位と最大吸気 位を別々に測定する 要領が悪い人や幼小児の場合 実際に検査者がマウスピースをくわえて見せたり 目の前の紙を吹いて見せてから 被検者にも同じように行ってもらい練習してから検査にのぞむ 努力性肺活量検査では 1 回の検査で努力性呼気曲線とフローボリューム曲線を同時に検査できる 測定時はフローボリューム曲線をモニターしながら検査を実施する フローボリューム曲線とは最大吸気から一気に最大呼出した場合の流量に対する流速をグラフ化し たもので 動的な気道閉塞状況を表す 閉塞性障害を (4) 結果の確認結果の確認を表 3に示す 測定回数は患者の負担を考慮し 最大 4 回とする 再現性が得られない場合は最大のものを採択し 報告書に理由を記載する 把握する上で必要な 1 秒率などの数値が得られると同時に その波形により各換気障害をパターンで認識することができる また 末梢気道病変の検出に有用とされる 努力性肺活量 (FVC). を. 4 等分し その時の流速を. 最大呼気位の方から V 25 V 50 V 75 とし 最も高い流速をピークフロー (PEF) とする ( 図 16) この PEF など呼出の前半は努力の程度に依存性があり (effort dependent) V. 25 などの低肺気量位では努力にあまり依存しないとされている (effort independent) 流速 (L/S) PEF. V75. V50. V25 図 15 2 段肺活量 75%VC 50%VC 25%VC 流量 (L) 図 16 フローボリューム曲線と各指標 表 3 肺活量測定の妥当性 再現性と採択基準 基準 1 安静呼気位が安定 している 妥当性 再現性 2 最大呼気位と最大吸気位のプラトー が確認できる 3 吸気肺活量 呼気肺活量 である 2 つの妥当な測定結果において 最大の肺活量と 2 番目の肺活量の差が 200ml 以下である 採択最大の肺活量を示した測定結果を採択する : 安定とは安定呼気位の基線が水平で最大吸気位と最大呼気位の呼気側 3 分の 1 から 2 分の 1 ぐらいにあることをいう : プラトーとは時間 気量曲線 ( スパイログラム ) が 2 秒以上上下なく水平な場合をいう : 閉塞性換気障害では空気とらえこみ現象 (airtrapping) のため吸気肺活量 > 呼気肺活量となる場合がある日本呼吸器学会呼吸機能検査ガイドライン 2004 引用 - 13 -
1) 検査の実際 基本的には VC 測定のポイントと同様であるが フ してできるだけ少ない回数で終わるように 一緒に頑 張りましょう ローボリューム曲線では最大吸気からできるだけ勢い よく吐かせるための タイミングよい声かけが重要で ある (2) 検査の進め方 掛け声のタイミングを図 17 に示す 1 普通に楽な呼吸をして下さい (1) 検査の説明 説明の例 この検査は吐き出す力と吸う力を調べます 胸一杯息を吸ったところから 吐いて と言いますから 勢いよく一気に 最後まで吐ききってください 吐けなくなったら 吸って と言いますから 一気に胸一杯吸ってください 一気に吐き出す時は目の前の紙を遠くへ吹き飛ばすように勢いよくお願いします ( ティッシュペーパーなどを使い 吹いて見せて 実際に被検 2 胸一杯に吸って~ 3もう一息スーと吸って~ 4 吐いて!! 5 吐いて!~ 6まだ吐けてますよ~ 最後まで~ 7もう一息フーと吐いて~ 8 吐けなくなったら一気に吸って~ 9 胸一杯吸って~ 10はい 楽にしてください 者に吹いてもらう ) 何度も行うと大変ですから 努力 5 吐いて ~ 6 まだ吐けてますよ ~ 最後まで ~ 4 吐いて!! 1 楽な呼吸をしてください 7 もう一息フーと吐いて ~ 3 もう一息スーと吸って ~ 2 胸一杯に吸って ~ 8 吐けなくなったら一気に吸って ~ 10 はい 楽にしてください 9 胸一杯吸って ~ 図 17 掛け声のタイミング 掛け声のコツ 被検者の呼吸に合わせて掛け声をかけることが大事である 図 17 のポイント点でのコツを示す 3 最大吸気位の一歩手前で もう一息スーと胸一杯吸わせ 一瞬のタメ ( 最大吸気の確認 ) から 4の 吐いて!! と力強く掛け声をかける して下さい など丁寧な言葉遣いや長い掛け声はタイミングを逸する 5 吐いて!! の後も 吐いて!~ など声をかけ続ける 沈黙があると途中で止めてしまうことがある 6 最後まで~ もう一息 と声をかけ 最大呼気位まで呼出させる 最低 6 秒以上呼気努力を続けるように声をかけ 最低 2 秒以上呼気量が変化しないことを確認する 先に肺活量検査を行っている場合 その VC を参考にする 閉塞性換気障害患者で呼気排出がわずかずつ持続している場合は 15 秒を超えたら吸気を促す 被検者の状態に十分注意を払う - 14 -
再検時のポイント 波形を示しながら 良かった点をまず褒め 悪かった点を説明する 悪い点を一気に説明することは患者にかえって混乱するので順を追って説明する 例 ) 量はしっかりと吐けているから 吐き始めから勢いよく 最後まで吐き出してください 紙を遠くへ飛ばすような気持ちで勢いよく吐き出してください (3) 測定に工夫がいる場合 状態が悪い場合 ⅰ) 咳が出る場合休憩をとり 咳を十分に静めての測定や咳の出にくい姿勢を工夫し測定する どうしても咳が解消されない場合は手順を十分に理解してもらった上で 自分でやってもらい 検査者がそのタイミングに合わせて掛け声をかける また 報告書に咳が出ることを記載する ⅱ) きつい 息切れなどの訴えが強い場合 何回もするときついので 1 回で終わるようにしましょうね 今の状態を数字で現して先生に見てもらいましょうね などの声をかけ 最少回数で終わるように十分な説明をし 理解 協力してもらう 要領が悪い人や幼小児の場合 ⅰ) 吐き出しに勢いがない実際に検査者が目の前の紙を吹いて見せて 被検者にも同じように吹いてもらって 練習してから検査に臨む ⅱ) 声を出したり マウスピースを噛むやや上向き加減で吐かせたり 口をすぼめて吐かせる ⅲ) 最後まで吐けない勢いよく呼出する時に 喉に力が入っている場合は最後まで吐けなかったり 2 段吹きになりやすいので 喉の力をぬき おなかに力を入れて勢いよく吐かせる また 少しスピードを落とした状態で最後まで吐かせる練習をしてから 徐々に勢いを増していき 最大呼出の練習をする 耳が不自由な場合 身振り手振りも交えて誘導し 吐き出すタイミングの合図 ( 肩をたたくなど ) を決めておく (4) 結果の確認結果の確認を表 4に示す 最良のフローボリューム曲線 ( ピークが高く 外挿気量 (extrapolated volume) ( 図 18) が少なく 最大努力の得られているもの ) をベストカーブとし その測定結果を採択する ベストカーブ採択にあたり FEV1+FVC の和が最大のものを採択する ただし 閉塞性換気障害では最大努力したときより少し弱い呼気をしたときの方が FEV1 が大きくなることがある このような時は ピーク到達までの呼気量がより少なく ピークがより高いフローボリューム曲線をベストカーブとしその結果を採択する 再現性が悪い場合 採択の判断が難しい場合は検査を繰り返し 最大 8 回まで検査を行う 外挿気量 呼気開始点 外挿気量 (extrapolated volume) FVC 外挿線 最大吸気位 努力呼気曲線の最大の傾き部分の直線を延長し 最大吸気位と交わる点を努力肺活量の呼気開始点 (time zero) とする 呼気開始点における呼気量を外挿気量という 外挿気量が FVC の 5% あるいは 150ml のどちらか大きい方以上の場合は 呼気開始が不良と判断する 図 18 外挿気量 - 15 -
1 検査の流れ検査は VC 測定を先に行い 次に FVC 測定を行う FVC が VC よりも 5% を越えて大きい場合は VC 測定の努力不足が考えられるため再検査する 2 再現性が得られない場合の結果の採択一般に呼吸機能検査の測定結果の差は健常者では小さいが 閉塞性肺疾患患者では大きい また 気管支喘息などでは努力呼気により気道れん縮が起こり 測 わち 妥当な結果が得られても再現性が確認できないことがある その場合には再現性にこだわらず 最大肺活量 ベストフローボリューム曲線を採択し 採択理由を報告書に記載する 患者の状態から十分な検査回数が実施できない あるいは要領の悪さから 1 回しか妥当な結果が得られない場合には その結果を採択しその理由を報告書に記載する 定を繰り返すごとに閉塞が強くなることがある すな 表 4 努力性肺活量測定の妥当性 再現性と採択基準 基準 妥当性 1フローボリューム曲線のパターンで 検査全般に十分な努力が得られており ( 最大吸気 すばやい呼気開始 ピーク 呼気の持続 ) アーチファクト( 呼気早期の咳 声出しなど ) がないこと 2 呼気開始が良好であること外挿気量が FVC の5% あるいは 150ml のうち いずれか大きい方の値より少ないこと 3 十分な呼気ができていること時間 気量曲線が 2 秒以上プラトー に達しているあるいは プラトーにならない場合は十分な呼気時間 (15 秒以上 あるいは 6 秒以上で被検者が呼気を維持できなくなるまで ) であること 再現性 3 回以上の妥当な測定結果のうち 最良のフローボリューム曲線 ( ベストカーブ ) と次に良いフローボリュー ム曲線 ( セカンドベストカーブ ) の FEV 1 の差と FVC の差がそれぞれ 200ml 以内であること 採択 最良のフローボリューム曲線 ( ピークが高く ピークに到達するまでの呼気量が少なく 最大努力の得られて いるもの ) をベストカーブとし その測定結果を採択する ベストカーブ採択にあたり FEV 1+FVC の和が 大きいことも参考する : プラトーとは時間 気量曲線 ( スパイログラム ) が 2 秒以上 上下なく水平な場合 日本呼吸器学会呼吸機能検査ガイドライン 2004 引用 (5) フローボリューム曲線パターン 閉塞性換気障害 拘束性換気障害 上気道狭窄などの特徴的なパターンを示す ( 図 19) 正常閉塞性障害 ( 喘息 ) 閉塞性障害 (COPD) 上気道狭窄拘束性障害 図 19 フローボリューム曲線のパターン - 16 -
3. 肺活量と努力性肺活量の評価と主な 疾患 2) 努力性肺活量の評価 1 秒率 (FEV1.0%) は呼出開始から 1 秒間に呼出さ れた量 (1 秒量 (FEV1.0)) の割合で Gaensler( ゲン 1) 肺活量の評価 肺活量は性別 年齢 身長により異なるので %VC で評価する スラー ) の 1 秒率 (FEV1.0%(G)) と Tiffeneau( テ ィフィノー ) の 1 秒率 (FEV1.0%(T)) の 2 種類が ある %VC=( 測定値 / 予測値 ) 100 Gaensler( ゲンスラー ) の 1 秒率 FEV1.0%(G)=(FEV1.0/FVC) 100 予測値は従来 Baldwin らの予測式が用いられてき たが この予測式は仰臥位の状態で求められたもので Tiffeneau( ティフィノー ) の 1 秒率 FEV1.0%(T)=(FEV1.0/VC) 100 仰臥位の VC は立位 座位に比較して 7~8% 低値とな る そこで 測定体位が座位 立位であることから 日本呼吸器学会肺生理専門委員会が 2001 年に日本人の成人予測式 (18 歳以上 ) を報告した ( 表 5-1) この予測式による予測値は Baldwin らの予測式の予測値より 10~15% 高値となる すなわち 使用する予 一般的には Gaensler の 1 秒率がよく用いられている ただし 要領が悪く FVC に信ぴょう性が乏しい場合や Air-trapping Index(ATI) が著しく高値な症例では Tiffeneau の 1 秒率の方がより臨床状態を反映する 測式により %VC は異なる また 小児 (6~17 歳 ) の予測式の例を表 5-2 に示 すが 6 歳未満の予測式はない ATI(%)=(VC FVC)/VC 100 5% 以上が閉塞性換気障害の目安とされている 表 5-1 VC 予測式 表 5-2 小児の VC 予測式 Baldwin らの式 (18 歳以上 ) 男性 VC(L)=(27.63-0.112 年齢 ) 身長 (cm)/1000 女性 VC(L)=(21.78-0.101 年齢 ) 身長 (cm)/1000 日本呼吸器学会肺生理専門委員会の成人予測式 (18 歳以上 ) 男性 VC(L)=0.045 身長 (cm)-0.023 年齢 -2.258 女性 VC(L)=0.032 身長 (cm)-0.018 年齢 -1.178 西間の式 (6~17 歳 ) 男性 VC(L)=0.0481 身長 (cm)-4.240 女性 VC(L)=0.0410 身長 (cm)-3.480 石田の式 (12 歳以下 ) 男性 VC(L)=0.0340 身長 (cm)-2.487 女性 VC(L)=0.0343 身長 (cm)-2.609 金上の式 (13 歳 ) 男性 VC(L)=(1.40 年齢 -1.20) 身長 (cm)/1000 女性 VC(L)=(1.70 年齢 -6.70) 身長 (cm)/1000 金上の式 (14~17 歳 ) 男性 VC(L)=(0.48 年齢 +17.18) 身長 (cm)/1000 女性 VC(L)=( 年齢 +3.10) 身長 (cm)/1000-17 -
3) 換気障害の分類肺活量は正常予測値の 80% 1 秒率は性別 年齢 身長に関係なく 70% を正常限界とし 図 20 のように正常 拘束性換気障害 閉塞性換気障害 混合性換気障害と判定する 4. 機能的残気量 (functional residual capacity;frc) 機能的残気量 (FRC)= 予備呼気量 + 残気量 1 秒率 拘束性 正常 機能的残気量 (FRC) は安静時の呼気位に肺内に残存するガスの容積である 通常の呼吸下ではこの肺容積でガス交換が行われている 70% 機能的残気量の大きさはガス交換と密接に関連して おり FRC の増大は肺が過膨張状態である事を意味し 混合性 閉塞性 換気効率は低下する FRC の低下は低酸素血症につながる 測定法はガス希釈法と体プレチスモグラフ法の 2 種 80% %VC 類がある 図 20 換気障害分類 1 ガス希釈法 (1) 拘束性換気障害をきたす疾患 不活性ガスを利用して その希釈率より求める方法 でヘリウム閉鎖回路法と酸素開放回路法があり 再現 1 肺内因子肺実質の減少 : 肺組織の硬化 : 残気量の増加 : 肺切除 肺炎 無気肺 肺水腫間質性肺炎 肺線維症 じん肺 肺結核後遺症肺気腫 性に優れ一般的に用いられている方法である 2 体プレチスモグラフ法ボックス内の圧力変化と口腔内圧を測定することにより測定でき 胸郭全体のガス容積 (Vtg) を測定す 2 肺外因子 胸郭の硬化 : 漏斗胸 胸郭形成術後 脊椎側弯症 胸膜炎 胸膜肥厚横隔膜の伸展の制限 : 腹水 高度の肥満 妊娠 神経呼吸筋の異常 : 筋委縮性側索硬化症 重症筋無力症 多発性筋炎 ポリオ (2) 閉塞性換気障害をきたす疾患 1 気道の狭窄気管支喘息 慢性気管支炎 びまん性汎 細気管支炎 気管支拡張症 肺癌による気道閉塞な ど 2 上気道の閉塞喉頭腫瘍 甲状腺腫瘍 声門水腫 声 帯麻痺など 3 肺弾性収縮力の減弱肺気腫 肺のう胞症など る方法で 利点として気腫性嚢胞などの気道と交通のない領域も測定ができる 1) ヘリウム閉鎖回路法 (1) 測定方法安静呼気位で三方コックを切り替え再呼吸し He が平衡に達した時点で終了となる 姿勢により FRC は変動するため 座位で背筋を伸ばして測定することが要求される (Ⅴ-2: 測定体位と姿勢参照 ) (2) 検査の実際 1 測定機器の準備 ⅰ) 機器の校正を行う - 18 -
ⅱ) ソーダライムを混和する :FRC 用のソーダライムは呼気の飽和水蒸気で結合するケーキング現象がおきやすいので毎朝転倒混和する 2 検査の説明と練習 説明の例 この検査は安静呼吸の状態で肺の中の空気の量を測定する検査です 楽な呼吸を 4 分程度し その続きに肺活量を測定します 口を開かないようにしてください ると言われている 3 安静呼吸が行われていることを確認 1 回換気量 安静呼気位が一定であること 過換気や不安定な呼吸は換気の不均等分布に関する指標に誤差を生ずる可能性がある 4 病態との関係一般的に拘束性換気障害は低下 閉塞性換気障害は増加する 5 他の関連項目と対比一般的に %VC や %TLC も同様な値を示す もし苦しくなったら手を上げて合図してください 以上のような説明をしてから 測定開始前に鼻をノ ーズクリップで押さえ 安静呼吸の練習を行う 酸素吸入患者の対処法 閉鎖回路法の回路内の酸素は約 20% に調整されて いるため 酸素吸入をしている患者においては He 3 検査の実施 ⅰ) 座位で背筋を伸ばし 肩の力を抜き マウスピースをくわえた状態で漏れのないことを確認する ⅱ) 安静呼吸を確認し 安静呼気位で三方コックを切り替え検査を開始する (1 回換気量の大きさを確認する ) ⅲ) 測定中は絶えず口元を確認し 安静呼吸で一定な が平衡になる前に低酸素血症になることが予想される そのためこのような患者においては必ずパルスオキシメーターで酸素飽和度を確認しながら測定する事が望まれる (90% 以下になったら中止が望まれる ) 酸素濃度を高く設定できる機種を使用しているのならば 回路内の酸素濃度を通常 20% の設定を 40% に設定し測定する 呼吸を導き出す He 濃度が平衡に達したところで 安静呼気位で 三方コックを切り替え 検査を終了させる (3) 結果の確認 1 漏れがないことを確認 ( 図 20-1 20-2) ⅰ) 呼吸の変化にあった He 濃度の変化を示し 一般 的にはスムーズに低下を示す 図 20-1 漏れがない例 ⅱ)He 閉鎖回路法の安静呼吸は一定の大きさで行われている ⅲ)He 閉鎖回路法の測定終了時のベルポジションは測定開始点と同じ位置である 2 姿勢の確認 FRC は姿勢によって値が変化してしまうので 正しい姿勢で検査できていたか確認が必要である 臥位は座位に比べて VC FRC TLC RV ともに低下し 特 に FRC は著しく 立位に比べ臥位は 0.5~1L 低下す 図 20-2 漏れがある例 - 19 -
2) 体プレチスモグラフ法 3 検査の実施 ( 図 21) ⅰ) ボックス内に座り 椅子あるいはマウスピースの (1) 測定方法安静呼吸をさせ 呼吸が安定していることを確認した後安静呼気位でシャッターを閉じ 呼吸努力をさせる このときの呼吸は通常 1~2Hz の浅く小さな呼吸 ( パンティング呼吸 ) をするが 装置によっては安静に近い呼吸で行うものもある 5~6 回呼吸したら直ちにシャッターを開け楽にさせる 測定時間が短いのが特徴である (2) 検査の実際 1 測定機器の準備 機器の校正呼吸流量を測定する口元の流量計の校正 口腔内圧を測定する圧力計の校正 箱内容積変化量の校正を行う 2 検査の説明と練習 この検査は肺の中の空気の量を測る検査です マウスピースをくわえて 鼻を閉じて普通に呼吸していてください しばらくするとマウスピースの前が一瞬塞がれますが 掛け声にあわせて小さく息を フッ フッ フッ フッ と数回吹くようにして下さい 検査は数秒で終わりますのでその後は楽に呼吸して下さって結構です 以上のような説明をしてから 測定前にシャッターが閉まった時の呼吸の仕方を予め練習しておく 高さを調節する ⅱ) ドアを閉め密閉し 箱内の信号が安定するまで数分待つ ⅲ) 姿勢を正した状態でマウスピースをくわえ ノーズクリップで鼻を閉じ 口から漏れのないよう唇はしっかり閉じる ⅳ) 頬が膨らんだり萎んだりしないように両手指で頬をかるくおさえる この時肩や肘が上がって安静呼気位が上昇してしまうことがないように注意をする ⅴ) 肩の力を抜きリラックスして安静換気を行い 呼吸が安定している事を確認後 安静呼気位でシャッターを閉じる ⅵ) 数回努力呼吸をさせる この時 フッ フッ フッ フッ あるいは スウ ハク スウ ハク と声をかけて呼吸を誘導する 呼吸の早さは 1~2Hz が適切なもの 安静換気の早さが適切なものなど装置により異なるため 取り扱い説明書に従う ⅶ) 測定後はすぐにシャッターを開け楽に呼吸させる 4その他の注意事項 ⅰ) 測定は数回行い再現性があることを確認する 測定にガスを用いないため時間をあけずに再検査しても良い ⅱ) パンティング呼吸は肋間筋を用いて行う ⅲ) 狭い空間が苦手な被検者の場合 無理強いせず依 頼医に相談する (3) 結果の確認 1 姿勢が正しいこと 2 測定前に安静換気が行えており 真の安静呼気位で測定されていること 3 漏れがないこと 4 胸郭内気量 (Vtg) 測定時の口腔内圧変化と箱内容 図 21 検査実施風景 積のリサージュ ( P- Vbox リサージュ ) が一本の - 20 -
直線となること ( 図 22) 途中で曲がったり あるいはループを形成していないこと 5 再現性があること 6ガス希釈法で測定した FRC 値に比して本測定法で測定した Vtg 値が同じかあるいは大きいこと 5. 肺拡散能力検査 (lung carbon monoxide diffusing capacity;dlco) 肺拡散能力は肺胞気と毛細血管血液の間に分圧交差がある時 1 分間に通過するガス量として表される 生理的あるいは病的な状態で知りたいのは酸素 (O 2 ) の拡散能力であるが 肺胞毛細血管内の平均酸素分圧を求めることは困難である そのため O 2 の代わりに一酸化炭素 (CO) を指示ガスとして用いる その理由は 以下の通りである 1CO はヘモグロビンとの結合が 迅速 強固であり 血液内の CO 分圧がほとんど無視できる 2CO と O 2 の拡散係数 ( 溶解係数 分子量 Graham の法則 ) は 1.23 であり 拡散能力の値が O 2 とあ 図 22 Vtg 測定時の波形 まり変わらない DLo2/DLco= (0.0244 28 /0.0185 32 =1.23 0.0244:O 2 溶解係数 28:CO の分子量 0.0185:CO の溶解係数 32:O 2 の分子量 1) 測定方法 ( 一回呼吸法 ) (1) 検査の説明 説明の例 吸った酸素が血液の中にどれくらい取り込まれるかを調べる検査です 普段の呼吸から 吐いて と言いますので 呼出途中で吸わないで吐けなくなるまで吐いて下さい 次に 吸って と言いますので 一気に吸えなくなるまで吸って下さい その後 10 秒間なるべくリラックスして息をこらえて下さい その後 吐いて と言いますので 一気に吐いて下さい (2) 検査の実施 掛け声の例 ( 図 23) 14~5 回の安静換気を行なう 口だけで普段の呼吸をして下さい 2 最大呼気位まで呼出させる 吐けなくなるまで吐いて下さい 呼出途中で吸わ - 21 -
ないで下さい 3 混合ガスを最大吸気位まで一気に吸入させる 一気に胸いっぱいに吸って下さい 410 秒息こらえをさせる 吸えなくなったら そのまま息を止めます 5 一気に呼出させる 一気に吐いて下さい ATS 基準で VC が 2L 未満の場合は 死腔洗い出し量 (washout volume) を 0.5L 測定用の容量 (sampling volume) を 0.5L まで減量してもよいとしているが 機種により異なるため メーカーに確認する 測定用の容量を減量した場合はガス測定終了時にサンプルバッグ 内にガスが残っていることを確認する また 死腔ガスの混入を避けるため 呼気の開始か 減量したことを必ず記載し報告する ら 0.75L を洗い出し量 (washout volume) として捨て 次の 1L を測定用の容量 (sampling volume) として採取する 2) 妥当性と採択の基準 妥当性と採択の基準を表 6 に示す 気量 (L) 吸入息こらえ呼出 washout volume sampling volume 時間 (sec) 図 23 DLco スパイログラムと掛け声のタイミング 表 6 DLco 測定の妥当性と採択基準 基 準 1 試験ガスの吸気は 4 秒以内に終了し 他の測定方法で得られた肺活量の 90% 以上を吸入していること 妥当性 2 安定した息こらえで 回路からリーク ( 口漏れなど ) がなく 息こらえ時間が 9~11 秒の間であること 34 秒以内に呼出が終了し 死腔洗い出し量 (washout volume) 測定用の容量 (sampling volume) が適 切であること 採択 上記 3 点を満たしていること 日本呼吸器学会呼吸機能検査ガイドライン 2004 引用 - 22 -
3) 結果の解釈 (1)DLco 値の正常 異常の判定 また 貧血の患者では DLco 値を補正する必要がある ので診療録で確認する DLco の基準値を予測する式は多く報告されている が 男女別に身長と年齢の関係式で表現されているこ とが多い 予測式によって基準値が異なり どの式が 最も適しているか判断が難しい ATS 推奨補正式 男性 : 補正 DLco=DLco (10.22+Hb)/(1.7 Hb) 女性 : 補正 DLco=DLco (9.38+Hb)/(1.7 Hb) 一方 DLco/VA は肺気量で補正した値なので身長の 影響は少なく 年齢との関係式で予測値が求められる 2DLco 測定時の肺気量 DLco 測定時の肺気量も重要であり 測定時の肺気 判定基準 1 一般的に DLco DLco/VA ともに 予測値の 80% 以上を正常とする 2DLco 値が 10% 以上または 3mL/min/mmHg 以上変化したとき有意な変動と考える 量が大きければ DLco 値も大きくなる これは 高肺気量位ほど CO 移動に関与する有効肺胞膜面積が増加するためである そのため DLco の肺気量依存を補正する目的で単位肺気量あたりの DLco いわゆる DLco/VA が用いられる 例えば 肺切除を受けた患者の DLco は低下するが (2)DLco に影響する因子 1 肺胞膜を介するガス移動肺胞気相から肺毛細管血液相に至る CO の移動を考えると CO は肺胞壁ならびに肺毛細血管壁によって構成される肺胞膜 血漿 赤血球内を拡散によって移 これは肺気量の低下に基づくため DLco/VA は正常範囲に維持される 肺気腫患者の DLco 低下は血管床の減少に由来するが 測定時の肺気量が増加していて単位ガス交換面積あたりの血管床は低下しているため DLco よりも DLco/VA の方が重症度を反映する 動する 赤血球に至った CO は Hb と結合し吸着され る したがって 肺胞間質や毛細血管膜の病態 および血流が関与する 肺拡散能力に影響を与える因子と代表疾患を表 7 に示す 3 機能的不均等びまん性肺疾患の場合 病変は肺野全体で均一ではないため 肺胞気 CO ガス分圧は肺局所で異なった値を示し その部位に分布する換気ならびに血流によって規定される 表 7 機能的不均等が存在しない場合に DLco に影響を与える諸因子 生理学的因子 1. 有効肺胞膜因子 1 拡散面積 2 拡散距離 2. 赤血球因子 1 肺毛細血管血液量 2Hb 量 3CO と Hb の結合親和性 4 共存 PO2 病態 / 疾患 肺胞組織量の低下 ( 肺切除 ) 肺胞壁の破壊 ( 気腫病変 ) 肺胞虚脱 ( 間質病変 ) 肺微小血管床の低下 ( 気腫病変 間質病変 血管炎 微小血栓 原発性肺高血圧症など ) 肺胞壁間質の肥厚 ( 間質病変 ) 肺毛細血管拡張 ( 肝 肺症候群 ) 心拍出量の低下 ( 心不全 ) 肺微小血管床の低下 貧血 喫煙者 (CO と結合する有効 Hb の低下 ) 異常 Hb 血症 (CO と結合できない Hb の増加 ) 大気圧の変化 - 23 -
(3)DLco と DLco について両者の違いは肺胞気量 (VA) の求め方による 1DLco は他の方法であらかじめ求めた RV に IVC を加えて求められた VA を用いて算出した値 2DLco は DLco 測定時の He 希釈率から求めた VA を用いて算出した値 気管支喘息の診断および他の閉塞性肺疾患の鑑別に重要な検査であり 慢性閉塞性肺疾患 (COPD) では診断と重症度の分類に気管支拡張剤吸入後の測定値が用いられる 一般的には短時間で気道閉塞の可逆性を確認可能な β 2 刺激薬 ( 噴霧式定量吸入 : MDI) を使用した薬剤吸入前後のフローボリューム曲線測定の比較で 評価される 10 秒間の息こらえ時間では十分に He ガスを希釈す ることができないため VA は VA に比べて少なく測定されると考えられている 理論的には DLco>DLco となり DLco<DLco となることはない DLco<DLco となった場合は 以下の原因が考えられ 再検が必要となる 1 不十分な呼出状態から吸気を行った 2 吸気時に外気を吸入したため希釈率が大きく評価された 3ERV 値の測定が正確にされていない ( 姿勢を確認し FRC 再測定 または 安静呼吸を確認後 VC の再測定 ) 6. 気道可逆性検査 閉塞性換気障害患者における気道閉塞の可逆性の有無を確認するために実施される 気道閉塞の可逆性は 1) 検査の実際 (1) 検査前の注意すでに治療で気管支拡張薬を使用している場合は効果判定に影響が及ばないように 短期間作用型気管支拡張薬は少なくとも 6 時間 長時間作用型気管支拡張薬は 24 時間中止したうえで検査を行う 最近は 副作用 ( 心悸亢進 振戦 頭痛 めまいなど ) の少ない選択的 β 2 刺激薬が開発されているが 虚血性心疾患や高度の心疾患 高血圧症等の患者では依頼医に危険度を十分確認することが必要である 場合によっては医師の立ち合いが必要になる 依頼医から患者へ 検査時に薬剤を吸入する必要性と安全性について説明していただくと協力が得られやすい 患者には 検査当日は指示どおりに薬剤を中止してきたかを確認する ( 表 8) 表 8 気道可逆試験前に中止する薬剤 β 2 刺激薬抗コリン薬キサンチン製剤ステロイド薬ロイコトリエン受容体拮抗薬抗アレルギー剤 薬剤 休薬期間 吸入 β 2 刺激薬 ( 短時間作用性 ) 8 時間 吸入 β 2 刺激薬 ( 長時間作用性 ) 24 時間 内服 β 2 刺激薬 24 時間 β 2 刺激薬 ( 貼付型 ) 24 時間 吸入抗コリン薬 ( 短時間作用性 ) 8 時間以上 (12 時間が望ましい ) 吸入抗コリン薬 ( 長時間作用性 ) 36 時間以上 (48 時間が望ましい ) テオフィリン薬 (1 日 2 回投与の薬剤 ) 24 時間 テオフィリン薬 (1 日 1 回投与の薬剤 ) 48 時間 吸入ステロイド薬 12 時間 全身性ステロイド薬 ( 内服 注射 ) 24 時間 ロイコトリエン受容体拮抗薬 48 時間 抗ヒスタミン薬 24 時間 抗アレルギー薬 (1 日 2 回投与の薬剤 ) 24 時間 抗アレルギー薬 (1 日 1 回投与の薬剤 ) 48 時間 吸入クロモグリク酸ナトリウム 12 時間 日本呼吸器学会呼吸機能検査ガイドライン 2004 引用 - 24 -
(2) 検査の進め方検査は原則として急性呼吸器感染症のない臨床安定期に行うこと 気管支喘息など気流制限のある患者が対象であり 気管支拡張薬を中止して検査するため 強制呼気を繰り返すと気道がれん縮して測定結果が漸減していくことがある 測定前に呼気のやり方を十分に指導して測定回数を最小限にするように努める 1 努力性肺活量 ( 吸入前 ) を測定する 医師の指導 監視の下に気管支拡張薬を吸入させる ( 参考資料参照 ) 2 吸入終了時をゼロとしタイマーで時間を計測する 3 努力性肺活量測定 ( 吸入後 ) を実施する β 2 刺激薬は吸入後 15~30 分後に測定抗コリン薬は吸入後 30~60 分後に測定 4 改善率と改善量を計算する 3) 臨床的評価気管支喘息で気道可逆性検査における有意な改善を確認することは 診断上有用である また 気道可逆性試験で気管支喘息と不可逆性の閉塞性換気障害である慢性肺気腫や慢性気管支炎との鑑別することは重要である これらの疾患の場合 気管支拡張剤吸入前の FEV1.0 の絶対量が小さいためにわずかな FEV1.0 の増加により有意な改善率を示すものも少なくないため FEV1.0 の改善率だけではなく FVC や FEV1.0% MMF V. 25 などの変化とフローボリューム曲線のパターン変化を含めた総合的な評価が必要とする報告もある また 気管支喘息であっても寛解期や重症発作時 慢性型喘息等では有意な改善を認めない場合もあり ステロイドを含めた治療で数週ないし数か月の期間で観察し可逆性を見出すことができる場合がある (3) 吸入後のデータを採用するにあたっての注意点 FEV1.0 の改善率を最優先するのではなく PEF FVC カーブの急峻な立ち上がりとスムーズ性において総合的に最大努力と判断されるデータを採用する 2) 可逆性の判定基準 改善率 12% かつ改善量 200ml 改善率 (%)= ( 吸入後 FEV1.0- 吸入前 FEV1.0) 吸入前の FEV1.0x100(%) 改善量 (ml)= 吸入後 FEV1.0- 吸入前 FEV1.0-25 -
参考資料 気管支拡張薬吸入方法と吸入試薬成人喘息における β 2 刺激薬 MDI の至適吸入法を表 9-1 に示す 検査に用いる気管支拡張薬は 通常短時間作用型吸入用 β 2 刺激薬を原則とするが 抗コリン薬あるいは両者の併用であってもよい 投与 方法はスペーサーを用いた MDI 吸入 ( 表 9-1) ネブライザー吸入 ( 表 9-2) のいずれであってもよい 気道可逆性試験に使用する代表的な吸入気管支拡張薬を表 10 に示す 表 9-1 成人喘息における β 2 刺激薬 MDI の至適吸入法 1. キャップをはずし 容器をよく振る 2. 静かに息を吐き出す 3. マウスピースを歯で噛んで押さえるか 口元から少し離して保持する 4. 安静時の呼気位レベルからゆっくり息を吸い始め それと同調するようにボンベを一回強く押し 深く吸入を続ける 5. これ以上吸えないところで約 10 秒間 息を止める 6. 再度吸入する場合は約 30 秒間隔をおいて 2~5 の手技をくりかえす 表 9-2 成人喘息における β 2 刺激薬ネブライザー吸入法 1. 吸入液をネブライザーボトルに入れる 2. ネブライザーのスイッチを入れ 薬の噴射が出ていることを確認する 3. マウスピースを歯で噛んで押さえるか 口元から少し離して保持する 4. 口でゆっくりと呼吸をして吸入する 5. 薬がなくなるまで数分間 吸入を続ける 表 10 気道可逆性試験に使用する代表的な吸入気管支拡張薬 気管支拡張薬吸入方法投与例 ( 成人 ) 吸入後の検査 短時間作用性 β 2 刺激薬 MDI で吸入 ( スペーサー併用可 ) 加圧式ネブライザーで吸入 サルブタモール硫酸塩 2 吸入 (200μg) プロカテロール塩酸塩 2 吸入 (20μg) サルブタモール硫酸塩 0.3~0.5ml(1.5~2.5mg) プロカテロール塩酸塩 0.3~0.5ml(30~50μg) 15~30 分後 必要な場合は 4 吸入まで可 - 26 -
差 (%) Ⅶ. 予測式について 予測式の問題点 肺機能検査を評価する際には基準値が必要であり 30 Baldwin らの予測式や日本呼吸器学会の予測式など複 数の予測式が存在する 従来より採用されている 20 150cm Baldwin らの予測式は欧米の基準値であり 仰臥位で求められた基準値である 日本人の基準値としては日 10 160cm 170cm 本呼吸器学会の予測式があるが 図 24 に示すように 0 180cm 二つの予測式で算出した予測値には差があり 評価にも差異が生じることを認識しておかなければならない -10 20 30 40 50 60 70 年齢 190cm 各検査項目における予測式は臨床的評価に不可欠で あるが 自施設で使用している予測式を認識し その 特性を把握することが重要である 図 24 Baldwin らの予測式と日本呼吸器学会の予測式のシュミレーション 男性 20~70 歳 150~190cm を対象とした 横軸は年齢 縦軸は Baldwin の予測値を基準に日本呼吸器学会予測値との差を割合 (%) で示した - 27 -
Ⅷ. 用語集 略語英語日本語 IRV inspiratory reserve volume 予備吸気量 TV tidal volume 1 回換気量 ERV expiratory reserve volume 予備呼気量 RV residual volume 残気量 TLC totallung capacity 全肺気量 VC vital capacity 肺活量 IC inspiratory capacity 最大吸気量 FRC functional residual capacity 機能的残気量 %VC 対標準肺活量 FVC forced vital capacity 努力性肺活量 FEV1.0 %FEV1.0 1 秒量 対標準 1 秒量 PEF peak expiratory flow 最大呼気流量 ATI air-trapping index 空気のとらえこみ指数 extrapolated volume 外挿気量 MMF Maximal mid-expiratory flow 最大中間呼気速度 FEV1.0%(G)=(FEV1.0/FVC) 100 FEV1.0%(T)=(FEV1.0/VC) 100 用語の説明 Gaensler( ゲンスラー ) の 1 秒率 Tiffeneau( ティフィノー ) の 1 秒率 V. 50 V. 25 V. 50/V. 25 FVC の最大吸気位を 100% 最大呼気位を 0% としたときの 50% 肺気量位の呼気流量を V. 50 25% 肺気量位の呼気流量を V. 25 その比を V. 50/V. 25 で表す ATPS(ambient temperature and pressure,saturated with water vapor) とは 測定時の室温 測定時の大気圧 室温での水蒸気で飽和された状態 ( 採取された呼気の容積は ATPS 表示 ) BTPS(body temperature ambient pressure,saturated with water vapor) とは 測定時の大気圧下で室温を 37 に補正し 水蒸気で飽和された状態 ( 肺の中の気体の容積は BTPS 表示 ) STPD(standard temperature and pressure dry) とは 0 760mmHg で水蒸気を含まない状態 ( 肺胞レベルでのガス交換量は STPD 表示 ) - 28 -
Ⅸ. 参考文献 1) 呼吸機能検査ガイドライン スパイロメトリー フローボリューム曲線 肺拡散能力 : 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 ;2004 年 9 月 2) 呼吸機能検査の実際 : 日本臨床衛生検査技師会 ;2005 年 3 月 31 日第 1 刷 3) 喘息予防 管理ガイドライン 2009;2009 年 10 月 4) リトレーニング呼吸機能検査,Medical Technology Vol.32 No.2 129-159, 医歯薬出版,2004 年 5) 極めよう呼吸機能検査,Medical Technology Vol.38 No.7 659-691, 医歯薬出版,2010 年 - 29 -
ガイドライン作成委員会 ( 生理検査 ) 作成委員長 井上真由利 ( 愛知医科大学病院 ) 作成委員 余語保則 ( 小牧市民病院 ) 作成委員 滝野好美 ( 豊川市民病院 ) 作成委員 加藤鮎美 ( 中京病院 ) 作成委員 大竹悦子 ( 公立陶生病院 ) 作成委員 宮田真希 ( 東海記念病院 ) 作成委員 加藤香緒里 ( 名古屋大学医学部附属病院 ) 作成委員 刑部恵介 ( 藤田保健衛生大学 ) 公益社団法人愛知県臨床検査技師会生理検査研究班班員 問い合わせ先 愛知県臨床検査標準化協議会事務局 450-0002 名古屋市中村区名駅五丁目 16 番 17 号花車ビル南館 1 階公益社団法人愛知県臨床検査技師会事務所内 Tel 052 581-1013 Fax 052 586-5680 愛知県臨床検査標準化ガイドライン 呼吸機能検査の手引書 第 1 版 発行発行所発行者編集者印刷 平成 年 月愛知県臨床検査標準化協議会伊藤宣夫所嘉朗 井上真由利 内田一豊山菊印刷株式会社