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Transcription:

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1 意見の前提 NACSIS-CAT/ILL は我が国最大の書誌ユーティリティであり 書誌共有型のオンライン共同分担目録方式 を採用して 参加機関の目録作業の軽減化と高品質の総合目録の構築を目指してきた ( 注 1) これは 2009 年 3 月にまとめられた 次世代目録所在情報サービスの在り方について ( 最終報告 ) のなかで NACSIS-CAT/ILL を説明した文です 現在の NACSIS-CAT/ILL は 書誌ユーティリティのサービスとして (1) 目録作業の省力化 (2) 学術情報の共有 (3) ILL など 利用者サービスを主要な目標としています NACSIS-CAT/ILL は 利用者サービスのためのインフラであると同時に 個々の図書館単独では満たせないサービスの一端も担ってきました NACSIS-CAT/ILL を利用することで (1) 情報資源の目録作業は一回で済み (2) 自館以外の所蔵を知ることができ (3) 自館にないものは ILL を通して知識 ( 情報資源 ) を共有することができます こうした機能を満たすことができるのは 資源が的確に識別でき 検索 ( 見つけ出すこと ) ができ 似たもの同士を区別して 利用に供する (ILL または アクセス可能にする ) このしくみがシステムを通して提供されていることが 前提になります これは FRBR でいえば 利用者タスクの発見 識別 選択 入手に相当します 最も重要なポイントは 書誌ユーティリティが本来満たすべき目標および機能を徹底するには 各種の典拠情報が機能していなければならない ということです また 典拠情報の質と粒度も重要となります 名称典拠レコードであれば 同姓同名者を的確に区別できる情報が記載されていることや 複数の名称をもつ同一人物がいずれの名称からでも検索できるだけではなく 別々の複数の名が同一人物のものであることがわかるように工夫されている等です 注 1: 国立情報学研究所学術コンテンツ運営 連携本部図書館連携作業部会 ( 次世代目録ワーキンググループ ) 次世代目録所在情報サービスの在り方について( 最終報告 ) p.27 https://www.nii.ac.jp/cat-ill/archive/pdf/next_cat_last_report.pdf 1

2 意見 以下では NACSIS-CAT/ILL の再構築について ( 案 ) を これから NACSIS- CAT/ILL の軽量化 合理化について ( 基本方針 )( 案 ) を 基本方針 と略します 意見 1 NACSIS-CAT/ILL の再構築において 書誌ユーティリティのサービスを維持するのか否か 2 つの案は明確にしていません 書誌ユーティリティの本質的な構成要素とされる ( 注 2) 総合目録については 総合目録データベース という用語が使われる一方 過去の議事要旨など ( 注 3) には 総合目録的機能 という表現もあります 書誌ユーティリティ 総合目録を維持するか放棄するかによって 持つべき機能が異なることは明らかです その点を明確にすることは できるのでしょうか 注 2: 宮澤彰 図書館ネットワーク ( 丸善 2002)p.4 注 3: 第 12 回これからの学術情報システム構築検討委員会議事要旨 (2015.10.19) http://www.nii.ac.jp/content/korekara/about/document/pdf/korekara_record2015101 9.pdf これからの学術情報システム構築検討委員会 NACSIS-CAT/ILL の軽量化 合理化について ( 基本方針案の要点 ) (2015.10.27)p.3/7 http://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/korekara_doc20151027.pdf 意見 2 再構築後も従来同様の書誌ユーティリティとして運用する場合 4 つの利用者タスク ( 注 4) 発見 識別 選択 入手 を満たせない簡略化や効率化は問題です 言うまでもないと思いますが これは電子情報資源を扱うためのインフラを整えることとは別の 大学図書館のミッションです 注 4: 書誌レコードの機能要件 p.16 などを参照 http://www.ifla.org/files/assets/cataloguing/frbr/frbr-ja.pdf 意見 3 基本方針 の 1 に 国内外の情報資源に関する情報を集約 管理するデータベース等との連携を図り 統合的検索環境の実現を検討する とあります どのデータベース等との連携を想定しているのか あるいは検討において取りあげたのか 名前を明らかにできないでしょうか 具体的に考える材料として オープンにしてほしいのです 意見 4 これから の 1 で NACSIS-CAT の軽量化 合理化は 電子ジャーナル等の電子情報資源や多様な情報資源について効率的に対応し 国内外におけるデータの相互運用性を確保するために必要 と説明されています 2

そして 2 つの案では 軽量化の説明において 名寄せ や 典拠データの自動リンク などの技術が示されています これらの技術によって 書誌データの質を保証できるのでしょうか 基本方針 の 2.2 の図中には 実験上のシステムで 96% 以上の精度 とあります しかし残る 4% は 500 万冊レベル ( 注 5) とのことです 人による作業とほぼ同じ 100% 近い状態での質の保障を維持することが 目標になっていなければ 図書館業務に支障が起こることは否定できません 書誌調整をしないとなれば 品質の悪いデータが何倍にも増え こうしたノイズが今後は減らない ( 減らすことができない ) 状況が訪れます 大量のノイズを含む場合でも大丈夫である と納得できる説明が必要だと思います なぜなら 2 つの案を読んだ多くの図書館員は この点を懸念しているからです 見切り発車をして 本番では 96% に届きませんでした ごめんなさい では 取り返しがつきません 加えて データの質が保証されなければ 検索の強化は期待できないと思います 2 つの案には サービスの質をどのように確保するのか その説明がまったく欠けています 質を考慮しない軽量化や合理化は 極めて危険です 注 5: 井上昌彦さんのツイート 2016.3.5 日本図書館研究会 大学図書館とライブラリアンの未来像 :NACSIS-CAT/ILL を超えて における講師 甲斐重武氏 ( 京都大学附属図書館事務部長 ) の発言のメモとして https://twitter.com/karatelibrarian/status/705998854286499842 意見 5 典拠データの自動リンク が目録作業の軽量化の方策として提案されています これについて検討するにあたって リンクする典拠の種類や 重複する書誌レコードや種類の違う典拠レコードをどのようにして統合するのかなど 多くのわからないことが 2 つの案にはあります すなわち 典拠データの質と種類 および どの範囲か について 詳細な説明がありません 人による作業でも迷うことが多い現状を踏まえると 実現可能なのか 懸念されます さらに 基本方針 の 4 を読むと LOD 化されたデータへのリンクを視野に入れていることもうかがえます もしそうであれば NACSIS-CAT の典拠データのフォーマットは 大幅な見直しをする あるいは MARC21 など別のフォーマットへ移行する といった変更を避けて通ることはできないと考えます 目録規則を RDA やそれに準拠する改訂作業中の NCR へ変更するなら フォーマットの大幅な見直しは なおさら必要です RDA は 書誌レコードに含まれる各種の実体とその属性の多くが 典拠化できる情報 あるいは 統制語彙として保持される と示唆しています すなわち 従来の NACSIS-CAT では典拠化できなかった書誌要素や属性項目の追加が必須となります 適合性の高い検索を求めるのであれば 質と粒度の十分な典拠情報にリンクする技術も備える必要があるでしょう 3

こうしたことを考えると 少なくとも今の段階で 典拠レコードの種類とその属性情報の 充実を実現するフォーマットが決まっていないと 利用者のための NACSIS-CAT/ILL の再 構築は 2020 年には間に合わないのではないか と思います 補足 同時に重要な案件があります それは 国内で複数存在する典拠ファイルを統一する あるいは同定することです これは必須の条件のはずです VIAF(Virtual International Authoritiy File 注 6) を活用するインフラを整えるために 一国として必要な作業であると考えます 国内の複数の典拠ファイル (NDL NII TRC など ) を それぞれ VIAF に収めるとしても 同一の実体に対する典拠レコードの同定は不可欠です あえて言いますが 日本語で書かれた典拠レコードは 日本の図書館員が責任を持たなければならないと考えます 外部サービスとつながり 国際的に流通するという展開を見据えているのであれば これらを他国のデータ作成者に任せてよいとは思いません 注 6:VIAF の有用性については 次などを参照 国立国会図書館収集 書誌調整課書誌調整係 典拠の国際流通 : バーチャル国際典拠ファイル (VIAF) への参加 (2) NDL 書誌情報ニュースレター 2013 年 1 号 http://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2013_1/article_05.html 意見 6 提案されている新 NACSIS-CAT/ILL は ILL に重点を置いたシステムであるような印象を受けました ILL では 具体的な 既知の情報資源が対象となります 懸念が残るのは 未知の情報資源の検索において重要となる 主題に限定した検索のしくみについて 一切触れられていない点です 主題に限定した検索の強化なしに 書誌利用 ( 検索 ) 機能を強化することはできません これについては すでに述べたように 典拠の種類の増加と典拠情報の質が 最も重要となります 意見 7 所蔵のないものを含む重複書誌レコード 修正が必要と思われる書誌レコードを許容する と書かれています そういう状況になれば 検索結果から どの書誌レコードに所蔵を付与すべきか 選ぶ手間が 少なくとも二倍以上になることは否めません これでは 目録作業の簡略化にはつながらないと思います 追記 データ構造の見直し についても議論もありますが それ以前の問題の解決が先であると考えます すなわち これらが解決されれば 書誌がフラットであろうとなかろうと 検索が適切に行われ 知識 ( 情報資源 ) を共有するしくみに近づくことができるからです そのため 多くの具体的な疑問があるデータ構造の見直しについては ここでは割愛します 4

3 提案 提案 1 BIBFRAME の実用化の目処が立たない ( 注 7) 現在 MARC21 フォーマット以外の選択肢はありえないと考えます これは 2000 年代に多くの海外の国立図書館が MARC21 に対応した時と同じ結論となります もちろん 従来とも異なる独自フォーマットを採用し 各種フォーマットのコンバージョンを整える可能性もゼロではありません しかし日本以外の図書館が採用している MARC21 の経験を積むことは 主流である MARC21 の次に来る情報検索のインフラへ移行する際に ハードルを低くできると予想できます その観点からも MARC21 を採用することが重要ではないでしょうか この場合 再構築では NACSIS-CAT が MARC21 を取り込める拡張された形式となっていなければなりません 注 7: When should we move to BIBFRAME? に対する答えは 次の通り BIBFRAME is far from an environment that you could move to yet.( 後略 ) https://www.loc.gov/bibframe/faqs/#q09 提案 2 2 つの案では 外部機関作成書誌データを活用するとし 例えば 国立国会図書館 (NDL) や米国議会図書館 (LC) の書誌データを 総合目録データベース内に登録する と説明しています 一方で OCLC WorldCat には既に 主要な英語圏の国々をはじめ フランス ドイツ スペインなどヨーロッパの主要言語の国々 そして我が国の国立国会図書館も加わり 45 の国立図書館の書誌データが含まれています (2016 年 4 月 25 日現在 ) 再構築後 新 NACSIS-CAT/ILL は 情報探索を強化しつつ コストに見合うデータベースとして維持され 利用者に提供することは難しいのでしょうか もしそうであれば むしろ ILL のみを強化して 書誌データは WorldCat を書誌ユーティリティとして利用する方法があると考えます この場合 各図書館は WorldCat と接続しつつ NACSIS-CAT/ILL とも連携できる図書館システムが必要となります 補足 WorldCat へ書誌レコードをバッチロードする際に 現在のところ 問題があることがわかっています 典拠へのリンクは LC 名称典拠レコード LCSH MeSH など 標目形が英語のもののみに限定されるのです つまり NCR で記述した書誌レコードの典拠情報は 典拠コントロールされない という制限があります (2016 年 4 月 25 日現在 ) 将来的には ユニコードへの対応や WorldCat 側のシステムの更新によって 多言語多文字の典拠レコードを同じに扱うことができるようになれば 問題は解決する と予想できます 問題が解決するまでは WorldCat で典拠コントロールができない標目は 図書館システム側で典拠コントロールするしくみを提案して運用をサポートする等 工夫が必要となるでしょう 5

4 追記 感想など この意見をまとめるにあたり 2 つの案とともに 大急ぎで多くのドキュメントに目を通しました そして これから の 1 に記述されたように 電子情報を含む学術情報資源全体を適切に運営できるよう, これまでの NACSIS-CAT の機能をあらためて再検討し, 今後のシステムのあり方について提案することが求められることとなった 結果として 2 つの案が提示された その経緯を知りました また 案であるために 不鮮明 あるいは 未解決な要素が含まれていることも理解できました 4 月 6 日に NACSIS-CAT/ILL の再構築に関する意見募集 ( 注 8) が公開され ようやく 2 つの案が公開されました ( 注 9) 読み進めるうち 多数の疑問や 問いかけたいことが浮かんできた と 多くの図書館員が話してくれました 例えば 次の書誌フォーマットが決まらない状態で 新規の書誌レコードのみならず 新規の典拠レコードの作成を どのようなしくみで運用すると想定しているのか 提示してほしい などです 2000 年代中頃からのドキュメントに目を通しても わからないことが多くありました 多くのわからないことがあり かつ 新年度当初の約 3 週間のという短期間で 建設的な意見を述べること自体に困難を感じつつ 意見をまとめました また 質問等が含まれた場合でも 個別のご回答はいたしかねます とまで明示されているため すでに方向性は決まっているのではないか という印象さえ受けました こうしたもやもやを まず晴らしてほしい そして 日本の学術情報システムについて 努力に値する再構築の理路を見いだしたいのです 次の 30 年へ向けて人的資源を育て システム資源に知恵を絞り 必要な資金をつくり 知識を共有するしくみを維持したいと考えます 文末となりますが 回答者からの意見や質問をすべて公開するとともに それらに対する委員会での検討からの回答も できるだけ早い段階で公開してほしいと思います 注 8:NACSIS-CAT/ILL の再構築に関する意見募集 (2016/4/6-4/28) http://www.nii.ac.jp/cat-ill/2016/04/nacsis-catill201646428.html http://www.nii.ac.jp/content/korekara/2016/04/nacsis-catill201646428.html NACSIS-CAT/ILL の再構築について ( 案 ) 及び NACSIS-CAT/ILL の軽量化 合理化について ( 基本方針 )( 案 ) に関する意見募集について http://www.nii.ac.jp/cat-ill/about/infocat/korekara/ 注 9:2 月 23 日に行われた 第 11 回大学図書館と国立情報学研究所との連携 協力推進会議 の議事要旨には この場で 2 つの案も説明され 意見交換の後, 次期活動計画, 次期委員および NACSIS-CAT の再構築の方向性について承認された とある 3 月 17 日に公開された配付資料の PDF ファイルに 2 つの案は欠けている http://www.nii.ac.jp/content/cpc/documents/pdf/11-3_gijiyoshi.pdf p.3( 議事要旨 ) http://www.nii.ac.jp/content/cpc/documents/pdf/11-2_paper.pdf ( 配付資料 ) 6