ヒロシマ平和旅考 2017 小さな群れよ 恐れるな あなたがたの父は喜んで神の国をくださる ルカによる福音書 12 章 32 節 ヒロシマの地で 平和を実現するために何ができるか 旅を通して自ら考え 行動する 神戸国際大学と附属高校は 日本聖公会とカトリックの合同プログラムである 広島平和礼拝 2017 に参加した これが本学院でいう ヒロシマ平和旅考 ( りょこう ) である 有志の高校生 13 名 ( うち 2 名は昨年から連続で参加 ) を含み 高校教員 大学生 大学職員の総勢 36 名の巡礼となった 大学生には日本人のほか スリランカ ベトナム ネパール フィリピン 中国からの留学生もいた 大学 高校それぞれで参加者を乗せたチャーターバスは 最初の目的地である宮島口へ向かった 1 日目 (8 月 4 日金曜日 ) 昨年大学生が訪れた廿日市市の宮島 世界文化遺産にして 日本三景のひとつ 日本人学生だけでなく留学生たちにも好評であった 今年は高校生にもぜひということで 全員が訪れた 宮島口からフェリーに乗り換え 嚴島神社を見学し 島内を観光した 人の思いを超えた存在に対する畏敬の念を 古 ( いにしえ ) の日本人はどのように表現しようとしたか 一行は白と朱のコントラストが優美な社殿で各々思いをめぐらせた 野生の鹿が多数いるが 人に対して友好的だ 観光後 大学側は宮島口のバックパッカーズに宿泊 高校側はチャーターバスで広島市に向かい 日本聖公会広島復活教会に宿泊 ここが 3 日間お世話になる活動拠点である 夕食 開会礼拝 入浴で 1 日目を終えた か涸れた谷に鹿が水を求めるように神よ わたしの魂はあなたを求める ( 詩篇 42:2)
2 日目 (8 月 5 日土曜日 ) 午前中は二手に分かれた 昨年からのリピーターは上級編である大本営コースへ向かった 初級コースは平和公園での碑めぐり 資料館見学を経て 聖公会スタッフによるガイドにより 原爆死没者慰霊碑 平和の池 平和の灯 レストハウス 原爆の子の像 原爆ドーム そして照準の目標とされた相生橋を渡り 原爆供養塔 韓国人原爆犠牲者慰霊碑 被爆した墓石を訪れた 72 年前のこの場所で ある者は瞬時に命を奪われ ある者は焼けただれた両腕を苦痛のあまり前に突き出したまま町をさまよい またある者は後年になって病気に苦しんだ この人たちがこのような苦しみを受けるに値する どんな罪を犯したというのか 一行は憤り 嘆き そして祈った 教会に戻った一行は 昼食にハヤシライスをいただき また自らも給仕を手伝った 高校生はその後 核兵器廃絶署名活動に備え 制服に着替えて待機した 人よ 何が善であり主が何をお前に求めておられるかはお前に告げられている 正義を行い 慈しみを愛しへりくだって神と共に歩むこと これである ( ミカ 6:8)
午後はまず 被爆体験を拝聴した 今年は原爆の記憶を合唱で伝える指導をしてきた 益田遥氏 高校生はその後再び平和公園に移り 聖公会関係学校と合同で 核兵器廃絶署名運動を実施した 英語も通じたようである 平和のきずなで結ばれて 霊による一致を保つように努めなさい ( エフェソ 4:3)
夕方 高校 大学の一行は原爆供養塔の前にて聖公会とカトリック合同で行なわれる 祈りのつどい に参加した 主よあなたの道を の賛美で開会 各方面から平和のメッセージが述べられるごとに キリストの平和 が繰り返し歌われた この歌は簡潔な歌詞に素朴な旋律を持つ 初めての高校生も繰り返す間に覚えた様子 開会直前 日本人学生が外国人留学生に短く歌唱指導する場面も見られた 集会後 いよいよ平和行進 聖公会 カトリック混成部隊の一同は 列をなして歌いつつ広島の街を歩き 2 キロほど離れたカトリック世界平和記念聖堂を目指した 話すことばがちがうけれど主に向かう心はみんな同じこどもだからアーメン ハレルヤ 自由になって光の中をひとつになって歩いて行こうウォーク イン ザ ライト との賛美を通して 私たちが平和を祈り 平和を実現するために行動していることを世に訴えた 日没前 大学側は宮島口の宿泊場所に戻り 高校側は広島復活教会に戻った そこで配達された お好み焼き を聖公会関係学校中高生みんなで夕食にいただき わかちあいの時を持った なぜ 8 月 6 日にヒロシマを訪れようと思ったか 署名活動の感想から発展して平和のためにできることを付箋に書き込み 男女混合のグループに分かれて語り合い 整理してグループごとの発表を聴き合う 男子校の本校生は少々緊張気味 来年の共学化へ向けた心の準備になったか キリストの平和が私たちの心のすみずみにまでゆきわたりますように ( 曲 / 詞 : 塩田泉 )
3 日目 (8 月 6 日日曜日 ) 8 月 6 日は 朝から暑い日だった ( 井伏鱒二原作 / 今村昌平監督 黒い雨 ) 高校生たちは起床後すぐに身辺整理で忘れ物防止をするとともに 各自朝食を済ませた 大学側が宿泊場所から教会に来て 平和記念礼拝に参加するのと同時並行で 高校側は平和公園の平和記念式典で市長の平和宣言や首相のスピーチを聞いた その周囲にはデモ行進と警備隊が横目で見えるなど 危険を避けつつ いま ここという独特の雰囲気を感じ取った ここに到着してから素直に笑えない 原爆ドームが昨日までとちがって見える もうにっこり笑ってVサインをしている場合ではない 人類はなぜ戦争をするのか 戦争を最も望まなかった昭和天皇と 戦争を避けるためすいしひょうに最も努力した連合艦隊司令長官との悲劇の儀式 出師の表 に象徴されるように 避けるに避けられなかった戦争 ポツダム宣言を 重要視しない から 黙殺 へ 徹底抗戦を貫こうとする軍部に対して下ったご聖断 みことのりうけたまわつつし承詔必謹 ( しょうしょうひっきん : 詔を承りては必ず謹め ) により戦争を終わらせるのがいかに難しかったか 72 年前に絶対悪が放たれた まさにあの空の下に立ち さまざまな思いが交錯する 教会では 平和記念礼拝の直後 日曜日の礼拝 聖餐式がある 教会に戻った高校生は 日曜礼拝が始まる前に自分たちが泊めていただいたフロアを掃除をしてから礼拝堂へ向かい 心を整えた それにしても じゃんけんで勝った人がトイレそうじ とは 聖職者の気の利いたことばかけ 2 名の者が当たったが 喜んで トイレそうじ大臣 の職務を全う 主において常に喜びなさい ( フィリピ 4:4) 礼拝説教では 平和を実現するために主イエスが私たちに何を求めておられるかを知るための手がかりが分かりやすく語られた 聖書箇所はルカによる福音書 9 章 27 節以下に記された ペトロとヨハネとヤコブが目撃しエクソドスエクソドスた主イエスの変容 現れたモーセとエリヤともに ご自分の最期について語られる場面だ それは出エジプト記に記されたイスラエルの民がヨルダンを目指すように 主イエスが私たちの罪を贖って死すべき人の子から復活エクソドスの主へと大移動なさることを意味する 祈って主に伺うことの大切さ 聖書を開けば即座に指針が与えられるわけではないことがユーモラスに伝わった 何がどうユーモラスなのか 関心ある方はマタイ 27:5 ルカ 10:37 ヨハネ 13:27 の順に参照のこと そうではなく 日々聖書を読み続ける中で 自分を導くことばに出会える 祈り続け 聖書を読み続ける中で 神の導きと悪の誘惑を識別して行動する知恵が与えられるのだ 礼拝後 記念撮影を経てチャーターバスで帰路に就く 神戸に帰れば甲子園 全校応援が待っている 神国付高校 ( 野球関連のニュース等では神戸国際大学付属高校だが 神の国が付いている高校とも読める ) のナインは スポーツと芸術が出会う聖地で戦う 筆者は吹奏楽の陣頭指揮 これらも平和を実現する活動だ
Wir setzen uns mit Tränen nieder Und rufen dir im Grabe zu: Ruhe sanfte, sanfte ruh! Matthäus-Passion, Johann Sebastian Bach われら涙流しつつひざまずき 御墓なる汝の上に願いまつる 安らかに憩いたまえ 憩いたまえ安らかに! よしむ バッハ マタイ受難曲 ( 杉山好 訳 ) Photographed and reported by Shingo Sebastian Yamato