世界のエネルギー情勢化石燃料 再生可能エネルギー 原子力 2013 年 1 月 22 日 小野章昌
本日の話題 1. 化石燃料の生産ピーク 2. 再生可能エネルギーの限界 3. 原子力の役割と将来
エネルギー源には何があるか 太陽の恵みによるエネルギー昔の太陽の恵みが蓄積されたエネルギー 石油 天然ガス 石炭 ( メタンハイドレート ) 現在の太陽の恵みによるエネルギー 太陽光 風力 水力 波力 バイオマス 核反応から得られるエネルギー 原子力 ( 核分裂 核融合 ) 地熱 ( 地中の放射性物質の崩壊熱 )
人類とエネルギーの関わり 出典 : 総合件級開発機構 エネルギーを考える
1. 化石燃料の生産ピーク 化石燃料は有機物起源 石油 ガスは主として 6,000 万年ー 2 億年前の地球温暖期に水中に大量発生したプランクトンや海藻の死骸が水底にたまり 土砂の堆積とともに地中深く押し込められて 圧力と温度上昇のために炭化してできた 地下 2,500-4,000m で石油 4,000m 以深でガスになったと言われている
中東油田の成り立ち ( テチス海 )
サウジアラビアの油田
石油発見量と生産量 出典 : オーストラリア政府レポート
世界の石油生産量 バイオ NGL 原油 出典 :TheOilDrum February24,2012
世界石油生産推移 原油 NGL 精製取分 バイオ 出典 :The Oil Drum February 24,2012
原油生産はプラトー状態 2005 年以降原油生産量は 7,500 万バレル / 日程度でプラトー ( 高原 ) 状態になっている 増えているのは NGL( 天然ガス液 ) とバイオ燃料 NGL は天然ガス生産時の副産物液体 : 軽い成分 ( エタン プロパン ブタンなど ) が多く ガソリン製造には不向き バイオ燃料は主にトウモロコシ 砂糖キビ由来の自動車用エタノール 自ずと限度がある
非在来型資源 シェール ガスとシェール オイル 在来型 炭層メタン 砂岩層 タイトガス 頁岩層
シェール オイルの掘り方
生産井の減衰 ( バッケン油田 ) 最初の 2 年で 8 割ほど減少 出典 :The Oil Drum April 1,2012
バッケン油田の生産井 出典 :The Oil Drum 2012.4.1
米シェール オイル生産の実態 シェール オイルはシェール ガスと同様に水平掘削 水圧破砕により頁岩中の原油を強制回収する ( コスト高 環境問題 ) 北ダコタ州バッケン層の例では 3200 の生産井により 50 万バレル / 日の生産を行っている 1 孔当たりの生産量は 150 バレル / 日 メキシコ湾最大の生産井では 250,000 バレル / 日でその差は歴然 次々と生産井 (700 万ドル ) を掘る必要がある
IEA による生産見通し 2011 出典 :IEA 世界エネルギー見通し 2011
IEA による米国生産見通し 2012 シェールオイル 未発見油田 未開発油田 稼行中油田 出典 :IEA 世界エネルギー見通し 2012
非在来型資源 カナダのオイルサンド採掘
カナダ オイルサンド生産予想 成長期待 操業 建設中 出典 : カナダ石油生産者協会年次レポート 2012
IEA 世界石油生産見通し 2011 バイオ 非在来型 NGL 原油 未発見 未開発 稼行中 出典 :IEA WorldEnergyOutlook2011
世界原油生産長期見通し 10 億バレル 2017 年ピーク 深海 非在来型 在来型 出典 : オーストラリア政府レポート
認識 1 既存油田生産は年平均 4.1%(300 万バレル / 日 ) で減退 サウジアラビアが 3 年に 1 つ必要 イージーオイルの時代は終わった 深海 重質油などの非在来型資源を加えても 2010 年代に生産は下がり始め 2050 年には現在の半分程度 2100 年には 15% 程度になろう ( オーストラリア政府 2010 年レポート ) 石油生産ピークは切実な問題と考えるべき
米国天然ガス操業リグ数
ヘインズビル ガス田生産 出典 :A.E. Berman ASPO 国際会議 2012
最近の米シェールガス生産
米 EIA によるガス生産見通し 2011 純輸入 シェールガス
米 EIA による生産見通し 2012 シェールガス タイトガス 在来型海底ガス田 在来型陸上ガス田 出典 : 米 EIA エネルギー見通し 2012
米国天然ガス価格推移 出典 :Oilnergy ホームページ
米シェール ガス生産の実態 水圧破砕用に1 孔当たり15,000-20,000Tの水と 100Tの化学剤を注入する 地表水の環境汚染をもたらす懸念があり NY 州 NJ 州などで操業規制を招いている リグ数減少から見て生産量が増え続けることはない 米国内でガス採掘を行う企業はどこも赤字という ( バーネットガス田の採算ラインは7-8 ドル /100 万 Btu) 石炭火力からガス火力への転換が加速され ガス価格の再騰も考えられる
認識 2 シェールガスは非在来型資源 回収には多くの手間と時間とエネルギー投入を要するコストが高い (4~8 ドル vs 在来型 1 ドル ) 米国は大消費国 市場価格が上がったら国内産業 ( ガス火力 化学品製造 ) 保護のために輸出規制を掛ける可能性大 日本へは液化して専用船で輸送する必要がある コストが 6.5~7 ドル /100 万 Btu 余計に掛かる 米国市場は単一のスポット市場 価格変動リスクも大
天然ガスの発見ピーク 出典 : ウプサラ大学 Aleklett 教授
石油 ガス生産ピーク (ASPO 予測 ) ガス 石油
石炭の生産ピーク 出典 : ウプサラ大学 Aleklett 教授
2. 再生可能エネルギーの限界 世界の先例 安定電源としてどれだけカウントできるか 日本の将来見通し
基礎 エネルギー資源の 3 条件 ( 東京大学名誉教授石井吉徳 ) 濃集している 大量にある 経済的に回収できる 太陽光 風力は最初の条件を満たしていない希薄なエネルギー源で途切れ途切れになる この間欠性は変えられない
アイルランドの例 風力発電間欠性の例 出典 : ケンブリッジ大学 D マッケイ教授資料
ドイツの例 風力発電 ( 緑色 ) の例 出典 :VDE レポート
ドイツの例 12 月 9 日の太陽光発電 100% 0%
ドイツの例 5 月 25 日の太陽光発電 100% 0%
基礎 キロワット (kw) とキロワットアワー (kwh) kw kwh パワー ( 発電能力 ) エネルギー量 ( 発電量 消費量 ) 単位時間当たりのエネルギー量 1W=1ジュール / 秒 1kW=1000W=1000ジュール / 秒 ( 他に1 馬力 =746W) パワー (kw)x 時間 1kWh=3,600,000ジュール ( 他にキロカロリー 石油当量 ) 間違った用例 100 万 kw の太陽光発電は原子炉 (100 万 kw)1 基分に相当
なぜ間違っているか? 間違った用例 100 万 kw の太陽光発電は原子炉 1 基分に相当 発電能力 (kw) があっても発電量 (kwh) を得られるとは限らない 太陽光 風力などの自然エネルギーは必ず発電するとは限らないエネルギー源 稼働率 (%)= 実際の発電量 (kwh)/ 定格能力 (kw) でフルタイム運転した時の発電量 (kwh) 日本の年間平均稼働率は太陽光 12% 風力 20%
再生可能エネ拡大の起動力は FIT (Feed in Tariff) FIT は固定価格買取制度と呼ばれており 太陽光 風力などで発電された電気を固定価格で長期間 ( 例 :20 年 ) 電力会社に買取らせる制度 日本も 2012 年 7 月から導入 長期の利益が保証されるため多くの事業会社や個人が参入 大規模導入を図りやすい 元々は CO2 削減が目標 同時に国内メーカーの養成 雇用拡大などを目指す
ドイツの例 再生可能電力 (2011 年末 ) 容量 ( 万 kw) 発電量 ( 億 KWh) 水力 風力 太陽光 バイオ マス 合計 440 2,900 2,480 720 6,550 195 465 190 369 1,219 (7.5%) (3.0%) 出典 : 独環境省 再生可能エネルギー 2011
ドイツの例 再生可能電力の内訳 風力 水力 太陽光 バイオ 出典 : 独環境省 再生可能エネルギー 2011
ドイツの例 18.000 16.000 FIT 発電量と買取費用 Einspeisung und Vergütung nach dem Stromeinspeisungsgesetz (StromEinspG) und dem Erneuerbare-Energien-Gesetz (EEG) in Deutschland Einspeisung StromEinspG [TWh/a] Einspeisung EEG [TWh/a] EEG: Januar 2009 買取費用 100 90 14.000 12.000 Vergütung [Mio. Euro] EEG: April 2000 EEG: August 2004 発電量 80 70 [Mio. Euro] 10.000 8.000 6.000 Novelle BauGB: November 1997 60 50 40 30 [TWh/a] 4.000 2.000 0 1,0 StromEinspG: Januar 1991 - März 2000 1,3 1,6 2,3 2,8 3,7 4,8 6,8 7,9 3,5 10,4 18,1 25,0 28,4 38,5 44,0 51,5 67,0 71,1 75,1 80,7 91,2 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 StromEinspG: Stromeinspeisungsgesetz; BauGB: Baugesetzbuch; EEG: Erneuerbare-Energien-Gesetz; 1 TWh = 1 Mrd. kwh; Quelle: BMU-KI III 1 nach Arbeitsgruppe Erneuerbare Energien-Statistik (AGEE-Stat); Hintergrundbild: BMU / Bernd Müller; Stand: Juli 2012; Angaben vorläufig 20 10 0 出典 : 独環境省 再生可能エネルギー 2012
ドイツの例 消費者の超過料金 (kwh 当たり ) セント /kwh
ドイツの例 10 億ユーロ 太陽光による超過負担額 ( 年間 ) 出典 : ドイツ RWI 経済研究所 2012 年レポート
ドイツの例 太陽光発電 購入価格引下げ 10kW 以下の設備 10kW-40kW 10,000kW 以下 4 月 1 日以前 24.43セント 21.98セント 18.33セント 4 月 1 日以降 19.50 18.50 13.50 2013 年 5 月 17.28 16.40 11.85 2014 年 5 月 15.32 14.53 10.39 2015 年 5 月 13.58 12.88 9.12 2016 年 5 月 12.03 11.42 7.97
ドイツの例 ドイツの FIT ドイツの FIT による買取費用は年間 167 億ユーロ (2 兆円 :2011 年 ) 今止めても将来 20 年間の買取債務は 3,340 億ユーロ (40 兆円 ) ドイツ政府は太陽光発電買取価格を大幅に引下げ (2012 年 4 月 ) 10,000kW 以上のメガソーラーを買取対象から外した FIT 新規買取を終息に向かわせる意向
ドイツの例 ドイツで何が起こったか? 標準家庭 (300kWh/ 月 ) の超過料金負担が年間 2 万 2 千円近くになり 消費者の不満が高まる 太陽電池市場では中国 台湾メーカーの大量生産による安値攻勢により ドイツ国内メーカー 5 社が破産 CO2 削減コストは太陽光発電で 716 ユーロ /T 風力発電で 54 ユーロ /T 排出権取引市場の 40 倍 ~3 倍であった FIT は投資家が儲け 貧乏人が損する仕組み
スペインの例 スペイン電源と発電量 風力 太陽
スペインの例 発電容量推移 出典 : 海外電力調査会レポート
スペインの例 6 月 26 日の発電状況 風力 コジェネ ガス 石炭 原子力 輸出 水力
スペインの例 電力系統の特徴 半国営送電会社 (REE)1 社が全土の発電 送電をコントロールする 大量の風力発電建設に先立ち バックアップ用ガス火力発電を建設させた 風が弱いときにはガス火力を立ち上げさせ 強い時には止めさせる ベース電源は原子力と石炭火力 しわ取りはガス火力 水力 ガスコジェネ ( 熱電併給 ) で行い さらに輸出入により調整
スペインの例 スペインで何が起こったか? FIT によって風力 2,100 万 kw 太陽光 500 万 kw( 合わせて全発電容量の 25%) に伸長したが しわ寄せが電力会社に行った FIT 購入価格と販売価格の差による電力会社の赤字が 230 億ユーロ (2 兆 7,000 億円 ) に達し 新政府は 2012 年 1 月 FIT による新規買取を中止した 風力 太陽光の新規建設はほとんど望めなくなり 国内関連産業は窮地に立たされている ガス火力の稼働率は 23% に落ちた ( 日本は 52%) ピーク需要 4,400 万 kw に対し全発電容量 1 億 kw と過剰 これ以上の風力 太陽光は必要ない
欧州主要国の電力料金 出典 :2011 年 11 月 EU 統計より作成
安定電源とは? 安定電源 とは必要なときに常に発電を期待できる電源 --------- 国際エネルギー機関 (IEA) 世界エネルギー見通し 2011 : ピーク需要時に太陽光 風力合わせて 安定電源 としてカウントできる容量は欧州でその 5% 米国で 8% ドイツ エネルギー供給に関する倫理委員会レポート : 風力発電は容量の 7% 太陽光発電は容量の 0%
太陽光 風力の 安定電源 として 勘定に入れられる割合 出典 :IEA 世界エネルギー見通し 2012
風力大量導入に伴うドイツの問題点 風の強い北部から工場の多い南部へ基幹送電線 3,600km 新設が必要 住民反対のため完成は 100km 電力市場で風の強い時に ネガティブ料金 が発生 ( 次図 ) ポーランド チェコなどの隣国送電系統に余剰電力が流れるため停電のリスクが増大 昨冬だけで風力発電の出力抑制が 197 回
ドイツ市場でのネガティブ料金 対象期間 :2009 年 9 月 ~2010 年 3 月 出典 : アーヘン大学 H.Alt 博士
太陽光 風力を大量導入すれば? 発電容量の0~8% しか安定電源としてカウントできないので ほぼ100% に近い別電源 ( バックアップ電源 ) を必要とする 新たな問題としてバックアップ電源 ( 火力 ) の稼働率低下の問題経済的に補う仕組み ( 容量 kw 市場 ) が必要 送配電網の拡充 強化が必要となり三重投資となる 結果的に電力価格高騰 ( 次頁 )
ドイツで 30% 再エネを導入した時の ドル /MWh 電力コスト 出典 :OECD/NEA 原子力と再生可能エネルギー 資料より作成
ドイツで 85% 再生可能電力にしたら 貯蔵容量 需要 洋上風力 太陽光 陸上風力 陸上風力 4,000 万 kw 洋上風力 4,000 万 kw 太陽光 6,500 万 kw 出典 : シーメンス
ドイツで 85% 再生可能電力にしたら ピーク需要 (7,000 万 kw) の倍以上の太陽光 風力発電施設を建設することになる 風の強い時には需要を上回る発電量風力 太陽光の発電停止 数日間続く無風状態には無力全停電 電力の大量貯蔵は絶望的 余剰電力を水素やメタンに変えて貯蔵し再度電気にする方法も経済的に成り立たないであろう ( エネルギー ロスが多すぎる )
身近な 日本の例 太陽光 風力発電を考えよう 太陽光発電は住宅屋根とメガソーラー 耐震基準を満たす我が国の戸建は 1,200 万戸 すでに 90 万戸に設置済み ( 次図 ) 残りの 1,000 万戸に設置できたとしても 4,000 万 kw 発電量 420 億 kwh( 全発電量の約 4%) メガソーラー建設例 : 川崎沖埋立地に東京電力が建設した太陽光発電の容量は 2 万 kw 所要面積は 34 ヘクタール ( 東京ドーム 7.3 個分 ) 1 万 kw のメガソーラーには 17 万平方メートルの土地が必要
日本の例 住宅の太陽光発電 戸建 1,000 万戸に導入 :4,000 万 kw 発電量 :420 億 kwh 出典 : 経済産業省資料
日本の例 風力発電の可能性 現在の送電系統網では全土で 1,000 万 kw が導入可能量 ( 経産省委託調査 ) 風力資源は東北 北海道に偏在 同地域に 500 万 kw の風力発電を導入して首都圏に送る場合には 1.17 兆円の系統増強工事が必要 ( 経産省資料 ) 誰が負担するか?
日本の例 日本の風力発電推移 出典 :NEDO
日本の例 日本の FIT 区分 買取方式買取価格買取期間 太陽光 10kW 未満 余剰 42 円 /kwh 10 年 10kW 以上 全量 42 円 20 年 風力 20kW 未満 全量 57.75 円 20 年 20kW 以上 全量 23.1 円 20 年 小水力 200kW 未満 全量 35.7 円 20 年 200~1000 全量 30.45 円 20 年 地熱 15000kW 未満 15000kW 以上 全量 42 円 15 年 全量 27.3 円 15 年
日本の例 急激な買取価格引下げを想定 出典 : 環境省技術 W/G 資料
日本の例 家庭負担も少なくする方針 出典 : 環境省技術 W/G 資料
日本の例 日本 FIT の問題点 太陽光買取価格に見るように技術革新と量産効果を大きく見過ぎている メガソーラーは買取価格引下げによって拡大が止まる懸念 消費者負担を少なくすると再エネ拡大が進まないジレンマ 電力系統網拡大との相関関係を軽視
日本でどこまで再エネを伸ばせるか 前政権の 革新的エネルギー 環境政策 の目指した 2030 年再生可能エネルギー発電 30%( 別表 ) は実現可能だろうか? 太陽光発電 6,300 万 kw 毎年 330 万 kw の建設が必要風力 3,500 万 kw 毎年 180 万 kw の建設が必要 発電量はそれでも 1,330 億 kwh( 需要の 13.3%)
前政権計画 : 太陽光 風力発電 (2030 年 ) 現状 (2010 年 ) 2030 年 太陽光発電量 38 億 kwh 666 億 kwh 太陽光発電容量 330 万 kw (90 万戸 ) 6,300 万 kw (1000 万戸 ) 風力発電量 43 億 kwh 663 億 kwh 風力発電容量 244 万 kw ( 東京面積 1/10) 3,500 万 kw ( 東京面積 1.6 倍 )
基礎 電源の種類 ベース電源 : 年間を通して日中も夜間も一定して発電する電源 ( 石炭火力 原子力 ) ミドル電源 : 日中や季節間の大きな変動を補う電源 ( ガス コンバインドサイクル 石油火力 ) ピーク電源 : ピーク需要時などの細かい変動に対処する電源 ( 石油火力 ガスタービン ) 太陽光 風力は何電源? いずれの役割も果たせない
原子力をどこまで代替できるか? 原子力の代わりは火力しかない ( ドイツの例 ) 自然エネルギー ( 風力 太陽光 ) は常時 kw を期待 ( 計算 ) できるものではなくベース電源にはなり得ない わが国で中期的 (2030 年 ) には太陽光 3,000 万 kw 風力 1,000 万 kw 程度を望むことができようが 発電量は合わせて 490 億 kwh に過ぎず原発 6 基分 (700 万 kw) の代替にしかならないであろう
ドイツ建設中火力 (2014 年まで運開 ) 石炭火力 1,077 万 kw ( 褐炭 274 万 kw) ( 一般炭 803 万 kw) ガス火力 95.4 万 kw その他 36.5 万 kw 合計 1,209 万 kw 原子力を止める代わりに石炭火力 ( ベース電源 ) を建設 ドイツでは石炭火力の発電が増え ガス火力の発電が減っている (2012 年 )
認識 3: 太陽光 風力発電の意義とは 自前のエネルギー源であり 供給源多様化に役立つ ( 地方分散型 ) 地球温暖化対策となる 経済的メリットは火力発電の燃料費節約 ガス火力で 8.2 円 /kwh 石炭火力で 4.3 円 /kwh しかし独り立ちはできない バックアップ電源 ( 火力 原子力 ) の稼働率低下対策 ( 容量市場の創出 ) と送電系統網の大幅拡張が必要 太陽光 風力 バックアップ電源 新規送電線 の三重投資は避けられないであろう ( 三重投資の結果としての ) システム仕上がりコストが 8.2~4.3 円 /kwh+co2 削減クレジット 以下であれば意味があろう
3. 原子力の役割と将来 将来は エネルギー収支比 が重要な指標 福島後の安全性強化 燃料リサイクル ( 使用済燃料再処理 ) の意義 放射性廃棄物地層処分 廃炉
基礎 エネルギー収支比 (EPR) Energy Profit Ratio(EPR) とは? 投入エネルギー 1 に対してどれだけの回収エネルギーを得られるか ( 投入エネルギー / 回収エネルギーの比率 ) 例 : 自噴する油田の EPR は 100 カナダのオイルサンドは 1.4~4 とうもろこしエタノールは 0.8~1.6 メタンハイドレートは 1.0 以下?
電源別エネルギー収支比 (EPR) 出典 : 電中研 発電システムのライフサイクル分析 他
原子力の役割 石油 ガスが乏しくなるとエネルギー収支比 (EPR) の高いエネルギーがますます必要 原子力は現在の軽水炉でも EPR はダントツ 将来高速炉が実用化されると EPR100 以上のエネルギー源となり 国内に自噴油田を幾つも持つのと同じ 高速炉は自分が次に使う燃料を作ることができるのでウラン燃料の心配はなくなる
事故原因と今後の対策 出典 : 北海道大学奈良林直教授資料
30 項目の対策と再稼働基準 (1)
30 項目の対策と再稼働基準 (2)
原子燃料サイクル 出典 : 電事連資料集
使用済燃料再処理の意義 軽水炉の燃焼過程で生じるプルトニウムは廃棄するよりも回収リサイクル利用する方が日本のような資源貧国には向いている 使用済燃料の再処理を行いウラン プルトニウムを回収除去すれば廃棄物から長寿命核種 ( 例プルトニウム -239 の半減期は 24,000 年 ) が取り除かれ 放射能毒性が低くなる 地層処分に適 高レベル廃棄物の容量が減少し 処分場の面積が小さくなる MOX 使用済燃料を蓄積し 将来再処理して高速炉用燃料 ( プルトニウム ) を作ることができる
高レベル地層処分の概念
地層処分場の概念図 出典 : 電事連資料集
地層処分の意義 高レベル放射性廃棄物処分には深部地層処分が最適とする国際コンセンサス 火山や活断層などの地層を避け 水の移動が極少の地層を選ぶ日本にも存在 ガラス固化体として二重の容器に入れ ベントナイトなどの緩衝材で更に水との接触を絶つ方法で300m 以下の深部地層に埋設する 遠い将来万一水との接触が生じても 地表の人間に対する放射線影響は自然放射線以下
廃炉 国内でも JPDR 実験炉 東海 1 号炉の解体経験あり 世界では 30 基以上の商用原子炉の廃炉を経験 9 割以上はコンクリートなどの放射性廃棄物でない廃棄物 低レベル廃棄物は減容して六ヶ所処分場へ 福島 1~4 号炉の廃炉は別途方法 10~30 年間を掛けてデブリの取出し 原子炉解体を行う