機能安全と部品安全

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機能安全規格とその要求 2

本質安全と機能安全 本質安全とは 機械が人間や環境に危害を及ぼす原因そのものを低減 あるいは除去する 機能安全とは 機能的な工夫 ( 安全を確保する機能 : 以下 安全機能 ) を導入して 許容できるレベルの安全を確保すること 安全機能を実行する主体を安全関連系と呼ぶ ハードウェアだけではなく ソフトウェアも対象に入る (ECU) 立体交差 踏切 3

機能安全規格群 親規格である IEC61508 は プラントを中心とした電気電子機器の機能安全規格 分野ごとの特性に応じ派生 医療機器 IEC62304 ロボット ISO10218 分野別セクター規格 航空機 JAR 1309 鉄道 IEC62278 産業機械 IEC62061 親規格 IEC61508 自動車 ISO26262 原子力 IEC61513 電子制御モータ IEC61800 2011 年に制定 国内外のカーメーカから 規格を遵守したシステム開発が求められる サプライヤは 機能安全に対する備えが必要 4

ISO 26262 規格制定の背景 自動車の電子化による機能のブラックボックス化 ECU 間の連携動作や複数サプライヤ開発による複雑化 事故で発生した人的被害 物的損害に対し 誰かが 責任 を取らなければならない 最終的に裁判所で 責任 が決定される 機能安全 の考え方により 被害 0 を目指す 安全性を軸に開発業務全体を見える化し 説明責任を果たすとともに 訴訟に耐え得る証拠を揃える ECU: Electric Control Unit 5

ISO 26262 規格の構成 自動車の組込み電気 / 電子 /PE システムの開発ライフサイクルを規定システム ソフト ハードの各開発段階で V 字モデルを定義 1. 用語集 2. 機能安全の管理 2-5 全体的な安全管理 2-6 コンセプトフェーズ及び製品開発中の安全管理 2-7 アイテムの生産リリース後の安全管理 3. コンセプトフェーズ 4. システムレベルにおける製品開発 4-5 システムレベルにおける製品開発の開始 4-6 技術安全要求の仕様 4-7 システム設計 3-5 アイテム定義 3-6 安全ライフサイクルの開始 3-7 ハザード分析及びリスクアセスメント 3-8 機能安全コンセプト 5. ハードウェアレベルにおける製品開発 5-5 ハードウェアレベルにおける製品開発の開始 5-6 ハードウェア安全要求の仕様 V 5-7 ハードウェア設計 5-8 ハードウェアアーキテクチャメトリックの評価 V 5-9 ランダムハードウェア故障による安全目標侵害の評価 V 5-10 ハードウェア統合と検証 4-11 生産にむけたリリース 4-10 機能安全アセスメント 4-9 安全性の妥当性検証 4-8 アイテム統合及びテスト 6. ソフトウェアレベルにおける製品開発 6-5 ソフトウェアレベルにおける製品開発の開始 V 6-6 ソフトウェア安全要求の仕様 6-7 ソフトウェアアーキテクチャの設計 6-8 ソフトウェアユニット設計と実装 V 6-9 ソフトウェアユニットテスト 6-10 ソフトウェア統合及びテスト 6-11 ソフトウェア安全要求の検証 V 7. 生産及び運用 7-5 生産 7-6 運用 サービス ( 保守と修理 ) 及び廃棄 8-5 分散開発のインターフェース 8-6 安全要求の仕様及び管理 8-7 構成管理 8-8 変更管理 8-9 検証 8-10 文書化 8. 支援プロセス 8-11 ソフトエアツール使用への信頼 8-12 ソフトウェアコンポーネントの認定 8-13 ハードウェアコンポーネントの認定 8-14 使用実績による論証 9. ASIL 指向および安全指向の分析 9-5 ASILテーラリングのための要件のデコンポジション 9-6 エレメントの共存に関する基準 9-7 従属故障の分析 9-8 安全分析 機能安全規格 ISO 26262:2011 より引用 10. ISO26262 ガイドライン 6

ISO 26262 規格の適用範囲 車両総重量が最大 3.500kg までの量産される乗用車に組み込まれる 安全関連システム E/E( 電気 / 電子 ) 安全関連システムの機能不全のふるまいによって引き起こされる可能性のある潜在的なハザードを取り扱う 感電 火災 発煙 熱 放射線 毒性 可燃性 反応性 腐食 エネルギーの放出および同様のハザードに関連するハザードは E/E 安全関連システムの機能不全のふるまいが直接の原因でない限り取り扱わない 機械系は アザーテクノロジー として位置づけ 適用外 E/E 関連機器に設定された機能安全要求をアザ - テクノロジーに配置することで ISO 26262 の適用外になる 機能安全規格 ISO 26262:2011 より引用 7

ハザードとリスク ハザード (Hazard) 怪我や物理的なダメージを生じる可能性のある原因 ( ソース ) ( 例 ) 電気が流れている 100V の裸電線 危険事象 (Hazardous event) ハザードと運用状況が組み合わさったもの 裸電線に素肌の腕が触れる リスク (Risk) 危害発生の可能性とその重大さの組合わせ 100V に腕が接触した場合の傷害の程度 ( シビアリティ ) と素肌の腕が触れる可能性の積 自動車の場合 ( 例 ) 作業場所にある電気が流れている裸電線 自動車に内蔵されている ECU の問題 ( ハザード ) により 自動車の機能が損なわれる ( 機能不全 ) 潜在リスクを取り扱う 8

頻度 = 曝露確率 (Exposure) 制御可能性 Controllability) E/E システムの問題により危害が起きる頻度 自動車の機能安全でのリスク低減の考え方 ASIL=Automotive Safety Integrity Level 常に起こる QM 3 ハザード回避の制御可能性 (C) 設計上必要なリスク低減の幅 =ASIL 潜在リスク ASIL D ASIL C 滅多に起こらない 小さい 社会的に許容 されるリスク領域 (ALARP) 残存リスク 受け入れ可能な 2ハザードの曝露確率 (E) 残存リスク リスク 1 結果としての危害の大きさ (S) QM As Low As Reasonably Practicable 出展 : 日経エレクトロニクス 2011.1.11( 改変 ) シビアリティ (Severity) ASIL B ASIL A 大きい 9

リスク低減のために 安全に対するリスクに応じて安全度合を決定し 必要な安全機能 ( 方策 ) を選択する 安全度合は 安全に動作する程度 安全機能は リスクを許容できる水準まで低減するための機能 < 対策例 > > > 街中の道路電車本数多い見通しが悪い 田舎道電車本数少ない見通しが良い 10

ISO26262 が要求する内容 開発 管理活動を体系的に実施し 客観的に検証が可能な証跡を残す 仕組みを構築 安全ライフサイクルによる安全計画の策定 設計の根拠の提示 検証活動の徹底 確証方策による安全活動の客観的検証 安全ケースによる安全論拠の提示 機能安全プロセスの定義と遵守 規格要求内容を含んだ機能安全プロセスの定義 機能安全プロセスを遵守し 人的ミスの入らない開発 十分信頼の高い設計などの再利用 設計ミスを起こさない開発と市場で発生する可能性のある機能安全に対するフェールセーフ 11

機能安全と品質 品質信頼性 機能安全 故障してはいけない 故障は起こるもの 高信頼設計高信頼部品 故障に対するリスクの備え ともに満たすことが必要 12

ISO26262 の基盤 How ISO26262 What 業界モデル TS16949 VDA6.3 Automotive 自動車業界向け QMS 規格 ドイツ自動車工業規格 SPICE 車載 SW 開発のプロセスモデル CMMI Dev 開発のプロセス改善に役立つプロセスモデル 汎用モデル 概念 ISO9001(QMS) 品質マネジメントシステムに関する規格 プロセスアプローチ 継続的改善 (PDCA) 13

機能不全とその原因 14

故障 エラー フォールト 故障 (Failure) 要求された機能を実行するシステム (ECU) の能力の停止 エラー (Error 誤り ) 計算, 観測又は測定された値あるいは条件と, 実際の指定された又は理論的に正しい値あるいは条件との不一致 フォールト (Fault) システムあるいは車両の故障を引き起こす可能性のある, 異常な状態 システム ( エンジンシステム ) ECU の断続的機能停止 機能安全規格 ISO 26262:2011 より引用 フォールト Error 故障 点火コイルの誤動作 ワイパ動作中のエンジン機能中断 断続的なコイル点火 バッキング ( ガクガクした動き ) 車両挙動 15

ISO 26262 が取り扱う機能不全を引き起こす故障の種類 ランダムハードウェア故障 ハードウェア部品の故障についての確率分布に従い発生し 発生する時を予期できない故障 システマティック故障 決定論的に発生する故障 16

機能安全の基本的な考え方 自動車の機能不全 ( 危険事象 ) ハザード分析とリスクアセスメント 侵害 原因 安全目標 ランダムハードウェア故障システマティック故障 機能安全を達成すること ( 故障が起こっても 安全目標を侵害しない ) 機能安全の達成が説明できること ( 安全ケース ) 17

故障の原因と対策 ランダムハードウェア故障 原因 電気部品の確率的に発生するフォールト 対策 出荷後に起きることを想定 フォールトの検出と緩和の方策により リスクを減らす システマティック故障 原因 設計ミス 実装ミス 製造ミスなどのヒューマンエラー 対策 出荷前に対策する プロセス又は設計方策の適用によって防止 18

機能安全実現の基本戦略 電気 / 電子部品のフォールトを検出して処置し 安全状態を維持し 安全状態に遷移する 従来のフェールセーフの考え方の発展 意図した機能 (IF) センサ 故障モード コントローラ 故障モード アクチュエータ 故障モード 意図した機能の 故障検出 安全機構 (SM) 検出した故障の 処置 通知 19

安全ケース システムが許容可能な程度に安全であることの正当性を主張するための構造化された論証 安全目標と他の関係する安全要求 安全論証 ISO26262 作業成果物 安全に関わる要求 機能安全要求 故障による安全目標違反の防止 安全に関わる要求の達成の論述 安全に関わる要求と作業成果物をヒモ付ける 作業成果物 論拠を裏付ける証拠としての実績 20

機能安全開発の備えと導入 開発フェーズ開発の備え実開発 開発前 機能安全プロセスの構築 確証レビューの体制 スキル認定プログラムの確立 --- 企画 --- 開発 --- 製造 TS-16949 あるいは VDA6.3 要求の仕組み アイテムの定義 H&R の実施 機能安全コンセプトの立案 安全管理者の任命 安全計画の立案 技術安全コンセプト システム設計 ハードウェア設計 ソフトウェア設計 確証方策実施 安全ケース 安全関連特別特性の引き継ぎと実施 21

機能安全開発の組織の備え 機能安全プロセスの構築 ISO 26262 TS16949 AutomotiveSPICE をベースにしたプロセスの構築 機能安全の達成を客観的に評価 確証方策 ( 機能安全アセスメント 機能安全監査 確証レビュー ) による客観的な評価 機能安全スキル強化とスキル認定 プロジェクトに配置する要員は 事前のスキル認定が必要 22

電気 / 電子部品のフォールトとハードウェア開発 23

車載開発の特徴と機能安全 調達側 サプライチェーンにより部品開発を分担 サプライヤ OEM や Tier が部品を調達してシステムを組み立てる 調達先のサプライヤーに機能安全開発を要求 それぞれの部品の安全を確保するために機能安全開発を実践 システムレベルの安全の論証 DIA 作業成果物の範囲 開示 提出の取り決め 部品の安全への達成を証明する証拠をまとめる 安全ケース 説明 DIA: 開発インタフェース協定 サプライヤA 責任責任サプライヤB 責任責任責任サプライヤC サプライヤレベル安全ケース 24

ハードウェア設計での考慮点 ハードウェアレベルのアーキテクチャ設計 電気 / 電子部品のフォールトの検出と対応 モジュール化 適切な粒度 単純性 高凝集度 低結合度 詳細な回路設計 故障率計算 産業界データベースの利用 ( 通常 ) IEC62380 FIDES SN29500 ハードウェアのアーキテクチャの評価のためのメトリクス目標 ( 評価指標 ) の達成 SPFM and LFM ランダムハードウェア故障の残存リスク評価 PMHF or メソッド 2( カットセット法 ) 25

代表的な故障率データベース IEC/TR 62380 より引用 26

フォールトの分類 デュアル ポイント フォールト (Dual Point Fault) 他の独立したフォールトが重なる (IF+SM) と安全目標侵害 高リスク 低リスク SPF RF Latent DPF Perceived & Detected Safe Fault シングル ポイント フォールト (Single Point Fault) 残存フォールト (Residual Fault) 潜在 単独のフォールトで安全目標侵害 SM で処置されない SPF の残り 知覚できる (Perceived) 検出できる (Detected) 安全側フォールト 安全目標を侵害しないフォールト N>2 となるマルチプルポイントフォールト 27

ハードウェアメトリクスの評価 SPFM(Single Point Fault Metric) = 1- β/α % ASIL B ASIL C ASIL D 90% 97% 99% LFM(Latent Fault Metric) = 1- δ/(α-β) % ASIL B ASIL C ASIL D 60% 80% 90% PMHF(Probabilistic Metric for random Hardware Failures) = β+δ fit β SPF RF Latent δ α DPF Perceived & Detected ASIL B ASIL C ASIL D < 100fit < 100fit < 10fit Safe Fault 28

発注元の要求とサプライヤの対応 サプライヤ開発の範囲発注元サプライヤ ソフトウェアを含むシステム開発 安全目標 (ASIL) 安全要求 DIA( 開発インタフェース協定 ) による責任分担の契約 ISO26262 に沿った開発 安全ケースの提出 ASIC などの複雑な構成の素子 複雑さの定義がなく 境界が曖昧 安全目標 (ASIL) 安全要求 DIA( 開発インタフェース協定 ) による責任分担の契約 ISO26262 に沿った開発 故障モードの分析と情報の提供 安全マニュアルの提出 受動部品などの単純な素子 機能安全要求が無い場合 明示的な機能安全要求なし 故障モード 按分 故障率の提出要求 ( 場合による ) TS16949 に沿った開発 部品仕様の提出 信頼性評価結果の実施 TS16949: 自動車製造や関連する交換部品に携わる組織に ISO 9001 を適用する際の要求事項 29

まとめ A: これまでの 車載品質 が基本 フェールセーフ 過去トラ 対応 高信頼設計の再利用 B: 定量的な品質マネジメントシステムが基本 ASIL に基づく品質マネジメントシステム 正しい作業の実施による人的ミスの防止 客観的な証拠を残す C: 新規に追加される作業 安全ケースの作成 確証方策の実施 ハードウェア故障に対する定量的評価とソフトウェアのテスト網羅の評価 A C B 車載品質 ISO 26262 30

Q&A 31