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生物時計の安定性の秘密を解明

胞運命が背側に運命変換することを見いだしました ( 図 1-1) この成果は IP3-Ca 2+ シグナルが腹側のシグナルとして働くことを示すもので 研究チームの粂昭苑研究員によって米国の科学雑誌 サイエンス に発表されました (Kume et al., 1997) この結果によって 初期胚には背腹

報道発表資料 2006 年 6 月 5 日 独立行政法人理化学研究所 独立行政法人科学技術振興機構 カルシウム振動が生み出されるメカニズムを説明する新たな知見 - 細胞内の IP3 の緩やかな蓄積がカルシウム振動に大きく関与 - ポイント 細胞内のイノシトール三リン酸(IP3) を高効率で可視化可能

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

この研究成果は 日本時間の 2018 年 5 月 15 日午後 4 時 ( 英国時間 5 月 15 月午前 8 時 ) に英国オンライン科学雑誌 elife に掲載される予定です 本成果につきまして 下記のとおり記者説明会を開催し ご説明いたします ご多忙とは存じますが 是非ご参加いただきたく ご案

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

世界初! 細胞内の線維を切るハサミの機構を解明 この度 名古屋大学大学院理学研究科の成田哲博准教授らの研究グループは 大阪大学 東海学院大学 豊田理化学研究所との共同研究で 細胞内で最もメジャーな線維であるアクチン線維を切断 分解する機構をクライオ電子顕微鏡法注 1) による構造解析によって解明する

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

概要 名古屋大学環境医学研究所の渡邊征爾助教 山中宏二教授 医学系研究科の玉田宏美研究員 木山博資教授らの国際共同研究グループは 神経細胞の維持に重要な役割を担う小胞体とミトコンドリアの接触部 (MAM) が崩壊することが神経難病 ALS( 筋萎縮性側索硬化症 ) の発症に重要であることを発見しまし

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図 1. 微小管 ( 赤線 ) は細胞分裂 伸長の方向を規定する本瀬准教授らは NIMA 関連キナーゼ 6 (NEK6) というタンパク質の機能を手がかりとして 微小管が整列するメカニズムを調べました NEK6 を欠損したシロイヌナズナ変異体では微小管が整列しないため 細胞と器官が異常な方向に伸長し

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報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

論文の内容の要旨

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

平成 30 年 8 月 17 日 報道機関各位 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 オイル生産性が飛躍的に向上したスーパー藻類を作出 - バイオ燃料生産における最大の壁を打破 - 要点 藻類のオイル生産性向上を阻害していた課題を解決 オイル生産と細胞増殖を両立しながらオイル生産性を飛躍的に向上

平成14年度研究報告

報道発表資料 2002 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 局所刺激による細胞内シグナルの伝播メカニズムを解明 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 細胞の局所刺激で生じたシグナルが 刺激部位に留まるのか 細胞全体に伝播するのか という生物学における基本問題に対して 明確な解答を与えま

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

報道発表資料 2004 年 9 月 6 日 独立行政法人理化学研究所 記憶形成における神経回路の形態変化の観察に成功 - クラゲの蛍光蛋白で神経細胞のつなぎ目を色づけ - 独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事長 ) マサチューセッツ工科大学 (Charles M. Vest 総長 ) は記憶形

報道機関各位 平成 27 年 8 月 18 日 東京工業大学広報センター長大谷清 鰭から四肢への進化はどうして起ったか サメの胸鰭を題材に謎を解き明かす 要点 四肢への進化過程で 位置価を持つ領域のバランスが後側寄りにシフト 前側と後側のバランスをシフトさせる原因となったゲノム配列を同定 サメ鰭の前

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達


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学位論文の要約

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

図 : と の花粉管の先端 の花粉管は伸長途中で破裂してしまう 研究の背景 被子植物は花粉を介した有性生殖を行います めしべの柱頭に受粉した花粉は 柱頭から水や養分を吸収し 花粉管という細長い管状の構造を発芽 伸長させます 花粉管は花柱を通過し 伝達組織内を伸長し 胚珠からの誘導を受けて胚珠へ到達し

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

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1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

PRESS RELEASE (2012/9/27) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

第6号-2/8)最前線(大矢)

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2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

細胞膜由来活性酸素による寿命延長メカニズムを世界で初めて発見 - 新規食品素材 PQQ がもたらす寿命延長のしくみを解明 名古屋大学大学院理学研究科 ( 研究科長 : 杉山直 ) 附属ニューロサイエンス研究セ ンターセンター長の森郁恵 ( もりいくえ ) 教授 笹倉寛之 ( ささくらひろゆき ) 研

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平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

記 者 発 表(予 定)

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

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研究成果報告書


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細胞外情報を集積 統合し 適切な転写応答へと変換する 細胞内 ロジックボード 分子の発見 1. 発表者 : 畠山昌則 ( 東京大学大学院医学系研究科病因 病理学専攻微生物学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 多細胞生物の個体発生および維持に必須の役割を担う多彩な形態形成シグナルを細胞内で集積 統

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統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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著者 : 黒木喜美子 1, 三尾和弘 2, 高橋愛実 1, 松原永季 1, 笠井宣征 1, 間中幸絵 2, 吉川雅英 3, 浜田大三 4, 佐藤主税 5 1, 前仲勝実 ( 1 北海道大学大学院薬学研究院, 2 産総研 - 東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ, 3 東京大学大

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「飢餓により誘導されるオートファジーに伴う“細胞内”アミロイドの増加を発見」【岡澤均 教授】

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

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研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

創薬に繋がる V-ATPase の構造 機能の解明 Towards structure-based design of novel inhibitors for V-ATPase 京都大学医学研究科 / 理化学研究所 SSBC 村田武士 < 要旨 > V-ATPase は 真核生物の空胞系膜に存在す

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妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

4. 発表内容 : 研究の背景 イヌに お手 を新しく教える場合 お手 ができた時に餌を与えるとイヌはまた お手 をして餌をもらおうとする このように動物が行動を起こした直後に報酬 ( 餌 ) を与えると そ の行動が強化され 繰り返し行動するようになる ( 図 1 左 ) このことは 100 年以

Microsoft Word CREST中山(確定版)

報道発表資料 2007 年 11 月 16 日 独立行政法人理化学研究所 過剰にリン酸化したタウタンパク質が脳老化の記憶障害に関与 - モデルマウスと機能的マンガン増強 MRI 法を使って世界に先駆けて実証 - ポイント モデルマウスを使い ヒト老化に伴う学習記憶機能の低下を解明 過剰リン酸化タウタ

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

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2016 年 12 月 19 日 17 時 ~ 記者レクチャー @ 文部科学省 細胞死を司る カルシウム動態の制御機構を解明 - アービット (IRBIT) が小胞体ーミトコンドリア間の Ca 2+ の移動を制御 -

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

アポトーシス : プログラムされた細胞死多細胞生物にみられる細胞の死に方の一つ 不要になった細胞や損傷を受けた細胞が積極的に自滅して個体を健全な状態に保つメカニズム 胎児の手の水かき 両生類の尾の退化 神経回路網の形成等虚血 酸化ストレス 感染 DNA 損傷などの外界ストレスによる細胞死 アポトーシスの異常 癌化 形態形成異常 神経発達障害 2

小胞体からミトコンドリアへの過剰量の Ca 2+ 流入がアポトーシスを引き起こす 小胞体 Ca 2+ 貯蔵タンパク合成 小胞体ーミトコンドリア接触部位 細胞ストレス Ca 2+ ミトコンドリア 過剰な Ca 2+ 移動 小胞体 核 細胞 ミトコンドリア機能障害 ミトコンドリア エネルギー産生 細胞死誘導因子の放出 細胞死 3

イノシトール三リン酸受容体 () 小胞体の膜上にあるカルシウムチャネル (Ca 2+ の通り道となるタンパク質 ) アービット (IRBIT) に結合し 通常はその活性を抑制しているタンパク質 Ca 2+ イノシトール三リン酸受容体 () P アービット IP 3 小胞体 (Ca 2+ 貯蔵庫 ) Ca 2+Ca2+ Ca 2+ Ca2+ Ca 2+ Ca2+ Ca2+ Ca 2+ Ca 2+ Ca2+ Ca 2+ Ca 2+ Ca 2+Ca2+ 4

Bcl-2 ファミリータンパク質 アポトーシスを制御するタンパク質群 約 20 種類存在する ミトコンドリアからの細胞死誘導因子の放出を制御する アポトーシスを誘導するグループと抑制するグループに分類される ミトコンドリア Bcl-2 ファミリー アポトーシス促進 Bax, Bad など アポトーシス抑制 Bcl-2, Bcl-xL, Bcl2l10 など 細胞死 細胞死誘導因子 5

研究目的 アポトーシスの分子機構を明らかにするために 小胞体 - ミトコンドリア間の Ca 2+ の動きと それを制御するアービットと Bcl2l10 の役割を解析した 6

Bcl2l10 とアービットは共に に結合して そのカルシウム放出活性を抑制する 細胞質のカルシウム濃度 刺激 コントロール Bcl2l10 アービット Bcl2l10 + アービット Ca 2+ Ca 2+ Bcl2l10 アービット P Ca Ca 2+ Ca Ca 2+ 2+ 2+ Ca2+ Ca2+ 時間 ( 秒 ) のカルシウム放出活性を測定した Bcl2l10( 赤 ) あるいはアービット ( 黄 ) を過剰発現させると 活性が抑制された Bcl2l10とアービットの両方 ( 緑 ) を過剰発現させると 活性がさらに抑制された 7

アービット欠損細胞はアポトーシスをおこしにくい コントロールスタウロスポリンツニカマイシン 正常な細胞 アービット欠損細胞 細ア胞ポのト割ー合シ ( ス % を ) おこした 正常な細胞アービット欠損細胞 スタウロスポリン ツニカマイシン : アポトーシスを誘導する薬剤 コントロール スタウロスポリン ツニカマイシン 細胞にスタウロスポリンあるいはツニカマイシンを添加し アポトーシスを誘導した アポトーシスをおこした細胞を 活性型カスパーゼ 3( アポトーシスで活性化する酵素 ) の染色で検出した ( 緑色のシグナル ) アービットはアポトーシスを促進する機能があると考えられる 8

赤枠内がミトコンドリア 水色枠内が小胞体を示す 正常な細胞に比べ アービットが欠損した細胞では 小胞体 - ミトコンドリア接触部位 ( 赤枠と水色枠の接点 ) が減少している 電子顕微鏡による小胞体 - ミトコンドリア接触部位の観察正常な細胞アービット欠損細胞小胞体と接触しているミトコンドリア ( % ) 接触部位の長さ ( ナノメートル ) 正常な細胞アービット欠損細胞 9

アービット欠損細胞では小胞体 - ミトコンドリア接触部位が減少している 正常な細胞 アービット欠損細胞 小胞体とミトコンドリアの共局在 緑 : 小胞体紫 : ミトコンドリア小胞体とミトコンドリアが重なったところは白く見える 正常な細胞 アービット欠損細胞 アービット欠損細胞にアービットを発現 アービット欠損細胞に変異型アービットを発現 10

アービット Bcl2l10 は タンパク質複合体として 小胞体 - ミトコンドリア接触部位にある アービット GAPDH VDAC Bcl2l10 Cyt c ミトコンドリア ( 粗精製 ) アービット VDAC Bcl2l10 タンパク質複合体の分離 個々のタンパク質の分離 細胞分画法 ブルーネイティブゲル電気泳動法 11

アービット欠損細胞では小胞体からミトコンドリアへのカルシウムの移動が減少している細胞質のカルシウムミトコンドリアのカルシウム正常な細胞アービット欠損細胞正常な細胞アービット欠損細胞正常細胞アービット欠損細胞正常細胞アービット欠損細胞アゴニスト刺激アゴニスト刺激カルシウム濃度カルシウム濃度 12 カルシウム濃度カルシウム濃度正常細胞に比べ アービット欠損細胞ではミトコンドリアのカルシウム上昇量が小さい正常細胞に比べ アービット欠損細胞では小胞体からのカルシウム放出量が多いにもかかわらず

アービット欠損細胞ではストレス刺激によるミトコンドリアの Ca 2+ の濃度上昇が小さい ミトコンドリアの Ca 2+ 正常な細胞 アービット欠損細胞 コントロール スタウロスポリンツニカマイシン ミトコンドリア内のカルシウム濃度 コントロール スタウロスポリンツニカマイシン 正常な細胞 アービット欠損細胞 細胞にスタウロスポリンあるいはツニカマイシンを添加しミトコンドリア内の Ca 2+ 濃度を測定した 13

アービットが小胞体 - ミトコンドリア間の Ca 2+ の動きとアポトーシスを制御するメカニズム 通常 アポトーシス 小胞体 Ca 2+ Ca 2+ ストレス刺激 Ca 2+ Ca 2+ 小胞体 正常な細胞 Bcl IRB P Bcl IRB P Bcl IRB Bcl IRB ミトコンドリア ミトコンドリア 小胞体 Ca 2+ ストレス刺激 Ca 2+ 小胞体 アービット欠損細胞 Bcl Bcl ミトコンドリア ミトコンドリア 14

アポトーシスを起こすストレス 小胞体 正常な細胞 小胞体 アービット欠損細胞 B I アービットの脱リン酸化がおきる B Bcl2l10 は残っている Ca 2+ の大量移動 Ca 2+ 移動 ミトコンドリア ミトコンドリア アポトーシス アポトーシス細胞死 15 細胞死抵抗性

今後の展望 今回私達が進めてきたアービットのアポトーシスに関する研究は生命現象に於ける基本的なメカニズムと考えられます 個体の各臓器 組織, 細胞に於ける本現象の共通性 特異性を把握しながら 研究を進めて行く事が必要と考えます アービット Bcl2l10 を介する細胞内の Ca 2+ 動態の制御機構をさらに解析することで また各分子のホモログ 及びこれらの分子に結合するなどして関与する新規分子をさらに解析することで 今回発見した現象のメカニズムをより深く解明ができることと思います またアポトーシスの機能不全によって引き起こされると考えられる多くの疾患の発症の分子機構の解明が期待できます 16

論文情報 報道解禁日 : 日本時間 2016 年 12 月 20 日午後 9 時 新聞は 21 日朝刊論文タイトル : IRBIT controls apoptosis by interacting with the Bcl-2 homolog, Bcl2l10, and by promoting ER-mitochondria contact 著者名 : Benjamin Bonneau, Hideaki Ando, Katsuhiro Kawaai, Matsumi Hirose, Hiromi Takahashi-Iwanaga, Katsuhiko Mikoshiba 雑誌名 : elife DOI: 10.7554/eLife19896 17

謝辞 本研究は以下の支援を受けて遂行しました 深謝申しあげます 1. 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 国際共同研究 (ICORP) カルシウム振動プロジェクト ( 代表研究者 : 御子柴克彦 ) 発展研究 (SORST) カルシウム振動 ( 研究代表者 : 御子柴克彦 ) 2. 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究 (S)( 御子柴克彦 ) 3. 日本学術振興会 外国人特別研究員 ( ベンジャミン ボノー (Benjamin Bonneau)) 4. 理化学研究所 基礎科学特別研究員 ( ベンジャミン ボノー (Benjamin Bonneau)) 18

ご清聴ありがとうございました 19