Taro-H30(32-37).本çfl°æŒ½è‡¥.jtd

Similar documents
コシヒカリの上手な施肥

窒素吸収量 (kg/10a) 目標窒素吸収量 土壌由来窒素吸収量 肥料由来 0 5/15 5/30 6/14 6/29 7/14 7/29 8/13 8/28 9/12 9/ 生育時期 ( 月日 ) 図 -1 あきたこまちの目標収量確保するための理想的窒素吸収パターン (

山形県における 水稲直播栽培の実施状況 平成 28 年 8 月 26 日 ( 金 ) 山形県農業総合研究センター 1 1 山形県における水稲直播栽培の現状 1 (ha) 2,500 2,000 1,500 1, 乾田直播 湛水 ( 点播 ) 湛水 ( 条播 ) 湛水 ( 散播 )

仙台稲作情報令和元年 7 月 22 日 管内でいもち病の発生が確認されています低温 日照不足によりいもち病の発生が懸念されます 水面施用剤による予防と病斑発見時の茎葉散布による防除を行いましょう 1. 気象概況 仙台稲作情報 2019( 第 5 号 ) 宮城県仙台農業改良普及センター TEL:022

<82BD82A294EC82C697CE94EC82CC B835796DA>

目次 1. やまだわら の特性 _ 1 収量特性 1 2 品質 炊飯米特性 2 3 用途別適性 3 2. 生育の特徴 4 3. 収量 品質の目標 5 4. 各地域での主な作付スケジュール 6 5. 栽植密度 7 6. 肥培管理 1 施肥量 施肥時期 8 2 生育診断 9 7. 収穫適期

<4D F736F F F696E74202D2082C982B182DC82E9837D836A B955C8E862E >

2 穂の発育過程 (1) 穂の形態 イネの穂は 穂軸が枝分かれして し 1 次枝こう 2 次枝こうがつき それ にえい 花 ( 小穂 ) がつく 1 つのえい花 ( 小穂 ) は 1 花から成 っており その数は 1 次枝こうの先に 5~6 個 2 次枝こうに 2~4 個つき 1 穂全体では 80

「そらゆき」栽培マニュアル

Taro-H30(10-20).åœ�ㆥ㆑ã‡−.jtd

PC農法研究会

<4D F736F F D A6D92E894C5817A966B945F8CA C E482AB82B382E282A9816A81698DC58F4994C5816A2E646F63>

目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

< F2D D8289B78FE18A51838C837C815B B91CC>

取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

<4D F736F F D C8B9E945F91E58EAE90B682B282DD94EC97BF89BB2E646F63>

1 はじめに北海道の麦作には 二つの大きな目標があった 一つは 秋まき小麦の全道平均反収を一〇俵の大台に乗せること もう一つは E U 並みの反収一トンどりをめざすことである この数字は 決して夢のような話ではなかった 麦作農家のなかには 圃場の一部ではあるが一トンどりを実現したとの声があったし 実

20 石川県農業総合研究センター研究報告第 28 号 (2008) Ⅰ はじめに家畜ふん尿処理施設では 収集 運搬された家畜ふん尿は固液分離機に搬入され 固形分は堆肥化処理後 農耕地へ還元利用されている 液状分は好気発酵処理 さらに生物処理等の工程の順に適切な浄化処理が行われ その後 放流されている

失敗しない堆肥の使い方と施用効果

新梢では窒素や燐酸より吸収割合が約 2 分の1にまで低下している カルシウム : 窒素, 燐酸, カリとは異なり葉が52% で最も多く, ついで果実の22% で, 他の部位は著しく少ない マグネシウム : カルシウムと同様に葉が最も多く, ついで果実, 根の順で, 他の成分に比べて根の吸収割合が高い

麦 類 生 育 情 報

P01-P20.indd

< F2D F D322D AC98D7390AB94EC>

主要産地における平成 29 年産水稲の収穫量及び作柄概況等について第 1 報 (8 月 31 日現在 ) 全国 道府県 全国 予想収穫量 (29 年 8 月 15 日現在 )1 収穫量 ( 早期栽培等 ) 予想収穫量 (28 年 8 月 15 日現在 )2 前年産との比較 (1-2) 作況 ( 早期

<4D F736F F D20938C8B9E945F91E58CE393A190E690B62E646F6378>

2 地温 : 15~25 の温度帯に緩効性効果が一番高い 30 を超えると ウレアーゼ抑制材の分解が加速する上 微生物の繁殖も速くなり 微生物の活性を抑える効果が低くなる 3 土壌 ph: 弱酸性土壌 (ph5.5) からアルカリ性土壌 (ph8.0) まで土壌 ph が高いほど緩効性効果も高くなる

附則この要領は 平成 4 年 1 月 16 日より施行する この要領は 平成 12 年 4 月 3 日より施行する この要領は 平成 30 年 4 月 1 日より施行する 2

資料報告

機関名 ( 地独 ) 北海道立総合研究機構農業研究本部 部署名 企画調整部企画課 記入者氏名 山崎敬之 電話番号 レーザー式生育センサを活用した秋まき小麦に対する可変追肥技術 レーザー式の生育センサを使って秋まき小

H26 中予地方局産業振興課普及だより 新技術情報 -1 いちご新品種 紅い雫 ( あかいしずく ) 1. 紅い雫 の来歴県農林水産研究所が育成したいちご新品種 紅い雫 は あまおとめ ( 母親 ) 紅ほっぺ ( 父親 ) の交配により誕生し 平成 26 年 6 月 25 日に品種登録出願されました

平成 26 年度補正予算 :200 億円 1

水稲の反射シート平置き出芽 & プール育苗 福島県須賀川市 藤田忠内さん 出芽は平置きした苗箱に反射シートをかけるだけ, 育苗管理はプールに水を張るだけ, 換気も灌水の心配もいらない マット形成, 揃いがよく, 茎が太くて葉幅も広く, 病気の出ない, 根張り抜群の健苗を育成 写真はすべて依田賢吾撮影

北海道の米づくり 2011年版

カンキツの土づくりと樹勢回復対策 近年高品質果実生産のために カンキツ類のマルチ栽培や完熟栽培など樹体にストレスをかける栽培法が多くなっています それにより樹体への負担が大きく 樹勢が低下している園地が増えています カンキツ類を生産するうえで樹が適正な状態であることが 収量の安定とともに高品質生産の

水田メタン発生抑制のための新たな水管理技術マニュアル(改訂版)

Ⅱ 今後の管理について 1 水管理について (1) 気象変動に対応した水管理 幼穂形成期に入ったら間断かん水 出穂期から開花期にかけては湛水管理 その後は間断 かん水が水管理の基本になりますが 気象変動に対応した水管理を心がけましょう 1 減数分裂期の低温 減数分裂期 ( 葉耳間長 ±0cm 出穂期

研究成果報告書

Ⅲ-3-(1)施設花き


Ⅰ 収穫量及び作柄概況 - 7 -

26 Ⅴ-1-(7)水田での有機物利用

Ⅰ 基本方針と重点推進事項 1 基本方針本県が消費者や実需者から選ばれる米産地となるよう 生産者 農業団体 行政が 課題や対応方向 目標を共有化し 販売を起点とした米づくりに取り組むための指針である 秋田米生産 販売戦略 を策定した 農地のほとんどを水田が占める本県においては 主食用米を中心に 加工

スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

総籾数 ( 千 / m2 ) 1 穂籾数 ( 粒 / 穂 ) わら重 (kg/a) 精籾重 (kg/a) 柴田ほか : 水稲新品種 ゆめおばこ の栽培特性 (2) 結果 ゆめおばこ と あきたこまち を比較すると ゆめおばこ は あきたこまち より全重 わら 重 精籾重 玄米重が多く 玄米千粒重が大

DOJOU_SHINDAN

<4D F736F F D B F4390B CF91F58E8E8CB18EC090D18C9F93A289EF90AC90D18F B7B8DE8918D945F8E8E816A2E646F6378>

Ⅲ-2-(1)施設野菜

DOJOU_SHINDAN

<4D F736F F D2089C6927B82D382F191CD94EC934B90B38E7B977082CC8EE888F882AB81698DC58F498CB48D A>

植物生産土壌学9_水田土壌.ppt

1. 取組の背景射水市大門地域は 10a 区画の未整備な湿田が多く 営農上の大きな障害となっていた 昭和 62 年に下条地区で県内初の大区画圃場整備が実施されたのを皮切りに 順次圃場整備が進んでいる 大区画圃場整備事業が現在の 経営体育成基盤整備事業 になってからは 農地集積に加えて法人化等の担い手


Taro-(2)畑地土壌の診断基準.jtd

写真2 長谷川式簡易現場透水試験器による透 水性調査 写真1 長谷川式土壌貫入計による土壌硬度調査 写真4 長谷川式大型検土杖による土壌断面調査 写真3 掘削による土壌断面調査 写真5 標準土色帖による土色の調査 樹木医 環境造園家 豊田幸夫 無断転用禁止

29 Ⅵ-1-(1)(2)環境保全型農業

付図・表

プレスリリース 平成 26 年 9 月 5 日農研機構 高温下でも品質が優れ 良食味で多収の水稲新品種 恋の予感 を育成 ポイント 玄米の外観品質 1) が ヒノヒカリ より優れ 高温年でも品質が低下しにくい特長があります ヒノヒカリ と比べ約 8% 多収で 米飯食味は ヒノヒカリ 並に良好です い

スライド 1

委託試験成績 ( 平成 25 年度 ) 担当機関名 部 室名 実施期間 大課題名 課題名 目的 担当者名 山口県農林総合技術センター 農業技術部土地利用作物研究室 資源循環研究室 平成 24~26 年度 Ⅰ 大規模水田営農を支える省力 低コスト技術の確立 うね立て同時条施肥機を利用した被覆尿素の深層

宮城県 競争力のある大規模土地利用型経営体の育成 活動期間 : 平成 27~29 年度 ( 継続中 ) 1. 取組の背景震災により多くの生産基盤が失われ, それに起因する離農や全体的な担い手の減少, 高齢化の進行による生産力の低下が懸念されており, 持続可能な農業生産の展開を可能にする 地域営農シス

Microsoft Word - ⑦内容C【完成版】生物育成に関する技術.doc

VII

<4D F736F F D E B E9497BF8DEC95A8816A2E646F63>

Microsoft Word - 講演要旨表紙・目次.doc

分娩後の発情回帰と血液生化学値との関係(第2報)

レイアウト 1

5 事務局 審査会の事務局は 福島県農林水産部農業振興課におく 第 5 奨励品種決定調査の実施県は 奨励品種の決定に当たっては 奨励品種決定調査を行うものとする 1 奨励品種決定調査の種類 (1) 基本調査供試される品種について 県内での普及に適するか否かについて 栽培試験等によりその特性の概略を明

畜舎内から畜舎温度を下げる技術 換気扇 扇風機による送風 細霧装置による冷房 家畜への直接送風 散水等の技術が7 割半ば程度取り組まれ ほぼ全てにある程度以上の効果が認められるが 畜舎構造に合わせた効果的な送風技術の確立のための 技術改良 導入基準 ( の設定 ) 農家の設置費用と経済効果といった

<955C8E86899C95742E786C73>

12 Ⅳ-2-(1)(2)物理性の改善

調査研究課題:○○▽▽の調査研究

元高虫防第 139 号令和元年 7 月 4 日 各関係機関長様 高知県病害虫防除所長 病害虫発生予察情報について 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報及び令和元年度予報 4 号 (7 月 ) を送付します 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報 Ⅰ. 気象概況半旬 (6 月 ) 平均気温最高気温最低気

青大豆を用いた厚揚げの緑色保持法

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF C F926E93798FEB8B7A8EFB8CB9>

JA越後さんとうにおける   高品質米生産の取り組み

<4D F736F F D CA48B8690AC89CA8FEE95F E496D882CC8EED97DE82AA817582CD82E982DD817682CC90B688E781418EFB97CA814189CA8EC095698EBF82C98B7982DA82B789658BBF2E646F63>

水稲有機栽培における米ぬかの雑草抑制メカニズムと水稲の生育 収量 宇都宮大学大学院農学研究科 生物生産科学専攻 堀内宜彦

Microsoft PowerPoint - 要因解析概要ペーパー( ホームページ用)

隔年結果

新品種育成の背景 経緯一般の良食味米 ( 中アミロース ) で作成した麺は ゆで麺の表面の粘りが強く 麺離れが悪いのに対し 高アミロース米は麺離れが良く 製麺適性が高いことから 北陸地域向けの 越のかおり 北海道向けの 北瑞穂 などがこれまでに育成され 米粉麺が製品化されています しかしながら これ

石川県水田フル活用ビジョン 1 地域の作物作付の現状 地域が抱える課題 水稲作付面積については 昭和 60 年の 37,700ha から 平成 25 年では 26,900ha と作付 面積で約 10,000ha 作付率で約 30% と大きく減少したものの 本県の耕地面積に占める水稲作 付面積の割合は

今後の管理のポイント [懸案事項] ①早期作型における2番花 房の花芽分化遅延 ②炭そ病とハダニ類の発生 拡大 [対策] ①寒冷紗を被覆して 花芽分化を誘導する 2番花房 の花芽分化を確認して被覆を除去する 被覆期間の目安 9月25 10月20日 ②定期的に薬剤による防除を行う 特に葉かぎ後の 葉か

Microsoft Word - 九農研プレス23-05(九州交3号)_技クリア-1.doc

untitled

まえがき 環境問題に対する国民の関心が高まる中で 国は新たな 食料 農業 農村基本計画 において 環境に配慮した生産活動の推進や生物多様性保全に効果の高い農業生産活動の促進 食品の安全性の確保など 環境保全型農業の取組みに向けた姿勢を示し 持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律 や 有機農

東京電力原発事故による 「みやぎの農畜産物」への 影響とその対策

広瀬貴士他 : きねふりもち の育成経過と特性 Ⅲ 特性の概要 1 形態的及び生態的特性育成地 ( 当所中津川支所 ) における きねふりもち の早晩性は ココノエモチ より出穂期及び成熟期が 1 日から 2 日程度早い 早の早 である ( 第 1 表 第 2 表 ) ふ先色は ココノエモチ ほど鮮

Microsoft PowerPoint - 11 新潟米戦略

図 1. ブドウの鉄欠乏症 図 2. トマトの亜鉛欠乏症 2. 亜鉛 (Zn) の欠乏症と過剰症亜鉛は植物体内の各種酵素の構成成分である また 植物ホルモンの一種であるオーキシンの代謝 タンパク質の合成に関与する 亜鉛が不足すると 上位葉の生育が著しく阻害され 地上部の生長点あたりは節間が短縮し 小

ダイズ紫斑病に対するアミスター20フロアブルの散布適期

Microsoft Word - 02_第1章稲作

<4D F736F F F696E74202D2095FA8ECB90FC88C091538AC7979D8A7789EF F365F F92CB B8CDD8AB B83685D>

2006 年度卒業論文 水稲有機栽培における各種雑草防除法の 除草効果および水稲の生育 収量 宇都宮大学農学部生物生産科学科植物生産学コース作物生産技術学研究室 佐藤顕治

チャレンシ<3099>生こ<3099>みタ<3099>イエット2013.indd

排水対策の実施例 暗渠がある場合排水がよいほ場 排水が悪いほ場 周囲明渠 弾丸暗渠 心土破砕は 2 ~5m おきに行う 周囲明渠は深さ 30 cmを確保する 周囲明渠は排水口に確実に接続する 弾丸暗渠本暗渠 暗渠がない場合排水がよいほ場 排水がよく 長辺が長いほ場 100m 以 ほ場内排水溝は4 ~

水稲調査結果の主な利活用 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律 ( 平成 6 年法律第 113 号 ) に基づき毎年定めることとされている米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針及び米穀の需給見通しのための資料 食料 農業 農村基本計画における生産努力目標の策定及び達成状況検証のための資料 米

1. 地 域 概 況 1 岐 地 阜 域 県 海 概 津 況 市 は 県 最 南 端 に 位 置 し 木 曽 長 良 岐 阜 県 海 津 市 は 県 最 南 端 に 位 置 し 木 曽 揖 斐 三 大 河 川 が 合 流 する 地 域 で 東 部 に 愛 知 県 西 長 良 揖 斐 三 大 河 川

リン酸過剰の施設キュウリほ場(灰色低地土)における基肥リン酸無施肥が収量に及ぼす影響

DOJOU_SHINDAN

川本ほか : 水稲新品種 ゆめおばこ の育成 定多収で粘りの少ない特徴的な食味であるため 一般家庭用はもとより外食 中食などへ利用が期待されたが ( 松本ほか 1999) 新たな需要の掘り起こしが十分とは言えず 2003 年の 6,149ha をピークに減少に転じている ( 東北農政局秋田農政事務所

Transcription:

5 本田施肥 (1) 品種と施肥良食味米に対する消費志向の高まりと産地間競争の激化に対応するため 本県の基幹品種である コシヒカリ については 島根コシヒカリレベルアップ戦略 (P71~) に定めた施肥対策を重点的に推進し 品質と食味の向上を実現することとする コシヒカリ は比較的適正窒素量の幅が狭い上 少肥でも過繁茂になりがちであり よりきめ細かな施肥管理が必要である 島根県農業試験場 ( 現島根県農業技術センター ) の試験結果によると出穂期の葉面積指数が5.4 以上では高温年に乳白粒が多発する危険性の高いことが明らかとなっている また穂肥窒素量が多いほど乳白粒の割合が増加し品質が低下する上 白米の蛋白質含量が高まり食味値が低下する そこで 指針 では目標収量を500~550kg/10aとし 土壌類型別 肥沃度別に施肥基準を定め 穂肥窒素量の上限を3kgとしている ハナエチゼン は稈長が短く耐倒伏性に優れる 草型は偏穂数型であり 基肥重点の施肥体系で収量や品質が優れる きぬむすめ は稈の細太 剛柔とも 中 で 草型は中間型の品種である 耐倒伏性は 中 で ハナエチゼン よりやや劣り コシヒカリ より強い また 穂数がやや少なく 着粒密度がやや密である このため きぬむすめ においては適正籾数の確保と玄米の肥大 充実に重点を置いた施肥管理に努め 良質米の安定生産を実現することとする 主要品種である コシヒカリ きぬむすめ ハナエチゼン について高品質 良食味米を安定的に生産するための収量構成要素及び草姿を島根県農業試験場 ( 現島根県農業技術センター ) の試験結果から求めると第 5-1 表のとおりである また これと現地での施肥実態をもとに設定した品種別施肥標準量を第 5-2 表に示した なお つや姫 の施肥標準量及び施肥方法はⅣ 水稲 つや姫 の特性と栽培上のポイントの項に示す (2) 基肥基肥の役割は分げつと葉面積の拡大を促し 茎数や穂数を確保することにある しかし 窒素の量が多いと過繁茂や徒長を招き 特に近年の温暖化傾向の強い気象条件下では乳白粒多発の要因となるので茎数確保に必要な量にとどめる 基肥に施用した窒素が水稲に吸収される割合は全層施肥では20~40% 程度であるが 表層施肥では損失が多く全層施肥の約半分程度である したがって 耕起前に施肥し耕起土層全体に混和するのが合理的である しかし 作業の都合で耕起から入水 代かきまでの期間が10 日にも及ぶときは 肥料中のアンモニア態窒素が硝酸態に変化して利用率が低下するので 施肥は入水 代かきの直前に行う その際 入水量が多過ぎて代かきの前後に排水路に流すのを見かけるが 田面水に溶け込んだ肥料が無駄になるだけでなく環境にも悪影響を及ぼすので慎むべきである 基肥の一部を根付け肥 ( 活着肥 ) として田植直後に田面に施用する方法があるが 初期生育が - 32 -

第 5-1 表 品種別収量 収量構成要素及び節間長の目標値 項目収量植付最高分げ有効茎穂数 1 穂当た登熟玄米株数つ期茎数歩合り籾数歩合千粒重品種 (kg/10a) ( 株 / m2 ) () 内m2当 (%) () 内m2当 () 内m2当 (%) (g) コシヒカリ 本 本 平 坦 部 510 18.5 23 83 19 80 83 22.0 (420) (350) (28,000) 中山間 ~ 山間部 540 22.2 23 74 20 75 88 22.0 (500) (370) (28,000) つ や 姫 540 18.5 26 74 19 80 85 22.7 (476) (352) (28,000) ハナエチセ ン 570 18.5 34 80 27 60 85 22.5 (620) (500) (30,000) きぬむすめ 570 18.5 25 71 18 88 85 22.5 (465) (340) (30,000) 項目稈長節間長 (cm) 品種 (cm) 1 2 3 4 5 コシヒカリ 87~88 39 22 14 9 3.5 第 5-2 表品種別標準施肥量 (kg/10a) 成分別窒素 品種基肥つなぎ肥穂肥計 リン酸カリ コシヒカリ 5~8 5~7 平坦部 1.5 ~ 2.5-1.5 ~ 2.5 4 ~ 5 中山間 ~ 山間部 2 ~ 3-2 ~ 3 5 ~ 6 ハナエチゼン 3 ~ 4-3 ~ 4 6 ~ 8 5~8 5~7 きぬむすめ 3 ~ 4 (1) 3 ~ 4 6 ~ 8 5~8 5~7 ( 注 )( ) は生育の状況によって施す 穂肥は必ず分施する - 33 -

停滞しがちな寒冷地で行われることが多く 本県ではその効果はほとんど認められないので奨励していない リン酸は土壌中で移動しにくく 流亡による損失が少ない 一般の水田では長年施用されたものが蓄積されており 田植後の土壌の還元化にともなって有効化するので水稲が収奪する量 (5 ~6kg/10a) を補う程度で十分である ただし 山間部の冷水田 黒ボク土の水田や圃場整備後で養分の少ない下層土などが作土に混入した水田は10~20% 増量する リン酸は全量基肥として施す カリは窒素と同量を施す カリは潅漑水 地力などに由来するいわゆる天然供給量の最も多い成分である (3) 追肥ア中間追肥分げつ期追肥やつなぎ肥などの中間追肥は コシヒカリ のように耐倒伏性の劣る品種に対しては原則として施用しない ただし 作土の肥沃度が低い水田 ( 土壌類型 Ⅰ Ⅳ Ⅴ) に限り分げつ盛期から葉色の褪色が著しい場合には 田植後 40 日頃に10a 当たり1kg 以内の窒素を施用する また ハナエチゼン は移植後 40~50 日頃の葉色が葉色板群落測定で3.5より薄いようであれば 窒素を10a 当たり1kg 程度施用する きぬむすめ は7 月第 1 半旬を目安に茎数が少ない 葉色がうすい場合には窒素を10a 当たり1kg 程度施用する ただし 中間追肥の施肥時期が遅くなり過ぎると幼穂形成期頃に窒素の効果が現れることにより 倒伏や籾数過多の原因になり得るので注意する つなぎ肥の効果は登熟期間の気象 特に日照の多少によっても影響を受ける 多照年では効果が大きいが寡照年は効果が小さく 稲体が軟弱になるなど逆効果になることもある なお 分げつ盛期やラグ期 ( 最高分げつ期から幼穂形成期までの生育停滞期 ) における葉色の極端な褪色は地力が低いことや 基肥窒素の表層施用 早期田植 株当たり植付苗数の過多などに起因する場合が多く それらを是正することがより重要である イ穂肥穂肥は有効茎歩合の向上 2 次枝梗退化防止による籾数の確保 粒重増加及び登熟向上などをねらいとして幼穂形成期以降に施す 一度に多量に施すのではなく必ず2 回に分けて施用するが 葉色が濃過ぎるか茎数過多の場合は品質を悪化させないため 施用しないか出穂 15 日前の1 回施用にとどめることも必要になる 1 回目の穂肥は出穂 25~18 日前とする 穂肥の施用時期が早いほど有効茎歩合の向上及びそれによる穂数確保には有効であるが 反面 上位葉 特に止葉が長大となり受光態勢の悪化 倒伏の助長などのマイナス面もある ハナエチゼン は25 日前の施用を標準とするが 茎数が多い 草丈がやや高い 葉色が比較的濃いといった場合には出穂 20~18 日前に施用する コシヒカリ など耐倒伏性の劣る品種や きぬむす - 34 -

め のように籾数生産能率が高く 籾数が過多になりがちな品種では原則として出穂 20 日前とする 2 回目は1 回目の10 日後に施用する 出穂 25~18 日前の判定は未出葉数によって行う すなわち 1 水田の中央部で生育中庸な5 株を選ぶ 2 各株から主稈ないし強勢分げつを2~3 本ずつ抜き取る ( したがって調査用茎は10~15 本となる ) 3 各茎を幼穂が認められるまで分解し 葉鞘に包まれて未だ抽出していない葉 ( 及び部分 ) を数える ( 第 5-1 図 ) 4 平均未出葉数を求め 第 5-2 図から出穂前日数を推定する 未出葉数が2.2 であれば出穂 25 日前 1.8であれば同じく22 日前などとなる 5 幼穂長も併せて調査して正確を期す 幼穂 止葉 第 2 葉 ( 葉身 ) ( 葉鞘 ) 第 5-1 図 未出葉部分 第 3 葉 第 4 葉 未出葉数の数え方 3 30 2.5 未出葉数 y = 0.126x -0.95 幼穂長 25 2 20 未出葉数 ( 枚 ) 1.5 15 幼穂長 (mm) 1 10 0.5 5 0 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 出穂前日数 ( 日 ) 0 第 5-2 図未出葉数および幼穂長の日変化 ( 島根農技 C) 1 回 10a 当たりの穂肥の量は 耐倒伏性の劣る コシヒカリ では窒素 カリともに 1.5kg 以 内 耐倒伏性に優る きぬむすめ と ハナエチゼン はそれぞれ 2.5kg 以内 2.0kg 以内とす る - 35 -

ウ出穂 35 日前頃のカリの単独追肥出穂前 40~30 日頃の窒素過剰は過繁茂や倒伏の原因となるばかりでなく 特にこの時期の日照が不足すると稈基部への炭水化物集積や組織の発育が阻害されて青枯症が発生することがある 窒素過剰の場合にはカリを10a 当たり2.0kg 程度施用すると上記の障害を軽減する効果がある (4) 栽培条件と施肥本県の稲作地帯には性質の異なるいろいろな種類の水田土壌が分布しており それぞれの地域で安定した高い収量を上げるためには その地域の土壌に対応した土づくりと 水稲の生育に応じた施肥を行わねばならない ア湿田の施肥湿田は非潅漑期間であっても地下水位が高く 排水が不良である ほ場整備によって改善が図られているものの 本県には湿田的な条件にある水田が多い 作土の土性によって違いはあるが 湿田土壌は一般に地力窒素の供給源となる有機物の含量が多く しかも地力窒素は地温の上昇に伴って 生育中期以降に多く供給されるため 水稲の生育はあとできの傾向を示し 倒伏しやすい したがって 窒素の施用はひかえめにし リン酸とカリは基準量を施用する なお 湿田でも土性が粗 ~ 中粒質であれば 地力窒素の供給がさほど多くないので窒素は基準量を施用する イ乾田の施肥非潅漑期間になると地下水位が低下し 過剰な水分が排除されて ほ場に入っても水のにじむことのない水田が乾田である 乾田は地力窒素の供給量が少なく 鉄 珪酸 塩基など他の養分も少なくなりやすいので 堆きゅう肥などの有機物や珪カル 含鉄資材の施用で地力維持を図ることが必要である 乾田では水稲の初期生育が良好で 茎数確保は容易であるが 中 後期の生育はいくぶん凋落的傾向を示す場合が多い このような水田では 窒素とカリは肥切れしないように追肥重点とし 初期生育と中 後期生育のバランスに配慮した施肥配分にすることが大切である ウ漏水田の施肥作土が砂質 ~ 壌質で 下層に砂礫層があるような土壌では 保肥力が弱い上 透水性が過大なため 土壌養分や肥料成分の溶脱が多い また 水保ちが悪いため 山間地域では地温が上がりにくい このような水田では 水稲の生育は全般的に小できに推移する 漏水防止と保肥力の向上には床締めや優良粘土の客土 ベントナイトの施用が効果的である 鉄 珪酸 塩基に乏しく 地力窒素の供給も少ないので 有機物や珪カル 含鉄資材の施用は欠かすことができない 施肥の面では 窒素とカリは多目に施用し 肥切れしないように追肥重点とする 分施回数は壌 ~ 粘質水田よりも多くする必要がある また 緩効性肥料や被覆肥料などを利用すれば窒素成分の損失が少なく 肥効が持続するので効果が高い - 36 -

エ黒ボク水田の施肥黒ボク水田は火山灰を母材とする水田で 本県の場合はほとんどが雲南地域に分布している 一般に 黒ボク土は腐植に富み リン酸を吸着する性質が強く 有効態リン酸が少ないのが特徴である また アンモニア態窒素やカリウムの吸着が弱く流亡しやすい 地力窒素の供給量は比較的多いが 発現は遅れがちであり リン酸の可溶化も初期には少ない そのため 水稲は初期の分げつが抑えられ 穂数不足となる このような黒ボク水田に対しては 基準に示したリン酸を全量基肥に施用するとともに 基肥窒素をやや多めとし 初期生育の促進を図ることが重要である オ田植時期と施肥乳白粒の発生抑制対策として県内平坦部を中心に5 月下旬田植を推進しているところである 一般に 田植が10 日遅くなると最高分げつ期は4~5 日 幼穂形成期と出穂期は3 日程度遅れる その結果 早植ほど幼穂分化までの生育期間 ( 栄養生長期間 ) が長く 茎数は多くなるが 生育中期に凋落化しがちである これに対し 遅植ほど栄養生長期間が短く 分げつの数は少なくなる反面 体内窒素濃度は高く維持される そのため 早植では一般に穂数がやや多く短穂となり 遅植えの場合は穂数が少なく長穂となりやすいが倒伏しやすくなる これらのことから 早植では茎数が過剰とならないよう基肥窒素の多施用は避け 追肥に重点を置いた施肥により中 後期の栄養状態の維持と籾数の確保を図っていくことが必要である 遅植に対しては 有効茎の早期確保を図りつつ 稲の姿勢や葉色をみながら適切な穂肥を施用する - 37 -