病期分類概論 ミニ実務者研修会 (2 日間 ) 第 2 日目 10:30-12:00 今日のお話 1. なぜ 病期分類が必要なのか 3. 癌取り扱い規約分類 4. 進展度 ( 臨床進行度 ) 5. 主要 5 部位 + 前立腺がんの病期分類 6. 病期分類計算システム Canstage 1 1. なぜ 病期分類が必要なのか 1/5 はじめに 1. なぜ 病期分類が必要なのか ヒトの体 : 数十兆個の細胞から構成される 200 以上もの細胞のタイプが存在し それらすべての細胞が がん化 の可能性を持つ がん とは 200 以上の異なる病気であるともいえ 同じ細胞のタイプであっても 異なる性格を帯びる がん もある 3 1
1. なぜ 病期分類が必要なのか 2/5 1. なぜ 病期分類が必要なのか 3/5 科学的に検討 検証するために 似たもの同士 を集め その特徴をつかむ 病理組織診断 ( 組織型 分化度 ) や病期分類 ( 臨床的 病理学的な拡がり ) その他 1 解剖学的部位 2 病状や徴候が続いている期間 3 患者の性 4 年齢なども考えられる 具体的に 1. 治療決定に関しての情報が必要 2. 予後に関する評価を行う場合 同様な症例をまとめる必要がある 3. 異なる加療がなされた場合 それを比較検討するためには 同様な症例をまとめる必要がある 4 5 1. なぜ 病期分類が必要なのか 4/5 1. なぜ 病期分類が必要なのか 5/5 病期の利用 いろいろな病期 1. 適切な治療方法の決定 2. 医療の結果を評価 3. 過去の経験から得られる予後情報の利用 4. がん研究への利用 5. 治療結果の評価の際に考慮する因子として 利用 1. UICC TNM 分類 2. 取扱い規約分類 ( 部位別 ) 3. 進展度 ( 臨床進行度 ) 4. FIGO 分類 :( 部位特異的分類 = 子宮体部 頚部 ) 5. Dukes 分類 ( 部位特異的分類 = 大腸 ) 6. Ann Arbor 分類 ( 部位特異的分類 = リンパ腫 ) など がん登録で記録する場合は 上記 1,2,3 の分類でおこなう 6 7 2
TNM 分類 ( 詳細は TNM 悪性腫瘍の分類第 6 版を参照 ) T: 原発腫瘍の拡がり N: 所属リンパ節転移の有無と拡がり M: 遠隔転移の有無 リンパ腫については T, N, M の各分類は振られず 病期分類だけを用いる 9 6 つの原則 2. 2 通りの分類 全ての部位に適用される総則 ( 序論 P7~) 1. すべての症例は組織学的 ( 顕微鏡的 ) な確証がされなければならない 確証がない症例は区別して記録する (a) 臨床分類 ( 治療前臨床分類 )ctnm 治療前に得られた情報に基づく (b) 病理学的分類 ( 術後病理組織学的分類 ) ptnm 治療前に得られた情報に基礎をおくものであるが, 手術や病理組織学的検索で得られた知見により補足修正される 10 11 3
3. 病期分類の決定 4. 迷ったら低い分類を選択 T,N,M, あるいはpT,pN,pM 分類が決定されると それらに基づき症例は病期に分けることができる TNM 分類および病期分類はいったん決定されたならば, 変更することなく病歴記録に留められねばならない T,N あるいは M の判定に際し, どの分類に入れるのが正確か疑わしいときは, 進展度の低いほうに入れる このことは病期分類に反映する 例 )T2~3? T2a or T2b 12 13 5. 同時性多発癌の場合は 最も進展度の高い病巣を選択 6. 病期分類には亜分類がある 1 つの臓器に同時性多発がんがある症例は, 最も進展度の高い病巣の T 分類に分類される 3m, tub2, 2*1cm 1mp, tub2, 3*2cm 2ss, tub1, 1*0.5cm TNM 分顆および病期分類は, 基本的な定義づけを変えない限り, 臨床学的に, または検索目的により簡便化したり, 拡大解釈したりすることができる たとえば,T,N,M の各分類のいずれも亜分類することができる 14 15 4
T 分類 1. 管腔臓器の場合 臓器の壁への浸潤の深さにより判断 : 多くの臓器では Tx: 原発巣の評価不可能 T0: 原発腫瘍なし Tis: 上皮内癌 T1: 粘膜下層まで至る腫瘍 T2: 粘膜筋層まで至る腫瘍 T3: 最外層まで至っている腫瘍 ( 漿膜 外膜 ) T4: 隣接臓器に直接浸潤している腫瘍 1 食道 2 胃 3 小腸 4 大腸 ( 結腸 直腸 ) 5 胆嚢 胆管 6 十二指腸乳頭部 7 子宮体部 8 陰茎 9 膀胱 10 腎盂 尿管 尿道 T 分類 2. 実質臓器の場合 A. 腫瘍の大きさにより判断 ( 臨床的もしくは病理学的に判断 腫瘍の数を考慮する臓器もある ) 1 口唇 口腔 2 中咽頭 3 唾液腺 4 甲状腺 ( 病期分類には 組織型と年齢が必要 ) 5 肛門 肛門管 6 肝臓 7 肉腫 ( 病期分類には 組織学的悪性度が必要 ) 8 皮膚 ( 基底細胞癌 扁平上皮癌 ) 9 乳腺 10 腎臓 11 脳 12 眼瞼 13 結膜 14 眼窩 ( 肉腫 ) 15 涙腺 16ウィルムス腫瘍 17 神経芽細胞腫 16 17 T 分類 2. 実質臓器の場合 B. 腫瘍の部位とその拡がりにより判断原発巣と隣接した臓器に関する解剖学的知識が必要 ( 臨床的もしくは 病理学的に判断 ) 1 上咽頭 下咽頭 ( 腫瘍径も考慮 ) 2 喉頭 3 上顎洞 4 膵臓 5 肺 6 胸壁胸膜 7 骨 8 子宮頚部 9 卵巣 10 膣 外陰 11 前立腺 12 精巣 13 悪性リンパ腫 14 網膜芽細胞腫 卵巣がんの腹膜転移はT3(III 期 ) 遠隔転移ではない! 18 N 分類 Nx: 所属リンパ節転移の評価不可能 N0: 所属リンパ節転移なし N1~4: 所属リンパ節転移あり ( 大きさ 数 転移リンパ節部位 側性等を考慮 ) 19 5
1. 所属リンパ節転移の有無で分類 N 分類を単に所属リンパ節転移の有無で分類 2. 所属リンパ節転移数で分類 1 食道 2 小腸 3 肝臓 4 十二指腸乳頭 5 膵臓 6 骨 7 軟部組織 8 皮膚 9 子宮頚部 10 子宮体部 11 卵巣 12 陰茎 13 眼瞼 ( 癌腫 ) 14 結膜 ぶどう膜 15 網膜芽細胞腫 16 眼窩 ( 肉腫 ) 17 涙腺 18 ウィルムス腫瘍 19 神経芽細胞腫 20 小児軟部肉腫 A. リンパ節転移数と大きさで判断 ( 病理組織診断上でのリンパ節転移数と大きさの一方もしくは双方 ) 1 結腸 直腸 ( 転移リンパ節数のみ ) 2 前立腺 3 精巣 4 膀胱 5 腎臓 6 腎盂 尿管 7 尿道 B. リンパ節転移の側性 ( 同側 反対側 ) と大きさで判断 1 口唇 口腔 2 咽頭 3 喉頭 4 上顎洞 5 唾液腺 6 悪性黒色腫 ( 大きさと部位 ) 7 乳腺 ( 病理診断 ) 側性のみ ( 同側 反対側 ) 8 甲状腺 9 膣 10 外陰 20 21 C. 特定のリンパ節転移での判断 1 胃 2 肛門管 3 胆嚢 胆管 4 肺 5 壁側胸膜 3. リンパ節転移を考慮しない (N 分類はない ) N 分類を病期分類に用いない 1 脳 2 悪性リンパ腫 22 23 6
M 分類 Mx: 遠隔転移の評価が不可能 M0: 遠隔転移なし M1: 遠隔転移あり その他の病期分類情報 T 分類 N 分類 M 分類以外に必要な情報がある 1. G 病理組織学的悪性度 1 骨 2 軟部組織 3 前立腺 2. S 血清腫瘍マーカー精巣 3. 年齢 / 病理組織型分類甲状腺 4. リスク分類妊娠絨毛性腫瘍 24 25 TNM 分類で用いられている記号 (1) TNM 分類で用いられている記号 (2) 記号記号の意味例 T 原発腫瘍の拡がり T1b N 所属リンパ節転移の有無と拡がり N0 M 遠隔転移の有無 M1 0 原発腫瘍が認められない場合 所属リンパ節 遠隔転移の無い場合 T0 N0 X T, N, Mが評価できない場合 ( 検査をしていない 診療録に表記がない等 ) Tx, Nx, Mx is 上皮内癌 Tis a, b, c T, N, Mの亜分類 T1b, N2a, M1c Stage 0 上皮内癌の病期 Stage I-IV 病期 I~IVに従い大きい番号ほど進行している Stage II A, B, C Stage( 病期 ) の亜分類 StageIIIB, Stage IA 記号記号の意味例 c 臨床分類の際につく前頭語 ct2 p 病理学的分類の際につく前頭語 pn0 r 再発治療の際の分類の時の前頭語 rm1 a 病理解剖による分類の際の前頭語 Stage aii y 既治療例を再分類した場合の前頭語 ypt1 ypn0 M0 m 多重がんの際の分類に接尾記号 T1(m) S 血清腫瘍マーカー分類 ( 精巣癌のみ ) SX L リンパ管侵襲 L1 V 静脈侵襲 V0 C 診断の確実性 C1 R 遺残腫瘍の有無 R2 26 27 7
太字の縦線 (p18) 第 5 版 (1997) と比べて 第 6 版 (2002) に本質的な改訂がある部分には各ページの左側に太い縦線を引いてある 3. 癌取り扱い規約分類 薄い縦線 :TNM Supplement 第 2 版 (2001) で行なわれた改定部分 28 3. 癌取り扱い規約分類 3. 癌取り扱い規約分類 取扱規約 学会 研究会で作成している我が国独自の決まり 近年 TNM 分類に沿った分類に変更している部位 ( 乳腺 肺 ) もある 従って 独自 とも言えなくなってきている! 基本的には UICCTNM 分類と似たような概念 T 因子 N 因子 M 因子の 3 因子に大きく分けて その中を TNM 分類とは多少異なった分け方をしている 多くの臓器において 取扱い規約に基づく記録 UICC TNM 分類への変換はある程度可能 UICC TNM 分類との相違 (1) 頭頸部 肺 乳腺 ( 取り扱いでは術前評価のみ ) 皮膚 尿路系 子宮などの部位については 取扱い規約と TNM とはほぼ同じ分類内容となっている 消化器系を中心に TNM 分類とは異なった表記 定義を用いている部位がある ( とくに所属リンパ節の概念が異なる ) 取扱い規約は臨床情報をより詳細に記録しようとする傾向が強く 一方 UICCTNM 分類では 臓器横断的に同じ表現をしようとする傾向が強い 30 31 8
3. 癌取り扱い規約分類 3. 癌取り扱い規約分類 UICC TNM 分類との相違 (2) TNM 分類は 国際的に用いられているが 取扱い規約では国内でのみの利用である 双方の分類とも 版が変わると異なった分類 定義となる可能性がある 新しい診断 治療法に対応した記録を行うため 現時点での治療者に情報を利用するため 過去からの情報を経時的モニターするがん登録との違い ( がん登録では できうる限り時代間で異なった分類 定義が無いことが望ましい 現状における問題点 多くの診療録は 取扱い規約分類に従って記載されている T, N, M の表記が共通している場合 T, N, M とのみ記載された場合 取扱い規約での分類か?TNM 分類によるものかの判断ができない TNM 分類 取扱い規約とも複数の版があり 診療録に記載されている T, N, M の情報が第何版にもとづきなされているか判断ができない 32 33 がんの拡がりの特徴腫瘍が浸潤性に発育すること (infiltrative growth) と 転移 (metastasis) をすること 4. 進展度 ( 臨床進行度 ) 4. 進展度 ( 臨床進行度 ) 資料参照... がんの拡がりと進行度 (UICCTNM 分類 進展度 )(PDF:434KB) 1) リンパ行性転移がん病巣周囲のリンパ管内に浸潤 所属リンパ節転移 遠隔リンパ節転移 他臓器に波及 2) 血行性転移腫瘍細胞の浸潤が静脈壁内に波及 静脈血とともに遠隔他臓器に着床 増殖 3) 漿膜面への転移 ( 播種 dissemination) 胸腔 腹腔などの体腔内にがん細胞が剥離脱落 漿膜面に着床して多発性転移巣を形成 35 9
4. 進展度 ( 臨床進行度 ) 4. 進展度 ( 臨床進行度 ) 進展度の分類 0 上皮内 (in situ) 上皮内にとどまって浸潤していない 1 限局 (Localized) がんが原発臓器に限局している 2 所属リンハ 節転移 (Regional lymph nodes) 所属リンハ 節への転移を伴うが 隣接組織 臓器への浸潤がない 3 隣接臓器浸潤 (Regional extension) 隣接組織 臓器に直接浸潤しているが 遠隔転移がない 4 遠隔転移 (Distant) 遠隔転移がある 36 基本的な考え方 1. がんはどこからはじまったか ( 発生したか )? 部位 亜部位を明らかにする 2. がんはどこに行ったか ( 拡がっていったか )? 取扱規約の表記などから 浸潤組織を明らかにする 他の臓器や隣接組織に及んでいるかを判定する 3. がんはどのように他の臓器や組織に達したか? 原発部位から連続して 直接進展していったのか 隣接臓器浸潤か遠隔転移か 4. このがんの進展度分類を表をみてコードする 1つ以上の臓器や組織に浸潤があれば 浸潤した組織で最も番号 の大きい分類をする 37 4. 進展度 ( 臨床進行度 ) 病期分類比較 TNM classification M N T 取扱い規約 (M) (N) (T) 臨床進行度 ( 進展度 ) TNM Classification 取り扱い規約臨床進行度 ( 進展度 ) 38 10