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2)N 分類 Nの入力に際し 画像診断 (CT MRIなど ) より腫大リンパ節の有無を加味した以下の分類細目に従って報告する N0 所属リンパ節腫大 (-) N1 所属リンパ節腫大 (+) NX 画像診断をしなかった 3)M 分類 M0 遠隔転移なし MA 傍大動脈リンパ節の腫大 M1 その他の遠

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がん登録実務について

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43048腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約第1版 追加資料

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がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

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70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

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小児がんの診療の流れ はじめて小児がんを疑われたときから 受診 そして 経過観察 に至るまでの流れを示しました 今後の見通しを確認するための目安としてお使いください

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院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

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密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

が 6 例 頸部後発転移を認めたものが 1 例であった (Table 2) 60 分値の DUR 値から同様に治療後の経過をみると 腫瘍消失と判定した症例の再発 転移ともに認めないものの DUR 値は 2.86 原発巣再発を認めたものは 3.00 頸部後発転移を認めたものは 3.48 であった 腫瘍

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1. 部位別登録数年次推移 表は 部位別に登録数の推移を示しました 2015 年の登録数は 1294 件であり 2014 年と比較して 96 件増加しました 部位別の登録数は 多い順に大腸 前立腺 胃 膀胱 肺となりました また 増加件数が多い順に 皮膚で 24 件の増加 次いで膀胱 23 件の増加

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ことから過剰診断が問題視され 2003 年には厚生労働省の決 定で休止となりました 2. 診断 (1) 臨床症状 : 早期に腫瘤を触知することはまれです ただし 1 歳までの赤ちゃんにみられる病期 4S という腫瘍では 皮下への転移 肝腫大による腹部膨満や呼吸障害がみられます 幼児では転移のある進行

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小児神経芽腫の一例

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< 高知県立幡多けんみん病院 年院内がん登録 ( 詳細 )> 性 ~9 ~9 ~9 ~9 ~9 ~9 ~9 9~ 総計件数比率 口腔 咽頭食道胃結腸直腸肝臓胆嚢 胆管膵臓喉頭肺骨 軟部皮膚乳房子宮頸部子宮体部卵巣前立腺膀胱腎 他の尿路 女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男

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日本産科婦人科学会雑誌第65巻第7号

2014 年版 もっと 知ってほしい 卵巣がんのこと 監修 婦人科悪性腫瘍研究機構 (JGOG) 理事長東京慈恵会医科大学教授落合和徳 Know [ No] More Cancer

病理剖検登録の手引き_剖検情報

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Transcription:

( 図 E-8-4)-(2)-1) 卵巣組織シェーマ

( 表 E-8-4)-(2)-1) 卵巣腫瘍の臨床病理学的分類 良性腫瘍 Ⅰ. 表層上皮性 間漿液性嚢胞線腫質性腫瘍粘液性嚢胞線腫類内膜線腫明細胞線腫 境界悪性腫瘍漿液性嚢胞性腫瘍, 境界悪性粘液性嚢胞性腫瘍, 境界悪性類内膜腫瘍, 境界悪性明細胞腫瘍, 境界悪性 悪性腫瘍漿液性 ( 嚢胞 ) 腺癌粘液性 ( 嚢胞 ) 腺癌類内膜腺癌明細胞腺癌 腺線維腫表在性乳頭腫 腺線維腫腺癌線維腫表在性乳頭状腫瘍, 境界悪性腺肉腫中胚葉性混合腫瘍 ( 癌肉腫 ) ブレンナー腫瘍 ブレンナー腫瘍, 境界悪性 悪性ブレンナー腫瘍 移行上皮癌未分化癌 Ⅱ. 性索間質性腫瘍 莢膜細胞腫 線維腫硬化性間質性腫瘍セルトリ 間質細胞腫瘍 ( 高分化型 ) ライディク細胞腫 [ 門細胞腫 ] 輪状細管を伴う性索腫瘍 顆粒膜細胞腫 セルトリ 間質細胞腫瘍 ( 中分化型 ) ステロイド [ 脂質 ] 細胞腫瘍 ( 分類不能型 ) ギナンドロブラストーマ 線維肉腫セルトリ 間質細胞腫 ( 低分化型 ) Ⅲ. 胚細胞腫瘍 成熟嚢胞性奇形腫 [ 皮様嚢胞腫 ] 成熟充実性奇形腫卵巣甲状腺腫瘍 未熟奇形種 (G1,G2) カルチノイド甲状腺腫性カルチノイド 未分化胚細胞腫卵黄嚢腫瘍胎芽性癌多胎芽腫絨毛癌悪性転化を伴う成熟奇形腫未熟奇形種 (G3) Ⅳ. その他 非特異的軟部腫瘍 性腺芽腫 ( 純粋型 ) 癌腫 線腫様腫瘍 肉腫 悪性リンパ腫 ( 原発性 ) 二次性 ( 転移性 ) 腫瘍

( 図 E-8-4)-(2)-2) 卵巣表層上皮腫瘍の発生仮説

( 図 E-8-4)-(2)-3) 胚細胞性腫瘍の発生 β

( 表 E-8-4)-(2)-2) 臨床進行期分類 (FIGO,1988 年 ) 進行期の決定は臨床的検査ならびに / あるいは, 外科的検索によらなければならない. 進行期決定にあっては組織診を, また体腔滲出液については細胞学的診断を考慮すべきである. 骨盤外の疑わしい個所については生検して検索することが望ましい. StageⅠ: 卵巣内限局発育 Ⅰa: 腫瘍が一側の卵巣に限局し, 癌性腹水がなく, 被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの. Ⅰb: 腫瘍が両側の卵巣に限局し, 癌性腹水がなく, 被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの. Ⅰc: 腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが, 被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり, 腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められるもの. ( 注 : 腫瘍表面の擦過細胞診にて腫瘍細胞陽性の場合はⅠcとする.) StageⅡ: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し, さらに骨盤内への進展を認めるもの. Ⅱa: 進展ならびに / あるいは転移が, 子宮ならびに / あるいは卵管に及ぶもの. Ⅱb: 他の骨盤内臓器に進展するもの. Ⅱc: 腫瘍発育がⅡ aまたはⅡ bで被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり, 腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められるもの. 注 1: 他臓器への進展, 転移などは組織学的に検索されることが望ましい. 注 2: ⅠcおよびⅡ c 症例において予後因子としての関連を評価するため下記の如く分類 表記することが望ましい. Ⅰc(a): 自然被膜破綻 Ⅰc(b): 手術操作による被膜破綻 Ⅰc(1): 腹腔洗浄液細胞診陽性 Ⅰc(2): 腹水細胞診陽性 Ⅱcも同様とする. StageⅢ: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し, さらに骨盤外の腹膜播種ならびに / あるいは後腹膜または, 鼠径部のリンパ節転移を認めるもの. また腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学的転移を認めるものや, 肝表面への転移の認められるもの. Ⅲa: リンパ節転移陰性で腫瘍は肉眼的には小骨盤に限局しているが, 骨盤外の腹膜表面に病理組織学的播腫を認めるもの. Ⅲb: リンパ節転移陰性で, 病理組織学的に確認された直径が 2cm 以下の腹腔内播種を認めるもの. Ⅲc: 直径 2cm を超える腹腔内播種ならびに / あるいは後腹膜または鼠径リンパ節転移の認められるもの. StageⅣ : 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し, 遠隔転移を伴うもの. 胸水の存在によりⅣ 期とする場合には, 胸水中に悪性細胞を認めなければならない. また肝実質への転移はⅣ 期とする. 注 : 肝実質転移は組織学的 ( 細胞学的 ) に証明されることが望ましいが, 画像診断で転移と診断されたものもⅣ 期とする.

( 表 E-8-4)-(2)-3 TNM 臨床分類 a.t: 原発腫瘍の進展度 (T 分類は FIGO の進行期分類に適合するように定義されている ) TX: 原発腫瘍の広がりの検索が行われなかったとき T0: 原発腫瘍を認めない T1: 卵巣内限局発育 T1a: 腫瘍が一側の卵巣に限局し, 癌性腹水がなく, 被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの T1b: 腫瘍が両側の卵巣に限局し, 癌性腹水がなく, 被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの T1c: 腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが, 被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり, 腹水または洗浄液中の細胞診にて悪性細胞の認められるもの T2: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し, さらに骨盤内への進展を認めるもの T2a: 進展ならびに / あるいは転移が子宮ならびに / あるいは卵管に及ぶもの T2b: 他の骨盤内臓器に進展するもの T2c: 腫瘍発育が Ⅱa または Ⅱb で, 被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり, 腹水または洗浄液中の細胞診にて悪性細胞の認められるもの T3: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し, さらに骨盤外の腹膜播種を認めるもの. また腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学転移を認めるものや肝表面への転移も T3 とする. T3a: 腫瘍は小骨盤内に限局し, 腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの. T3b: 組織学的に確認された直径 2cm 以下の腹腔内播種を認めるもの. T3c: 直径 2cm をこえる腹腔内播種の認められるもの. b.n: 所属リンパ節 NX: 所属リンパ節転移を判定するための検索が行われなかったとき. N0: 所属リンパ節転移を認めない. N1: 所属リンパ節転移を認める. c.m: 遠隔転移 MX: 遠隔転移を判定するための検索が行われなかったとき. M0: 遠隔転移を認めない. M1: 遠隔転移を認める. ( 注 )M1 および pm1 についてはさらに以下の記号をもって表示する. 肺転移 :PUL 骨髄転移 :MAR 骨転移 :OSS 胸膜転移 :PLE 肝転移 :HEP 皮膚転移 :SKI 脳転移 :BRA その他 :OTH リンパ節 :LYM d.g: 病理組織学的分化度 GX: 分化度の検索がなされていない場合 GB: 境界悪性腫瘍 G1: 高分化型 G2: 中分化型 G3: 低分化型 e. その他 1)y-symbol TNM 分類決定前に集学的治療がなされた場合は y-symbol を用いて以下のように示す. ( 例 )yt2n1m0,ypt2pn1pm0 2)r-symbol 再発腫瘍の TNM 分類については y-symbol を用い以下のように示す. ( 例 )rt2n0m0,yrt2pn1pmx

( 表 E-8-4)-(2)-4) FIGO 分類と TNM 分類の対応表 FIGO 分類 Ⅰa Ⅰb Ⅰc Ⅱa Ⅱb Ⅱc Ⅲa Ⅲb Ⅲc Ⅳ T1aN0M0 T1bN0M0 T1cN0M0 T2aN0M0 T2bN0M0 T2cN0M0 TNM 分類 T3aN0M0 T3bN0M0 T3cN0M0/TanyN1M0 Tany,Nany,M1

( 図 E-8-4)-(2)-4) 腹部大動脈周囲 ( 腰 ) リンパ節の分類と境界

( 図 E-8-4)-(2)-5) 卵巣悪性腫瘍治療に関係ある骨盤リンパ節 1 腹部大動脈周囲リンパ節 ( 腰リンパ節, 傍大動脈リンパ節 ), 2 総腸骨リンパ節, 3 外腸骨リンパ節, 4 鼠径リンパ節, 5 内腸骨リンパ節, 6 閉鎖リンパ節, 7 仙骨リンパ節, 8 基靭帯リンパ節

Department of Obstetrics and Gynecology, University of the Ryukyus, Okinawa