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日本皮膚科学会雑誌第117巻第14号

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

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70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

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用法 用量 発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制 mg mg mg mg kg 30kg 40kg 20kg 30kg 10kg 20kg 5kg 10kg 1900mg mg mg mg

Transcription:

図 6(a,b): 膿疱性乾癬の臨床像 a) b) () 角層下膿疱症 (Sneddon-Wilkinson 病 ) 発熱などの前駆症状は通常なく 間擦部中心に米粒大前後の弛緩性の膿疱を形成することが多い 膿疱は融合傾向を示し しばしば環状ある 5

いは蛇行状を呈す 数日から数週間の間隔で繰り返し出現する 臨床検査で特徴的な所見はない (3) 中毒性表皮壊死症 (toxic epidermal necrolysis: TEN) 38 以上の発熱が認められる AGEP の経過中に小膿疱が融合し 角層が薄くはがれる所見を呈することがあるが TEN では全身の 0% を超える表皮の壊死性障害による水疱 表皮剥離 びらんを認め 粘膜疹を伴う 皮膚病理組織検査により鑑別できる ( 中毒性表皮壊死症( 中毒性表皮壊死融解症 ) のマニュアル参照) (4) 薬剤性過敏症症候群 (drug-induced hypersensitivity syndrome: DIHS) 全身に紅斑丘疹や多形紅斑がみられ 進行すると紅皮症となる 通常 膿疱を伴わないが ときに顔面 ~ 頸部に小膿疱が多発することがある 限られた原因医薬品の内服歴 全身のリンパ節腫脹 肝機能障害をはじめとする臓器障害 末梢白血球異常 ( 好酸球増多あるいは異型リンパ球の出現 ) 原因医薬品中止後にも遷延する経過などが鑑別点である 経過中にヒトヘルペスウイルス-6 の再活性化をみる ( 薬剤性過敏症症候群 のマニュアル参照 ) (5) 急性汎発性 ( 全身性 ) 膿疱性細菌疹多くは上気道の連鎖球菌感染症に引き続いて全身に散在性に膿疱 小紫斑が出現する 皮疹は手掌 足蹠に初発することが多く 膿疱は AGEP でみられる膿疱より大きく 紅暈を有している 関節痛などの全身症状を伴う (6) 膿疱性汗疹高熱が出現した後に間擦部に汗疹が出現し これが膿疱化した病変である 医薬品摂取に関わらず高熱後に生じる 末梢血の好中球増多を伴う白血球増多はみられない 6

(7) 敗血疹 38~40 の高熱が生じ 熱型は弛張熱 時に稽留熱で持続する 全身に膿疱が散在性にみられる 汎発性の紅斑は認められず 膿疱は AGEP で認められるものよりやや大型である 血液細菌培養で菌が検出される 5. 治療方法 まず 被疑薬の使用を中止する 薬物療法としてステロイド薬の全身投与が有効である 急性期にプレドニゾロン換算で 0.5~0.7mg/kg/ 日から開始し 症状に応じて適宜漸減する 抗菌薬による発症が疑われる場合には代替の抗菌薬は化学構造の異なるものを選択する 6. 典型的症例概要 [ 症例 ] 40 歳代 男性 ( 家族歴 ): 特記すべきことなし ( 既往歴 ):0 歳代に抗生物質による薬疹 ( 現病歴 ): 初診 6 日前に作業中に転倒し左足背に外傷を受けた 日後に同部の発赤 疼痛と発熱が出現し近医受診 蜂窩織炎と診断され フロモキセフナトリウムの点滴を受けた 点滴数時間後から体幹に紅斑が出現し 翌日には紅斑は全身に拡大するとともに潮紅が増し 高熱を認めたため緊急入院した ( 入院時現症 ): 顔面から体幹 上肢はびまん性に紅斑を認め 頸部 前胸部 背部などでは ~mm 大の非毛孔性の小膿疱が多発散在していた ( 図 7 参照 ) 39 台の発熱を認めた また 左足背は蜂窩織炎のため発赤 腫脹が著明であった 7

図 7:AGEP の臨床像 ( 入院時検査所見 ): 白血球 5500/μL( 好中球 86.0% 好酸球 5.0% 単球 3.5% リンパ球 4.5% 異型リンパ球 %) 赤血球 474 0 4 /μl Hg 4.4g/dL Ht 4.0% 血小板 0. 0 4 /μl 血沈 83/4 AST 4 IU/L ALT 9 IU/L ALP 05 IU/L LDH 57 IU/L BUN 33.4 mg/dl Cr. mg/dl CRP 5 mg/dl 以上 ASO( anti-streptolysin O antibody) 44 IU/mL ASK (anti-streptokinase antibody)60x.( 倍 ) 各種ウイルス ( 単純ヘルペス 水痘 - 帯状疱疹ウイルス Epstein-Barr ウイルス サイトメガロウイルス ) 抗体価に有意な所見なし 細菌学的検査 ; 背部の小膿疱 血液より一般細菌の検出なし 咽頭 : 常在菌のみ 左足背部 :Streptococcus pyogenes (Group A) 検出 心電図および胸部レントゲン検査にて異常なし ( 入院後経過及び治療 ): 入院時の臨床所見で足背部の蜂窩織炎は深部へ進展する可能性が危惧されたため 入院時よりホスホマイシンの点滴 さらに翌日からヒト免疫グロブリン製剤の投与を開始した 全身の皮膚の潮紅は第 病日目より消退しはじめ また 小膿疱も乾燥傾向を示し 第 5 病日目には解熱し 所々に落屑がみられた その後 蜂窩織炎の発赤 腫脹も軽快傾向を示した 第 5 病日目には全身の発疹は軽度の色素沈着を残して軽快した ( 入院時病理組織所見 ): 背部の小膿疱を含む紅斑では軽度の表皮肥厚があり 表皮内にリンパ球の浸潤がみられる 角層下には膿疱が認められた また 真皮では上層の浮腫と血管周囲性に好中球 リンパ球 好 8

酸球の浸潤を認めた ( 臨床診断 ): 急性汎発性発疹性膿疱症 ( 原因医薬品の検討 ): フロモキセフナトリウムのパッチテストを施行した フロモキセフナトリウム貼付部に 48 時間後に ICDRG 基準で (+) の所見がみられ陽性と判断した フロモキセフナトリウムの薬剤添加リンパ球刺激試験(DLST) 入院第 5 病日 53% (S.I. 値 ): 陰性入院第 4 病日 336% (S.I. 値 ): 陽性以上よりフロモキセフナトリウムによる急性汎発性発疹性膿疱症であることが確定した 7. その他 早期発見 早期対応に必要な事項 急性汎発性発疹性膿疱症は過去にすでに原因医薬品に感作されている患者に生じることが多いため 抗菌薬による接触皮膚炎の既往がある場合には 投与時に注意する必要がある 8. 引用文献 参考資料 ) 橋本公二 :Stevens-Johnson 症候群 toxic epidermal necrolysis (TEN) と hypersensitivity syndrome の診断基準および治療指針の研究厚生科学特別研究事業平成 4 年度総括研究報告 (00) ) Baker H et al : Generalized pustular psoriasis: A clinical and epidemiological study of 04 cases. Br J Dermatol 80:77-793(968) 3) Roujeau J-C et al: Acute generalized exanthematous pustulosis: Analysis of 63 cases. Arch Dermatol 7:333-338(99) 4) Sidoroff A et al: Acute generalized exanthematous pustulosis(agep)-a clinical reaction pattern. J Cutan Pathol 8:3-9(00) 5) 塩原哲夫 : ウイルス感染症と薬疹の鑑別. MB Derma 43:5-58 (000) 6) Choen AD et al: Acute generalized exanthematous pustulosis mimicking toxic epidermal necrolysis. Int J Dermatol 40:458-46(00) 7) Beltraminelli HS et al : Acute generalized exanthematous pustulosis induced by the antifungal terbinafine: case report and review of the literature.br J Dermatol 5:780-783(005) 8) Kardaun SH et al: Acute generalized exanthematous pustulosis caused by morphine confirmed by positive patch test and lymphocyte transformation test. J Am Acad Dermatol 55:S-3(006) 9

9) Watsky KL. Acute generalized exanthematous pustulosis induced by metronidazole: The role of patch testing. Arch Dermatol 35:93-94(999) 0) 堀田隆之, 他 : フロモキセフナトリウムによる Acute generalized exanthematous pustulosis. 皮膚臨床 44:405-409(00) ) 南光弘子 : 本邦における有害薬物反応 (ADR) と重症薬疹 過去 5 年間に認定された皮膚障害の概要. 日皮会誌 5:55-6 (005) ) 飯島正文 :Stevens-Johnson 症候群. 最新皮膚科学大系, 第 5 巻, 玉置邦彦, 他編, 中山書店, 東京,pp36-46 (004) 3) 橋本公二 :Stevens-Johnson 症候群 toxic epidermal necrolysis (TEN) と hypersensitivity syndrome の診断基準および治療指針の研究厚生科学特別研究事業平成 7 年度総括研究報告 (005) 4) Kawaguchi M et al: Acute generalized exanthematous pustulosis induced by salazosulfapyridine in a patient with ulcerative colitis. J Dermatol 6: 359-36(999) 5) 小鍛治知子, 他 :Acute generalized exanthematous pustulosis. 臨皮 56:47-5(00) 6) Smith K et al: Do the physical and histologic features and time course in acute generalized exanthematous pustulosis reflect a pattern of cytokine dysregulation? J Cutan Med Surg 7:7-(003) 7) Britschgi M et al: Acute generalized exanthematous pustulosis:a clue to neutrophil-mediated inflammatory processes orchestrated by T cells. Curr Opin Allergy Clin Immunol :35-33(00) 8) 狩野葉子 : 急性汎発性発疹性膿疱症. アレルギー 免疫 4;436-440(007) 0

参考 薬事法第 77 条の 4 の に基づく副作用報告件数 ( 医薬品別 ) 注意事項 ) 薬事法第 77 条の4のの規定に基づき報告があったもののうち 報告の多い推定原因医薬品 ( 原則として上位 0 位 ) を列記したもの 注 ) 件数 とは 報告された副作用の延べ数を集計したもの 例えば 症例で肝障害及び肺障害が報告された場合には 肝障害 件 肺障害 件として集計 また 複数の報告があった場合などでは 重複してカウントしている場合があることから 件数がそのまま症例数にあたらないことに留意 ) 薬事法に基づく副作用報告は 医薬品の副作用によるものと疑われる症例を報告するものであるが 医薬品との因果関係が認められないものや情報不足等により評価できないものも幅広く報告されている 3) 報告件数の順位については 各医薬品の販売量が異なること また使用法 使用頻度 併用医薬品 原疾患 合併症等が症例により異なるため 単純に比較できないことに留意すること 4) 副作用名は 用語の統一のため ICH 国際医薬用語集日本語版 (MedDR A/J)ver. 0.0に収載されている用語 (Preferred Term: 基本語 ) で表示している 年度 副作用名 医薬品名 件数 急性全身性発疹性膿疱症 塩酸テルビナフィンアモキシシリンセファゾリンナトリウム消風散カンデサルタンシレキセチルクラリスロマイシンクロタミトンコンドロイチン硫酸 鉄コロイドサラゾスルファピリジンスルバクタムナトリウム アンピシリンナトリウムエチゾラムセフジニルセフトリアキソンナトリウムドリスタンL フロモキセフナトリウムポリマッククリームランソプラゾールリン酸クリンダマイシンリン酸ジメモルファン塩酸ジルチアゼム塩酸セフカペンピボキシルアジスロマイシン水和物 平成 8 年度 6 4 合計 3

平成 9 年度 急性全身性発疹性膿疱症 非ピリン系感冒剤アセトアミノフェンデムコAローションアモキシシリンアロプリノールアモキサピンエトドラクカルボシステインジクロフェナクナトリウムセファゾリンナトリウムセフジトレンピボキシルセフタジジムイブプロフェンビアペネムピラジナミドブフェキサマクリン酸クリンダマイシン塩酸オロパタジン塩酸ジルチアゼム 合計 4 医薬品の販売名 添付文書の内容等を知りたい時は 独立行政法人医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページの 添付文書情報 から検索することが出来ます (http://www.info.pmda.go.jp/) また 薬の副作用により被害を受けた方への救済制度については 独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページの 健康被害救済制度 に掲載されています (http://www.pmda.go.jp/index.html)

参考 ICH 国際医薬用語集日本語版 (MedDRA/J)ver.. における主な関連用語一覧 日米 EU 医薬品規制調和国際会議 (ICH) において検討され 取りまとめられた ICH 国際医薬用語集 (MedDRA) は 医薬品規制等に使用される医学用語( 副作用 効能 使用目的 医学的状態等 ) についての標準化を図ることを目的としたものであり 平成 6 年 3 月 5 日付薬食安発第 03500 号 薬食審査発第 03503 号厚生労働省医薬食品局安全対策課長 審査管理課長通知 ICH 国際医薬用語集日本語版 (MedDRA/J) の使用について により 薬事法に基づく副作用等報告において その使用を推奨しているところである 下記に PT( 基本語 ) の 急性汎発性発疹性膿疱症 とそれにリンクする LLT( 下層語 ) を示す また MedDRA でコーディングされたデータを検索するために開発された MedDRA 標準検索式 (SMQ) には 重症皮膚副作用 (SMQ) があり これを利用すれば MedDRA でコーディングされたデータから 本症状を含めた皮膚の重篤副作用を包括的に検索することができる ( 急性汎発性発疹性膿疱症 は狭域検索用語) 名称 PT: 基本語 (Preferred Term) 急性汎発性発疹性膿疱症 LLT: 下層語 (Lowest Level Term) AGEP 中毒性膿疱性皮疹 英語名 Acute generalised exanthematous pustulosis AGEP Toxic pustuloderma 3