第2 世代臨界モードPFC 制御IC「FA5590 シリーズ」

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Transcription:

FA5590 Series of 2nd Generation Critical Mode PFC Control ICs 菅原敬人 Takato Sugawara 大和誠 Makoto Owa 手塚伸一 Shinichi Tezuka 電源の消費電力の削減に貢献するため, 第 2 世代の臨界モード PFC(Power Factor Correction) 制御 IC FA5590 シ リーズ を開発した オン幅固定制御方式を採用して待機電力を削減するとともに, 軽負荷時の最大発振周波数を制限する 機能により効率を改善している また, インダクタの電流がゼロになるタイミングを検出する方式を変更してインダクタの 補助巻線を不要にしている そのため, 電源の部品点数が少なくなりコストを削減できる 同時に保護機能の充実, 精度向 上により, 安全性の向上にも貢献できる製品となっている To help reduce power consumption in power supplies, the FA5590 Series of 2nd generation critical mode PFC (power factor correction) control IC has been developed. Standby power is reduced by using a fixed ON-time control system, and efficiency is improved by using function to limit the maximum oscillation frequency during light-load operation. Additionally, the method for detecting when the inductor current becomes zero has been changed to eliminate the need for an auxiliary winding of the inductor. Consequently, the power supply has fewer parts and cost can be reduced. Also, an enhanced protection function and improved accuracy enable these products to contribute to improved safety. まえがき 近年, 電子機器の小型化, 軽量化に伴い, スイッチング 電源が広く普及している スイッチング電源では, コンデ ンサインプット型の整流 平滑回路を採用しているため, 変換に際し大量の電源高調波電流が発生している 電源高 調波電流の増加は, 機器の動作障害や, 力率の低下による 無効電力の増加などの問題を発生させるため, 高調波電流 を一定以下に抑える法的規制が行われている この高調波電流および力率の問題を解決するためには, 力率改善 (PFC:Power Factor Correction) 回路が必要 となる 特に高い力率を出すことができるアクティブフィ ルタ方式の PFC 回路が広く使われるようになってきてい る ⑴ アクティブフィルタ方式の PFC 回路を制御する IC に は, 大電力 (250 W 以上 ) の電源で用いられる連続モー ド PFC 制御 IC と, 小電力で用いられる臨界モード PFC 制御 IC とがある 連続モード PFC 制御は, インダク タの電流がゼロになる前に MOSFET(Metal - Oxide - Semiconductor Field - Effect Transistor) をターンオンさ せるため, ピーク電流を低くできる 小さなインダクタで 大きな電力を取ることができるが, ターンオンのノイズと 損失が大きい 一方, 臨界モード PFC 制御は, インダク タの電流がゼロになることを検出して MOSFET をターン オンさせるため, ターンオンのノイズと損失を小さくでき るが, ピーク電流が高くなる このため, インダクタを大 きくする必要があり, 大電力の電源ではコストアップとな る 富士電機では, 連続モード PFC 制御 IC と臨界モード PFC 制御 IC の両方を製品化している また, 地球環境を守るために, 電気製品全般の省エネル 特集 注 注 2 ギーが重要となってきている EPS,EuP などの電子機器の消費エネルギーを制限する規格が作られ, 年々その規格が厳しくなっている これらの規格では, 待機電力の制限や, 軽負荷を含めた広い負荷領域での最低効率や平均効率に制限がある PFC 回路においても, 待機電力の削減や, 軽負荷での効率の向上が可能な制御 IC が求められている 富士電機では, 第 世代の臨界モード PFC 制御 IC として, FA5500 シリーズ を製品化した ⑵ さらに, 前述の市場要求に応えるため, 待機電力を削減し, 軽負荷時の効率を改善する第 2 世代の臨界モード PFC 制御 IC FA5590 シリーズ の開発を行ったので報告する 2 第 2 世代の臨界 PFC 制御 IC 今回開発した第 2 世代の臨界モード PFC 制御 IC FA5590 シリーズ の外観を図 ₁に示す また, 第 世代の臨界モード PFC 制御 IC FA5500 シリーズ との比較を表 ₁に示す ₂.₁ 特徴前述したように,PFC 回路の待機電力の削減と軽負荷時の効率向上のほかに, 電源のコストダウンや安全性の向上などが求められている 注 EPS: 国際エネルギースタープログラムの外部電源装置 (EP S) 基準 国際エネルギースタープログラムは,OA 機器の省エネルギーのための国際的な環境ラベリング制度 経済産業省と米国環境保護庁の相互承認の下で運営している 注 2 EuP: 環境配慮設計に関する EU( 欧州連合 ) の指令 405( 49 )

I I V AC C V 図 ₁ 第 2 世代臨界モード PFC 制御 IC FA5590 シリーズ の外観 表 ₁ 臨界モード PFC 制御 IC の比較 項 目 FA5590 シリーズ FA5500 シリーズ ( 第 2 世代 ) ( 第 世代 ) 0 mv C 4 3 Cm I 5 0.6 V AP C CPm V m I Pm V m AP CP 2 V VP P F 2.5 V 安定性制御方式電圧制御ピーク電流制御 低待機 入力電圧検出不要要 スタンバイ消費電流 30 µa ma 図 ₂ 概略動作回路 特集406( 50 ) 低コスト高効率 ゼロ電流検出補助巻線 最大発振周波数制限機能 不要要 ありなし () 負荷応答 エラーアンプ最大出力電流 ± 40 µa ± 0 µa V 安全性 過電流検出電圧 0.6 V ± 3.3%.5 V ± 20% ダイナミック過電圧保護機能 ありなし I ソフトスタート機能 ありなし V m V m P m 出力 () これらの要求に応えるため,FA5590 シリーズは次の特徴がある ⑴ 制御方式と電流検出方式の変更従来の FA5500 シリーズのピーク電流制御方式からオン幅固定制御方式に変更することにより, 入力電圧の検出抵抗を不要とし, 部品点数と待機時の消費電力を削減した さらに, インダクタのゼロ電流の検出を IS 端子で行うことにより, 補助巻線とバイパスダイオードが不要になり, 電源システムの低コスト化を可能とした ⑵ 最大発振周波数の制限軽負荷時のスイッチングの最大発振周波数を制限することにより,MOSFET のスイッチング損失を低減し, 平均効率を改善した ⑶ 保護機能の充実従来の FA5500 シリーズのスタティック過電圧保護に加え, ダイナミック過電圧保護機能を追加することにより, 起動時のインダクタの音鳴りをなくした また, 過電流検出の高精度化を行い, 電源の安全性を向上させた ₂.₂ 動作説明 ⑴ 待機電力の削減 ( オン幅固定制御 ) 図 ₃ C m 出力 () 2 3 スイッチング動作における各部波形 この力率制御 IC では, 発振器によらず, 自励発振を利用している 図 ₂に概略動作回路を, 図 ₃にスイッチング動作における各部波形を示す 図 ₃の時刻 t において,MOSFET(Q) がオンすると, インダクタ (L) の電流はゼロから上昇する 同時に IC 内部のランプ発振器の出力 V ramp が RT 端子の抵抗で決まる傾きで上昇する 時刻 t 2 において, ランプ発振器の出力 V ramp とエラーアンプの出力 V comp を PWM コンパレータが比較し, V ramp >V comp で Q はオフし, ランプ発振器の出力は低下する Q がオフすると,L の電圧は反転し,D を通して出力側へ電流を供給しながら,L の電流は減少する 時刻 t 3 において,L の電流を IS 端子で検出し, 電流がゼロになるタイミングをコンパレータで検出する RTZC 端子の抵抗で決まる遅延時間の後に Q がオンし, 次のス

特集407( 5 ) イッチングサイクル t に移行する この動作の繰返しにより,IC は臨界動作する 上述のスイッチング動作において,PFC 回路の負荷が一定の場合,V comp は一定となり, オン幅は一定になる このとき, インダクタのピーク電流は⑴ 式で与えられる I V = t ⑴ L I max :L のピーク電流 V in : 入力電圧 L:L のインダクタンス値 t on : オン幅 ⑴ 式において,L,t on は一定のため,L のピーク電流は V in に比例する その波形は入力電圧と同じ AC 波形となる この動作により力率改善が可能となる この制御方式は, 一般にオン幅固定制御と呼ばれている 従来のピーク電流制御では, 入力電圧を検出する必要があるため, 待機時に入力電圧検出抵抗によって,⑵ 式に示す電力が消費されていた 一方, オン幅固定制御では, 入力電圧を検出する必要がないので, この電力が削減できる P = R V ⑵ P loss : 入力電圧検出抵抗での損失 V in : 入力電圧 R vin : 入力電圧検出抵抗値 従来の FA5500 シリーズの評価用ボードの場合,⑵ 式に 基づいて計算すると, 損失は入力電圧 230 V で 77 mw となる EPS や EuP などの待機電力の規格には,20 年度以降, 電子機器の待機時の消費電力を 500 mw 以下にしなければならないという規定がある 規定の上限である 500 mw の 5% に相当する 77 mw が削減でき大きな効果が期待できる ⑵ 軽負荷時の効率改善臨界動作の PFC 回路は, 軽負荷時にスイッチング周波数が増加し,MOSFET のスイッチング損失が増え, 効率が低下するという問題がある 第 2 世代の FA5590 シリーズは, 最大発振周波数を制限する機能によって軽負荷時における周波数の上昇を抑制し,MOSFET の損失を低減し て効率を改善している 図 ₄に, 最大発振周波数動作の波形を示す スイッチング周波数が最大発振周波数 F max 以下の場合,IC はインダクタ電流がゼロになるタイミングを検出し,RTZC 端子で決まる遅延時間 t ZCD の後に MOSFET をターンオンさせる スイッチング周波数が F max で制限される軽負荷時の場合, インダクタ電流がゼロになるタイミングを検出しても, t ZCD の後にターンオンせず, t=/f max の周期でターンオンする 効率と力率はトレードオフの関係がある そこで, 電源設計者は,F max を RT 端子の抵抗で調整して, 電源の要求仕様に合わせて力率 - 効率の設定を行えるようにしている 図 ₅に,00 W 定格の電源で比較した FA5500 シリーズと FA5590 シリーズの軽負荷時の効率を示す FA5590 シリーズは,FA5500 シリーズと比較して,20% 負荷で効率が 3 ポイント上昇している また,20% から00% までの平均効率では ポイント上昇している EPS,EuP の効率に関する規格には, 最低効率を規定するものと, 平均効率を規定するものがある どちらの規格に対しても FA5590 シリーズを使用すると, 軽負荷時の効率改善により効率アップの効果が得られている ⑶ 電源システムの部品点数削減に貢献 効率 () 図 ₅ 96 94 92 90 6 0 FA5590 シリーズ FA5500 シリーズ 入力電圧 230 V 0 20 30 40 50 60 出力電力 () FA5500 シリーズ と FA5590 シリーズ の軽負荷 時の効率比較 バイ スダイ ード インダクタ電流 F の V I F 入力電圧 検出 V 90 264 V 削減インダクタ VCC F CP C I 削減 圧ダイ ード 削減 F m 図 ₄ 最大発振周波数動作の波形 図 ₆ FA5590 シリーズ を使用することにより FA5500 シリーズ から削減できる電源部品

特集408( 52 ) 第 2 世代の FA5590 シリーズは,FA5500 シリーズに比べて, 周辺部品を大幅に削減し, 電源のコストダウンを実現できる IC となっている 図 ₆ に,FA5590 シリーズを使用することにより,FA5500 シリーズから削減できる電源部品を示し, 次に概略を説明する 第 2 世代の FA5590 シリーズは, オン幅固定制御方式を用いるので,FA5500 シリーズで必要であった入力電圧検出抵抗が不要になっている それに伴い, 高い入力電圧が印加するパターンを引き回さなくてよいため, 電源基板の設計が容易となる 従来の FA5500 シリーズでは, インダクタの電流がゼロになるタイミングをインダクタの補助巻線の電圧で検出していた FA5590 シリーズでは,IS 端子を従来のプラス検出からマイナス検出へ変更することで, L の電流がゼロになるタイミングを IS 端子で検出している これによりインダクタの補助巻線が不要になる 補助巻線がないので, 部品のコスト削減だけではなく, 補助巻線を巻く工程が削減でき, 電源製造工程 の短納期化にも貢献する PFC 回路は, 非絶縁の昇圧回路であるため, 入力電圧投入時に, 出力の電解コンデンサへのチャージ電流が流れる この電流は通常動作時の電流より十倍以上大きい電流 ( ラッシュ電流 ) である 従来の FA5500 シリーズは,IS 端子がプラス検出のため,MOSFET がオフしているときに L の電流を検出できず, このチャージ電流発生時にスイッチングしてしまい, 昇圧ダイオードが破壊してしまう これを避けるため,FA5500 シリーズを使用した電源では, 入力と出力をバイパスするダイオードが挿入されている 前述のとおり,FA5590 シリーズは IS 端子がマイナス検出であるため, このチャージ電流が流れている間,MOSFET をターンオンさせないことが可能である これにより, 昇圧ダイオードの破壊を防ぐことができ, 従来必要だった入力と出力をバイパスするダイオードを削減できる ン (%) 00 0 ダイナミック過電圧保護 スタ ック過電圧保護 F 電圧 ( V V ) F.09.05 り発 スタ ック過電圧保護動作ダイナミック過電圧保護なし りなし ダイナミック過電圧保護あり (2.5 V).05.09 F 電圧 ( V V ) F PFC 回路起動 時 図 ₇ 過電圧保護動作 図 ₈ PFC 回路起動時動作 5 264 V 0 3 F0 6.3 A 02 50 0 50 C0 0.4 µ 03 50 0 0 C02 000 02 C03 000 C04 0.4 µ 0 600 V25 A C05 0 2200 522 C06 2200 C20 µ A902 204 205µ F250 20 209 4 203 20 0.06 9526P 25 20 620 2 620 29 6 26 620 C202 220 µ 2 60 V20 390 V 200 20 4 20 6 C206 0.5 µ C205 0. µ 20 22 IC20 F VCC CP 20 50 C20 000 C209 0. µ 24 00 C2 56 µ C22 0.0 µ 2 5 C20 0.0 µ 22 20 C I FA5590 C20 2200 23 205 4 VCC 2 202 図 ₉ 応用回路例

これらのことにより,FA5590 シリーズは FA5500 シリーズと比較して, 電源の部品や製造工程を削減し, 電源のコストダウンを実現できる IC となっている 特⑷ 安全性の向上 ( ダイナミック過電圧保護 ) 集従来の FA5500 シリーズには, 起動時や負荷急変時などに出力が一定電圧以上に上昇すると, スイッチングを停止して出力電解コンデンサが耐圧破壊を防ぐスタティック過電圧保護機能を搭載している しかし, スイッチングを急に停止すると, インダクタ電流が急変して, 音鳴りが発生する そこで,FA5590 シリーズでは, 図 ₇ に示すように, 従来のスタティック過電圧保護機能に加え,FB 端子電圧が 2.5 V を超えると, オン幅を過電圧に比例して狭くするダイナミック過電圧保護機能の二つの過電圧保護機能を搭載している 通常,FB 端子は, エラーアンプの基準電圧とほぼ同じ 2.5 V で動作している 起動時または負荷急変時に出力電圧が上昇し,FB 端子の電圧が 2.5 V を超えると, 最初にダイナミック過電圧保護機能によりオン幅が狭くなり, 出力電圧の上昇を防ぐ それでも出力電圧が上昇すると, スタティック過電圧保護によりスイッチングを停止する 出力電圧が一定電圧以下に戻ると, スイッチングを再開する 図 ₈ に, ダイナミック過電圧保護の有無による PFC 回路起動時の動作の違いを示す ダイナミック過電圧保護機能があると, オン幅を過電圧に比例して狭くし, インダク.0 0.9 FA5500 ( 入力電圧 00 V) FA5590 ( 入力電圧 00 V) 0. FA5500( 入力電圧 230 V) FA5590( 入力電圧 230 V) 0. 0 50 00 50 200 出力電力 () 図 ₁₀ 応用回路での力率特性比較 409( 53 ) 力率 タ電流は出力電圧の上昇に伴って徐々に減少する インダ クタの電流の急変がないため, 音鳴りはしない また,FA5590 シリーズでは, 上述の過電圧保護機能 のほかに,MOSFET の過電流保護検出の精度向上,⑵ で 述べた最大発振周波数を制限する機能により, 異常時に MOSFET の高速スイッチングを防止する機能,⑶ で述べ たラッシュ電流発生時に MOSFET をスイッチングさせな い機能などの電源部品の破壊を防ぐ機能により, 電源の安 全性の向上を行っている 3 応用回路例 図 ₉ に, 応用回路例 ( 入力 85 264 V, 出力 390 V, 200 W) を示す 図 ₁0 に同回路で測定した力率特性比較を, 図 ₁ に第 2 世代の FA5590 シリーズの高調波電流特性を 示す 力率特性は, ワールドワイドな入力電圧 00 V と 230 V の定格負荷で, 一般的な電子機器に求められる力率 0.95 以上を維持できている 高調波電流特性は, 電子機器に必要な IEC 6000-3 - 2 クラス D の規格を満足している 4 あとがき 電源の待機電力の削減, 軽負荷時の効率改善, コスト 削減, 安全性の向上を実現できる第 2 世代の臨界モード PFC 制御 IC FA5590 シリーズ について紹介した 今 後も, さまざまな市場要求に合わせた機能を持つ系列化を 行うとともに, 年々厳しくなる規格 市場要求に応える開 発を行っていく所存である 参考文献 ⑴ 鹿島雅人ほか. 電流連続モード PFC 回路用電源 IC FA5550/555 シリーズ. 富士時報. 2007, vol.80, no.6, p.44-444. ⑵ 鹿島雅人, 城山博伸. CMOS 力率制御用電源 IC. 富士時報. 200, vol.74, no.0, p.55-553. 0 AC00 V 入力 200 出力 高調波電流 (A) 0. 0.0 0.00 IC600032 クラス の 3 5 5 25 35 39 数 菅原敬人 スイッチング電源制御 IC の開発に従事 現在, 富 士電機システムズ株式会社半導体事業本部半導体 統括部ディスクリート IC 技術部 図 ₁₁ 応用回路での FA5590 シリーズ の高調波電流特性

特集40( 54 ) 第 2 世代臨界モード PFC 制御 IC FA5590 シリーズ 大和誠スイッチング電源制御 IC の開発に従事 現在, 富士電機システムズ株式会社半導体事業本部半導体統括部ディスクリート IC 技術部主査 手塚伸一スイッチング電源制御 IC の開発に従事 現在, 富士電機システムズ株式会社半導体事業本部半導体統括部ディスクリート IC 技術部

* に されている および は, それぞれの が する または である があります