三国間取引の実務とその注意点 ~ 中国 ASEAN の生産拠点を見据えて ~ 2014 年 2 月版 芳賀淳 1
目次 1. 三国間取引とは? 2. 輸送時の留意事項 3. 三国間取引 ( 仲介貿易 ) とFTA 4. 質疑応答 2
1-1 三国間取引 ( 仲介貿易 ) とは 仲介者 (SP) 出発地 (TH) 仕入先物流 ( 直送 ) 到着地 (ID) 仕向先 1. 仲介者は物流と書類に細心の注意を 特に仕入先への事前連絡を早く ( 支払いも早く ) 2. 原産地証明 (C/O) が必要な場合もある :FTA 3. Forwarderのコントロールが重要 4. 安全保障貿易管理にも留意 ( 今回割愛 ) 3
1-2 仲介者の心配事 1. 仕入先と仕向先情報は秘密にしたい 2. 仕入れ価格と販売価格は秘密にしたい 1. 航空便で貨物と一緒に仕入先作成の Invoice が送られて仕入れ価格がばれた 2. ASEAN 発給の C/O(Form-D) には FOB 価格記載が義務付けられている 3. 仕入先との契約が CIF だったため 送られた保険証券から仕向先に仕入価格がばれた 4
1-3 建値と留意事項 例仕入先 仲介仲介 仕向先備考 1 EXW, FOB/FCA CFR/CPT, CIF/CIP, DDU, DDP 原則 ( 仲介者が配船権保有 仕入先の保険不可 ) 2 FOB FOB 最終顧客が配船権保有 3 CIF CIF CIF 110%, 輸出者名記載 4 CFR CIF 配船権持たず 何が問題か? 5
1-4 三国間取引での輸送方法 1. 海上輸送 ( 船 ): 通常 2. 航空輸送 ( 航空機 ): 通常 3. 国際クーリエ : 不可 ( 業者によって可能?) 4. 郵便 (EMS): 不可 6
2-1 海上輸送での留意事項 仲介者 船会社 仕入先 B/L:Consignee と Notify Party を仲介者 Switch B/L:Consignee と Notify Party を仕向先に変更 1. 書類 :Invoice, P/L, B/L or SWB, ( 保険証券 ) 2. 貨物船積後に書類書き換え :Invoice, P/L, は仲介者が変更可能 3. B/L は 仕入先には Consignee と Notify Party を仲介者にするよう指示する 4. 出港後に B/L 原本 3 通を Switch する Shipper を仲介者 Consignee と Notify Party を仕向先に変更する 5. 船社選択は仲介者にとって非常に重要 ( 自社が配船権を持つ建値を選ぶ ) 仕入先に配船権を与えない 7
2-2 FCR(Forwarder s Cargo Receipt) 1. フォワーダーが船積のために貨物を受け取ったことを証明する受領書 (B/L にも貨物受領書の性格あり ) 2. Switch B/L のタイムラグを解消する手段として有効 3. B/L との違い 1) 有価証券でない 2) 貨物の引渡請求権がない 3) 運送契約の成立を示す書類でない 8
2-3 海上輸送での留意事項 (FCR 活用 ) 仲介者 船会社 仕入先 Forwarder が FCR を発行 仕入先は仲介者との決済に利用 B/L:Shipper を仲介者 Consignee と Notify Party を仕向先として発行 1. 仲介業者のForwarderが仕入先港で船積後にFCRを仕入先に発行する 2. 仕入先はFCRを仲介者との決済に使用する 3. 仲介者のForwarderが輸出港で船積みを行うので 営業情報の秘密保持が可能となる 4. B/Lは Shipperを仲介者 ConsigneeとNotify Partyを仕向先でただちに発行できる 5. B/Lのスイッチ作業が不要となるため 仕向地での貨物引き取りを迅速に行うことが可能となる 6. 詳細はJIFFA やさしいJIFFA FCRの手引き 参照方 9
2-4 航空輸送での留意事項 1. 輸出通関用 Invoice(Shipper: 仕入先 Consignee: 仲介者 Freight:Collect) 2. 輸出通関用 Invoice= 仲介者の仕入価格 仲介者 1. 貨物と一緒に運ばれる Invoice (Shipper: 仲介者 Consignee: 仕向先 Freight: Prepaid) 2. 貨物と運ばれる Invoice= 仲介者の販売価格 仕入先 貨物と Invoice 仕向先 1. 書類 :Invoice, P/L, AWB, ( 保険証券 ) 2. Invoice は貨物と一緒に運ばれる ( 原則 ) 3. 輸出通関用 Invoice と貨物と一緒に運ばれる Invoice を分ける ( 差し替える ) 通関業者にその指示ができるか (Shipper: 仕入先 or 仲介者 Consignee: 仲介者 or 仕向先 Freight:Collect or Prepaid) 4. 輸出通関用 Invoice= 仲介者の仕入価格 貨物と運ばれる Invoice= 仲介者の販売価格 5. 2 種類の Invoice をきちんと区別するよう Forwarder 航空貨物業者に指示できるか ( 建値が重要 =FOB/FCA では弱い ) 航空会社 ( 便 ) の指名権を自社が保有する 10
2-5 貨物保険の罠 仕入先 CIF 厳禁 80 仲介者 100 仕向先 1. 保険証券には CIF 110% が記載される 2. 仕入価格 80 販売価格 100 の時 もし仕入先と CIF で契約したら価格 88 が記載された保険証券が仕向先の手に渡る 仕入先情報と価格が仕向先に分かってしまう 3. 万が一事故があった場合には 88 しか補償されない ( 本来は 110 である ) 4. 二重の保険申込は不可 ( 事故時に求償できないリスク ) 5. 絶対に仕入先が保険をかけるような契約にはしない 11
3-1 仲介貿易で FTA を活用する 1. 2013 年 7 月 1 日現在 世界には 252 の FTA 存在 2. ASEAN は世界各国 地域と FTA を締結 ( 域内は ATIGA, 日本とは AJCEP, 中国とは ACFTA, 韓国とは AKFTA, インドとは AIFTA, 等 ) 3. ASEAN 発給の原産地証明書には FOB 価格の記載が義務付けられている (Form-D) 4. ただし 2014 年 1 月 1 日から原産地基準の認識によって FOB 価格記載を免除 次頁 5. 日本発給の原産地証明書 ( 商工会議所が発給 ) には価格記載必要なし 12
3-2 ASEAN FOB 価格記載免除 1. 2014 年 1 月 1 日発給の C/O から実施 (CA, MM 除 ) 2. 原産地基準に完全生産基準 (WO), 関税番号変更基準 (CTC), 加工工程基準を用いる場合 価格記載する必要は無い ( 要するに RBV 以外の基準 ) 3. RVC(FOB40% 付加価値基準 ) の場合でも 仲介者が ASEAN 国所在の場合は 仲介国に一旦輸入して (FTZ 止めでも OK), Back to Back Form-D を仲介国政府機関 ( 税関など ) に発行してもらえば ( 切り替えた )Form-D 上は仲介者自身の売値 FOB 表示となり 仕入れ価格が客先に知られる心配なし 13
3-3 ASEAN Back to Back C/O の注意 原産国 C/O 経由国 Back to back C/O 他締結国 1. 対象となる産品が何も加工されず元の原産資格を維持していること 2. 前項が満たされれば 経由締結国から C/O が発給される ただし本来原産国からの C/O が発給されていることが前提条件 3. 積送基準 : 第三国を経由する場合 積替えまたは一時蔵置きのために 積卸しおよび良好な状態に保存するために必要な作業以外の作業がされないこと 14
3-4 ACFTA における仲介貿易制度 中国 C/O Singapore 70 100 MC タイ 1. AFTA における Back to Back C/O と同様の制度は ACFTA では Movement Certificate(MC= 移動証明書 ) と呼ぶ 通常の仲介貿易は Re-invoice あるいは Third party invoicing として規定される 2. ASEAN の第 3 国経由での仲介貿易が可能 3. 書類様式は Form-E 4. 中国から ASEAN への供給 あるいは逆ルートによる仲介貿易で関税削減可 5. 上記図は 中国からシンガポール経由で MC した場合 シンガポールの物流拠点としての特性を活用 ( タイの発注に応じた出荷を行う シンガポールでは中国発行のオリジナル C/O を基に発給する ) 15
4-1 質疑応答 ( 例 ) Q1. 書類の不備や連絡の不徹底を避けるには? A1. 配船権を握り Forwarder への指示を書面で (S/I=Shipping Instruction) 行う Q2. 仲介した挙句の果て 輸出者と輸入者が直接取引してしまうリスクを避けるには? A2. 最低限 船積書類から輸出者や仕入れ価格が分からないようにするべき OEM 供給などの場合は 製品銘版 (Serial number や Producer 表示にも注意 ) 16
4-2 質疑応答 ( 例 ) Q3. 仲介貿易で仲介者が仕入先 仕向先共に FOB 契約した場合の保険の掛け方 A3. 特に規則はなし 事故時の保険求償を考えると運賃を負担する側が手配するのが妥当では? Q4. 三国間取引を許可していない国はあるか? A4. 特に聞いたことはないが 安全保障貿易管理面で制限をかけられる取引もあり ( 日本を含む ) キャッチオール規制 インフォーム要件など経済産業省の関連サイトを事前に確認 17