2 次 1 12/17 パーム油産業に潜む調達リスク アブラヤシ農園開発の違法性と環境 労働問題 中司 喬之 熱帯林 動ネットワーク (JATAN) インドネシアにおけるアブラヤシ農園開発の概要 農園労働者の状況 泥炭地域の開発 3 インドネシアにおけるアブラヤシ農園開発 4 インドネシアにおけるアブラヤシ農園開発 主要 産国におけるパーム油 産量の推移 25000 20000 15000 10000 5000 0 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006 インドネシア マレーシア インドネシアは2006 年にマレーシアを追い抜き世界最 の 産国に パーム油 産量 :293 万 t アブラヤシ農園 積 : 約 1,090 万 ha(2014 年現在 ) 世界のパーム油 産量の86% をインドネシアとマレーシアが占める 地域別アブラヤシ農園 積 (2014) リアウ ( スマトラ ) 229 万 ha 1,090 万 ha 北スマトラ 139 万 ha 中央カリマンタン 115 万 ha リアウ 北スマトラ 中央カリマンタン 南スマトラ カリマンタン 東カリマンタン ジャンビ その他 農園管理主体の割合 (2014) 国営企業 75 万 ha スモールホルダー 455 万 ha 間企業 間企業 566 万 ha 国営企業 間企業スモールホルダー Kementerian Perkebunan, Direktorat Jenderal Perkebunan 2014 1
5 アブラヤシ農園開発による影響 6 農園労働者の状況 アブラヤシ農園開発はインドネシア マレーシアにおける森林減少の最も きな原因 インドネシアでは 2001 2013 年の間に約 1,600 万ヘクタールの森林が消失 (Global Forest Watch) インドネシアには約 2250 2,250 万ヘクタールの泥炭地域があり 地利 転換 (LULUCF) による排出を含めれば世界第三位の温室効果ガス排出国となる ( 世界銀 ) 2013 年には153 件の 地紛争が報告されており 2014 年現在でどの事例も解決していない ( インドネシア先住 ネットワーク :AMAN) 7 雇い労働者 (Buruh Harian Lepas) 8 雇い労働者の実態 農園管理主体の割合 (2014) 間企業 566 万 ha 国営企業 間企業スモールホルダー アブラヤシ農園の約 5 割が 間企業の管理下 農園労働者 700 万 のうち約 7 割が 雇い労働者 (Sawit Watch) 企業との正式な契約を結んでおらず ヶ に 21 以下の労働 ( 雇 に関する法律 2003 年第 13 号 ) 雇い労働者の多くは 移住政策 (Transmigrasi) により移住してきた 々 家族連れである場合も 電気の利 は朝 4~6 時に制限 朝 6 時半には作業場に到着 労働者のコントロール 作業の効率化のためにブロックごとの作業 いノルマ 作業監督 (Mandor) による監視 ( 労働者 20~25 に ) ノルマを達成するため残業 家族による 伝い 罰則規定 (Denda) 罰則の例果房を所定の位置に置かなかった場合成熟した果房を収穫しなかった場合成熟していない果房を収穫した場合葉が完全に切り落とされていない場合ノルマや決められた労働時間を満たさなかった場合 罰 果房ごとに5,000Rp 果房ごとに 5,000Rp 果房ごとに5,000Rp 葉ごとに1,000Rp 分に相当する給料分 2
9 雇い労働者の実態 北スマトラ州の最低賃 (Upah Minimum Kota/Kabupaten:UMK) は 1,500,000Rpであるが 天引き分を考慮すると平均 500,000Rp 程度 給料について規定された法律があるが実態と異なる (2012 年労働省規則第 17 号 ) 福利厚 費は本来企業の負担であるが 福利厚 に関する 援 (Mandi Cuci Kakus:MCK) が われていない (Makan Buayaの事例 ) 農園内からでは市場にアクセスすることが難しい 労働者を農園経済に依存させるシステム ( クレジットや給料からの天引きなど ) 三ヶ 以上継続して 21 以上労働した場合 固定労働者 (Buruh Tetap) となるが 実際には対応していない企業が多い 農園内には 学校のみで義務教育 ( 中学校 ) が保障されていない 結社の 由 (Freedom of Association) は法律で保障されているが 企業からの圧 により困難 10 農園労働者の権利改善を求める活動 規模農園企業に対する要望 1. 労働者の地位 場の向上のため労働システムを改 する 2. 労働者の最低賃 を保証する 3. 3ヶ 以上従事した 雇労働者を法律に基づき固定労働者 (buruh tetap) とする インドネシア政府への要望 1. 労働者に関する規則を設け アブラヤシ農園での労働状況を改善する 2. 雇労働者の固定労働者への昇格拒否 労働安全衛 (K3) 規則の不在といった法律の要求事項に違反する企業の取締り 3. 児童労働を使 している企業の取締り 11 12 泥炭地域におけるアブラヤシ農園開発 RSPO 総会における労働者の権利改善を要求するデモ (2013.11) 泥炭地域に掘削された 路 (2014.9) 3
13 泥炭湿地 (Peatland) とは 14 泥炭地域保護に関する規定 2011 年 統領令第 10 号 ( モラトリアム ) 原 林地域 (primary forest) と泥炭地域 (peatland) での新たな開発許可の発 を 時凍結 2013 年 5 さらに 年間の延期半年に 度 新たな開発許可の発 の 時凍結となる地域を した地図 (Peta Indikatif Penundaan Izin Baru:PIPIB) を改定 泥炭地域を保護する法律 (1990 年 統領令第 32 号 2008 年政府規則第 26 号 2009 年農業省規則第 14 号 ) ( 写真 : 内 道夫 ) 植物が分解されずに堆積してできた の森 15 減少を続ける泥炭地域 16 ブミタマ アグリ社の事例 改定 更新 積 (ha) ー 2011.06 No.SK.323/Munhut-II/2011 69,114,073 第 1 回 2011.11 No.SK.7416/Menhut-VII/IPSDH/2011 65,374,252 第 2 回 2012.05 No.SK.2771/Menhut-VII/IPSDH/2012 65,281,892 第 3 回 2012.11 No.SK.6315//Menhut- 65,796,237 VII/IPSDH/2012 / 第 4 回 2013.05 No.SK.2796/Menhut-VII/IPSDH/2013 64,677,030 第 5 回 2013.11 No.SK.6018/Menhut-VII/IPSDH/2013 64,701,287 第 6 回 2014.0505 No.SK.3706/Menhut-VII/IPSDH/2014 64,125,478 478 泥炭地域 コンセッション 泥炭地域 コンセッション 泥炭地域の 積は地図上で減少を続けている Kementerian Kehutanan 第 4 回改定 No.SK.2796/Menhut-VII/IPSDH/2013(2013/5) 第 5 回改定 No.SK.6018/Menhut-VII/IPSDH/2013(2013/11) 2013 年 11 以降 地図上においてコンセッション内の泥炭地域が消失! 4
17 18 ブミタマ アグリ社の事例 統領令が出された後に モラトリアム地図に含まれている泥炭地域に開発許可を与えた県知事の違反でもある pelanggaran yang dl dilakukan k oleh Bupati Kotawaringin Barat yang memberikan izin di wilayah gambut dan Taman Nasional Tanjung Puting yang masuk dalam PIPIB setelah inpres diterbitkan. Arie, WALHI 泥炭地域 (~2013.05) 国 公園 撮影場所 泥炭地域 (~2013.11) 2014 年 5 ドイツの Deutsche 銀 がブミタマ アグリ社に対する融資を停 http://us6.campaign- archive2.com/?u=ca4ff3016df790ab4c04c0ddd&id=ffc1e03770&ecom/?u=ca4ff3016df790ab4c04c0ddd&id=ffc1e03770&e =717ee21be2 GreenPeace(2013/11/13) 19 適切な法執 の事例 20 トリパ泥炭地域におけるアブラヤシ農園開発 スマトラ島アチェ州 ルーサー 態系地域 (260 万 ha) スマトラの固有種 ( サイ トラ ゾウ オランウータンウ ) の 息地域 2008 年 国家戦略地域 (National Strategic Area) に指定 トリパ泥炭地域 (61,000ha) 2011 年 8 当時のアチェ州知事 (Irwandi Yusuf) がカリスタ アラム社に対して1,605ヘクタールの開発事業許可を発 5
21 カリスタ アラム社による違法 為 22 カリスタ アラム社による違法 為 現地 NGO(WALHIアチェ Sumatran Orangutan Conservation Program: SCOP Yayasan Ekosistem Lembaga) は企業に対する開発事業権の付与 企業によるこの地域での操業はいくつかの法令に違反していると主張 カリスタ アラム社による泥炭地域での開発 泥炭地域における新規農園開発許可の発 (2011 年 統領令第 10 号 ) 開発許可の取得に先 つ操業開始 (2004 年農園法第 18 号 ) れによる開墾 (2009 年環境保護法第 32 号 ) 泥炭地域の破壊 (1990 年 統領令第 32 号 2008 年政府規則第 26 号 2009 年農業省規則第 14 号 ) 2012 年 4 3 WALHIアチェがカリスタ アラム社に提訴 2012 年 7 環境省 UKP4( 開発監視 管理タスクフォース ) による現地調査 アブラヤシ農園に転換するための意図的な れが われた可能性あり 2012 年 8 30 カリスタ アラム社の開発事業件を剥奪する判決現アチェ州知事 (Zaini Abdullah) が開発事業権を剥奪 環境破壊による罰 (1,143143 億 Rp) と 態系回復にかかる費 (2,517 億 Rp) の 払い 経営者への禁固刑 (3 年 ) 適切に法執 が われた歴史的な判決 23 総括 えないところで問題が起きている可能性がある ( 農園の中での労働問題 ) パーム油の 産現場では現在でも児童労働を含む労働問題や泥炭地開発 違法操業など問題が られる 企業の調達 投融資の際にはリスク評価の実施が必要 6