2 畑地土壌の診断基準 21 陽イオン交換容量 (CEC) 塩基飽和度 塩基バランスについて Na+ H+ Na+ Ca++ 1 陽イオン交換容量 : 土壌中の粘土 腐植等の コロイドは電気的に () に帯電している H+ Ca++ 陽イオン交換容量とはこの () の帯電量を 示し 単位は me( ミリク ラム当量の略 ) である K+ 2 塩基飽和度 : 土壌中のコロイドは () に帯電 土壌コロイド していることから (+) に帯電している Ca K+ Ca++ Mg K H Na 等と電気的に結合して Mg++ Ca++ を言う 3 いる 塩基飽和度とは このうち Ca Mg K の合計が () の荷電を埋めている割合 塩基バランス :Ca Mg Kの各々が( ) Mg++ Ca++ の荷電を埋めている割合の比率で meで表 示した量の比率に等しい 4 計算例 陽イオン交換交換性塩基 一般に塩基は酸化物で表示することになっている Ca は 容量 (me) CaO MgO K2O CaO となり 1me は式量 56.08 を原子価 2 で除した 15.6 146.0 46.7 69.5 値 すなわち 28.04mg に相当する 同様に MgO1 meは20.15mgに K2 O1meは47.1mgに 相当する この分析例の場合 CaOは146.0/28.04 5.2(me ) MgOは46.7/20.15 20.15=2.3(me ) K2Oは 69.5/47.1 1.5(me) となる この値を基に 塩基飽和度は5.2+2.3+1.5/15.6 0 57.7(% ) 石 灰 / 苦土は 5.2/2.3 2.3 苦土 / 加里は 2.3/1.5 1.5 となる 30
処方箋の作成事例 ア. 土壌塩基の分析結果土壌 0g 当たり 石灰 (CaO) 336 mg 苦土 (MgO) 120 加里 (K2O ) 20 陽イオン交換容量 40 me イ. 土壌の改良目標石灰飽和度 50%( 土壌 0g 当たりCaO 560mg) 苦土飽和度 20%( 土壌 0g 当たりMgO 160mg) 加里飽和度 2%( 土壌 0g 当たりK2 O 38mg) ウ. 塩基施用量の算出 石灰 (CaO)560336=224mg/0g 施用量 苦土 (MgO)160120= 40mg 加里 (K2O) 38 20= 18mg 苦土石灰 CaO 32% MgO 15% 資材の保証成分 炭酸石灰 CaO 53% 硫酸加里 K2O 50% ( ア ) 苦土施用量 ( 土壌 0g 当たり ) 石灰よりも先に計算する 必要な苦土石灰量は 40 0/15=267mg となる ( イ ) 石灰施用量 ( 土壌 0g 当たり ) ( ア ) で算出した量の苦土石灰に含まれる石灰量は 267 32/0=85mg である 石灰施用量は224mgであるから 苦土石灰で足らない分 22485=139g を炭酸石 灰で施用することになる したがって 炭酸石灰 ( 土壌 0g 当たり ) は 139 0/53 262mg となる ( ウ ) 加里施用量 ( 土壌 0g 当たり ) 硫酸加里は 18 0/50= 36mg が必要となる mg/0g=kg/0tであり 仮比重が1.0で耕深 cmと仮定するとaの土量は 3 0.1m 00m2 (=0m ) 1.0=0t であるから 実際の土壌の仮比重 0.7 耕深 15cmであればaの土量は 0.15m 00m2 0.7=5t である 以上からこの例の必要量 mg/0g 1.05= 実際の施用量 kg/aと換算することができる したがって実際の施用量は 苦土石灰 267kg 1.05 280kg 炭酸石灰 262kg 1.05 275kg 硫酸加里 36kg 1.05 38kg となる 31
22 畑土壌の診断基準 土壌の多湿褐色低地土灰色低地土岩屑土黒ポク土黄色土性質黒ポク土細粒質中粗粒質細粒質中粗粒質 作土の 2025 2025 2530 2025 2025 2530 2025 2530 厚さ (cm) すき床の 18 以下 18 以下 18 以下 18 以下 18 以下 15 以下 18 以下 15 以下 ち密度 (mm) 粗孔隙 以上 15 以上 15 以上 以上 以上 15 以上 以上 15 以上 (Vol%) 地下水位 50 以上 60 以上 60 以上 60 以上 60 以上 50 以上 60 以上 50 以上 (cm) ph(h20) 66.5 66.5 66.5 66.5 66.5 66.5 66.5 66.5 ph(kcl) 5.56 5.56 5.56 5.56 5.56 5.56 5.56 5.56 陽イオン交換 23 25 32 18 15 12 8 容量 (me) CaO 43 60 43 60 43 60 43 60 43 60 43 60 43 60 43 60 excao 277386 300420 385538 216302 180250 120168 145200 96135 MgO 14 20 14 20 14 20 14 20 14 20 14 20 14 20 14 20 exmgo 64 92 700 90128 50 72 42 60 28 40 34 48 23 32 ( mg /0g) K2O 3 6 3 6 3 6 3 6 3 6 4 6 3 6 4 6 exk2o 3366 3570 4590 2550 2143 1928 17 34 15 23 塩基 6086 6086 6086 6086 6086 6186 6086 6186 CaO/MgO 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 比 ( 当量 ) MgO/K2O 2.36.7 2.36.7 2.36.7 2.36.7 2.36.7 2.35.0 2.36.7 2.35.0 比 ( 当量 ) 可給態り 20 80 200 20l00 20 80 20 80 20 80 20 80 20 80 ん酸 可給態窒 3 以上 8 以上 8 以上 3 以上 5 以上 3 以上 5 以上 3 以上 素 腐植含有 3 以上 4 以上 3.5 以上 2.5 以上 4 以上 3 以上 量 (%) 三 固相 50 以下 40 以下 40 以下 50 以下 50 以下 40 以下 50 以下 40 以下 相 液相 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 分 気相 20 以上 30 以上 30 以上 20 以上 20 以上 30 以上 20 以上 30 以上 布 (%) 32
23 施設土壌の診断基準 土壌の多湿褐色低地土灰色低地土岩屑土黒ポク土黄色土性質黒ポク土細粒質中粗粒質細粒質中粗粒質 作土の 2025 2025 2530 2025 2025 2530 2025 2530 厚さ (cm) すき床の 18 以下 18 以下 18 以下 18 以下 18 以下 15 以下 18 以下 15 以下 ち密度 (mm) 粗孔隙 以上 15 以上 15 以上 以上 以上 15 以上 以上 15 以上 (Vol%) 地下水位 50 以上 60 以上 60 以上 60 以上 60 以上 50 以上 60 以上 50 以上 (cm) ph(h20) 66.5 66.5 66.5 66.5 66.5 66.5 66.5 66.5 ph(kcl) 5.56 5.56 5.56 5.56 5.56 5.56 5.56 5.56 陽イオン交換 23 25 32 18 15 12 8 容量 (me) CaO 53 70 53 70 53 70 53 70 53 70 50 84 53 70 50 84 excao 341449 370488 475625 267351 223290 140234 178232 112188 MgO 14 23 14 23 14 23 14 23 14 23 16 28 14 23 16 28 exmgo 647 70116 90149 50 84 42 70 33 56 34 56 27 45 ( mg /0g) K2O 3 7 3 7 3 7 3 7 3 7 3 7 3 7 4 9 exk2o 3377 3582 455 2558 2150 2239 17 40 17 32 塩基 700 700 700 700 700 70120 700 70120 CaO/MgO 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 2.74.3 比 ( 当量 ) MgO/K2O 2.36.7 2.36.7 2.36.7 2.36.7 2.36.7 2.35.0 2.36.7 2.36.7 比 ( 当量 ) 可給態り 20 80 200 20l00 20 80 20 80 20 80 20 80 20 80 ん酸 可給態窒素 腐植含有 3 以上 4 以上 3.5 以上 2.5 以上 4 以上 3 以上 量 (%) 三 固相 50 以下 40 以下 40 以下 50 以下 50 以下 40 以下 50 以下 40 以下 相 液相 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 30 以下 分 気相 20 以上 30 以上 30 以上 20 以上 20 以上 30 以上 20 以上 30 以上 布 (%) 33
24 樹園地の改良目標値 項目 褐色低地土 灰色低地土黄色土黒ボク土岩屑土 有効根群域の深さ ( cm ) 6080 6080 6080 6080 有効根群域のち密度 ( mm ) 20 以下 20 以下 20 以下 20 以下 地下水位 ( cm ) 0 以上 ph(h20) 5 6 5 6 5 6 5 6 陽イオン交換容量 (me) 15 以上 15 以上 20 以上 20 以上 石灰 3550 3550 3550 3550 苦土 4 8 4 8 4 8 4 8 加里 3 7 1 7 1 7 1 7 塩基 4065 4065 4065 4065 石灰 / 苦土 6 9 6 9 6 9 6 9 苦土 / 加里 1.1 4 1.1 4 1.1 4 1.1 4 可給態りん酸 ( mg /0) 30 30 30 30 加里は最低 15mg/0g を保障すること 地下水位は地表面からの深さを示す 25 改正された主要果樹の土壌感応性 項目 ミカン リンゴ プドウ ナシ モモ カキ クリ 耐湿性 弱 中くらい 強 中くらい 弱 比較的強 弱 耐干性 強 やや弱 やや強 弱 中 やや強 弱 強 ただし土層が浅いと干害が出やすい 物理性 空気の要求 水分 空気 水分 空気 水分 空気 空気の要求 水分の要求 空気の要求 要求度 度大 の要求度大 の要求度大 の要求度大 度大 度大 度大 根の深 カラタチ台 深根性 アメリカ系 深根性 中くらい 深根性 中くらい さ 浅根性 浅根性 土性により ユズ台深根 ヨーロツパ 浅根性にな 性 系深根性 りやすい 土 壌 透水 通気 有機質に富 透水性 通 有機質に富 砂質土壌が 有機質に富 有機質に乏し 条 件 性がよく む埴壌土が 気性のよい む深い壌土 最適で 排 む土層の深 い土壌 排水 粘土分を含 適 やや粘質土 あるいは砂 水不良地は い土壌が適 不良土 保水 んだ土壌が が適 壌土が適 不適 地下水流が 性の小さい土 適 あっても生 壌は不適 育可能 土壌 ph 酸性に対し 微酸性ない 石灰飽和度 微酸性が適 酸性に強い 酸性にかな 酸性に強い に対す てかなり強 し中性を好 の高い土壌 (ph6.0) り強い (ph る反応 い む に適し 栄 5.06.0) 養生理的に石灰要求度が高い 肥料に 吸肥力が弱 窒素過多の 窒素に敏感 肥料に鈍感 吸肥力が強 肥料にやや 窒素に対する に対す く肥効が低 害が出やす に反応し 地力窒素へ い 窒素過 鈍感 窒素 反応は敏感 る感応 い い 過剰吸収害 の依存度が 多を忌む 過多に注意 リン酸には鈍 性 が出やすい 高い 感 34
26 樹種ごとの土壌診断基準 (1) 診断対象土層今回の改正のポイントは診断対象土層を 第 1 図のように上下に区分したことである 水田や畑地の場合は作土層が化学性診断の対象土層となるが 果樹園にはその概念がないため 有効土層全体が対象になってしまう しかし深層までの化学性の改良は著しく困難で コスト高になるばかりでなく現地の実態と乖離する恐れがある そのため 養水分吸収の主役となる細根が7080% 以上分布する範囲を 主要根群域 と呼び その範囲を化学性の診断対象とした また根の大部分 (90% 以上 ) が分布する深さまでを 根域 とし これを物理性診断の対象土層に設定した なお根域のうち主要根群域以下の部分は暫定的に 根域下層 と呼び phだけを診断対象とする樹種と その必要のない樹種とに分かれた 第 1 図 土壌診断のための新しい土層区分 有効土層 根 域 主要根群域 根域下層 (2) 土壌の区分 ( 現行 ) ( 新しい区分 ) 土壌区分はできるだけ簡素化することとし 土壌群と土性から 3 種に区分した Ⅰ 型は褐色森林土 灰 色台地土 赤色土 黄色土 褐色低地土 灰色低地土など Ⅱ 型は黒ボク土 Ⅲ 型は砂丘未熟土のほか それ以外の土壌群のうち土性が S LS のものを含むことにした ただしリンゴでは従来の経過もあって 当面土壌区分はしないことになり またクリは Ⅲ 型の土壌での栽培が少ないことから Ⅰ Ⅱ 型についての み基準値を定めることになった 第 1 表主要果樹の土壌診断基準 ( その 1) 対象 樹種 ミカン リンゴ ブドウ ナ シ 土 層 項目 土壌区分 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 主要根群域の深さcm< 30 40 30 30 30 40 40 根域の深さ cm< 60 80 60 60 50 60 70 地下水位 cm< 0 l00 0 0 80 80 l00 根 ち密度 mm> 20 21 22 20 20 域 ( 主要 全 粗孔瞭 %< 15 20 15 12 根群域 l5 体 15) 透水係数 cm/ 秒 < 4 4 3 3 4 4 根 域 ph(h20) 4.55.5 5.56.0 下層 主 6.0 要 ph(h20) 5.56.0 5.56.0 6.07.0 5.56.5 根 7.0 群 50 40 60 50 70 60 50 40 60 域 塩基飽和度 % 80 80 80 80 0 80 70 60 75 Ca/Mg 当量比 48 59 35 48 36 46 48 66.5 67 6> Mg/K 当量比 26 26 26 2< 2< 2< 2< 2< 2< 2< 可給態 P205 mg/0g 20 5 20 20 20 腐植 % 2 1 2 1 35
第 2 表主要果樹の土壌診断基準 ( その 2) 対象 樹種 モ モ カ キ ク リ 土 層 項目 土壌区分 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 主要根群域の深さcm< 30 40 60 40 根域の深さ cm< 60 60 80 60 地下水位 cm< 0 80 0 0 l00 根 ち密度 mm> 20 20 20 20 22 域 粗孔瞭 %< 15 15 20 15 20 全 透水係数 cm/ 秒 < 4 2 4 5 4 4 体 根 域 ph(h20) 5.06.0 5.06.0 下層 主 5.5 5.5 6.0 要 ph(h20) 5.56.0 5.05.5 根 6.8 6.2 6.8 群 50 50 40 60 35 域 塩基飽和度 % 70 80 70 80 50 Ca/Mg 当量比 48 48 58 2.5 47 5 Mg/K 当量比 1.53.0 2< 2< 2< 25 可給態 P205 mg/0g 5 5 腐植 % 3 1 2 1 2 1 27 塩基含量と飽和度 ( 陽イオン交換容量別 mg/0g) 飽和度 陽イオン交換容量 (me) 塩基の種類 (%) 5 15 20 25 30 35 40 45 50 35 49 98 147 196 245 294 343 393 442 491 40 56 112 168 224 280 336 393 449 505 561 交換性石灰 45 63 126 189 252 315 379 442 505 568 631 (CaO) 50 70 140 2 280 351 421 491 561 631 701 55 77 154 231 308 386 463 540 617 694 771 60 84 168 252 336 421 505 589 673 757 841 5 5 15 20 25 30 35 40 45 50 交換性苦土 20 30 40 50 60 71 81 91 1 (MgO) 15 15 30 45 60 76 91 l06 121 136 151 20 20 40 60 81 1 121 141 161 181 202 1 (2) (5) (7) (9) (12) (14) 16 19 21 24 2 (5) (9) (14) 19 24 28 33 38 42 47 交換性加里 4 (9) 19 28 38 47 57 66 75 85 94 (K2 0) 6 (14) 28 42 57 71 85 99 l13 127 141 8 19 38 57 75 94 113 132 151 170 188 24 47 71 94 118 141 165 188 212 235 土壌群別陽イオン 交換容量の範囲 ( 概略値 ) 5 15 20 25 30 35 40 45 50 (A) (B) (C) (A) 各土壌群の砂質土 (B) 灰色低地土 グライ土 (C) 褐色低地土 (D) 黄色土 岩屑土 (E) 黒ぼく土 多湿黒ぼく土 (D) (E) 36
28 主要土壌改良資材の含有成分量 種類アルカリ分石灰含量苦土含量その他の成分含量 生石灰 90% 90% 苦土生石灰 0% 58% 30% 消石灰 65% 65% 苦土消石灰 70% 45% 18% 炭酸石灰 53% 53% 炭酸苦土石灰 55% 34% 15% 熔成りん肥 50% 29% 15% りん酸 20% 鉄 4% BM 熔りん 50% 29% 15% りん酸 20% ほう素 0.5% マンガン1% 苦土重焼りん 4.5% りん酸 35% BM 重焼りん 4.5% りん酸 35% ほう素 0.5% マンガン1% 硫酸苦土 25% 水酸化苦土 50% 腐植酸苦土 % : 苦土を含有するがアルカリ分にはカウントされない すなわち 酸度矯正力は期待できない 含有成分量は産地等により若干変動する 37