世界の火力発電の市場動向 次世代 発電協議会 ( 第 5 回会合 ) 資料 2 1. はじめに 2. 世界の発電動向 3. 世界の国 地域別発電市場動向 4. 我が国の発電市場動向 5. 世界の火力発電の発電効率 6. 今後の世界の火力発電市場 一般財団法人エネルギー総合工学研究所小野崎正樹 1
1. はじめに 東南アジアを中心とした急激な経済成長にともない 発電設備の拡充が進んでいる 2040~2050 年に向けて 世界の火力の市場動向を概説する 世界の火力発電の市場動向をIEAの予測 (World Energy Outlook 2015) をベースに当研究所 (IAE) が検討した また 我が国の火力導入の可能性を 長期エネルギー需給見通しを踏まえて 2050 年に向けて検討した 2
2. 世界の発電動向発電電力量 IEA(World Energy Outlook 2015) の世界の発電電力量見通し (WEO 新政策シナリオ ) では 2040 年に向けて再生可能エネルギーが大幅に増加し 石炭火力は発電量は増加するもののシェアーは減少する 一方 天然ガス火力は 1.8 倍となりシェアーも増す 注 )WEO 新政策シナリオ ; 直近の気候変動に関する政府の政策公約の内 具体化されていないものも含めて着実に実施されるケース 出典 ; IEA, World Energy Outlook 2015 3
2. 世界の発電動向地域ごとの石炭需要 IEA の地域別石炭需要見通し (WEO 新政策シナリオ ) では OECD 加盟国は減少 非加盟国では微増 インド 東南アジアの増加率が大 出典 ;JOGMEC 世界の石炭事情 (2015 年度中間報告 ) IEA, World Energy Outlook 2015 をベースに作成 4
2. 世界の発電動向発電電力量 IEA の世界の電力需要見通し (WEO 新政策シナリオ ) では 発電電力量は増加を続けるものの 石炭火力は OECD 加盟国では低下 その他の国では増加し続ける 天然ガス火力はどのエリアでも増大傾向にある 出典 ; IEA, World Energy Outlook 2015 5
2. 世界の発電動向発電所 IEAの世界の電力需要見通し (WEO 新政策シナリオ ) では 今後 石炭火力は新設が1100GW(100 万 kw 換算で1100 基 ) 同時にその半数程度が廃止される 一方 天然ガス火力は 新設が 1500GW(100 万 kw 換算で1500 基 ) 廃止は少ない 風力 PVに大きな期待をかけている 出典 ; IEA, World Energy Outlook 2015 6
3. 世界の国 地域別発電市場動向 石炭火力比率の高い国 ; 中国 米国 インド ドイツ 韓国 豪州 台湾 石炭火力比率が低い国 ; フランス ノルディック諸国 ( デンマークを除く ) カナダ ここでは 石炭火力比率の高い 産炭国である中国 米国 インド インドネシア 豪州および石炭火力比率が比較的高い韓国の状況を説明 我が国については 別途 検討 天然ガス 石炭 出典 ;International comparison of fossil power efficiency and CO2 intensity Update 2014, Final Report, ECOFYS 7
3. 世界の国 地域別発電市場動向 EU EUは国ごとに状況が異なるものの 再生可能エネルギーを積極的に導入 火力全体が減少傾向にあり 特に石炭火力の減少の割合が大きい 石炭火力の減少分を天然ガス火力が補う傾向にある 出典 ; IEA, Energy Balances of Non- OECD Countries 2015 および World Energy Outlook 2015 から IAE が作成 8
3. 世界の国 地域別発電市場動向中国 2015 年に23.4Gwの石炭火力 新設の発電設備では石炭火力が最も多い 100 万 kw 以上のUSCが2013 年末で63 基 USCが普及しつつある IEAによると 2040 年までの石炭火力発電所の新設容量が383GW 廃止設備が72GW 100 万 kw 換算で383 基 年平均 15 基 今後 天然ガス火力の新設を予測しているが シェアーは小さい 出典 ; IEA, Energy Balances of Non- OECD Countries 2015 および World Energy Outlook 2015 から IAE が作成 9
3. 世界の国 地域別発電市場動向インド 急激な経済成長で電力不足が深刻 2015 年に設備容量で石炭火力が62% 近年 建設中の新設大型火力の一部にUSCが導入される 国内炭は 一般的に灰分が40wt% 以上と高い 比較的灰分の低い豪州 インドネシアからの石炭輸入が増加 IEAによると 2040 年までの石炭火力発電所の新設容量が306GW 廃止設備が41GW 100 万 kw 換算で306 基 年平均 12 基 今後 天然ガス火力の新設を予測しているが シェアーは小さい 出典 ; IEA, Energy Balances of Non- OECD Countries 2015 および World Energy Outlook 2015 から IAE が作成 10
3. 世界の国 地域別発電市場動向米国 2015 年に EPA はクリーン パワー プラン (CPP) の最終規則を発表 1,400lb-CO2/MWh (635g/kWh) を設定 産炭州を中心に新規則取り消しを係争中 天然ガス価格の低値安定により 石炭火力による電力供給は2014 年 4 月から1 年間で18.9% 減少 天然ガス火力が今後とも増加 IEAによると 2040 年までの石炭火力発電所の新設容量が22GW 廃止設備が136GW EPAの最終規則を満たす火力 ; IGCC+1700 GT IGFC 微粉炭火力 +CCS 出典 ; IEA, Energy Balances of Non- OECD Countries 2015 および World Energy Outlook 2015 から IAE が作成 11
3. 世界の国 地域別発電市場動向インドネシア クラッシュプログラムでは新規 35GWを計画 現在 7.9GWを2019 年には42.9GWに増設 それに伴い 国内石炭消費が2 億 4000 万トンに 35GWは100 万 kw 換算で35 基に相当 その場合 石炭消費量は 0.74 億トンから1.66 億トンに増加する 日本メーカーによるUSCの建設も進行中 IEAによると 2040 年の石炭火力発電電力量は492TWh 2013 年の110TWhから382TWhの増加 100 万 kw 換算で58 基 ( 稼働率 75%) 年 2 基程度 一方 天然ガス火力は204TWhの増加 出典 ; IEA, Energy Balances of Non- OECD Countries 2015 および日本エネルキ ー経済研究所 アジア / 世界エネルギーアウトルック 2015 などから IAE が作成 12
3. 世界の国 地域別発電市場動向韓国 第 6 次 長期電力需給計画 2013~2027 では 電力需要は年率 3.4% を想定 2027 年には1 億 5850 万 kwの設備容量を計画 石炭火力の比重を下げる施策であるものの 2013から2040 年まで 68TWhの増加は 100 万 kw 換算で10 基 ( 稼働率 75%) に相当 天然ガス (LNG) 火力は50TWhの増加 出典 ; IEA, Energy Balances of Non- OECD Countries 2015 および日本エネルキ ー経済研究所 アジア / 世界エネルギーアウトルック 2015 などから IAE が作成 13
3. 世界の国 地域別発電市場動向オーストラリア 石炭生産量は 2014-2015 年度 4.42 億トンであり 世界で第 4 位 その内 輸出は3.87 億トン 将来 再生可能エネを大幅に導入する計画であるが 長期的にも石炭が基幹電源 出典 ; IEA, Energy Balances of Non- OECD Countries 2015 および Bureau of Resources and Energy Economics (BREE), Australian Energy Projections 2011&2014, 2014 から IAE が作成 14
4. 我が国の発電市場動向 現在の計画 建設中の火力発電所以降 新設を進めないと 2050 年に1307 億 kwhの不足となる 年間稼働率 75% 100 万 kw/ 基として 約 20 基分の石炭火力かLNG 火力が必要 原子力の割合が下がると不足分が増す 再生可能エネルギー比率を上げるには 安定供給のための対策が求められる 電力需給量を長期需給見通しに沿って2030 年までは上昇 2030 年以降はGDP 伸び率と人口増減予測から推算 2030 年以降 長期エネルギー需給見通しの構成比を維持 原子力は60 年稼働 火力は40 年稼働 出典 ; エネ総研の試算による 15
5. 世界の火力発電の発電効率燃料ごとの発電効率 2009~2011 年の国別 燃料別の発電効率 (LHV) 石炭火力は インドの27% からフランスの43% まで幅がある 一方 天然ガス火力は34% からUK+アイルランドの53% まで幅がある NGCC(1300 ) NGCC(1600 ) USC 出典 ;International comparison of fossil power efficiency and CO2 intensity Update 2014, Final Report, ECOFYS 16
5. 世界の火力発電の発電効率実績 石炭火力では OECD 諸国は高止まり 米国は新設がわずかのため 老朽化が進み効率は徐々に低下 中国は新設石炭火力の占める割合が高く 急速に発電効率が向上 インドは 建設中が多数のため 今後 上昇か 豪州は 褐炭利用のため 低効率 天然ガス火力では ピークシェービィング用の国では効率の変動が大きい 特にフランス 発電効率は LHV 日本 インド 中国 米国 インド 米国 日本 中国 石炭火力 天然ガス火力 出典 ;International comparison of fossil power efficiency and CO2 intensity Update 2014, Final Report, ECOFYS 17
6. 今後の世界の火力発電市場石炭火力発電技術別 OECD 諸国は新設火力が少ないので 2040 年になっても亜臨界ボイラーの割合が高い 発電効率の向上はわずか 一方 中国ではUSCの新設が多く 亜臨界ボイラーの割合は次第に低くなる 発電効率は今後とも向上する インドは 中国以上に 新設の割合が高いが USCの普及は限定的である 出典 ; IEA, World Energy Outlook 2015 18
6. 今後の世界の火力発電市場石炭火力発電技術別 SC Advanced(USCなど ) CCSの2040 年と2014 年の差は 世界で753GW Advanced(USCなど ) だけでも546GW 100 万 kw 換算で546 基となる 中国がSC USC 増加分の50% を占める 出典 ; IEA, World Energy Outlook 2015 19
6. 今後の世界の火力発電市場石炭火力からの CO2 IEA によると 世界の石炭火力の発電効率が高まることと 発電量に占める石炭火力のシェアーが下がることで石炭火力からの CO2 排出量を抑制できる 出典 ; IEA, World Energy Outlook 2015 20
6. 今後の世界の火力発電市場 OECD 加盟国では石炭火力の市場は限定的 インド 中国 東南アジア諸国を中心に 経済発展とともに石炭火力の市場が拡大している 石炭産出国である 中国 インド インドネシアでは新設の市場が大きい 特に インドは2040 年に向けて年平均 10 基 (100 万 kw 換算 ) 以上 中国は15 基の新設が想定されている 一方 CO2 削減を踏まえて 世界 特に中国でUSCが普及 さらなる高効率発電 IGCCやCCS などが求められる 天然ガス火力は OECD 諸国を中心に 石炭火力より多くの発電所建設が想定されている NGCCの普及 さらなる高効率化が求められる 21
謝辞 国立研究開発法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 (NEDO) 殿からの受託による成果の一部が含まれており 関係者各位に深く感謝する 22