ツツガムシ病・リーシュマニア症なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

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蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

虫さされ・疥癬・マダニ刺咬症なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

Microsoft Word - H300717【プレスリリース】夏休みの感染症対策について

70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

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糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

p.p.2 # エンテロウイルス感染症 ( 特に 6 型 11 型 25 型 ) 顔面に皮疹をきたす 肝炎様徴候と血小板減少というのは合致しない # パルボウイルス B19 手足口病 顔面の皮疹はきたすが 今回の皮疹の出現パターンとは合致しない # 風疹 血球減少は一般的に見られる また 肝酵素上昇

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

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インフルエンザ(成人)

( 参考文献 3 より引用 ) レプトスピラ症はインフルエンザ様の急性熱性疾患として発症する 38~40 の発熱 全身倦怠 悪寒 頭痛 腹痛 嘔気 嘔吐 発疹などの非特異的な症状と 比較的特異度の高い眼脂のない結膜充血や筋痛が主な症状である 5~14(2~30) 日の潜伏期を経て敗血症期になり上記症

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2016 年 4 月 7 日放送 第 67 回日本皮膚科学会西部支部学術大会 2 教育講演 1-2 EB ウイルス関連皮膚疾患 : 皮膚病変から見抜く病態と診断の進め方 岡山大学大学院皮膚科教授岩月啓氏 はじめに Epstein-Barr ウイルスは 略して EB ウイルスと呼ばれます ヒトヘルペス

耐性菌届出基準

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今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

検査項目情報 インフルエンザウイルスB 型抗体 [HI] influenza virus type B, viral antibodies 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F410 分析物 インフルエン

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緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

2011 年 9 月 29 日放送第 74 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 6 教育講演 4-1( 膠原病 ) 皮膚限局型エリテマトーデスの病型と治療 埼玉医科大学皮膚科教授土田哲也 本日は 皮膚限局性エリテマトーデスの病型と治療 についてお話させていただき ます 言葉の問題と病型分類エリテマトー

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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院内感染対策マニュアル

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BD( 寛解導入 ) 皮下注療法について お薬の名前と治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 薬の名前作用めやすの時間 1 日目

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新旧対照表

( 別添 ) インフルエンザに伴う異常な行動に関する報告基準 ( 報告基準 ) ( 重度調査 ) インフルエンザ様疾患と診断され かつ 重度の異常な行動を示した患者につき ご報告ください ( 軽度調査 ) インフルエンザ様疾患と診断され かつ 軽度の異常な行動を示した患者につき ご報告ください イン

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ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

院内感染対策マニュアル

164 章血管炎 紫斑 その他の脈管疾患 表皮 A-2 B-3 真皮 A-1 B-2 A-1: 皮膚白血球破砕性血管炎 A-2:IgA 血管炎 B-1: 結節性多発動脈炎 B-2: 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 B-3: 多発血管炎性肉芽腫症 皮下組織 B-1 図.2 炎症の主座となる血管の深さと血

とが多いのが他の蕁麻疹との相違点です 難治例ではこの刺激感のために日常生活に支障が生じ 重篤な随伴症状としてはまれに血管性浮腫 気管支喘息 めまい 腹痛 嘔気 アナフィラキシーを伴うことがあります 通常は暑い夏に悪化しますが 一部の症例では冬期の運動 入浴で皮疹が悪化することがあり 温度差や日常の運

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

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東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

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2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

2018 年 10 月 4 日放送 第 47 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 / 第 41 回皮膚脈管 膠原病研究会シンポジウム2-6 蕁麻疹の病態と新規治療法 ~ 抗 IgE 抗体療法 ~ 島根大学皮膚科 講師 千貫祐子 はじめに蕁麻疹は膨疹 つまり紅斑を伴う一過性 限局性の浮腫が病的に出没

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は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

( 症状および検査所見 ) 3~7 日の潜伏期間の後に 発熱 発疹 頭痛 骨関節痛 嘔気 嘔吐などの症状がおこる 日本国内で診断されたデング熱患者の症状や検査所見の出現頻度を表 1 に示す 3) 発熱は発病者のほぼ全例にみられ 時に二峰性となる 通常 発病後 2~7 日で解熱し そのまま治癒する 約

呈することです 侵さない臓器は無いと言ってもいいくらいに現在までに多くの臓器病変が記載されています ( 表 2) ただし 悪性腫瘍( 癌 悪性リンパ腫など ) や類似疾患 (Sjögren 症候群 原発性硬化性胆管炎 Castleman 氏病 二次性後腹膜線維症 肉芽腫性多発血管炎 サルコイドーシス

症化することからハイリスクとされています VZV は細胞親和性が強く cell-to-cell にウイルスが感染するため ウイルス増殖の抑制には液性免疫よりも細胞性免疫が重要であります このため 特に細胞性免疫機能の低下した宿主においては極めて重篤となり 致死的な経過をたどることが少なくありません

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2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

第 88 回日本感染症学会学術講演会第 62 回日本化学療法学会総会合同学会採択演題一覧 ( 一般演題ポスター ) 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 ア

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2017 年 12 月 28 日放送 第 116 回日本皮膚科学会総会 8 教育講演 14-5 血管性浮腫の診断と治療 横浜市立大学大学院環境免疫病態皮膚科学 准教授猪又直子 はじめに血管性浮腫は 皮膚や粘膜の限局した範囲に生じる深部浮腫で 蕁麻疹の類縁疾患です 近年 国際ガイドラインが発表され メ

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第 4 章感染患者への対策マニュアル ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs

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感染症週報平成 年第 6 週 ( 月 日 ~ 月 日 ) 定点把握対象疾患 ( 過去 週の動き ) ( 定点あたり患者数 ) 疾病名 地域 週 6 流行傾向 インフルエンザ RSウイルス感染症 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎

報告は 523 人 (14. 5) で前週比 9 と減少した 例年同時期の定点あたり平均値 * (16. ) の約 9 割である 日南 (37. 3) 小林(26. 3) 保健所からの報告が多く 年齢別では 1 歳から 4 歳が全体 の約 4 割を占めた 発生状況 ( 宮崎県 ) 定

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

もう迷わない! 原因不明の発熱はこう診断する

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血管炎 / C. その他の類縁疾患 175 こううんはくたいあることも多い. 紅暈を伴う直径 3 5 mm 前後の白苔を付ける潰瘍が単発ないし多発する. 疼痛を伴い, 約 10 日で瘢痕を残さず治癒するが再発する. 5 外陰部潰瘍 : 陰囊や大小陰唇に好発する. 境界鮮明な深い潰瘍を形成し, 治癒後

胞の腫大の 2 つが 正しい病理診断のためのキーワードでした 形質細胞浸潤の目立つ炎症を病理学的に亜急性炎症といいますが この場合 亜急性皮膚炎の診断は臨床の役に立ちません 病理学的に疑うべきは梅毒です 梅毒スピロヘータ ( トレポネーマ パリドゥム ) に対する抗体を利用した免疫染色が決め手になり

2 4 診断推論講座 各論 腹痛 1 腹痛の主な原因 表 1 症例 70 2 numeric rating scale NRS mmHg X 2 重篤な血管性疾患 表

医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

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スライド 1

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した つまり 従来から研究されてきた IgE/Fc RI を介した活性化経路は 肥満細胞活性化の一面に過ぎず むしろ生体防御の見地からすると 感染に対する防御こそ肥満細胞の機能の中心的な役割である可能性も出てきたのです この一連の研究は 肥満細胞は何もアレルギーを起こすために存在しているのではなく

二類感染症 1 結核平成 23 年は 291 件の届出があり 前年 (188 件 ) の約 1.5 倍に増加した 月別届出数は 16~43 件で推移した 症状別では 患者 198 件 ( 内訳 : 肺結核 143 件 その他の結核 42 件 肺結核およびその他の結核 13 件 ) 疑似症患者 1 件

に 真菌の菌体成分を検出する血清診断法が利用されます 血清 βグルカン検査は 真菌の細胞壁の構成成分である 1,3-β-D-グルカンを検出する検査です ( 図 1) カンジダ属やアスペルギルス属 ニューモシスチスの細胞壁にはβグルカンが豊富に含まれており 血液検査でそれらの真菌症をスクリーニングする

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

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B. 昆虫などが媒介する皮膚疾患 539 よることが多い. 他にマダニに分類されるものとしてツツガムシがある. クラゲ, サンゴ, イソギンチャクによる皮膚障害 治療吸着しているマダニを無理に引っ張ると, 口器を残してちぎれ, 後に異物肉芽腫を形成するため, 剪刀を刺咬口に差し込んで口器ごと取り出すか, マダニをつけたまま皮膚を切除あるいはパンチで除去する. 摘出後 1 2 週間は, ライム病発症予防のためにテトラサイクリン系ないしペニシリン系抗菌薬を内服する. B. 昆虫などが媒介する皮膚疾患 skin diseases transmitted by insects and other animals 1. ライム病 Lyme disease,lyme borreliosis スピロヘータの一種であるボレリア (Borrelia) による感染症. マダニが媒介する. 春から夏季にかけて, 日本では主に北部で発生. 欧米では患 者数が多い. 慢性遊走性紅斑をきたす第 1 期, 関節炎や髄膜炎をきたす第 2 期, 中枢神経が障害される第 3 期へと進行. 治療はテトラサイクリン系抗菌薬が第一選択. 症状マダニ刺咬によりボレリアが感染し発症する. 再燃と寛解を繰り返し, その病態から 3 期に大別される ( 表.1). 第 1 期 ( 紅斑期 ):1 36 日の潜伏期を経て, 約 80% の症例で刺し口を中心に紅斑 丘疹を生じる. 皮疹は数日中に遠心性に拡大し, 輪状の特徴的な皮疹を形成する 慢性遊走性紅斑 (erythema chronicum migrans;ecm), 図.9,.10. 辺縁は鮮紅色で, ときに隆起し, 中央部は退色する. 自覚症状は通常なく, 直径 40 cm に達する場合もある. 発熱や頭痛, 全身倦怠感などのインフルエンザ様症状を伴うことがある. 各症状は数週間でおさまる. 第 2 期 ( 播種期 ): 感染から数日 数週間でボレリアが血行性に播種され, 各種臓器症状が出現する. 移動性の関節炎や筋肉痛, 神経症状 ( 顔面神経麻痺, 髄膜炎, 有痛性根神経炎など ), 房室ブロックなどをみる. 皮膚症状としては, 約 20% の症例で全身にやや小型の慢性遊走性紅斑が多発する. 刺し口が耳などの場合, 皮膚リンパ球腫 (lymphocytoma cutis,21 章 p.418 表.1 ライム病の病期による症状比較

540 章節足動物などによる皮膚疾患 参照 ) を生じることがある. 第 3 期 ( 慢性期 ): 数か月から数年経過すると, 慢性の神経症状 ( 多発神経炎, 気分障害, 統合失調症など ) や膝関節炎を生じる. 皮膚病変として, 発症 1 年以降に慢性萎縮性肢端皮膚炎 (acrodermatitis chronica atrophicans) を生じる. ヨーロッパの高齢者に多く, 自覚症状のない浸潤性浮腫性紅斑が手足背側に初発し, 徐々に拡大して萎縮かつ薄くなり, 皮下の血管が透見されるようになる. 疫学 1975 年にアメリカ コネチカット州のライム地方で流行した, 紅斑と関節炎を特徴とする感染症の研究から発見された. 世界中でみられるが, とくにアメリカ, スカンジナビア, 中部ヨーロッパで発生する. 日本では春 夏季にかけて主に北部に発生する. 病因スピロヘータの一種であるボレリアによる感染症であり, マダニによって媒介される. ボレリアはマダニの中腸に存在し, マダニに 24 48 時間以上咬まれたときに侵入されやすい. アメリカではBorrelia burgdorferi sensu lato によるものが多いが, 日本ではB. garinii と B. afzelii によって発症し, 抗 B. burgdorferi 抗体検査は陰性になることがある. 日本ではシュルツェマダニ Ixodes persulcatus によることが大部分である. 図.9 ライム病 (Lyme disease, Lyme borreliosis) 第 1 期にみられる慢性遊走性紅斑 検査所見ボレリア特異抗体の検出 : アメリカで感染したと思われる輸入例では, 抗 B. burgdorferi 抗体検査を施行する. 日本での感染例では陰性のこともあり注意を要する. 病原体検出 : 皮膚病変から分離培養を行う. ウェスタンブロット法によるボレリア蛋白 (OspC など ) および nested PCR 法によるボレリア DNA の証明なども有用となる. 診断 鑑別診断マダニの刺し口と慢性遊走性紅斑が認められればほぼ診断可能であるが, 確定診断は抗体検査や病原体の分離培養による. 本症は 4 類感染症であり, 診断した医師は直ちに保健所への届出を行う. 図.10 慢性遊走性紅斑 (erythema chronicum migrans) 治療 ドキシサイクリン ( テトラサイクリン系 ) やペニシリンを服 用する. 第 2 期や第 3 期では, 神経への移行がよいセフトリア

B. 昆虫などが媒介する皮膚疾患 541 キソンを使用する.3 4 週間の投与で症状が改善することが多い. ボレリア感染と皮膚疾患 2. ツツガムシ ( 恙虫 ) 病 scrub typhus,tsutsugamushi disease マダニの一種であるツツガムシが媒介する, リケッチア感染症. 発熱, 刺し口, 発疹を 3 主徴とする. 高熱をきたし, ツツガムシの刺し口を認める. 体幹に淡紅色斑を生じる. 治療はテトラサイクリン系抗菌薬, クロラムフェニコール. 症状ツツガムシに刺されて 5 14 日後に, 突然悪寒や頭痛を伴う 40 前後の発熱を生じる ( 図.11). 注意深く全身を観察するとツツガムシの刺し口が見つかる. 主に体幹や陰部, 腋窩で観察され, 刺し口は直径 1 2 cm の浸潤性紅斑で, 中心に黒色痂皮をつける. 発症して 2 7 日後に, 体幹を中心に 2 5 mm 大の淡紅色斑 ( ばら疹 ) が広がり,7 10 日で消失する. 全身の有痛性リンパ節腫脹や結膜充血, 咽頭発赤, 肝脾腫, 肝機能障害,DIC などを生じうる. 図.11 ツツガムシ病 (scrub typhus, tsutsugamushi disease) の臨床経過 病因 疫学ツツガムシリケッチア Orientia tsutsugamushi による. 媒介者はマダニの一種であるアカツツガムシLeptotrombidium akamushi, フトゲツツガムシL. pallidum, タテツツガムシL. scutellare である. これらがヒトに吸着し 6 時間以上吸血した場合に, リケッチアが侵入し発症する. ツツガムシが病原リケッチアをもっている可能性は 1% 以下といわれている. ヒトからヒトへの感染はない. 日本では, 北海道や沖縄を除く全国で報告がみられる. 診断 鑑別診断刺し口や発疹に気づかなければ, インフルエンザなどの熱性疾患とされてしまい診断が遅れる. 抗リケッチア IgM の上昇や IgG ペア血清での上昇, 末梢血からの nested PCR 法によるリケッチア DNA の検出で診断する. 他のリケッチア性疾患である日本紅斑熱やロッキー山紅斑熱との鑑別が問題となる ( 表.2). 本症は 4 類感染症であり, 診断した医師は直ちに保健所への届出を行う.

542 章節足動物などによる皮膚疾患 表.2 ツツガムシ病および類似疾患 の比較 治療 テトラサイクリン系抗菌薬あるいはクロラムフェニコールを 早期に用いる. 3. リーシュマニア症 leishmaniasis 定義トリパノソーマ科の原虫であるリーシュマニアLeishmania による感染症. 病原性をもつリーシュマニアは数種類ある. サシチョウバエ (sandfly) の吸血の際にヒトに感染, 発症する. また, 薬物常用者間で注射器を介して感染が成立することもある. 病原虫の種類から疾患は 3 種に分類され, いずれも臨床症状が異なる. 基本的に日本には存在しない疾患であるが, 外国滞在中に感染した例や在日外国人の症例が近年増えている. 症状 分類 1( 旧大陸型 ) 皮膚リーシュマニア症 (old world)cutaneous leishmaniasis 熱帯リーシュマニアLeishmania tropica などによる. アフリ げっし カなどに分布し, 保虫宿主はイヌや齧歯類である. 吸血部に無 痛性の丘疹が出現して硬結を伴った潰瘍となって拡大するが, 約 1 年で瘢痕性に治癒する. 2 粘膜皮膚リーシュマニア症 (mucocutaneous leishmaniasis) ブラジルリーシュマニア Leishmania braziliensis による. 顔面を中心に, 悪臭を伴う腫瘤や潰瘍を形成する. その後数十年にわたって, 皮膚, 粘膜, 骨の破壊を伴う二次潰瘍が耳, 鼻腔, 口腔, 咽頭, 食道などに出現する. 3 内臓リーシュマニア症 (visceral leishmaniasis) カラアザール (kala-azar) ともいう. ドノバンリーシュマニア Leishmania donobani による. 発熱, 倦怠感, 肝脾腫, リンパ

C. 寄生虫による皮膚疾患 543 節腫脹などをきたす. 発症 1 年後頃より, 顔面などに硬い丘疹を多発することがある ( カラアザール後皮膚リーシュマニア ). 検査 治療診断にあたっては, 渡航歴, サシチョウバエとの接触の既往が重要である. 皮疹部や血液, 骨髄から原虫を検出する. 治療はミルテフォシンやスチボグルコン酸ナトリウムを投与する. 日本では熱帯病治療薬研究班から入手可能である. C. 寄生虫による皮膚疾患 diseases caused by parasitic worms 1. クリーピング病 creeping eruption 同義語 :cutaneous larva migrans は皮膚寄生幼虫が皮内を移動し, 皮膚に爬 こう行 性の線状皮疹 (creeping eruption) を生じるものをいう ( 図.12). 幼虫を保 持する川魚などを生食することで感染する. 原因となる寄生虫としては顎口虫 ( ドジョウ, 川魚, カエル ) や, マンソン孤虫 ( 両生類, 家禽肉 ), 旋尾線虫 ( スッポン, イカ ) などがある. こうちゅうまた, 熱帯の砂浜を裸足で歩くなどして, 鉤虫の幼虫が直接皮膚に接触して侵入する場合もある. 川魚などを生食した数週から数か月後に, 体幹や大腿に限局性浮腫や硬結を生じる. 発熱や腹痛などの全身症状を伴うことがある. 皮膚寄生幼虫は, 移動出没を繰り返し, 線状皮疹を生じる. 治療には診断を兼ねた虫体摘出を行う. アルベンダゾールやイベルメクチンの有用性が注目されている. a b 2. リンパ系フィラリア症 lymphatic filariasis バンクロフト糸状虫 Wuchereria bancrofti, マレー糸状虫 Brugia malayi などを蚊が媒介する. 熱帯, 亜熱帯地域に広く分布しているが, 日本では現在ほとんどない. 体内に侵入した幼虫はリンパ管に移動し, 数か月で成虫になる. 発熱, リンパ節炎, リンパ管炎, 副睾丸炎などの急性症状を経て, リンパ浮腫, 陰囊水腫, 象皮症へと発展する (11 章 p.177 参照 ). ジエチルカルバマジンやイベルメクチンの投与を行う. c 図.12 クリーピング病 (creeping eruption) a bc