1 地域の概要紫波町は岩手県のほぼ中央にあり北は矢巾町を挟んで盛岡市になり南は花巻市に接しています ( 図 1) 町域は北上盆地を挟んで東の北上山地と西の奥羽山系にまたがって細長く広がり町域の中央を東北の大河北上川が南流しています北上川は北上盆地の東寄りを流れているため平野は北上川の西

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あきおすえがら
5 years ago
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~ 岩手県紫波郡紫波町平沢北生産組合 ~ 農研機構東北農業研究センター畑作園芸研究領域上席研究員谷口義則はじめに平成 27 年度麦作共励会において集団の部で農林水産大臣賞を受賞した岩手県紫波郡紫波町の平沢北生産組合は通常は推奨されない小麦連作を敢えて行っている点に大きな特徴がある生産組合ですこれにより水田作で問題となる湿害が回避され生産性と品質が大幅に向上しています

1 ~ 岩手県紫波郡紫波町平沢北生産組合 ~ 農研機構東北農業研究センター畑作園芸研究領域上席研究員谷口義則はじめに平成 27 年度麦作共励会において集団の部で農林水産大臣賞を受賞した岩手県紫波郡紫波町の平沢北生産組合は通常は推奨されない小麦連作を敢えて行っている点に大きな特徴がある生産組合ですこれにより水田作で問題となる湿害が回避され生産性と品質が大幅に向上していますもちろん連作するだけでは技術とは言えず連作を可能にする様々な取り組みを行っています例えば小麦播種前の雑草防除や土作り等のほ場管理は土地の所有者たる組合員の責任としこれらの作業の実施状況を点数化して支払料金に加算するなど組合員参加を促していますまた組合自ら実証ほを設置しその地域に最も適した土壌改良材を選定するなどの取り組みを行っていますその他様々な取り組みにより県平均を大きく上回る収量と4 年連続全量一等を達成した平沢北生産組合の取り組みを紹介します岩手県紫波郡紫波町平沢平沢北生産組合組合長藤原庄司 (70 歳 ) 1 米麦改良

1 地域の概要紫波町は岩手県のほぼ中央にあり北は矢巾町を挟んで盛岡市になり南は花巻市に接しています ( 図 1) 町域は北上盆地を挟んで東の北上山地と西の奥羽山系にまたがって細長く広がり町域の中央を東北の大河北上川が南流しています北上川は北上盆地の東寄りを流れているため平野は北上川の西に広く発達し東の奥羽山系の麓から北上川に向かって緩やかに下る地形となっており

2 1 地域の概要紫波町は岩手県のほぼ中央にあり北は矢巾町を挟んで盛岡市になり南は花巻市に接しています ( 図 1) 町域は北上盆地を挟んで東の北上山地と西の奥羽山系にまたがって細長く広がり町域の中央を東北の大河北上川が南流しています北上川は北上盆地の東寄りを流れているため平野は北上川の西に広く発達し東の奥羽山系の麓から北上川に向かって緩やかに下る地形となっており生産組合のある平沢図 1 地域はこの平野の中岩手県紫波郡紫波町流域にありますおよび平沢地区の位置紫波町では東部の丘陵地帯を中心にリンゴをはじめとする果樹が栽培されており山間地では林業も盛んです循環型まちづくりの一環として町も森づくりにかかわり町役場小学校駅舎等表 1 経営作目の概要主要作目名栽培面積農家粗収益全体に占める割合麦 2,100a 35% 水稲 2,190a 61% 飼料作物 580a 4% の建築物に木造を取り入れています一方平野部では水田が開けています特にもち米の生産が多く水稲作付面積の半数近くはヒメノモチをはじめとするもち米が栽培され一大産地となっていますまた水稲に次いでキュウリをはじめとする野菜作や牛豚の畜産も盛んで小麦も重要な転作作物としてナンブコムギやゆきちからが作付けされています 2 集団の概要 ⑴ 設立の経緯と組織体制平沢北生産組合は岩手県中部の水田地帯に位置する集落営農組織で麦水稲飼料作物の経営受託を行っています当組合は従来から転作を主とする営農活動を行っていた平沢北通転作組合を発展的に解散し平成 18 年 11 月に新たに発足させた組織ですこれは平成 19 年を新たなる農業改革の年と位置づけ経営安定対策に向けて組織の見直しを進めたもので設立後は米麦作により地域の水田を維持しながら作業の効率化低コスト化を核に次世代につなぐ意欲的な取り組みを行っていますまた高齢化や後継者対策より効率的な営農活動を目標に法人化をめざし普及センター主催の研修会に参加するなど法人化に向けた検討を重ねています組合の組織は副組合長の下に稲作班小麦班飼料作物班を配し作目ごとの責任体制を明確にしています ( 図 2) 総会監事自治会組合長副組合長農家組合生産組合事務局会計行政区稲作班小麦班飼料作物組合員図 2 平沢北生産組合の組織図米麦改良 2

3 ⑵ 経営概況当組合は専業農家 4 戸を含む22 戸 ( 内 18 戸で小麦を作付 ) で構成されています経営耕地面積は4,739aで内訳は小麦作 2,100a 水稲 2,190a 飼料作物 580aです ( 表 1) 小麦作の1 戸当たりの平均作付面積は116.7aですが多い農家で439a の作付けがあります農業経営全体での粗収益は57,707,003 円経営費は41,698,765 円で所得は 16,008,238 円でしたいますまた連作により土壌伝染性ウイルス病の発生が懸念されますが平成 21 年産から縞萎縮病に抵抗性があるゆきちからに変更したことによりこの問題は解決しておりますさらに雑草害拡大に対しては除草効果の高い融雪後早期に除草剤を散布することにより薬剤投入量の低減と共に効果的に除草が行われ連作年数の多いほ場においても雑草の繁茂は押さえられています ( 表 2) 3 技術上の特色 ⑴ 小麦連作による畑地化当組合の特記すべき特徴の1つは小麦を連作することにより畑地化を促し湿害を防いでいる点です麦作付面積 2,100aの内約 30% は水稲作の後小麦の連作を4 年以内続けて水稲作に戻しており約 70% は小麦連作 6 年以上のほ場となっています連作による地力低下を防ぐために連作年数に応じてほ場ごとに投入する土壌改良資材の種類を変更するなど積極的な土づくりを進めて ⑵ 排水対策の徹底団地化に当たり小麦の栽培に適した排水条件の良いほ場を組合で選定しさらに小麦を連作することにより畑地化を促し排水性を高めていますまた弾丸暗渠や明渠の施工により排水対策を徹底しています紫波町では根雪があるため融雪水による湿害の対策が必要ですが特に隣接ほ場との段差により雪が吹きだまる地点での表面排水が重要であるため明渠を施工し排水溝につなげています ( 写真 1) 前作の栽培状況等耕整播基肥管理追肥起地種病虫害防除後作物作物名小麦収穫期 6 月収量 (10a 当たり ) 357kg 有機物及び土壌改良材の種類と施用量麦稈鋤き込みタイニー 140kg/10a ミネグリーン ( 一部 ) 種子予措の方法なし播種方法等耕起整地及びうね立の有無耕起播種時期 10/1 ~ 13 播種量 11kg/10a 播種様式ドリル播条間株間播幅肥料名オール14 タイニーミネグリーン一部化学肥料合計 N 3.5 kg 施用量 (10a 当たり ) 25kg 140kg 70kg P 3.5 kg K 3.5 kg 作業名 ( 中耕土入踏圧除草等 ) 表 2 耕種概要 24 cm cm cm 施肥方法播種同時 ( オール 14) その他全層施用実施時期及び方法除草剤散布ガレース乳剤 10/13 ~ 14 ハーモニー 75DF 水和剤等 3/29 ~ 30 ブームスプレイヤー明渠設置 10 月上旬溝切機踏圧 3 月下旬 2 回タイヤローラー施用時期 3 月上 ~ 中旬 4 月下旬 5 月上旬化学肥料合計 N 14.7 kg 肥料名尿素尿素尿素 P kg 施用量 (10a 当たり ) 15kg 8kg 9kg kg K kg 病名赤かび病実施時期及び方法 ( 薬剤名 10a 当たり使用量散布機械等 ) 5 月 20 日シルバキュアフロアブル 2,000 倍 60L/10a ブームスプレイヤー 5 月 28 日トップジンM 水和剤 1,000 倍 60L/10a 上に同じ組合員による赤かび病抜き穂 6/10 ~ 11 作物名播種植付時期小麦 9 月下旬 ~ 10 月上旬施肥方法動力散布機 3 米麦改良

写真 1 明渠の施工状況写真 2 収穫作業 ⑶ 適期収穫による4 年連続全量 1 等当組合では作目ごとに責任体制が明確になっており小麦栽培については小麦班長の指示により小麦の成熟程度を注意深く観察し適期収穫に努めておりますまた適期収穫を確実に行うための独自の取り組みとして近隣の生産組合と連携しコンバインやオペレーターを融通し合って一斉に刈り取り作業を行っています ( 写真 2)

高い所得率当組合の麦売渡代金は10a 当たり5,087 円で県平均より高いとはいえ全国レベルでは低く粗収益は高いとはいえませんしかし肥料費等を低く抑え農機具の適切な管理により耐用年数を延長して農機具費の節減を図るなどの経営費を低くする努力がなされることにより所得が確保されており所得率は68.

4 写真 1 明渠の施工状況写真 2 収穫作業 ⑶ 適期収穫による4 年連続全量 1 等当組合では作目ごとに責任体制が明確になっており小麦栽培については小麦班長の指示により小麦の成熟程度を注意深く観察し適期収穫に努めておりますまた適期収穫を確実に行うための独自の取り組みとして近隣の生産組合と連携しコンバインやオペレーターを融通し合って一斉に刈り取り作業を行っています ( 写真 2) さらに高い乾燥技術を有し高水分麦でも受け入れ可能なJAの乾燥施設を利用し共同乾燥比率にしていることにより高水分であっても収穫することができ刈り遅れによる品質低下を防いでおります以上に加え後述する取り組みにより 4 年連続して1 等比率を達成しています ( 表 3) 特に平成 25 年産は県全体の1 等比率が60% にもかかわらず当組合がを達成していることは注目に値します ⑷ 高い所得率当組合の麦売渡代金は10a 当たり5,087 円で県平均より高いとはいえ全国レベルでは低く粗収益は高いとはいえませんしかし肥料費等を低く抑え農機具の適切な管理により耐用年数を延長して農機具費の節減を図るなどの経営費を低くする努力がなされることにより所得が確保されており所得率は68.9% と高水準になっています ( 表 4 ) ⑸ 組合員の高いモチベーション維持によるほ場管理の徹底麦の収穫から播種までの間は土地の所有者の責任としてほ場を管理し雑草防除や土づくりに励み前作が水稲の場合は播種時の作業を容易にするため中干し後はほ場に水を入れずほ場の水分状況を良好に保つことを徹底していますまたこれらの作業の実施状況やほ場ごとの単収を点数化し点数に応じて組合からの支払料金を加算して小麦作に対する組合員のモチベーション向上に努めています 4 収量の向上品質の改善技術上の特色で述べた小麦栽培好適ほ場の選定連作による畑地化排水対策土づくり適期収穫に加え適期播種を最優先にして取り組んでおりますまたドリルシーダーの利用により発芽を斉一化し踏圧作業の実施を徹底しほ場毎に細心の気配りをして作業を行うこ米麦改良 4

とにより収量の高位安定と上位等級麦の出荷に努めています追肥については生育状況を見ながら早春減数分裂期穂揃い期の3 回に分けて行っています ( 表 2) 赤かび病対策として薬剤散布を2 回行うと共に出穂後に多数の組合員によるり病穂の一斉抜き取りを実施しています ( 写真 3) また組合が自ら実証ほ場を設け播種量追肥時期土壌改良材の選定などについて地域の適合性を検証

5 とにより収量の高位安定と上位等級麦の出荷に努めています追肥については生育状況を見ながら早春減数分裂期穂揃い期の3 回に分けて行っています ( 表 2) 赤かび病対策として薬剤散布を2 回行うと共に出穂後に多数の組合員によるり病穂の一斉抜き取りを実施しています ( 写真 3) また組合が自ら実証ほ場を設け播種量追肥時期土壌改良材の選定などについて地域の適合性を検証検討し独自の栽培マニュアルを作成していますこれらの努力により県平均収量 178kg/10aを大きく上回る375kg/10aの高単収を実現しています ( 表 3) また前述の様に4 年連続 1 等比率を達成し品質区分も4 項目全てで基準値内を達成してのAランクとなりました写真 3 赤かび病穂の抜き取り作業表 3 単収と上位等級の割合年産麦種品種作付面積通年借地期間借地経営受託 3 年前小麦ゆきちから 1,930a a a 1,930a 2 年前小麦ゆきちから 1,796a a a 1,796a 前年小麦ゆきちから 1,909a a a 1,909a 本年小麦ゆきちから 2,100a a a 2,100a 10a 当たり収量 304kg (160kg ) 393kg (188kg ) 357kg (165kg ) 375kg (178kg ) 上位等級比率 (78.1%) (60.0%) (88.1%) (95.5%) 注 )( ) 内は岩手県の平均値 5 労働時間の軽減当組合では作目ごとに部会を設けており小麦部会では毎年作業計画を作成し効率的に作業を行いまた小麦に係る作業を組合で一元的に実施して集積を図り大型機械を用いた一貫作業を行っております ( 表 5) これにより作業時間は 3.45 時間 /10aとなり県平均の7.60 時間 /10aより大幅な省力を実現しています 6 流通の改善合理化当組合の所属する岩手中央農業協同組合に乾燥調製作業を全量委託し全量をバラ出荷するなど大幅な合理化が図られています 7 今後の麦作への取組今後も実証ほ場を設けて地域の土質気候作業体系に適した技術を検討選択することによりさらなる高品質高単収をめざしています組合員に畜産農家が多いことから地域内資源循環 ( 堆肥と飼料作物 ) を図ると共に地力維持についてはこれまでの所有者の自主的な実施体制から堆肥の施用等地力向上対策について組合がリーダーシップを取ることを検討しています当該地域の地域農業マスタープランにおいて当組合は中心となる経営体に位置づけられており当組合を中心とした地域作りが推進されることから平成 28 年度を目標として法人化が予定されています今後は借地や作業受託等により生産拡大を図るとともに組織体制の検討や後継者の確保を図ります 5 米麦改良

6 表 4 麦に係る収益の明細粗収益 A 経営費 B 所得 A-B 項目 10a 当たり換算岩手県平均 ( 下注 ) 麦売渡代金円円円 ( 主食用途 ) 1,068,340 5,087 4,222 自家消費等副産物 145 補助金 58,175 ( 畑作物直接支払交付金 ) 11,766,272 56,030 ( 水田活用直接支払交付金 ) 7,350,000 35,000 小計 20,184,612 円 96,117 円 62,542 円種苗費 566,040 円 2,695 円 2,321 円肥料費 985,586 4,693 9,080 農業薬剤費 1,153,800 5,494 2,476 光熱動力費 80, ,862 その他の諸材料費 861,564 4,103 0 土地改良及び水利費 0 0 2,600 賃借料料金 2,269,210 10,806 5,614 物件税公課諸負担 27, 農機具費 234,875 1,118 12,367 建物費 100, 自動車費雇用労働費支払利子支払地代等 0 0 9,073 小計 6,278,715 円 29,899 円 47,165 円 13,905,897 円 66,218 円 15,377 円 ( 所得率 68.9 % 注 ) 県平均は平成 25 年産米および麦類の生産費 ( 農林水産省 ) の値を記入した作業名使用機械名型式規格馬力 ( 共通作業機 ) トラクター暗きょ明きょ溝切機耕起トラクター整地溝切り土壌改良材ブロードキャスター 37ps ヤンマー F37D ササキコーポレーション 37ps ヤンマー F37D 他ササキコーポレーション BD-203 台数稼動面積個人有共有借用 a 1 稼動期間月日 ~ 日実稼働日数 1 2, 月 11 日 ~23 日 ,100.0 夏 ( 麦稈鋤き込み )1 回秋 ( 播種前 )1 回 4 備考組合員が個々に行っている 15 分 /10a 2 回 1 2, 月 22 日 ~28 日 4 土壌改良材散布播種 YAZAKI クリーン 2,100.0 ドリルシーダ 1 10 月 1 日 ~9 日 5 施肥同時播種機ふく土シーダ 10 連 2,100.0 追肥踏圧防除背負式動力散布機タイヤローラーブームスプレーヤー丸山 MD- J6000GT-26 他 37ps ヤンマー F37D 他表 5 農業機械利用状況 1 2, 月 7 日 ~5 月 9 日 , 月 27 日 ~28 日 2 丸山 BSM-500J 1 2, 月 13 日 ~14 日 3 月 29 日 ~30 日 5 月 20~28 日刈取り自脱型イセキ 6 条 1 2, 月 24 日 ~27 日 4 } 脱穀コンバインイセキ 5 条 1 2, 月 24 日 ~27 日 4 運搬トラック 2t 4 2, 月 24 日 ~27 日 4 乾燥調製土壌処理剤生育期除草剤赤かび病防除 JA へ委託米麦改良 6

(Microsoft Word -

(Microsoft Word - Ⅲ 経営計画の作成 4 機械選定の考え方 (1) 機械化計画の手順前提条件整理土地利用計画耕種計画作物別作業ごよみの作成労働力計画使用機械計画作業条件の設定 ( 機械利用条件 ) A 作業可能日数 ( 日 ) B 1 日の作業時間 ( 時間 ) C 実作業率 (%) 機械の選定作業可能時間 ( 時間 ) A B C 必要作業能率 ( 時 /ha) 機械の種類大きさの決定 ( 馬力