研究報告書レイアウト例（当該年度が最終年度ではない研究班の場合）

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1 長寿医療研究開発費平成 28 年度総括研究報告レビー小体病における preclinical/prodromal 期からの自然歴解明とバイオマーカー開発 (28-8) 主任研究者鈴木啓介国立長寿医療研究センター治験臨床研究推進部長研究要旨本研究ではレビー小体病 ( レビー小体型認知症およびパーキンソン病 ) における preclinical/prodromal 期からの病態進行の自然歴を明らかにしつつ生化学的解析により新規バイオマーカーを同定することでレビー小体病の早期発見早期治療により認知症克服へ向けた基盤を提供することを目的にレビー小体病患者が過去に受診した健康診断のデータを後方視的に収集するとともに健康診断受診者に対する質問紙を用いた調査によってレビー小体病でみられる非運動症状の有無を解析した並行して prodromal 期からの病態進行の自然歴を解明するための MCI レジストリの基盤整備も行ったまたレビー小体病患者の血清サンプルの網羅的メタボローム解析を行い健常コントロールとの比較を行なった健康診断受診者において質問紙の回答内容から自律神経機能障害や REM 睡眠行動異常が疑われる者が認められレビー小体病の診断を受けていない健康診断受診者のなかにレビー小体病の有リスク者 (at risk) が存在する可能性が示唆されたまたメタボローム解析ではレビー小体病における尿酸代謝異常が示唆された今後はさらにサンプル数を増やしてレビー小体病における代謝変化の全体像を明らかするとともにレビー小体病のハイリスク者においても同様の解析を行う必要があると思われる主任研究者鈴木啓介国立長寿医療研究センター治験臨床研究推進部長分担研究者新畑豊国立長寿医療研究センター脳機能診療部長勝野雅央国立長寿医療研究センター名古屋大学大学院医学系研究科 ( 教授 ) A. 研究目的レビー小体型認知症 (DLB) は変性性認知症の中で 20~40% 程度を占めると推定されアルツハイマー病に次いで頻度の多い認知症である DLB では変動する認知機能低下に加え幻視自律神経障害パーキンソニズムなどの合併を特徴とするその病態はパー 1

2 キンソン病 (PD) と大きく共通しており α シヌクレインの細胞内異常蓄積 ( レビー小体 ) やミトコンドリア機能障害により大脳 ( とくに後頭葉 ) および脳幹の機能低下を来たすことが本疾患の中心的病態と考えられているそのため DLB と PB の両者を併せてレビー小体病と呼ぶことが多いレビー小体病では神経症状の発症数年以上前から便秘排尿障害低血圧などの症状がみられることが後方視的研究において示唆されておりアルツハイマー病と同様に認知機能低下の発症前から α シヌクレインの蓄積を初めとする分子病態が進行していることが想定されているしかしリスク因子や発症前の進行に関する研究はアルツハイマー病に比べレビー小体病では大きく遅れているその重要な要因のひとつはレビー小体病に特異的なバイオマーカーが確立されていないことである髄液中アミロイド β やタウなどが発症前病態の把握に有用なアルツハイマー病とは異なり髄液ないし血清 α シヌクレインなどはレビー小体病の早期診断マーカーとしての妥当性を欠くことが指摘されているまた血清尿酸値が高値であるとレビー小体病の発症リスクが低くなることおよび疾患の進行速度が遅くなることが過去の研究において明らかにされているが尿酸以外に現在レビー小体病のバイオマーカーとして確立している測定可能な因子はほとんどないこのことはレビー小体病の早期病態を解明するためには新規のバイオマーカーの確立とそれを用いた定量的前向き研究が必要であることを意味しているそこで本研究では健康診断やレジストリ研究データと臨床データとの連結という他の研究にはないリソースを用い preclinical/prodromal 期からの病態進行の自然歴を明らかにしつつ生化学的解析により新規バイオマーカーを同定することでレビー小体病の早期発見早期治療により認知症克服へ向けた基盤を提供することを目指している B. 研究方法 1preclinical/prodromal 期からの自然歴解明国立長寿医療研究センターおよび名古屋大学とその関連病院に通院中のレビー小体病患者が過去に受診した健康診断のデータを後方視的に収集するとともに高山久美愛病院およびだいどうクリニックにおける健康診断受診者に対する質問紙を用いた調査によりレビー小体病の非運動症状の有無を解析したまた国立長寿医療研究センターで構築している MCI レジストリ (ORANGE-MCI) においてレビー小体病を発症した患者でもデータを後方視的に収集することを計画した 2レビー小体病患者におけるバイオマーカー開発名古屋大学と共同してレビー小体病患者から得られた血清サンプルについて網羅的メタボローム解析を行ったまた対照として疾患のない健常コントロールの血清サンプルについても同様の解析を行ったこれらの解析に利用した血清サンプルは国立長寿医療 2

3 研究センターおよび名古屋大学とその関連病院から収集されたものである ( 倫理面への配慮 ) 患者の診療情報および検体を用いた研究については人を対象とする臨床研究に関する倫理指針およびヒトゲノム遺伝子解析研究に関わる倫理指針を遵守したまた国立長寿医療研究センター倫理利益相反委員会および名古屋大学医学系研究科生命倫理審査委員会や関連する施設に設置されている倫理委員会に対し申請を行い本研究の倫理性について第三者の立場から承認を得ることにより倫理的妥当性を確保した上で本研究は実施されている C. 研究結果 1preclinical/prodromal 期からの自然歴解明国立長寿医療研究センター名古屋大学およびその関連病院に通院中のレビー小体病患者が過去に受診した健康診断のデータや神経症状の経時的データ各種血液検査結果などの収集を行うため新規臨床研究の研究計画書および研究対象者への説明文書を作成したこの研究計画書と説明文書をもとに 2016 年 9 月に開催された名古屋大学倫理委員会において本研究の審議が行われ 10 月 25 日付で承認が得られたまた長寿医療研究センターの倫理利益相反委員会でも 2016 年 11 月に開催された委員会において審議が行われ条件付承認となったその条件に基づいて研究計画書と説明文書の修正を行い長寿医療研究センターにおいても承認に至った承認が得られた説明文書を用いてレビー小体病患者やコントロールとなる健常者への同意取得が進められた Preclinical 期からの自然歴解明のため定期的健康診断の受診者に対し PASE SCOPA-AUT 日本語版 RBDSQ-J SAOQ BDI-Ⅱ JESS を盛り込んだアンケートを配布し回答を収集したその結果日常の活動量を調査する PASE の値は ± であり我が国からの既報告と同等の値であった自律神経機能に関する質問表である SCOPA-AUT は 5.13 ± 4.26 点であり海外の既報告における健常者の平均値よりやや低い値であったが既報告における PD 患者の平均値を超える健診受診者も 9 名いたレム睡眠行動異常症に関する質問紙でも陽性とされている 5 点以上の受診者が 18 名みられた嗅覚障害に関する質問紙である SAO-Q では平均値の-2SD 以下の受診者が 9 名みられた日中の眠気を評価する EDSS で高度と判定される 16 点以上を 5 名認めた SCOPA-AUT が 12 以上でかつ RBD-Q が 5 点以上である受診者は 2 名でいずれの受診者も鬱スコアである BDI-II が高値であった prodromal 期からの自然歴解明として MCI レジストリ (ORANGE-MCI) に登録されたレビー小体病患者においても後方視的なデータ収集やバイオサンプルの収集を行うこと 3

4 を計画している本年度はその準備段階としてレジストリの基盤構築が進められレジストリデータを入力するとともにデータの検索も可能となるデータベース (CITRUS) を整備し国立長寿医療研究センターを含むレジストリ参加施設において実際のデータ入力が開始された現在のところ国立長寿医療研究センターだけでも 100 例弱の MCI もしくは軽度認知症の症例が登録されているがレビー小体病の診断に至った登録症例はない状況である 2レビー小体病患者におけるバイオマーカー開発 1でも述べたように国立長寿医療研究センター倫理利益相反委員会および名古屋大学医学系研究科生命倫理審査委員会や関連する施設に設置されている倫理委員会に対し申請が行われ承認が得られた説明文書を用いてレビー小体病患者やコントロールとなる健常者への同意取得を進め血清サンプルを収集したレビー小体病患者 5 例および健常コントロール 5 例の空腹時血清を用いキャピラリー電気泳動 - 飛行時間型質量分析計 (CE-TOFMS) のカチオンモードアニオンモードによる測定を実施したその結果 184( カチオン 138, アニオン 46) のピークが検出された群間における発現量の有意差を認めた代謝物は 1-Methyl-2-pyrrolidone Asn Kynurenine N-Acetylalanine N-Acetylputrescine Uric acid などであったとくに尿酸代謝に注目すると尿酸は患者群において低値であったがヒポキサンチンやキサンチンはコントロールに比べ有意差はないものの患者群において高値であった D. 考察と結論本研究では健康診断受診者において質問紙の回答内容から自律神経機能障害や REM 睡眠行動異常が疑われる者が 10% 程度みられたこのことはレビー小体病の診断を受けていない健康診断受診者のなかにレビー小体病の有リスク者 (at risk) が存在する可能性を強く示唆しているただ自律神経機能障害を有する受診者と REM 睡眠行動異常を有する受診者の間には重複が少ないことからレビー小体病の発症前病態は多様である可能性があるまた本研究で施行されたメタボローム解析においてレビー小体病における尿酸代謝異常が示唆された尿酸は抗酸化作用を有すると考えられておりパーキンソン病患者における低尿酸血症の存在が他の研究でも示唆されている (Picillo et al. J Neural Transm 2016) 本研究では尿酸代謝以外にもキヌレニン経路などに関する代謝物の変動も見られたことから今後サンプル数を増やして代謝変化の全体像を明らかにしていく必要があるまた各代謝物の発現量と運動症状非運動症状の重症度の相関を解析することによりレビー小体病の種々の症状と代謝変化の関連を明らかにすることができると考えられるもしこれらの代謝変化がアルツハイマー病における髄液中アミロイド β やタウなどのよ 4

5 うにレビー小体病の早期診断マーカーとして有望であるようなら健康診断の受診者からレビー小体病の有リスク者を抽出し同様の解析を行っていきたいと考える E. 健康危険情報なし F. 研究発表 1. 論文発表 1. Saji N, Sakurai T, Suzuki K, Mizusawa H, Toba K, on behalf of the ORANGE investigator, ORANGE s challenge: developing wide-ranging dementia research in Japan. Lancet Neurol. 2016; 15(7): 鈴木啓介新畑豊鷲見幸彦. アルツハイマー病と新オレンジプラン治療治験中の薬物. CLINICAL NEUROSCIENCE 34(9), 佐治直樹島田裕之櫻井孝武田章敬柳澤勝彦鈴木啓介伊藤健吾鳥羽研二. 日本における認知症克服の取り組み.Medical Science Digest. 2016; 42(14): 学会発表 1. 鈴木啓介伊藤健吾新畑豊千田一嘉佐藤弥生伊藤文隆飯島祥彦勝野雅央渡辺宏久祖父江元. 認知症軽度認知障害を対象とした治験におけるインフォームドコンセントの現状と課題. 第 57 回日本神経学会学術集会神戸 2. 千田一嘉新畑豊鈴木啓介伊藤健吾. 医学系研究倫理統合指針に応じた老年医学研究倫理教育研修体制の整備事業. 第 58 回日本老年医学会学術集会金沢 3. 鈴木啓介伊藤健吾佐藤弥生伊藤文隆片山朱美本田愛伊藤有香井上麻希佐藤倫子鈴木寿恵. 認知機能が低下した被験者を対象とする治験におけるインフォームドコンセント取得の現状. 第 16 回 CRC と臨床試験のあり方を考える会議大宮 4. 本田愛中村昭範加藤隆司新畑豊岩田香織倉坪和泉佐藤弥生鈴木啓介伊藤健吾 MULNIAD study group. 臨床研究におけるアミロイド PET 検査のインフォームドコンセントと結果開示の留意点に関する検討. 第 16 回臨床試験の在り方を考える会議大宮 5. 倉坪和泉鷲見幸彦永田理紗子鈴木啓介佐藤弥生伊藤健吾. 臨床研究にお 5

6 ける神経心理検査評価者への教育. 第 34 回日本神経治療学会総会米子 6. 鈴木啓介伊藤健吾佐藤弥生伊藤文隆片山朱美本田愛伊藤有香井上麻希佐藤倫子鈴木寿恵. 認知症軽度認知障害を対象とした治験における服薬アドヒアランスの実態について. 第 37 回日本臨床薬理学会学術総会米子 7. 鈴木啓介伊藤健吾鷲見幸彦. 認知症治療における unmet medical needs の克服を目指した創薬の課題と展望 BPSD とレジストリを中心に. 第 37 回日本臨床薬理学会学術総会米子 G. 知的財産権の出願登録状況 1. 特許取得なし 2. 実用新案登録なし 3. その他なし 6

研究報告書レイアウト例（当該年度が最終年度ではない研究班の場合）

研究報告書レイアウト例（当該年度が最終年度ではない研究班の場合）長寿医療研究開発費平成 29 年度総括研究報告治験関連情報の一元管理を可能とする治験管理システムの開発 (29-44) 主任研究者平島学国立長寿医療研究センター治験臨床研究推進センター ( 治験臨床研究主任薬剤師 ) 研究要旨治験には症例実施時に発生する費用があり治験薬の投与期間や治験の進捗状況に応じて依頼者毎で請求時期が異なっている現状では契約進捗請求の情報が別々の情報として管理されているため