(2) 生徒観 4 年次在籍生徒 7 名のうち,21 歳の生徒が1 名,20 歳の生徒が3 名,18 歳の生徒が3 名 ( 平成 28 年 10 月 31 日現在 ) である したがって,4 年次に在籍する全ての生徒が選挙権を有していることになる また,4 年次生は, 昨年度, 現代社会 の単元 選

Transcription

1 公開研究授業 公民科 ( 時事問題 ) 学習指導案 呉三津田高等学校 定時制課程 教諭中下雄介 1 日時 平成 28 年 11 月 29 日 ( 火 ) 第 2 校時 (18:25~19:15) 2 場所 視聴覚教室 (A 校舎 4 階 ) 3 年次 4 年次 ( 男子 2 名, 女子 5 名計 7 名 ) 4 使用教材 私たちが拓く日本の未来 ~ 有権者として求められる力を身に付けるために~ ( 総務省文部科学省 ) 以下, 副読本 最新図説現社 ( 浜島書店 ) 5 単元名 政治的教養の教育 6 単元について (1) 単元観本校では, 1 広い視野に立って, 現代社会の諸問題について主体的に考察し, 公正に判断する力を身に付ける また, 時事に関する諸問題に興味 関心を持つ ことと 2 自ら人間としての在り方生き方について考察する力を養い, 良識ある公民としての必要な能力と態度を育てる ことを目的として,4 年次に学校設定科目 時事問題 を設定している 平成 27 年 6 月, 公職選挙法が改正され, 選挙権年齢が 18 歳以上に引き下げられた この法改正に伴う選挙制度の意義を理解し, 自らの問題として考えることは, 時事問題 の目的に合致する 本単元は, 高等学校学習指導要領公民現代社会 の (2) 現代社会と人間としての在り方イ現代の民主政治と政治参加の意義 に準じた学習内容である また, 本単元は, 副読本指導資料の留意点 1にあるように 現実の具体的政治事象を取り扱うことによる政治的教養の育成 を目指すものであり, 話し合いや討論等を通じて生徒が自らの考えをまとめていく 学習であると言える 今回の授業は,4 年次生が卒業する前の最後の 政治的教養の教育 の授業となる グループ協議や模擬選挙を通じて, 卒業後も, 友人や家族等と選挙について議論し, 実際に投票所に足を運んでくれればと思う

2 (2) 生徒観 4 年次在籍生徒 7 名のうち,21 歳の生徒が1 名,20 歳の生徒が3 名,18 歳の生徒が3 名 ( 平成 28 年 10 月 31 日現在 ) である したがって,4 年次に在籍する全ての生徒が選挙権を有していることになる また,4 年次生は, 昨年度, 現代社会 の単元 選挙と政党 及び全校での 政治的教養の教育講座 で選挙制度等について学習している 別紙 1の 政治的教養の教育に係る事前学習シート を用い, これまでの既習内容がどの程度定着しているかを調べたところ, 1 選挙について では, 平均正答数が 5.7 問 ( 最高 8 問, 最低 3 問 ), 2 選挙活動について では, 平均正答率が 6.1 問 ( 最高 8 問, 最低 4 問 ) だった 2 択の問題であることから考えて, この結果では, これまでの学習内容が定着しているとは言いがたい 改めて, 単元全体を通じて丁寧に基礎的な内容から学習をし直す必要がある 3 実際の投票について のアンケートでは, 平成 28 年 7 月の参議院議員通常選挙に投票に行った生徒は1 名のみで, 割合にすると全体の 14.3% であることが分かった 実際の投票率が,10 歳代で 46.78%,20 歳代で 35.60% であった ( 総務省 ) ことと比較しても, 本校の生徒の投票率は極端に低いと言える また, 投票で困りそうなことを尋ねる質問では, 半数を越える4 名の生徒が 情報が少なく, 誰に投票したらよいか判断できない を挙げた これらのことから, 模擬政見放送や模擬選挙を通じ, 話し合いや討論等を通じて生徒が自らの考えをまとめていく 学習を行い, 実際の投票行動につなげて行く必要があると考える 平成 28 年 9 月に別紙 2の 自分自身について と題した質問紙調査 ( 以下, アンケート ) を実施したところ, 次のようなことが分かった 4 年次生は, 入学当初から自己肯定感が低い傾向がみられたが, 今回の調査でも同様の傾向がみられた ( 質問番号 12 13) 言葉で自分の考えを伝えることも平均ポイントより低い結果となった ( 質問番号 ) 一方で, 共感的人間関係に係る質問項目については比較的高い数値が出ており ( 質問番号 24~30), クラス内の人間関係は良好で, 相互に話しやすい雰囲気は備わっているものと考える (3) 指導観まずは, これまでの学習を踏まえ, 選挙に係る基礎的な内容から復習をしていきたい その後に地域課題を見付ける学習を行い, 課題解決に向けての協働的な学習を行いたいと思う 生徒の多くが呉市に在住していることから, 地方自治の課題を見付ける題材として, 呉市を取り上げる 地域課題について考えた後に, 模擬投票を体験させる等体験的な活動を行うことで, 生徒が地方自治に関心を持ち, 選挙に係る実践的な知識を身に付けてくれればと考えている 実際の選挙で投票するためには, 各候補者の主張を比較し, どの候補者が相応しいかを判断する必要がある そのために, 架空の呉市長選挙という設定のもと, 本校の2 名の先生方を呉市長候補者とし, 模擬政見放送から政策の違いをワークシートにまとめさせたい 模擬政見放送は,ICT 機器を活用し, 映像を流すことで, 生徒に現実感を持たせたいと思う 模擬政見放送では, まずは個人思考でどの候補者に投票するか, その決め手となったものは何かを考えさせたい その上で, グループ討議を行い, 他者との考えの相違に気付かせ, 話し合いや討論等を通じて自らの考えをまとめることができるよ

3 うにさせたい 自分と他者との考え方の違いを知ることは, 議会制民主主義を支える選挙の意義や, 投票を通した政治参加の在り方を考えることにもつながる 模擬選挙では, 教室に再現した投票所で, 実際の選挙と同じ方法で投票することを体験させたい 体験的な学習を通じて, 有権者としての自覚を高め, 政治や選挙に興味 関心を持つことにもつながると考える また, 本校では, 生徒指導の三機能 ( 自己決定の場を与える 自己存在感を与える 共感的人間関係を育成する ) を生かして, 基礎学力を定着させ, 協働する学習活動を取り入れることにより, 思考力 判断力 表現力及びコミュニケーション能力の向上をめざした授業づくりに取り組んでいる 生徒指導の三機能をより効果的に働かせるためには, 特別支援教育の視点を生かした授業実践が有効である との仮説のもと, 特別支援教育の視点を生かした授業を意識的に行ってみたい 特別支援教育の視点を生かした授業を行うために参考になるのが 生徒指導リーフ Leaf.3 発達障害と生徒指導 ( 国立教育政策研究所 ) である そこには, 全ての生徒にとってわかりやすい授業をつくるためには, 集団指導と個別支援が必要とある (2) 生徒観の後半で述べた, 個々の生徒の特性を踏まえ, 本単元では集団指導と個別支援を特に意識し, 他者と協働しながら自分の意見をまとめさせる場面を意図的につくり, 自分の意見を自信を持って発表できるようにさせたい 7 単元の目標選挙や地方課題の見つけ方に着目し, それらを客観的に理解するとともに, 諸課題について考察し, 望ましい政治の在り方及び主権者としての政治参加の在り方について考え, 主権者として責任ある行動をとることができる 8 単元の指導計画 考え 基礎知識 選挙や地域課題の見つけ方について, 諸資料を活用して考えることができる つながり 討論を通して選挙や政治の在り方について多面的 多角的に考察し, 様々な立場, 考え方を踏まえ, 公正に判断して, その過程や結果を適切に表現することができる 応用 ひろがり 選挙や政治に関心を持ち, 実際の選挙で投票所に向かい, 国家 社会の形成者としての責任を果たそうとしている 時 学習内容 主な学習活動 1~2 選挙の実際 選挙の仕組みについて関心を持ち, 実際の選挙の流れや投票方法等について理解する 3~4 地域課題の見つけ方 選挙や地域課題の見つけ方について, 諸資料を活用して調べる 5 本時 模擬選挙 討論を通して選挙や政治の在り方について多面的 多角的に考察する

4 9 本時の展開 (1) 本時の目標選挙と地域課題に興味 関心を持ち, 選挙や政治について自ら考え, 話し合いや討論等を通じて考えをまとめ, 適切に表現することができる (2) 本時の観点別評価規準関心 意欲 態度 思考 判断 表現 知識 理解 選挙と地方自治に対する 課題解決の在り方につい 実際の選挙の流れを実感 関心を高め, 選挙を通した政治参加の在り方について考察しようとしている て多面的 多角的に考察し, 様々な立場, 考え方を踏まえ, 公正に判断して, その過程や結果を適切に表現している し, 投票日に主体的に投票所に向かい, 投票できるような実践的な知識を身に付けている (3) 準備物プロジェクターパソコン投票箱 ( 呉市選挙管理委員会から借用する ) 投票記載台 ( 呉市選挙管理委員会から借用する ) 入場整理券投票記載台に貼ってある候補者名等の用紙投票用紙ワークシート事後学習シート (4) 学習の展開 学習活動 指導上の留意点 ( 集団指導の観点から ) ( 個別支援の観点から ) 評価規準 観点 ( 評価方法 ) めあて 身近な地域課題について他者との意見の違いを確認し, 自分の考えをまとめ, 実 際の選挙で投票所に行くという強い気持ちを持つ 1 号令 本校の礼式に則り, 挨拶を行うこ とで授業規律を確保する 2 座席の組み替え 他者と話しやすい座席配置に する

5 3 事前アンケートの確認 パワーポイントを用いて事前学 習シートの結果を提示し, 本校の 生徒の実態について確認する 課題 選挙で投票するときに, 何を判断基準にすればよいのだろうか? 4 架空の呉市長選挙における政見放送 生徒は,2 名の候補者 ( 教員が演じる ) のICT 機器を活用した政見放送を見ながら, それぞれの主張をワークシートにメモをする 候補者 A 小さな政府を志向候補者 B 大きな政府を志向 関心 意欲 態度 ワークシートに, 箇条書きにする ( 行動観察 ワーク ように指示をする シート ) メモが苦手な生徒に対して, 机間指導を行い,1 つでも良いのでメモをするように促す メモをとりきれなかった生徒には, 予め指導者が用意したまとめプリントを配付する 5 個人思考を行い, どちらに投票するか考える 2 名の候補者それぞれについて 自分が評価できる政策 と 実現に疑問を感じる政策 に分け, ワークシートに印をつける 思考 判断 表現 パワーポイントで作業の概要 ( 行動観察 ワーク を提示する 視覚支援 シート ) 作業に戸惑う生徒については, 机間指導で個別支援を行う 6 グループ協議思考 判断 表現 3~4 名のグループで, そ グループ協議のルールをパワー ( 行動観察 ) れぞれの学習者が考えたポイントで提示する 自分が評価できる政策 とアグループ内で全員が発表を 実現に疑問を感じる政策 する について発表しあい, 相違イ他者の発言は最後まで聞く 点について整理する ウ他者発言の否定はしない エ他者と自己の考えの違いに着目する 自分の意見を発表することが苦手な生徒に対して机間指導を行い, 発言の支援を行う 7 模擬選挙 クラスメイトとの意見交流を踏まえ, 自分が誰に投票するかを決定し, 模擬選挙 知識 理解 投票記載台 投票箱は実物を使用 ( 行動観察 ) し, 指導者が関係者を演じて, 実際の選挙に近い雰囲気をつくる

6 を行う 実際の選挙の投票手順に従い, 投票を行う 入場 受付 名簿対照係 投票用紙交付係 投票記載台 投票箱 投票立会人 退場 投票の流れを, パワーポイント で提示する 視覚支援 8 開票 指導者が票を集計し, 当選者の発表を行う その際, 票が割れていることを押さえ, 人によって重視すべき点が異なることを確認する 開票結果を踏まえて考えさせたいこと (1) 投票の結果, 落選者に投じられた票は単なる 死票 なのか 落選者に投じられた票にも価値がある (2) 選挙後に 有権者として責任ある行動をとる ためにはどうすればよいのか 政治の動向を見守り, 次の選挙の投票行動につなげる 等 9 振り返り なぜ, 最終的にその候補者に投票したのかを記入させ, 発表させる 思考 判断 表現 発表を苦手とする生徒について( 行動観察 事後学 は, 指導者が生徒に代わって事後習シート ) 学習シートに記入していることを読む 10 本時のまとめ 有権者として, 政治に興味 関心を持つ また, 選挙では候補者の情報を集め, 他者の 意見も参考にしながら, 自分で考え, 決断して投票することが大切 選挙に行ってみようと思うようになったか, 新たに疑問に思ったこと などを事後学習シートに記入する 関心 意欲 態度 一票の重みについて触れ, 選挙後 ( 事後学習シート ) も政治の行方を見守ることが重要であることをおさえる 学習者の疑問について, 次時以降で答える 11 号令 本校の礼式に則り, 挨拶を行うこ とで気持ちよく授業を終える

7 別紙 1 政治的教養の教育 に係る事前学習シート 4 年 ( ) 番氏名 ( ) 1 選挙について 次の問いについて, 内容が正しいものには 誤っているものには を記入してく ださい 問 1 平成 28 年 7 月 10 日 ( 日 ) に投票が行われた選挙は, 衆議院議員総選 挙である 問 2 日本国民で満 18 歳以上であれば, 高校生でも選挙権が与えられる 問 3 投票時間は, 原則として 7 時から 18 時までである 問 4 問 5 問 6 問 7 問 8 問 9 投票日当日に, 仕事の予定がある有権者は, 投票日の前に 期日前投票 不在者投票 を行うことができるが, 遊びに行く有権者はできない 衆議院議員総選挙は, 小選挙区選挙と比例代表選挙の2つからなるが, 最高裁判所裁判官の国民審査も同時に行われるので,3 つの投票がある 参議院議員通常選挙では, 選挙区選挙と比例代表選挙の2つからなり,2つの投票がある 参議院議員通常選挙の比例代表選挙では, 有権者は投票用紙に政党名以外を記入すると無効になる 投票日が近づくと, 封書やはがきで選挙の案内 ( 投票所入場整理券 ) が自宅に届き, 紛失したり持参するのを忘れても, 本人の確認ができれば投票ができる 近年の投票率は, 上昇傾向にあり, 衆議院議員総選挙, 参議院議員通常選挙の投票率は 80% を超えている 問 歳代と 60 歳代の投票率を比較すると,60 歳代の投票率の方が高い

8 2 選挙運動について次の問いについて, 内容が正しいものには 誤っているものには を記入してください 選挙運動とは, 特定の選挙について, 特定の候補者の当選を目的と問 1 して, 投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為 のことである 選挙運動は, 選挙の公示日又は告示日から, 投票日の前日までの間に問 2 しか行うことができない 問 3 満 18 歳未満の者でも, 選挙運動を行うことができる 問 4 問 5 問 6 問 7 問 8 問 9 問 10 満 18 歳以上の者なら, 友だちに電話をかけ, 投票や応援を依頼してもよい 満 18 歳以上の者なら, 個別に家庭を訪問して, 投票や応援を依頼してもよい 満 18 歳以上の者なら, 自分で選挙運動メッセージを掲示板 ブログなどに書き込んでもよい 満 18 歳以上の者なら, 選挙運動メッセージを SNS など ( リツィート シェアなど ) で広めてもよい 満 18 歳以上の者なら, 候補者から送られてきた選挙運動用電子メールを友だちに転送してもよい 満 18 歳以上の者なら, 友だちに食事をおごる約束をして, 特定の候補者に投票を依頼しても問題はない 満 18 歳以上の者なら, 選挙運動用のビラを配るアルバイトをしてもよい 3 実際の投票について (1) 平成 28 年 7 月に実施された, 参議院議員通常選挙に投票に行きましたか 1 行った 2 行っていない (2) 投票の際に困りそうなことは何ですか ( 複数回答可 ) 1 情報が少なく, 誰に投票すればよいか判断できない 2 投票したい候補者がいない 3 投票の仕方が分からない 4 投票に行く時間がない 5 投票する場所が近くにない 6 特に困ることはない 7 その他 ( )

9 アンケート ( 自分自身について ) 4 年次 7 名 ( 男 2 名女 5 名 ) 別紙 2 すごくあてはまる 7 わりにあてはまる 6 少しあてはまる 5 どちらともいえない 4 あまりあてはまらない 3 ほとんどあてはまらない 2 ぜんぜんあてはまらない 1 平均 1 人と違っていても自分が正しいと思うことは主張できる 途中でやめると人に迷惑がかかるので, 与えられた仕事は, 責任を持って取り組む 私は, 自分のことは, すべて自分で決めたいと思う 私は, 自分の個性を大事にしたい 将来の夢や目標を持っている 将来の夢や目標は叶うと思う 私は, できないことや難しいと思うことがあっても, できるように努力している 私は, その場に応じて自分で判断し, 責任を持って行動している 腹が立った時でも解決するために自分の気持ちを丁寧な言葉で伝えることができる 見たことや考えたことを順序良く伝えることができる 私は, 今の自分に満足している 私は, 自分のことが好きである 私の中には, 様々な可能性がある 私は, 自分に悲観することがない 私は, 自分という存在を大切に思える 私は, 自分の長所も短所もよくわかっている 私には, 誰にも負けないものがある 私は, 他人の役に立っていると思う 私は, 価値のある人間である 私は, 友達や先生など周りの人がいることで学校生活が充実している 私は, 人の意見を素直に聞くことができる 私は, 人の為に力を尽くしたい 私は, 他の人の気持ちを思いやることができる 自分のことを見守ってくれている周りの人に感謝している 私の家族は, 自分のことをわかってくれていると思う 私をよくわかってくれている友達がいる 私をよくわかってくれている先生がいる 私は, 学校でありのままの自分を出せる 私は, グループで活動するとき, 友達の考え方や行動を認めている 私は, 学級や様々な集団において, 自分なりに考えたことを発表することが大切だと思う