Resource competition among wood biomass power plants: A case in Iwate prefecture Daisuke Kunii Takashi Hayashi Policy Research Institute, Ministry of

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たいちつねざき
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1 木質バイオマス発電における資源競合 - 岩手県を事例として - 農林水産政策研究所國井大輔農林水産政策研究所林岳要旨木質バイオマスを利用した発電事業については, 既にいくつかの木質バイオマス発電所 ( 以下, 発電所とする ) が稼働中であるほか, 現在全国各地で新たな発電所の建設および建設計画が進行中である面的に広く薄く分布している木材を発電所のような大規模需要へ安定供給する場合, 木材の収集範囲が広範囲に及ぶことから, 立地条件や道路などのインフラを考慮した供給可能量の推計や, 同一燃料種を利用する他の需要者との競合関係の有無やその度合いを, 定量的に分析することが重要であるそこで本研究では, 岩手県内の発電所を事例に, 複数の発電所による木材需要において, どのような競合が生じているかを把握することを目的とする本研究ではまず, 道路網データや森林簿データなどの詳細なデータを用いた場合と, 発電所からの直線距離や植生図といった簡易なデータを用いた場合とで, 資源量の分析結果にどの程度の違いが生じるかについて明らかにするその後, 岩手県内の複数の発電所における木材の収集範囲の競合に関する検証を行い, 発電所間で木材の競合が発生する可能性があるのかを明らかにする分析の結果, データの違いによる結果の相違については, 詳細データとして道路距離を用いて設定した収集範囲と簡易なデータとして円ポリゴンを用いて設定した収集範囲では, 詳細データによる結果の方が木材の賦存量が大きくなる傾向が示され, 両者に大きな差が生じることが明らかになったまた, 特に輸送距離を長く設定することで両データによる結果の差が小さくなることから, 簡易データは収集範囲を広く設定する場合には一定の信頼性が確保できることが明らかになった一方, 木材の競合の状況については, 輸送距離を 50km として収集範囲を設定した場合, 約 80% の区域で他の発電所と木材の競合なく,1 つの発電所が独占的に木材を収集することができる一方, 輸送距離を 100km として収集範囲を設定した場合, 収集範囲の面積の 95% が複数の発電所で収集範囲が重なり, さらに収集範囲総面積の 50% 以上が 4 か所以上の発電所の収集範囲が重なっていたこのことから, 岩手県内でこれら 6 つの発電所が全て稼働した場合には, 岩手県内で発電用の木材の収集に関して, 発電所同士で競合が起きる可能性が示唆された

2 Resource competition among wood biomass power plants: A case in Iwate prefecture Daisuke Kunii Takashi Hayashi Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries (PRIMAFF), Japan Abstract In Japan, some wood biomass power plants are in operation, planned and under construction. When the plants collect wood resource from forests, they have to elaborate their resource collecting plans strictly using detailed data such as actual road networks and detailed survey data on forest resources because wood resource exists shallowly and widely. This nature of wood resource may cause plants to compete wood resources with others. This study aims to identify whether resource competition among multiple wood biomass power plants would occur using a case of Iwate prefecture, Japan. Firstly, we investigate whether data quality influences on the estimation results of wood resource potential. The analysis compares the results of wood resource potential estimated by detailed data such as data on forest registration record, and road networks with that estimated by more concise data such as vegetation data and statistics. Then, we identify the situation of resource competition among six wood biomass power plants in Iwate prefecture, Japan. The results show that there is a big difference between the result obtained by detailed data and concise data. The longer transportation distance is, the smaller difference between these two results become. Therefore, when the transportation distance is longer, the results from concise data gain certain reliability. For the analysis of resource competition, we found when travelling 50km to collect wood resource, only about 20% of forest area competes with other plants, but if they travel 100km, roughly 95% of forest area compete with others. Therefore, there would be a possibility to occur serious wood resource competition among multiple wood biomass power plants.

3 木質バイオマス発電における資源競合 - 岩手県を事例として - 農林水産政策研究所國井大輔農林水産政策研究所林岳 1. はじめに木質バイオマスを利用した発電事業については, 既にいくつかの木質バイオマス発電所 ( 以下, 発電所とする ) が稼働中であるほか, 現在全国各地で新たな発電所の建設および建設計画が進行中である面的に広く薄く分布している木材を発電所のような大規模需要へ安定供給する場合, 木材の収集範囲が広範囲に及ぶことから, 立地条件や道路などのインフラを考慮した供給可能量の推計や, 同一燃料種を利用する他の需要者との競合関係の有無やその度合いを, 定量的に分析することが重要であるこのような木質バイオマスの利用に関する既存の研究では, 木材の供給可能量推計 ( 上村ら,2009) や収集コスト分析 ( 佐無田ら,2011), バイオマス利用プラントの建設最適地抽出 (Panichelli and Gnansounou, 2008) に関する研究は行われているが, 複数の需要に対する木材の競合に関しての研究は見られないそこで本研究では, 岩手県内の発電所を事例に, 複数の発電所による木材需要において, どのような競合が生じているかを把握することを目的とする本研究ではまず, 分析に用いるデータによる結果の違いを検証するため, 道路網データや森林簿 ( 以下, 特段の断りがない限り, 民有林の森林簿, 国有林の森林調査簿をまとめて森林簿と表記する ) データなどの詳細なデータを用いた場合と, 発電所からの直線距離や植生図といった簡易なデータを用いた場合とで, 資源量の分析結果にどの程度の違いが生じるかについて明らかにするその後, 岩手県内の複数の発電所における木材の収集範囲の競合に関する検証を行い, 発電所間で木材の競合が発生する可能性があるのかを明らかにする 2. 詳細データと簡易データによる資源量分析の検証 2.1 分析課題複数の発電所間における木材の競合を明らかにするためには, 各発電所における木材の収集範囲を特定する必要があるその際, どのようなデータを利用するかによりその結果も大きく異なってくるもちろん, 最も望ましいのはより正確で詳細なデータを用いることであるしかしながら, 詳細なデータを利用すれば, より正確な分析結果を得ることができるものの, 広範囲の分析を行う場合には, データ量が膨大になるために, 多額の費用と時間がかかり分析の効率性や費用対効果が低くなる一方, 簡易的なデータを利用した場合には, データの精度によっては, 需要に対する分析の誤差が大きくなりすぎてしまうことも考えられるこのようなことから, 木質バイオマスの資源量に関する分析を行う場合, 分析結果の正確度と分析コストの間のトレードオフにおいて最適な水準を見つけるために, まずは詳細データを利用した場合と簡易データを利用した場合では結果にどのような差が生じるかを明らかにしすることが重要であるそこで本節では, 分析に用いるデータによって木材の収集範囲に含まれる総面積及び森林面積, 材積量の推計結果の違いを検証する 2.2 利用データの違いによる影響一般的に, 木質バイオマス資源量の把握で利用されるデータとしては, 森林簿や植生図のデータがある森林簿は林業施業の最小単位である林小班ごとに樹種, 材積量等が記載されており, 情報量の多い詳細なデータとして利用されるまた, 植生図は 5 万分の1や 2 万 5 千分の1の地形図の上に樹種による色付け

4 などがされており, Web 上から全国のデータがダウンロード可能であり, データの入手可能性も高いしたがって, 植生図は森林簿から比べると情報量の少ない比較的簡易なデータとして位置づけられるまた, 複数の発電所における需要の競合を発電所の建設の前の段階で把握するためには, 各発電所における燃料木材の収集範囲を特定することが必要であるつまり, 各発電所で予想される木材の需要を満たすためには, 需要地である発電所からどの程度離れた地点まで木材を収集に行かなくてはならないかを明らかにすることが必要である木材の収集範囲の特定に際しても, 道路網データといった詳細データと単純に発電所から半径 R km 圏内という設定を用いる簡易データを用いる方法の 2 通りが可能であるたとえば, 経済産業省 (2015) では,5,000kW 級の木質バイオマス発電設備での集荷想定範囲は半径 50km 程度と想定しており, 簡易データを用いた収集範囲の設定を行っている一方, 上村ら (2009) では, 大手製材所への聞き取り調査の結果として, 道路網データを利用して設定した輸送距離 50km 圏内の森林から 80%,100km 圏内からはほぼ 100% の原木を収集していることを明らかにしており, 事業所レベルではより詳細なデータを用いた収集範囲の設定が行われているこのように, 木質バイオマスの収集範囲や分析の対象範囲の規模に応じて, 利用されるデータが異なっており, データの選択は精度とデータ容量に規定されている 2.3 分析対象の発電所の概要と分析方法本分析では, 岩手県内の 1 つの発電所 ( 以下, 発電所 X とする ) を対象とする発電所 X は 2014 年より稼働開始し, 最大出力 5800kW で, このうち 800kW 分は発電施設内での自家消費向けとし, 残りの 5000kW 分を売電用としている木質チップの使用量は年間約 90,000 トンであり, そのうちの 45,000 トン分が自社製材工場で発生する木質チップを, 残りの 45,000 トン分は間伐材の丸太を購入し, 施設内でチップ化して利用している購入する間伐材は, 今のところ全て国有林から出た木材であり, 樹種の割合としては, スギ, カラマツ, アカマツがそれぞれ 60%,35%,5% の割合である分析上の仮定について, まず発電所 X では, スギカラマツアカマツを利用しているが, 本分析では燃料として利用される木材はスギの間伐材のみと仮定するまた, 分析は岩手県内のスギ林に限定し, 隣県のスギ林は分析対象から除外した分析では, スギ材の収集範囲を特定し, 収集範囲の総面積, スギ林面積, スギの賦存量を算出するその計算には,2 種類の性質の異なるデータを利用する 1 つは詳細データであり, 収集範囲とその面積の推計に, 道路網データを利用し, 発電所への供給可能木材の材積量の推計に, 民有林の森林簿及び国有林の森林調査簿を利用するもう 1 つは簡易データであり, 収集範囲とその面積の算出には発電所から半径 50km の円 ( 円ポリゴン ) を利用し, 材積量の計算には 5 万分の 1 の植生図からスギ林面積を推計し, 岩手県の統計値より算出したスギ林の平均材積量を乗じる詳細データによる分析について, 発電所 X における木材の収集範囲を特定するために, 発電所位置データと道路網データを利用して, 一般道を道なりに輸送した場合の距離 ( 以下輸送距離とする ) が 25km, 50km,75km,100km で到達できる範囲 ( 到達圏ポリゴン ) を作成する次に, 森林簿のデータを用いて県内のスギ林の材積量を推計する最後に作成された到達圏ポリゴンをスギ材積量データと重ね合わせ, 到達圏ポリゴン内のスギ林面積及びスギ賦存量を算出する一方の簡易データによる分析では, 発電所 X から半径 50km の円ポリゴンを作成し, スギ林面積, スギ賦存量の推計については植生図を利用するただし, 植生図からは各スギ林の材積量を求めることができないため, 岩手県 (2015) にある統計データから計算した岩手県の面積あたり平均スギ材積量 (397.2m 3 /ha) を, 植生図から求めたスギ林面積に乗じることでスギ林の材積量を算出したその後, 植生図と円ポリゴンを重ね合わせ, 円ポリゴンに含まれるスギ林を抽出し, 円ポリゴン内のスギ林面積およびスギ賦存量を算出した

2.4 分析結果まず, 詳細データを利用した輸送距離 50km の到達圏と簡易データを利用した半径 50km の円による収集範囲の違いを比較した結果を示す ( 図 1) その収集範囲に含まれる総面積を比較してみると, 輸送距離 50km における収集範囲内の総面積は 1,704km 2, 半径 50km の円による収集範囲内の総面積は 7,847km 2 となり, 輸送距離 50km

発電所から半径 50km の円と輸送距離詳細データとして森林簿を用いた場合, 収集範囲を半 50km の到達圏径 50km の円で設定しても,50km の輸送距離で設定しても, スギ林面積, スギ賦存量ともに簡易データを用いた場合よりも大きくなる傾向が窺える収集範囲を輸送距離 25km,75km,100km と設定した場合も, いずれも詳細データの方が簡易データよりもスギ林面積,

5 2.4 分析結果まず, 詳細データを利用した輸送距離 50km の到達圏と簡易データを利用した半径 50km の円による収集範囲の違いを比較した結果を示す ( 図 1) その収集範囲に含まれる総面積を比較してみると, 輸送距離 50km における収集範囲内の総面積は 1,704km 2, 半径 50km の円による収集範囲内の総面積は 7,847km 2 となり, 輸送距離 50km の収集範囲の約 22% の面積に留まったしたがって, 主に計画作成の初期段階で使用される半径 50km 圏内とより厳密な計画作成時に利用されるであろう輸送距離 50km 圏内では, 大きな差が生じることを計画初期段階から念頭に置いた上で木材の収集計画を策定する必要があるだろうそれぞれの収集範囲内に賦存するスギ材の量で見た場合の結果は表 1 に掲げられているこれを見ると, 図 1 発電所から半径 50km の円と輸送距離詳細データとして森林簿を用いた場合, 収集範囲を半 50km の到達圏径 50km の円で設定しても,50km の輸送距離で設定しても, スギ林面積, スギ賦存量ともに簡易データを用いた場合よりも大きくなる傾向が窺える収集範囲を輸送距離 25km,75km,100km と設定した場合も, いずれも詳細データの方が簡易データよりもスギ林面積, スギ賦存量ともに大きくなる傾向には変わりないが, その誤差は収集範囲を大きくすることで縮小することがわかる表 1 詳細データと簡易データのスギ林面積およびスギ賦存量の違い詳細データ簡易データ比率 ( 森林簿 ) ( 植生図 ) ( 簡易 D/ 詳細 D) 発電所 Xからスギ林面積スギ賦存量スギ林面積スギ賦存量 (km 2 ) (1000m 3 ) (km 2 ) (1000m 3 面積比賦存量比 ) 円半径 50km , , 輸送距離 25km 輸送距離 50km 153 5, , 輸送距離 75km , , 輸送距離 100km 1,214 43,957 1,053 41, 岩手県全体 2,000 78,267 1,537 61, 輸送距離 / 円半径以上の分析結果から, 簡易データとして植生図を用いてスギ賦存量を推計した場合には賦存量が過小評価される可能性が示唆されたしたがって, 森林簿等の詳細データが入手できない場合について植生図等の簡易データの利用も可能であるが, 上述のような誤差を考慮する必要があるこのような誤差が生じる原因は, 森林簿と植生図におけるスギ林の分布状況の違いによる影響が大きいと考えられるまた, 特に輸送距離を長く設定することで分析結果の差が小さくなることから, 簡易データは収集範囲を広く設定する場合には一定の信頼性が確保できると考えられる逆に, たとえば 2014 年より FIT の対象として新設された 2000kW 未満の間伐材等由来の木質バイオマスを利用した発電に関して原料の賦存量推計を行う場合には, 本事例よりもさらに小さな収集範囲の設定が見込まれるため, 植生図のような簡易データでは実際

6 の賦存量との誤差が大きくなることが予想され, 森林簿のような詳細データの利用が適していると考えられる 3. 複数の木質バイオマス発電所における木材の競合の検証 3.1 分析課題と分析方法 2016 年 3 月現在, 岩手県内においては 2000kW 以上の発電所が 6 か所稼働中もしくは計画建設中であり, 複数の発電所間での木材の競合が危惧されるまた, 木材の供給地となる森林はそれぞれの発電所周辺に均一には分布しておらず, さらに同じ森林でも樹種や樹齢の違いにより, そこから供給できる木材の量もさまざまであるため, この木材の競合の有無を明らかにするためには, 詳細データにより発電所周辺の森林の樹種や材積量に応じた分布状況を明らかにした上で, 発電所の周囲にどの程度燃料として利用可能な木材が賦存しているかを把握し, その後発電所における需要量を比較して収集範囲を特定し競合の有無を確認する必要があるそこで, 本節では, 岩手県内の 6 か所の発電所 ( 第 2 節の発電所 X 及び化石燃料との混焼発電所 1 か所も含むここでは発電所 A~F とする ) を対象に, 発電所間における木材の競合が発生しているか否かを明らかにする岩手県の発電所を対象とした理由は, 岩手県は全国的にも発電所の FIT 認定件数が多く, 木材の競合が生じやすい環境にあると考えられるためである本分析は, 前節の分析における詳細データを用いて行い, 収集範囲は輸送距離で設定する対象とする森林は詳細データである森林簿に記載されている岩手県内のスギ林とし, 県外のスギ林については, 輸送距離では収集範囲に含まれていても分析からは除外するそして, 県内のスギ林から発生する間伐材の一部が発電用に供給されると仮定する間伐は, スギ林のうち林齢が 25 年,35 年,45 年に達した全てのスギ林において, 体積あたり 30% の間伐率で行われると仮定するさらに, 間伐した木材のうちの 30% を搬出とし, さらに搬出した間伐材のうち 40% が低質材 (C,D 材 ) で, この全てを発電用のチップとして利用すると仮定した木材の収集範囲は, 前節と同じく岩手県内で各発電所から輸送距離を 25km,50km, 75km,100km として分析を行った 3.3 分析結果分析結果は図 2 に示されるとおりである 6 つの発電所において輸送距離 50km の範囲内で木材需要量を満たすことができる施設は, 混焼発電で木材需要量の少ない F の 1 か所のみであり, この発電所では輸送距離 20km 弱で必要な木材を収集することができるまた, 発電所 B,C,E はそれぞれ, 輸送距離 90km 強,70km 強,80km 強で必要な木材を収集することができることが示されているが, 発電所 A と D は輸送距離 100km では必要となる木材を全て収集することが困難であることが示されたこのような結果となった要因としては, 本分析では木材の供給範囲を岩手県内のみに限っているが, 発電所 A と D は青森県との県境近くに立地しているため, 青森県からの供給を想定していることが考えられ, 青森県内の森林からの供給を含めると, 輸送距離 100km 圏内に収まる可能性もある図 3 は,6 つの発電所における木材の収集範囲を重ね合わせたものであるまず各発電所における輸送距離 50km を収集範囲として,6 つすべての発電所の収集範囲を重ね合わせた場合 ( 図 3 左 ), 多くの区域で濃い緑色となり,1つの発電所がその区域の木材を独占的に使用できる状態であることが示されたしかしながら, 発電所 B の周辺では, 薄い緑色の区域が多く見られ, この場所では発電所 B と他の発電所 (C と E) の間で木材の競合が発生していることを示しているこれは B が岩手県の中央部に位置しているため, 周囲の発電所との木材の競合範囲の割合が他の発電所に比べて高くなったためと考えられるさらに,

7 輸送距離を 100km に広げた場合には ( 図 3 右 ), 岩手県全域が 6 つの発電所いずれかの収集範囲の中に含まれ, その多くの区域で複数の発電所間で木材の競合が生じる可能性が示された注 : 水平の点線は各発電所の木材需要量を表しており, グラフとの交点でその需要量を確保するためのおおよその輸送距離が示される点線が示されていない発電所 A,D は 100km 以上の輸送距離が必要であることを表すまた, 発電所 F は化石燃料との混焼発電所のため木材需要は少なくなっている図 2 各発電所における輸送距離と木材供給量の関係図 3 輸送距離 50km および 100km における収集範囲の競合の様子

8 発電所における木材の競合具合を土地面積で表すと表 2 になる輸送距離 50km として収集範囲を設定した場合, 約 80% の区域で他の発電所と木材の競合なく,1 つの発電所が独占的に木材を収集することができる一方, 輸送距離を 100km として収集範囲を設定した場合, 収集範囲全体の 95% が複数の発電所で収集範囲が重なっており, さらに収集範囲全体の 50% 以上が 4 か所以上の発電所で収集範囲が重なっていたこのことから, 岩手県内でこれら 6 つの発電所が全て稼働した場合には, 岩手県内で発電用の木材の収集に関して, 発電所同士で競合が起きる可能性が示唆された 4. おわりに本研究ではまず, 道路網データや森林簿データなどの詳細なデータを用いた場合と, 発電所からの直線距離や植生図といった簡易なデータを用いた場合とで, 資源量の分析結果にどの程度の違いが生じるかについ表 2 収集範囲の競合面積競合発電所数輸送距離 50km 収集範囲に含まれる土地面積 (ha) て明らかにするその後, 岩手県内の複数の発電所における木材の収集範囲に関する検証を行い, 発電所間で木材の競合が発生する可能性があるのかを明らかにしてきたその結果, 詳細データとして道路距離を用いて設定した収集範囲と簡易なデータとして円ポリゴンを用いて設定した収集範囲では, 両者に大きな差が生じることが明らかになったまた, 岩手県内でこれら 6 つの発電所が全て稼働した場合には, 岩手県内で発電用の木材の収集に関して, 発電所同士で競合が起きる可能性が示唆された割合 (%) 輸送距離 100km 収集範囲に含まれる土地面積 (ha) 割合 (%) 競合なし 12, , , , , 競合あり , , 合計 15, , 引用文献岩手県 (2015) いわて木質バイオマスエネルギー利用展開指針 ~ みどりのエネルギー利用日本一に向けて ~ 経済産業省 (2015) 小規模な木質バイオマス発電の推進について年 7 月 29 日アクセス ) 上村佳奈久保山裕史山本幸一 (2009) 北東北三県における木質バイオマス供給可能量の空間的推定日本エネルギー学会誌 88(10),pp Panichelli, L., Gnansounou, E., (2008) GIS-based approach for defining bioenergy facilities location: A case study in Northern Spain based on marginal delivery costs and resources competition between facilities Biomass and Bioenergy 32, pp 佐無田啓内山洋司岡島敬一 (2011) 茨城県におけるバイオエネルギー生産と輸送の最適化分析エネルギー資源 32(2), pp.16-23

先端社会研究　★５★号／４．山崎

先端社会研究　★５★号／４．山崎 71 72 5 1 2005 7 8 47 14 2,379 2,440 1 2 3 2 73 4 3 1 4 1 5 1 5 8 3 2002 79 232 2 1999 249 265 74 5 3 5. 1 1 3. 1 1 2004 4. 1 23 2 75 52 5,000 2 500 250 250 125 3 1995 1998 76 5 1 2 1 100 2004 4 100 200