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1 Sep 11, 217 中国経済情報 217 年 9 月号 内容 1. 中国経済の地域別の現状 2. 三次業を主役に堅調な拡大続く東部多様化する E コマース関連サービスは消費市場を活性化 輸出関連製造業の回復が景気を下支え 3. 三次産業が牽引し高成長が続く中西部消費市場の潜在的な成長余地は大きい 一帯一路 構想の後押しでインフラ投資が堅調 4. 構造転換が進み底入れしつつある東北部強い消費意欲が三次産業の成長加速の一因 新興産業の成長もあり工業生産が底入れ 5. まとめ二次産業の回復が下支えし 経済構造の転換が進展 Summary 伊藤忠拠点が見た中国経済の現状 (217 年 月調査 ) は 月 伊藤忠商事の中国各拠点に現地の景況感につ いてアンケート調査を実施した その結果 前回 (2 月 ) 同様 中西部 の景況感が最も良好であり 次いで東部 最も悪い地域が東北部という 構図に変化はなかったが 2 拠点で好転し 中国経済の改善を示唆した 各地域の特徴を見ると 輸出産業の集積する東部は 輸出の回復という 追い風を受け 多様化する E コマース関連サービスが消費市場を活性化 三次産業を主役とする堅調な景気拡大が続いている 中西部は 消費市 場の潜在的な成長余地の大きさを背景にサービス業や生活関連分野の好 調が続き 一帯一路 構想の後押しでインフラ投資も堅調に拡大するな ど 三次産業が牽引する高成長を維持している 東北部は 重厚長大型 / 過剰設備産業は全体として依然不振ながら 新興産業の成長もあり工 業生産が底入れ 強い消費意欲が三次産業の成長を後押しするなど 産 業構造の転換が進み始めている すなわち 中国経済は二次産業の復調が下支えし 三次産業主導への転 換が着実に進んでいると評価できる 地域 伊藤忠中国拠点から見た各地域の経済情勢 評価 (5 段階 ) 215 年 9 月 21 年 7 月 217 年 2 月 217 年 月 北京市 中立 - 3 中立 - 3 中立 天津市 3 中立 3 中立 3 中立 3 中立 上海市 4 やや悪い 4 やや悪い 3 中立 3 中立 主席研究員武田淳 ( ) 東部 山東省 青島 2 やや良好 4 やや悪い 3 中立 3 中立 江蘇省 南京 3 中立 やや良好 2 やや良好 浙江省 寧波 3 中立 4 やや悪い 3 中立 3 中立 福建省 厦門 中立 2 やや良好 広東省 広州 2 やや良好 2 やや良好 2 やや良好 2 やや良好 吉林省 長春 4 やや悪い 4 やや悪い 4 やや悪い 4 やや悪い 主任研究員須賀昭一 ( ) 黒龍江省哈爾浜 3 中立 3 中立 4 やや悪い 3 中立東北部遼寧省瀋陽 中立 3 中立遼寧省大連 5 極めて悪い 3 中立 3 中立 3 中立重慶市 やや良好 2 やや良好 2 やや良好中西部四川省成都 1 極めて良好 2 やや良好 3 中立 3 中立

2 1. 中国経済の地域別の現状 (1) 伊藤忠拠点から見た中国経済の現状は 月上旬から中旬にかけて 伊藤忠商事の中国 14 拠点に対して景況感についてのアンケート調査を実施した 同調査の実施は今回で 4 回目となる ( 前回は 217 年 2 月実施 ) 結果を概観すると 景気を 良好 とした割合は 前回に続いて中西部が 5 割 (2 拠点中 1 拠点 ) と最も高く 次いで東部の約 4 割 ( 拠点中 3 拠点 ) 東北部は 良好 がなく 逆に 悪い が 4 拠点中 1 拠点であった つまり 地域別の景況感は 中西部 > 東部 > 東北部という順になる この順番は前回の調査から変化なかったが 東部では 良好 が 1 拠点増え 東北部では 悪い が 1 拠点減少しており 全体として改善している 東部で改善したのは福建省の厦門 ( アモイ ) であり ( 中立 やや良好 ) サービス業やインフラ建設の好調が続いたことに加え 9 月に開催された BRICS 会議に関する特需が景況感を押し上げたようである 東北部は 黒龍江省の哈爾浜 ( ハルビン ) が やや悪い から 中立 へ改善した 資源関連業種の不振は続いているが インフラ建設が好調 サービス分野に広がりが見られるほか ロシアとの交易が活発化した点が要因として指摘されている 中西部は変化なく 引き続きインフラ建設やサービス業が好調であった 伊藤忠中国拠点から見た各地域の経済情勢 地域 評価 (5 段階 ) 215 年 9 月 21 年 7 月 217 年 2 月 217 年 月 西部地域 : 内モンゴル 陝西 寧夏 甘粛 重慶 四川 貴州 雲南 広西 青海 チベット 新疆 東北 3 省 : 黒竜江 吉林 遼寧 北京市 中立 - 3 中立 - 3 中立 天津市 3 中立 3 中立 3 中立 3 中立 上海市 4 やや悪い 4 やや悪い 3 中立 3 中立 中部地域 : 山西 河南 安徽 湖南 湖北 江西 東部 山東省青島 2 やや良好 4 やや悪い 3 中立 3 中立 江蘇省南京 3 中立 やや良好 2 やや良好 浙江省寧波 3 中立 4 やや悪い 3 中立 3 中立 福建省厦門 中立 2 やや良好 広東省広州 2 やや良好 2 やや良好 2 やや良好 2 やや良好 吉林省長春 4 やや悪い 4 やや悪い 4 やや悪い 4 やや悪い 黒龍江省哈爾浜 3 中立 3 中立 4 やや悪い 3 中立東北部遼寧省瀋陽 中立 3 中立 遼寧省大連 5 極めて悪い 3 中立 3 中立 3 中立 中西部 重慶市 やや良好 2 やや良好 2 やや良好 四川省成都 1 極めて良好 2 やや良好 3 中立 3 中立 ( 備考 ) 中国国家統計局より作成 東部地域 : 北京 天津 河北 山東 江蘇 上海 浙江 福建 広東 海南 (2) 経済指標から見た中国経済の現状景況感の調査で改善の見られた中国経済の現状について経済指標から確認すると 実質 GDP 成長率 ( 全国ベース ) は 21 年通年の前年比 +.7% から 217 年上半期 (1~ 月 ) に前年同期比 +.9% へ高まっており 景気が改善していることを示している 二次産業 (21 年前年比 +.1% 217 年上半期前年同期比 +.4%) が持ち直したことが主因であるが 三次産業 (+7.% +7.7%) も高成長を維持した また 地域別には 東北部 (+2.7% +4.4%) の持ち直しが顕著であり 東部 (+7.% +7.5%) 2

3 や中部 (+.% +.%) 西部 (+.2% +.3%) は概ね横ばいにとどまった 1 こうした東北 部の改善や中西部の横ばいは 上記の通り伊藤忠拠点への調査と同じ傾向である.5 実質 GDP( 産業別 ) 伸び率の推移 ( 全国 ) 14 実質 GDP 成長率 ( 地域別 ) の推移 全体 二次産業 三次産業 ( 注 )21 年の名目 GDP に占める割合は 二次産業 39.% 三次産業 51.% 4 東部 東北部 2 中部 西部 三次産業を主役に堅調な拡大続く東部地域 (1) 東部地域の実態伊藤忠各拠点からの報告によると 東部地域において景気が良い分野は 主に 多様化する E コマース関連サービス業や生活消費分野 と 地下鉄の延伸や周辺地域と結ぶ道路 鉄道などの交通インフラ整備 である 具体例を挙げると オンライン決済が普及し生鮮品のネット販売が成長 ( 上海 ) レストランのメニューを家まで配達するサービスが人気 ( 青島 ) E コマース 海外旅行 スイーツが人気 ( 北京 ) 育児用品 化粧医薬品の販売好調 ( 天津 ) などが前者に関するものである 後者については 青島や寧波 厦門で地下鉄拡張が指摘され 都市人口の増加や渋滞緩和への対応が進められているほか 新副都心への鉄道計画進む ( 天津 ) 周辺地域の新都市建設進む ( 南京 ) など 地域経済圏の形成がインフラ需要を押し上げている様子が窺えた そのほか 小型 SUV 自動車の製造販売好調 ( 南京 ) BRICS 首脳会議 (9 月 ) を前にインフラ整備が活況 ( 厦門 ) などの指摘もあった 一方で 景気が悪い分野としては 青島 南京 寧波から Eコマース拡大の影響もあり 百貨店などの実店舗の業績が悪化 青島と寧波からは 人件費の上昇によって繊維産業に代表される低付加価値製造業は苦戦 とのコメントがあった (2) 多様化する E コマース関連サービスは消費市場を活性化このように 東部地域では 多様化するEコマース関連のサービスが消費市場を活性化させている模様である 実際に 複数の拠点から挙げられた飲食宅配サービスの現状について統計データを確認すると 利用者数は 217 年 1~3 月期に 1.9 億人と 215 年 1~3 月期の 2 倍弱まで増加 市場 ( 売上 ) 規模は 217 年 1~3 月期に 43 億元と 215 年 1~3 月期の実に 15 倍まで増加しており 普及が進むと同時に 一回当たりの利用額や利用頻度が急増している様子が窺える こうした急成長により 宅配サービスの売上高は飲食業全体の約一割に相当する規模にまで拡大している 1 各地域の成長率は加重平均による当研究所の試算値 3

4 また 宅配サービスの利用理由を聞いたアンケート結果を見ると 仕事中の食事としての利用 が 1 位 時間がない / 家で食事を作りたくない が 2 位 これら 2 つで全体の 割以上 2 を占める こ のことから 飲食宅配サービス普及の要因の一つとして 生活様式の都市化があると言えそうである 飲食宅配サービス利用者数の推移 ( 億人 ) ( 前年同期比 %) 利用者数 1. 前年同期比 ( 右軸 ) Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q ( 出所 ) 比達資訊 ( 億元 ) ( 前年同期比 %) 飲食宅配サービスの市場規模の推移 取引額 前年同期比 ( 右軸 ) Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q ( 出所 ) 比達資訊 ( 注 )217 年 Q1 の飲食業全体の売上げ額は 9,19 億元 ( 中国国家統計局 ) (3) 輸出関連製造業の回復が景気を下支え 小売やサービスなど三次産業の好調さが目立つ 東部地域であるが それを支えているのは 輸出関 連を中心とした製造業の業績回復であろう 東部地域は 全国製造業の製品売上シェアの約 割 輸出向けに限れば約 割 3 という数字が示す通 り 輸出産業が集中している 最近の輸出動向を見 ると 21 年まで前年比でマイナスが続いていたが 217 年に入ってプラスに転じ 伸び率は 1~7 月累 計で前年同期比 +.3% となった ( 全国ベース ) こ うした輸出の回復を受けて 東部地域の製造業 ( 工業 ) 企業の業績は改善しており とりわけ 輸出産業が集 工業企業の利益総額の推移 東部全体上海 ( 長江デルタ ) 広東 ( 珠江デルタ ) 天津山東 ( 注 ) 工業企業の内訳は 採掘業 製造業 エネルギー業 積している長江デルタや珠江デルタ地域で改善が顕著である ( 右上図 ) こうした業績の拡大が 雇用 増や賃金上昇 投資活動の活発化を通じて地域の経済を押し上げていることは想像に難くない 3. 三次産業が牽引し高成長が続く中西部地域 (1) 中西部地域の実態伊藤忠各拠点からの報告によると 中西部地域において景気の良い分野も 東部と概ね同様 E コマース普及や生活水準向上を背景に成長するサービス業 生活関連分野 と 西部大開発や一帯一路により活発な交通インフラ整備 である 2 調査結果は 仕事中の食事として利用 42.7% 時間がない / 家で食事を作りたくない 21.% 割引サービスがある 1.7% メニューに食べたいものがある 1.% 天気が悪く外出したくない.% 生活習慣化している.% その他.2% 年 ( 国家統計局 ) 4

5 具体例を挙げると サービス業 生活関連分野では 飲食宅配サービスを含むEコマースの普及 二人目出産解禁による幼児教育産業が好調 ( 重慶 ) 酒茶類の製造が好調 外国製日用品が人気 ( 成都 ) インフラ整備については 橋 地下鉄 高速鉄道の建設も活発 ( 重慶 ) 高速鉄道 地下鉄 空港は増設 拡張が続く ( 成都 ) などである インフラ整備については 政府が進める 西部大開発 や 一帯一路 構想といった振興策が追い風となっている模様である 一方で 悪い分野としても 東部同様 Eコマース成長の影響を受けた実店舗の小売業 が挙げられた (2) 農村部を中心に消費市場の潜在的な成長余地は大きい中西部地域で好調さが目立つサービス分野であるが 実質 GDP 成長率 ( 三次産業 ) の推移 三次産業の実質 GDP 成長率を見ると 217 年上半期 (1~ 月 ) は前年同期比 +9.3%) であり 全国 (+ 7.7%) を大きく上回っており 経済指標でもサービス分野の好調さが裏付けられる 中西部の三次産業が他地域よりも好調な背景には 所得の高い伸びがある 可処分所得の伸びを見ると ( 下図 ) 都市部 農村部とも 中部地域こそ全国平均並みであるが 西部地域は他地域と比べて明確に高く 特に農村部では際立っている 全国 東部 東北部 中部 西部 こうした可処分所得の堅調な増加を背景に 農村部の E コマース市場は中部 西部とも急速に拡大している インターネットショッピング売上額は 217 年 1~ 月期に中部で前年同期比 +4.4% と東部 (+3.%) を上回り 西部では+3.1% と 4 地域中最高の伸びを示した それでも一人当たりの利用額は中部 西部とも東部に比べ未だ低く 伸びしろは大きい 今後もインターネットショッピングの普及拡大が個人消費を押し上げ 成長を下支えしよう ( 前年同期比 %) 全国東部東北部中部西部 都市部 一人当たり可処分所得の推移 ( 前年同期比 %) 農村部 全国東部東北部中部西部 農村部のインターネットショッピング売上げ額 (217 年 1- 月期 ) 金額 ( 億元 ) 前年比 (%) 人口一人当たり売上げ額 ( 元 ) 東部 3, ,95 東北部 中部 1, 西部 ( 出所 ) 商務部 (3) 一帯一路 構想の後押しでインフラ投資が堅調 また 西部地域では 経済成長の大きな柱である固定資産投資が引き続き堅調に推移している イ 4 西部の農村部の可処分所得の伸びが高い背景には 政府の振興政策があると考えられる 21~2 年の西部振興政策方針である 西部大開発 13 次五か年計画 は 貧困農村に対する農業技術支援 移住 進学 職業訓練の財政支援 観光業発展支援などによる 貧困県 ( 農村 ) の撲滅 を主要政策の一つとして掲げている 5

6 ンフラ投資を含む固定資産投資は 217 年に入って再び増勢を強め 1~ 月期累計では前年同期比 % へ伸びを高めている 省別では 広西チュワン族自治区 (+25.%) や新疆ウイグル自治区 (+ 22.7%) 雲南省(+1.%) で伸びの高さが目立つ これら周辺国と国境を接する地域は 一帯一路 構想の基本計画において重点地域と位置付けられている 例えば 広西や雲南は ASEAN との経済協力の拠点 新疆はシルクロード経済ベルトの重要な拠点として位置づけられており 5 一帯一路 構想がインフラ投資の堅調な拡大を後押ししていると言えそうである 4. 構造転換が進み底入れつつある東北部地域 (1) 東北部地域の実態 固定資産投資の推移 前年同期比 (%) 22 2 西部 全体 (1~ 月 ) 伊藤忠各拠点からの報告によると 東北部地域において景気の良い分野として 他地域と同じ E コマース普及や生活水準向上を背景に成長するサービス業 生活関連分野 政府の東北振興策が後押しする新興産業や交通インフラ分野 に加え 観光資源を生かした観光業 が挙げられた 具体例として サービス業や生活関連分野については 日本製の紙おむつは高いが販売好調 レンタルサイクルでの通勤が増加 ( 瀋陽 ) 飲食 子ども用品 教育 医療ヘルスケア関連業種が好調 サクランボ 水産品などの食品 温泉や宅配サービスが人気 ( 大連 ) 健康食品 子ども用品 スポーツ用品の売上好調 ( 長春 ) などが インフラ分野については 道路建設や市内地下鉄の拡張進む ( 哈爾濱 ) 市内地下鉄第一号が開通 ( 長春 ) が指摘された また 観光については 大連や哈爾濱で好調とされており 高速鉄道の開通が後押ししているとの見方があった そのほか 政府の東北振興策 が後押しする ロボット ( 瀋陽 ) や バイオ医薬や光学 情報 ( 長春 ) などの新興産業が好調との声も聞かれた 一方 悪い分野としては 引き続き石炭 石油や造船などの 重厚長大あるいは過剰生産能力業種 が挙げられた (2) 都市部の強い消費意欲が三次産業の成長加速の一因 このように 東北部においても三次産業の成長が景 気を押し上げているようである 経済指標を見ても 三次産業の成長率は 全国ベースで伸びが鈍化 (21 年前年比 +7.% 217 年上半期 +7.7%) する中で東 北部では伸びが高まっており (+.% +7.2% ) 復 調が顕著である こうした三次産業の回復を支える東北部の特徴とし て 消費性向の高さがある 消費活動の中核となる都 シルクロード経済ベルトと 21 世紀開錠シルクロードの共同建設推進のビジョンと行動 (215 年 3 月 ) 政府は 22 年までの 5カ年計画においてサービス業主導や製造業高度化にかかる数値目標や新興産業と立地拠点について具体的に定めるとともに 交通分野をはじめとした分野に対する 21 年までのインフラ投資計画などを定めている 実質 GDP 成長率 ( 三次産業 ) の推移 東北部 全国

7 市部において 東北部の消費性向 7 は 72.9%(21 年 ) と全国で最高である ( 左下図 ) また 中国大手ネット企業であるアリババ ( 阿里巴巴 ) の調査によると ネットショッピング利用における高級品購買の割合も東北部が全国で最も高い ( 右下図 ) 現地の声を聞くと 東北人は中国の中でも特に メンツを重視する気質 があるとの指摘が多く 所得環境が改善する局面では そうした特長がより強く出て消費拡大を加速させる面もあろう (%) 消費性向の地域別比較 (21 年 ) 都市部 東部東北部中部西部 ( 出所 ) 中国人民銀行 中国区域金融運行報告 (217 年 ) ( 注 ) 消費性向 = 消費支出 / 可処分所得 (%) 農村部 東部東北部中部西部 (%) 高級品消費支出の割合 (21 年 ) 東部東北部中部西部 ( 出所 ) 阿里研究院 品質消費指数報告 (217 年 4 月 ) ( 注 ) アリババのネットショッピング利用者の消費金額に中高級価格帯の商品が占める割合 価格帯の定義は未公表 (3) 新興産業の成長もあり工業生産が底入れ 企業業績の回復が景気を下支え 所得環境改善の背景には 新興産業の成長や 東部同様 製 造業 ( 工業 ) の業績回復があろう 人民銀行など政府機関によ る 21 年の産業動向の分析によると 東北部においては 重 厚長大型産業の停滞が続いた一方で ハイエンド工作機械や新 エネルギー車 産業用ロボットなどの新興産業が成長したよう である 実際に 9 月上旬に瀋陽へ出張して行ったヒアリング においても 中国内で工場の自動化ニーズが急拡大しており ロボットを含めた関連分野の生産が急増しているとのことで あった 一方で 新エネルギー車に関しては 一定量の生 産義務化という政府方針への対応を進めているという意味 では成長を支える要因であるが 生産サイドでは採算面に 対する懸念の声もあり 現時点では必ずしも中国自動車産 業にとって良い方向性とは言い切れないようである それでも 工業生産は 吉林省 (21 年前年比 +.3% 217 年 1~ 月期前年同期比 +5.%) でこそ鈍化したも のの 黒龍江省 (+2.% +2.3%) は若干加速 全体の 約 割を占める遼寧省 ( 15.2% 4.3%) ではマイナス 幅が大幅に縮小し 全体として改善が進んだ ( 右図 ) その 結果 東北部の工業企業の業績 ( 利益 ) は 21 年通年の 年の東北部の産業状況について政府機関の分析 〇重厚長大型産業は依然として停滞しているが 各省は振興発展政策に基づき過剰生産能力削減等の改革を進め ハイエンド機械製造業が成長するなど 経済の新しい原動力は徐々に形成されつつある ( 人民銀行 ) 〇ハイエンド機械製造業の重鎮企業が多く存在する遼寧省では ハイエンド工作機械 新エネルギー車 産業用ロボットなどの新興産業が著しく成長した ( 中共中央インターネット安全 情報化指導グループ弁公室 ) 東北三省の工業生産 ( 実質 ) の推移 吉林 黒龍江 遼寧 ( 注 ) 全体に占める割合 (214 年 ) は 遼寧省 2.% 吉林省 29.4% 黒龍江省 7.9% 7 消費性向とは 可処分所得 ( 手取りの所得 ) のうち消費支出に充てた金額の割合 日系および地場ロボットメーカー IT 企業 自動車メーカー 日系金融機関を訪問 7

8 前年比 22.7% から 217 年 1~ 月期は前年同期比 +2.2% の大幅増加に転じており ( 右下図 ) 企 業の業績の回復が東北部の景気を下支えしていることが窺われる 5. まとめ 以上で見た各地域の状況を整理すると 東部では 輸出産業の復調という追い風を受けて 消費サービ スの多様化を原動力とする三次産業主役の成長モデ ルがさらに深化していると言える また 中西部で は 一帯一路 政策などによって引き続き投資が成 長を支える中 所得水準の向上に伴って三次産業の 存在感が強まっている 東北部では 新興産業の成 長もあって底入れしつつある二次産業の下支えを受 けて 都市部を中心に三次産業が主導する経済への 工業企業 ( 東北部 ) の利益総額の推移 ( 注 ) 工業企業の内訳は 採掘業 製造業 エネルギー業 転換が進み始めている すなわち 中国経済の現状は 二次産業の回復が下支え役となり 三次産業 主導の経済構造への転換が着実に進展していると評価できよう 以上 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり 投資勧誘を目的としたものではありません 作成時点で が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが その正確性 完全性に対する責任は負いません 見通しは予告なく変更されることがあります 記載内容は 伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません