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しほこうばら
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1 Journal of Japanese Society for Emergency Medicine 調査報告病院前救護における熱傷面積評価と気道熱傷を疑う要因について石川幸史, 2, 3 山田賢治樽井武彦海田賢彦八木橋厳, 3 松田剛明島崎修次, 4 山口芳裕要旨病院前救護では, 熱傷患者に対し生理学的評価および熱傷程度評価を行い, 重症度を判断して医療機関に搬送している救命センター搬送例の中には軽症例が散見されるため, 病院前の熱傷深度面積評価の精度, および気道熱傷を疑う要因について検討した平成 22 年月日から平成 24 年 2 月 3 日までの 3 年間に当院の救命センターに収容された, 転院例を除く熱傷患者 67 例について記録調査を行った救急隊による熱傷深度面積評価は, 医師の評価と比較すると症例あたりの絶対誤差は平均 5.2% で,8 歳未満の乳幼児に限定すると症例あたり平均 7.5% であった熱傷深度面積は, 誤差にばらつきがあり, 乳幼児で過剰評価の傾向がみられた気道熱傷疑いの搬送例のうち, 広範囲熱傷を除いた 32 例について顔面熱傷が 5 例に認められ, そのうち 2 例 (80%) に気道熱傷が認められた顔面熱傷の合併は気道熱傷を強く疑う要因であった索引用語 : 熱傷面積, 気道熱傷, の法則,5 の法則, 顔面熱傷はじめに熱傷患者における熱傷面積および熱傷深達度は, 生命予後を左右する最も重要な因子である ) 東京消防庁では, 病院前救護において生理学的評価およびアルツの基準をベースとした熱傷程度の評価を行い, 重症度を判断して適切な医療機関に搬送している救急活動現場では, 熱傷面積の評価を短時間で行わなければならないことから, 面積を測定する簡便法として Report of an estimation of burn surface area in prehospital care, and suspicious condition for inhalation injury of burn patients Koji ISHIKAWA, 2, 3, Kenji YAMADA, Takehiko TARUI, Yasuhiko KAITA, Gen YAGIHASHI, 3, Takeaki MATSUDA, Shuji SHIMAZAKI, 4, Yoshihiro YAMAGUCHI Department of Traumatology and Critical Care Medicine, Kyorin University School of Medicine, 2 Tokyo Fire Department, 3 Emergency Life-Saving Technique Academy, Tokyo, 4 Trauma, Resuscitation and Prehospital Medicine, Graduate School, Kokushikan University 杏林大学医学部救急医学教室, 2 東京消防庁, 3 救急救命東京研修所, 4 国士舘大学大学院救急システム研究科原稿受付日:4 年 3 月 3 日原稿受理日 :4 年 0 月 27 日の法則や 5 の法則が用いられている一方病院内では, 医師によりルンドブラウダー (Lund and Browder) の法則を用いて評価されることが多い病院到着前と病院到着後では, 熱傷部位によって, これら測定法の違いによる誤差が生じる特徴があるまた, 気道熱傷疑い事例のため救命センターに搬送されたにもかかわらず, 気道熱傷が認められないため入院治療を必要とすることなく当日に帰宅, もしくは経過観察目的で入院するも翌日には退院となるオーバートリアージ例が散見される日々の救急活動において熱傷患者を扱う頻度は決して多くはなく, 救急隊により適切な重症度判定が行われているかどうかを, 熱傷程度評価の精度, および気道熱傷を疑う要因に基づき, トリアージの視点を踏まえて検討したので報告する対象と方法平成 22 年月日から平成 24 年 2 月 3 日までの 3 年間に杏林大学医学部付属病院高度救命救急センター ( 以下, 救命センターと略す ) に収容された熱傷患者のうち, 転院搬送および救急外来を自ら受診したものを除き,2 次選定で皮膚科に救急搬送され, その 782 日臨救医誌 (JJSEM)4;7:782-8

2 病院前熱傷面積評価と気道熱傷を疑う要因 60% 50% 40% 30% 48.5 % % 0% 気道熱傷疑い n=32 広範囲熱傷 n= 7.6 陰部関節部等 n=5 0.6 CPA 状態 n=7.5 その他 n= 図救命センター搬送選定理由気道熱傷疑いが半数を占めており, 次いで広範囲熱傷を理由とする割合が高かった後ショックバイタルとなり, 広範囲熱傷の診断で救命センターに収容された例を含めて, 救急隊により搬送された 67 例を対象とした内訳は, 年齢 0 歳から 4 歳 ( 平均 52.5 歳 ) で, 男性 4 例, 女性 26 例であった受傷原因は, 火炎によるものが 48 例 (7.6%), 熱湯等高温液体によるものが 7 例 (25.4%), 電撃症が例 (.5%) および化学熱傷が例 (.5%) であった方法は記録調査とし, 救急隊による熱傷面積の評価および観察結果と, 院内での医師による熱傷面積の評価および検査結果を比較検討したまた, 気道熱傷疑いで救命センター選定となった事例について, 診療後の気道熱傷の評価を調査した統計学的有意差検定は Stat Flex 6( アーテック社 ) を用いて行ったた例は, 熱傷面積程度は重症判定に該当しないものの, 患者因子 ( 精神疾患 ) の背景から 2 次選定困難となり, 指導医の助言により救命センターに搬送選定された事例であった 2 次選定で皮膚科に搬送された事例は, 熱湯により受傷した歳の高齢女性患者で, 病院前の救急隊の評価はⅡ 度 5 8% であったが, 入院後の医師の評価は, 臀部から両下肢中心のⅡ 度 30% 熱傷であり, アンダートリアージ例であった全身炭化状態を含む CPA 症例を除き, 院内で医師により熱傷部位の範囲と深度を評価された 4 例において, 受傷機転による内訳をみると, 火炎によるものが 24 例, 高温液体によるものが 7 例あり, 受傷部位を頭顔面頸部, 胸腹部, 背部, 上肢, 臀陰結果部下肢の 5 項目に分類して, 総熱傷面積に対する部位別の割合を火炎による受傷と高温液体による受傷で救命センターに直接搬送された 66 例のうち, 電撃症および化学熱傷を除いた 64 例において, 東京消防庁救急活動基準 ( 重症度判断項目 ) に則り, 救命センターへの搬送に至った選定理由の内訳を別に示す ( 図 ) 全身熱傷や広範囲熱傷等で明らかに気道熱傷の合併が疑われるものを除き, 体表に熱傷が認められないかまたは軽度の熱傷で, 気道熱傷が疑われた症例を気道熱傷疑いに分類した CPA 状態は, 熱傷面積にかかわらず重症と判断されており広範囲熱傷, に含めなかった気道熱傷疑いが 32 例 (48.5%) と半数を占めており,%TBSA(% of total body surface area, 全体表面積に占める割合 )Ⅱ 度 30% 以上,Ⅲ 度 0% 以上の広範囲重症熱傷が例 (28.8%), 陰部関節部等の熱傷が 5 例 (7.6%),CPA 状態が 7 例 (0.6%), その他が例 (.5%) であったその他に分類し比較した ( 図 2) 火炎による受傷は, 高温液体による受傷と比べて, 頭顔面頸部が多く, 高温液体による受傷は, 臀陰部下肢の占める割合が高い傾向が認められた救急隊による熱傷面積評価と医師の評価を比較調査できたのは 38 例あり, 救急隊による熱傷面積評価の絶対誤差は, 全体としては平均症例あたりにすると 5.2% であったが, 中には誤差の大きい症例もみられた受傷機転別に比較すると, 火炎による受傷では平均症例あたり 5.0%, 高温液体による受傷では 5.5% であった ( 図 3) また, 重症度判定にかかわる年齢層別に分類して比較すると,8 歳未満の乳幼児では平均症例あたり 7.5%,8 歳以上 70 歳未満では 5.2%, 70 歳以上では 3.6% であり,8 歳未満の乳幼児で過剰評価される傾向がみられた ( 図 4) 日臨救医誌 (JJSEM)4;7:

3 石川幸史, 他頭顔面頸部.% 臀陰部下肢 30.0% 頭顔面頸部 3.% 胸腹部 7.% 臀陰部下肢 42.% 胸腹部 7.4% 背部 6.3% 上肢 24.4% 背部 3.% 上肢 22.3% A: 火炎による受傷 n=24 B: 高温液体による受傷 n=7 図 2 熱傷受傷部位別割合火炎による受傷は頭顔面頸部に多く, 高温液体による受傷は臀陰部下肢に多くみられた (%) 全体 n=38 火炎 n=2 高温液体 n=7 図 3 病院前と入院後の熱傷面積評価の誤差 ( 受傷機転別 ) 全体では平均 5.2%, 受傷機転別では火炎による受傷では平均 5.0%, 高温液体による受傷では平均 5.5% の誤差がみられた救命センター選定理由別が気道熱傷疑いであった 32 例について, 病着後の診療結果を示す ( 図 5) 26 例 (8.3%) で気管支鏡検査が施行され, 検査の所見から, 喉頭周囲に粘膜の発赤や浮腫の所見があり, 気道熱傷が明らかに認められたのは 2 例 (37.5%), 粘膜に明らかな浮腫性変化は認められないものの, 気管気管支への煤の付着状況等が認められ, 気管挿管による人工呼吸管理がなされたものが 5 例 (5.6%) あったその他, 主訴や身体所見および臨床症状から気道熱傷の可能性が極めて低いため, 気管支鏡検査が施行されず, 気管挿管による人工呼吸管理も必要としなかったものが 5 例, 患者が検査を強く拒否したために気管支鏡検査が施行されず, 気管挿管による人工呼吸管理も必要としなかったものが例あったまた, 臨床症状等から気道熱傷が疑われず気管支鏡検査が施行されなかった 6 例を含め, 気道熱傷が認められなかったのは 5 例 (46.%) で, そのうち, 当日もしくは翌日に退院となったのは 3 例 (40.6%) であった初診時気道熱傷なしと判断されたが, 状況から経過観察入院を行ったものが 2 例あった 784 日臨救医誌 (JJSEM)4;7:782-8

4 病院前熱傷面積評価と気道熱傷を疑う要因 (%) 全体 n=38 8 歳未満 n=8 8 歳以上 70 歳未満 n= 70 歳以上 n=0 図 4 病院前と入院後の熱傷面積評価の誤差 ( 年齢層別 ) 8 歳未満に限定すると平均 7.5% であり, 過剰評価の傾向がみられた気道熱傷あり ( 急性喉頭浮腫あり ) 3 例 40.6% 2 例 6.2% 5 例 5.6% 2 例 37.5% 気道熱傷あり ( 急性喉頭浮腫なし ) 気道熱傷なし ( 入院あり ) 気道熱傷なし (24 時間以上の入院なし ) n=32 図 5 気道熱傷疑い搬送例の診療結果気管支鏡検査により気道熱傷ありと判断されたのは 7 例で, そのうち 2 例に喉頭周囲に粘膜の発赤や浮腫性変化が認められた気道熱傷が認められなかったのは 5 例で,2 例が経過観察入院となった気道熱傷を疑う要因となった傷病者の身体所見を示す ( 表 ) 鼻腔または口腔内の煤付着が 32 例中 24 例 (75.0%) と高頻度に認められ, そのうち 3 例 (54.2%) に気道熱傷が認められた鼻毛の焼失は例 (28.%) で認められ, そのうち 4 例 (44.4%) に気道熱傷が認められたまた, 咽頭痛や咽頭部の違和感, 嗄声は 6 例 (50.0%) と半数で認められ, そのうち 7 例 (43.8%) に気道熱傷が認められた顔面熱傷については, 前額部や耳介部に認められたものおよび医師によりⅠ 度熱熱傷と気道熱傷の合併については, 統計学的に有意であった ( フィッシャーの正確確率 ;P<0.0, オッズ比.6, 感度 0.7, 特異度 0.8) 救命センター来院時における血液ガス検査の一酸化炭素ヘモグロビン (CO-Hb) 濃度を, 気道熱傷あり, なしの群で比較すると, 気道熱傷あり ( 急性喉頭浮腫あり ; 中央値 4.6%, 急性喉頭浮腫なし ; 中央値 2.4%) の群は, 気道熱傷なし ( 中央値 4.6%) の群と比較して高い傾向が認められた (Mann- Whitney の U 検定 ;P=0.06) 傷と評価されたものを含めて 5 例 (46.%) に認められ, そのうち 2 例 (80.0%) に気道熱傷があり, 例考察 (73.3%) で熱による上気道の浮腫が認められた顔面 3 年間における対象症例の調査を通じて, 火災事故日臨救医誌 (JJSEM)4;7:

5 石川幸史, 他表気道熱傷を疑う要因と気道熱傷の有無身体所見及び検査所見急性喉頭浮腫あり気道熱傷あり急性喉頭浮腫なし気道熱傷なし小計 / 合計鼻腔または口腔内の煤付着鼻毛の焼失咽頭痛咽頭部の違和感嗄声顔面熱傷 (+) ( ) (+) 3 5 ( ) (+) ( ) (+) 3 5 ( ) 小計 / 合計血中 CO-Hb 濃度 (%) 4.6( ) 2.4( ) 4.6(0-.2) 顔面熱傷と気道熱傷の合併は, 統計学的に有意であった ( フィッシャーの正確確率 ;p<0.0, オッズ比.6, 感度 0.7, 特異度 0.8) CO-Hb,Carbon monoxide-hemoglobin, 一酸化炭素ヘモグロビン ( ) 内は測定最小値と最大値を示すにおける気道熱傷疑いや,8 歳未満の乳幼児および高齢女性が高温液体により受傷して救命センターに救急搬送されるケースが多く認められた東京消防庁では, 平成 23 年中における救急出場件数は 72 万 4,436 件で, 搬送人員は 63 万 8,03 人であった火災事故の搬送人員は 870 人で, 外傷分類項目別にみると熱傷が 625 人 (7.8%) を占めており, そのうち気道熱傷が 335 人 (54%) と約半数を占め, 次いで四肢熱傷が 8 人 (6%), 顔面熱傷が 0 人 (4%) となっている 2) 高温液体による熱傷は, おもに一般負傷の事故種別となり搬送人員は明らかでないが, 今回の調査では, 火炎によるものが 7% と大部分を占めており, 火炎による事故は気道熱傷を疑われる事例が多く, 救命センターへ搬送されるケースが多くなると考えられた火炎による受傷と高温液体による受傷を, 熱傷面積 (% TBSA) のうち部位ごとに占める割合を比較したところ, 火炎によるものでは頭顔面部等上半身の割合が高く, 高温液体によるものでは下肢等下半身の占める割合が高い傾向がみられた病院前救護における熱傷面積の評価は, 医師の評価と比べ, 絶対誤差は全体としては平均症例あたり 5.2% であり, 誤差の大きい症例もみられた受傷機転別の比較では, 高温液体による受傷でばらつきの大きい傾向がみられた年齢層別の比較では,8 歳未満の乳幼児に限定すると 7.5% と過剰評価される傾向がみられた今回の調査では, 救急隊による評価が適切に残されていて医師の評価と比較できたものに限定しているが, 評価が残されていないものを含めると誤差は大きくなる可能性はあるまた, 熱傷深達度については重症度判定するうえで重要な因子であるが, 救急隊の記録はⅡ 度とⅢ 度それぞれの面積を厳密に分けていないものが多く含まれていたため, 今回の検討事項からは除外したしかし, 救急隊は適切な記録を残すことが今後の課題であると考えられた病院前救護における熱傷面積の評価は, 簡便法であるの法則や 5 の法則が用いられており, 熱傷診療ガイドラインでも推定方法として推奨されている ) 一方, 医療機関でおもに用いられているのはルンドブラウダー (Lund and Browder) の法則であり, 成人と幼児を比較すると, 体幹部前面 ( 胸腹部 ) では, の法則で 5%, 5 の法則では 7% の過剰評価となり, 逆に両下肢ではの法則でも 5 の法則でも過少評価となることがわかる ( 図 6) 今回の調査において,8 歳未満の乳幼児では胸腹部の受傷割合が高く, 過剰に評価されやすい傾向であった乳幼児の場合は体動が激しく, そばにいる家族もあわてている場合が多いことから, 体表面の観察に時間をかけられず心理的に過剰評価になってしまうことが経験的に考えられた 786 日臨救医誌 (JJSEM)4;7:782-8

6 病院前熱傷面積評価と気道熱傷を疑う要因.5.5 成人前面 8 背面の法則前面 3 背面 3 臀部ルンドブラウダーの法則幼児前面背面の法則前面 3 背面臀部ルンドブラウダーの法則 (5 歳の場合 ) 図 6 面積測定法の比較ルンドブラウダーの法則と比較すると, の法則および 5 の法則のどちらも胸腹部では過剰評価, 下肢では過少評価となる可能性がある測定法を部位別に比較した場合, 割合が大きい数値には, 小さい数値にはを付したまた, 高温液体による受傷では, 現場で衣類を脱衣させて全身を詳細に観察することを躊躇し, 結果的に観察不足で評価が不適切になることも経験的に考えられたアンダートリアージと認められた症例は臀部から両下肢中心の熱傷部位であり, 評価法の違いによる誤差や臀部の熱傷面積を下肢の評価に含めてしまった可能性が考えられた救命センターに搬送する選定理由として, 気道熱傷疑いが最も多く認められたが, 気道熱傷は火災や爆発による煙, 高熱水蒸気, 有毒ガスなどを吸引したことによる咽喉頭や気管気管支の粘膜損傷あるいは肺胞の損傷などのことを言い, 吸入物質によっては上気道の浮腫による気道狭窄から chemical bronchitis, chemical pneumonitis を合併するものまでさまざまである 3) と定義されている気道熱傷を疑う要因として, 顔面熱傷, 咽頭痛, 呼吸苦, ビル火災や閉所火災, 意識障害, 嗄声, 鼻毛焼失, 口腔内煤付着, 一酸化炭素ヘモグロビン血症 (CO-Hb >0%) などの所見とされており, 4, ),Stone らの火炎による熱傷に顔面熱傷が存在する場合, 口腔鼻粘膜に熱傷のある場合や閉鎖空間で受傷した場合は気道熱傷合併を疑うべきである (Stone の診断基準 ) 5) という概念が, 現在でも臨床現場で適応されている気道熱傷を疑う要因となった身体所見は, 鼻腔または口腔内の煤付着が高頻度に認められ, 咽頭痛や咽頭部の違和感, 嗄声も半数で認められたが, 偽陽性も多くみられた今回の調査結果では, 咽頭痛, 咽頭部の違和感, 嗄声や鼻毛の焼失だけでは信頼度は低く, 顔面熱傷の合併がより気道熱傷を強く疑う要因であった井砂ら 6) は, 気管支鏡により気道粘膜の煤発赤腫脹水疱や潰瘍蒼白化を認めた場合には, 気道損傷の確定診断とされるとしており, さらに池田 7) は, ファイバースコープによる診断が確定診断として最も信頼度が高いとしており, 今回の調査においても, 気道熱傷の有無については, 気管支鏡の所見から最終判断を行った嶋津ら 8) は, 気道熱傷は通常熱による障害が咽喉頭以下にまで及ぶことはなく, 有毒ガスによる気道や肺胞粘膜への化学的な障害により惹起される炎症が主体であり, また, 最も問題となるのは進行性の低酸素血症であり, 時間経過と共に進行性に悪化することが特徴であると報告しているまた, 小川ら, ) は, 体表の熱傷が比較的軽度であり, それ自体では入院適応とならない場合でも, 受傷状況や臨床症状から気道熱日臨救医誌 (JJSEM)4;7:

7 石川幸史, 他傷を疑う場合には最低 24 時間程度の入院など気道閉塞に対して速やかに対応できる体制のもとで注意深く経過観察する必要があると述べている今回の調査結果より, 気道熱傷ありの群では血中一酸化炭素ヘモグロビン (CO-Hb) 濃度の高い傾向が認められており, 病院前救護において, 気道熱傷が疑われる場合には, 早期の積極的な高濃度酸素投与の実施が必要不可欠であると考えられたまた, 各判断基準に示された観察項目から, 傷病者の重症度緊急度を評価して医療機関を選定した場合, オーバートリアージになることも考えられるが, 限られた資器材で観察を実施している救急隊にとっては, オーバートリアージでないと救命する可能性が低くなる 4) 気道熱傷は短時間で重症化しやすく, 防ぎ得る死亡をなくすため, オーバートリアージは容認されると考えられた結語熱傷症例において病院前救護における熱傷面積評価と気道熱傷を疑う要因について, 医療機関選定に役立てることを目的として調査を行った熱傷面積は, 乳幼児で若干過剰評価の傾向があり, 医師の評価と比較すると絶対誤差にばらつきがみられたものの, 簡便法での医療機関選定は適切に実施されていると考えられた気道熱傷は, 吸入した煙中の有害物質による化学炎症反応が主体であるが, 熱による顔面熱傷の合併は, 上気道熱傷を強く疑える身体所見であった今回の調査結果を活かし, 今後も身体所見から得られるデータを蓄積して, 病院前救護における重症度判定に反映させていくことができれば, より適切な医療機関選定を行うことにつながると考えるこの論旨の一部は, 第 2 回全国救急隊員シンポジウム (3 年, 岡山 ) にて同演題名として発表した文献 ) 日本熱傷学会学術委員会編 : 熱傷診療ガイドライン. 日本熱傷学会, 東京, 0. guideline.pdf 2 ) 東京消防庁救急部 : 救急活動の現況平成 23 年. 東京消防庁救急部編, 東京, 2, p ) 大橋教良, 嶋津岳士 : 気道熱傷. 平山峻, 島崎修次編. 最新の熱傷臨床. 克誠堂, 東京, 4, p ) 救急救命士標準テキスト編集委員会編 : 救急救命士標準テキスト 5, 改訂 8 版, へるす出版, 東京, 2, p ) Stone HH, Rhame DW, Corbitt JD, et al: Respiratory burns: a correlation of clinical and laboratory results. Ann Surg 67 ; 65 : ) 井砂司, 野﨑幹弘 : 気道熱傷を伴った顔面熱傷. 救急集中治療 04 ; 6 : ) 池田弘人 : 気道熱傷. 救急医学 0 ; 34 : ) 嶋津岳士, 小倉裕司, 杉本壽 : 特殊熱傷 ; 気道熱傷. 日外会誌 8 ; : ) 小川新史, 大西光雄, 小倉裕司, 他 : 熱傷. 救急医学 ; 35 : 日臨救医誌 (JJSEM)4;7:782-8

平成 29 年中の救急出動件数等 ( 速報値 ) の公表平成 30 年 3 月 14 日消防庁平成 29 年中の救急出動件数等の速報値を取りまとめましたので公表します U 救急出動件数搬送人員とも過去最多平成 29 年中の救急自動車による救急出動件数は 634 万 2,096 件 ( 対前

平成 29 年中の救急出動件数等 ( 速報値 ) の公表平成 30 年 3 月 14 日消防庁平成 29 年中の救急出動件数等の速報値を取りまとめましたので公表します U 救急出動件数搬送人員とも過去最多平成 29 年中の救急自動車による救急出動件数は 634 万 2,096 件 ( 対前平成 29 年中の救急出動件数等 ( 速報値 ) の公表平成 30 年 3 月 14 日消防庁平成 29 年中の救急出動件数等の速報値を取りまとめましたので公表します U 救急出動件数搬送人員とも過去最多平成 29 年中の救急自動車による救急出動件数は 634 万 2,096 件 ( 対前年比 13 万 2,132 件増 2.1% 増 ) 搬送人員は 573 万 5,915 人 ( 対前年比