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1 Japan Discovery Summit 2017 大規模副作用情報データベースに基づくしゃっくり誘発因子の解析 細谷龍一郎 1,2 植沢芳広 1 野澤 ( 石井 ) 玲子 1 加賀谷肇 1 1 明治薬科大学臨床薬剤学研究室 2 武蔵野赤十字病院薬剤部

2 しゃっくり ( 吃逆 ) しゃくりは神経反射の一種 横隔膜による吸気運動と声門の閉鎖が同時に発生 特徴的は発生音 ヒック! 英名は Hiccups しゃっくり中枢迷走神経肋間神経食道神経叢腹腔神経叢 横隔神経 (C3-C5) 咽頭と声門反回神経肺心臓 横隔膜 胃脾臓腎臓 (M. Steger et al Aliment. Pharmacol Ther 2015; 42: ) しゃっくりのギネス記録 出典 :BBC NEWS

3 しゃっくりの原因 中枢性のしゃっくり 中枢神経の障害により誘発脳梗塞 脳出血 脳腫瘍等が報告しゃっくり中枢は延髄 中脳に存在 末梢性のしゃっくり 中枢性しゃっくり以外が末梢性薬剤性しゃっくり 内臓の物理的刺激や精神的ストレス等も影響 (B. Thaci et al. / Clinical Neurology and Neurosurgery 115 (2013) ) しゃっくりの疫学 性差男性が圧倒的に多い 人種差 地域差の報告はない N = 220 (Jacques V. Souadjian, James C. Cain: Intractable Hiccups ETIOLOGIC FACTORS IN 220 CASES. POSTGRADUATE MEDICINE. 1968;2:72-77)

4 しゃっくりの有害事象 QOL の低下 不眠 嚥下障害 会話障害を引き起こすうつ症状の原因 主疾患の治療を制限 薬剤性しゃっくりによる治療変更 しゃっくりは呼吸 リハビリテーションの妨げになる 薬剤誘発性しゃっくり 男性に多い がん治療に対する化学療法薬で誘発 報告されにくい副作用 ( 希少な副作用 ) 原因薬剤の特定が困難

5 研究目的 しゃっくりを惹起する薬剤の観察 しゃっくり誘発因子の検討 医薬品副作用データベース ( Japanese Adverse Drug Event Report database :JADER ) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構のHPにおいて公開 (Pharmaceuticals and Medical Devices Agency :PMDA) 2004 年 4 月以降の日本における医薬品による副作用報告 35 万件を超える症例と 120 万件を超える医薬品データが蓄積 PMDA ホームページより無料 DL 可能

6 JADER の特徴 4 つのテーブルに分割 識別番号で結合可能 副作用に対する薬剤関与が 被疑薬 と 併用薬 で分類されている 副作用分類は MedDRA 分類に基づいている (MedDRA :Medical Dictionary for Regulatory Activities) 解析用データテーブルの作成 医薬品情報テーブル (2,503,892 件 ) 重複データを削除し結合 識別番号で結合 副作用テーブル (600,264 件 ) 症例一覧テーブルを結合 全症例データテーブル (3,180,415 症例 ) 被疑薬 の症例を抽出 有害事象が しゃっくり を抽出 被疑薬データテーブル (972,220 件 ) 吃逆症例データテーブル (540 件 83 症例 )

7 データテーブルの結合 患者情報 Patients Non-Hiccups Hiccups N=972,220 P value Gender ( male / female ) 486,953 / 466, / 6 < Age 53.6 ± ± Height (cm) ± ± 7.90 < Weight ( kg ) 49.8 ± ± 9.91 < JADER 2004 年 4 月 1 日 ~2016 年 1 月 20 日

8 網羅的に二変量解析 目的変数 : しゃっくりの有無 説明変数 : 医薬品名 Fisherの正確検定のP 値 報告オッズ比を算出 しゃっくりの副作用 その他の副作用 しゃっくりの被疑薬 a c その他の医薬品 b d ROR( 報告オッズ比 ) = 散布図 (Volcano Plot) の作成 Volcano Plot : 大きなデータセットの特徴を視覚的に観察することができる散布図 バイオインフォマティクスの分野では頻用される 〇 X 軸 : 報告オッズ比の自然対数 (ln ROR) 〇 Y 軸 : P 値の逆数の常用対数 (-log P 値 ) しゃっくりと関連の深い薬剤について観察が可能 -logp 0 しゃっくりの報告オッズ比が大きく 統計的有意差が顕著 lnror

9 オキサリフ ラチン テ キサメタソ ン 報告回数 レホ ホリナート 統計的有意差大 -log 10 P -log フルオロウラシルイリノテカンシスフ ラチンカルホ フ ラチン メマンチンイホスファミト フルホ キサミン フルホ キサート アフ レヒ タントフェソテロシ ンン 吃逆の報告オッズ比大 Ln ROR 報告回数 抗がん剤 デキサメタゾン 統計的有意差大 -log 10 P -log 吃逆の報告オッズ比大 Ln ROR

10 網羅的に二変量解析 目的変数 : しゃっくりの有無 説明変数 : 病名 Fisherの正確検定のP 値 報告オッズ比を算出 しゃっくりの副作用 その他の副作用 疾患名 a c その他の疾患 b d ROR( 報告オッズ比 ) = しゃっくりと主病名の関係 結腸癌 感覚神経芽腫 報告回数 肝癌 肺転移 -log 10 P 肺の悪性新生物直腸癌 悪性新生物 非ホジキンリンパ腫 -log ln ROR

11 大規模副作用データベースから しゃっくりと関連のある薬剤 しゃっくりと関連のある病名 が視覚的に捉えられた 多変量解析 しゃっくりの独立したリスク因子の抽出〇手法 : 名義ロジスティック〇応答変数 : しゃっくりの有無〇説明変数 報告が3 件以上あり正確検定が有意な被疑薬 性別 体重 身長 年齢

12 しゃっくりのリスク因子 男性 (P < ) デキサメタゾン (P < ) レボフォリナート (P = ) カルボプラチン (P = ) フルオロウラシル (P = ) オキサリプラチン (P = ) イリノテカン (P = ) シスプラチン (P = ) 身長 (P = ) 体重 (P = ) 年齢 (P = ) ( ) ( ) ( ) ( ) Reporting Odds Ratio N = 436, しゃっくりの独立したリスク因子 薬剤 : 抗がん剤 デキサメタゾン 患者情報 : 男性 高身長 患者の身体的情報 特に高身長としゃっくりの関連を示した初めての報告 Analysis of factors associated with hiccups based on the Japanese Adverse Drug Event Report database, PLOS ONE, 2017; Feb 14; 12(2): e

13 しゃっくりと性別 目的変数 : 男性 説明変数 : 副作用名 Fisherの正確検定のP 値 報告オッズ比を算出 男性 女性 副作用名 a c その他の副作用 b d ROR( 報告オッズ比 ) = 0 女性優位の副作用 男性優位の副作用 -log 10 P -log ln ROR

14 -log 10 P -log ln ROR 副作用データベースの限界 自発報告データベースに特徴的な報告バイアス 自発報告に基づくため 掲載例は臨床上副作用として認識された症例に限定 軽度の副作用は報告され難く 重篤症例に偏る傾向もある 医薬品と有害事象の因果関係が不明瞭 因果関係は報告者の評価 判断による 真の副作用だけでなく副作用疑い例も含まれている可能性

15 まとめ 大規模副作用データーベースをもちいて希少な副作用のリスク因子を抽出した 解析結果を可視化することで 傾向を視覚的にとらえることができた 〇しゃっくりの新たなリスク因子を抽出できたことは副作用発生の予見 予防につながり患者の QOL 向上に寄与できる

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