資料2　科学・技術とイノベーション：経済学からのアプローチ（若杉委員提出資料）

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かおりひのと
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1 資料 2 科学技術イノベーション政策における政策のための科学アドバイザリー委員会 ( 第 5 回 ) H 科学技術とイノベーション : 経済学からのアプローチ若杉隆平 2016/12/19

2 科学とインセンティブ 2016/12/19 2

3 科学へのモチベーション発見の歓び ~ 金銭報酬自然界の謎の発見の歓び先取権報酬この研究が受賞に値する高尚な価値を持つとスウェーデン王立アカデミーの誰かが判断したとしてもそれに意味があるとは思えない私自身すでに賞をもらっているそれは物事をつきとめる喜びであり発見する楽しみである R. Feynman (1999), The Pleasure of Finding Things, Perseus, Cambridge. (1965 年物理学賞受賞者 ) 先取権の確保一番先に業績を上げたことの認定 ( 名称引用件数 ) R. Merton (1969), Behavior patterns of scientists, American Scientist, 57. 微積分に関するライプニッツvsニュートンの争い金銭的報酬お金とお世辞 H. Rosovsky (1990), The University: An Owner s Manual, Norton, NY. 巨額の富エモリー大学 :Emtriva (HIV 治療薬 ) 特許の製薬企業への売却 5 億 2500 万ドル ( 研究者への配分 40%) 2016/12/19 3

4 経済学から見た科学の生産科学的発見知識の生産関数 (Output) Input( 多大な努力 ) 時間知識の蓄積リソースの投入 ( 資本労働両者の代替装置の複雑化研究ツール研究材料の高度化 ) 環境条件 ( 分野特殊性多様性分野横断性 ) 経済学 ( 限られた資源の最も効率的配分を追求 ) からの Evidence 所与の Input が Output を生み出すときの効率性有意性貢献度に関する定量分析 2016/12/19 4

5 知識生産の標準的アプローチ Y A( t ) 外部の知識ストック H F( t 1 2 n 論文特許受賞時間の経過研究者研究費機器研究素材,, ) Y e t 1 2 n H 個票時系列データパラメータ ˆ, ˆ の統計的推計科学知識の増加要因生産性の計測政策的方向付けの基礎を提供 2016/12/19 5 ˆ i,

6 Evidence に基づく政策へ科学知識の生産増加率研究開発 ( i ˆ Y Y ˆ Y, ˆ Y ) の生産性分野別配分 ˆ i i i n n 1 1 ˆ i i Y Y H i ˆ H H Y H H Y 2016/12/19 6

7 成果 ( 論文引用件数 ) の観察と分析マクロの国際比較中国韓国シンガポール台湾の著増 Cohort( 世代属性 : 科学の知識基盤の変化リソースへのアクセス常勤集団 ) の観察 Mincer (1974) ミクロデータによる観察 panel ( 個体別時系列 ) data の利用が不可欠 NSF 博士号取得者の追跡調査日本の調査 (JST-NISTEP) 2016/12/19 7

8 研究成果と年齢ライフサイクル 30 歳前に科学に偉大な貢献をしなかったものは一生涯出来ない ( アインシュタイン ) ミクロデータ分析若者への支援論文 Productivity Levin & Stephan (1991) Turner & Mairesse (2003) Age 2016/12/19 8

9 若手研究者支援策の Evidence 加齢効果 : 有意ただし研究分野による差異卓越した業績 ( ノーベル賞の対象研究 ) と年齢受賞者の割合 (%) 研究開始 Age Stephan & Levin (1993) 2016/12/19 9

10 % Lotkaの法則 ( 特定研究者への成果の集中 ) Lotka の法則 ( 特定の科学者が成果を先取りする ) ~5 6~10 10~ 論文数特許数 Stephan et al. (2007) 2016/12/19 10

11 標準的推計への警告 1. 過剰な知識 (H ) は曇らせるベテランより知識量の少ない若手が並外れた研究成果過去の成果で研究費を配分することの危険性 2.Serendipity( 予期せぬ幸運 ) 偶然はなくチャンスは心構えのあるものにのみ訪れるパスツールのバクテリア発見コロンブスの新大陸発見ミッションが定められていない基礎研究の重要性 3. 科学者の努力の測定は難しく所詮モニタリングできない誘因両立的 (incentive compatible) な報酬の仕組の開発重要性 2016/12/19 11

12 科学の報酬努力はモニタリングできない報酬は業績に付与科学成果は無報酬 ( 完全公共財 ) ではない先取権に基づく報酬構造科学的知識の非市場的インセンティブの存在公共財 ( 研究成果が公表され広く利用可能独り占めの放棄 ) の私的財化 ( 公知の結果事実上研究者の知的財産であることが立証 ) 報酬は金銭である必要はない Arrow (1987), Dasgupta & David (1987), Merton (1988) 2016/12/19 12

13 科学の資金調達科学 ( 公共財 ) の資金調達を市場 ( 民間部門 ) に委ねると非効率 ( 過小 ) となる不確実性専有不可能性 ( 先取権だけでは不十分 ) Arrow (1962) 公的支援望ましい規模分野 ( 課題 ) 配分原理 ( ピアレビューグラント型 vs 機関型 ) に関する経済分析は途上特許知的財産権の付与 ( 知識の私的財化による報酬の保証 ) 競争による非効率 ( 重複投資科学者の rivalry 過多過大投資 ) Dasgupta & Stiglitz (1980) 2016/12/19 13

14 科学と技術 2016/12/19 14

15 科学と技術 : 基礎原理と実用性実用性領域の拡大科学と技術の接近エジソンの象限パスツールの象限ボーアの象限基礎原理の発見理解 2016/12/19 15

16 科学と技術の線引き生産過程の共通性 : 秘匿性 ( 出し抜かれない ) 成果の異質性 (Stephan (2010)) 科学技術先取権 ( 一番乗りの認知 ) 早期に公知共有論文出版非金銭的インセンティブ財産権 ( 長く独り占め ) 独占秘匿特許取得製品 ; 技術による利得 2016/12/19 16

17 科学界と産業界 ( 技術 ) 科学技術科学界 : 発見発明の全面公開産業界 : 発見発明を全面公開してはならない Dasgupta & David (1987) 科学の私物化の進行データの非公開研究素材の制限 ( 細胞株の支配 ) 論文と特許の補完性論文特許 Agrawal & Henderson (2002) Nagaoka( 新薬の特許と学術論文の補完 ) 特許論文 Azoulay et al. (2009) 2016/12/19 17

18 イノベーションと経済成長 2016/12/19 18

19 イノベーション _creative destruction Joseph Alois Schumpeter, Capitalism, Socialism, and Democracy, 1942 新しい財貨の生産新しい生産方法の導入新しい販売先の開拓原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得新しい組織の実現 ( 独占の形成と打破 ) 担い手 :Entrepreneur( 新しい組み合わせで生産要素を結合し新たなビジネスを創造する起業家 ) いくら郵便馬車を列ねてもそれによって新しい鉄道を得ることはできないどんなに革新的な技術があっても市場に受け入れられなければイノベーションではない 2016/12/19 19

20 イノベーションの経済成長への貢献 Y A( t ) 技術知識ストック H F( t 1 2 n 経済規模 (GDP) 時間の経過 ( 技術進歩 ) 資本労働インフラ中間財,, ) Y e t 1 2 n H 個票時系列データパラメータ経済成長への貢献労働や資本の生産性 ˆ, ˆ の統計的推計成長を促す政策への基礎を提供 2016/12/19 20 ˆ i,

21 科学技術イノベーションと成長知識波及 ( 部門間国間 Spillover) の効果経済成長の源知的財産権の保護 ( 特許制度 ) と経済成長 ( 多国間 ) 保護の強化技術報酬研究開発投資成長研究開発活動と生産活動の資源配分に trade off ( 技術後進国 ) 模倣生産活動への投資 ( 技術先進国 ) 技術後進国の生産生産活動への投資研究開発投資イノベーションの停滞! 2016/12/19 21

22 警告 : 生産性上昇とイノベーション Trade off? Productivity Dilemma 生産性上昇 vs イノベーション新製品サービスの出現生産方法の確立生産効率の向上製品サービスの固定化イノベーションの停滞! 2016/12/19 22

23 科学技術イノベーションへの経済学の取り組み理論分析実証分析による最適資源配分に関する研究蓄積対象データ (Cohort データ個票データ ) の整備経済への波及効果 (I-O 分析 ) 実験的手法 ( 政策実験 ) の開発 Control Group & Treatment Group 一般均衡モデルシミュレーションによる将来予測 2016/12/19 23

24 日本の科学技術イノベーション : 不安材料 2016/12/19 24

25 R&D 支出の減少傾向ポーラステファン著後藤康雄訳解説科学の経済学 p /12/19 25

26 R&D/GDP 比率の停滞 2016/12/19 26 ポーラステファン著後藤康雄訳解説科学の経済学 p

27 科学技術予算の減少傾向 2016/12/19 ポーラステファン著後藤康雄訳解説科学の経済学 p

28 理工系博士号取得者の減少傾向 2016/12/19 ポーラステファン著後藤康雄訳解説科学の経済学 p

29 論文数の停滞 2016/12/19 29 ポーラステファン著後藤康雄訳解説科学の経済学 p

30 特許出願数の減少傾向 2016/12/19 ポーラステファン著後藤康雄訳解説科学の経済学 p

シラバス－マクロ経済学－

シラバス－マクロ経済学－経済原論 Ⅱ(6/9 マンキュー Ⅱ( 応用篇第 2 章経済成長 Ⅱ 2-. ソローモデルにおける技術進歩労働の効率性労働の効率性をとし生産関数 F(, を, F(, と置き換える効率単位で測った労働力有効労働者数毎年 2% ずつ労働効率が向上して, 同じ労働者数でも有効労働者数が2% ずつ増える. このような技術進歩を労働増大的技術進歩と呼ぶ技術進歩率 ( 労働増大的技術進歩率をとすると

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