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1 平成 23 年度第 4 回 0 金属資源関連成果発表会 最近の豪州の鉱業事情 平成 23 年 7 月 28 日 資源探査部探査第 2 課増田一夫

2 内容 1 豪州の鉱業動向 ( 開発プロジェクト ) 2011/12 年度連邦政府予算案 ( 資源関連 ) 鉱物資源利用税アップデート 炭素税について 環境保全を背景とした方針転換 (NT 準州 QLD 州 SA 州 ) ウーメラ立入制限区域 (SA 州 ) での鉱業活動に朗報 福島第一原子力発電所事故後の豪州ウラン動向

3 2 Advanced minerals and energy projects (ABARES, 2011)

4 Advanced minerals and energy projects (ABARES, 2011) 豪州の鉱業動向 ( 開発プロジェクト ) 3 Australian private minerals exploration expenditure New capital expenditure

5 Advanced minerals and energy projects (ABARES, 2011) 豪州の鉱業動向 ( 開発プロジェクト ) 4 Value of Advanced projects by commodity, April 2001 Value of Advanced projects by state and territory, April 2001

6 豪州の鉱業動向 ( 開発プロジェクト ) Number of advanced projects 5 Value of advanced projects Avarage value of advanced projects Advanced minerals and energy projects (ABARES, 2011)

7 2011/12 年度連邦政府予算案 6 歳入 3,499 億 A$ 歳出 3,658 億 A$ 第 2 次資源ブームへ向けて豪州経済を整備するとともに 生産能力を拡大する投資を継続 技術及び職業訓練 就労人口拡大対策を通じて将来の労働力を拡充 国家労働力開発基金 (National Workforce Development Fund) を通じ 質の高い職業訓練へ 5.58 億 A$ を支出 州 準州と提携し職業訓練改革に 17.5 億 A$ を支出 就労報酬制度 職業訓練 教育等を通じた新たな雇用機会の提供等により労働者数の増加施策を実施 インフラ投資 道路 鉄道及び港の整備に対して 360 億 A$ の投資 鉱業分野に関し 地方インフラ基金 (Regional Infrastructure Fund) からインフラ整備にに投資 (QLD 州 5 件 3.98 億 A$ WA 州 1 件 4.8 億 A$ NSW 州 2 百万 A$) インフラ投資の妨げとなっている税制規定の改正 税制の公正性と誠実性の改善による税制改革 豪州鉱業協会は熟練労働者不足 移民労働者への対応 資源大州である WA 州 QLD 州へのインフラ整備に重点を置いた歳出に歓迎のコメントを発表

8 鉱物資源利用税 (1/4) 年 5 月 13 日 21 世紀における 人口 社会 経済および環境問題に対処できる豪州の将来税制 (AFTS :Australia s Future Tax System) を構築すべく税制の包括的検討を行うことを発表 高齢化社会 グローバリゼーション 環境保全 技術進歩 連邦と州の課税方式 課税効率 公平 簡素化の点から租税ポリシーを検討 2010 年 5 月 2 日 豪州連邦政府により資源超過利潤税 (RSPT:Resource Super Profits Tax) の 2012 年 7 月 1 日導入が発表 生産物対象ではなく プロジェクトの 超過 利潤の 40% に課税 ( 実効税率 43% 57% へ ) 課税控除が低い 全ての再生不能資源プロジェクト対象 ( 一律課税 ) 課税点は資源が最初に販売可能となる時点 ( 課税点あいまい )

9 鉱物資源利用税 (2/4) 年 6 月 24 日 Rudd 首相の辞任及び Gillard 政権誕生 住宅への断熱材設置制度でのトラブル多発 排出権取引制度の延期で失望感が広がる RSPT によって支持率急落 労働党は年内実施の連邦総選挙をにらみ 党首交代 資源業界に 停戦 申し入れ 2010 年 7 月 1 日 資源大手 3 社 (BHP Billiton Rio Tinto Xstrata) と新税制で覚書締結

10 鉱物資源利用税 (3/4) 年 7 月 2 日 鉱物資源利用税 (MRRT:Minerals Resource Rent Tax) の発表 超過 利潤の課税率を 40% 30% へ減じ 更に 25% の採掘控除を供与 (MRRT 実効税率 30% 22.5% へ 全実効税率は 43% 45%) 資源関連利益が 5 千万ドル未満の企業は対象に含まれない 鉄鉱石及び石炭のみ対象 ( 石油 天然ガスは石油資源税 (PRRT)) 既存及び新規とも適用 ( 既存案件への減価償却算出法で選択肢 ) 課税点は鉱山出口に限りなく近い点 ( 採掘された資源の価値のみ ) 州ロイヤリティの還付有 ( 全額 ) 探鉱費還付は廃止

11 鉱物資源利用税 (4/4) 年 8 月 3 日 政策移行グループ (PTG:Policy Transition Group) のための実施要綱 (Terms of Reference) 発表 PTG は MRRT/PRRT の詳細設計と実施を監督 産業界の意見聴取 PTG は Ferguson 資源エネルギー大臣及び Don Argus 元 BHP Billiton 会長が共同委員長に就任 2011 年 3 月 24 日 PTG の提言 (98 勧告 4 探鉱促進策 ) を全て受け入れ 現在及び将来の引上げ分を含めた州政府へ支払うロイヤルティの控除を認め 連邦 州全ての政府が 豪州の資源税制が国際競争力を維持するよう保障すべきとする勧告 MRRT 財源の 60 億 A$ インフラ ファンドの 1/3 を WA 州 QLD 州へ 実行グループ (Implementation Group) の設立

12 炭素税 (1/4) 2008 年 12 月 連邦政府は気候変動白書 (CPRS:Carbon Pollution Reduction Scheme) を発表 2010 年導入を目指す 温室効果ガスの中期削減目標値を提示 ( 2000 年レベルに比べ 2020 年までに 5%~15% 2050 年までに 60% 削減 ) 排出権取引制度 (ETS:Emission Trading Scheme) の枠組みを明示 ETS により影響を被る産業や家計への助成策を提示 年 CPRS 法案は連邦下院を通過するも 上院 ( 議席の過半数を野党自由連合が占める ) で 2 度否決 2010 年 4 月 2013 年まで CPRS 検討延期を発表 2009 年 12 月のコペンハーゲンで開催された気候変動枠組条約第 15 回締約国会議 (COP15) が不調 Rudd 首相のイニシアティブについて疑問視 上院で 3 回否決されれば 議会を解散し 総選挙で信を問うしかない

13 炭素税 (2/4) 年 9 月 与党 労働党は Gillard 新政権にて炭素排出産業に強硬姿勢をとるグリーン党と連携することから 気候変動に関する取組みを見直し 多党による気候変動委員会 (Multi-party Climate Change Committee) を設置 再生可能エネルギー開発 エネルギー効率化 炭素税 の 3 点を討議 2011 年 2 月 多党による気候変動委員会にて労働党はグリーン党と基本合意したこと受け気候変動枠組み (Climate Change Framework) を発表 炭素課金制度案の大まかな枠組みを発表 2012 年 7 月 1 日から固定炭素価格 ( 未定 ) で課金 3 年 ~5 年の移行期間を経て ETS に移行 移行期間中の炭素価格は毎年値上

14 炭素税 (3/4) 2011 年 7 月 10 日 連邦政府は Securing a Clean Energy Future - The Australian Government s Climate Change Plan と呼ばれる炭素排出削減政策を発表 炭素税導入は 2012 年 7 月 1 日 ETS 導入は 2015 年 7 月 1 日 13 年間 25,000 トンの二酸化炭素等を排出する企業が義務を負う ( 約 500 社が課税対象となる見込みで 炭素排出企業の 60% に該当 ) 対象分野は発電 燃料用エネルギー 製造業の製造過程 逸散排出 廃棄物 特定の運輸産業 ( 個人 小規模事業者 農林漁業 土地利用は適用外 ) 炭素税の負担額は 2012/13 年度で排出量 1 トン当たり 23 A$ で 物価上昇分として毎年 2.5% ずつ引き上げられる ETS 移行後 3 年間は 急激な価格変動を抑えるため 取引価格の下限は 15 A$/t 上限は想定国際価格 + 20 A$/t とし 毎年 下限価格は 4% 上限価格は 5% ずつ引き上げられる

15 炭素税 (4/4) 光熱費等の上昇に見舞われる一般家庭に対しては 個人所得税の減税策や老齢年金 (Pensions) の増加策等を通じた補償を行う 制度の影響を受ける産業には 3 年間で 92 億 A$ を支援 製鉄産業に対し 5 年で 3 億 A$ を支援 ( 技術革新 効率向上 ) 石炭産業のため 13 億 A$ を支援 ( 鉱山閉鎖を考慮している可能性有 ) エネルギ効率向上 排出削減を目的とし 12 億 A$ をクリーン技術へ投入 14 業界からの反応 豪州鉱業協会は 鉱業の 9 割に当たる企業は炭素税導入に対するセーフガードが盛り込まれておらず 資源企業は豪州から移転してしまい 全体として低炭素社会実現に向かわない とし 炭素税導入により 2020 年までに 23,500 人以上の雇用喪失 2020 年までに 300 億 A$ の追加コストが生じるとともに 1,400 億 A$ の投資が影響を被るとして 資源輸出の競争相手国の環境政策を見極めた上で 国際競争力のある仕組みを構築すべきとした 37 頁からなる意見書を提出

16 環境保全を背景とした方針転換 (1/3) 15 NT 準州 Angela Pamela ウラン プロジェクト (Cameco Corp. 社権益 50% Paladin Energy Ltd 社権益 50%) 2010 年 9 月 NT 準州の Henderson 主席大臣が Alice Springs の南 20 km に位置しており Alice Springs 住民の反対 ( 水質汚染への懸念 ) や観光産業への影響が大きい として これまでの支持を撤回 本件は 2006 年 12 月に NT 準州政府が探鉱各社の関心を募り 2008 年 2 月に関心表明した 37 社の中から Cameco 社と Paladin Energy 社の JV が選ばれ 2008 年 10 月に探鉱権が認められた経緯がある 探鉱ターゲットとして 13 百万 t ( 品位 U3O8 0.1%-0.13%) を目標に 資源量確定ボーリング調査を実施中であった NT 準州におけるウラン鉱業の主導権は連邦政府にあるため 最終的には連邦政府の判断 現在 規模を大幅に縮小して一部探鉱を継続するも Cameco 社は既に NT 準州のオフィス (Darwin Alice Springs ) を全て閉鎖し WA 州 Perth へ移転

17 環境保全を背景とした方針転換 (2/3) 16 QLD 州 Pisolite Hill ボーキサイト プロジェクト (Cape Alumina Ltd 社 100%) Cape Alumina 社は 政府ガイドラインに基づき Wenlock 川流域の川岸から 200m までをバッファゾーンとして F/S 及び環境影響調査を行っていた 2010 年 6 月 QLD 州の Robertson 天然資源鉱山エネルギー大臣は Wenlock 川を QLD 州 Wild River Legislation として原生流域に指定し 川岸から 500m を高度保護地域 (High Preservation Area) に指定した Cape Alumina 社は 鉱山開発は河川 湿地帯及び湧水地で行わないため水環境保全が守られること 科学調査でバッファーゾーンは 200m で十分であることを証明し かつ QLD 州天然資源鉱山エネルギー省から 300m のバッファゾーンで水環境保全が守られるとのアドバイスを既に得ている 予測 概測及び精測鉱物資源量合計は 87.3 百万 t( 品位 Al2O3 52.8%) から 45% 減尐し 開発困難となった ( バッファゾーンが 300m であったなら資源量の減尐は 7% のみ )

18 環境保全を背景とした方針転換 (3/3) 17 SA 州 Mt Gee ウラン プロジェクト (Marathon Resources Limited 社権益 100%) 2011 年 7 月 22 日 SA 州の Rann 首相 Caica 環境保全大臣 Koutsantonis 鉱物資源大臣は共同声明 Arkaroola to be protected forever として SA 州 Arkaroola 地域 ( フリンダース山脈 ) での自然環境及び文化遺産の保護を目的として 資源開発を禁止することを表明 Arkaroola to be protected forever 今後は 鉱業法改正 特別法により 鉱山開発 探鉱 放牧を禁止し 同地域を保護するとともに 世界遺産リスト登録を目指す 予測 概測鉱物資源量合計は 51 百万 t( 品位 U3O8 615ppm) で 豪州の未開発ウラン鉱床としては Jabiluka Yeelirrie Mulga Rock Kintyre に次いで 5 番目の大きさ

19 SA 州ウーメラ立入制限区域 (1/3) 18 ウーメラ立入制限区域 (WPA :Woomera Prohibited Area) とは 面積 12.7 万 km² の広大な軍用試験区域 ウーメラ試験設備 (WTF: Woomera Test Field) は 連邦政府法律下で特に軍事実験活動のために使用されており 1947 年から WPA として立入が制限 WTF では 豪州国防軍 海外国防機関 事業団体などによる 様々な種類の陸上 / 空中 / 宇宙実験 ( 航空機 兵器 爆薬 ロケット発射 大気圏再突入のプログラムなど ) を実施 WPA での探鉱及び鉱山開発に際して連邦政府 ( 国防省 ) との間で協定書を締結する必要がある しかしながら 申請が必ずしも承認されるとは限らなかった 2010 年 5 月に元国防省次官の Hawke 博士が WPA の利用についてのレビューを開始

20 SA 州ウーメラ立入制限区域 ( 図 ) 19 South Australian operating mine (ABARE-BRS, 2010)

21 SA 州ウーメラ立入制限区域 (2/3) 20 WPA での鉱業活動例 2001 年 Challenger 金鉱山生産開始 2006 年 11 月 Oxiana Limited( 現 OZ Minerals Limited) は WPA へのアクセス合意締結により Prominent Hill 鉱山を開発 2009 年生産開始 2009 年 3 月 中国 Minmetals( 五鉱集団公司 ) による OZ Minerals 社 100% 買収提案 (26 億 A$) に対し 豪州外国投資調査委員会 (FIRB:Foreign Investment Review Board) は 国家安全保障の観点から 買収提案に Prominent Hill 鉱山が含まれる限り承認はできない との声明を発表した その結果 Minmetals は Prominent Hill 鉱山を除いた買収案を再提示 2009 年 3 月 WPG Resources Ltd は 中国 WISCO( 武漢鋼鉄公司 ) の Hawks Nest 鉄鉱石プロジェクトへの JV 参入で合意 FIRB 申請の前に国防省にアクセス合意を求めるも合意を得られず 2008 年 11 月 WPG Resources 社は Apollo Resources NL が保有する Commonwealth Hill 鉄鉱石プロジェクトへの JV 参入するも 国防省の動向が不透明であることを理由に JV から撤退

22 SA 州ウーメラ立入制限区域 (3/3) 年 5 月 Ferguson 資源エネルギー大臣及び Smith 国防大臣はウーメラ立入制限区域 (WPA :Woomera Prohibited Area) での段階的な資源開発を認めることを発表 Hawke 博士は豪州の国益と経済発展とのバランスを考慮した新フレームワークを提案 WPA 内での資源経済価値は 350 億 A$ 以上 赤 (Red) 琥珀 (Amber) 緑 (Green) と区分し 異なるアクセス / 時間割当を提案 連邦政府 (DRET:Departments of Resources, Energy and Tourism Department of Finance and Deregulation) 及び州政府 (PIRSA:Primary Industry and Resources SA) で構成される WPA Coordination Office を設立し 非軍事利用に関する許認可を一元化

23 Indicative Zoning of the WPA(Australian Government, 2011) SA 州ウーメラ立入制限区域 ( 図 ) 22

24 福島第一原子力発電所事故後の豪州ウラン動向 23 連邦政府 州政府とも 今後もウラン事業を後押し アナリストらは 中 長期的な影響はないものの 開発には 2~3 年の遅れが生じるとの見方 Rio Tinto 社は 向こう 10 年間はウラン 原子力発電事業の成長鈍化を指摘し 5 年間は同事業の施設建設等に遅れが生じると予想する一方で 長期的にはウラン需要は高まると強調 BHP Billiton 社は SA 州 Olympic Dam 鉱山拡張計画を予定通り継続 Cameco 社 (WA 州 Kintyre ウラン プロジェクト ) や Paladin Energy 社 ( ナミビア Langer Heinrich 鉱山 マラウイ Kayelekera 鉱山 豪州でウラン探鉱プロジェクト等を保有 ) は中 長期的な影響はほとんどないとの見方 一方で ウラン探鉱ジュニアの株価は軒並み下落 ウラン価格の下落によって資金調達が困難となったことから 経営方針や戦略の転換を余儀なくされており 今後 M&A のターゲットになる可能性がある

25 参考資料 24 ABARES, 2011, Major development projects April 2011 listing ABARE-BRS, 2010, An economic assessment of mineral developments within the Woomera Prohibited Area Australian Government, 2011, Review of the Woomera Prohibited Area - Final Report