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ぜんすけすえがら
7 years ago
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1 上原記念生命科学財団研究報告集, 25 (2011) 22. パラジウム触媒によるアリルアルコールのエナンチオ選択的 3-exo-trig 環化を利用する光学活性エポキシドの合成依光英樹 Key words:エポキシド,アジリジン, メチレンシクロプロパン,パラジウム, 小員環京都大学大学院理学研究科化学専攻集合有機分子機能分科緒言エポキシド類は生物活性物質中にしばしば見られ,その歪んだ構造に由来する特異な活性を示す.また, 医薬中間体としても極めて有用である.それゆえエポキシドの合成法は古くから研究されており,アルケンの過酸酸化をはじめ数多くの合成法が開発されている. 一方で, 近年の有機合成はさらに高度化多様化を続け,それに伴ってエポキシドの標的化合物としての重要性も益々高まってきている.その結果, 従来のエポキシド合成法では対応できない有機合成上の課題が数多く見受けられるようになった.こうした背景により, 多種多様なエポキシドを精密合成できる新手法や既存のエポキシド合成法とは一線を画する斬新な手法の開発が今日でもなお強く求められている. 本研究では, 著者がごく最近見いだしたアリルアルコールの閉環を利用した新規エポキシド合成法を利用して光学活性エポキシドの高選択的合成を目指して研究を行った.また,アリルアルコールの閉環反応をアリルアミンに適用し,アジリジンの立体選択的合成も検討した.さらに,プロパルギル置換マロン酸エステルの閉環反応も偶然見いだし,メチレンシクロプロパンの斬新な合成法を開発した. 方法結果および考察 1.パラジウム触媒を用いたアリルアルコールとハロゲン化アリールの反応による光学活性エポキシドの合成 1) パラジウム触媒存在下,t-ブチル基とメチル基が置換した光学活性第三級アリルアルコールに対して 1-ブロモナフタレンとナトリウム t-ブトキシドを作用させると,ナフチル化を伴った閉環反応が高ジアステレオ選択的に進行し, 対応する光学活性エポキシドが収率良く得られた (Fig. 1). 光学活性エポキシドへの斬新なアプローチとして意義深い. 反応機構は1)ハロゲン化アリールのパラジウムへの酸化的付加,2)ブロミド-アルコキシド交換,3) 分子内オキシパラジウム化,4) 還元的脱離から成ると考えている (Fig. 2). 立体選択性に関しては,オキシパラジウム化に際し, 嵩高い t-ブチル基が擬エクアトリアル位を占める遷移状態を経由するために, 高い立体選択性が発現すると考えられる. Fig. 1.Synthesis of Optically Enriched Epoxide. 1

生物活性物質中にしばしば見られ,その歪んだ構造に由来する特異な活性を示す.また, 医薬中間体としても極めて有用である.それゆえエポキシドの合成法は古くから研究されており,アルケンの過酸酸化をはじめ数多くの合成法が開発されている.

2 Fig. 2.Plausible Mechanism. 2.パラジウム触媒を用いた N-アリールアリルアミンとハロゲン化アリールの反応によるアジリジンの合成 2) 1.で述べたエポキシ化反応はアジリジンの合成にも展開できた.N-フェニルアリルアミンの環化は特に効率がよく, 対応するアジリジンを高収率で与えた (Fig. 3).また,フェニル基とメチル基がアリル位に置換したアリルアミンを用いると, 閉環がジアステレオ選択的に進行した (Fig. 4).この際, 立体選択性はエポキシドの場合と逆転することが明らかとなった.この逆転現象は, 窒素上のフェニル基と擬エクアトリアル位の置換基の立体反発を考慮すると理解できる. Fig. 3.Arylative Aziridination. Fig. 4.Diastereoselective Aziridination. 2

また,フェニル基とメチル基がアリル位に置換したアリルアミンを用いると, 閉環がジアステレオ選択的に進行した (Fig. 4).

3 3.パラジウム触媒を用いた N-アリルアセトアミドとハロゲン化アリールの反応によるオキサゾリンの合成 3) 2.で述べた N-アリールアリルアミンの代わりに N-アリルアセトアミドを用いて同様の反応を行ったところ,アジリジンではなく五員環生成物であるオキサゾリンが高収率で得られた (Fig. 5).アミド窒素の求核性が低下し,カルボニル基からの環化がおこったためである (Fig. 6). Fig. 5.Synthesis of Oxazolines. Fig. 6.Plausible Mechanism of Oxazoline Formation. 4.パラジウム触媒を用いた 4 ペンテニル置換マロン酸エステルの酸化的分子内カルボアセトキシ化反応 4) パラジウム触媒を用いる炭素炭素二重結合の酸化的二重官能基化は単純な骨格から一挙に複雑な骨格を構築でき, 近年注目を集めている. 我々は,パラジウム触媒存在下,4-ペンテニル置換マロン酸エステルに対して,ヨードベンゼンジアセタートおよびチタンテトライソプロポキシドを作用させるとアセトキシ化されたシクロペンタン誘導体が得られることを見いだした (Fig. 7).アルケン部分に酸化的にアセトキシ基と sp 3 混成炭素を同時に導入した初めての例である. アルゴン雰囲気下, 触媒量の塩化パラジウムアセトニトリル錯体とヨードベンゼンジアセタートを 1,2-ジクロロエタンと無水酢酸の 1:1 混合溶媒中 10 分間撹拌した.ここにチタンテトライソプロポキシドと 4-ペンテニル置換マロン酸エステルを加え 50 で 20 時間加熱したところ, 対応するアセトキシ化されたシクロペンタンが 57%の収率で得られた.また, 副生成物としてラクトンが 12%の収率で得られた.なお,シクロペンタン生成物と副生成物であるラクトンの混合物を, 硫酸存在下,イソプロピルアルコール中加熱還流すると全てラクトンへ変換することができた. 3

パラジウム触媒を用いた 4 ペンテニル置換マロン酸エステルの酸化的分子内カルボアセトキシ化反応 4) パラジウム触媒を用いる炭素炭素二重結合の酸化的二重官能基化は単純な骨格から一挙に複雑な骨格を構築でき, 近年注目を集めている.

4 Fig. 7.Intramolecular Carboacetoxylation. 5.パラジウム触媒を用いたプロパルギル置換マロン酸エステルとハロゲン化アリールの反応によるメチレンシクロプロパンの合成 5). メチレンシクロプロパンは有機合成上有用なビルディングブロックであり,その効率的かつ立体選択的合成法の開発は大変重要な課題である. 我々は,1.および 2.で述べたエポキシドならびにアジリジンの合成反応から知見を得て,パラジウム触媒存在下,プロパルギル置換マロン酸エステルとハロゲン化アリールからアリール基が置換したメチレンシクロプロパン誘導体が得られると考え, 研究を行った. アルゴン雰囲気下,パラジウム触媒及び塩基存在下,プロパルギル置換マロン酸エステルにブロモベンゼンを作用させ,トルエン中加熱還流したところ,フェニル基が置換したメチレンシクロプロパンが収率 78%で得られた (Fig. 8). 本反応は高い立体選択性で進行し,マロン酸エステル部位と導入されるフェニル基がトランス配置の生成物が単一の生成物として得られた. 二重結合部位の立体化学を制御しながらメチレンシクロプロパンを合成することは通常極めて困難であり, 本手法は立体選択的メチレンシクロプロパン合成法として有用である. また, 得られたメチレンシクロプロパンは,エステル部位をルイス酸で活性化することで種々の変換反応が可能である. 例えば,メチレンシクロプロパンをイッテルビウムトリフラート触媒存在下,メタノール中加熱還流するとアリルエーテルが 72%の収率で得られた (Fig. 9).アリルエーテルの四置換アルケン部分の立体化学は保持されており,メチレンシクロプロパンへの閉環とそれに続く開環反応は多置換アルケンの位置および立体選択的合成法として意義深い. Fig. 8.Cyclopropanative Arylation for Synthesis of Methylenecyclopropanes. Fig. 9.Ring-opening Reaction of Methylenecyclopropane. 4

で述べたエポキシドならびにアジリジンの合成反応から知見を得て,パラジウム触媒存在下,プロパルギル置換マロン酸エステルとハロゲン化アリールからアリール基が置換したメチレンシクロプロパン誘導体が得られると考え, 研究を行った.

5 現在,パラジウム触媒を用いる更なる高難度環化反応の開発とその生物活性物質の合成への展開を目指して研究を続けている. 共同研究者本研究の共同研究者である林沙悠梨博士, 藤野大士氏, 大嶌幸一郎京都大学名誉教授 ( 現京都大学副理事 )にこの場を借りて厚く御礼申し上げます. 本稿を終えるにあたり, 本研究をご支援頂いた上原記念生命科学財団に深謝申し上げます. 文献 1) Hayashi, S., Yorimitsu, H. & Oshima, K. : Synthesis of epoxides by palladium-catalyzed reactions of tertiary allyl alcohols with aryl or alkenyl halides. J. Am. Chem. Soc., 131 : , ) Hayashi, S., Yorimitsu, H. & Oshima, K. : Synthesis of aziridines by palladium-catalyzed reactions of allylamines with aryl or alkenyl halides: evidence of a syn-carboamination Pathway. Angew. Chem. Int. Ed., 48 : , ) Fujino, D., Hayashi, S., Yorimitsu, H. & Oshima, K. : Palladium-catalysed arylative cyclisation of N- allylacetamides with aryl halides yielding benzyl-substituted Oxazolidines. Chem. Commun., 45 : , ) Fujino, D., Yorimitsu, H. & Oshima, K. : Palladium-catalyzed intramolecular carboacetoxylation of 4- pentenyl-substituted malonate esters with iodobenzene diacetate. Chem. Asian J., 5 : , ) Fujino, D., Yorimitsu, H. & Oshima, K. : Synthesis of methylenecyclopropanes by palladium-catalyzed reaction of propargyl-substituted malonate esters with aryl halides by anti-carbopalladation. J. Am. Chem. Soc., 133 : ,

本稿を終えるにあたり, 本研究をご支援頂いた上原記念生命科学財団に深謝申し上げます. 文献 1) Hayashi, S., Yorimitsu, H. & Oshima, K.

私立大学等研究設備整備費等補助金（私立大学等

私立大学等研究設備整備費等補助金（私立大学等私立大学等研究設備整備費等補助金 ( 私立大学等研究設備等整備費 ) 交付要綱目次第 1 章通則 ( 第 1 条 - 第 4 条 ) 第 2 章私立大学等 ( 第 5 条 - 第 15 条 ) 第 3 章専修学校 ( 第 16 条 - 第 25 条 ) 第 4 章補助金の返還 ( 第 26 条 ) 第