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1 SOFTICヤングゼミナール ヤングゼミナール2011( 第 1 回 ) 2011 年 6 月 16 日 SARVH 対 東 芝 私 的 録 画 補 償 金 事 件 東 京 地 裁 平 成 22 年 12 月 27 日 判 決 ( 平 成 21 年 (ワ) 第 号 ) 発 表 者 内 田 鮫 島 法 律 事 務 所 弁 護 士 伊 藤 雅 浩 株 式 会 社 日 本 総 合 研 究 所 法 務 部 中 村 佑

2 概 要 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 1. 私 的 使 用 のための 複 製 2. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 とは 3. 補 償 金 制 度 導 入 の 背 景 4. 補 償 金 制 度 の 対 象 機 器 ( 録 画 ) 5. 補 償 金 制 度 の 構 造 6. デジタル 放 送 とコピー 制 御 技 術 の 経 緯 2. 本 件 事 案 1. 当 事 者 と 事 案 概 要 2. 被 告 各 製 品 3. 主 な 争 点 と 裁 判 所 の 結 論 4. 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 5. 争 点 2( 法 104 条 の5 協 力 義 務 ) 考 察 6. 争 点 3( 不 法 行 為 の 成 否 ) 考 察 3. 補 足 事 項 1. 本 件 事 案 に 関 する 意 見 2. 補 償 金 制 度 を 巡 る 議 論 等 3. 諸 外 国 における 補 償 金 制 度 4. 参 考 資 料 1. 検 討 事 項 2. 参 考 条 文 1

3 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (1) 私 的 使 用 のための 複 製 著 作 権 の 目 的 となつて なつている 著 作 物 ( 以 下 この 款 において 単 に 著 作 物 という )は 個 人 的 に 又 は 家 庭 内 その 他 これに 準 ずる 限 られた 範 囲 内 に おいて 使 用 すること( 以 下 私 的 使 用 とい う )を 目 的 とするときは ( 略 )その 使 用 する 者 が 複 製 することができる ( 著 作 権 法 ( 以 下 法 ) 第 30 条 第 1 項 ) 無 許 諾 無 償 2

4 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (2) 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 とは 私 的 使 用 を 目 的 として デジタル 方 式 の 録 音 又 は 録 画 の 機 能 を 有 する 機 器 ( 略 )であつて 政 令 で 定 めるものにより により 当 該 機 器 によるデジタル 方 式 の 録 音 又 は 録 画 の 用 に 供 される 記 録 媒 体 であつて 政 令 で 定 めるものに 録 音 又 は 録 画 を 行 う 者 は 相 当 な 額 の 補 償 金 を 著 作 権 者 に 支 払 わなければなら ない ( 法 第 30 条 第 2 項 )とする 制 度 無 許 諾 有 償 3

5 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (3) 補 償 金 制 度 導 入 の 背 景 法 第 30 条 の 立 法 趣 旨 家 庭 等 の 私 的 領 域 内 で 行 われる 程 度 の 複 製 であれば 量 的 な 面 において 著 作 権 者 に 与 える 影 響 も 少 ない アナログの 複 製 等 では 精 度 も 落 ちるため 複 製 物 の 価 値 は 高 くなく 著 作 権 者 を 害 するほどのものではない 私 的 使 用 の 変 質 複 製 機 器 の 発 達 により 高 品 質 な 複 製 物 を 容 易 に 大 量 に 作 成 することが 可 能 となった これにより 権 利 者 の 正 当 な 利 益 が 不 当 に 害 されるのではないか 懸 念 が 生 じた 録 音 録 画 行 為 は 引 き 続 き 自 由 として 著 作 権 を 制 限 するも のの その 代 償 として 一 定 の 経 済 的 対 価 補 償 措 置 を 講 ず ることが 適 当 であるという 考 え 方 が 示 された ( 平 成 3 年 著 作 権 審 議 会 第 10 小 委 員 会 ) 4

6 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (3) 補 償 金 制 度 導 入 の 背 景 ( 昭 和 59 年 改 正 ) 公 衆 の 使 用 に 供 することを 目 的 として 設 置 される 自 動 複 製 機 器 による 複 製 は 法 第 30 条 の 適 用 外 になる ( 法 第 30 条 第 1 項 1 号 )( 複 製 物 を 容 易 に 大 量 に 作 成 することへの 懸 念 はアナロ グ 機 器 にもあった ) 平 成 4 年 改 正 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 ( 以 下 補 償 金 制 度 )の 導 入 著 作 権 法 施 行 令 ( 以 下 施 行 令 )に 定 める 特 定 機 器 の みを 対 象 ( 文 化 庁 長 官 社 団 法 人 私 的 録 音 補 償 金 管 理 協 会 ( 以 下 SARAH )を 指 定 管 理 団 体 に 指 定 ( 平 成 5 年 3 月 )) 平 成 11 年 改 正 対 象 が 施 行 令 に 定 める 特 定 記 憶 媒 体 に 拡 大 ( 文 化 庁 長 官 社 団 法 人 私 的 録 画 補 償 金 管 理 協 会 ( 以 下 SARVH )を 指 定 管 理 団 体 に 指 定 ( 平 成 11 年 3 月 )) 5

7 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (3) 補 償 金 制 度 導 入 の 背 景 著 作 権 法 における 補 償 金 制 度 の 位 置 づけ 大 前 提 : 著 作 権 は 著 作 権 者 の 独 占 的 な 権 利 ( 法 第 21 条 ~ 第 28 条 ) 複 製 等 には 著 作 権 者 の 許 諾 が 必 要 例 外 : 権 利 制 限 規 定 ( 法 第 30 条 ~ 第 50 条 ) 著 作 権 者 の 許 諾 なく 複 製 等 が 可 能 補 償 金 制 度 ( 法 第 30 条 第 2 項 法 第 104 条 の4) 著 作 権 者 の 許 諾 なく 複 製 等 が 可 能 ただし 補 償 金 の 支 払 いが 必 要 6

8 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (4) 補 償 金 制 度 の 対 象 機 器 ( 録 画 ) 特 定 機 器 施 行 令 第 1 条 第 2 項 特 定 記 録 媒 体 施 行 令 第 1 条 の2 第 2 項 特 定 機 器 媒 体 1 DVCR (Digital Video Cassette Recorder) 磁 気 テープ 1 号 施 行 令 第 1 条 第 2 項 2 D-VHS (Data Video Home System) 磁 気 テープ 2 号 3 MVdisc (Multimedia Video Disc) 光 ディスク 3 号 イ 4 DVD-R DVD-RW DVD+R DVD+RW 光 ディスク 3 号 ロ 5 DVD-RAM 光 ディスク 3 号 ハ 6 Blu-ray 光 ディスク 4 号 7

9 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (5) 補 償 金 制 度 の 構 造 補 償 金 制 度 の 全 体 像 SARVHホームページより 8

10 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (5) 補 償 金 制 度 の 構 造 支 払 義 務 者 録 音 又 は 録 画 を 行 う 者 は 補 償 金 を 著 作 権 者 に 支 払 わなけ ればならない ( 法 第 30 条 第 2 項 ) 特 定 機 器 又 は 特 定 記 憶 媒 体 を 購 入 する 者 は 指 定 管 理 団 体 から 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 請 求 がある 場 合 支 払 わなけれ ばならない ( 法 第 104 条 の4 第 1 項 ) 指 定 管 理 団 体 補 償 金 を 受 ける 権 利 は 権 利 者 のためにその 権 利 を 行 使 す ることを 目 的 とする 団 体 であつて 文 化 庁 長 官 が 指 定 する ものがあるときは 当 該 指 定 管 理 団 体 によつてのみ 行 使 す ることができる ( 法 第 104 条 の2 第 1 項 ) ( 録 音 SARAH( 平 成 5 年 3 月 設 立 補 償 金 の 徴 収 は 同 年 6 月 1 日 に 開 始 )) 録 画 SARVH( 平 成 11 年 3 月 設 立 補 償 金 の 徴 収 は 同 年 7 月 1 日 に 開 始 ) 9

11 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (5) 補 償 金 制 度 の 構 造 製 造 業 者 の 協 力 義 務 指 定 管 理 団 体 が 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 支 払 を 請 求 する 場 合 には 特 定 機 器 又 は 特 定 記 録 媒 体 の 製 造 又 は 輸 入 を 業 とす る 者 は 当 該 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 支 払 の 請 求 及 びその 受 領 に 関 し 協 力 しなければならない ( 法 第 104 条 の5) 補 償 金 の 額 指 定 管 理 団 体 が 定 めて 文 化 庁 長 官 に 認 可 申 請 し 文 化 庁 長 官 は 文 化 審 議 会 に 諮 問 したうえで 認 可 する ( 法 第 104 条 の6 第 3 項 ) 特 定 機 器 の 場 合 カタログ 表 示 価 格 の 基 準 価 格 (65%)の1% 上 記 1%の 額 が1,000 円 を 超 える 場 合 は 上 限 金 額 を1,000 円 (ただし デジタル 録 画 機 能 1 個 内 蔵 の 機 器 ) 特 定 記 録 媒 体 の 場 合 カタログ 表 示 価 格 の 基 準 価 格 (50%) の1% いずれもSARVH 私 的 録 画 補 償 金 規 程 より 10

12 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (5) 補 償 金 制 度 の 構 造 平 均 補 償 金 単 価 (SARVHホームページより) 年 度 録 画 機 器 1 台 あたり 記 録 媒 体 1 枚 あたり 平 成 16 年 度 上 期 受 領 分 円 5.20 円 下 期 受 領 分 円 5.18 円 平 成 17 年 度 上 期 受 領 分 円 3.52 円 下 期 受 領 分 円 3.23 円 平 成 18 年 度 上 期 受 領 分 円 1.76 円 下 期 受 領 分 円 1.92 円 平 成 19 年 度 上 期 受 領 分 円 1.40 円 下 期 受 領 分 円 1.40 円 平 成 20 年 度 上 期 受 領 分 円 1.19 円 下 期 受 領 分 円 1.19 円 平 成 21 年 度 上 期 受 領 分 円 1.10 円 下 期 受 領 分 円 1.11 円 平 成 22 年 度 上 期 受 領 分 円 1.05 円 下 期 受 領 分 円 1.11 円 11

13 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (5) 補 償 金 制 度 の 構 造 補 償 金 の 配 分 共 通 目 的 基 金 私 的 使 用 の 目 的 で 複 製 された 著 作 物 の 著 作 権 者 を 特 定 して それぞれに 補 償 金 を 支 払 うことは 困 難 であることから 著 作 権 及 び 著 作 隣 接 権 の 保 護 に 関 する 事 業 及 び 著 作 物 の 創 作 の 進 行 及 び 普 及 に 資 する 事 業 に 補 償 金 の 一 部 ( 施 行 令 第 57 条 の6に 基 づき20%)を 支 払 うことにより 権 利 者 全 体 の 利 益 の 確 保 を 図 ることとされる ( 法 第 104 条 の8) 補 償 金 のその 他 の 配 分 還 付 引 当 金 管 理 手 数 料 に 用 いる 残 りが 権 利 者 団 体 に 配 分 される 補 償 金 の 返 還 請 求 特 定 機 器 等 を 私 的 使 用 を 目 的 とした 録 音 録 画 に 使 用 しな かった 場 合 は 補 償 金 の 返 還 を 請 求 することができる ( 法 104 条 の4 第 2 項 ) 12

14 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (6) デジタル 放 送 とコピー 制 御 技 術 の 経 緯 日 付 平 成 8 年 10 月 1 日 平 成 9 年 7 月 11 日 平 成 10 年 10 月 26 日 平 成 12 年 12 月 1 日 平 成 13 年 7 月 25 日 内 容 CSデジタル 放 送 開 始 (パーフェクTV!) 1 有 料 2 限 定 受 信 方 式 を 用 いたスクランブル 放 送 実 施 3コピー 制 御 なし 通 産 省 ( 当 時 ) デジタルコピー 技 術 に 関 するCGMS (Copy Generation Management System)を 公 表 地 上 デジタル 放 送 懇 談 会 最 終 報 告 書 にてデジタル 放 送 への 全 面 移 行 等 の 方 針 を 示 す BSデジタル 放 送 開 始 無 料 放 送 1スクランブル 放 送 実 施 なし 2コ ピー 制 御 なし 有 料 放 送 1 限 定 受 信 方 式 (B-CAS 方 式 )スクラ ンブル 放 送 実 施 2コピー 制 御 あり 電 波 法 改 正 デジタル 放 送 への 全 面 移 行 が 平 成 23 年 7 月 24 日 に 決 定 13

15 1. 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 (6) デジタル 放 送 とコピー 制 御 技 術 の 経 緯 日 付 平 成 14 年 3 月 1 日 平 成 14 年 6 月 26 日 平 成 15 年 12 月 1 日 平 成 16 年 4 月 5 日 平 成 20 年 7 月 4 日 内 容 110 度 CSデジタル 放 送 開 始 1 有 料 2 限 定 受 信 方 式 (B-CAS 方 式 )スクランブル 放 送 実 施 3コピー 制 御 あり 総 務 省 令 標 準 テレビジョン 放 送 のうちデジタル 放 送 に 関 する 送 信 の 標 準 方 式 改 正 無 料 放 送 におけるスクランブル 放 送 の 実 施 が 可 能 に 地 上 デジタル 放 送 開 始 1スクランブル 放 送 実 施 なし 2コピー 制 御 なし 地 上 デジタル 放 送 にて1スクランブル 放 送 開 始 2B- CAS 方 式 及 び コピー ワンス によるコピー 制 御 開 始 地 上 デジタル 放 送 におけるコピー 制 御 技 術 が コ ピー ワンス から ダビング10 に 変 更 14

16 2. 本 件 事 案 (1) 当 事 者 と 事 案 概 要 原 告 社 団 法 人 私 的 録 画 補 償 金 管 理 協 会 被 告 株 式 会 社 東 芝 事 案 概 要 本 件 は 原 告 が 各 DVD 録 画 機 器 ( 以 下 あわせて 被 告 各 製 品 )を 製 造 販 売 する 被 告 に 対 し 被 告 各 製 品 が 特 定 機 器 に 該 当 し 被 告 は 同 法 に 定 める 製 造 業 者 等 の 協 力 義 務 として その 購 入 者 から 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 徴 収 して 原 告 に 支 払 うべき 法 律 上 の 義 務 があるのにこれを 履 行 していないなどと 主 張 し 上 記 協 力 義 務 の 履 行 として 又 は 上 記 協 力 義 務 違 反 等 の 不 法 行 為 による 損 害 賠 償 として 補 償 金 相 当 額 約 1.5 億 円 等 の 支 払 を 求 めた 事 案 である 15

17 2. 本 件 事 案 (2) 被 告 各 製 品 ハイビジョンレコーダー VARDIA シリーズの5 機 種 いずれも 地 上 デジタル 放 送 用 BSデジタル 放 送 用 及 び 110 度 CSデジタル 放 送 用 のチューナー( 以 下 デジタル チューナー )を 搭 載 するのみで アナログ 放 送 用 の チューナー( 以 下 アナログチューナー )を 搭 載 していな いDVD 録 画 機 器 ( 以 下 アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 )である また 被 告 各 製 品 が 録 画 において 対 応 するDVDの 規 格 は DVD-RAM DVD-R 及 びDVD-RWである 被 告 は 購 入 者 から 補 償 金 を 徴 収 しておらず また JEITAに 支 払 っていない 被 告 は 業 界 団 体 である JEITAを 経 由 して 補 償 金 をSARVHに 支 払 う 16

18 2. 本 件 事 案 (3) 主 な 争 点 と 裁 判 所 の 結 論 争 点 1 争 点 2 争 点 3 内 容 アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 である 被 告 各 製 品 が 施 行 令 1 条 2 項 3 号 の 規 定 する 特 定 機 器 に 該 当 するか 被 告 が 原 告 に 対 し 法 104 条 の5の 協 力 義 務 として 被 告 が 販 売 した 被 告 各 製 品 に 係 る 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 支 払 うべき 法 律 上 の 義 務 を 負 うか 原 告 主 張 の 被 告 による 不 法 行 為 が 成 立 するか 結 論 該 当 する 負 わない 成 立 しない 17

19 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 被 告 の 主 な 主 張 法 第 30 条 第 2 項 及 び 施 行 令 第 1 条 第 2 項 第 3 号 への 非 該 当 性 施 行 令 1 条 2 項 3 号 においても アナログデジタル 変 換 が 行 われた 影 像 を 連 続 して 固 定 する 機 能 を 有 する 機 器 という 文 言 が 用 いられて いるのは 同 号 が 当 該 機 器 内 で 影 像 のAD 変 換 が 行 われることを 前 提 にしている デジタル 放 送 においては 技 術 的 保 護 手 段 により 複 製 を 制 限 すること が 可 能 であるから 広 範 かつ 大 量 に 複 製 が 行 われることはない(コ ピーワンス ダビング10などの 技 術 導 入 )から 広 範 かつ 大 量 の 複 製 がされ 得 ない 被 告 製 品 は 法 30 条 2 項 の 趣 旨 に 該 当 しない 関 係 者 の 合 意 ないしコンセンサスの 不 存 在 特 定 機 器 の 範 囲 は 関 係 者 のコンセンサスを 得 て 決 められるべきところ アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 については 購 入 者 製 造 業 者 等 の 理 解 を 得 られていない 二 重 の 負 担 二 重 の 利 得 消 費 者 は 著 作 権 保 護 技 術 の 開 発 コストと 補 償 金 という 二 重 の 負 担 を 強 いられ 消 費 者 と 著 作 権 者 の 利 益 調 整 を 図 った 制 度 趣 旨 に 反 する 著 作 権 者 の 許 諾 ダビング10 等 は すなわち 著 作 権 者 が 複 製 を 許 諾 したものであり 特 定 機 器 に 該 当 しない 18

20 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 裁 判 所 の 示 した 判 断 基 準 法 30 条 2 項 が 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 対 象 となる デジタル 方 式 の 録 音 又 は 録 画 の 機 能 を 有 する 機 器 の 具 体 的 な 機 器 の 指 定 を 政 令 への 委 任 事 項 とした 趣 旨 は 私 的 録 音 録 画 補 償 金 を 支 払 うべき 機 器 の 範 囲 を 明 確 にするためには 機 器 に 係 る 録 音 又 は 録 画 の 方 法 標 本 化 周 波 数 記 録 媒 体 の 技 術 仕 様 等 の 客 観 的 一 義 的 な 技 術 的 事 項 により 特 定 することが 相 当 で あり しかも デジタル 方 式 の 録 音 又 は 録 画 に 係 る 技 術 分 野 においては 技 術 開 発 により 新 たな 機 能 技 術 仕 様 等 を 備 えた 機 器 が 現 れ 普 及 することが 想 定 され このような 機 器 を 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 対 象 とするかどうかを 適 時 に 決 める 必 要 があること 逆 に 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 対 象 とする 必 要 性 や 妥 当 性 がなくなった 機 器 については 適 時 に 除 外 する 必 要 が あることなどを 考 慮 し 具 体 的 な 特 定 機 器 の 指 定 については 法 律 で 定 める 事 項 とするよりも 政 令 への 委 任 事 項 とした 方 がより 迅 速 な 対 応 が 可 能 となるものと 考 えられたことによる ものと 解 される このような 法 30 条 2 項 の 趣 旨 に 照 らすならば 法 30 条 2 項 の 委 任 に 基 づいて 制 定 された 政 令 で 定 める 特 定 機 器 の 解 釈 に 当 たっては 当 該 政 令 の 文 言 に 忠 実 な 文 理 解 釈 によるのが 相 当 であると 解 される 19

21 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 判 断 基 準 の 当 てはめ 施 行 令 1 条 の 文 言 においては 同 条 2 項 3 号 の 特 定 機 器 に おいて 固 定 される 対 象 について アナログデジタル 変 換 すなわち アナログ 信 号 をデジタル 信 号 に 変 換 する 処 理 が 行 われた 影 像 であることが 規 定 されるのみであ り 当 該 変 換 処 理 が 行 われる 場 所 的 要 素 すなわち 当 該 変 換 処 理 が 当 該 機 器 内 で 行 われたものか それ 以 外 の 場 所 で 行 われたものかについては 何 ら 規 定 されていない 政 令 への 委 任 規 定 である 法 30 条 2 項 をみても 特 定 機 器 に 関 しては 上 記 のとおり デジタル 方 式 の 録 音 又 は 録 画 の 機 能 を 有 する 機 器 ( 略 )であつて 政 令 で 定 めるもの と 規 定 されるのみであって 特 定 機 器 において 固 定 される 影 像 についての についてのアナログデジタル 変 換 が 行 われる 場 所 について 何 ら 規 定 されていない 20

22 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 判 断 基 準 の 当 てはめ してみると 特 定 機 器 に 関 する 法 30 条 2 項 及 び 施 行 令 1 条 の 各 文 言 によれば 施 行 令 1 条 2 項 3 号 の アナログデジ タル 変 換 が 行 われた 影 像 とは とは 変 換 処 理 が 行 われる 場 所 のいかんに 関 わらず アナログ 信 号 をデジタル 信 号 に 変 換 する 処 理 が 行 われた 影 像 を 意 味 するものと 解 するのが 相 当 である 21

23 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 特 定 機 器 への 該 当 性 被 告 各 製 品 が 施 行 令 1 条 2 項 3 号 の 特 定 機 器 の 要 件 のうち 主 として 録 画 の 用 に 供 するものであること 及 び ビデオ カメラとしての 機 能 を 併 せ 有 するものではないこと ( 同 項 柱 書 き) 影 像 が 固 定 される 媒 体 ( 記 録 媒 体 )が DVDで あること は 明 らかである 被 告 各 製 品 は いずれもデジタルチューナーを 搭 載 してお り 地 上 デジタル 放 送 BSデジタル 放 送 及 び110 度 CSデジタ ル 放 送 の 各 デジタル 放 送 を 受 信 し その 影 像 をDVDに 録 画 す る 機 能 を 有 する 機 器 である 他 方 デジタル 放 送 においてデジタル 信 号 として 送 信 され る 影 像 の 大 部 分 は もともと もともとアナログ 信 号 であったものにつ いて 撮 影 から 放 送 に 至 るいずれかの 過 程 においてデジタル 信 号 に 変 換 する 処 理 が 行 われているものと 考 えられる したがって 被 告 各 製 品 は 光 学 的 方 法 により アナログ デジタル 変 換 が 行 われた 影 像 を 連 続 して 固 定 する 機 能 を 有 する 機 器 であること ( 施 行 令 1 条 2 項 3 号 柱 書 き)の 要 件 を 満 たすものといえる 22

24 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 被 告 の 主 張 ( 施 行 令 第 1 条 の2 第 1 項 第 2 項 との 比 較 ) 施 行 令 1 条 の2 第 1 項 及 び 第 2 項 が 特 定 記 録 媒 体 について デジタ ル 方 式 の 文 言 を 用 いて 録 音 の 用 に 供 される 記 録 媒 体 又 は 録 画 の 用 に 供 さ れる 記 録 媒 体 を 規 定 していることと 比 較 し 施 行 令 1 条 2 項 3 号 においても アナログチューナー 搭 載 非 搭 載 を 問 わずに 特 定 機 器 として 指 定 するので あれば 1 デジタル 方 式 で 影 像 を 連 続 して 固 定 する 機 能 を 有 する 機 器 と 規 定 するはずであるのに あえて あえて2 アナログデジタル 変 換 が 行 わ れた 影 像 を 連 続 して 固 定 する 機 能 を 有 する 機 器 という 文 言 が 用 いられ ているのは 同 号 が 当 該 機 器 内 で 影 像 のAD 変 換 が 行 われることを 前 提 に しているからである 裁 判 所 の 判 断 施 行 令 1 条 2 項 3 号 が 同 号 に 係 る 特 定 機 器 において 固 定 される 影 像 に ついて 上 記 2の 文 言 を 用 いた 理 由 については 証 拠 上 必 ずしも 明 確 ではな いものの 例 えば 専 ら アナログデジタル 変 換 が 行 われないデジタル 影 像 をデジタル 方 式 で 録 画 する 機 器 ( 例 えば 当 初 からデジタル 影 像 とし て 構 成 されるコンピュータグラフィックスの 影 像 を 作 成 記 録 するための DVD 録 画 機 能 を 備 えた 画 像 処 理 用 コンピュータなど)を 特 定 機 器 から 除 外 する 趣 旨 であったとも 考 え 得 るところであり 少 なくとも 上 記 2の 文 言 を 用 いたことをもって 直 ちに 当 該 機 器 内 で 影 像 のAD 変 換 が 行 われ ることを 前 提 にしているなどと 断 じることはできない 23

25 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 被 告 の 主 張 ( 法 30 条 2 項 及 び 施 行 令 1 条 2 項 3 号 の 趣 旨 (1)) デジタル 技 術 の 発 達 普 及 等 によって 広 範 かつ 大 量 さらに 高 品 質 の 複 製 としてされ 得 る 状 況 となりつつあったことが 著 作 権 者 等 への 代 償 措 置 として 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 が 導 入 された 主 たる 根 拠 である デジタル 放 送 においては 著 作 権 保 護 技 術 によって 複 製 を 制 限 すること が 可 能 であり ( 略 ) 著 作 権 保 護 技 術 の 下 では 広 範 かつ 大 量 に 高 品 質 の 複 製 は 行 われ 得 ないことになるのであるから かかる かかる 著 作 権 保 護 技 術 が 導 入 されたデジタル 放 送 のみを 録 画 することが 可 能 な アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 には には 前 記 のような 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 の 趣 旨 は 妥 当 しない 裁 判 所 の 判 断 平 成 4 年 法 改 正 に 係 る 経 過 からすれば 同 改 正 においては 少 なくとも デジタル 録 音 機 器 に 関 しては 既 に 著 作 権 保 護 技 術 によって 複 製 の 制 限 が 行 われているという 実 態 を 踏 まえ これと 両 立 する 制 度 として 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 が 導 入 されたものと 認 められる 被 告 の 上 記 主 張 の 実 質 は 施 行 令 1 条 2 項 3 号 が 規 定 する 特 定 機 器 の 要 件 ( 上 記 技 術 的 事 項 )に 該 当 するものであっても 同 号 制 定 後 の 地 上 デジタ ル 放 送 における 著 作 権 保 護 技 術 の 運 用 の 実 態 の 下 では 私 的 録 画 補 償 金 の 対 象 とすべき 根 拠 を 失 うに 至 ったから 同 号 の 特 定 機 器 からこれを 除 外 す るような 法 又 は 施 行 令 の 改 正 をすべきである 旨 の 立 法 論 を 述 べるものにす ぎないといわざるを 得 ない 24

26 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 被 告 の 主 張 ( 法 30 条 2 項 及 び 施 行 令 1 条 2 項 3 号 の 趣 旨 (2)) 施 行 令 1 条 2 項 3 号 が 制 定 された 平 成 12 年 7 月 当 時 には 地 上 デジ タル 放 送 への 著 作 権 保 護 技 術 の 導 入 は そもそも 法 令 上 不 可 能 であり 施 行 令 1 条 2 項 3 号 の 前 提 として 想 定 されていなかったから 著 作 権 保 護 技 術 が 導 入 されたデジタル 放 送 のみを 録 画 の 対 象 とするアナログ チューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 も 全 く 想 定 されていなかったのであ り そうである 以 上 施 行 令 1 条 2 項 3 号 制 定 時 の 内 閣 の 意 思 としても アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 を 特 定 機 器 に 指 定 する 趣 旨 ではなかった 裁 判 所 の 判 断 平 成 9 年 の 通 産 省 ( 当 時 )によるCGMSの 公 表 を 始 め 平 成 12 年 7 月 当 時 においては 既 に 地 上 波 におけるアナログ 放 送 が 将 来 的 には デジタル 放 送 に 全 面 移 行 することが 予 定 されており また デジタル 録 画 機 器 におけるコピー 制 御 技 術 も 存 在 し 関 係 者 らの 間 で 広 く 認 識 されていたものと 認 められる その 当 時 地 上 デジタル 放 送 への 著 作 権 保 護 技 術 の 導 入 がおよそ 想 定 されていなかったということはできない 25

27 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 被 告 の 主 張 ( 関 係 者 の 合 意 ないしコンセンサスの 不 存 在 ) 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 が 当 事 者 間 の 合 意 の 上 に 成 り 立 っている 制 度 であるという 特 異 な 性 質 を 有 すること 同 制 度 はその 法 的 な 仕 組 みからして 購 入 者 ( 消 費 者 )や 製 造 業 者 等 の 理 解 の 下 に 協 力 を 得 る ことで 始 めて 成 り 立 ち 得 るものであることから 特 定 機 器 の 範 囲 は 関 係 者 の 合 意 ないしコンセンサス コンセンサスを 得 て 決 められるべきものである 裁 判 所 の 判 断 被 告 の 上 記 主 張 は 結 局 のところ アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 について 施 行 令 1 条 2 項 3 号 制 定 後 の 地 上 デジタル 放 送 にお ける 著 作 権 保 護 技 術 の 運 用 の 実 態 の 下 では 私 的 録 画 補 償 金 の 対 象 と することについて 関 係 者 間 に 意 見 の 対 立 があるから 同 号 の 特 定 機 器 から 除 外 するような 法 又 は 施 行 令 の 改 正 をすべきである 旨 の 立 法 政 策 ないし 立 法 論 を 述 べるものにすぎない 26

28 2. 本 件 事 案 (4) 争 点 1( 特 定 機 器 への 該 当 性 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 被 告 の 主 張 (その 他 ) 1 アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 に 私 的 録 画 補 償 金 が 課 され ることになれば 購 入 者 ( 消 費 者 )は 著 作 権 保 護 技 術 の 対 応 コストと 私 的 録 画 補 償 金 という 二 重 の 負 担 を 負 うこととなり 他 方 著 作 権 者 等 は 著 作 権 保 護 技 術 を 用 いて 私 的 複 製 を 制 限 することによる 利 益 と 私 的 録 画 補 償 金 という 二 重 の 利 得 を 得 ることとなって 利 用 者 と 著 作 権 者 等 との 利 益 調 整 を 図 ったものとされる 法 30 条 2 項 の 趣 旨 に 反 する 2アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 による 録 画 は 著 作 権 者 等 の 許 諾 があるものと 評 価 されるから アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 は 一 般 的 類 型 的 に 補 償 金 の 対 象 となる 私 的 録 画 に 使 用 される 可 能 性 がない 録 画 機 器 といえることを 根 拠 として アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 は 特 定 機 器 に 該 当 しない 裁 判 所 の 判 断 上 記 1の 点 は 地 上 デジタル 放 送 における 著 法 30 条 2 項 及 び 施 行 令 1 条 2 項 3 号 の 制 定 後 に 生 じた 事 実 状 態 の 下 でアナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 を 私 的 録 画 補 償 金 の 対 象 とすると 購 入 者 ( 消 費 者 )の 利 益 と 著 作 権 者 等 の 利 益 との 間 で 不 均 衡 が 生 ずるとの 事 情 を 述 べているにすぎず ( 略 ) 法 30 条 2 項 又 は 施 行 令 1 条 2 項 3 号 の 解 釈 に 結 びつくものとはいえな い 上 記 2の 点 は 著 作 権 者 等 の 許 諾 があるか 否 かという 上 記 技 術 的 事 項 とは 異 なる 問 題 を 特 定 機 器 の 要 件 に 持 ち 込 むものであって 失 当 である 27

29 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 原 告 の 主 な 主 張 制 度 の 仕 組 み 立 法 者 の 意 思 制 度 運 用 の 実 態 制 度 の 仕 組 みないし 制 度 設 計 それ 自 体 立 法 者 ないし 法 案 担 当 者 の 意 思 10 年 以 上 にわたる 制 度 の 実 際 の 運 用 実 態 からみて 特 定 機 器 の 製 造 業 者 等 が 行 うべき 協 力 の 内 容 が 上 乗 せ 徴 収 納 付 であること は 立 法 当 初 から 予 定 されている 法 104 条 の5の 文 言 私 的 録 画 補 償 金 の 支 払 の 請 求 及 びその 受 領 に 関 して 製 造 業 者 が 協 力 するとなれば 上 乗 せ 徴 収 納 付 以 外 には 考 えられない 法 106 条 の6 第 3 項 の 文 言 私 的 録 画 補 償 金 の 額 を 定 めるに 際 し あらかじめ 製 造 業 者 等 の 意 見 を 聴 かなければならないと 規 定 しているのは 私 的 録 画 補 償 金 の 額 につ いて 製 造 業 者 等 が 直 接 の 利 害 関 係 を 有 するからであり そうである 以 上 法 104 条 の5の 協 力 義 務 の 内 容 としては 上 乗 せ 徴 収 納 付 を 行 うことが 前 提 とされている 28

30 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 原 告 の 主 張 原 告 JEITA 間 協 定 の 存 在 原 告 JEITA 間 協 定 に 係 る 協 定 書 において 法 104 条 の5の 規 定 に 基 づ く 協 力 義 務 の 履 行 として 特 定 機 器 の 製 造 業 者 であるJEITAの 会 員 企 業 が 特 定 機 器 の 購 入 者 から 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 受 領 し JEITAを 経 由 して 原 告 にこれを 納 入 することが 明 記 されている ベルヌ 条 約 との 整 合 性 著 作 権 法 104 条 の5が 訓 示 規 定 であるということになれば 我 が 国 にお ける 私 的 録 音 録 画 の 実 態 は ベルヌ 条 約 9 条 2 項 の 著 作 者 の 正 当 な 利 益 を 不 当 に 害 しないこと という 条 件 を 満 たさなくなる 29

31 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 裁 判 所 による 協 力 の 解 釈 協 力 という 用 語 は 一 般 に ある 目 的 のために 心 を 合 わせて 努 力 すること ( 広 辞 苑 第 六 版 )などを 意 味 するものであり 抽 象 的 で 広 範 な 内 容 を 包 含 し 得 る 用 語 であって 当 該 用 語 自 体 から 特 定 の 具 体 的 な 行 為 を 想 定 することができるものとはいえない また 法 104 条 の5においては においては 協 力 の 文 言 につい て 当 該 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 支 払 の 請 求 及 びその 受 領 に 関 し との 限 定 が 付 されてはいるものの 協 力 とい う 用 語 自 体 が 抽 象 的 であることから 上 記 の 限 定 によって も 当 該 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 支 払 の 請 求 及 びその 受 領 に 関 し てしなければならない しなければならない 協 力 の 具 体 的 な 行 為 な いし 内 容 が 文 言 上 特 定 されているものとはいえない 30

32 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 裁 判 所 による 協 力 の 解 釈 法 104 条 の5においては 特 定 機 器 の 製 造 業 者 等 におい て しなければならない しなければならない ものとされる 行 為 が 具 的 的 に 特 定 して 規 定 されていないのであるから 同 条 の 規 定 を もって 特 定 機 器 の 製 造 業 者 等 に 対 し 原 告 が 主 張 するよ うな 具 体 的 な 行 為 (すなわち 特 定 機 器 の 販 売 価 格 に 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 上 乗 せして 出 荷 し 利 用 者 から 当 該 補 償 金 を 徴 収 して 原 告 に 対 し 当 該 補 償 金 相 当 額 の 金 銭 を 納 付 すること( 以 下 上 乗 せ 徴 収 納 付 という ))を 行 うべき 法 律 上 の 義 務 を 課 したものと 解 することは 困 難 とい うほかなく 法 的 強 制 力 を 伴 わない 抽 象 的 な 義 務 としての 協 力 義 務 を 課 したものにすぎないと 解 するのが 相 当 であ る 31

33 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 裁 判 所 による 協 力 の 解 釈 仮 に 立 法 者 において 原 告 が 主 張 するように 特 定 機 器 の 販 売 価 格 に 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 上 乗 せして 出 荷 し 利 用 者 から 当 該 補 償 金 を 徴 収 して 指 定 管 理 団 体 に 対 し 当 該 補 償 金 相 当 額 の 金 銭 を 納 付 することを 特 定 機 器 の 製 造 業 者 等 に 法 律 上 義 務 づける 意 思 があったのであれば そのよう な 具 体 的 な 作 為 義 務 の 内 容 を 特 定 して 規 定 すれば 足 りたの であり かつ そのような 規 定 とすることが 立 法 技 術 上 困 難 であるともいえないのに そのような 規 定 とすることな く あえて 協 力 という 抽 象 的 な 文 言 を 用 いるにとど まったということは 特 段 の 事 情 がない 限 り 立 法 者 には 上 記 のような 法 律 上 の 具 体 的 な 作 為 義 務 を 課 す 意 思 がな かったことを 示 すものということができる 32

34 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 原 告 の 主 張 ( 制 度 の 仕 組 み 立 法 者 の 意 思 制 度 運 用 の 実 態 (1)) 私 的 録 画 補 償 金 制 度 においては 法 第 5 章 が 規 定 する 制 度 の 仕 組 みないし 制 度 設 計 それ 自 体 平 成 4 年 法 改 正 の 立 法 経 過 に 示 された 立 法 者 ないし 法 案 担 当 者 の 意 思 10 年 以 上 にわたる 制 度 の 実 際 の 運 用 実 態 ( 前 記 第 2の3(3) (3))からみて からみて 特 定 機 器 の 製 造 業 者 等 が 行 うべき 協 力 の 内 容 が 上 乗 せ 徴 収 納 付 であるこ とは 立 法 当 初 から 予 定 されており これが 行 われなければ 現 在 まで10 年 以 上 にわたり 運 用 されている 私 的 録 画 補 償 金 制 度 自 体 が 機 能 しなくなり 実 効 性 を 欠 いた 制 度 となってしまうことを 根 拠 として 法 104 条 の5の 協 力 義 務 が 上 乗 せ 徴 収 納 付 を 内 容 とする 法 律 上 の 具 体 的 な 義 務 である 裁 判 所 の 判 断 法 案 担 当 者 や 特 定 機 器 の 製 造 業 者 を 含 む 関 係 者 らが 製 造 業 者 等 の 協 力 の 内 容 として 上 乗 せ 徴 収 納 付 を 具 体 的 に 想 定 し 現 にこれを 実 践 してきたという 事 実 が 認 められるからといって そのことから 直 ちに 法 104 条 の5の 規 定 が 特 定 機 器 の 製 造 業 者 等 に 上 記 行 為 をなすべき 法 律 上 の 具 体 的 な 義 務 を 課 したものであ るとの 解 釈 が 導 き 出 されるものではない 法 104 条 の5の 規 定 が 具 体 的 な 作 為 義 務 の 内 容 を 特 定 して 規 定 することなく あえて 協 力 という 抽 象 的 な 文 言 を 用 いるにとどまっていることからすれば 立 法 者 としては 法 104 条 の5において において 製 造 業 者 等 に 上 乗 せ 徴 収 納 付 を 行 う べき 法 律 上 の 具 体 的 な 義 務 を 課 すことまではせずに 法 的 強 制 力 の 伴 わない 抽 象 的 な 義 務 としての 協 力 義 務 を 負 わせるにとどめるという 立 法 政 策 を 採 用 したもの と 解 するのが 相 当 というべきである 33

35 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 原 告 の 主 張 ( 制 度 の 仕 組 み 立 法 者 の 意 思 制 度 運 用 の 実 態 (2)) 1 第 10 小 委 員 会 報 告 書 中 に メーカー 等 の 義 務 が 履 行 されない 場 合 は 民 事 上 の 請 求 権 の 実 現 の 例 にならって メーカー 等 の 協 力 の 実 現 を 裁 判 に よって 求 めることができる ( 甲 頁 )との 記 載 があること 2 第 125 回 国 会 の 衆 議 院 文 教 委 員 会 に 政 府 委 員 として 出 席 した 佐 藤 禎 一 文 化 庁 次 長 が 製 造 業 者 等 の 協 力 義 務 が 履 行 されない 場 合 の 措 置 に 関 し 義 務 違 反 があれば 通 常 の 民 事 上 の 手 続 によってその 実 現 を 求 めるということに なる ( 甲 頁 第 2 段 )との 発 言 をしていることを 挙 げ これらに 示 された 立 法 者 ないし 法 案 立 案 者 の 意 思 からすれば 法 104 条 の5は 法 的 に 強 制 される 具 体 的 な 義 務 を 規 定 したものと 解 される 裁 判 所 の 判 断 上 記 のような 第 10 小 委 員 会 報 告 書 の 記 載 及 び 佐 藤 禎 一 政 府 委 員 の 答 弁 は 平 成 4 年 法 改 正 に 係 る 立 法 に 至 る 過 程 の 一 場 面 における 断 片 的 な 報 告 書 上 の 記 載 や 国 会 答 弁 にすぎず そこで 示 された 見 解 に 至 る 議 論 の 過 程 が 証 拠 上 何 ら 明 らかではない このように 断 片 的 で かつ かつ その 内 容 も 具 体 性 を 欠 く 面 のある 報 告 書 上 の 記 載 や 国 会 答 弁 をもって 法 104 条 の5の 解 釈 の 根 拠 となる 立 法 者 等 の 意 思 であるものということはできず 少 なくとも 前 述 のとおり 法 104 条 の 5の 文 言 自 体 に 最 も 端 的 に 示 されているというべき 立 法 者 の 意 思 を 覆 すよ うな 事 情 たり 得 ないといわざるを 得 ない 34

36 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 原 告 の 主 張 ( 法 104 条 の5の 文 言 ) 法 104 条 の5の 文 言 は 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 支 払 の 請 求 及 びその 受 領 に 関 する 協 力 とされているところ 私 的 録 画 補 償 金 の 支 払 の 請 求 及 びその 受 領 に 関 して 製 造 業 者 が 協 力 するとなれば するとなれば 上 乗 せ 徴 収 納 付 以 外 には 考 えられないから 法 104 条 の5の 文 言 からして も 製 造 業 者 等 が 行 うべき 協 力 とは 上 乗 せ 徴 収 納 付 であると 解 するほかない 裁 判 所 の 判 断 法 104 条 の5の 協 力 という 用 語 自 体 から 具 体 的 な 行 為 を 特 定 する ことはできず,このことは このことは, 当 該 協 力 が 私 的 録 画 補 償 金 の 支 払 の 請 求 及 びその 受 領 に 関 するものであるとの 限 定 が 付 されていても 同 様 であることは, 前 記 アで 述 べたとおりであり, 法 104 条 の5の 文 言 自 体 を 根 拠 として, 製 造 業 者 等 が 行 うべき 協 力 が 上 乗 せ 徴 収 納 付 に 特 定 されるものとする 原 告 の 主 張 は, 文 理 からかけ 離 れた 解 釈 と いわざるを 得 ない 35

37 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 原 告 の 主 張 ( 法 104 条 の6 第 3 項 ) 法 104 条 の6 第 3 項 が 指 定 管 理 団 体 が 法 104 条 の4 第 1 項 の 規 定 によ り 支 払 の 請 求 をする 私 的 録 画 補 償 金 の 額 を 定 め 文 化 庁 長 官 に 認 可 の 申 請 をするに 際 し あらかじめ 製 造 業 者 等 の 団 体 で 製 造 業 者 等 の 意 見 を 代 表 すると 認 められるものの 意 見 を 聴 かなければならないと 規 定 し ているのは 私 的 録 画 補 償 金 の 額 について 製 造 業 者 等 が 直 接 の 利 害 関 係 を 有 するからであり そうである 以 上 法 104 条 の5の 協 力 義 務 の 内 容 としては 上 乗 せ 徴 収 納 付 を 行 うことが 前 提 とされている 裁 判 所 の 判 断 法 104 条 の5の 協 力 義 務 が 法 的 強 制 力 を 伴 わない 抽 象 的 な 義 務 であ るとする 解 釈 を 前 提 としたとしても そのような 義 務 が 法 律 によって 特 定 機 器 の 製 造 業 者 等 に 課 されるものである 以 上 これらの 製 造 業 者 等 としては 指 定 管 理 団 体 が 特 定 機 器 の 購 入 者 に 私 的 録 画 補 償 金 の 支 払 を 請 求 する 場 合 に その 支 払 の 請 求 及 びその 受 領 に 関 して 何 ら かの 協 力 をすべきことが 要 請 されるのであり たとえそれが 法 的 強 制 力 の 伴 わないものであるとしても これら 製 造 業 者 等 には 当 該 私 的 補 償 金 の 額 についての 一 定 の 利 害 があるものと 評 価 することは 何 ら 不 合 理 なことではない そして そうである 以 上 指 定 管 理 団 体 が 私 的 録 画 補 償 金 の 額 を 定 めるに 当 たって 製 造 業 者 等 の 団 体 の 意 見 を 聴 取 する 手 続 規 定 が 設 けられたとしても 格 別 不 自 然 なこととはいえな い 36

38 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 原 告 の 主 張 ( 原 告 JEITA 間 協 定 の 存 在 ) 原 告 JEITA 間 協 定 に 係 る 協 定 書 第 1 条 ( 甲 6の1)において 法 104 条 の 5の 規 定 に 基 づく 協 力 義 務 の 履 行 として 特 定 機 器 の 製 造 業 者 であるJEITA の 会 員 企 業 が 特 定 機 器 の 購 入 者 から 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 受 領 し JEITAを 経 由 して 原 告 にこれを 納 入 することが 明 記 されていることを 挙 げ 被 告 を 中 心 的 な 構 成 員 とする 業 界 団 体 であるJEITAが 法 104 条 の5の 規 定 に 基 づく 製 造 業 者 の 協 力 義 務 の 内 容 を 上 記 のとおりに 解 釈 しているという 事 実 は 法 104 条 の5の 協 力 義 務 の 内 容 が 上 乗 せ 徴 収 納 付 を 行 うという 法 律 上 の 具 体 的 な 義 務 である 裁 判 所 の 判 断 原 告 JEITA 間 協 定 に 係 る 協 定 書 第 1 条 の 規 定 をみても ここでは 原 告 がJEITA JEITAに 対 し JEITAの 会 員 企 業 のうち 法 104 条 の5の 規 定 に 基 づく 協 力 義 務 の 履 行 として 特 定 機 器 の 購 入 者 から 受 領 して 原 告 に 納 付 すべき 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 をJEITA JEITAを 経 由 して 原 告 に 納 入 することを 希 望 する 者 につい ては その 請 求 及 び 受 領 に 関 する 一 切 の 業 務 を 委 任 することが 規 定 されて いるにすぎず 法 104 条 の5の 規 定 に 基 づく 協 力 義 務 が 法 的 強 制 力 を 伴 わ ない 抽 象 的 な 義 務 ではなく 上 乗 せ 徴 収 納 付 を 行 うという 法 律 上 の 具 体 的 な 義 務 であるとの 解 釈 が 示 されているわけではない 37

39 2. 本 件 事 案 (5) 争 点 2( 法 104 条 の5 の 協 力 義 務 ) 考 察 当 事 者 の 主 張 に 対 する 裁 判 所 の 判 断 原 告 の 主 張 (ベルヌ 条 約 との 整 合 性 ) 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 の 中 核 を 占 める 著 作 権 法 104 条 の5が 訓 示 規 定 であるということになれば 我 が 国 における 私 的 録 音 録 画 の 実 態 は ベルヌ 条 約 9 条 2 項 の 著 作 者 の 正 当 な 利 益 を 不 当 に 害 しないこ と という という 条 件 を 満 たさないこととなるから そのような 解 釈 は 許 さ れない 裁 判 所 の 判 断 著 作 権 法 104 条 の5の 協 力 義 務 が 法 的 強 制 力 の 伴 わない 抽 象 的 な 義 務 であり 製 造 業 者 等 による 任 意 の 協 力 の 履 行 に 委 ねた 規 定 であると 解 したからといって 直 ちにベルヌ 条 約 9 条 2 項 の 著 作 者 の 正 当 な 利 益 を 不 当 に 害 しないこと という という 条 件 を 満 たさないこととなると 断 ず べき 根 拠 はないから 原 告 の 上 記 主 張 は 失 当 である 38

40 2. 本 件 事 案 (6) 争 点 3( 不 法 行 為 の 成 否 ) 考 察 協 力 義 務 違 反 による 補 償 金 請 求 権 の 侵 害 の 有 無 (1) 原 告 の 主 張 被 告 が 原 告 に 対 し 法 104 条 の5の 協 力 義 務 として 特 定 機 器 である 被 告 各 製 品 の 販 売 価 格 に 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 上 乗 せして 出 荷 し 利 用 者 から 当 該 補 償 金 を 徴 収 して 原 告 に 対 し 当 該 補 償 金 相 当 額 の 金 銭 を 支 払 う 法 律 上 の 義 務 を 負 っていることを 前 提 とした 上 で 被 告 が かかる 義 務 に 違 反 したことが 原 告 の 利 用 者 に 対 する 補 償 金 請 求 権 を 侵 害 する 不 法 行 為 に 当 たる 裁 判 所 の 判 断 法 104 条 の5が 規 定 する 特 定 機 器 の 製 造 業 者 等 の 協 力 義 務 は 原 告 が 主 張 するような 内 容 の 法 律 上 の 具 体 的 な 義 務 ではないと 解 されるから 原 告 の 上 記 主 張 は その 前 提 において 理 由 のないことが 明 らかであ る 39

41 2. 本 件 事 案 (6) 争 点 3( 不 法 行 為 の 成 否 ) 考 察 協 力 義 務 違 反 による 補 償 金 請 求 権 の 侵 害 の 有 無 (2) 原 告 の 主 張 法 104 条 の5の 協 力 義 務 の 内 容 が 上 記 ア 以 外 のものであったとしても 被 告 が 被 告 各 製 品 の 販 売 に 関 し 何 らの 請 求 及 びその 受 領 に 関 し 協 力 を 行 っていない 以 上 被 告 の 協 力 義 務 違 反 は 原 告 に 対 する 権 利 侵 害 行 為 となる 裁 判 所 の 判 断 法 104 条 の5が 規 定 する 特 定 機 器 の 製 造 業 者 等 の 協 力 義 務 は 法 律 上 の 具 体 的 な 義 務 ではなく 法 的 強 制 力 を 伴 わない 抽 象 的 な 義 務 にすぎ ないものと 解 されるのであるから 被 告 がかかる 協 力 義 務 を 履 行 しな かったからといって 法 的 責 任 を 問 われるべき 理 由 はなく 当 該 義 務 の 不 履 行 について 不 法 行 為 としての 違 法 性 を 有 するものと 認 めるこ とはできない 40

42 2. 本 件 事 案 (6) 争 点 3( 不 法 行 為 の 成 否 ) 考 察 被 告 各 製 品 の 販 売 による 補 償 金 請 求 権 の 侵 害 原 告 の 主 張 製 造 業 者 等 による 私 的 録 画 補 償 金 を 上 乗 せしない 特 定 機 器 の 販 売 行 為 は 利 用 者 の 原 告 に 対 する 補 償 金 支 払 義 務 違 反 を 惹 起 するものであ るから 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 上 乗 せせずに 被 告 各 製 品 を 販 売 した 被 告 の 行 為 は 原 告 の 利 用 者 に 対 する 補 償 金 請 求 権 を 侵 害 する 不 法 行 為 に 当 たる 裁 判 所 の 判 断 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 上 乗 せせずに 被 告 各 製 品 を 販 売 した 被 告 の 行 為 が 不 法 行 為 としての 違 法 性 を 有 するものと 評 価 されるためには 少 なくとも 被 告 に 被 告 各 製 品 を 販 売 するに 当 たって 私 的 録 画 補 償 金 相 当 額 を 上 乗 せして 販 売 しなければならない 法 的 な 作 為 義 務 がある ことが 前 提 とされなければならない しかるところ 前 記 2(1)で 述 べた 法 104 条 の5の 協 力 義 務 の 法 的 性 質 からすれば 同 条 の 協 力 義 務 が 被 告 の 法 的 な 作 為 義 務 の 根 拠 となら ないことは 明 らかであり また そのほかに かかる 作 為 義 務 が 生 ず べき 法 律 上 の 根 拠 も 認 められない 41

43 3. 補 足 事 項 (1) 本 件 事 案 に 関 する 意 見 争 点 1について DVD 機 器 が 政 令 指 定 された 当 時 (00 年 7 月 )の DVD 機 器 は 機 器 内 部 においてアナログデジタル 変 換 されてお り その 変 換 がなされた 時 点 ( 場 所 )で 著 作 権 侵 害 の 危 険 性 が 顕 在 化 されたのだから そのような 録 画 機 器 に 補 償 金 を 課 金 する との 理 論 も 成 り 立 つと 思 われる ( 杉 江 武 私 的 録 画 補 償 金 に 関 する 最 近 の 争 点 ビジネスロー ジャーナル(2011 年 7 月 号 ) 108 頁 レクシスネクシス 社 ) 争 点 2について 自 発 的 な 協 力 が 前 提 となっているものと の 解 釈 が 違 反 に 対 するサンクションはないこととも 整 合 的 であ ろう そうすると 著 作 権 法 104 条 の5 協 力 義 務 の 法 的 性 質 については 法 律 上 の 具 体 的 義 務 ではなく 法 的 な 強 制 力 を 伴 わ ない 抽 象 的 義 務 と 考 えるべきと 思 われる ( 次 ページの 中 山 先 生 の 著 作 権 法 の 同 箇 所 を 引 用 したうえで) 本 判 決 では か かる 学 説 の 考 え 方 が 踏 襲 された ( 杉 江 武 私 的 録 画 補 償 金 に 関 する 最 近 の 争 点 ビジネスロー ジャーナル(2011 年 7 月 号 ) 112 頁 レクシスネクシス 社 ) 42

44 3. 補 足 事 項 (2) 補 償 金 制 度 を 巡 る 議 論 等 補 償 金 制 度 の 構 造 について 製 造 業 者 等 には 協 力 義 務 が 課 されているだけであり 違 反 に 対 するサンクションは 無 い ため( 間 接 侵 害 については 別 論 である) 事 実 上 全 業 者 が 拒 否 をしないという 前 提 あるいは 合 意 の 上 に 成 立 しており 極 めてもろいガラス 細 工 のような 制 度 である ( 中 山 信 弘 著 作 権 法 249 頁 ( 有 斐 閣 2008 年 )) 無 料 デジタル 放 送 の 録 画 については 著 作 権 保 護 技 術 (ダビング10)によりコピーが 一 定 回 数 にコントロールさ れていること さらにはいわゆるタイムシフト( 後 で 見 る ための 録 画 )であって 権 利 者 に 大 きな 経 済 的 損 失 を 与 え ていないと 考 えられること 等 から 私 的 録 画 補 償 金 の 対 象 と すべきではない (JEITA アナログチューナー 非 搭 載 DVD 録 画 機 器 を 私 的 録 画 補 償 金 の 対 象 機 器 とする 件 につい て 2009 年 10 月 16 日 等 ) 43

45 3. 補 足 事 項 (2) 補 償 金 制 度 を 巡 る 議 論 等 補 償 金 の 返 還 制 度 について 返 還 については 他 用 途 に 使 用 しないという 証 明 が 難 しい 上 極 めて 少 額 の 返 還 を 求 め て 煩 雑 な 手 続 きをすることは 事 実 上 考 えられず 複 製 の 有 無 に 関 わらず 事 実 上 は 全 ての 購 入 者 に 課 金 しているに 等 しいことになる ( 中 山 信 弘 著 作 権 法 250 頁 ( 有 斐 閣 2008 年 )) ( 文 化 審 議 会 著 作 権 分 科 会 事 務 局 の 提 案 として) 著 作 権 保 護 技 術 により 無 制 限 の 私 的 録 音 録 画 が 行 われる 状 況 は 解 消 されることから 権 利 者 等 の 要 請 により 当 該 技 術 を 開 発 し ている 機 器 メーカー 等 に 負 担 を 強 いることは 関 係 者 の 理 解 を 得 られなくなってきており 現 行 の 補 償 金 制 度 による 解 決 は 今 後 縮 小 し 他 の 解 決 に 移 行 すべき ただし 当 面 補 償 金 制 度 での 対 応 を 検 討 ( 文 化 審 議 会 著 作 権 分 科 会 文 化 審 議 会 著 作 権 分 科 会 報 告 書 ( 平 成 21 年 1 月 ) ) 44

46 3. 補 足 事 項 (2) 補 償 金 制 度 を 巡 る 議 論 等 法 律 上 は 消 費 者 が 負 担 するとされている 補 償 金 だが 家 電 メーカー 側 は 実 質 的 に 自 分 たちが 支 払 っているものと 公 言 して 憚 らない また 補 償 金 に 対 するに 認 知 度 調 査 および 認 知 に 対 する 取 り 組 みも 積 極 的 に 行 なわれていない し たがって 補 償 金 の 支 払 い 実 態 は すでに 法 の 定 めるところ から 乖 離 している ( 一 般 社 団 法 人 インターネットユー ザ 協 会 文 化 庁 の Blu-ray Disc 関 連 機 器 及 び 媒 体 を 補 償 金 制 度 の 対 象 に 追 加 する 政 令 改 正 へのパブリックコメン ト (2009 年 3 月 9 日 )) 補 償 金 を 複 製 の 量 に 応 じて 課 金 し 正 確 に 権 利 者 に 還 元 す ることは 実 質 的 に 不 可 能 である 共 通 目 的 基 金 の 形 で 間 接 的 に 権 利 者 に 還 元 しているとはいえ 当 該 間 接 的 な 還 元 に より 制 度 の 趣 旨 を 実 現 しているといえるのか 汎 用 機 としても 使 用 可 能 な 機 器 等 について どこまで 補 償 金 の 対 象 とするのか (4. 参 考 資 料 (1) 検 討 事 項 ) 45

47 3. 補 足 事 項 (3) 諸 外 国 における 補 償 金 制 度 導 入 時 期 特 徴 その 他 米 国 1992 年 オーディオ ホームレコー ディング 法 (Audio Home Recording ACT(AHRA)) デジタル 方 式 の 録 音 用 の 機 器 と 記 録 媒 体 が 対 象 ( 録 画 は 対 象 外 ) フェアユースの 範 囲 では 制 限 ( 同 法 第 106 条 107 条 ) デジタル 方 式 の 録 音 につい てはAHRAで 制 限 録 音 機 器 録 音 媒 体 を 用 い て 消 費 者 が 非 商 業 目 的 で 音 楽 を 録 音 することは 著 作 権 侵 害 として 訴 訟 を 提 起 できない (AHRA 第 1008 条 ) 課 金 対 象 は 利 用 者 ではなく 製 造 業 者 輸 入 業 者 管 理 団 体 ( 録 音 物 基 金 音 楽 著 作 物 基 金 )に 対 して 支 払 う ドイツ 1965 年 (テープレコーダ) 1985 年 ( 音 楽 映 像 メディ ア) 2003 年 (PC) 録 音 録 画 用 の 機 器 及 び 記 録 媒 体 が 対 象 (アナログ デ ジタルを 問 わない) 私 的 使 用 を 目 的 とした 著 作 物 の 少 量 の 複 製 を 行 う ことを 認 める(ドイツ 著 作 権 法 第 53 条 第 1 項 ) 著 作 物 が 私 的 使 用 の 目 的 で 複 製 されることが 見 込 まれる 場 合 には 著 作 物 の 著 作 者 は 製 造 者 に 対 して 相 当 なる 報 酬 の 支 払 いを 求 める 請 求 権 を 有 する( 同 法 第 54 条 第 1 項 ) 課 金 対 象 は 利 用 者 ではな く 製 造 業 者 輸 入 業 者 管 理 団 体 に 対 して 支 払 う イギリス 補 償 金 制 度 なし - 研 究 私 的 学 習 を 目 的 と した 文 芸 演 劇 音 楽 美 術 の 著 作 物 の 公 正 な 利 用 (Fair dealing)を 認 め る( 英 国 著 作 権 法 第 29 条 ) 46

48 4. 参 考 資 料 (1) 検 討 事 項 本 判 決 によって 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 の 運 用 は 変 わると 思 いますか 変 わるとしたら どのよ うな 点 が 変 わり 得 るでしょうか 47

49 4. 参 考 資 料 (1) 検 討 事 項 私 的 録 音 録 画 補 償 金 制 度 は 私 的 目 的 利 用 を 認 め る 著 作 権 法 30 条 に 反 しないでしょうか 反 すると した 理 由 反 しないとした 理 由 は 何 でしょうか 48

50 4. 参 考 資 料 (1) 検 討 事 項 音 楽 映 像 は スマートフォン PC などの 様 々な デバイスで 視 聴 されていますが これらのデバイ スも 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 対 象 とすべきだという 意 見 については どう 思 われますか 49

51 4. 参 考 資 料 (2) 参 考 条 文 私 的 使 用 のための 複 製 ( 著 作 権 法 第 30 条 ) 著 作 権 の 目 的 となつている 著 作 物 ( 以 下 この 款 において 単 に 著 作 物 という )は 個 人 的 に 又 は 家 庭 内 その 他 これに 準 ずる 限 られた 範 囲 内 において 使 用 すること( 以 下 私 的 使 用 という )を 目 的 とするとき は 次 に 掲 げる 場 合 を 除 き その 使 用 する 者 が 複 製 することができる 一 公 衆 の 使 用 に 供 することを 目 的 として 設 置 されている 自 動 複 製 機 器 ( 複 製 の 機 能 を 有 し これに 関 する 装 置 の 全 部 又 は 主 要 な 部 分 が 自 動 化 されている 機 器 をいう )を 用 いて 複 製 する 場 合 二 技 術 的 保 護 手 段 の 回 避 ( 技 術 的 保 護 手 段 に 用 いられている 信 号 の 除 去 又 は 改 変 ( 記 録 又 は 送 信 の 方 式 の 変 換 に 伴 う 技 術 的 な 制 約 による 除 去 又 は 改 変 を 除 く )を 行 うことにより 当 該 技 術 的 保 護 手 段 によつて 防 止 される 行 為 を 可 能 とし 又 は 当 該 技 術 的 保 護 手 段 によつて 抑 止 される 行 為 の 結 果 に 障 害 を 生 じないようにすることをいう 第 百 二 十 条 の 二 第 一 号 及 び 第 二 号 において 同 じ )により 可 能 となり 又 はその 結 果 に 障 害 が 生 じないようになつた 複 製 を そ の 事 実 を 知 りながら 行 う 場 合 三 著 作 権 を 侵 害 する 自 動 公 衆 送 信 ( 国 外 で 行 われる 自 動 公 衆 送 信 であつて 国 内 で 行 われ たとしたならば 著 作 権 の 侵 害 となるべきものを 含 む )を 受 信 して 行 うデジタル 方 式 の 録 音 又 は 録 画 を その 事 実 を 知 りながら 行 う 場 合 2 私 的 使 用 を 目 的 として デジタル 方 式 の 録 音 又 は 録 画 の 機 能 を 有 す る 機 器 ( 放 送 の 業 務 のための 特 別 の 性 能 その 他 の 私 的 使 用 に 通 常 供 され ない 特 別 の 性 能 を 有 するもの 及 び 録 音 機 能 付 きの 電 話 機 その 他 の 本 来 の 機 能 に 附 属 する 機 能 として 録 音 又 は 録 画 の 機 能 を 有 するものを 除 く ) であつて 政 令 で 定 めるものにより 当 該 機 器 によるデジタル 方 式 の 録 音 又 は 録 画 の 用 に 供 される 記 録 媒 体 であつて 政 令 で 定 めるものに 録 音 又 は 録 画 を 行 う 者 は 相 当 な 額 の 補 償 金 を 著 作 権 者 に 支 払 わなければならな い 50

52 4. 参 考 資 料 (2) 参 考 条 文 特 定 機 器 ( 録 画 )( 著 作 権 法 施 行 令 第 1 条 第 2 項 ) 法 第 三 十 条 第 二 項 の 政 令 で 定 める 機 器 のうち 録 画 の 機 能 を 有 するものは 次 に 掲 げる 機 器 (ビデオカメラとしての 機 能 を 併 せ 有 するものを 除 く )であつて 主 として 録 画 の 用 に 供 するもの(デジタル 方 式 の 録 音 の 機 能 を 併 せ 有 するものを 含 む )とする 一 回 転 ヘッド 技 術 を 用 いた 磁 気 的 方 法 により その 輝 度 については 十 三 五 メガヘルツの 標 本 化 周 波 数 で その 色 相 及 び 彩 度 については 三 三 七 五 メガヘルツの 標 本 化 周 波 数 でアナロ グデジタル 変 換 が 行 われた 影 像 を 幅 が 六 三 五 ミリメートルの 磁 気 テープ( 幅 奥 行 及 び 高 さが 百 二 十 五 ミリメートル 七 十 八 ミリメートル 及 び 十 四 六 ミリメートルのカセットに 収 容 されているものに 限 る )に 連 続 して 固 定 する 機 能 を 有 する 機 器 二 回 転 ヘッド 技 術 を 用 いた 磁 気 的 方 法 により いずれの 標 本 化 周 波 数 によるものであるか を 問 わずアナログデジタル 変 換 が 行 われた 影 像 を 幅 が 十 二 六 五 ミリメートルの 磁 気 テープ に 連 続 して 固 定 する 機 能 を 有 する 機 器 三 光 学 的 方 法 により 特 定 の 標 本 化 周 波 数 でアナログデジタル 変 換 が 行 われた 影 像 又 はい ずれの 標 本 化 周 波 数 によるものであるかを 問 わずアナログデジタル 変 換 が 行 われた 影 像 を 直 径 が 百 二 十 ミリメートルの 光 ディスク(レーザー 光 が 照 射 される 面 から 記 録 層 までの 距 離 が 〇 六 ミリメートルのものに 限 る )であつて 次 のいずれか 一 に 該 当 するものに 連 続 して 固 定 する 機 能 を 有 する 機 器 四 イ ロ ハ 記 録 層 の 渦 巻 状 の 溝 がうねつておらず かつ 連 続 していないもの 記 録 層 の 渦 巻 状 の 溝 がうねつており かつ 連 続 しているもの 記 録 層 の 渦 巻 状 の 溝 がうねつており かつ 連 続 していないもの 光 学 的 方 法 ( 波 長 が 四 百 五 ナノメートルのレーザー 光 を 用 いることその 他 の 文 部 科 学 省 令 で 定 める 基 準 に 従 うものに 限 る )により 特 定 の 標 本 化 周 波 数 でアナログデジタル 変 換 が 行 われた 影 像 又 はいずれの 標 本 化 周 波 数 によるものであるかを 問 わずアナログデジタル 変 換 が 行 われた 影 像 を 直 径 が 百 二 十 ミリメートルの 光 ディスク(レーザー 光 が 照 射 される 面 から 記 録 層 までの 距 離 が 〇 一 ミリメートルのものに 限 る )であつて 前 号 ロに 該 当 するものに 連 続 して 固 定 する 機 能 を 有 する 機 器 51

53 4. 参 考 資 料 (2) 参 考 条 文 特 定 記 録 媒 体 ( 録 画 )( 著 作 権 法 施 行 令 第 1 条 の2 第 2 項 ) 法 第 三 十 条 第 二 項 の 政 令 で 定 める 記 録 媒 体 のうち 録 画 の 用 に 供 されるものは 前 条 第 二 項 に 規 定 する 機 器 によるデ ジタル 方 式 の 録 画 (デジタル 方 式 の 録 音 及 び 録 画 を 含 む )の 用 に 供 される 同 項 各 号 に 規 定 する 磁 気 テープ 又 は 光 ディスク( 小 売 に 供 された 後 最 初 に 購 入 する 時 に 録 画 さ れていないものに 限 る )とする 52

54 4. 参 考 資 料 (2) 参 考 条 文 製 造 業 者 等 の 協 力 義 務 ( 著 作 権 法 第 104 条 の5) 前 条 第 一 項 の 規 定 により 指 定 管 理 団 体 が 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 支 払 を 請 求 する 場 合 には 特 定 機 器 又 は 特 定 記 録 媒 体 の 製 造 又 は 輸 入 を 業 とする 者 ( 次 条 第 三 項 において 製 造 業 者 等 という )は 当 該 私 的 録 音 録 画 補 償 金 の 支 払 の 請 求 及 びその 受 領 に 関 し 協 力 しなければならない 53