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かおりつなかわ
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消費者の百貨店離れが鮮明になっている特にリーマンショック以降は加速度的に売上を落としており本稿では百貨店低迷の要因と対応策について考えていきたいまず百貨店を利用する顧客を年齢別に比較すると百貨店の主力商品である衣料品の消費支出額が多い 3 代から 5 代の支持が低く支出額の少ない代以上の高齢者の支持が高いという特徴がある ( 図表 ) 世帯の所得別では

1 今月のトピックス No.1-1(1 年月日 ) 百貨店低迷の背景と今後の方向性 1. 百貨店の低迷と主要顧客層の減少個人所得と小売業販売額は過去においては略連動してきたが 5 年度以降は様相が異なる個人所得は上がっているものの小売業販売額は横ばいに推移しておりサービス消費の比重が高まるなど消費の多様化が進んでいるものと考えられる ( 図表 1) それでもスーパー販売額は小売業販売額に略連動しているが百貨店販売額は 1991 年度をピークにほぼ右肩下がりで推移しており消費者の百貨店離れが鮮明になっている特にリーマンショック以降は加速度的に売上を落としており本稿では百貨店低迷の要因と対応策について考えていきたいまず百貨店を利用する顧客を年齢別に比較すると百貨店の主力商品である衣料品の消費支出額が多い 3 代から 5 代の支持が低く支出額の少ない代以上の高齢者の支持が高いという特徴がある ( 図表 ) 世帯の所得別では最も支出額の大きい高所得者層の支持を得ているもののこの 1 年間に高所得の世帯数そのものが大きく減少している ( 図表 3 ) つまり衣料品に最もお金を使う 3 代から 5 代の消費者の所得が大きく減少したことで百貨店離れが起こりストックリッチな高齢者の支持は引き留めているものの消費額そのものが少ないという事象が起こっていると考えられる図表小売指標と百貨店販売額の推移 5 1 個人所得小売業販売額 13 百貨店販売額 ( 右目盛 ) 15 スーパー販売額 ( 右目盛 ) 1 ( 月額円 ), 3.5% 1999 年 3, 7.3% 9 年, 1, 図表 1999 年 9 年 1,31 年齢層別衣料及び履物消費支出額 ( 月額 1999 年 9 年 ) 3.% 37.% 35.% 33.5% 31.3% 31.% 7.%.%.7% 3.7% 15,5 1,95 1,911 11,575,3 % 3% % 1% % ( 年度 ) ( 備考 ) 総務省市町村税課税状況等の調経済産業省商業動態統計調査より作成図表 3 ( 月額円 ),.% 3, 1999 年 1.5%,9 年 1, 9 年各階級平均収入年間収入五分位階級別衣料及び履物消費支出額 ( 月額 1999 年 9 年 ) 1999 年 9 年 5, 3.7% 5.% 5.7%.%,5 3.9% 1, % 37.% 1,71.%,1 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ 17 万円 33 万円万円 59 万円 1,155 万円 5 衣料品消費支出額 1 年年衣料品支出のうち百貨店で購入した割合 ( 右目盛 ) 所得の分布状況累計相対度数分布 ( 右目盛 ) ( 図表 3 備考 ) 総務省平成 11 年 1 年全国消費実態調査 ( 総世帯 ) より作成 ( 図表備考 ) 厚生労働省国民生活基礎調査より作成 % 3% % 1% % (%) 3 1 年年 1 3 歳未満万円未満 3 代 - 万円 - 万円代中央値 - 万円 5 代.3. -1, 万円代年 5 万円中央値 1 年 7 万円 1,-1, 万円 1,-1, 万円 7 代以上衣料品消費支出額衣料品支出のうち百貨店で購入した割合 ( 右目盛 ) 図表所得金額別にみた世帯数の相対度数分布万円以上の世帯層 1, 万円以上 (%) 1

2 今月のトピックス No.1-(1 年月日 ). 消費支出の変化と他業態の成長直近 1 年間の家計支出項目の推移をみると 9 年度を境にして支出額の増減が大きく分かれている増加しているのは教育保健医療家具家事用品であり減少しているのは被服履物住居食料である特に被服履物の減少が際立っている ( 図表 5) 一方百貨店の衣料品はこの年間で売上の約半分を占めており売上構成比に大きな変化はないつまり百貨店全体の売上が減少したのは消費者の支出変化が起こっていることを顧みず従来通りの売上構成を続けていたからである実際に衣料品売上は直近 1 年間で 35% も減少しこれは百貨店売上の減少額の約割を占める最大の要因となっている ( 図表 ) 更にその衣料品でさえ業態間競争に劣後している可能性がある衣料品の販売額は 1 年度以降横ばいに推移しているが百貨店とスーパーの販売額のみが下降を続けている ( 図表 7) 百貨店がこだわってきた衣料品でさえも専門店やショッピングセンターなどとの競争において苦戦を強いられたというわけである ( 図表 ) 図表 5 (1 年 =1) 家計支出項目の変化 ( 備考 ) 総務省家計調査家計消費指数 (1 年基準 )( 総世帯 ) より作成家計消費指数 (1 年基準 ) とは家計調査の結果 ( 支出 ) のうち購入頻度が少ない高額消費部分について家計消費状況調査の結果と合成し 1 年を 1 として指数化したもの図表百貨店商品別販売額の推移 ( 億円年度 ) ( 年度 ) 被服履物住居食料教育光熱水道保健医療家具家事用品消費支出百貨店商品別販売額年度 1 11 年度商品別構成比増減高増減率増減高増減率衣料品,995,5 31,13 1,37 -.3% 17,1-35.% 5.1% 5.%.7% 婦人服 3,3 7, 1, 3,71-1.1% 1, % 5.3%.3% 5.1% 紳士服 1,93 7,57, 5,1 -.7%,3-3.% 1.% 7.9%.9% 身回品 1,99 1,77,15 -.%,519-3.%.% 11.1% 1.1% 食料品 5,7 3,51 19,7,113 -.%, % 1.%.7% 9.% 家具家電 7,19,7 1,19,75-59.% 1, -5.5% 5.9% 3.% 1.% 家庭用品,919 3,, 1,35-33.% 1,3-31.%.% 3.% 3.3% 合計 11, 95,7 7,31 5, -1.3%,53-9.% 1.% 1.% 1.% ( 備考 ) 経済産業省商業動態統計調査より作成 1 図表 7 衣料品の業態別販売額推移百貨店スーパー 1 織物衣服身回品小売業 ( 右目盛 ) 1 ( センター数 ) 3, 3,, 図表ショッピングセンターの成長ショッヒンクセンター売上高 ( 右目盛 ) ショッヒンクセンター数 9 7,, 5, ( 年度 ) ( 図表 7 備考 ) 経済産業省商業動態統計調査より作成 ( 図表備考 ) 日本ショッヒンクセンター協会我が国 SCの現況より作成ショッヒンクセンターは小売店舗面積 1,5m以上でテナント数 1 店舗以上が集積している商業施設でアウトレットモールや駅ヒルも含まれる ( 年 )

3 今月のトピックス No.1-3(1 年月日 ) 3. 地区別の動向百貨店は 199 年代に首都圏の沿線周辺や地方への出店により売場面積を拡大させたが売上は逆に減少し売場効率の悪化を招いた年代には一転して不採算店舗を相次いで閉鎖し売場面積の削減を行ったもののそれ以上に売上減少幅が大きく更なる売場効率の悪化を招いている ( 図表 9~ 11) 大都市部とその他の都市を比較すると足下ともに売場効率は下げ止まっているが下げ幅は大都市部の方が大きく苦戦しているようにみえるしかし大都市部は売上売場面積ともに横ばい乃至増加しているがその他の都市は売場面積を削減して売場効率を維持していることからその他の都市は既に不況対抗力が無くなってきているのが分かる但し大都市部にあっても売場効率がその他の都市の 199 年時と同水準まで落ち込んでいることを鑑みれば大都市部でもそれほど余力は残されていない可能性があることには留意が必要となる店舗別に年度からのヵ年の売上推移を比較すると総じて都市部の旗艦店であっても売上を落としている ( 図表 1) 売上が増加した店舗は集客力があるターミナル駅に立地している比較的店舗年齢の低い店舗と同一商圏内の他店舗が閉鎖したことで残存者利益を得られた一部の店舗に限られる競合店の撤退はエリアの集客力そのものを劣化させるおそれがあることを踏まえると百貨店の復活はサバイバル競争によるオーバーストアの解消などではなく個々企業や店舗特性に応じた戦略にあると考える図表 9 百貨店売場面積の推移図表 1 大都市部百貨店図表 11 その他の都市百貨店 ( 百万m ). その他の都市 7. 大都市部 ( 兆円百万m ).3 売上高売場面積売場効率 ( 右目盛 ) ( 百万円 / m ) ( 兆円百万m ) 売上高売場面積売場効率 ( 右目盛 ) ( 百万円 / m ) ( 年度 ) ( 年度 ) ( 年度 ) ( 図表 9~11 備考 ) 日本百貨店協会百貨店売上高概況より作成大都市部とは札幌仙台東京横浜名古屋京都大阪神戸広島福岡の1 都市を指す図表 1 百貨店店舗別売上高 ( 億円 ) 年度 11 年度 11 年度社名店舗名売上高売上高売場面積売上高売場面積 ( m ) 増減増減備考 1 三越伊勢丹伊勢丹新宿本店,,35,9 -.5%.% そごう西武西武池袋本店 1,9 1,75 73,1.3%.% 9/5 三越池袋店閉店 3 三越伊勢丹三越日本橋本店,531 1,5 13,35-3.7% -9.9% 大型改装効果高島屋横浜 1,13 1,31 55,99-1.3% -19.% 5 阪急阪神百貨店阪急うめだ本店 1,79 1,5 5,15 -.% -.% 高島屋東京 1,5 1, 5,5-15.%.% 7 高島屋大阪 1,1 1,179 7, % -1.% 大丸松坂屋百貨店松坂屋名古屋 1,3 1,111,75-9.%.% 9 JR 東海高島屋 JR 名古屋タカシマヤ 99 1, 57,713.%.7% 1 東武百貨店池袋本店 1, 1,3,93-15.%.% 三越伊勢丹三越銀座 , 17.% 5.7% 増床効果大丸松坂屋百貨店大丸札幌 , 11.7%.% 9/9 西武札幌閉店山形屋山形屋 ( 鹿児島 ) ,3 -.1% -.7% 9/5 三越鹿児島店閉店東急百貨店吉祥寺 ,731.%.% 1/3 伊勢丹吉祥寺店閉店そごう西武西武旭川 97 1,177 9.%.% 9/7 今井丸井旭川店閉店 ( 備考 ) 各社 IR 資料等より作成

4 今月のトピックス No.1-(1 年月日 ) -1. 今後の方向性 ~ 旗艦店強化とオペレーションの強化厳しい経営環境下百貨店も生き残りを賭けた再編を加速させ 7 年からの僅か 3 年間で上位百貨店の中で単独を保つのは高島屋と丸井のみという劇的な変化を遂げた ( 図表 13) しかしこれら再編を遂げた主要百貨店でさえこれまでは右肩下がりのトップラインを強いられコスト削減効果によって利益を捻出している状況にあるが今後の目指している方向は二極化していると考える ( 図表 1) 1 つ目の方向性は旗艦店強化とオペレーションの強化である旗艦店強化に関しては銀座三越の大増床や大阪梅田の百貨店戦争などに代表されるトップライン対策であるがオペレーションの強化は利益率の改善でありその余地は大きいのではないかと考えている元々百貨店は消化仕入という特徴的な仕入形態があり幅広い客層にバリエーション豊かな商品を提供することに優れている ( 図表 15) しかし総花的という言葉で揶揄されるように全ての商品を消化仕入にする必要はなくアイテム如何ではターゲット顧客を明確にして売り切るという買取仕入を増やしていくことがコスト削減だけに依存しない不況対抗力の強化に繋がると考える成功事例としてプライベートブランド商品 ( 以下 PB 商品 ) 強化により既存店売上を伸長させた丸井の例があげられる当社は既存顧客層と異なる年齢層をターゲットにした PB 商品を強化することなどで小売事業の大幅な増益を達成している ( 図表 1) 図表 13 再編の動向図表 1 上位 5 社計 ( 連結 ) 業績推移年度 ( 億円 ) 11 年度 ( 億円 ) 1 高島屋 1,9 三越伊勢丹 1 ホールディングス 1,399 大丸,37 (. 経営統合 ) 3 三越,1 J. フロントリテイリング 9,1 伊勢丹 7,1 (7.9 経営統合 ) 5 丸井 5, 高島屋 51,51 図表 15 リスクそごう 5,7 7 西武百貨店,5 阪急百貨店 3,9 9 松坂屋 3,37 1 東急百貨店 3,9 丸井グループ,1 低い - 阪神百貨店 1,19 仕入形態消化仕入買取仕入仕入形態の違い支払時売れ残り特徴メリット売上時仕入時在庫なし返品可金銭負担なしリスクなし金銭負担多少ありリスク限定的仕入時自己負担リスクあり PB 商品 5 そごう西武 (9. ミレニアムリテイリンクそごう西武合併 ) HO リテイリング (7.1 経営統合 ) 良質ハイセンスな高価格品を多様なサイズや色などバリエーション豊かに品揃え出来る,179 5,5 原価率 ( 価格 ) 高い ( 億円 ), 15, ,91 図表 1 ( 前年比 %) 115 丸井買上客数丸井売上高売上高 ( 右目盛 ) その他経費 1.,5,97 3,917 3, 人件費 ( 年度 ) ( 図表 13 1 備考 ) 各社 IR 資料等より作成丸井小売事業既存店業績推移丸井営業利益 ( 右目盛 ) 客数増が継続 ( 億円 ) 1 全国百貨店販売額 SPA 9 製造小売高い低い 1/3 1/9 11/3 11/9 1/3 ( 備考 ) 日本政策投資銀行作成 ( 備考 ) 当社 IR 資料経済産業省商業動態統計調査より作成 1, 5, 7,733 7, ,37,9 3.. 粗利益営業利益

5 今月のトピックス No.1-5(1 年月日 ) -. 今後の方向性 ~ ローコストオペレーションの強化と海外進出つ目の方向性はファッションビル化によるローコストオペレーションの強化である百貨店とファッションビルは消化売上歩合家賃と似通ったイメージがあるが社員の店舗人数が根本的に異なる百貨店が社員を中心に売場を賄っているのに対しファッションビルは販売はテナントに任せ社員はビル全体の管理企画調査等のみを行うため店舗人員は極めて少人数に止まる ( 図表 17) 百貨店には対面販売や高品質な接客を必要とする売場もあり全てをファッションビルのようにテナント化することは出来ないものの主力の衣料品についてはテナントの比重を高めていくことが今後の不況対抗力の強化に繋がると考える成功事例としては大丸松坂屋があげられ主要百貨店の中ではローコスト運営に秀でているだけでなく魅力的なテナントの導入によって売上は寧ろ他社に比べ健闘している ( 図表 1) 尚今後市場が縮小する国内においては売上増加粗利率の向上コスト削減といった様々な観点からの不況対抗力の向上が肝要と思料されるが百貨店事業での成長を求めるのであれば海外である百貨店は一定水準を超えた発展途上の市場に強く経済大国となった中国においても小売業の主役である ( 図表 19) 中国を中心とするアジアでは今後とも高い経済成長率に連動して衣料品市場が拡大していくことが見込まれており日本の百貨店の成長余地が益々拡がっていく可能性が高い ( 図表 ) 図表 17 百貨店ファッションビルの百貨店店舗収支構造の違い図表 1 販管費比率と売上高の推移販売管理費 ( )/ 売上 3% その他大手百貨店売上原価 % 売ファッションビル 1.3% 上上(1% 消販売売販売上原価化人件費売上(% 大丸松坂屋売粗管歩利販上)益理粗合経費管経費 19% 費利家 1.% 費益賃)営業利益営業利益 1% 販売テナント / / / 人件費負担 ( 備考 ) 日本政策投資銀行作成図表 19 自動車燃料 % 中国の小売業態別シェア百貨店 15% 5% スーハー % 1% 外側 CVS, 7% 中国 1 年約 7 兆円内側日本 11 年約 13 兆円 % その他小売業 5% 1% (1 億ドル ) 3 1 ( 備考 ) 中国国家統計局中国国家統計年鑑 11 経済産業省商業動態統計調査より作成為替レートは 1 元 =1.5 円 CVS はコンヒニエンスストア売上高 (/ 期 =1) ( 備考 ) 各社 IR 資料経済産業省商業動態統計調査より作成販売管理費から地代家賃減価償却費を控除した数値で比較図表各国の衣料品市場規模と一人あたり GDP の推移 ( 推計 ) 5 75 大丸松坂屋全国百貨店 / / /. 79. 中国 ( 千ドル ) (1 億ドル ) 東南アジア ( 千ドル ) ( 年 ) ( 年 ) 中国中国ベトナム一人あたり (1 ベトナム衣料品マレーシア GDP マレーシア市場規模タイ億ド 9 1 ( 右目盛 ) タイインドネシアル ) インドネシア ( 備考 )IHS Global Insight IMF"World Economic Outlook Database, April 1" より作成 [ 産業調査部大久保康三高橋夏誉 ]

6 今月のトピックス No.1-(1 年月日 ) 本資料は著作物であり著作権法に基づき保護されています著作権法の定めに従い引用する際は必ず出所 : 日本政策投資銀行と明記して下さい本資料の全文または一部を転載複製する際は著作権者の許諾が必要ですので当行までご連絡下さいお問い合わせ先株式会社日本政策投資銀行産業調査部 Tel: report@dbj.jp

Microsoft PowerPoint - 【HP版】百貨店統合トピックス - コピー.pptx

Microsoft PowerPoint - 【HP版】百貨店統合トピックス - コピー.pptx 今月のトピックス No.212-1(2014 年 5 月 21 日 ) 市場縮小への対抗策としての企業統合 ~ 百貨店業界 ~ 1. 百貨店の市場規模縮小と業界再編今後縮小が余儀なくされる国内市場においては内需に依存する多くの企業が既存事業の収益を維持するために他社との経営統合を選択するケースが増えていくことが予想される本レポートでは国内でいち早く市場縮小が進み業界再編が進んだ百貨店業界を取り上げ