循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 心室中隔欠損 (ventricular septal defect:vsd) 心房中隔欠損 (atrial septal defect:asd) 房室中隔欠損 (a

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1 2013/7/2 更新版 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) ダイジェスト版 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン Guidelines for the clincal exmaninations for dicision making of diagnosis, pathophysiology, and therapy in congenital heart disease(jcs 2009) 合同研究班参加学会 : 日本循環器学会, 日本胸部外科学会, 日本外科学会, 日本小児科学会, 日本小児循環器学会, 日本心臓血管外科学会, 日本心臓病学会, 日本心電学会, 日本超音波医学会 班長 濵 岡 建 城 京都府立医科大学大学院医学研究科小児循環器 腎臓学 班員 石 川 司 朗 福岡市立こども病院循環器科 糸 井 利 幸 京都府立医科大学大学院医学研究科小児循環器 腎臓学 越 後 茂 之 えちごクリニック 角 秀 秋 福岡市立こども病院心臓血管外科 黒 澤 博 身 榊原サピアタワークリニック 佐 野 俊 二 岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科 長 嶋 正 實 あいち小児保健医療総合センター 中 西 敏 雄 東京女子医科大学心臓病センター循環器小児科 八木原 俊 克 国立循環器病センター心臓血管外科 康 井 制 洋 神奈川県立こども医療センター循環器科 山 岸 敬 幸 慶應義塾大学小児科 山 岸 正 明 京都府立医科大学大学院医学研究科心臓血管外科 呼吸器機能制御外科学 協力員 石 川 友 一 福岡市立こども病院循環器科 市 田 蕗 子 富山大学小児科学 小 川 潔 埼玉県立小児医療センター循環器科 小 野 安 生 静岡県立こども病院循環器科 小 林 俊 樹 埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科 篠 原 徳 子 東京女子医科大学循環器小児科 白 石 修 一 新潟大学大学院呼吸循環外科分野 中 野 俊 秀 福岡市立こども病院心臓血管外科 中 村 好 秀 大阪市立総合医療センター小児不整脈部 松 島 正 氣 社会保険中京病院小児循環器科 安河内 聰 長野県立こども病院循環器科 外部評価委員 尾 内 善四郎 介護老人保健施設 マムクオーレ 松 田 暉 兵庫医療大学 柳 澤 正 義 日本子ども家庭総合研究所 堀 正 二 大阪府立成人病センター ( 構成員の所属は2009 年 7 月現在 ) 目 次 ガイドライン作成の基本方針 ガイドラインのポイント 先天性心疾患の区分診断 発達に伴う循環動態, 症候の変化 心電図 胸部 X 線 超音波検査 ( 心エコー検査 ) CT,MRI 心臓カテーテル検査 心血管造影検査 血液検査 心雑音 循環不全 ( 心不全 ) チアノーゼ

2 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 心室中隔欠損 (ventricular septal defect:vsd) 心房中隔欠損 (atrial septal defect:asd) 房室中隔欠損 (atrioventricular septal defect:avsd) 動脈管開存 (patent ductus arteriosus:pda) 大動脈縮窄 大動脈弓離断複合 (coarctation of aorta: CoA, interruption of aortic arch: IAA) 大動脈狭窄 閉鎖不全 (aortic stenosis: AS, aortic regurgitation: AR) 肺動脈狭窄 (pulmonary stenosis: PS) Ebstein 病 (Ebstein anomaly) 総肺静脈還流異常 (total anomalous pulmonary venous return:tapvr) Fallot 四徴症 (tetralogy of Fallot:TOF) 肺動脈閉鎖 (pulmonary atresia:pa) 両大血管右室起始 (double outlet right ventricle: DORV) 完全大血管転位 (transposition of the great arteries: TGA) 修正大血管転位 (corrected transposition of the great arteries:ctga) 総動脈幹遺残 (persistent truncus arteriosus) 三尖弁閉鎖 (tricuspid atresia:ta) 左心低形成症候群 (hypoplastic left heart syndrome: HLHS) 無脾 多脾症候群 ( 心房内臓錯位症候群 ) 姑息手術 (palliative surgery) 二心室修復術 Rastelli 型手術 大血管転換術 :TGA,cTGA,DORV 右心バイパス手術 (Fontan 型手術,total cavopulmonary connection:tcpc) 1238 ( 無断転載を禁ずる ) Ⅰ 序文 1 ガイドライン作成の基本方針 先天性心疾患児は生産児の約 1% の頻度で出生する. 近年の医療技術の進歩によって先天性心疾患患者全体の死亡率は年々低下しており, 特に新生児 乳児期での生存率は飛躍的に向上している. それに伴い, 成人期に達した先天性心疾患患者数も増加し, 既に現状では約 40 万人と推定される. 先天性心疾患はもはや小児のみの疾患ではなく成人の疾患になりつつあり, 社会環境での複雑な問題がからみあい, 成人先天性心疾患の医療の重要 性も大きくクローズアップされつつある. このように, 先天性心疾患の医療は胎生期から成人期, そして次世代へと長期にわたる治療計画が必要である. 本ガイドラインは, 一般循環器内科医を主な対象に, 先天性心疾患の医療を行う上でのminimal requirement を基本とした内容としているが, 一般内科, 小児科 新生児科のみならず産科医にも利用されることを想定して作成されている. また, 必要と思われる限り, 最新の情報を加えた. 各疾患の手術適応とその検査法について網羅された参考書はないので, 治療選択の適応を決めるために必要な検査とそのタイミングを解説した. 2 ガイドラインのポイント 先天性心疾患の診断, 病態把握, 治療選択のための検査法の選択ガイドライン作成は我が国において新しい試 1188

3 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン みであり, 国際的にも検査法に対するエビデンスレベルを検討した研究もほとんど存在しない. このため, 我が国における第一線の小児循環器専門医の中でコンセンサスが得られている内容を中心に作成したが, 可能な限り多くの文献的検討に基づいたものを記載するよう心がけた. また, 十分なコンセンサスが得られていないと考えられる内容についてはそのことを明記した. 基本方針でも述べたとおり, 本ガイドラインは循環器内科医のみならず, 先天性心疾患患者に関わる種々の異なる専門領域の臨床家にも参考となるように日常臨床で役に立つ内容とし, 小児循環器の専門的 先端的な内容については可能であれば up date 等の別項を設けて解説した. 本ガイドラインは先天性心疾患における検査法選択を目的としているが, 小児においては疾患の多様性に加えて年齢による病態の変化, 検査法の工夫や問題点等成人にはない特徴がある. そのため, 本ガイドラインでは検査法選択を前提とした総論として, 先天性心疾患の診断に必要な区分分析と病態把握, 治療選択に考慮すべき年齢によって変化する循環動態等の病態理解のための記述をやや詳細に記載するとともに, 検査法の特徴, 症候の特徴を充実させた. また, 小児に対する検査は成人と異なる施行方法と注意すべき点, 評価法の違い等も総論で解説した. 一方, 各疾患ごとの病態や検査に関する教科書は多数あるので, 各論では, 検査項目の整理を行い, 内容をできるだけ簡略化する方針とし一目で分かるように可能な限り図やフローチャートを使用した.1 つの疾患でも年齢によって対応が異なる場合があり, 本文あるいは図等で可能な限り分かりやすく表現できるよう工夫をした. 今回のガイドライン作成にあたって, 日本をはじめ国際的にも先天性心疾患に関する検査法の大規模試験は実施されていない. このため, 今回は エビデンスレベル の設定は行わないこととし, 以下のような クラス分類 のみを採用した. なお, 各論では, 診断 病態把握 治療選択に関して一般的に行われる検査 ( クラスⅠおよびクラスⅡa) の流れをフローチャートで示し, その解説を本文に示した. クラス分類クラスⅠ その検査法が有用かつ有効であるというデータおよび / または一般的合意がある場合クラスⅡ その検査法の有用性に関して相反するデータおよび / または意見の相違のある状態 Ⅱa 有用かつ有効であるというデータおよび / または意見が多い Ⅱb 有用かつ有効であるという確証が少ないクラスⅢ その検査法が有用かつ有効でなく, 場合によっては有害であるというデータおよび / または一般的合意がある状態 Ⅱ 診断と病態理解のための基本的事項 1 先天性心疾患の区分診断 心臓の主要な骨組みは 5 階建ての建物にたとえられる ( 図 1). 3 つの部位診断 心房位 ( 内臓心房位 ) の診断 心室位 ( 心室ループ ) の診断 大血管の診断 2つの関係診断 心房心室結合 心室大血管関係診断に際しては, 各区分の正常と起こりうる異常形態の知識を持って, 理学所見, 胸部 X 線, 心電図, 心臓超音波, 心臓カテーテル 心血管造影等を活用し, 各区分を1つずつ診断していくことが必要である ( 表 1). 次に, 各区分内の合併異常 ( 中隔の異常, 弁の異常, 血管の異常等 ) を診断し, 調律異常, 血行動態を考慮して, 適正な治療法を決定する. 図 1 区分診断のための主要な骨組み 大血管 ( 円 動脈幹 ) 心室大血管関 心室 ( 心室ループ ) 心房心室 合 心房 ( 内臓心房位 ) 1189

4 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 1 心房位, 心室位, 大血管の診断 ( 区分決定のメルクマール ) 表 1 診断有用性 :* が多いほど特異性が高い 心房右心房左心房診断有用性 下大静脈が流入する下大静脈が流入しない ** 上大静脈が流入する肺静脈が流入する * 心房中隔より前方 心房中隔より後方 心室右心室左心室診断有用性 粗い肉柱形態粗い肉柱形成なし ** 粗い心室中隔面平滑な心室中隔面 ** 房室弁の低位付着 自由壁から2つの大きな乳頭筋 * 漏斗部を有する 漏斗部を有しない * 三角形 ( おむすび型 ) 楕円形 ( フットボール型 ) 大血管 肺動脈 大動脈 診断有用性 起始後ただちに分岐 起始後分岐しない ** 起始後弓 (arch) 形成なし 起始後弓 (arch) 形成あり ** ** 2 1 心房位 区分表現法 : 心房位, 心室位, 大血管の位置関係を表現する用語 situs 右心房が脊柱の右側 : 心房正位 situs solitus 右心房が脊柱の左側 : 心房逆位 situs inversus 右心房の位置が決定できない ( 下大静脈欠損等 ): 心房非定位 situs ambiguous 左側 ) の反対側を走行する. 下大静脈と下行大動脈が脊柱の同側を走行する場合 :aortico-caval juxtapositionと呼ばれ, 内臓錯位 ( 特に右側相同 ) に特徴的である. 下大静脈欠損の場合 : 奇静脈または半奇静脈接続の可能性が高く, 内臓錯位 ( 特に左側相同 ) に特徴的である. 図 2 心房位の診断 V 2 心室位 ( 心室 loop) 右心室が左心室の右側 : 心室正位 d-loop 右心室が左心室の左側 : 心室逆位 l-loop 3 大血管関係左右位置大動脈が肺動脈の右側 :D 大動脈が肺動脈の左側 :L TV IVC RA LA S 3 区分診断法の実際 ( 心臓超音波を用いる方法 ) 1 ステップ 1: 心房位の診断 下大静脈が接続する心房を右心房として心房位を決 定する. 剣状突起下から下大静脈を描出する長軸断面 ( 図 2) と短軸断面を用いる. 通常, 下大静脈は脊柱の右側, 下行大動脈 ( 脊柱の 2ステップ2: 心室位の診断 心室内構造の違いにより左右心室を決定する. 傍胸骨からの心室短軸断面 ( 図 3) および心尖部からの四腔断面 ( 図 4) を用いる. 1190

5 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 図 3 心室位の診断 ( 短軸断面 ) 図 5 大血管の診断 RV LV +3 RA LA Ao PA PPM APM DAo 図 4 心室位および心房心室結合の診断 ( 四腔断面 ) PV +2 RA LA Ao RV LV RA LA INF AoV RA 3 ステップ 3: 大血管の診断 +1 LA 肺動脈と大動脈をそれぞれの特徴から決定する. 傍胸骨からの大血管短軸断面を半月弁レベルから大動脈レベルまで順次頭側に傾けて得られる断面 (+1 ~+4レベル ) と, 胸骨上窩からの大血管長軸断面を用いる. 最も低いレベル (+1) で後方の半月弁 ( 通常, 大動脈弁 ) が観察され, 次のレベル (+2) で前方の半月弁 ( 通常, 肺動脈弁 ) が観察され, さらに上方に傾けると (+3) 肺動脈の左右への分岐が観察され ( 図 5), 最後に (+4) 大動脈の断面が後方へ伸展して大動脈弓が形成される. 肺動脈と大動脈がそれぞれ決定されたら, 両者の位置関係を表現する (4 区分診断の表記法図 8). 4ステップ4: 心房心室結合の診断 心尖部四腔断面を用いる ( ステップ2の図 4). 心房心室結合には以下の5 種類がある. 1) 正常整列右心房と右心室は正しく整列し, その間に三尖弁が位置する. 左心房と左心室は正しく整列し, その間に僧帽弁が位置する. 三尖弁が僧帽弁よりやや低位に位置する. 心室中隔 と心房中隔はほぼ同一線上に位置する. 2) 房室弁交差 3) 一側房室弁両室挿入 4) 両房室弁同室挿入 5) 一側房室弁口閉鎖 5ステップ5 心室大血管関係の診断 肋骨弓下または心尖部からの四腔断面を順次頭側に傾けて得られる断面 (F 1 ~F 3 ) を用いて, 心室と大血管の接続を観察する ( 図 6). 傍胸骨からの心室 - 大血管長軸断面を用いて, 心室と大血管の接続を観察する ( 図 7). 半月弁と房室弁を同時に含む断面において, 両者の線維性連続の有無を観察する. 線維性連続ありの場合, 大血管は左室起始, 線維性連続なしの場合, 大血管は右室起始である可能性が高い. 1191

6 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 図 6 心室大血管関係の診断 (1) 図 7 心室大血管関係の診断 (2) IVS RV RV RA LV LA PVe LV LA Ao RPA F1 RPA RV LV LA 4 区分診断の表記法 { 心房位, 心室位, 大血管関係 } の順に, 分析した各 心血管区分を区分表現法の用語 ( 略語 ) を用いて { } F2 F3 Ao RV LV PA IVS LPA 内に並べて表記すると, 複雑な先天性心疾患でも主要心血管構築を明確に示すことができる. * 心房位 :S,solitus( 正位 ),I,inversus( 逆位 ),A, ambiguous( 非定位 ) 正常 (S,solitus) では右心房が脊柱の右側 * 心室位 :D,d-loop( 正位 ),L,l-loop( 逆位 ) 正常 (D,d-loop) では右心室が左心室の右側 * 大血管関係正常関係 ( 図 8-Ⅰ) N,normal 正位 : 大動脈 (Ao) が右後, 肺動脈 (PA) が左前 IN,inverted normal 逆位 :Ao が左後,PA が右前 M,malposition 心室大血管関係は正常でAo,PA の位置異常あり (1 文字目 ;D,Ao がPA の右側, L,Ao がPA の左側 ) 大血管転位 ( 図 8-Ⅱ) 図 8 区分診断の表記法 Ⅰ. 正常関係. 正常心型 RA RV 1 LA LV PA {S,D,N} Ao LA LV 2 RA RV {I,L,IN}. 性心室不一 RA LV 1 LA RV {S,L,N} LA RV 2 RA LV {I,D,IN} Ⅱ. 大血管転位. 完全大血管転位 RA RV 1 LA LV {S,D,DT} LA LV 2 {I,L,LT} RA RV. 修正大血管転位 RA LV 1 LA RV {S,L,LT} LA RV 2 RA LV {I,D,DT}. 解剖学的修正 alposition Ⅲ. 両大血管同室起始 右室起始 1 RA RV LA LV RA LV LA RV LA LV RA RV LA RV RA LV RA RV LA LV RA RV 2 LA LV RA LV 3 LA RV. 左室起始 RA RV 1 LA LV {S,D,LM} {S,L,DM} {I,L,DM} {I,D,LM} {S,D,DR} {S,D,LR} {S,L,LR} {S,D,DL} 1192

7 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン T,transposition Ao が右心室,PA が左心室から 起始 (1 文字目 ;D,Ao が PA の右側,L,Ao が PA の左側 ) 両大血管同室起始 ( 図 8-Ⅲ) R, 両大血管右室起始,L, 両大血管左室起始 (1 文字目 ;D,Ao が PA の右側,L,Ao が PA の左側 ) 2 発達に伴う循環動態, 症候の変化 1 出生前後の循環動態の変化 胎児循環から肺循環への移行 胎児血行では, 出生後のように肺循環が関与せず, 心内に卵円孔という心内短絡および動脈管と静脈管という 2つの心外短絡を有することが特徴である ( 図 9). 出生後肺循環が開始すると, 肺血管抵抗と肺動脈圧の低下とともに肺血流量は増加する. この変化は, 肺血管抵抗と体血管抵抗のバランスによって肺血流量や体血流量が左右される左心低形成症候群等の先天性心疾患では, 心不全やショック等の循環動態の破綻を生じさせることがある. 2 先天性心疾患の基本的病態 1 循環不全 ( 心不全 ) 新生児期 乳児期早期に発症する先天性心疾患は, 動脈管での血流障害や心房間交通障害により肺循環や体循環が確立できなかったり, 酸素化血流が体循環にうまく還流できずに低酸素血症を生じるものが多い ( 表 2). また肺循環と体循環が並列 ( 駆出心室から両循環が支持 動脈管 主肺動脈 右室 右房 左室 左房 円 図 9 胎児循環 胎児循環と出生後の循環 大動脈 肺 右室 右房 左室 左房 出生後循環 胎児循環では, 卵円孔という心内短絡と動脈管と静脈管という 2 つの心外短絡が存在する. されるもの : 単心室や左心低形成症候群等 ) の場合には, 肺血管抵抗の低下に伴う肺血流量の増加とともに体血流が低下し低心拍出となる. 総肺静脈還流異常等の肺静脈閉塞疾患では, 肺うっ血から肺水腫, 肺高血圧を生じるとともに, 左心系への流入血流障害から低心拍出となる. 乳児期以後においては, 左 - 右短絡による肺血流増加疾患では多呼吸や喘鳴等の呼吸症状に加え体重増加不良や運動時息切れや疲労感等の症状を生じる. 逆に右 - 左短絡による肺血流減少疾患では, 肺高血圧がない場合にはチアノーゼやしゃがみこみ, 低酸素発作等を生じ, 肺高血圧合併例では動悸, 息切れ, 運動時の失神発作, 易疲労性等を生じる. 重症大動弁狭窄では心室の収縮低下と心筋への冠還流障害を伴う重大な低心拍出を生じる. 2チアノーゼチアノーゼは, 皮膚粘膜下血の還元ヘモグロビンが 5g/dL 以上, 動脈血還元ヘモグロビンが3g/dL 以上になると見られる青色症である. 低心拍出時に見られる四肢冷汗を伴う網状チアノーゼは, 保温や循環不全の治療で改善するため鑑別が可能である. 中枢性チアノーゼは,⑴ 低換気,⑵ 右 - 左短絡,⑶ヘモグロビン異常により生じる. 上肢と下肢で酸素飽和度が10% 以上異なるdifferential cyanosisを認めた場合には, 体血圧と等圧以上の肺高血圧と動脈管開存が必ず存在し, これに上下肢の血圧の差や四肢の脈触知の差が伴えば大動脈縮窄や大動脈離断が診断できる. 中枢性チアノーゼが持続すると, ばち状指を生じる. チアノーゼが改善しないまま思春期以後まで治療されずに過ごした先天性心疾患児では, 多血症に伴う合併症として過粘稠症候群による頭痛や血栓症, 高尿酸血症による痛風, 喀血, 吐血等を生じる. また, さらに低酸素血症に伴う運動能低下に加え低酸素血症によるチアノーゼ性腎障害 ( タンパク尿や浮腫 ) や肝機能障害を生じることが知られている. 3 先天性心疾患の発症時期 主な心疾患の発症時期について図 10 に示す. 重症な先天性心疾患ほど新生児期 乳児早期に症状を発現する. 年齢による心疾患の初発症状は表 3の通りである. 肺高血圧による肺血管閉塞性病変が進行するとチアノーゼや運動時息切れ等の症状が発現しいわゆる Eisenmenger 症候群 の症状を呈するようになる. 1193

8 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 表 2 新生児期 乳児期発症の先天性心疾患の病態 病態疾患循環不全症状の機序 1 肺循環が確立できない三尖弁閉鎖不全 (Ebstein 奇形, 三尖弁異形成 ) 動脈管依存性右室前方拍出不全 右室低形成静脈還流障害 肺動脈閉鎖 + 動脈管開存肺血流低下 低酸素血症 心筋収縮低下 胎児循環遺残 2 体循環が確立できない左心低形成症候群動脈管依存性低心拍出量 重症大動脈弁狭窄左室後負荷不適合 大動脈縮窄 大動脈離断 動脈管狭窄 閉塞に伴う下半身血流低下 腎不全 肺高血圧 右室ポンプ機能不全 肺血流量増加 体血流量低下 ( 並列循環 ) 左室容量負荷 3 酸素化血液の体循環への移行障害 完全大血管転位 心房間交通障害 ( 左 - 右 ) 低酸素血症 心筋収縮低下 総肺静脈還流異常 心房間交通障害 ( 右 - 左 ) 左室流入血流減少による低心拍出 右室高血圧によるポンプ不全 4 必須の心房間交通に障害がある 左心低形成症候群 心房間交通障害 ( 左 - 右 ) 肺静脈うっ血 肺水腫 肺高血圧 右心不全 僧帽弁閉鎖 + 両大血管右室起始 三尖弁閉鎖 心房間交通障害 ( 右 - 左 ) 静脈還流障害 体うっ血 右室低形成 右房 左房流入血流制限 左室流入血流減少による 低心拍出 総肺静脈還流異常 5 肺血管抵抗低下に伴う肺血流量の増加 心室, 大血管レベルでの大欠損 肺血流増加 左室容量負荷 ( 心室中隔欠損, 動脈管開存, 大動脈肺動脈開窓, 肺高血圧 右室ポンプ不全 両大血管右室起始, 完全大血管転位 + 心室中隔欠損, 並列循環での肺血流量増加 体血流量低下 三尖弁閉鎖 + 肺血流量増加, 総動脈幹等 ) 肺静脈閉塞 ( 僧帽弁狭窄, 三心房心等 ) 肺静脈うっ血の増悪 6 発育に伴う進行ないし心拍出量の増加 僧帽弁閉鎖不全 逆流の進行 左室容量負荷 左室ポンプ機能不全 左室前方拍出低下 僧帽弁狭窄, 三心房心 肺静脈うっ血 肺水腫 肺高血圧 右心不全 7 漏斗部心筋肥厚増悪 Fallot 四徴症 低酸素発作 三尖弁閉鎖 + 肺動脈狭窄 右室からの順行性肺血流量の低下 低酸素血症 両大血管右室起始 + 肺動脈狭窄 8 冠動脈疾患 冠動脈奇形 冠動脈異常 心筋虚血による心筋収縮低下 BWG 症候群 9 心筋疾患 心筋症 心収縮低下 心筋炎 心筋拡張障害 10 不整脈 先天性完全房室ブロック 徐脈による低心拍出 頻拍誘発性心筋症 心室への流入障害, 心筋虚血 著しい頻脈, 心室頻拍 1194

9 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 1. 新生児期 乳児早期多呼吸, 陥没呼吸呼吸困難, 喘鳴多汗哺乳障害 2. 乳幼児期多呼吸易感染性, 反復する肺炎 3. 小児期運動能低下息切れ 4. 思春期以後 表 3 心疾患による症状 ( 年齢別の初発症状 ) 肺血流増加 肺血流減少 低心拍出 チアノーゼ チアノーゼ低酸素発作蹲踞 ( しゃがみこみ ) ばち状指 蒼白, 末梢冷感冷汗, 網状チアノーゼ体重増加不良弱い泣き声 体重増加不良運動発達遅延易疲労性顔色不良, やせ運動能低下動悸 合併症による症状胸痛, 失神発作, 突然死, 喀血, 不整脈, 出血傾向, 痛風, けいれん等 図 10 主な先天性心疾患の発症時期と初発症状 心不全を主徴とする疾患左心低形成大動脈縮窄離断 合 Ⅲ 各種検査法 大きな心室中隔欠損大きな動脈管開存共通房室管 残遺心内膜 性症重症大動脈狭窄完全房室ブロック左冠動脈肺動脈起始三心房心心不全とチアノーゼを主徴とする疾患総肺静脈環流異常 閉塞 (+) 完全大血管転位 未 児 1 心電図 1 標準 12 誘導心電図標準 12 誘導心電図だけでなくベクトル心電図や運動 負荷心電図, ホルター心電図が行われている. 簡便で繰り返し行うことができるため, 診断や経過観察における病状把握に有用な検査である. Ebstein 病 右心低形成 総肺静脈環流異常 閉塞 ( ) チアノーゼを主徴とする疾患 Fallot 四徴症 肺動脈閉鎖 + 心室中隔欠損 三尖弁閉鎖 ( 大きな ASD)+PS 別す き疾患 1 1 か月 3 か月 2 年 発作性頻拍 大きな 動静脈 胎児間 血 度症候群 PPHN 低血 血症など チアノーゼ 度 血 性腎炎 1 検査の特性と技術的問題新生児期には生理的な右室肥大が認められ, 成長とともに波形は変化するため, 小児では年齢により異常所見の基準が異なることに留意する必要がある. 特に胸部誘導のT 波形は年齢とともに左側胸部誘導から右側胸部誘導へと陽性化してくるため, 右室肥大の基準が変化する. 表 4と表 5に日本小児循環器学会が作成した心室肥大の判定基準を示す. 表 5は簡易版である. 判定基準の項目にあげられているように ( 表 4), 年少例では生理的右室肥大があるためにV 3 R,V 4 Rを記録する必要がある. 2 検査の臨床的意義心電図検査は先天性心疾患の診断に直結するものではないが, 波形の異常, 肥大所見や負荷所見, 心筋虚血等の心筋性状の変化, 不整脈の合併等病態把握には不可欠な検査である. 1) 波形の異常心房中隔欠損における右軸偏位, 不完全右脚ブロック, V 4 誘導の孤立性陰性 T 波, 房室中隔欠損における左軸 1195

10 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 右室肥大判定基準 表 4 点数による小児心電図心室肥大判定基準 点数所見 0~7 日 8~30 日 5 点 3 点 2 点 (1) 右側胸部誘導パターン 1 か月 ~ 2 歳 3~11 歳 男 12 歳以上 1 V 4 R,V 3 R,V 1 のいずれかで qrs,qr または R 型 2V 1 の T 波が陽性でかつ R> S * + + * * * (2) 右側胸部誘導の高い R 1 RV 1 2.5mV 同左 2.0mV 同左同左 1.5mV 2V 1 が R<Rʼ でかつ RʼV 1 1.5mV 同左同左 1.0mV 同左同左 3V 1 が R> S で RV 1 * * * 1.5mV 同左 1.0mV (3) 左側胸部誘導の深い S 1 SV 6 1.0mV 同左同左同左同左同左 2V 6 が R S でかつ SV 6 * * 0.5mV 同左同左同左 (4) 右側胸部誘導の VAT 延長 :VATV sec 同左同左同左同左同左 1 点 (5) 右軸偏位 :QRS 電気軸 * * 同左同左 注 1)WPW 症候群や完全右脚ブロックがあれば, 右室肥大の判定は困難である 2)* 印はその年齢群ではとりあげない項目 3) 第 (4) 項は不完全右脚ブロックパターンがある時はとりあげない 4) 各項の亜項は重複しても加算しない 判定 5 点以上 : 右室肥大,3~4 点 : 右室肥大疑,1~2 点 : 心電図上は右室肥大と判定しない 左室肥大判定基準 点数所見 0~7 日 8~30 日 1 か月 ~ 2 歳 3~11 歳 12 歳以上 5 点 (1) 左側胸部誘導の ST-T 肥大性変化 点 2 点 (2) 左側胸部誘導の 1 RV 6 1.5mV 2.0mV 2.5mV 3.0mV 同左 2.5mV 高い R 2 RV 5 2.5mV 2.5mV 3.5mV 4.0mV 同左 3.5mV (3) 右側胸部誘導の 1 SV 1 +RV 6 * * 4.0mV 5.0mV 同左 4.0mV 深い S 2 SV 1 +RV 5 * * 5.0mV 6.5mV 6.0mV 5.0mV (4) 左側胸部誘導の QV 5 < QV 6 深い Q でかつ QV 6 3 SV 1 2.5mV 2.0mV * * * * * * * 0.5mV 同左同左 (5)Ⅱ,Ⅲ,aV F 誘導の 1 RⅡ および RⅢ * * 2.5mV 同左同左同左 高い R 2 RaV F * * 2.5mV 同左同左同左 (6) 左側胸部誘導の VAT 延長 V 5 または V 6 * * 0.04sec 0.05sec 0.06sec 同左 1 点 (7) 左軸偏位 :QRS 電気軸 * * * 0 30 同左 注 1)ST-T の肥大性変化 :V 5 または V 6 で, 高い R 波を認め,T 波が陰性または二相性 (-~+ 型 ) のもの ST 区間は下り坂ないし水平のことが多い 2)WPW 症候群や左脚ブロックがあれば, 左室肥大の判定は困難である 3)* 印はその年齢群ではとりあげない項目 4) 各項の亜項は重複しても加算しない 判定 5 点以上 : 左室肥大,3~4 点 : 左室肥大疑,1~2 点 : 心電図上は左室肥大と判定しない 両室肥大判定基準 両室肥大 1) 左室 右室ともにおのおのの肥大判定基準が5 点以上のもの 2) 一方の心室の肥大判定基準が5 点以上で, 他の心室の同基準が3~4 点のもの 両室肥大疑左室 右室ともにおのおのの肥大判定基準が3 ~ 4 点のもの 男 女 女 1196

11 表 5 小児心電図心室肥大判定のめやす ( 生後 30 日以下は除く )先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 右室肥大 1) 右側胸部誘導の右室肥大パターン 1V 1 (V 4 RおよびV 3 R) でqRs,qR,Rパターン 2V 1 誘導のT 波が陽性で, かつR>S(3 歳未満 ) * 2) 高いRV 1 と深いSV 6 右室肥大の疑い高いRV 1 と深いSV 6 * * 高い RV 1 と深い SV 6 とは下記の条件のいずれかを満足するもの 高いRV 1 : 1 RV 1 2.0mV (12 歳以上の女児は 1.5mV) 2V 1 誘導でR > S で,RV 1 1.5mV (3 歳以上,12 歳以上女児 1.0mV) 3 V 1 誘導でR < R で,R V 1 1.5mV (3 歳未満,3 歳以上 1.0mV) 深いSV 6 : 1 SV 6 1.0mV.2 V 1 誘導でR S で, SV 6 0.5mV なお,V 6 誘導の深い S 波の所見は心臓の回転異常の場合にもみられる 両室肥大 1) 両心室の肥大 2) 一方の心室肥大と他の心室肥大の疑い両室肥大の疑い両心室の肥大の疑い 左室肥大 1) 左側胸部誘導 (V 5 またはV 6 誘導 )ST-T の変化 2) 高い V 6, 大きな ( SV 1 +RV 6 ), および深い QV 6 のうち二つ以上の所見左室肥大の疑い高い RV 6, 大きな ( SV 1 +RV 6 ), または深い QV 6 のいずれか上記所見の内容は下記のとおりである 1) 左側胸部誘導のST-T の肥大性変化 V 5 または V 6 誘導で高いR 波を認め,T 波が陰性または二相性 ( ~+ 型 ) 2) 高いR 波 3 歳以上 RV 6 3.0mV. 3 歳未満および 12 歳以上の女児はRV 6 2.5mV 3) 大きな SV 1 +RV 6 3 歳以上は SV 1 +RV 6 5.0mV. 3 歳未満および 12 歳以上の女児は SV 1 +RV 6 4.0mV 4) 深いQ 波 QV 5 < QV 6 でかつ QV 6 0.5mV (3 歳以上 ) 注 1)WPW 症候群や完全右脚ブロックがあれば心室肥大の判定は困難である 2)3 歳以上 6 歳未満では,V 1 誘導 T 波が陽性でかつ R > S であれば右室肥大の可能性が強い 3)V 1 の VAT 延長や強い右軸偏位があるときは右室肥大に留意する 4) 深い SV 6 だけの症例には回転異常などがあるので右室肥大疑と判定するには慎重でなくてはならない 5) Ⅱ, Ⅲ,aV F 誘導の高い R 波 (2.5mV 以上 ),V 6 誘導の VAT 延長や左軸偏位があるときは左室肥大に留意する 偏位,PQ 間隔の延長, 不完全右脚ブロック, 修正大血 3 ホルター心電図 管転位における左軸偏位,V 1 誘導の QS 型,V 5 および V 6 誘導におけるQ 波の欠如等は診断的価値が高い. 2) 負荷所見負荷所見の有無が手術適応を決定する重要な基準になる. 3) 心筋性状の変化重症大動脈弁狭窄では左室ストレインパターン ( 左側胸部誘導におけるST 低下や陰性 T 波 ) を示し, 重症肺動脈弁狭窄では右側胸部誘導のストレインパターンが認められる. また, 左冠動脈肺動脈起始では左室前側壁の心筋虚血や梗塞所見が認められる. 4) 不整脈心房中隔欠損やEbstein 奇形等心房に負荷がかかる疾患では心房期外収縮や心房粗動 細動が認められることがある. また, 修正大血管転位や心房内臓錯位症候群でも不整脈を合併しやすい. 2 運動負荷心電図 トレッドミル負荷やエルゴメーター負荷, マスター負荷が行われる. 大動脈弁狭窄で運動によりST 変化が出現する場合には手術の適応となる. 非侵襲的で, 新生児でも検査可能であり, 不整脈の診断には不可欠の検査である. 小児では体動が激しく, 心拍数も速いため, 解析には相当な修正が必要となる. 2 胸部 X 線 先天性心疾患には多種多様な疾患があり, 他臓器の異常を合併することもあるため胸部 X 線は不可欠な検査である. また, 簡便で安価な検査法であり, 依然心疾患の有無や経過観察における血行動態の変化を捉えるスクリーニングの検査として有用である. 1 検査の特性と技術的問題乳児期や幼児期早期の撮影には姿勢を維持するために工夫が必要である. また, 新生児から乳児期早期には胸腺が大きいため正しい評価が困難であることが少なくない. 胸腺は心基部に認められることが多いが, 心陰影を覆うほど大きいこともある. 新生児期には肺野が全体に黒く, 肺血管陰影が乏しく見える. 生後早期には肺血管抵抗が十分に低下していないことを反映している. 1197

12 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 2 検査の臨床的意義 1) 心陰影心陰影の位置, 大きさ, 形を確認できる. 通常心尖部は左下方を向いているが, 右胸心や正中心の場合がある. 全内臓逆位に伴う右胸心では心疾患の合併は少ないが, 孤立性右胸心では心疾患の合併が疑われる. 心陰影の大きさは心胸郭比で評価することが多いが, 成人に比べて新生児 乳児では大きくなり,0.6ぐらいまでは正常範囲と考えられている. しかし, 心胸郭比はあくまでも心拡大の大まかな指標であり, 心エコー検査における心内腔の計測値とは相関しない. 心疾患によっては特徴的な心陰影の型を示し, よく知られているものとしては木靴型 (Fallot 四徴症 ) や卵型 ( 完全大血管転位 ), 雪だるま型 (8 の字型, 総肺静脈還流異常で左無名静脈に還流する場合 ) がある. また, 心陰影の形によって心臓のどの部分に負荷がかかっているかを知ることができる. 大動脈を丹念に確認すれば, 右大動脈弓の診断や年長例では3の字サインから大動脈縮窄を診断することも可能である. 2) 肺血管陰影肺血管陰影から肺血流の増加や減少, うっ血を診断できる. 肺血流増加群では肺門部の肺動脈は拡張し, 肺野の末梢 1/3まで続く. 右肺動脈は気管の透亮像よりも拡大する. 3) 肺野気管や気管支の透亮像から気管狭窄や心房内臓錯位症候群が診断できる. 先天性心疾患には気管狭窄や気管軟化症の合併が少なくない. また, 気管支の分岐の角度が左右対称である場合には心房内臓錯位症候群が疑われる. 4) 内臓の位置胃泡の位置と肝臓の形態は重要で, 通常胃泡の位置と心尖の向きは同じであり, 逆になっている場合には心房内臓錯位症候群が疑われる. また, 左右対称の肝臓も心房内臓錯位症候群が疑われ, 複合心奇形が合併しやすい. 5) 骨格系脊柱側弯や脊椎の異常は心疾患に合併することがある. 脊柱側弯と指の長さ等から Marfan 症候群が疑われ, 脊椎の異常はVATER 連合が示唆される. 年長例の大動脈縮窄では拡大した肋間動脈による肋骨下部侵食像 (rib notching) が認められることがある. 3 超音波検査 ( 心エコー検査 ) 心臓内部の正確な形態診断に最も優れた診断法である. 経胸壁エコー検査だけでなく, 経食道心エコー検査や胎児心エコー検査も行われている. 1 検査の特性と技術的問題先天性心疾患の診断においては最も診断能力が高く, 診療において中心となる検査法である. 複合心奇形の診断には系統的な検査が必要で, 立体構築を捉えるために区分診断法 (segmental approach) が用いられる. 2 検査の臨床的意義 1) 形態診断断層心エコー検査により区分診断法を用いて診断する. 詳細は区分診断の項を参照されたい. 次に各弁の形態や心内腔の大きさ, 壁厚, 血管の径を測定する. 成人と異なり, 複合心奇形では心室容積や弁輪径, 血管径が小さいことの評価も重要になる. 心室中隔欠損の欠損部位や欠損孔の径の診断等では心エコー検査が最も優れている. また, 経食道心エコー検査によれば経胸壁心エコーでは観察しにくい肥満や胸郭変形等の症例での観察が可能になる. さらに経食道心エコー検査は心房中隔欠損の詳細な検討や胸部大動脈の評価, 術中や術直後の弁の観察等に有用である. 2) 血行動態診断ドップラー法により血流波形や流速を測定することで弁や血管の狭窄の程度が確認でき, カラードップラー法により短絡や弁逆流等の異常血流が捉えられる. 1 狭窄病変の評価狭窄部を通過する最大血流速度から簡易ベルヌーイ式を用いて圧較差を推定することができる ( 図 11). 2 弁逆流の評価カラードップラー法により成人と同様に行う. 3 左右短絡の評価右室流出路と左室流出路におけるパルスドップラー法による流速積分値 (time velocity integral) と流出路径からそれぞれの1 回拍出量を算出し, その比から肺 体血流量比を求めることができる. しかし, 誤差が大きいため, 欠損孔の大きさや心房 心室の拡大の程度によって評価していることが多い. 4 肺高血圧症の評価連続波ドップラー法で求めた三尖弁逆流速度から簡易ベルヌーイ式を用いて右室右房圧較差を算出し, これに 1198

13 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 図 11 肺動脈弁狭窄の心エコー図 先天性心疾患の診断に有用な検査になってきた. 高速スキャンに加え, 心拍同期スキャンが可能となったため心拍が速い新生児や乳児でも優れた画像が得られるようになった. 1 検査の特性と技術的問題 左 : 肺動脈弁のドーム形成と主肺動脈の狭窄後拡張を認める. 右 : 連続波ドップラー法により計測した狭窄部の最大血流速度 (V m/sec) から簡易ベルヌーイ式を用いて圧較差 (PG mmhg) を推定することができる. すなわち,PG=4 V 2 により算出する. 右房圧 ( 通常 10 mmhg) を加えて右室収縮期圧を求め る方法が広く使われている. 心室中隔欠損や動脈管開存では短絡血流速度から簡易ベルヌーイ式を用いて圧較差を算出し, 測定した体血圧から圧較差の差をとることで肺高血圧症の評価ができる. ただし, 欠損孔が小さい場合には短絡血流速度が低下していることがあるので注意が必要である. また, 心室短軸断面における心室中隔の湾曲を利用する方法や肺動脈弁のsystolic time integral (pre-ejection period/ejection time 比 ) から右室圧を推定する方法がある. 3) 心機能評価左室収縮機能の指標としては駆出率 (LVEF), 左室拡張機能の指標としてE/A 比, 総合した指標としてTei index が広く用いられている ( クラスⅡa).Tei index の正常値は成人と小児で多少異なる. 3 問題点 ベッドサイドで簡単に行うことができ, 多くの場合確定診断を得ることができる. 区分診断法に習熟する必要がある. 4 CT,MRI 4 列に始まったマルチスライス CT(MS-CT, 以下 3DCT) による心臓検査では 40 秒近い呼吸停止を必要と したが, 急速な技術革新により 64 列が中心となり, 小 児の心臓検査にも広く用いられるようになってきた. MRI も高速での収集が可能となり, 分解能も向上し, 心エコー検査のように限られた部位から画像を得るのではなく, 広い断面で画像を得ることができる. いずれの検査でも三次元画像を構築することが可能で, 特に我が国ではMS-CT による三次元画像診断 (3DCT) が広く行われるようになってきている. 複雑な構造物を三次元構築するためには, 疾患の十分な理解と画像処理の方法に精通することが必要である. 技術開発は急速に進んできているが, 心拍動と呼吸運動のため検査には限界があり, 十分な鎮静が必要となる. 2 検査の臨床的意義 1) 形態診断大動脈や肺動脈, 静脈の形態診断には非常に有用である. 新生児期の大動脈縮窄や総肺静脈還流異常では, 心エコー検査と3DCTの組み合わせで手術が可能である ( クラスⅡa). また, 大動脈肺動脈側副血行の三次元表示は肺動脈を再建 統合する手術に際して有用性が高い. 3DCTでは心内腔画像も臨床応用可能なレベルに向上してきている ( クラスⅡ b). 2) 機能診断機能診断ではMRI が有用である. 年長例では心エコー検査での評価が難しい右室の収縮能評価が可能であり, 弁逆流量の評価もできる.Fallot 四徴症や修正大血管転位, 心房内血流転換術後の完全大血管転位等の遠隔期の心機能評価に有用である. 3 問題点 MS-CT で三次元表示を得るためには画像の再構築が必要であり, 時間と技術的習熟が必要である. また, 3DCTでは放射線被曝が問題となる. 最近,64 列 MS-CT による生涯にわたる発癌の問題が指摘された. 小児では成人に比べて同じ放射線被曝量であっても, 感受性が高く発癌のリスクが高いことが明らかにされている. 放射線被曝量を低減させる工夫が必要であり, 検査毎にCT 装置のコンソール上に表示されるDose-length product(dlp) 値から実効線量を推定して記録していくことが必要であろう. 1199

14 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 5 心臓カテーテル検査 心血管造影検査 Ⅳ 症候別検査計画 心臓カテーテル検査 心血管造影検査は先天性心疾患の解剖を詳細に知るために最も信頼できる検査法である. 1 検査の特性と技術的問題小学生以下では鎮静が必要で, 気管内挿管を必要とすることもある. 小児では血管が細いため, 細いカテーテルを使用しなければならない. また, 乳幼児では心拍数が速いため, 撮影は高速にしなければならない. 2 検査の臨床的意義形態診断だけでなく, 重症度評価, 治療の適応決定, 手術法の決定, 手術後の評価に有用である. 左右短絡疾患における肺高血圧症では手術適応決定のために負荷試験を行い, 肺血管病変の可逆性を評価することができる. 近年, カテーテル治療が増加してきている. 3 問題点正確な診断が可能であるが, 侵襲があり, 検査に伴う種々の合併症の問題がある. 6 血液検査 先天性心疾患においても循環動態を反映する指標としてANP やBNP 値は重要である. しかし, 疾患や年齢によって上昇の程度は大きく異なるため, その評価にはその値の推移が重要になる. チアノーゼ型心疾患においては多血症があるために鉄欠乏性貧血になりやすい. ヘモグロビン値では貧血の評価は困難であり,MCV 値を参考にする. チアノーゼが残存している年長例では腎機能低下や高尿酸血症が問題となる. 利尿薬内服例や哺乳不良例では血清電解質に注意する必要がある. 1 心雑音 心疾患がなくとも心雑音を有している小児は極めて多く, その中から心疾患により生じている心雑音を鑑別し, 診断を行う必要がある. 小児で心雑音を聴取した場合, 以下の雑音との鑑別が必要となる ( 図 12). 1 無害性心雑音健常児が有している正常の心雑音であり, 注意深く小児を診察するとかなりの頻度で聴取可能である. 2 機能性心雑音発熱や甲状腺機能亢進等の心機能亢進時や貧血等の時に聴取するもので, 時に聴診のみでは心疾患との鑑別が困難なこともある. 3 器質的な心疾患を有し心雑音を有している者 1 プロセス 発熱時等に心雑音を指摘された症例は, 解熱時に再度の診察を行い心雑音が聴取されないときは機能性心雑音と判定しても問題ない場合が多い. しかし貧血症例が含まれていることもある. 無害性心雑音は小児循環器専門医の場合は聴診だけで判断できる場合も少なくない ( クラスⅡ). 臨床経験の少ない医師や, 聴診にて確証が得にくい場合には, 心エコー図検査を施行すべきと考えられる. 乳児期で発育 発達に問題がある症例や, 頻脈や多呼吸のある症例では, 心不全によりそれら症状が発生している可能性があり, 心エコー図検査も含めた精査を行うべきである. 器質的心疾患を疑う場合には, 心不全の有無や心房や心室負荷の評価を行う必要性からも, 胸部 X 線, 心電図とともに心エコー図検査を行い診断のみでなく病状全体の把握を試みる必要がある. 2 循環不全 ( 心不全 ) 新生児や乳児と, 幼児期, 学童により循環不全 ( 心不全 ) の症状は異なるために, その年齢に沿った問診や診察が必要とされる. 新生児, 乳児期の心不全は基本的には短絡性心疾患に 1200

15 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 図 12 心雑音診断フローチャート Fallot 合併する頻度が高い. 哺乳量低下や哺乳時間延長等を伴った体重増加不良, 多呼吸, 陥没呼吸, 頻脈が主に見られる症状である. 心雑音を指摘されたり, 親が心不全症状に気付き病院を受診することが多いが, 定期健診等で体重増加不良を指摘され受診することもある. 幼児の心不全は評価が難しいことが多い. 重症の心疾患では既に新生児期や乳児期に心不全を発症し治療をなされていることが多く, これらの症例よりやや軽症の病態の症例が幼児期に心不全症状を呈する可能性がある. 体重増加不良や, 心不全が基本にあると運動量等が健常児より低下するために, 運動発達の遅れや健常者に比して運動量が少ないことが症状として認められることが多い. 健診時だけでなく, 通常の診察時にも心疾患時の運動発達等に気を配る必要がある. しかし, 拡張型心筋症等のように後天性の心疾患で心不全を発症した場合は, 成人の心不全と同様の症状を呈し, 特に左心不全では当初は感冒や気管支炎等の診断 治療を受けていた後に, 胸部 X 線写真を撮影時に心拡大 から心不全の診断を受けることも少なくない. 学童期の心不全症状は比較的成人の場合に近く, 軽症のときには易疲労性がまず出現し, その後に頻脈や呼吸困難, 浮腫, 肝腫大等の症状が出現する. 就学児童や生徒であれば, 下校後の家庭での状態を聞くと, 症状の把握が有効にできることが多い. 1 検査 1 心エコー心不全の原因となる心疾患の診断や心機能評価に関しては心エコー図検査が有用であり, 最も行われている検査である. 心機能評価に関しては, 現在は収縮能の評価だけではなく拡張能の評価もある程度可能になってきている. また心拍出量の経時的変化も上行大動脈血流の速度時間積分 (VTI) を用いると定量的に評価可能となってきている. 弁狭窄や弁逆流に関しても, その程度や圧較差 心室圧の推定もかなり正確に可能となってきている. 1201

16 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 2 胸部 X 線全体的な心不全の評価に関しては胸部 X 線の心胸郭比は有用である. 抗心不全治療による心胸郭比変化も客観的に評価しやすい指標である. しかし脊柱のstraight backやロート胸があり, 心臓が前後から圧迫されている症例では心胸郭比が大きくなるために, 正面のみならず側面のX 線撮影も重要である. 3 心電図不整脈の評価のみならず, 心房や心室への負荷を評価するのに有用である. また慢性心不全症例では, 心不全の増悪により不整脈の増加を招き, 場合によっては突然死を合併する可能性がある. 4 心臓カテーテル検査近年は, 心エコー図検査の機能が向上し, 心不全の評価目的だけで心臓カテーテル検査を行うことは激減している. しかし, 虚血性の心疾患が疑われている時の冠動脈評価や, 心筋症が疑われているときの心筋生検は行われている. 5 血液検査近年, ナトリウム利尿ペプチドは心不全の程度や, 治療に対する反応を見るときに欠かせない検査となってきている. 3 チアノーゼ チアノーゼの主な原因として以下のようなものがある. 1 短絡によるチアノーゼ 1) 心内短絡 ( チアノーゼ性心疾患 ) 2) 肺内動静脈短絡 2 呼吸器疾患による低酸素症換気能の低下による低酸素血症や高炭酸ガス血症 3 多血症に伴う還元型ヘモグロビン増加による低酸素を伴わないチアノーゼこれらの診断 病態評価のために, 以下のような検査を行う. を用いた動脈血酸素飽和度の測定である. しかし, 末梢動脈拍動が微弱な症例や新生児ではときとして誤った数値を示すことがあるために注意が必要である. 高炭酸ガス血症の鑑別は動脈血ガス分析が最も有用である. 低酸素血症 高炭酸ガス血症を認めないときには血算により多血症の有無を鑑別する必要があるが, 通常は原疾患により二次的に多血症を合併することがほとんどであるために, 原疾患の診断が必要となる. 1 心内短絡 ( チアノーゼ性心疾患 ) 短絡の疾患には心エコー図検査が最も有用である. 2 肺内動静脈短絡 図 13 チアノーゼ診断フローチャート 酸素 度低 心エコー図 にて心 内 の 別 肉 チアノーゼ 酸素 度 ( 新生児であれば上下 を ) 胸部レント ン呼吸器疾患の 別 心エコー図 にて心 内 を認めないときは, コントラストエコーもしくは肺血流 ンチ ラフ にて肺内 の 別 酸素 度正常血 により多血の有無をチ ック, 血中 CO2 を血ガス分 でチ ック 肺内動静脈短絡が疑われるときには, コントラストエコーによりコントラストが左房まで到達するかの鑑別が簡便である. 肺血流シンチを用いても鑑別が可能であり, さらに短絡血流量の推定も可能である. 1 検査 ( 図 13) 最も容易な低酸素血症の鑑別はパルスオキシメーター 1202

17 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 各 論 Ⅴ 疾患別検査計画 2 診断のための検査 ( 図 15) 1 聴診 1 心室中隔欠損 (ventricular septal defect:vsd) 1 解剖 病態生理 欠損口を膜性周囲部 (perimembranous), 筋性部 (muscular) および肺動脈弁下部 (subarterial) に分類す ることが汎用されている ( 図 14). 心室中隔欠損に起因する体循環から肺循環への左右短絡量の決定因子は,⑴ 欠損孔サイズ,⑵ 体循環抵抗,⑶ 肺循環抵抗である. 短絡量が増加すると左心室への容量負荷が増大して左室拡張末期圧の上昇, 左房圧上昇, 肺静脈圧上昇へと伸展し肺血管抵抗の増大による肺高血圧を惹起する. 肺血管床の閉塞性病変が進行すると, 肺血管抵抗が体血管抵抗を凌駕して欠損孔を通して右左短絡を生じる (Eisenmenger 症候群 ). 図 14 心室中隔欠損口の部位による分類 小児期に全収縮期雑音を聴取すれば, 心室中隔欠損を念頭において精査する. 2 心エコー肺動脈弁下欠損は大動脈基部短軸, 右室流出路短軸 - 長軸断面で, 大動脈弁逸脱は左室長軸断面で観察する. 傍膜様部欠損は大動脈基部短軸断面, 僧帽弁レベルの左室短軸, 四腔断面で観察し, 欠損の進展方向も診断する. 3 心臓カテーテル検査右心室から肺動脈での酸素飽和度上昇を認めるが, 肺高血圧が高度であるとその上昇は軽微である. 3 病態把握のための検査 ( 図 15) 1 聴診軽症では全収縮期雑音のみを聴取し, 中等度以上 ( およそQp/Qs >2.0) になると, 全収縮期雑音に加えて心尖部で拡張期ランブルを聴取する. 肺高血圧が高度になると雑音は収縮期全体では聴取されなくなりⅡ 音は亢進とともに単一化する.Eisenmenger 化すると収縮期雑音を聴取しないことがある. 2 胸部 X 線 心電図 胸部 X 線では左心系の容量負荷により心拡大を認め, 中等症以上では心拡大に加えて肺血管陰影の増強から肺うっ血像を認める.Eisenmenger 化すると心胸郭比は正常化するが, 肺動脈末梢部陰影は減少する. 心電図では左心室容量負荷により左室肥大所見を認める. 肺高血圧の進行により両室肥大所見を認めるようになる.Eisenmenger 化すると右胸部誘導でストレイン型の陰性 T 波を伴う高度の右室肥大所見を呈するようになる. 1 膜性周囲部 流入部 2 肉柱部 3 流出部 4 筋性部 流入部 5 肉柱部 6 流出部 7 肺動脈弁下 3 心エコー左心房, 左心室の拡大が明らかな場合は中等度以上の短絡と判断され, 僧帽弁輪が伸展 拡大するとカラードップラーで僧帽弁閉鎖不全が確認される. 連続波ドップラー法により短絡血流から左心室 - 右心室圧較差を, 三 1203

18 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 図 15 心室中隔欠損に対する診断 病態把握 治療計画のための検査 診で全収縮期 の 心エコー VSD(+) VSD( ) 肺動脈弁下欠損 (+) 大動脈弁 逆流 肺動脈弁下欠損 ( ) 欠損 径 側 僧帽弁閉鎖不全などさらに (+) ( ) ドプラ法により右室の圧 定 高度増加 中等度増加 正常 ~ 度増加 胸部 X : 心拡大, 肺血管陰影増強心電図 : 左室肥大, 右室肥大 (+) ( ) 肺動脈高血流 低抵抗 心臓 テーテル 肺動脈低血流 高抵抗 酸素負荷 肺血管抵抗低下 肺血管抵抗変化なし 術 内 治療 いずれも に る 尖弁逆流から右心室 - 右心房圧力較差を算出し, 右心室圧を推定する. 肺動脈弁下欠損で大動脈弁の変形を伴っている場合は, カラードップラー法により大動脈弁逆流の有無を検索する. 4 心臓カテーテル検査肺動脈血圧が体血圧と同レベルにあり肺体血流比が 2.0を下回る場合, 肺血管抵抗が8 単位 m 2 を超える場 合は, 酸素投与, 一酸化窒素投与により肺血管の反応性を判定する必要がある ( クラスⅠ). 肺動脈内への血管拡張薬 ( トラゾリン,PGI 2 等 ) 投与も有用である. 4 治療選択のための検査 ( 図 15) 1 聴診全収縮期雑音に加えて,Ⅱ 音亢進, 拡張期ランブルを 1204

19 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 聴取すれば, 肺体血流比が2.0を超えている可能性が高く, 外科的治療を考慮する.Ⅱ 音が亢進し収縮期雑音が乏しく拡張期ランブルも聴取しない場合はEisenmenger 化の可能性が高く, 手術適応の検討は慎重に行う必要がある. 場合は, 上 下大静脈洞欠損を検索する. 冠静脈洞欠損では,unroofed coronary sinus を伴うことがあり, コントラストエコーによる確認が必要である. 部分肺静脈還流異常の合併 ( 特に静脈洞欠損の場合 ) も考慮して検索する. 2 胸部 X 線 心電図 胸部 X 線で心拡大と肺血管陰影増強があり, 心電図で左室肥大あるいは両室肥大所見を認めたら手術を前提に心エコーやカテーテル検査を行う ( クラスⅠ). 3 心エコー 5mm 以上の欠損, 左心室拡大, 少ない左室 - 右室圧較差, 三尖弁逆流から推定される右心室圧の上昇等では外科的治療適応がある. 肺動脈弁下欠損で大動脈弁逆流を伴えば手術適応があるが, 逆流の有無にかかわらず肺動脈弁下欠損はすべて手術適応とする意見もある. 4 心臓カテーテル検査 肺体血流比が 2.0 を超える場合は治療対象となる. 高度肺高血圧の場合, 酸素負荷あるいは薬物負荷で肺血管床の反応性があれば手術適応がある. 2 心房中隔欠損 (atrial septal defect:asd) 図 16 心房中隔欠損に対する診断 病態把握 治療計画のための検査 学童心臓検診の流れに沿ったフローチャート 心臓 診 心電図 心エコー 診 ASD(+) 不完全右脚ブロック 1 度房室ブロック ( 出性 ) 収縮期 に加 て拡張期ランブル,Ⅱ 定性分 を認めた場合, 中等度以上の左右 である ASD の可能性が高いと て を進める ASD( ) 胸部 X 線 CTR>55%, 肺血管陰影増強 (+) 部分肺静脈還流異常の PAPVR (+) ( ) PAPVR ( ) 1 解剖 病態生理 欠損孔を介する左右短絡の量は左右心室のコンプライアンスの比率で決定され, 成長に伴う右心室コンプライアンスの増大により短絡量は増加する. 肺血管の閉塞性病変が進行するのは20 歳代以後であることが多い. 2 診断のための検査 ( 図 16) 1 聴診 (+) 心エコー RA,RV 拡大心室中隔の奇異性運動 ( ) 中等度以上の肺高血圧が疑われる場合欠損 イ と右室拡大の間に 離がある 心臓カテーテル検査 p/ s 1 5 左右短絡量が中等度以上になると, 駆出性収縮期雑音と,Ⅱ 音の固定性分裂を聴取する. 短絡量の増加 ( およそQp/Qs >2.0) のため相対的三尖弁狭窄を生じた場合は胸骨左縁下部で拡張期ランブルを聴取する. 2 心エコー二次孔欠損は四腔断層像で診断し, 心房中隔に欠損を認めないにもかかわらず, 右心房 右心室の拡大が強い (+) 治療 外 治療 テーテル治療 ( ) ト ックス テーテル治療 (Amplatzer Septal Occluder) に する心エコー診断 : 欠損 が イスの 定に必要な状態であるか することと, 必要な イス イ を 定するために, 胸壁心エコーとともに 心エコーを用いる. 1205

20 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 3 心臓カテーテル検査上大静脈または下大静脈での酸素飽和度上昇は部分肺静脈還流異常を示唆する ( クラスⅡ). 左右の肺動脈造影で異常な肺静脈還流を診断する. 4MRI 3DCT 部分肺静脈還流異常の診断に有用である. 欠損部位の診断にはMRI が有用である. 3 病態把握のための検査 ( 図 16) 1 胸部 X 線 心電図胸部 X 線では右心系の容量負荷による心拡大と, 肺動脈拡大による左第 2 弓の拡大を認める. 心電図では右心室容量負荷によりV 1 誘導でrSr,rsR パターンと右心房負荷による軽度の1 度房室ブロックを認めることがある. 2 心エコー右心室への拡張期容量負荷が生じ,M モードで心室中隔の奇異性運動を認める. 右心房 右心室拡大による三尖弁逆流が生じ, ドップラー法による右心室 右心房圧較差を概算する ( クラスⅡ). パルスドップラー法を用いて算出した肺体血流比は心臓カテーテル検査による値と比較的よく相関する. 3 心臓カテーテル検査高度肺高血圧を認めた場合, 酸素投与, 肺動脈内への血管拡張薬 ( アデノシン等 ) 投与により肺血管の反応性を判定する ( クラスⅠ). 4MRI Phase-contrast cine MRI(PC-MRI) により肺体血流比を算出可能である ( クラスⅡa). 4 治療選択のための検査 ( 図 16) 1 胸部 X 線 心電図心拡大および肺血管陰影増強がなく, 心電図も正常であれば通常治療適応はないが, 聴診上拡張期ランブルを聴取する場合は, 心エコーやカテーテル所見を参考にした上で治療適応を考慮する必要がある ( クラスⅡa). 2 心エコー 5mm 以上の欠損, 心室中隔の奇異性運動, 三尖弁逆流から推定される右心室圧の上昇がみられる場合等では外科的治療適応がある. 3 心臓カテーテル検査 肺体血流比が1.5を超える場合は治療対象となる. 最近のカテーテル治療の普及により肺体血流比が1.5 以下でも閉鎖治療が行われることがある. 4MRI 3DCT いずれの検査法も形態的に肺静脈の還流部位を検索するために有用である. 5 成人期心房中隔欠損 欠損孔が比較的小さくても加齢, 虚血性心疾患, 後天性弁膜異常, 高血圧等による左室壁コンプライアンスの低下が左右短絡量の増加を誘導して右心系容量負荷が進行する. 心房粗 細動の際には, 右心房拡大とともに心房中隔欠損の存在を検討する必要がある. 末梢あるいは骨盤静脈血栓等を原因とした脳血栓 ( 奇異性血栓 ) の発症は, 小さな心房中隔欠損でも生じ得るので精査する必要がある ( クラスⅠ). 成人期では欠損孔, 部分肺静脈還流異常, 心房内血栓の診断には経食道心エコー (TEE) が有用である ( クラスⅡa). 3 房室中隔欠損 (atrioventricular septal defect:avsd) 1 解剖 病態生理 房室中隔欠損 ( または心内膜床欠損症 ) は房室膜性中隔および房室筋性中隔の組織欠損で, 一側または両側の房室弁の異常を伴う. 不完全型は心房中隔一次孔欠損のみで心室間交通を伴わないもので, 完全型は両心房, 両心室間の交通と共通房室間孔が存在するものをいう. 房室弁尖の形態と心室中隔上に位置する弁の腱索の付着部位によりA,B,Cの3つに分類される (Rastelli 分類, 成書参照, 図 17) 左心室流出路が2つの房室弁の間に楔入せず前方に偏位するため, 左心室流出路が伸展かつ狭窄する. また, この楔入の喪失により両側の房室弁の位置が同じ高さになる. 1206

21 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 乳頭筋 正常 完全型 Ao AB A Ao 図 17 Rastelli 分類不完全型 Ao AB A SL IL Ao 心室中隔 Ao AB A する. 3 病態把握のための検査 ( 図 18) AVSD の病態把握のためには, 心房 心室への容量負荷の程度, 肺血流量増加と肺高血圧の程度を検討できる情報が必要である. 1 聴診 Rastelli A 型 Rastelli B 型 Rastelli C 型 SL:superior leaflet,il:inferior leaflet,ab:anterior bridging leaflet,a:anterior leaflet,pb:posterior bridging leaflet 矢印はanterior bridging leaflet( 共通前先 ) からの腱索 2 診断のための検査 ( 図 18) 1 聴診 PB 一次孔欠損単独の場合は心房中隔二次孔欠損と同様な聴診所見. 中等度以上の僧帽弁逆流を伴っている場合は汎収縮期雑音を聴取する. 完全型の場合はそれぞれの形態異常の違いにより様々な聴診所見となる. 2 胸部 X 線 心電図 胸部 X 線検査では心拡大, 肺動脈拡張, 肺血管陰影増強を認める. 心電図は房室結節を含む刺激伝導系の後下方偏位による左軸偏位,PQ 間隔延長, 右室容量負荷による不完全右脚ブロックパターンを示す. 3 心エコー AVSD は心房 心室間交通, 房室弁逆流が複合した疾患で, 心エコーは診断上最も重要な検査である. まず1 次孔欠損の有無, 心室中隔欠損と房室弁の形態を精査する. 房室中隔欠損が存在するなら基本的には三尖弁と僧帽弁は同じ高さにあり, 左側房室弁に裂隙が存在する. Rastelli 分類を行うには胸骨下からの短軸像と四腔像が有用である. 共通前尖の裂隙, 腱索の心室中隔付着の有無, 両心室のバランス, 左室流出路狭窄の有無を検索する. カラードップラー法により房室弁逆流の有無と逆流部位を確認する. 4 心臓カテーテル検査 心室中隔流入部欠損 (scooping) のため左心室造影では流入路より流出路が長くなり, いわゆるgoose neck 像が特徴である. 左室造影, 右室造影で房室弁逆流を評価 PB PB 短絡量の増加により拡張期ランブルを聴取する.Ⅱ 音は固定性に分裂するが, 肺高血圧が高度になると間隔は短くなりⅡpが亢進する. 2 胸部 X 線胸部 X 線では心拡大に加えて肺血管陰影の増強から肺うっ血像を認める.Eisenmenger 化すると中枢肺動脈拡大による気管支圧迫のため両肺は過膨張となり肺動脈末梢部陰影は減少する. 3 心エコー Rastelli A 型はC 型に比べて左室流出路が細いため, 肺血流量が多くなり肺血管病変の進行が早い. 病態把握のための心エコー検査のポイントは,⑴ 心房位, 心室位での短絡方向,⑵ 房室弁輪, 両心室のバランス ( 弁輪から心尖部間での距離 ),⑶ 房室弁逆流の程度と部位,⑷ 両心室間圧較差,⑸ 左室流出路狭窄の程度等である. 4 心臓カテーテル検査肺血管抵抗が8 単位 m 2 を超える場合は, 酸素投与, 一酸化窒素投与, 肺動脈内への血管拡張薬投与により肺血管の反応性を判定する ( クラスⅡa). 右心室 左心室造影を行って房室弁逆流の程度および心室容積を評価する. 左心室造影では流出路狭窄の程度も評価する. 4 治療選択のための検査 ( 図 18) 1 心エコー房室弁逆流の部位と程度を検討する. 完全型の場合, 共通房室弁の逆流部位が心室中隔直上領域からであればパッチ逢着部分となるので術後逆流の心配は少ない. 心房中隔と心室中隔が異常配列である場合は, 房室結節の位置異常に注意を要する. 左室乳頭筋間距離が短い場合は, 修復の際に弁口狭窄となる危険性が高くなる. 弁口が1つの心室に偏った場合はしばしば高度の片側心室低形成が生じることがあり, この場合 2 心室修復が困難となる. 房室弁, 弁輪部の低形成があればまず肺動 1207

22 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 図 18 房室中隔欠損に対する診断 病態把握 治療計画のための検査 Rastelli ASD 脈絞扼術を行い, 右心室バイパス手術 (Fontan 型手術 ) の適応を考慮する. 2 心臓カテーテル検査高度肺高血圧の場合, 酸素負荷あるいは薬物負荷で肺血管床の反応性があれば手術適応がある. 完全型の場合, 心室造影により各心室容積の比較, 房室弁逆流の評価, 左室流出路狭窄の評価を行うことにより手術方針を決定 する ( クラス Ⅰ). 4 動脈管開存 (patent ductus arteriosus:pda) 1 解剖 病態生理 動脈管は正常新生児では出生後 1~2 日で収縮して血 1208

23 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 行が途絶し, 生後 2~3 週で器質的閉鎖に至る. 閉鎖せず開いたままの状態のものを動脈管開存と呼ぶ. 高度の肺高血圧を合併する場合と細く心雑音のない場合を除き, 感染性心内膜 血管内膜炎の予防, 左心系の容量負荷の解除を目的として治療適応となる. 2 診断のための検査 ( 図 19) 1 聴診胸骨左縁第 2 肋間に最強点がありⅡ 音に一致してピークのある連続性雑音を聴取する. 肺高血圧を合併すると拡張期雑音は減弱し,Ⅱ 音の亢進が見られるようになり, 肺高血圧が進行し肺血管抵抗が著しく上昇した場合には収縮期雑音も減弱して肺動脈弁逆流による拡張期雑音を聴取する. 2 胸部 X 線 心電図細い動脈管開存では胸部 X 線, 心電図ともに正常である. 左右短絡量が増加すると上行大動脈の拡大, 肺動脈の拡大, 左室拡大による心陰影の拡大が見られ, 肺動脈陰影の増強が認められる. 心電図では左側胸部誘導にR 波の増高を認め, 左房負荷所見が見られる. 3 心エコー経胸壁エコーによって主肺動脈と下行大動脈間に動脈管が描出される. カラードップラー法では動脈管から主肺動脈へ向かう連続性モザイク像が検出される. 年長児や成人では経胸壁エコーでの動脈管の直接描出は困難な場合があり, 経食道エコーが必要になる場合がある ( クラスⅡa). 4 心臓カテーテル検査心臓カテーテル検査では右室 - 肺動脈 - 下行大動脈にカテーテルが通過する. 主肺動脈で酸素飽和度の上昇が見られる. 大動脈造影では動脈管から肺動脈が造影される. 53D-CT MRI 診断とともに動脈管の形態評価に有用である. 3 病態把握のための検査 ( 図 19) 1 酸素飽和度測定の上下肢差測定 肺高血圧を合併し Eisenmenger 化すると右左短絡が主 体になり下肢の酸素飽和度が上肢に比べて低値となる. 2 聴診 胸部 X 線 心電図 左右短絡量が多いと心尖部に拡張期ランブルを聴取する. 胸部 X 線にて心拡大, 肺血流増加所見, 左第 2 弓の突出の見られる場合には中等以上の左右短絡の存在が示唆される ( クラスⅠ). 3 心エコー 左右短絡量の増大に伴い左心系の負荷による左房, 左室内径の拡大, 上行大動脈径の増大が見られる. 下行大動脈 腹部大動脈では大動脈から肺動脈への引き込み血流による拡張期逆流が見られる. 左室はhyperdynamic な収縮像を呈する. 肺高血圧を伴うと動脈管内の収縮期血流速が減弱する. 図 19 動脈管開存 ( まとめのフローチャート ) 最小径 2.5mm コイル塞栓術 心, 所見 肺高血圧なし 心エコー 最小径 >2.5mm 肺高血圧あり 心臓 テーテル 性 脈圧増大下 チアノーゼ 外 術 Silent PDA Eisenmenger 症候群 最小径 >4mm 形態 (AP window 型等 ) 動脈管の形態と太さで治療法を選択する. 形態評価が心エコーで困難な場合には, 造影 CT あるいは MRI を行って形態評価を行う必要がある ( クラス Ⅱa). 最小径 2.5~4mm では形態によってコイル塞栓術が選択される場合がある. なお, 平成 21 年 7 月から動脈管 2mm 以上 12mm 以下, かつ肺血管抵抗 8 単位未満または肺体血管抵抗比 (Rp/Rs)0.4 未満の例では動脈管専用閉塞栓の保険治療が認可された. 1209

24 PDA 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) Eisenmenger 化すると主肺動脈は拡張し, カラードップラー法で動脈管から大動脈への右左短絡が観察される. 4 心臓カテーテル検査 心血管造影短絡量の算出には左右肺動脈の酸素飽和度が用いられるが, 右に比して左肺動脈の血流が増加している場合が多く正確な算出は困難である. 大動脈造影では動脈管から主肺動脈が造影される. 4 治療選択のための検査 ( 図 19) 1 聴診連続性雑音の見られる場合は治療適応がある. 収縮期雑音のみの場合や心雑音がなく右左短絡を伴う場合は治療適応の検討に心臓カテーテル検査による肺血管抵抗の評価が必要である. 細い動脈管で心雑音のない場合 (silent PDA) の治療適応については統一した見解は得られていない. 2 胸部 X 線 心電図高齢者では瘤形成や動脈管に一致した石灰化像が見られる場合がある. 心電図にて右室肥大を呈する場合は肺高血圧の合併が疑われる. 3 心エコー動脈管の太さ ( 内径 ), 長さ等によって治療法が異なるため形態評価が重要である. 最小内径が2.5mm 以下の場合には経皮的コイル塞栓術が第一選択となる. 狭窄部がない筒型や最小径が4mm 以上の場合にはコイル塞 栓術が困難なことが多い. 瘤形成を伴う場合や非常に短いwindow タイプではステント グラフト内挿術や外科手術が選択される ( クラスⅡ a). 4 心臓カテーテル検査 心血管造影 カテーテル治療を前提とする場合や肺高血圧の評価が必要な場合に施行される. 右左短絡が主体で高度の肺高血圧が見られる場合には治療適応がない. 53DCT MRI 造影 CTならびにMR angiographyでは動脈管が複雑な形態の場合や気管, 気管支, 大動脈弓等との空間的位置関係の診断に有用である. 5 大動脈縮窄 大動脈弓離断複合 (coarctation of aorta: CoA, interruption of aortic arch: IAA) 1 解剖 病態生理 大動脈弓と下行大動脈の移行部に生じた狭窄を大動脈縮窄, 弓部から大動脈弓峡部までの一部が欠損したものを大動脈弓離断という. 単独例と合併心疾患がある複合型とがある. 離断では単独例は極めてまれで, 病型分類にはCeloria-Pattonの分類 ( 図 20) が用いられている. 縮窄複合 離断では肺高血圧を合併し, 下半身への血流は動脈管開存から供給され下肢の酸素飽和度の低下を認める. 新生児期では動脈管の閉鎖によって動脈管での右左短絡が途絶するとショックに至る. A 型 図 20 大動脈弓離断の分類 (Celoria-Patton 分類 ) 右鎖 下動脈 B 型 C 型 PDA PDA 右総 動脈左総 動脈左総 動脈右総 動脈左総 動脈 左鎖 下動脈 左鎖 下動脈 1210

25 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 2 診断のための検査 ( 図 21) 1 理学所見, 聴診 上半身の高血圧があり, 下肢の脈拍の減弱が見られる場合には縮窄が疑われる. 胸骨左縁および左側背部に収縮期雑音あるいは連続性雑音を聴取する. 2 胸部 X 線, 心電図 単純型縮窄では加齢により左室肥大が見られる. 成人期の単純型では拡張した鎖骨下動脈, 下行大動脈, 縮窄部で形成される3の字陰影 (figure 3 sign) や肋骨下部侵食像 (rib notching) が見られる場合がある. 3 心エコー 大動脈弓部矢状断面で大動脈弓部の限局性狭窄や途絶が見られる. 縮窄ではカラードップラー法では狭窄部に一致してモザイクパターンが観察され, 腹部大動脈ではパルスドップラー法によって収縮期の上行脚と拡張期の 図 21 大動脈縮窄 離断複合 ( まとめのフローチャート ) ック ( ) 心 心エコー 高血圧心拡大心不全 ック (+) 下行脚ともになだらかで, そのまま収縮期に移行する特徴的な血流パターンが観察される. 43DCT MRI 心臓カテーテル検査とは異なり大動脈の全体像や立体構造の把握に優れている. MRI は壁構造や造影剤を用いずに内腔情報が得られる利点がある. 3 病態把握のための検査 ( 図 21) 1 理学所見 胸部 X 線 心電図発達した側副血行や複合型で大きな肺動脈大動脈間の短絡を伴う場合には上下肢の血圧差を示さない場合がある. 複合例で左右短絡による左房, 左室, 主肺動脈の拡大と肺血流の増加所見が見られる. 心電図は心負荷に応じて左室肥大, 両室肥大が見られる. 2 心エコー複合例では合併する心室中隔欠損, 大血管転位, 大動脈肺動脈中隔欠損, 大動脈弁ならびに弁下部狭窄等が診断できる. 短絡がある場合には収縮期血流速の測定により肺高血圧の有無が診断できる. 4 治療選択のための検査 ( 図 21) 1 血圧年齢に関係なく上肢の高血圧を伴う場合は治療適応である. 2 心エコー 動脈管狭窄 動脈管開存 新生児例では心エコーによる迅速診断が予後を決定する. ショック時に動脈管閉鎖を伴う場合はプロスタグラ プロスタ ラン ン E1 療法 ンジン E 1 療法の緊急的開始が必要である. 太い動脈管 開存が見られる場合はプロスタグランジン E 1 や酸素の 単 型 造影 CT MRI 合型 投与は禁忌で, 過換気を避け高 PEEPを用いた人工呼吸療法によるショックからの離脱と外科手術の早期施行が必要である ( クラスⅡa). 心臓 テーテル 3 心臓カテーテル検査 テーテル治療 単 型では高血圧あるいは上 下 血圧 20mmHg 以上が治療適 外 術 ックを合併する新生児 合型では ック離 後に やかに外 治療 診断とともに治療を目的にも行われている. 単純型縮窄では圧較差 20mmHg 以上が治療適応である. 治療にはバルーン拡大術, ステント留置術, カバードステント留置術, 外科手術が行われている. 大動脈解 1211

26 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 離の合併や遠隔期の瘤形成等のリスクを考慮して治療法が選択されている. 複合型では外科治療が第一選択である. 6 大動脈狭窄 閉鎖不全 (aortic stenosis: AS, aortic regurgitation: AR) 1 解剖 病態生理 狭窄性病変には弁性, 弁下部, 弁上部狭窄がある. 弁性狭窄は交連部の癒合と弁尖数の異常による. 二尖弁の約半数ではraphe( 縫線 ) を認める. 弁下部狭窄は膜性狭窄と全周性の線維筋性狭窄に分類される. 弁上狭窄は Williams 症候群に見られることが多く, 時計型, 膜型, 低形成型, 砂時計型が見られる. 大動脈狭窄では後負荷増大による求心性左室肥大を伴う. 弁および弁下部狭窄は進行性のことが多い. 重症例では左室圧の上昇により心内膜下虚血が生じ収縮性が低下し左室腔が拡大し心不全を呈する. 閉鎖不全では左室容積の増大や左室仕事量の増大により遠心性肥大が見られる. 2 診断のための検査 ( 図 22) 1 聴診 胸部 X 線 心電図 狭窄性病変では頚部に放散する胸骨右縁に駆出性収縮期雑音を聴取する. 閉鎖不全では拡張期早期に吹鳴性拡張性雑音を聴取する. 弁狭窄では収縮期駆出性クリックを聴取するが, 弁上ならびに弁下狭窄では聴取しない. 胸部 X 線は軽症例では正常のことが多い. 重症例では心拡大, 左房, 上行大動脈の拡大が見られる. 心電図は軽症例では正常である. 重症狭窄例では左室肥大所見を示すが, 必ずしも重症度と一致しない. 閉鎖不全では心拡大, 左側胸部誘導のR 波の増高が見られる. 2 心エコー 弁狭窄では大動脈弁の肥厚, 可動性の制限, 収縮期のドーム形成, 左室弁下部構造, 弁輪径が評価できる. また弁尖の逸脱 変形の有無, 上行大動脈拡大等が診断できる. 閉鎖不全では下垂, 穿孔, 心室中隔欠損流出路欠損への逸脱による右室方向へのバルサルバ洞の変形等の有無が診断される. カラードップラー法では狭窄部にモザイクパターンと流速の加速が, 閉鎖不全では閉鎖不全部に一致して左室方向への逆流シグナルが検出できる. 3 病態把握のための検査 ( 図 22) 1 胸部 X 線 心電図心負荷が強いと左室拡大が進行し心拡大が見られる. 左房圧が上昇すると肺静脈のうっ血像が見られるようになる. 心電図上, 左側胸部誘導のST 低下, 陰性 T 波を呈する場合には中等症以上の病変を示唆する. 運動負荷にて ST 低下やST-T 変化が見られる場合は, 弁狭窄では圧較差が中等症以上であることが多い. 2 心エコー狭窄に伴う左室収縮期圧の推定にはGlanzらの式 [ 左室収縮期圧 (mmhg)=225 ( 収縮末期後壁厚 )/( 収縮末期内径 )] が用いられる. 左室大動脈間の瞬時収縮期圧較差は連続波ドップラー法によって弁口通過血流の流速から簡易ベルヌーイ式 [ 圧較差 (mmhg)=4 最大流速 (m/sec) 2 ] を用いて推定される. ただし, 弁下ならびに弁上狭窄では流速から推定される圧較差は過大評価されることが多い. 閉鎖不全の評価にはカラードップラー法による逆流ジェットの到達範囲, 面積, 左室流出路と逆流の幅の比, 連続波ドップラー法による逆流速波形の pressure halftime 等が有用である ( クラスⅠ). 3 心臓カテーテル検査左室 - 大動脈間引き抜き圧記録によって狭窄部に一致して圧較差が見られる. 心拍出量, 心拍数, 駆出時間から求めた収縮期血流量, 左室 - 大動脈間平均圧較差によってGorlinの式を用いて弁口面積を算出する. 閉鎖不全の重症度分類には大動脈造影によるSellers 分類が用られる. 4 治療選択のための検査 ( 図 22) 狭窄性病変では圧較差によらず心不全, 失神, 狭心痛等のある場合には治療適応である. 逆流では有症状, 著明な心拡大, 心機能低下等がある場合が手術適応となる. 1 心エコー弁尖の肥厚, 石灰化が高度の場合に経胸壁エコーでは評価が困難な場合は経食道心エコーが有用な検査である 1212

27 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 図 22 大動脈狭窄 閉鎖不全 ( まとめのフローチャート ) ST X ST ST 50mmHg 50mmHg 50mmHg 50mmHg 75mmHg ( クラスⅡb). 小児例の弁性狭窄では三尖構造で閉鎖不全のない場合にはバルーン形成術が第一選択となるため術前の弁形態と逆流の評価が極めて重要である. 弁下部および弁上狭窄では外科治療が第一選択となる. 2 心臓カテーテル検査血行動態診断や治療適応のための定性ならびに定量評価とカテーテル治療を目的として施行されている. 我が国では, 圧較差 75mmHg 以上, 弁口面積 0.5cm 2 / m 2 以下, 左室収縮不全が見られる場合は治療の絶対適応とされ, 圧較差 50~70mmHg, 弁口面積 0.5~0.8 cm 2 /m 2 では運動制限を行い症状の有無, 経年変化を考慮して治療時期を決定することが勧められており, ACC/AHA のガイドラインでは, 有症状時, 境界域の圧較差や臨床症状と心エコー所見に乖離が認められる場合には検査の施行が推奨されている. 弁下部, 弁上狭窄では圧較差 50mmHg 以上が治療適応となる. 弁置換やRoss 手術を考慮する場合は冠動脈造影を行い冠動脈奇形や走行を評価する. 33DCT,MRI 大動脈の著しい拡大や胸痛や背部痛と心エコー検査により大動脈解離の疑われる場合には手術法の選択のために施行する ( クラスⅡa). 1213

28 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 7 肺動脈狭窄 (pulmonary stenosis: PS) 1 解剖, 病態生理 右室流出路 ( 肺動脈弁下 ), 肺動脈弁, 肺動脈弁上から肺動脈末梢に至る狭窄を総称して肺動脈狭窄と呼ぶ. 肺動脈弁狭窄が最も多い. 肺動脈自体の狭窄は, 弁の直上から末梢に至るどの部分でも発生しうる. 肺動脈狭窄の程度に応じて右室圧は上昇し, 狭窄部で圧差を認める. 2 診断 病態把握のための検査 ( 図 23) 1 聴診聴診で左第 2 肋間に駆出性心雑音と収縮期クリックを認める. 2 胸部 X 線, 心電図心電図で右軸偏位, 右室肥大を認める.R 波が高く, T 波陽性なら中等度狭窄,T 波陰性でストレイン型なら重症狭窄を示唆する. 胸部 X 線では左第 2 弓突出を認める. 3 心エコー心エコーでは右室流出路 ( 肺動脈弁下 ), 肺動脈弁, 肺動脈弁上から分枝部までの解剖学的狭窄を描出でき る. 肺動脈弁狭窄では肺動脈弁のドーム形成を認める. 狭窄部での血流の加速を認める. 狭窄部の最大流速 V (m/sec) から, 圧較差を推定する. 三尖弁逆流がある場合にはその流速から右室圧の上昇を推定できる ( クラス Ⅰ). 4 心臓カテーテル検査心臓カテーテル検査は病態診断とともに治療の目的で施行されることが多い. 53DCT,MRI 3DCTやMRI により肺動脈末梢狭窄の有無が描出できる. 特に3DCTは肺動脈末梢狭窄の描出に有用である. 6 肺血流シンチグラム左右の肺の血流分布から肺動脈末梢狭窄の有無が推定できる. 3 治療選択のための検査 ( 図 23) 治療の選択は, 無治療 ( 経過観察 ), カテーテル治療, 手術の3つである. 軽症の場合には, 治療は必要でなく, 運動制限も必要ない. 1 心エコー心エコーは治療の選択上, 最も有用な情報を与える. 肺動脈弁での圧較差が40mmHg 以上は治療の適応である ( クラスⅠ).30mmHg 未満は軽症で治療の適応とならない ( クラスⅡa).30~40mmHgの間はいまだ議論 図 23 肺動脈弁狭窄の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 新生児 乳児期早期 生後 6 か月以 心エコーによる圧 30mmHg 未満 30~40mmHg 40mmHg 以上 心エコー ECG RVp>LVp RVp<LVp 右室肥大 ( ) 右室肥大 (+) テーテル治療 無 有 テーテル治療 / 術 術 1214

29 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン のあるところである. 肺動脈弁下狭窄と弁上 ( 主肺動脈 ) 狭窄はカテーテル治療の適応とならない. 小児期以後で右室圧が50mmHg 以下の場合には, 狭窄は軽症と考えられる ( クラスⅠ). 2 心臓カテーテル検査 右室圧と狭窄部圧差から重症度を決定し, 心血管造影による狭窄部位から治療法を選択する. 中等症以上の弁狭窄に対しては, ほとんどの場合カテーテル治療で治療される. 年齢は6か月以降に施行されることが多いが, 重症例ではそれより早期でも行われる. 中等度の狭窄であれば1~5 歳が最適年齢である. 高齢者でもカテーテル治療は可能で, 小児から成人, 高齢者まで年齢制限はない ( クラスⅠ). 8 Ebstein 病 (Ebstein anomaly) 1 解剖, 病態生理 三尖弁, 特に中隔尖と後尖が右室側にずれて, 内壁に貼り付いた状態 (plastering) となっている. 様々な程度の右心不全を来たす. 卵円孔開存や心房中隔欠損があると右 - 左短絡を来たし, チアノーゼを認める. 軽症の場合には, 一生気づかれずに, 剖検で偶然見つかることもある. および収縮期雑音を聴取することがある. 2 胸部 X 線, 心電図 心電図では, 低電位の右脚ブロックを示すことが多い. 胸部 X 線では様々な程度の心拡大を認めるが, 心拡大 は右房の拡大を示唆し, より重症であることを示す. 3 心エコー 心エコーは本症の診断に非常に有用である. 三尖弁中隔尖, 後尖のplasteringや, 大きな前尖を認める. 右房は拡大している. 4 心臓カテーテル検査 診断のために心臓カテーテル検査をする必要はないが, 病態把握のために有用なことがある. 心拍出量, 右 - 左短絡量, 機能的右室の大きさや収縮機能を把握する上で有用である ( クラスⅡ a). 53DCT,MRI MRI により三尖弁のplasteringが診断できる. 肺動脈の低形成を疑うときはMRI やCTを行えば肺動脈形態を診断できる. 図 25 Ebstein 病の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 ( 幼児期以降 ) (+) 心臓 テーテル 肺動脈低形成 2 1 聴診 診断 病態把握のための検査 ( 図 24, 図 25) 聴診で Ⅲ 音,Ⅳ 音の亢進による 3 部調律,4 部調律, 図 24 Ebstein 病の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 ( 新生児 乳児期早期 ) 高度低酸素血症 (+) 右左 ( ) 胸部 X 心内 復術 Glenn 術 心拡大 ( ) 心拡大 (+) ( ) 心臓 テーテル (+) 内 治療 術 Glenn 術 低心拍出 (+) 低心拍出 ( ) (+) 心エコー ( ) ECG ( ) WPW 症候群 (+) 心内 復術 Ebstein 病 (+) 肺動脈弁通 血流 ( ) 三尖弁閉鎖術 + 術 Ebstein 病 ( ) 他疾患の診断 (+) PGE1 は 術 (+) 頻拍発作 (+) ( ) (+) テーテルアブレー ン (+) 胸部 X 高度心拡大 心内 復術 ( ) 1215

30 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 3 治療選択のための検査 ( 図 24, 図 25) 軽症の場合には, 治療は必要でない. チアノーゼが高度のときは, 何らかの手術が必要なことが多い. 1 胸部 X 線, 心電図 胸部 X 線で心拡大を認めれば手術が必要なことが多い. 頻拍発作があり心電図でWPW 症候群を認めれば, カテーテルアブレーションが適応となることもある. 2 心エコー 新生児期には心エコーで肺動脈弁を通過する血流がなく, チアノーゼが高度のときはプロスタグランジンE 1 を投与したり, 短絡術を施行したり, 三尖弁閉鎖術 (Starns 手術 ) を施行したりする. 右心不全症状の程度, 三尖弁のplasteringの程度, 三尖弁閉鎖不全の程度が手術適応決定上, 有用な情報となるために心エコー検査は必須となる ( クラスⅠ). 3 心臓カテーテル検査 カテーテルによる心房中隔欠損の試験閉鎖が治療選択上有用なことがあり必要に応じて行われる ( クラスⅡ a). 三尖弁逆流が軽度で, かつ心房中隔欠損による右 - 左短絡, ないし左 - 右短絡が存在するときは, カテーテルによる試験閉鎖の後, 閉鎖栓で閉じることもある. 9 総肺静脈還流異常 (total anomalous pulmonary venous return:tapvr) 1 解剖, 病態生理 すべての肺静脈血が左房に還流せずに, 右心系に戻る血行動態である. 肺静脈血が右心系に戻る通路によって 4 つの型に分類される ( 表 6). 肺静脈還流経路に狭窄があると, 肺血流の増加に伴って肺静脈圧が上昇し肺うっ血となり患児の状態は急速に悪化する. 2 診断 病態把握のための検査 ( 図 26) 1 胸部 X 線, 心電図 心電図で右軸偏位, 右室肥大を認める. 胸部 X 線では 心拡大, 肺血管陰影の増強を認める. 上心臓型で雪だる ま型の心陰影となることは生後数か月以降である. 胸部 X 線は肺うっ血の有無, 程度の診断に有用である. 2 心エコー 心エコーは本症の診断に非常に有用である. 呼吸窮迫症候群の診断が明らかでない場合や, 新生児遷延性肺高血圧を疑わせる新生児では, 心エコーを実施すべきである. 著明な右室容量負荷, 左房後方の共通肺静脈腔の存在, そこからの体静脈ないし右房への還流で本症を診断する. 心房間で右 - 左短絡を認める. 3 心臓カテーテル検査 心臓カテーテル検査は, 新生児の場合患児の状態を悪化させるので, 手術のために必須の場合以外には施行すべきでない. 43DCT,MRI 心エコーで4 本の肺静脈還流が描出できないときは, MRI や3DCTにより画像診断できることがある ( クラス Ⅱa). 3 治療選択のための検査 ( 図 26) 1 胸部 X 線 胸部 X 線で肺うっ血の所見があれば, ただちに手術の 方針とする. 2 心エコー 表 6 総肺静脈還流異常の Darling 分類 Ⅰ 型 : 上心臓型 ( 心臓より上の位置に還流する ) Ⅰa : 共通肺静脈から左側垂直静脈を上行し, 無名静脈に還流する型 Ⅰb : 共通肺静脈が上大静脈 ( 通常後壁 ) に還流する型 Ⅱ 型 : 傍心臓型 ( 心臓に還流する ) Ⅱa : 共通肺静脈が冠静脈につながり, 冠静脈洞に還流する型 Ⅱb : 肺静脈が別々にあるいは共通肺静脈を形成した後に右房に還流する型 Ⅲ 型 : 下心臓型 ( 心臓より下の位置に還流する ) 共通肺静脈から静脈が横隔膜を下行し門脈につながる型 Ⅳ 型 : 混合型以上 Ⅰ Ⅲ 型の組み合わせ.Ⅰa+Ⅱa の組み合わせが多い 心エコーで共通肺静脈腔から体静脈ないし右房への還流経路に狭窄がなければ緊急手術の必要性は全身状態で判断する. ただし, 手術待機中に短時間で全身状態が悪化することもある. 下心臓型の場合には心エコーで診断 1216

31 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 図 26 総肺静脈還流異常症の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 MRI, CT がつき次第緊急手術の方針とする ( クラス Ⅰ). 33DCT,MRI 心エコーで 4 本の肺静脈が確認できない時や, 混合型 が示唆される時は,MRI や 3DCT が有用なことがある ( ク ラス Ⅱa). 10 Fallot 四徴症 (tetralogy of Fallot:TOF) 1 解剖 病態生理 肺動脈狭窄, 心室中隔欠損, 大動脈騎乗, 右室肥大の四徴からなる. 2 診断のための検査 ( 図 27) 1 聴診 出生直後より, 肺動脈狭窄による駆出性収縮期雑音を聴取する. 最強点は, 漏斗部狭窄では胸骨左縁第 3 肋間, 肺動脈弁狭窄では, 胸骨左縁第 2 肋間にある.Ⅱ 音は, 多くの例で, 肺動脈成分の減弱により単一となる. 2 胸部 X 線 心電図 呼吸障害, 哺乳障害, チアノーゼ, 体重増加不良 胸部 X : 肺うっ血, 心拡大, 肺血管陰影増強 TAPVR(+) 心エコー 肺静脈還流部位 TAPVR( ) 不 部位ありす て判 ( にかかわらず ) (+) 肺静脈還流障害 ( ) 可 早期に ( ) 術 心臓以外の 術 ( ) (+) 心陰影は正常かやや小さく, 肺動脈の低形成による第 2 弓陥凹と心尖部挙上により木靴型となる. 肺血管陰影 は減少する. 上行大動脈は拡大し, 右大動脈弓が約 25 % に見られる. 心電図では右軸偏位, 右室肥大 ( 高いR V 1, 深いS V 6 ) が特徴的所見である. 3 心エコー断層心エコーによるFallot 四徴症の診断は比較的容易であり, 重症度や合併奇形の有無に関しても情報が得られるため必須の検査である ( クラスⅠ). 左室長軸像では, malaligment 型心室中隔欠損と大動脈の騎乗がわかり, 大動脈弁と僧帽弁の線維性連続が確認できれば, 両大血管右室起始との鑑別が可能である. 大動脈基部短軸像では, 漏斗部, 肺動脈弁, 主肺動脈の狭窄の程度が評価できる. 合併する冠動脈の異常も診断可能である. 43DCT,MRI 心エコーでは限界がある末梢肺動脈の描出が可能で, 狭窄や低形成の程度を評価できる ( クラスⅡb). 5 心臓カテーテル検査右室造影は最も重要な術前情報を得られ, 頭側へ20 ~30 度傾けた正面像 (cranial tilt) が, 漏斗部狭窄, 肺動脈弁輪径や弁形態, さらに末梢肺動脈狭窄まで描出するのに優れている. さらに, 左室造影による左室容積の評価, 大動脈造影による腕頭動脈分岐や冠動脈走行の確認が必要である ( クラスⅠ). 心臓カテーテル検査は, 術前検査として必須であるが, 無酸素発作を誘発する可能性があるため, 前投薬にはモルヒネ等の麻薬を用いて鎮静を行い, 十分な観察の下にできるだけ短時間で終了するように心がける. 3 病態把握のための検査 ( 図 27) 1 血液検査低酸素血症を代償するために多血症となるが, 乳児期には, 鉄欠乏のため相対的貧血になりやすい. 2 心臓カテーテル検査大きな心室中隔欠損のため, 左右心室は等圧である. 心室中隔欠損での短絡を決める要因は, 右室流出路の狭窄の程度であり, 狭窄が高度になるに従い肺血流量は減少し, 全身への静脈血の駆出が増加し, 低酸素血症が進行する.Fallot 四徴症におけるチアノーゼは極めて不安定であり, 漏斗部狭窄や末梢肺血管抵抗等の右室側の要因と, 左室側の要因である体血管抵抗のバランスとともに急激に変化する ( クラスⅡa). 1217

32 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 4 治療選択のための検査 ( 図 27) すべての症例が手術適応である. 心内修復術, あるいは姑息術の選択, さらに手術法の選択には, 臨床症状の経過とともに, 左室容積, 肺血管発達度, 肺動脈形態, 冠動脈, 大動脈等の形態評価が重要であり, 心エコー検査とともに心臓カテーテル検査が必須である ( クラス Ⅰ).3DCTおよびMRI も心臓カテーテル検査を補完する検査として有用である ( クラスⅡa). 1 心内修復術心室中隔欠損のパッチ閉鎖と右室流出路狭窄の解除を行う. 著しい肺動脈弁輪低形成例 ( 弁輪径が-3Z value 以下 ) の場合には, 一弁付 transannular patchの適応とする施設が多い. 2 姑息手術新生児期に動脈管依存性の重症例では, プロスタグランジンE 1 の持続投与を続け, その後, 短絡手術 (Blalock- Taussig shunt) を行う. また, 内科的に無酸素発作のコ ントロールが困難な症例や, 著しい肺動脈低形成でも, まず, 短絡手術を行い肺血流を安定させ肺動脈の成長を待ち,1~2 歳で心内修復術を行う. 検査計画 心エコーのチェックポイント形態診断 VSD の位置と大きさ 肺動脈弁輪径 右室流出路狭窄の程度 左室容積と心機能 大動脈弓の異常 冠動脈の異常血行動態 動脈管依存性 肺動脈の形態とサイズ Z value = 弁輪径 - 平均値標準偏差 図 27 Fallot 四徴の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 新生児期 身体所見,SpO2,Xp,ECG, 心エコー 動脈管依存性 ( ) (+) プロスタ ラン ン E1 乳児期 低酸素 ( ) (+) 無酸素発作 ブロッ ー内 内 心エコー,CT 肺動脈低形成 ( ) 低形成 (+) ント術 1~2 歳 CT,MRI 末梢肺動脈狭窄 ( ) 術前心臓 テーテル (+) インターベン ン PA index = RPA area + LPA area (mm2 ) BSA(m 2 ) RPA area: 右肺動脈断面積 ( 第一分岐直前 ) LPA area: 左肺動脈断面積 ( 第一分岐直前 ) BSA: 体表面積 * 正常は 330±30 PA index>150 <150 ント術 肺動脈弁 径 > 3Z 肺動脈弁 径 < 3Z 心内 復術 ( 自 弁 存 ) 心内 復術 (transannular patch) 1218

33 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 11 肺動脈閉鎖 (pulmonary atresia:pa) 1 解剖 病態生理 左右心室を有し, 心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖で, 純型肺動脈閉鎖とも呼ぶ. 通常, 肺循環は動脈管に依存し, 生後, 動脈管の閉鎖とともに, 低酸素血症が急激に進行する. 体循環は, 心房間交通に依存し, その大きさが, 心拍出量を決定する. 右室や三尖弁の低形成を伴う場合が多い. 右室低形成を伴う重症肺動脈狭窄も, 同じ範疇に含めることが多い. 2 診断のための検査 ( 図 28) 1 聴診 動脈管の閉鎖による肺血流の低下により, 生後数時間から進行性のチアノーゼと多呼吸が進行する. 心雑音は 聴取せず, 動脈管が開存していれば, 胸骨左縁上部に連続性雑音を聴取する. 2 胸部 X 線 心電図通常心拡大はない. 心陰影は, 肺動脈の低形成のため, 肺動脈部 ( 左第 2 弓 ) が陥凹し, 肺血管陰影は減少する. 心電図では, 右軸ないし正常軸で, 右室低形成のため, 右側胸部誘導のR 波が低く, 左室肥大所見を示す.X 線所見と合わせ, 診断的価値が高い.P 波は, 心房性 P 波となる. 3 心エコー ( クラスⅠ) 四腔断層で, 左室は正常の大きさかやや大きく, 右室は小さい. 心房中隔と心室中隔は一線上に並ぶ. 右室の形態から,⑴ 流入部のみ,⑵ 流入, 肉柱部, 流出部のある型 ( 弁性閉鎖 )⑶ 流入部と肉柱部のみの型 ( 漏斗部閉鎖 ) の3つに形態診断が可能である. 胸骨左縁からの大動脈基部短軸断面で, 漏斗部内腔の有無, すなわち漏斗部閉鎖か弁性閉鎖か鑑別できる. 類洞間交通と合併して 新生児期 回 術 図 28 肺動脈閉鎖の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 SpO2,Xp,ECG, 心エコー PGE1 円 狭小 ( ) 円 狭小 (+) 心房中隔 開術 肺動脈弁性閉鎖漏斗部閉鎖 ント術 洞交通 (+) RVDI< <RVDI 肺動脈弁 開術 + ント 肺動脈弁 開術 乳児期二期 術 術前心臓 テーテル 右室 三尖弁成長 RV-TV index<0.1 Fontan 型 術 RV-TV index< <RV-TV index< <RV-TV index 右室流出路 +Glenn 術 右室流出路 +ASD 部分閉鎖術 右室流出路 +ASD 閉鎖術 RVDI=RVEDV(%N) TVD(%N) RVOD(mm) 10 5 /BSA(m 2 ) RV-TV index=rvedv(%n) TVD(%N)

34 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) いる例では, カラードップラーで, 右室心筋内に血流を確認できる. 4 心臓カテーテル検査 ( クラスⅠ) 新生児例では, プロスタグランジンE 1 投与下で, 動脈管開存を確認し施行する. 卵円孔が小さい例では, 右房圧が高く, 平均 15mmHgを超えるような例では, balloon atrioseotostomy(bas) の適応である. 右室造影では, 右室の形態と容積, 類洞間交通の有無と形態, 三尖弁閉鎖不全の程度を知る. 左室あるいは大動脈造影で, 動脈管から肺動脈が造影され, 肺動脈の発達の程度を知ることができる. 3 病態把握のための検査 ( 図 28) 1 心エコー心房間交通の狭さに応じて右房は拡大し, 心房中隔は左房方向へ偏位する. 卵円孔が狭いと強い体静脈うっ血があり, 上下大静脈も拡大する. 動脈管が太く肺血流が多いほど, 低酸素血症, チアノーゼは軽いが, 左室容量負荷が増大する. 肺血流が多い例では, 肺静脈還流が増加し, 左房圧が上昇し, 右房 左房の心房間短絡の妨げとなるために, うっ血性心不全が強い. 三尖弁閉鎖不全が強い例では, 右房右室の容量負荷が加わる. 2 心臓カテーテル検査右室造影で, 類洞交通があり冠動脈が造影されれば, 右室依存性冠循環の診断に役立つ. 卵円孔で右房左房圧較差が大きい例で, 循環不全があれば,BAS を行う. 4 治療選択のための検査 ( 図 28) 初回手術の目的は, 肺血流を増加させ低酸素血症を改善し, なるべく早期に右室の減圧をはかり, 右室からの順行性血流を確保し右室の成長を促すことである. 初回手術の術式選択で重要な点は, 右室の形態と肺動脈弁閉鎖か漏斗部閉鎖か, 右室容積, および三尖弁輪径である. 二期的修復術では, 初回手術後の右室および三尖弁の発育が十分であれば, 右室流出路再建 + 心房中隔欠損閉鎖 ( いわゆる解剖学的根治手術 ) が行われる. 右室および三尖弁が極端に低形成な例では,Fontan 型手術が選択される. この中間の右室や三尖弁が中等度に低形成な症例には, 右室流出路再建 + 心房中隔欠損部分閉鎖, あるいは右室流出路再建 +Glenn 手術を行う. 1 心エコー心エコー上, 右室流出部を欠く漏斗部閉鎖か弁性閉鎖かを見極めることが重要である. 漏斗部閉鎖では, 大動脈肺動脈短絡術 (Blalock-Taussigシャント) が選択される. 弁性閉鎖では, 右室容積と三尖弁輪径が比較的大きい例では, 肺動脈弁切開術, 小さい例では, さらに Blalock-Taussigシャントを加える. 2 心臓カテーテル検査右室造影で, 右室容積と三尖弁輪径の計測, 類洞交通の有無を判定する. 類洞交通があり冠動脈が造影されれば, 右室依存性冠循環の症例であり,Blalock-Taussigシャント術が選択される. 弁性閉鎖で, 右室が比較的大きい症例では, カテーテルによる閉鎖弁の穿孔とバルーン拡大術も試みられているが, 極めて高度な技術を要する. 3MRI,3DCT 右室容積の計測に用いられる. 芳村らは, 右室と三尖弁の発育の指標として,RVDI, RV-TV indexを算出し, 初回および二期手術の術式選択を行い, 良好な結果を得ている. 初回手術 : RVDI = RVEDV(%N) TVD(%N) RVOD (mm) 10-5 /BSA( m2 ) 二期手術 :RV-TV index = RVEDV(%N) TVD(%N) 10-4 (RVEDV: 右室拡張末期容積,TVD: 三尖弁輪径, RVOD: 右室流出路径,BSA: 体表面積 ) 心エコーのチェックポイント形態診断 弁性閉鎖か漏斗部閉鎖か 右室形態 三尖弁輪径 類洞交通の有無血行動態 動脈管の太さ 卵円孔の大きさ 右室容積 1220

35 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 12 両大血管右室起始 (double outlet right ventricle:dorv) 1 解剖 病態生理 ( 図 29) 両大血管右室起始は, 大動脈と肺動脈が主に右室から起始している疾患であり, 臨床的には, 両大血管が合わせて150% 以上, 右室から起始している疾患と定義される. 心室中隔欠損と大血管の位置関係により,4 型に分類されている. 心室 - 大血管関係により正常大血管型と大血管転位型が存在する. 正常大血管型では大動脈弁と肺動脈弁は, 高さがほぼ等しく横列になっており (side by side), 右室流出路には, 大動脈と肺動脈の間に円錐中隔の形成が見られる. 2 診断のための検査 ( 図 30) 1 心エコー本症の形態診断における心エコー検査の意義は極めて高い. 大血管の空間的位置関係と心室中隔欠損の部位診断, すなわち,⑴ 大動脈弁下型 (subaortic type),⑵ 肺動脈弁下型 (subpulmonary type),⑶ 両大血管下型 (doubly committed type),⑷ 遠位型 (noncommitted,remote type) のいずれかの診断には, 心エコー検査は必要不可欠である ( クラスⅠ). また, 円錐中隔の形態をみる. 2 心臓カテーテル検査両大血管の位置関係を確認する. また, 典型的な両大血管右室起始は大動脈弁下に円錐部があり, 右室造影上陰影欠損として観察される. 図 29 両大血管右室起始の心室中隔欠損の位置による型分類 A. 大動脈弁下型 Subaortic B. 肺動脈弁下型 Subpulmonary VSD 大動脈 肺動脈 右房 右室 三尖弁 C. 両大血管下型 Doubly committed VSD D. 遠位型 Noncommitted, remote type VSD 1221

36 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 3 病態把握のための検査 ( 図 30) 肺動脈狭窄を合併すると肺血流が減少し,Fallot 四徴症と同様の血行動態となり, 肺動脈狭窄のない大動脈弁下型心室中隔欠損では, 肺血流は増加し肺高血圧を呈する. 肺動脈弁下心室中隔欠損型では, 左室からの血流は直接肺動脈へ駆出され, 心室中隔欠損を伴う大血管転位と同様の血行動態となり (Taussig-Bing 奇形 ), 新生児期から呼吸困難や心不全を来たす. 1 胸部 X 線 心電図胸部 X 線上, 肺動脈狭窄を合併する例では, 肺動脈部 ( 左第 2 弓 ) が陥凹し, 肺血管陰影は減少する. 肺動脈狭窄を合併しない例では, 肺血管陰影は増強し, 心拡大がある. 心電図では, 右室肥大所見あるいは両室肥大所見を示す. 2 心エコー心エコー上の病型分類と肺動脈狭窄の有無で病態を把握する ( クラスⅠ). 3 心臓カテーテル検査心エコーと同様に, 両大血管の位置関係と心室中隔欠損の位置関係で病態を把握する. 両大血管がside by side の場合はほとんどが大動脈弁下型 VSD で, 両大血管右室起始の過半数を占める. 大動脈が肺動脈の右前の場合には, ほとんどが肺動脈弁下 VSD を伴うTaussig-Bing 奇形である. 肺動脈弁下 VSD では, しばしば大動脈縮窄や大動脈弓離断, 大動脈弁下狭窄を伴う. 4 治療選択のための検査 ( 図 30) 心室中隔欠損の位置と両大血管の空間的位置関係の把握が, 術式選択において最も重要である. そのために, 心エコーと心臓カテーテル検査が必須の検査である ( クラスⅠ). 多くの場合に, 左室と大動脈を心室内トンネルで連結する心内修復術が可能である. 1 心エコー心エコー上, 大動脈弁下型心室中隔欠損で, 肺動脈狭窄を伴う場合は,Fallot 四徴症と同様の治療方針を, 肺動脈狭窄を伴わない場合は,malaligment 型心室中隔欠損と同様の治療方針をとる. 一期的に心内修復術を施行するか, 姑息手術として前者では大動脈肺動脈短絡術 (Blalock-Taussigシャント) を, 後者では肺動脈絞扼術を施行し, 二期的に心内修復術を施行する場合もある. 2 心臓カテーテル検査 ( クラスⅠ) 心室中隔欠損が遠位型の場合, 心室中隔欠損と大動脈弁の距離が長いため, これらを結ぶ長い心内トンネルが必要となり, 心室造影で確認が必要である ( クラスⅠ). また, 右室容積が充分あることも重要であり右室造影での容積確認が必要である ( クラスⅡa). 肺動脈弁下型 (Taussig-Bing 奇形 ) では, ほとんどが Jatene 手術を行うが, 大動脈縮窄や大動脈弓離断を伴う 図 30 両大血管右室起始の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 心エコー 心室中隔欠損の位置 肺動脈弁下型 大動脈弁下型 両大血管下型 遠位型 新生児期 肺動脈狭窄 (+) 肺動脈狭窄 ( ) Jatene 術 ント 術 肺動脈 術 肺動脈 術 乳児期 心臓 テーテル 心臓 テーテル Fallot 四徴症型 術心室中隔欠損型 術心臓 テーテル 右室容積狭小 ( ) 心内トンネル 術 容積狭小 (+) Fontan 型 術 1222

37 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 例では, 大動脈弓の形成と肺動脈絞扼術を施行後に, 二期的手術を施行する場合もある. 検査計画 心エコーのチェックポイント形態診断 両大血管の空間的位置関係 心室中隔欠損の位置 肺動脈狭窄の有無血行動態 右室容積 大動脈弁と心室中隔欠損の距離 13 完全大血管転位 (transposition of the great arteries:tga) 1 解剖 病態生理 右心室から大動脈が左心室から肺動脈が起始する心疾患で心房 心室関係が一致している (concordant). 静脈血がそのまま大循環に流れ, チアノーゼを主症状としている. 心室中隔欠損 (VSD) と肺動脈狭窄 (PS) の合併の有無による病型診断が重要である. Ⅰ 型 :VSD もPS もない ( 約 50%). Ⅱ 型 :VSD はあるがPS はない ( 約 25%). Ⅲ 型 :VSD もPS もある ( 約 25%). 出生後早期のチアノーゼや心エコーにより発見されることが多いが, 胎児心エコーにより胎児期に診断 母体搬送されることも増えてきている. 2 診断 病態把握のための検査 ( 図 31) 出生後の治療を迅速に行うために, 胎児心エコー検査が有用である. 均等な4 chamberとthree vessel view で SVC-Ao-PA が一直線に並んでいないことや, 起始している2つの大血管が平行に走行していることに注視する. 出生直後にチアノーゼで発見されることがほとんどで, 診断には心エコーが重要で必須の検査となる ( クラスⅠ). 心エコーの診断のポイントは正常な心房 - 心室関係であり, かつ右心室から起始している血管が arch を形成する大動脈で, 左心室から起始する血管がすぐに分岐する肺動脈であること. この2 本は通常のspiralでなく,parallelな走行をし, 弁の位置は右前 - 左後であ ることが挙げられる. 次に心エコーで病型診断をする. 大きなVSD の有無, 左室流出路狭窄を含むPS の有無を見て前記のⅠ Ⅱ Ⅲ 型とする.PS は新生児期早期には判断が困難なことがあり,P 弁の形態や動き, 弁輪径, 弁下の形態から評価する. 3 治療選択のための検査 ( 図 31) 1Ⅰ 型の治療と検査新生児早期に診断できた場合, まずチアノーゼの軽減, 左室圧維持を目的にプロスタグランジン E 1 (PGE 1 ) を使用するが, 心エコーでPDA の太さ, 卵円孔の大きさを評価することが必要である ( クラスⅠ). 心エコーで卵円孔が小さくPGE 1 投与でもチアノーゼの改善が得られなければ, 心臓カテーテル検査と同時にバルーンカテーテルによる心房中隔欠損作成術 (BAS) を行う.(BAS も含め心エコー検査のみで手術をする施設もある ). 心エコーにて心室中隔の彎曲から左室圧が等圧に近く左室後壁厚が3~3.5mm 以上あれば生後 1~2 週での動脈スイッチ術 ( 以下,Jatene 手術 ) をめざす. 心エコーで冠動脈の起始の評価も行う ( クラス Ⅰ). 手術直前には心臓カテーテル検査を行い冠動脈の走行や左室圧の評価をする. 冠動脈の走行評価にはlaid back 位 (40~45 caudal tilt position,caudal view) での大動脈造影が有用である. 診断時期が遅れた例で左室圧の低下や左室後壁厚の菲薄化が心エコーで評価される場合 Ⅱ 期手術の方針となる. まず肺動脈絞扼術と短絡術を行い, その後心エコーでの左室後壁厚の増大等を参考にし, 数週から 1か月後にJatene 手術を行う前に心臓カテーテル検査で再評価をする ( クラスⅠ). 2Ⅱ 型の治療と検査卵円孔の大きさと合併症の有無を心エコー, 心臓カテーテル検査で評価する ( クラスⅠ). 卵円孔小ならBAS を行い,VSD 以外の合併がない場合 1~2か月での Jatene 手術を行う ( クラスⅠ). ときに合併症がある. 大動脈縮窄等の大動脈弓異常を合併する場合 PGE 1 を使用後, 新生児早期に大動脈弓再建と肺動脈絞扼術を行う. 術前のMDCT による3 次元構築は特に有用である. その後, 胸部 X 線,ECG, 心エコーで経過観察し, 心臓カテーテル検査で評価をした上で乳児期にJatene 手術を行う ( 新生児期に一期的に手術を行う施設もある ). 心エコー検査で左右心室不均衡や房室弁 straddling 等があり2 心室修復ができない場合,1~2か月で肺動脈 1223

38 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 図 31 完全大血管転位の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 TGA TGA PGE1 DOA or DOB BAS Jatene Jatene X ECG BAS BAS VSD-PS Straddling PDA PDA PGE Jatene 1 2 Jatene Fontan 3 4 Rastelli Rastelli 絞扼術を行う. 胸部 X 線,ECG, 心エコーで経過観察し直前に心臓カテーテル検査で肺動脈の発育を評価した上で1 ~2 歳でGlenn 手術やFontan 型手術等の右心バイパス手術を行う. 3Ⅲ 型の治療と検査心エコー, 心臓カテーテル検査で評価し卵円孔が小さければBAS を行う.PS が重症でなくPDA 依存でなければ胸部 X 線,ECG, 心エコーで経過観察し, 直前に心臓カテーテル検査で評価し3~4 歳でRastelli 手術を行 1224

39 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン う.PS が重症であれば PGE 1 を使用後 1 か月前後に短絡 術を行う. 胸部 X 線,ECG, 心エコーで経過観察し, 心臓カテーテル検査評価後 3~4 歳で Rastelli 手術を行 う. Ⅱ 型と同様, 大動脈弓異常, 心室の不均衡や房室弁の straddling 等の合併症をもつ場合,MDCT 心エコー, 心臓カテーテル検査等を行い,Ⅱ 型と同様の治療をする. 14 修正大血管転位 (corrected transposition of the great arteries:ctga) 1 解剖 病態生理 右房と解剖学的左室が繋がり左房と解剖学的右室が繋がっている, 心房 心室関係の不一致 (atrioventricular discordance) があり, かつ解剖学的左室から肺動脈が解剖学的右室から大動脈が起始する心室 大血管関係の不一致 (ventriculoarterial discordance) の疾患で, 血行動態的には修正されており, 合併症がなければ無症状である. しかし心室中隔欠損 (VSD: 約 80%) や肺動脈狭窄 (PS:30~50%), 三尖弁逆流 (TR), 房室ブロック (AVB) 等を合併しそれにより種々の症状を呈する. VSD とPS を合併するとチアノーゼを,PS がなく大きな VSD や高度のTR, 高度のAVB を合併すると心不全症状を呈する. また合併症がなく無症状でも, 成人期には TRの発生や右心不全の出現と進行があり, 手術方針決定上課題になっている. 心房内臓正位 (SLL) が90~ 95%, 逆位 (IDD) が5~10% であるがSLLの25% が右方転移を (IDD では左方転移を ) 示すことが多く, 診断上重要である. 2 診断 病態把握のための検査 ( 図 32) 出生後の診断のきっかけとして胸部 X 線や ECG は重 要である. 胸部 X 線で右胸心 ( 約 25%) や左 1,2,3 弓 の一直線化が参考になる.ECG では SLL の場合, 右側 胸部誘導で Q 波や QS complex が多く, 左側胸部誘導で Q 波の欠如が多く, 参考になる. この疾患に対しては segmental approach に基づき診断 を行うことが特に大切であり, 心エコーは最も重要である ( クラスⅠ). 下大静脈が入っている心房を右房として心房内臓関係を判定する. 心室は両房室弁の中隔への付着位置, 心室中隔の肉柱の様子, 乳頭筋の特徴等から, 解剖学的左室 右室を同定し, 心房との繋がりから atrioventricular discordanceを診断する. 次に大血管関係 は短軸像で, 心房内臓正位の場合左前 右後 ( 逆位では右前 左後 ) の関係であり, この血管と心室の繋がりを見て,ventriculoarterial discordanceを診断する. さらに, 心エコーで心室中隔欠損 (VSD), 肺動脈狭窄 (PS) の有無を明らかにし, 左右心室の不均衡, 三尖弁の Ebstein 病や逆流 (TR),straddling, 大動脈弓奇形等の合併症の有無を診断する. 心臓カテーテル検査も重要で, 診断の確定をするとともに, 病態把握のために肺動脈, 冠動脈の形態, 体循環肺循環指標, 左右心室容積および機能等の評価が行われる ( クラスⅠ). 3 治療選択のための検査 ( 図 32) 主に解剖学的心内修復術 (double switch 法 :DS 法 ) をめざす考え方と, 主に機能的心内修復術 (conventional repair 法 :CR 法 ) をめざして一部の例にのみDS 法を行う考え方とがあり, 現在のところ controversy である. 以前は主な症状はVSD とPS から起こるので,VSD 閉鎖とPS 解除をCR 法として行ってきた. しかし長期的にみると解剖学的右室が大循環を担当しているため, 三尖弁逆流の出現と悪化や, 右室自体の機能低下による心不全が問題になり,1990 年代からMustard 法または Senning 法によるatrial switch 手術とRastelli 法または Jatene 法によるarterial switch 手術を同時に行うDS 法が行われるようになった. 現在も, 手術手技の改良に伴い予後が改善し,DS 法の方向で治療すべきとの立場と, DS 法は手術自体のリスクが高く, 術後の運動機能も両者で差がないため, 中等度以上の TRがある場合や解剖学的右室がやや小さい等 CR 法では早期悪化が予想される症例のみにDS 法を行う立場がある. 両者に沿ってその検査法を概説する. 主に DS 法をめざす場合, まず左右心室が均衡か不均衡かを判断するため心エコー, 心臓カテーテル検査が重要である ( クラス Ⅰ). 不均衡である場合, 必要に応じて肺動脈絞扼術や短絡術を行う. 乳児期後期 - 幼児期早期のFontan 型手術の前には心臓カテーテル検査で肺動脈の発育度や肺血管抵抗等を評価し適応を判断する ( クラスⅠ). 均衡である場合 PS PA の合併の有無,VSD の大きさや位置, 房室弁の腱索との関係等を心エコー, 心臓カテーテル検査で判断する. 解剖学左室からVSD を通して大動脈へのreroutingが可能か ( 心エコーが特に有用 ) また左室圧は高いかを評価する ( クラスⅠ).PS PA があり,VSD が適当であればatrial switch 手術とRastelli 手術を行うが, その前に心エコー, 心臓カテーテル検査での評価が必要である ( クラスⅠ).PS PA がない場合, 1225

40 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 図 32 修正大血管転位の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 主に解剖学的心内修復術 (double switch 法 ) を行う方針の場合 PS PA PS PA rerouting VSD atrial switch Rastelli rerouting VSD LV LV atrial switch Jatene VSD PS Fontan 主に機能的心内修復術 ( 従来法 ) を行う方針の場合 TR TR VSD PS PA VSD PS PA VSD PS PA VSD VSD PS VSD atrial switch Rastelli atrial switch Jatene Fontan VSD があるため左室圧が高ければそのまま, 低い場合肺動脈絞扼術を行いatrial switch 手術とJatene 手術を行う前に左室が鍛えられたことを確認するため心エコーと心臓カテーテル検査を行う ( クラスⅠ). それ以外の例にのみVSD 閉鎖,PS 解除術を行う. 主に機能的心内修復術 (conventional repair 法 :CR 法 ) をめざす場合, まず心エコー, 心臓カテーテル検査で左右心室が均衡かを判断し, 不均衡である場合 Fontan 型手術を行うことは前者と同じである. 均衡である場合, 心エコー 心臓カテーテル検査でTRが軽度以下か中等度以上か,Ebstein 病の合併はないかを評価する.TRが有意でなければ,VSD 閉鎖術 PS 解除術を行う. 有意 1226

41 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン であり VSD と PS PA の合併があれば atrial switch 手術 と Rastelli 手術を行う. また TR が有意であり合併が VSD だけなら肺動脈絞扼術行い, ついで,atrial switch 手術と Jatene 手術を行う前に心エコーで左室が鍛えられ たことを確認する. VSD とPS の合併症のない例にもdouble switch 術をめざし肺動脈絞扼術を行う報告が増えている. 原則的には 10 歳以下の例に行い, 心エコーで機能低下に注意し, 心臓カテーテル検査で左室圧の上昇を確かめて行う必要がある. 15 総動脈幹遺残 (persistent truncus arteriosus) 1 解剖 病態生理 左右両心室からの血液を単一の大血管 ( 動脈幹 ) がいったん受けて, 体動脈, 肺動脈, 冠動脈に分かれ供血する心奇形である. 病態の理解にはCollet-Edwardsの分類, 合併症の理解にはVan Praaghの分類が有用である ( それぞれの分類の詳細は専門書を参照されたい ). 半月弁 ( 総動脈幹弁 ) は3 弁 (69%) や4 弁 (22%) が多く, 弁逆流の合併が高率に見られる. その他の合併症としては大動脈弓離断 (11~19%), 肺動脈狭窄等がときに見られる. 臨床症状は肺血流量と総動脈幹弁逆流 (TrR) の程度で規定される. 出生後, 肺血管抵抗の低下とともに肺血流や心負荷が増加し呼吸 心不全症状が出現しさらに増悪する.TrR が高度の場合は生直後から心不全を呈し肺血流増加とともに悪化する. 肺動脈狭窄を伴うとチアノーゼはあるが心不全症状を呈さない. 2 診断 病態把握のための検査 ( 図 33) 胸部 X 線やECGではこの疾患の特徴的所見は少なく, 肺血流量や弁逆流の増加により検査所見は規定される. 心エコーは最も重要な診断法である ( クラスⅠ). 胸骨左縁の左室長軸断面で心室中隔に大血管が騎乗している所見が得られる. 肺動脈閉鎖を伴うFallot 四徴症でも同様の所見が見られるが, やや上方で大血管から肺動脈が分岐しているのが見えることにより鑑別される. 半月弁位の短軸像により弁形態が把握でき, この位置と左室長軸断面でドップラーを併用しTrR の有無と程度を判定する. 胸骨上窩からの断面で大動脈弓離断の合併の有無をみる. 心臓カテーテル検査も重要で, 診断の確定が可能であ 図 33 動脈幹遺残の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 胎児の出生 総動脈幹遺残 心エコー, 心臓 テーテル,CT 重大な合併症なし 重大合併症あり 高度総動脈幹弁逆流 大動脈弓 断 肺動脈狭窄 上行大動脈低形成なし 上行大動脈低形成あり 1 か月 ~ 6 か月 Rastelli 術 or Lecompt 変法 or Barbero-Marcial 術 心内 復術 + 弁形成術 心内 復術 + 大動脈弓 心エコー, 心臓 テーテル,CT 両側肺動脈 術 心エコー心臓 テーテル 6 か月 ~ 2 歳 Norwood 術 心内 復術 1227

42 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) る ( クラス Ⅰ). 造影により肺動脈の分岐形態や大動脈 弓の形態を診断することが可能である. この疾患は肺動脈の閉塞性病変の進行が早く, 肺血管抵抗値を算出することが重要である. CT 特に三次元構築は大血管の立体関係を把握するために有用である. また総動脈幹と肺動脈との分岐関係, 肺動脈と右室との距離, 大動脈弓離断の有無と形態等を明らかにすることができる ( クラスⅠ). 3 治療選択のための検査 ( 図 33) まず, 総動脈幹遺残の診断をできるだけ早期 ( できれば胎児期や出生時期 ) に心エコーを中心に行い, さらに心臓カテーテル検査,3DCTで重大な合併症があるかを診断する ( クラスⅠ). 重大な合併症がなければ, 新生児期, 遅くとも6か月以内に心内修復術を行う. 人工血管を使用したRastelli 手術を行うか, 自己組織で右室流出路を形成する手術 (Lecompte 変法,Barbero-Marcial 手術 ) のどちらを行うかはcontrovercialである. 高度の総動脈幹弁の逆流を伴う場合は, 心内修復術と同時に弁形成術を行う. この際,3D 構築を含めた心エコーの詳細な検討が有用である ( クラスⅡ a). 大動脈弓離断を合併している場合, 新生児期 - 乳児期早期に一期的に大動脈弓再建と心内修復術を行う. 大動脈弓離断に上行大動脈の低形成を伴う場合は, 新生児期にまず両側肺動脈絞扼術を行い, ついで心エコー, 心臓カテーテル検査,CTでの再評価で上行大動脈の成長がなければ Norwood 型手術を行う. 両側肺動脈の分岐部に狭窄があり落ち着いている場合は, 乳児期後期に心エコーおよび心臓カテーテル検査で再評価した上で, 心内修復術 (Rastelli 手術 ) を行う. 16 三尖弁閉鎖 (tricuspid atresia:ta) 1 解剖 病態生理 本症の解剖 病態生理の詳細は成書を参照されたい. 2 診断のための検査 ( 図 34) 1 身体所見 動脈血酸素飽和度低下が認められ. 出生直後に気づかれずとも1 週間以内にはほとんどがチアノーゼに気づかれる. 心雑音も通常存在する. 2 心電図心電図はチアノーゼを呈する新生児のなかで三尖弁閉鎖の児を鑑別するのに有用である. 心房間交通の程度によらず右房負荷を呈し, 肺血流増加例では両房負荷を呈する. また, 左軸偏位が特徴的で, 特にType I では85 % が左軸偏位を呈する. 3 心エコー TA の解剖学的情報は心エコーにて容易に得られる ( クラスⅠ). 心内奇形についてはエコーにてほぼすべて診断可能である. 三尖弁の部位に開存のない線状エコーを認めれば確定診断される. 肺動脈閉鎖でなければ,2 つの半月弁と大血管の描出も容易である. カラードップラーにて右房 右室間交通がないことも診断の一助となる. 4 心臓カテーテル検査心エコーにてTA の初期形態診断が可能であり, 診断を目的とした心臓カテーテル検査を行うことの必要性はほとんどなくなっている ( クラスⅠ). 3 病態把握のための検査 ( 図 34) 1 身体所見肺動脈狭窄がない場合チアノーゼがはっきりしないこともあるが, 肺血管抵抗減少に伴い高肺血流性心不全症状が顕在化する. 肺血流の乏しい症例ではチアノーゼは強く出現するが, 高肺血流性心不全とはならない.VSD が小さく右室流出路狭窄を伴う場合, 無酸素発作が生じることがある.Type Ⅱにおいては高肺血流になることが多い.VSD サイズが大きい場合, 臨床症状からType ⅡcとⅠcを区別するのは困難である. 出生児の体格は正常であることが多いが, チアノーゼは必発である. SpO 2 や呼吸数は肺血流の多寡を判定する指標となるため通常行われる ( クラスⅠ). また肝腫大は狭小な心房間交通を示唆する. 2 胸部 X 線血行動態評価に有用である ( クラスⅠ). 通常心陰影のサイズは正常範囲であるが, 肺血流制限のないType ⅠcおよびType Ⅱcでは肺血管抵抗低下に伴い心拡大を来たす. その場合肺血管陰影の増強も伴う. 肺血流が制限されている場合, 肺血管陰影は減少するが, 心陰影サイズは正常のままである. 1228

43 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 図 34 三尖弁閉鎖の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 ECG TA SpO2 PGE1 X SpO2 Restrictive ASD 0 2 1st palliation Intervention BAS Inter stage intervention nd palliation SpO2 ECG CXR BNP CT MRI intervention 2 4 Fontan completion * : おおよその目安. 必ずしもこの限りではない. 3 心エコー初期管理は大血管関係によって変わるので, 分岐部あるいは冠動脈起始により肺動脈を同定し, 大血管関係を把握することが病態評価において重要である ( クラス Ⅰ).2D での心房中隔描出および心房間交通サイズの評価やカラードップラーでの心房レベルの短絡量評価も重要である.CoA 等他の合併心奇形の診断にも有用である. 同様に2D およびドップラー法にてVSD の狭小程度や右室流出路狭窄を評価する ( クラスⅠ). 僧帽弁逆流の有無 程度も評価する. 初回姑息術後の心エコーによる継続的な血行動態評価は非常に重要である. ドップラー法にて肺動脈圧を推定することが可能である ( クラス Ⅰ). また最終手術後も血行動態評価の最重要ツールであり, 心室機能 僧帽弁機能 右房から肺動脈までの血流通過障害等が評価できる. 右房内血栓の描出にも役立つ. 心房性頻脈性不整脈を有する患者にとって経食道エコーは心房内血栓の有無を検索する上では必須の検査である. 4 心臓カテーテル検査新生児においては肺血流の供給源を明確にし, エコーでは判断しにくい病変を検索する意味で必要とされる場合がある ( クラスⅡa). カテーテルは右房 左房 左室 左室より起始する大血管, と進める. 大血管関係が d-tga の場合, 肺動脈狭窄の評価は重要である.VSD を通してカテーテルを右室から前方の大血管に進めるのは,VSD がよほど大きくない限り困難で, 無理をする必要はなく, エコーと臨床症状で得られる所見で代用する. すなわちType I においては肺血流が十分制限されているか否かということ,Type Ⅱにおいては体血流が左室に強い圧負荷をかけることなく維持できるかということを評価する ( クラスⅠ). 通常右房圧は左房圧より若干高いが, 心房間交通が狭小な場合右房圧曲線 a 波の突出を認める. 左室拡張末期圧は肺血流が多いと容量負荷により上昇することがある.Type Ⅱの場合 PS がなければPH を伴う. 体静脈血酸素飽和度は体動脈血酸素飽和度が通常より低いため低値であり, 肺病変がない限り PV の酸素飽和度も正常である. また心室造影ではエコーよりも右室腔の正確なサイズを測定できる. 1229

44 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 4 治療選択のための検査 ( 図 34) 基本的方針として通常 Fontan 循環をめざす. 1 心エコー狭小な心房間交通と判断される場合には BAS が必要である. 2 心臓カテーテル検査狭小な心房間交通を伴う場合はBAS が必要である. 最初大きかった心房間交通が年齢とともに狭小化した場合,BAS はあまり有効ではなくブレードによる心房中隔裂開や手術による心房間交通作成が行われることがある ( クラスⅡa).Type Ⅱの児でVSD や右室流出路狭窄による体血流制限がある場合, 初回姑息術時にNorwood 手術を要することがある. また, 両方向性 Glenn 手術 (Bidirectional Glenn:BDG) 時にDamns-Kaye-Stansel (DKS) 吻合を行うこともある. 心臓カテーテル検査は, 姑息術後の血行動態を評価し次段階手術適応を決定するための重要な検査である ( クラスⅠ). 最も重要なのは肺血管抵抗であり,3 単位 /m 2 以下を通常右心バイパス手術適応とする. 初回姑息術としてシャント手術施行例ではシャントを通して直接肺動脈圧 酸素飽和度を測定できる. 困難でも肺静脈楔入圧を計測することで肺動脈圧が正確に推定できる. 肺動脈絞扼術を行った症例では左室からバンドを超えて肺動脈へカテーテルを進めることが可能である. また肺動脈造影は肺血管床発育評価および初回姑息術後の肺動脈形態のゆがみの評価に有用で, この検査結果から次回手術時に肺動脈形成の必要性が判断される ( クラスⅡ a). 年長児でFontan 型手術に到達していない例では体肺側副血行の評価にも有用で, コイルによる塞栓術が行われる. 33DCT,MRI 心臓カテーテル検査時の心血管造影の代用たりうるとされる ( クラス Ⅱa). しかし圧データの測定や interventionを要する場合も多く, 結局は心臓カテーテル検査を補完する位置づけといえる. 4 血液検査血漿 BNP を一つのガイドとして心不全治療を行うこともある ( クラスⅡ b). 17 左心低形成症候群 (hypoplastic left heart syndrome:hlhs) 1 解剖 病態生理 本症の解剖 病態生理の詳細は成書を参照されたい. 2 診断のための検査 ( 図 35) 現在は多くの症例が胎児エコーで発見される. 胎児エコーで発見されなかったHLHS の症状発現はASD の通過障害と動脈管開存度により様々である.1/4は24 時間以内に有症状となるが, 多くは初期には通常新生児と変わらず48 時間以降に症状が出現する. 1 胎児エコー ( クラス Ⅱa) 心臓超音波技術の発達により妊娠 16~18 週以降で胎児診断が可能となった.2D エコーにて拡大した右房 右室 肺動脈とそれに続く太い動脈管 小さく筋成分に富む左室を認める. また低形成の大動脈弁 僧帽弁 上行大動脈, あるいはそれら左室成分の欠落を認めれば HLHS の可能性が高い. さらに, 大動脈弁閉鎖の症例ではカラードップラーエコーにて細い上行大動脈を逆行する血流を認める. 2 身体所見 restricitive ASD がある場合, 強いチアノーゼ, 呼吸障害を呈するが,non restricitive ASD の場合は比較的血色がよい.PDA 閉鎖傾向を認める場合は呼吸障害, 末梢冷感 蒼白を呈する. 聴診では大動脈弁欠損および肺高血圧による単一 Ⅱ 音, 心室機能低下によるⅢ 音を聴取する. 心雑音は一般的でなく, 相対的肺動脈狭窄による収縮期駆出性雑音や重度三尖弁逆流に伴う収縮期逆流性雑音も聴取する. 上下肢の脈拍は生後早期には対称的によくふれるが, 動脈管閉鎖に伴い減弱する. 肝腫大はよく見られる. 3 心エコー HLHS と容易に診断可能である ( クラスⅠ). 心内構造や生理は通常のアプローチとドップラーを繰り返すことで十分に診断できる. 小さく壁肥厚した心尖部に達していない左室腔や左室心内膜輝度上昇を認める. 左房は小さいが,restrictive ASD であると拡大している. 通常, 2~3mmの上行大動脈を認め, 大動脈弁は閉鎖または 1230

45 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 狭窄している. 僧帽弁は閉鎖の頻度が高く, 狭窄の場合も弁尖肥厚 付属器の低または無形成を認める ( クラス Ⅰ).VSD はまれである. 心室冠動脈交通のため, 心室中隔壁内にカラードップラー信号を認めることがある. Supra notch view にて大動脈弓 下行大動脈の形態がよく観察される. 大動脈縮窄や離断をよく認める.PDA 開存度やPV の還流についても同じ断面で観察できる. 4 心電図 右軸偏位, 右室肥大を呈するが, 正常新生児と明白な違いはない. 右房拡大に伴うP 波増高を30~40% の患者に認める. 53DCT MRI 16 列以上の3DCTにより心エコー検査で判断の難しいaberrant right subclavian arteryの有無やcoa の位置 程度また, 肺静脈 肺動脈等の形態 位置の情報を得ることが可能であり, 積極的に施行される ( クラスⅠ). MRI はFontan 循環完成前等, ある程度体格が大きくな 図 35 左心低形成症候群の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 ( 生期 ) (0~14 生日 ) (3~8 か月 ) (2~4 歳 ) 1SpO 2,SvO 2 急性期, 特にNorwood 手術の周術期管理に肺体血流比の推定,cardiac outputの推定には詳細かつ連続的な vital signの測定が必要不可欠である. また上大静脈に留置した中心静脈カテーテルから採血し,SvO 2 をモニタリングすることで,cardiac output, 組織の酸素需給バランスを推定することができるため, ショックの予防に頻用される ( クラスⅠ). 2 心エコー Pulmonary venous obstruction(pvo) の有無は予後に大きく影響する.Supra notch viewにて動脈管よりtrans- verse arch への逆行性血流を認めることも多く, 左室が二心室修復に不適である根拠となる ( クラスⅠ).Criti- cal AS との鑑別にLV 水平断面積 ( <1.5cm 2 なら HLHS), 拡張末期流入部のサイズ ( 僧帽弁後尖ヒンジからapex<25mmならHLHS), 僧帽弁輪径 (6mm 以下ならHLHS) を参考とする場合もある. また, 心機能 房室弁逆流 動脈管開存度等刻々と変化する血行動態評価のためにも繰り返し行える点で有用な検査である ( クラスⅠ). 3 胸部 X 線血行動態の評価に有用である ( クラスⅠ). 心房レベルでのrestrictionの程度を反映する.Restricitive ASD の場合, 正常サイズの心陰影およびpassive congestionを認めるが, 肺疾患と誤診され診断遅れにつながることがある.non restricitive ASD であれば active congestion および心拡大を認める. 上行大動脈陰影欠損, 右房の突出を認める. 新生児におけるチアノーゼ 心 呼吸障害などの異常 1st palliation 術期 SpO2,SvO2 による タ ン 心エコー 心エコー 心エコー 3D CT 胸部 X 心エコー 1st palliation 心臓 テーテル (intervention) 2nd palliation Fontan completion * 目安 : 必ずしもこの限りではない HLHS プロスタ ラン ン E1 心臓 テーテル (intervention) 胎児エコーによる出生前診断 PVO 心臓 テーテル (intervention) Inter stage 必要に SpO2 ECG,CXR, BNP,CT,MRI った段階でより威力を発揮する. 心エコーでの診断を補完するものとして有用であり, 時に行われる ( クラスⅡ b). 6 心臓カテーテル検査心エコーおよび3DCTの登場により, 第一次姑息手術前の評価カテーテル検査は施行数が激減した. 診断目的のカテーテル検査は肺静脈還流異常の診断補助, および冠動脈奇形診断等特殊な場合にのみ行われ, 通常はre- strictive ASD に対するバルーン心房中隔裂開術 (BAS) や動脈管へのステント留置等,interventionを要する際に行われる. 3 病態把握のための検査 ( 図 35) 1231

46 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 4 治療選択のための検査 ( 図 35) 原則としてすべての症例が手術適応である. 刻々と変化する血行動態 心機能を把握し即対応するという面をもつため, 治療選択のための検査の多くは前項と重複する. 出生後仮死やショックにより全身状態が不安定な場合や出生体重が2,000gに満たない場合は第一次姑息術として人工心肺不要な両側肺動脈絞扼術が選択される. 1 胎児エコー診断そのものが治療の開始点となる. 両親へのカウンセリングや分娩計画を立てるために, 胎児エコーによるスクリーニングが重要である. また, 胎児 HLHS においてはASD の評価は必須である. 欠損孔そのもののサイズ測定は正確性を欠くため, 肺静脈血流のドップラーによる評価が簡潔で信頼性が高い検査として施行される ( クラスⅡ a). 通常の肺静脈血流は収縮期拡張期とも順行性血流で, 心房収縮期にわずかな逆行性血流を認めるが, 持続時間の短い順行性および逆行性血流がありかつ拡張早期の心室流入波が非常に小さい場合にはrestric- tive ASD であり, 出生後ただちに呼吸管理 左房減圧が必要になる.restrictive ASD の出生前診断は, 正確な出生前カウンセリング (PVO PA 低形成 予後不良例あり ) のためにも重要である. また, 胎児 AS はHLHS へ進展するリスクであることが明らかで, 胎児エコーにて注意深く左室成長およびPFO やtransverse archの血流パターンをフォローする必要がある. 2 心エコー大動脈径が2mm 未満の場合は安定した冠動脈血流を確保するため,Norwood 手術を選択することが多い. 三尖弁逆流や右室機能障害が強い場合には原則として両側肺動脈絞扼術を選択する. 3 心臓カテーテル検査心臓カテーテルは原則としてinterventionを目的とした場合か,bi-directional Glenn(BDG) 手術あるいは Fontan 型手術前の血行動態評価に際して行われる ( クラスⅠ).InterventionにはBAS やPDA へのステント留置, BTシャントやRV-PA conduitの狭窄解除, 大動脈弓再狭窄の解除がある.BDG 手術前評価としては肺動脈圧, 肺毛細血管楔入圧, 右心室圧, 上行および下行大動脈圧, 肺動脈の解剖, 適切な心房間交通, 新大動脈弓狭窄, 房室弁機能, 右室機能, 上大静脈の解剖が評価される. Fontan 型手術完成前の評価としては肺動脈圧, 肺静脈楔入圧, 右心室圧, 上行および下行大動脈圧, 肺動脈の解剖, 大動脈弓の解剖, 静脈 - 静脈シャントや体肺側副血管が評価される. 4 血液検査血漿 BNP を1つのガイドとして心不全治療を行うこともある ( クラスⅡ a) 18 無脾 多脾症候群 ( 心房内臓錯位症候群 ) 1 解剖 病態生理 本症の解剖 病態生理の詳細は成書を参照されたい. 2 診断のための検査 ( 図 36) 臨床的には先天性心疾患の精査の途上で特徴的な複合形態から心房内臓錯位症候群が疑われ, 診断に至ることが多い. 無脾症候群では単心房, 単心室, 共通房室弁, 肺動脈閉鎖 / 狭窄, 総肺静脈還流異常等が複合化して存在する頻度が高く, ほとんどが出生直後のチアノーゼが診断契機となる. 一方多脾症候群では複合化例も見られるが単独で存在する心奇形も少なくなく, 乳児期の心雑音や心不全が診断契機となる場合が多い. 1 身体所見無脾症候群では多くが出生直後からのチアノーゼで心疾患の存在に気づかれる. 肺静脈狭窄 (pulmonary venous obstruction:pvo) に伴う呼吸障害や重度共通房室弁逆流による心不全症状を呈する例もある. 2 心エコー心血管系および腹部臓器については超音波検査で正確に診断することが可能であり ( クラスⅠ), 合併しやすい臓器異常をすべて念頭に置いた上で, 見逃しがないように詳細な検索をすることが重要である. 腹部超音波検査では対称肝 特殊な脾臓形態 ( ない, 分葉異常等 ) を認める. 3 胸腹部 X 線腹部 X 線では, 胃泡の位置や対称肝等から心房内臓錯位症を疑う契機になる ( クラスⅠ). また, 胸部 X 線写真正面像で気管分岐部から上葉枝を分枝するまでの距離に左右差がない場合, 相同が疑われる. 葉間胸水が認め 1232

47 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 4CT,MRI 図 36 無脾 多脾症候群 ( 心房内臓錯位症候群 ) の診断, 病態把握, 治療計画のための検査 新生児におけるチアノーゼ 心 呼吸障害等の異常 機能 単心室 ( 両心室 復困難と思われる例 ) 肺血流動脈管依存性 (+) PGE1 心エコー 胸部 X 内臓 位症候群 ( 疑い ) 心エコー SpO2 心臓 テーテル 治術可能な先天性心疾患 ( 両心室 復可能な例 ) 肺血流動脈管依存性 ( ) 5 血液検査無脾に認めるとされる末梢血のHowell-Jolly 小体は正常新生児にも認められるため, 早期診断的意義は小さい ( クラスⅡa). 6 手術 剖検時の心耳形態の確認心房形態の決定は一般に心耳形態によってなされる. 経食道エコーやMRI,CTにても診断可能とされるが, 臨床上は手術時に確認するのが一般的で, この形態をもって確定診断とする考えもある. ただし篠原らによると心房内臓錯位症候群でも心房が左右に分化している例も存在する (65 例中 6 例 ). 3 病態把握のための検査 ( 図 36) られる場合には左右の肺の分葉を確認する. 左側相同では両側二分葉で, 右側相同では両側三分葉である ( クラスⅠ). さらに, 側面像で左側相同では肺動脈が, 気管 気管支より上後側に位置するのに対し, 右側相同では肺動脈が気管支より前下方に位置する. 心臓カテーテル検査で造影するとなお鮮明となる. 16 列以上のマルチスライスCTでは造影 3DCTにより超音波検査で判断の難しい体肺静脈 肺動脈等の形態 位置の情報を得ることが可能である. また, 腹部臓器の異常についても優れた診断能を発揮する必須の検査といえる ( クラスⅠ).MRI も同程度の診断能を有するが, 撮像時間が長い上, 体動により解像度が低下するため, 新生児 ~ 乳児期の検査としてはやや不向きである ( クラスⅡa). 1SpO 2 肺血流の過不足や肺静脈狭窄 (PVO) の有無等評価に参考となる検査で, 管理上頻用される ( クラスⅠ). 2 心エコー心室機能 房室弁逆流 動脈管開存程度 肺動脈径 左右心室バランス等の評価に有用な検査である ( クラス Ⅰ). また,PVO の評価にも有用で,2D にて狭い共通肺静脈口や拡大した共通肺静脈腔を認め,Pulse wave doppler にて肺静脈血流パターンが連続性で流速が増大していれば PVO が疑われる. ただし, 肺血流量や肺動脈圧にも依存するため, 身体所見やX 線所見等と総合して判断する必要がある. 3 胸部 X 線肺血流の過不足 PVO に伴う静脈性肺うっ血の評価に有用である. ント 術 肺血流減少 肺血流増加 4 心電図 房室弁逆流 PVO スク 疑い 身体所見 イタル イン 心エコー 肺動脈 術 房室弁形成 術 総肺静脈還流異常 復 /PVO 術 心臓 テーテル CT 心臓 テーテル ( 右心 イパス 術適 評価,3 か月以 ) 右側相同では左右両側に洞結節が存在し, 左側相同では洞結節の低形成を認めるため, それぞれに対応したP 波の形態を認めるが, いずれにおいても2 種類以上のP 波が観察されることが多い. また,QRS 波形も同一症例に2 種類存在することもある. 5 心臓カテーテル検査詳細な解剖学的情報, および心機能 血行動態評価のためには必須である ( クラスⅠ). 特に肺動脈 主要体肺側副血管の同定や肺静脈の還流部位とPVO の評価に 1233

48 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 有用である ( クラスⅠ). 造影にて肺静脈の還流部位を明らかにし, 肺静脈還流路での引抜き圧を測定することで圧較差の有無 部位を同定できる. また, 肺動脈造影にて肺血管床の発育程度を, 心室造影から房室弁逆流の客観的評価を, 肺体血流比や心拍出量を算出することで心不全の評価にも有用である. 6 血液検査血漿 BNP は心不全の指標として用いられる有用な検査法で小児でも汎用されている. 4 治療選択のための検査 ( 図 36) 治療は⑴ 複合心奇形 ( 含不整脈 ) ⑵ 易感染性 ⑶ 消化管奇形に対して行われるが, 本症候群の診断契機 予後は複合心奇形によることが圧倒的に多く,⑴ 複合心奇形の治療計画が柱で,⑵,⑶については適切なタイミングで介入することになる. 臨床的には心房内臓錯位症候群という確定診断を侵襲や負担の大きい検査法を用いてまで早期に下す必要はなく, 定型的な複合心奇形パターンから疑いをもつだけで十分である. 疑い例については生じうる合併症を念頭に置き経過観察していき, 手術の機会があれば, 肉眼的に心房形態から右側相同か左側相同を判断し, 心房内臓錯位症候群の診断を確認する. 現実的には以下のように検査を進めることになる. 1 心 腹部エコー心エコーは初診より最も汎用される検査である ( クラスⅠ). 初期診断, 動脈管径 ( PGE 1 製剤投与量調節 ), 治療計画途上における心室機能 ( 心不全治療適応や効果判定 ), 房室弁逆流 ( 房室弁介入適応 ), 肺静脈部位, 流速 ( PVO の推定 ) 等に有用で, 繰り返し施行可能である. 身体所見やvital sign, 胸部 X 線写真等と照合し結果を解釈する. 初期に一度は腹部エコーも施行し, 脾臓をはじめとする腹部臓器の状態を確認しておく必要がある. 2 心臓カテーテル検査治療計画上の要所で行われる侵襲的な検査である. 心エコーでは診断に限界のある大血管 肺血管の解剖学的 血行動態的情報がより正確に得られ, 初期診断および初回姑息術式決定 ( シャント手術を行うのか, 肺動脈絞扼術を行うのか, むしろPVO 解除を行うべきあるいは併用するべきなのか等 ) に重要な役割を果たす検査である ( クラスⅠ). 3CT,MRI 肺静脈の走行 還流部位の評価に有用. また肺動脈形態, 特にpulmonary CoA の評価に有用である ( クラス Ⅰ). 4 血液検査 血漿 BNP を1つのガイドとして心不全治療を行うこともある ( クラスⅡ a). 5 心電図 電気生理学的検査 臨床症状を伴う不整脈を認めた場合はもちろん, 右心バイパス術後の血行動態に悪影響を及ぼす頻脈性不整脈を認めた場合には薬物治療やカテーテル焼灼術の適応となる ( クラスⅡa). その際は24 時間心電図やEPS( 電気生理学検査 ) を積極的に行う. Ⅵ 術後の検査計画 1 姑息手術 (palliative surgery) 姑息手術とは, 根治手術 ( 解剖学的根治あるいは機能的根治 ) に至るまでの準備手術であるが, 至らない可能性が高くても症状軽減のために行うこともある. ここでは, 代表的な体肺動脈短絡術と肺動脈絞扼術について述べる. いずれの手術も肺血流量のコントロールが目的である. 体肺動脈短絡術 : 低肺血流による低酸素血症の改善を目的として行う. 肺動脈の発育不良を伴うFallot 四徴症や動脈管依存性のチアノーゼ疾患等が主な適応疾患となる. 肺動脈絞扼術 : 高肺血流による呼吸不全 心不全の軽減や肺血管病変の進行を防ぐ目的で行う. 単心室等一期的に根治手術ができない肺高血圧を伴う先天性心疾患が適応となる. 1 診断 病態把握のための検査 1 身体所見 姑息手術後の経過観察は乳児期を通して行われることが多く, 哺乳量, 体重増加, チアノーゼの程度は重要な 1234

49 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン 目安である. 幼児期であれば, 活動時の息切れやチアノーゼ増強の有無等に注意する. いずれの手術も体が成長すると低酸素状態に傾くので, 次の手術のタイミングは重要である. 2 血液検査チアノーゼを伴う疾患が多いので, 多血症, 貧血の有無. 内服薬によってはその結果と副作用のチェックは重要である. 凝固機能, 肝機能, 腎機能検査を行う. 心負荷の指標としてBNP やhANP が有用である. 3 胸部 X 線 心電図体肺動脈短絡術後の場合, 無気肺や左右の肺血管陰影の比較, 心拡大のチェックが重要である. 肺動脈絞扼術の場合, 絞扼部が末梢側にずれて片側の肺動脈狭窄が進行することがあるので, 左右肺野の血管陰影の比較は重要であり, 忘れてはならない検査の1つである ( クラス Ⅰ). 心電図にて不整脈のチェックを行う. 4 心エコー体肺動脈短絡術後は, 心機能, 肺動脈の発育, 短絡血流, 心室容量負荷による房室弁逆流等の評価を行うため必須の検査である ( クラスⅠ). 5 肺血流シンチグラフィ 3DCT 心臓カテーテル検査前述の検査にて, 不確定要素が残り, 治療上さらなる判断が必要な場合に考慮する. これらの検査は被爆あるいは幼少児の場合は充分な鎮静が必要となること, また, 心臓カテーテル検査の場合は, ある程度の侵襲性に伴うリスクがあることを考慮する必要がある. 末梢性の肺動脈狭窄による肺血流不均衡の評価, 肺動脈の形態評価が必要な場合は,3DCTや心臓カテーテル検査を行う( クラスⅡa). 2 治療選択のための検査 この場合, 選択は根治手術を行うのか, さらに姑息手術を追加するのか, このままの状態で成長を待って再評価するのか, という3つに分かれることが多い. 上記検査のなかでは, 特に心エコー,3DCTや心臓カテーテル検査が中心となる ( クラスⅠ). 心内構造, 心機能診断にMRI が有用である場合もある ( クラスⅡb). また, 心臓カテーテル検査にあわせてバルーン血管形成や体肺側副血管のコイル塞栓等のカテーテル治療を行うこともある. 2 二心室修復術 ここでの二心室修復術後とは, 姑息手術 (Ⅵ 1 ), Rastelli 型手術 (Ⅵ 3 ), 大血管転換手術 (Ⅵ 4 ),Fontan 型手術 (Ⅵ 5 ) を除いた心内修復術で, 疾患としては主として各論でのⅤ 1 からⅤ 10 が当てはまる. 検査とポイントとしては, 修復部位の評価の他に左右心室機能, 左右心室負荷 ( 容量負荷, 圧負荷 ) の評価, 不整脈および他臓器障害の有無等が重要である. 1 診断 病態把握のための検査 1 身体所見有意の心負荷所見がなければ心雑音の残存は問題とならない. 術後急性期以降では, チアノーゼ, 呼吸苦等術前に見られた心負荷所見は消失するので, 遺残症状があれば, その原因を追究する必要がある. 2 血液検査二心室修復術後には, 人工心肺の影響, 輸血の有無, 術後内服薬の効果, 副作用等様々な状態のチェックが必要である. 貧血の有無, 凝固機能, 肝機能, 腎機能検査を行うことが多い. また, 心負荷の指標としてBNP, hanp が検査されるようになってきた ( クラスⅡa). 3 胸部 X 線 心電図胸部 X 線検査では, 心拡大の有無, 肺換気状態 ( 無気肺の有無, 横隔神経麻痺の有無等 ), 肺うっ血の有無等の判断を行う. 心電図では, 主として不整脈のチェックを行う. 房室ブロック等の徐脈性不整脈や上室性頻拍に注意する. また, 心室中隔欠損閉鎖後には右脚ブロックになっていることもある.Fallot 四徴症術後等でQRS が 150ms 以上の場合には, 右心不全に注意する. 4 心エコー二心室修復術後の心負荷残存の評価には心エコーは必須である ( クラスⅠ). 残存病変の有無や心機能の評価は必須である. 残存病変とは, 短絡残存, 弁狭窄 逆流の残存, 肺動脈等の狭窄残存等である. 5 心臓カテーテル検査等肺高血圧の残存が疑われる場合等は, 内科的治療の効果判断や治療経過観察のためには, 心臓カテーテル検査は必要である ( クラスⅠ). また末梢性の肺動脈狭窄が 1235

50 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 疑われる場合には, 肺血流シンチやMDCT, 心臓カテーテル検査 ( カテーテル治療を伴う ) を行うことがある ( クラスⅡa). 2 治療選択のための検査 残存病変により有意の心負荷が残存している場合には再手術の必要となることが多い. その場合には, 心エコー等での評価のみで行うこともあるが, 心臓カテーテル検査を行ってから判断する場合が多い ( クラスⅠ). 肺高血圧の残存で内科的治療の薬剤選択, 効果判定においては, 心エコーで右室圧負荷により肺高血圧を評価するか, 心臓カテーテル検査で直接肺動脈圧を測定して評価する. 3 Rastelli 型手術 Rastelli 型手術とは, 外導管 ( 心室と肺動脈間の conduit) を使用した二心室治療で, 対象疾患としては心室中隔欠損と肺動脈狭窄を伴った大血管転位, 総動脈幹遺残, 肺動脈弁閉鎖を伴った心室中隔欠損等がある. 遠隔期では導管内の血栓性内膜肥厚や石灰化等による狭窄進行に特に留意する必要がある. 1 診断 病態把握のための検査 1 身体所見外導管内の乱流により, 通常は収縮期心雑音を聴取する. 拡張期雑音を聴取する場合は, 肺動脈弁閉鎖不全 ( 肺高血圧がなければ低い音 ) か大動脈弁逆流 ( 高い音 ) を疑う. 2 血液検査二心室修復術後と比べると, 利尿薬,ACE 阻害薬, 抗不整脈薬, 抗凝固薬等の内服の機会が多い可能性もあり, 凝固機能, 貧血の有無, 肝機能, 腎機能検査等検査は随時行う. 内服薬によってはその他の副作用のチェックも必要である. また, 心負荷の指標としてBNP. hanpの測定が行われる ( クラスⅡa). 3 胸部 X 線 心電図胸部 X 線検査では, 二心室修復と同様に心拡大の有無, 肺換気状態 ( 無気肺の有無, 横隔神経麻痺の有無等 ), 肺うっ血の有無等の判断を行う. 外導管の石灰化の評価は側面像が有用で, カテーテル検査時の動画ではよりわかりやすい. 心電図では, 主として不整脈のチェックを 行う. 房室ブロック等の徐脈性不整脈や上室性頻拍に注意する. また, 右脚ブロックになっていることが多い. 4 心エコー ( クラス Ⅰ) 右室流出路狭窄の評価 : 導管内の血流速度の測定は年長児になると困難となることが多い. また, ドップラーによる肺動脈と右室の圧較差の評価は過大評価しやすい. 左室流出路狭窄 : 内導管を使った場合等に大動脈弁下部の狭窄が進行することがあるが, 左室長軸で形態, 血流速度から評価する. 心機能 : 弁逆流等により, 心機能が低下することがあり, 定期的に経過観察が必要である. 5 肺血流シンチグラフィ 3DCT 心臓カテーテル検査 術後の経過観察に有用な検査である ( クラスⅡa). 肺血流シンチ : 肺動脈分岐部狭窄等の末梢性肺動脈狭窄の評価に有用で, 治療前後で評価することが多い. 3DCT: 術後の外導管の走行や肺動脈走行の評価に有用である. 心臓カテーテル検査 : 術後 6か月から1 年で術後の評価として行うことが多い. 2 治療選択のための検査 外科的治療選択としては, 右室流出路狭窄と左室流出路狭窄の解除が必要となることがある. 心エコーで心室圧負荷の経過観察を行い, 圧負荷の進行があれば心臓カテーテル検査を行い, 負荷の評価を行う ( クラスⅡ a). 造影検査では外導管狭窄部位を明瞭に示せないこともあり, 術前に外導管や肺動脈の走行を評価しておくために 3DCTが有用で頻用される ( クラスⅠ). 4 大血管転換術 : TGA,cTGA,DORV 大血管転位は, 右室の静脈血が大動脈 ( 体循環 ) へ, 左室の酸素化動脈血が肺動脈に循環する構築異常である.1975 年 Jeteneが発表した大血管転換術は, 大動脈と肺動脈を各々弁上部で切離し, それぞれの遠位部を肺動脈弁と大動脈弁に入れ替え再吻合することで新大動脈根部と新肺動脈根部を再構築し, 大動脈洞から冠動脈をくりぬき肺動脈 ( 新大動脈 ) に移植する解剖学的修復法である ( 図 37). 術後遠隔期心機能は心房血流転換術に比べて良好で, 1236

51 先天性心疾患の診断 病態把握 治療選択のための検査法の選択ガイドライン TGA では Ao が の前方に位置する 図 37 大血管転換術 (Jatene 手術 ) Ao と MPA を切断し, 冠動脈をくり く Ao を P 弁断 と,PA は 弁断 に吻合し, 冠動脈は肺動脈に吻合 AO AO AO 正面図 PA PA PA rca Ica rca Ica rca Ica 側面図 AO AO AO PA PA PA rca A B C Ica rca Ica Ica rca The science and practice of Pediatric Cardiology, 2 nd edition by A Garson Jr, JT Bricker, DJ Fisher, SR Neish WILLIAMS & WILKINS 1998, Chapter 64: Transposition of the great arteries pp 1498 Figure より 変 不整脈合併も少数である. 冠循環不全に関しては, 周術期の異常 (= 心筋梗塞 ) を除くと術後遠隔期の虚血心と関連死亡は本手術後退院患者の1~2% と報告される. 術後遠隔期に特に留意する問題点 1) 右室流出路狭窄が増悪する可能性 2) 新大動脈弁閉鎖不全が増悪する可能性 3) 冠動脈不全 ( 虚血性心臓病 ) の可能性 4) 不整脈発症の可能性 1 1 聴診 病態把握および治療選択のための検査 右室流出路狭窄の進行と大動脈弁閉鎖不全の進行に注意する. 4 心電図 運動負荷心電図 Holter 心電図 電気生理学的検査 (EPS) 5 血液検査血漿 BNP 値は, 総合的な心機能指標として有用である. 6 心臓カテーテル検査形態異常と機能評価を行う. 冠動脈造影も必要である ( 移植後の選択的造影は困難なことがある )( クラスⅠ). 73DCT,MRI 3 次元構築により, 有用性の亢上が期待される ( クラスⅡa). 2 胸部 X 線 ( クラス Ⅱa). 3 心エコー 1237

52 循環器病の診断と治療に関するガイドライン ( 年度合同研究班報告 ) 5 右心バイパス手術 (Fontan 型手術,total cavopulmonary connection:tcpc) 1 右心バイパス手術とは 左右両心室をそれぞれ体循環または肺循環に分担させられないと判断される心血管構築異常は機能的単心室と総称される. 治療戦略は, 体循環の成立を一義的として機能的単心室を体心室として利用する. 肺循環の駆動ポンプである ( 機能的 ) 右心室を介さずに, 大静脈血を肺動脈に還流させるため右心バイパス手術と称される. 2Fontan 型手術の変遷 ( 図 38) 3Fontan 循環の特徴 Fontan 型手術後の循環は Fontan 循環 と総称され, 肺循環と体循環は直列で, 総肺血管抵抗の低値 ( 通常, 3Wodd 単位未満 ) は必須条件である. Fontan 循環 の肺循環は右心室の拍動がないために非拍動流といわれるが, 生理的肺循環とは異なった肺動脈圧の変動が観察される. 肺循環系の駆動力として⑴ 心臓の拡張期に生じる吸引力,⑵ 横隔膜による胸腔内と頭部 / 腹腔の内圧の差, および⑶ 中心静脈圧が関与すると考えられる. 実際, Fontan 循環 の維持には胸水 腹水を生じない範囲に高い中心静脈圧 (8~15mmHg) が必要である. 脱水 失血状態では肺循環の駆動力低下を来たし, 心臓前負荷の低下から Fontan 循環 破綻につ ながる. 術後遠隔期の主な問題点 1 1 聴診 1) 主心室機能, 房室弁機能 2) 肺血管抵抗の上昇 3) 低酸素血症 4) 血栓塞栓症 5) 不整脈 6) タンパク漏出性胃腸症 2 胸部 X 線 病態把握および治療選択のための検査 典型例の心陰影は小さく,CTR40% 以下の症例もある. 3 心臓カテーテル検査 特に, 心内 ( 右左 ) 短絡の有無, 肺内 ( 右左 ) 短絡の有無, 体静脈 心房短絡 (VV-shunt) の有無 ( 無名静脈造影, その他の静脈造影 ), 大動脈肺動脈側副血管の有無 ( 逆行性下行大動脈造影 ) は大切である ( クラスⅡ a). 4 心エコー 心臓および大血管内血栓の有無を検討する ( クラス Ⅰ). 右室性単心室の EFは40~50% に留まることがあるが, 機能的には支障がない. 図 38 Fontan 型手術の歴史 / 種類 5 心電図 運動負荷心電図 Holter 心電図 電気生理学的検査 (EPS) APC: 心房肺動脈吻合 1970 年 ~1980 年代後半心耳 肺動脈吻合 : 右心房血を肺循環へ Total cavopulmonary connection ラテラル トンネル法 (TCPC-LT) 1988 年 ~ SVC- 肺動脈吻合 +IVC 心房側壁を介して肺循環へ Total cavopulmonary connection 心外導管法 (TCPC-EC)1990 年 ~ SVC- 肺動脈吻合 +IVC 人工血管を介して肺循環へ 定期的な心電図検査の必要性は高い ( クラスⅡ a). また, Fontan 循環 では頻拍発作時に容易に低心拍出に陥る. 6 経皮酸素飽和度 :SpO 2 座位または立位で測定する. 7 血液検査総タンパク量 / アルブミン量の減少はタンパク漏出性胃腸症診断の契機となる ( クラスⅡa). 血漿 BNP 値は, perfect Fontan 例では正常範囲 (<20pg/mL) にある. 1238

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要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 24 年度医療受給者証保持者数 ) 3,144 人 2. 発病の機構不明 ( 心筋収縮蛋白の遺伝子異常が主な病因であると考えられている ) 3. 効果的な治療方法未確立 ( 根治治療なし ) 4. 長期の療養必要 ( 心不全などの治療の継続が必要である 58 肥大型心筋症 概要 1. 概要肥大型心筋症とは 原発性の心室肥大を来す心筋疾患である 肥大型心筋症は 心室中隔の非対称性肥大を伴う左室ないし右室 あるいは両者の肥大 と定義され 左室拡張機能低下を呈する 左室流出路閉塞を来す閉塞性ときたさない非閉塞性 に分類され 前者では収縮期に左室内圧較差が生じる 常染色体性優性の家族歴を有す例が多い 2. 原因心筋収縮関連蛋白 (β ミオシン重鎖 トロポニン

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h29c04

h29c04 総数 第 1 位第 2 位第 3 位第 4 位第 5 位 総数 悪性新生物 25,916 心疾患 14,133 肺炎 7,239 脳血管疾患 5,782 老衰 4,483 ( 29.8) ( 16.2) ( 8.3) ( 6.6) ( 5.1) PAGE - 1 0 歳 先天奇形 変形及び染色体異 38 胎児及び新生児の出血性障害 10 周産期に特異的な呼吸障害及 9 不慮の事故 9 妊娠期間及び胎児発育に関連

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