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かおりにばし
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1 早稲田大学 2012 年講義 2012 年 6 月 29 日日本の経済と財政の課題読売新聞グループ本社監査役前財務省事務次官丹呉泰健氏

2 1. グローバル JAPAN 2050 年シミュレーションの実施日本は人口減少の本格化を迎え日本経済は 2030 年代以降恒常的にマイナス成長の恐れがあるこの厳しい現実を直視し日本経済の取るべき道筋を考えていかなくてはならない 2011 年には東日本大震災もあり 2050 年を予測することは極めて難しいが経済学ではある一定の前提を置いてシミュレーションをする手法を取っている経済は需要サイドと供給サイドの 2 つのアプローチがあるが世界各国で長期の経済をシミュレーションするときには供給サイドの方から行うことになっている具体的には労働と資本と生産性から潜在的な成長率を探るということになるこのシミュレーションは世界 50 カ国の経済状況の予測も踏まえ推計したものである少子高齢化における労働について日本は世界最速で少子高齢化が進行している総人口で 2010 年は 1 億 2,800 万人が 2050 年には 9,700 万人ということで約 3,000 万人も減少する 2030 年以降から急速に減少し 2040 年以降は年率 1% くらいで人口が減少するしかも 65 歳以上が全体の 38.8% になる 15 ~ 64 歳の現役人口は 3,100 万人減少し 75 歳以上は 970 万人増加する総人口が減少する中で現役世代は減少し高齢者は増加する総人口のうち労働人口 ( 労働に参加する割合 ) は現在 6,600 万人だが 2050 年には 4,400 万人になり 33% 減少する 2012 年は団塊の世代の年金の支給が開始され 2050 年に向けて大きくマイナスが進んでいくことになる資本への影響について貯蓄が投資にまわり投資が資本になるという前提で考え資本がどうなるかということはすなわち貯蓄がどうなるかということ若いときに働いて老後や子供のために貯蓄をするというのが通常のパターンであるただし高齢化すると貯蓄を取り崩すため貯蓄が減少するその結果として資本の蓄積が鈍化していくこのように人口の減少というのは資本にも大きな影響を与えることになる 2

3 生産性成長率のシミュレーションについて 1980 年代から 90 年バブル崩壊くらいまでは生産性成長率が 2.3% ほど上昇していたがバブル崩壊後の 1990 年代はマイナス 0.0% 程度のほぼ横ばいといえる 2000 年に入り生産性成長率は 1% 程度 91 年から 2010 年までの生産性成長率の平均が 0.5% ほどになるなお隣の韓国が 2.8% 中国 7% を越える生産性成長率の伸びとなっているそういった生産性を前提にして 2050 年における日本経済の 4 つのシナリオを作ってみたまず一つが生産性先進国平均並み 2 つ目が失われた 20 年継続 3 つ目が財政悪化による成長率下振れ 4 つ目が労働力率改善のシナリオである生産性の上昇が 2050 年に向けて先進国平均並みの 1.2% に回復と想定するのが 1 つ目の生産性先進国平均並みのシナリオで 1991 年から 2010 年の失われた 20 年のGDP 平均成長率 0.5% に留まり続けるという失われた 20 年が継続するという 2 つ目のシナリオ 3 つ目が財政悪化による成長率下振れという悲観シナリオこれは財政が経済に大きく影響するというシナリオであるアメリカの経済学者でダニーハートとロゴフという二人が各国の財政の状況と経済成長率の関係を歴史的に調査したところ債務残高の GDP に対する割合が 90% 以上の国は成長率がそうでない国より 1% くらい鈍化するいわば財政が経済の足を引っ張るということを定量的に検証した論文もある日本も現在財政赤字が GDP の 90% 以上のため先進国より GDP 成長率が 1% ポイント低下すると想定した最後の労働力率改善のシナリオでは日本の女性労働率が 40 歳代前半で約 70% 程度であるがこれがスウェーデン並みの 90.5% が仕事をするということになった場合生産性上昇率が先進国並みの 1.2% に改善すると想定したものである 3

2. 世界経済日本財政シミュレーションの結果について日本財政シミュレーションの結果について GDP の実質成長率は生産性が回復しても少子高齢化の影響が大きく 2030 年代以降の成長率はマイナスになる恒常的にマイナス成長の恐れがある日本は人口減少の影響を甚大に被り中長期的にシミュレーションにおける労働資本の 2 要素により成長率の下押し圧力に恒常的にさらされることになるそのため

4 2. 世界経済日本財政シミュレーションの結果について日本財政シミュレーションの結果について GDP の実質成長率は生産性が回復しても少子高齢化の影響が大きく 2030 年代以降の成長率はマイナスになる恒常的にマイナス成長の恐れがある日本は人口減少の影響を甚大に被り中長期的にシミュレーションにおける労働資本の 2 要素により成長率の下押し圧力に恒常的にさらされることになるそのため労働人口寄与度と資本寄与度が 2050 年にかけてマイナスが大きくなる労働力の改善をするのが一番だが労働力を改善しても 2030 年以降はマイナス成長が続くという状況である世界の中の日本経済について 2010 年度の GDP 成長率を見るとアメリカが 3.38% で1 位中国が 1.96% で2 位日本が 1.00% で3 位インドが 0.86% で4 位となっている中国が高い生産性を上げていることから今後もこの傾向が続くと考えた場合 2025 年に中国はアメリカを抜き 2050 年は中国がトップになり日本の 6 倍くらいの規模の GDP となるアメリカは中国よりやや下回るが同じくらいの 6 倍程度インドが日本の 3 倍程度の成長と想定されるインドネシアが成長してきているシミュレーションの 4 つのシナリオにおいて生産性先進国平均並みの場合でも日本はインドに抜かれブラジルロシアと変わらなくなるさらに財政悪化による成長率下振れという悲観シナリオにおいては日本のG DPの規模はインドネシアとほぼかわらないという状況になり先進国から脱落するというリスクがある人口減少の影響がマクロ経済財政に非常に大きな影響を与えると考えられるでは次は財政について考えてみたい 4

財政についてもシミュレーションをしてみたが 2015 年までに消費税率を 10% 引き上げたとしてもその後 2050 年までに収支改善しなかったらどうなるか債務残高は何もしなければ 600% になり破綻という可能性は十分あるただしこれは国債発行余力を考慮しない機械的試算である政府は今 2015 年までに財政赤字を半減させ 2020 年からは黒字化させ GDP

5 財政についてもシミュレーションをしてみたが 2015 年までに消費税率を 10% 引き上げたとしてもその後 2050 年までに収支改善しなかったらどうなるか債務残高は何もしなければ 600% になり破綻という可能性は十分あるただしこれは国債発行余力を考慮しない機械的試算である政府は今 2015 年までに財政赤字を半減させ 2020 年からは黒字化させ GDP の債務残高を下げていきたいという目標をもっているそれを実現するためにどうすればいいか 2011 年度以降毎年 GDP の 1% 5 兆円の 9.5% 収支の改善をする必要がある仮に消費税だけで引き上げる場合 10% 引き上げた後にさらに 25% 引き上げないといけないもちろん債務の削減など他の策を講じれば抑制は可能であるこのシミュレーションで見えてきたことは財政再建には成長が非常に大事であるということである 2030 年以降マイナス成長になるということは国民一人ひとりにとっても大きな問題であり財政にとっても税収の伸びが鈍化し財政再建はきわめて難しいということになる 3. シミュレーション結果より 2050 年問題にどう対応すべきか 2050 年における世界の変化 1 人口増加と高齢化人口が減少するのはロシアドイツぐらいでアジアアフリカは人口が増加する 2050 年には世界の人口は 90 億人になると見込まれている総人口が増えるだけではなく中国も高齢化が進み 2050 年には中国も 25.6% が高齢者になると推定されるしかも中国は医療保険国民皆保険がない状態で高齢化が進んでしまう中国は高度成長が終わる前の 2015 年から 2020 年に人口が減少する時代になるのではないか中国は難しい問題を抱えているアジアアフリカは 15 ~ 24 歳の人口が増え若い人の職をどうするかということが問題である多くの若い人に職がないということは社会が非常に不安定化する人口のうち社会の動きの変化があり 20 5

6 歳代は学生運動など社会が不安定化するこれからの世界をみていくと人口が全体として増えるがアジアの中では日本だけでなく高齢化が進むこととなる 2グローバリゼーションとITのさらなる深化グローバル化していく場合のルールは今まではアメリカを参考にしていたが今後は新興国を抜きにルールをつくるわけにはいかない新興国を入れながらどうグローバリゼーションしていくかまた ITでは情報コストが少なくなり医療や高齢者の生活子供の教育などいろいろな形で新しいビジネスが出てきてIT 技術が深化していくしかしグローバリゼーションとITの深化は経済的格差を生みやすいそのためグローバリゼーションやITに対応できる人材を育てていかなくてはならない 3 中国を含むアジアの世紀の到来中国の最大輸出はEU 各国でありヨーロッパの景気が悪くなれば中国に影響が出てさらには日本に影響がでるようになる中国でも富裕層中間層が増えアジア諸国においても同様に増えてきている価格競争だけでは新興国と競争するのは非常に難しいが日本人の総合的な力で対応することで新興国に受け入れさせる非常にいいチャンスになる中国はこれから消費を中心としてイノベーションの経済に変えていかなくてはならないはたしてそれができるのか中国が問われているまた経済的格差の問題が政治問題化しないか懸念している 4 資源受給の逼迫世界の人口が増え新興国に豊かな人が増えると食糧やエネルギー資源水などの資源に影響を与え非常に大きな問題になるこれらの資源をどう確保していくのかたとえば再生エネルギーでうまくいくのかどうか原子力をどうするのかアメリカのシェールガスが注目されているがもしも自国のエネルギーを輸入に頼らずに済むとなれば経済のみならず中東政策にも非常に大きな影響があるといえる 6

7 4. 日本としてどうすべきか ( 論点と提言 ) 人材経済産業税財政社会保障外交安全保障の 4 つの点から日本としてどうしていくべきか 14 の提言に整理してみたまずは人材については切磋琢磨を通じて成長を目指す全員参加型一億総努力社会の確立を目指すこと総人口が減る中で労働参画を実施していく女性や様々な経験を持つ高齢者の労働参加率を高めるまた英語ができるということはもはや車の免許を持っていることと同じくらいである論理的に話せたり教養力を鍛えることを大切とするそのため教育改革も必要である提言 1 女性と高齢者の労働参加生涯を通した人材力強化を促進せよ提言 2 環境変化に対応した新たな人材を育成せよ提言 3 教育現場の創意工夫と公的支援強化で抜本的な教育改革を実施せよまた経済産業についてはアジア太平洋の活力を取り込み日本経済の成長力を強化することこれからアジアが非常に成長する可能性があるアジアが成長するということは日本にとってもその成長を取り込むチャンスである日本の強みを活かし有効な投資をする TPPには積極的に取り組む日本が得意とする洗練性もてなしを活かしていけばアジアにおいて増加した富裕層から日本の製品が評価されるようになる日本の良さが発揮されるチャンスがこれからもあるまたエネルギー制約については総合的斬新的効率的の 3 原則を踏まえた冷静な判断を行いリスクに対応した分散化を進める必要がある提言 4 中国などアジア新興国の成長を取り込め提言 5 日本の強みを活かした成長フロンティアを開拓せよ提言 6 ポスト 3.11 のエネルギー制約を総合的に解決せよまた税財政社会保障については先送りはやめて財政健全化をめざし社会保障制度改革をきっちり行う日本の財政はギリシャよりも厳しい状況であり投資予算は 3 年間くらい国債の発行による収入なので改善していかなくてはいけないこのままでは持続可能ではない財政赤字が足を引っ張り社会保障が先送りされているが持続可能な制度としていくこと少子化対策の拡充を行うことまた年金医療介護の制度だけではなく高齢化社会に対応した社会システムに地域全体で街を変えていき新しい形で第二の就労を考える必要がある提言 7 財政健全化は先送りせず政府方針を守れ 7

8 提言 8 提言 9 提言 10 提言 11 若者の信頼を回復し安心で持続可能な社会保障制度を確立せよ高齢社会に対応した社会システムに地域主体で変革せよ所得格差貧困問題は就業促進と所得再分配で緩和せよ国と地方の役割分担を見直せ最後に外交安全保障については日米関係を基軸とした国債秩序形成とアジア太平洋の繁栄への積極的関与をおこなうこと新興国が非常に強くなってくることから国際的なルール作りに積極的に関与していかなくてはいけないまたアジアでは日本に対する期待が非常に大きいのでアジアの国々と協力して発展を促す必要があるまた安全保障の確保では自助のみならず共助としての日米の関係も重要であるまずは自分の国をどうすべきかを考え歴史的な問題を冷静に勉強しておかないといけない提言 12 グローバルガバナンスルールに基づいた開かれた国際秩序を維持せよ提言 13 リージョナルガバナンス安定し繁栄するアジアを強化せよ提言 14 ナショナルガバナンス日本は自助と共助で安全保障を確保せよ 5. 世界のパワーシフト日本は非常に厳しい環境の中多くの試練を乗りこえてきた今後も若い人の力を十分に発揮しこれからきちんと財政対策を進めていかなくてはいけない人口は現在日本は 10 位だが 2050 年には 17 位に陥る GDP は 3 位だったがインドに抜かれて 4 位になる一人あたりの GDP は 2050 年に日本は韓国に抜かれてしまう一人当たりの GDP が増えるがそれ以上に韓国が伸びてしまう人口減少の影響が非常に大きいという認識それを乗り越えるためにも人材が大切でありそのために教育が必要となる一方でアジアの発展がチャンスをどうしていくのか具体的にどうしていくかということが問われるわけである ( 文責 : 全労済協会 ) 8

別紙２

別紙２別紙 2 年シミュレーション結果 26 年 6 月社団法人経済同友会人口一億人時代の日本委員会 1. シミュレーションの前提 (1) 人口動態の前提 P1 (2) その他の主な前提条件 P2 (3) 実質 GDPの決定要素 P3 2. シミュレーション結果 ~ (1) 実質 GDPの寄与度分解 P4 (2) 実質 GDP P5 (3) 国民一人当たり実質 GDP P6 (4) プライマリーバランスと政府債務残高