福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状　第53巻6号801頁

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ことこおおばま
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1 801 経験福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状原田直彦 1 ),4 ), 平川克哉 2 ),4 ), 北川晋二 3 ),4 ) 1) 国立病院機構九州医療センター消化器内科, 臨床研究センター 2) 福岡赤十字病院消化器内科 3) 福岡県すこやか健康事業団 4) 福岡市医師会消化管検診部会要旨平成 12 年 6 月, 福岡市胃がん内視鏡個別検診は全国に先駆けてスタートし, 職場などで検診受診の機会がない40 歳以上の福岡市在住者を対象としている検診機関は, 手上げ方式により実績ある機関を登録し, 講習会への出席を義務付け精度向上に努めている一次検診機関は, 一次読影結果と画像資料を市医師会に提出, その資料を消化管検診部会読影委員 2 名 1 組で二次読影を実施している読影委員は, 画像につきフイルム評価, 評価コメントをつけ, 低評価判定の機関にたいしては内容を通知し改善を促すことで精度向上を図っている一次読影結果と二次読影結果が異なる場合には, 別読影委員による三次読影 ( レフェリー判定 ) を行っている読影委員定例会では, 地区ごとの検診受診者数, 要精検率, 精検受診率, がん発見率を評価しているより質の高い内視鏡検診を行うには, 検診機関の指導, 研修のシステム構築が必須と思われるキーワード胃がん検診, 内視鏡検診, 精度管理はじめに福岡市医師会は, 福岡市より委託を受け平成 12 年 6 月から胃がん内視鏡個別検診を開始しており, 本邦でも最も長い歴史を有する内視鏡検診の一つである 1),2) 今日各地で行われている内視鏡検診のモデルとなる検診体制, 精度管理体制を行ってきた 10 数年継続しながら一定の質を保っている当内視鏡検診体制の現状を示す対象と方法本検診は, 職場などで検診受診の機会がない40 歳以上の福岡市在住者を対象としており, 受診者は満 40 歳以上の福岡市民であり, 料金は現在 1,800 円に設定している X 線, 内視鏡は各個人が選択可能であり, 日時の指定がなく, 受診者の都合に合わせて受診することができる検診機関は手上げ方式による登録制であり, 平成 25 年度には275 機関が検診機関として登録されている検診機関は, 一定以上の内視鏡検査レベルを有した施設を登録し, 講習会受講を義務付けている登録医の資格は, 福岡市医師会が定めた説明会を受けた胃内視鏡検査に十分経験のある医師としている 1) 検査時には, 色素撒布像を含めた最低枚程度の胃全体を網羅した画像撮影を義務付けている読影判定基準 ( 表 1,2 ) に従い一次読影を行う生検をする際には良悪性の判定基準 3 以上であることを条件としている一次検診を実施した医療機関は, 一次読影結果と画像資料を市医師会に提出し, その画像資料を消化管検診部会読影委員 ( 平成 25 年度 40 名 ) が 2 名 1 組で二次読影を実施している読影委員は, 二次読影を行い, 画像につきフイルム評価 (a,b 1,b 2,c,d)( 表 3 ), 評価コメント ( 気泡粘液多い, 胃液吸引不十分, 等 )( 表

2 802 経験福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状 Vol.53(6), Nov ) をつけ精度管理を行っている評価コメントに該当項目がない良好な画像をa 判定, 評価コメント 1 項目該当をb 1 判定, 2 項目該当をb 2 判定, 3 項目該当をc 判定, それ以上で読影不能を d 判定としている c,d 判定の機関にたいしては内容を通知し改善を促しており,d 判定の場合には検診料金不払いとしている生検施行例については, 一次検診機関で良悪性の判定基準 1,2 であるにも関わらず生検している場合, 二次読影で 1,2 と判定した場合には生検不要とのコメントをつけ過剰な生検をしない様に指導している一次読影結果と二次読影結果が異なる場合には, 別読影委員による三次読影 ( レフェリー判定 ) を行っており, 精度を高める努力を行っている読影委員による定例会では, 区ごとの検診受診者数, 要精検率, 精検受診率, がん発見率等を評価し, フイルム評価の均てん化, 精度管理体制強化に努めている検診機関には講習会 ( 講演会, 発見胃がん症例検討会 ) への出席を義務付けており精度向上に努めているこれまでの胃がん内視鏡個別検診の実績をX 線個別検診と比較し以下に示す結果内視鏡検診スタート当初の2000 年検診受診者は,X 線検診 7,944 名, 内視鏡 2,777 名とX 線が圧倒的優勢であったが, その後, 内視鏡が急速に増加し,2003 年には逆転し, その後 X 線は減少したが内視鏡はさらに増加し2013 年には21,630 名に達した ( 図 1 ) 要精検者数も内視鏡は増加しX 線は減少している ( 図 2 ) 要精検率は, 内視鏡は 5 % 前後で一定しているがX 線は低下傾向である ( 図 3 ) 精検受診者数も内視鏡は増加しX 線は低下傾向であり ( 図 4 ), 精検受診率は内視鏡で90% 以上を維持している ( 図 5 ) 内視鏡での要精検, 則ち, 要生検は, 検診検査時の同時生検を保険診療下で行うことを認めているために精検受診率が高率になっていると思われる発見がん数は, 内視鏡検診開始当初よりX 線を日本消化器がん検診学会雑誌

3 経験福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状 803 ( 名 ) ( 名 ) 上回り, その差はさらに開いている ( 図 6 ) その内, 早期癌発見数は, 初年度のみX 線が上回ったが, その後は常に内視鏡検診が上回っている ( 図 7) がん発見率も, 内視鏡検診で常にX 線を上回っており, 現在もその傾向は続いている ( 図 8 ) フイルム評価は,a+b 1 判定 95% 以上と高いレベルを維持している ( 図 9 )

4 804 経験福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状 Vol.53(6), Nov ( 名 ) 生検率は,11.4% であったが, 徐々に低下し近年は 8 % 足らずを推移している ( 図 10) 偽陰性率を癌と診断された内視鏡検査から遡って 3 年以内に内視鏡検診を受け癌陰性と診断された者の割合と定義すると, 偽陰性率は年の集計では16.5%,2012 年の集計では15.4% であった 3),4) 前者では進行がん率は11.9% であったが, 後者では 0 % であった後者を分析すると, 2012 年に胃がん内視鏡検診を受診した20,623 名のうち発見がん65 名であり, その中で 3 年以内に内日本消化器がん検診学会雑誌

5 経験福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状 805 ( 病変 ) 視鏡検診を受け胃がんなしと診断された例は10 例であったその検診間隔は,12ヶ月が2 例, 13 ヶ月 -24 ヶ月が 7 例,25 ヶ月目が 1 例であった 4) 前回検査画像を見直しすると病変として認識できる群が 4 例, 病変として認識しづらい群が 4 例, 精検が施行されたが診断に至らなかった群が 2 例と, いずれも病変部は撮影されており, 客観性に耐えうる撮影記録法が標準化してきていると思われた 4)

6 806 経験福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状 Vol.53(6), Nov ( 病変 ) 考察内視鏡検診は, 有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン 2005 年版においては, 死亡率減少効果を判断する証拠が不十分であることから, 対策型検診としては推奨せず, 任意型検診では個人の判断で検診受診を決定するための情報提供を行うべきであるとされ推奨グレードⅠであったが 5),2014 年度版においては複数の観察研究において死亡率減少効果を示す相応の証拠がある, 対策型検診任意型検診としての実施日本消化器がん検診学会雑誌

7 経験福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状 807 (%) を推奨するとされ推奨グレードBとなったため, 今後さらに内視鏡検診が広まると推察される 6) 福岡市胃がん内視鏡個別検診の長期結果を示した内視鏡検診はX 線検診に比しがん発見率が高く有効な胃がん検診と位置付けられた内視鏡検診を行うに当たり, 一次検診機関への講習会受講義務, フイルム評価, 評価コメント, 生検時評価, 三次読影による精度管理体制を維持

8 808 経験福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状 Vol.53(6), Nov している精度管理が不十分であると偽陰性率が上昇することが報告されており, 偽陰性率低減のためにも精度管理体制維持が重要である 7) 一旦, 精度管理体制を構築しても, 検診担当医は異動により変化するため教育研修は常に行わなければ精度を維持することは困難である質の高い精度管理を行っていても, 一定の偽陰性率があることも事実である偽陰性率を考慮すると, 逐年もしくは隔年の検診受診が必要と思われる 3) 福岡市胃がん内視鏡個別検診においては, 精度管理体制, 指導研修体制を長期に渡り確立, 継続してきたことが, 質の高い画像撮影法の普及標準化, 適切な生検率, 比較的低い偽陰性率に繋がったものと推察されるより質の高い内視鏡検診を行うには, 精度管理, 検診機関の指導, 研修のシステム構築が必須と思われる今後はヘリコバクターピロリ菌感染者の減少に伴い, 胃癌が減少すると予測されており, 胃がん検診もヘリコバクターピロリ菌感染を考慮した効率的な検診体制構築を検討する必要があると思われる結語福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状を示したより質の高い内視鏡検診を行うには, 精度管理, 検診機関の指導, 研修のシステム構築が必須と思われる深謝論文作成に当たり多大なご協力を頂いた福岡市医師会消化管部会の各先生方, 福岡市医師会馬場秀太郎氏に深く感謝いたします本論文内容に関連する著者の利益相反 : なし文献 1 ) 中村裕一, 増田信生, 北川晋二, 他. 福岡市の胃癌内視鏡個別検診の成績 X 線個別検診および集団検診との比較検討. 日消集検誌 2004;42: ) 北川晋二. 福岡市医師会胃癌個別検診の現状と問題点. 日消がん検診誌 2009;47: ) 古川敬一, 北川晋二, 中村祐一, 他. 胃癌のスクリーニングとしての内視鏡検査の現状と問題点住民個別検診の立場から. 胃と腸 2008;43: ) 頼岡誠, 平川克哉, 北川晋二, 他. 平成 24 年度福岡市胃がん内視鏡個別検診における偽陰性例の検討. 日消がん検診誌 2015;53: ) がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究班 ( 主任研究者祖父江友孝 ). 有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン. 平成 17 年度厚生労働省がん研究助成金 ) 国立がんセンターがん予防検診研究センター. 有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン 2014 年度版 ) 猪股芳文, 加藤勝章, 島田剛延, 他. 偽陰性率から見た内視鏡検査の精度管理の問題点および対策についての検討. 日消がん検診誌 2009;47: 論文受付平成 27 年 3 月 20 日同受理平成 27 年 8 月 1 日日本消化器がん検診学会雑誌

9 経験福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状 809 Endoscopic individual screening program for gastric cancer in Fukuoka city Naohiko HARADA 1), 4), Katsuya HIRAKAWA 2), 4) 3), 4) and Shinji KITAGAWA 1) National Hospital Organization Kyushu Medical Center 2) Fukuoka Red-Cross Hospital 3) Fukuoka Foundation for Sound Health 4) Committee of Gastrointestinal Cancer Screening, Fukuoka City Medical Association An endoscopic individual screening program for gastric cancer in Fukuoka city has been carried out since June This program has been performed by double check reading system by registered facilities and members of the Committee of Gastrointestinal Cancer Screening. A total of 189,429 examinees have been screened by the program from 2000 to The number of recalled examinees was 10,005, and 874 gastric cancers were detected by the program. The rate of gastric cancer detected by the program was 0.46%. Accuracy control and standardization are the minimum requirements for endoscopic screening for gastric cancer. Keywords : gastric cancer screening, endoscopic screening, accuracy control

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<4D F736F F D20819B947882AA82F190568B8C91CE8FC6955C2E646F63> 奈良県肺がん検診実施要領奈良県肺がん検診実施要領 1. 目的肺がんは奈良県におけるがん総死亡数の約 2 割を占めており増加傾向にある一方肺がんは禁煙等の予防に関する知識の普及等を通じて罹患率や死亡率の減少が期待できるこのような状況を鑑み肺がんに対する正しい知識の普及に努めるとともに肺がんを早期に発見し早期に治療に結びつけることで県民の QOL の向上に資することを目的とし肺がん検診を実施する

福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状 第53巻6号801頁

福岡市胃がん内視鏡個別検診の現状　第53巻6号801頁