Acoustical Aooustloal Society SOCIety of Japan 178 凵本音響学会誌 66 巻 4 号 (2010),pp 解説 lpa ( 国際音声記号 ) の基礎言語学音声学を学んでいない人のために * 木村琢也 ( 清泉女子大学 ) * *

Size: px

Start display at page:

Download "Acoustical Aooustloal Society SOCIety of Japan 178 凵本音響学会誌 66 巻 4 号 (2010),pp 解説 lpa ( 国際音声記号 ) の基礎言語学音声学を学んでいない人のために * 木村琢也 ( 清泉女子大学 ) * *"

えのよどぎみ
5 years ago
Views:

1 Acoustical Aooustloal Society SOCIety of Japan 178 凵本音響学会誌 66 巻 4 号 (2010),pp 解説 lpa ( 国際音声記号 ) の基礎言語学音声学を学んでいない人のために * 木村琢也 ( 清泉女子大学 ) * * 小林篤志 ( 女子美術大学 ) * * h 1. とは? は International Phonetic Alphabet の頭文字で, 日本語では国際音声字母又は国際音声記号と呼ばれるが目指しているのは世界中の言語に現れる様々な言語音を一統された基準に基づく記号で書き表し, 言語音声に関する記述の基本枠組を提供することであるを制定しているのは国際音声学協会 (ln ternationalphone 七 ic Association ) 1 という組織で, お気づきのようにこの組織もと略称される同協会は 1886 年パリでの創立以来, 音声表記を中心的課題の一つに据えており, 音声学研究の発展と共に記号に改訂を加えている現行のは 2005 年修正版 2 である人問が音声器官を動かして音を発することを調 3 音と呼ぶが, の基本的な発想は, 多種多様な言語音を母音と子音の 2 種類に大別し, それぞれを調音の仕方によって細かく分類し, そうやって分類された音の一つ一つに記号を充てるというものである本稿では紙幅の関係もあるので全体の網羅的説明はせず, どのような考えに基づいて記号が定義されているかを述べるより詳しい説明は文献 [ 1 2, ], 及びそれらの和訳書 [ 3 4, ] などに譲る [ 5 ] は日本語音声学と題しているが実際には数多くの言語の音を例に出してを丁寧に説明し * Introduction to the International PhoneticAlpha bet For linguists : non and non phoneticians. Takuya Kimura ( Faculty of Le 七 ters, SeisenUniver sity,tokyo, ) * At 呂 ushi Kobayashi ( College of Art and Design lhttp 2http Joshibi University of Art and Design, Sagamihara, ) : /! /ipa/ : // / ipa / chart ( C ) pdf3articulation. 医学などの分野ではこれを構音と訳す習慣だそうだが, 言語学や音声学では調音と訳すているは音声を記号化するための体系であるから, これを学ぶためにはぜひとも実際の音声を聴く必要がある例えば東京外国語大学の 21 世紀 COE プログラム言語運用を基盤とする言語情報学拠点 ( 年度 ) の中のモジュール (2003 年 6 月 ) 4 で聴くことができる更に [6 ] の付属 CD ROM には日本語の音声を発する際の各器官の動きを記録した MRI 動画が収められており, が立脚している調音という現象を視覚的に理解する上で極めて有益である図一 1 ( 次のペ官の図である 2. 音声器官ージ ) は同から転載した音声器このうち喉頭よりも上にある器官を調音器官と呼ぶを理解するためにはこれら調音器官の名称を知ることが不可欠である図一 1 に現れている各器官の名称を表一 1 ( 次のページ ) に示すこのうち a f の記号が付されている器官 ( 広義には g, h も含める ) は能動的によく動く器官であり, 能動的調音器官又は下の調音器官と呼ばれる一方 1 7 の番号が付されている器官はあまり動かない器官で, 受動的調音器官又は上の調音器官と呼ばれるぜ o せんぜ v たんなお, b 舌尖と c 舌端を合わせた部分をしたさき舌先と呼ぶまた, 呼気の通り道となる B 咽頭, A 口腔, C 鼻腔を合わせて声道と呼ぶ 3. 子音と母音試みにバとゆっくり言ってみよう最初の部分は上下の唇が完全に閉じてい出てきた息は唇にせき止められて口の外へるため, 肺から出て行くことができないその後で唇が開かれると, 息は自由に放出されるようになる 4http ; バーと長く NII-Electronic N 工工一 Eleotronlo Llbrary Library

2 ( 国際音声記号 ) の基礎 179 表一 1 図一 1 の各器官の名称 1 上唇 2 上歯 3 上歯茎 5 軟口蓋 6 口蓋垂 7 咽頭壁 a 下唇 b 舌尖 c 舌端 d 前舌 g 喉頭蓋 h 声帯 i 喉頭 j 気管 A 冂腔 B 咽頭 C 算腔 4 硬口蓋 e 後舌 f 舌根 k 肺 4. 子音の分類子音は, 声の有無調音位置, 調音様式という三つの基準によって分類される例えば [ b ] という子音は有声音であり両唇音であり破裂音なので有声両唇破裂音と呼ばれる図一 2 ( 次のページ ) は [ 51から転載した (1993 年改訂 1996 年修正版 ) 6 の子音 ( 肺臓気流 ) の表であるが, タテ列に同じ調音位置の子音が, ヨ行に同じ調音様式の子音が並んでいる両唇音と破裂音の交点のセルには [p ] と [b ] の二つ記号が並んでいるが, このような場合は右側が有声音, 左側が無声音である以下これら三つの基, 準について説明する 4.1 声の有無コの図一 1 音声器官言ってみると, 最初の唇が閉じている一瞬の後はずっと同じ状態が続いていることが分かる今度はサと言ってみよう最初の部分は上の前歯の裏あたりに舌先が接近し, そこで空気がこすり合わされるようなオトがして, その後で舌先が歯から離れるとバのときと同じように息が自由に出ているようになるバやサの最初の部分のように, 声道のどこかで呼気の流れが何等かの妨害を受けることによって生じる音を子音と呼び, 呼気が妨害されずに口腔を自由に通って口の外へ出てゆく際に生じる音を母音と呼ぶバ, サはではそれぞれ [br ], [ se ] 5 と表記されるが, このうち [b ] と [ s ] は子音,[ e ] は母音である 5 文章の中でを用いるときには, それが音声表記であることを明示するために [1 に挟んで示す習慣であるなお, 回は [ a ] の誤植ではない 5, 母音の分類の節を参照図一 3 ( 次のペ内部の図である喉頭はいージ ) は [ 5 ] から転載した喉頭のわゆる喉仏のあたりに位置する軟骨でできた箱のような器官で, この中に声帯と呼ばれる左右一対の筋肉がある発声せずに普通に呼吸しているときには左右の声帯は大きく開いており, そこを空気が自由に出入りするしかし, 左右の声帯を密着させることなく十分に接近させると, その狭い隙間を呼気が通ることによってベルヌーイ効果が生じ, 気圧が下がっていったん声帯は閉じるが, 肺から気圧の高い呼気が送られてくるのでその力で声帯が再び開くとい運動が急速に繰り返され ( つまり声帯が振動し ), その結果ほぼ周期的な波形を持つ ( 従って高さの感覚を引き起こす ) オトが生じるこれが声である声を伴う音を有声音, 伴わない音を無声音と呼ぶ [pe ]( パ ),[ se ]( サ ) などと発音したとき, その最初の子音部分 [p ] う [ s ] は 7 無声音, 残りの母年修正版はこの表に有声唇歯はじき音の記号が加わっただけである 7 [ s ] の調音の際, 口からは空気が漏れるオトが聞こえるが, これは音声学で言う声ではない同様に, 静かにしろという意味を表す, 日本語では通常シッあるいはシーッと書かれる音も無声音である

3 ヱ 80 日本音響学会誌 66 巻 4 号 (2010 ) 図一 2 子音 ( 肺臓気流の表 ) 呼称青擬有声の状態鐸帯声門 ) 香根喉頸蓋 ( 無声の状態図一 3 声帯 ( 後ろ上方から見た図 ) 表一 2 子音の調音位置上の調音器官下の調音器官両唇音上唇下唇 [P], [ m ] 唇歯音上歯下唇 [f], [ v1 歯音上歯舌端 [ e ], [ t1 歯茎音歯茎舌端 [ s ], [t 後部歯茎音後部歯茎舌端 [ L [51 そり舌音後部歯茎舌尖国,[ ] 硬口蓋音硬口蓋前舌 [jl, [ 刈軟口蓋音軟口蓋後舌 Ek1,[η] 口蓋垂音軟凵蓋後部と口蓋垂後舌後部 [ N ],[ R ] 咽頭音咽頭壁舌根 [h ] 声門音左右の声帯 [h ],[? 1 例表一 3 子音の調音様式呼称狭窄の特徴例 9 破裂音鼻音ふるえ音はじき音摩擦音上下の調音器官が密着し, 呼気の流れが完全に遮断される口腔内は破裂音と同じだが, 軟口蓋が下がっ流れるて呼気が鼻腔内に下の調音器官が振動し, 上の調音器官を連続的に叩く下の調音器官が急速に動き, 上の調音器官との間に 1 回瞬間的な閉鎖を作りすぐに離れる上下の調音器官が非常に接近して狭めを作り, 呼気がそこを通る際に気流の乱れによるオトを生じる側面摩擦音声道の正中線上のどこかで上下の調音器官が完全に閉鎖し, その左右部は閉鎖せずに摩擦して気流の乱れによるオトを生じる接近音上下の調音器官が接近するが, 摩擦音を生じるほどは接近しない側面接近音声道の正中線上のどこかで上下の調音器官が完全に閉鎖し, の左右部は閉鎖せず摩擦音を生じるほどに接近もしないそ [P ], 回 [ m ], [ n ] [ r ], 回 [ ] [ v ], 同団 [ ], [ w ] [1], 国音部分回は有声音である一方, [ ]( バ ), [ dze ]( ザ ) 8 などを発音した場合は, 最初の子音部分からすでっに声を伴ているので, [ b ][dz ] は, 8 日本語のザを単独に発音した場合, 最初の子音は摩擦音の囘ではなく J 破擦音の [dzl であるのが普通である破擦音とは破裂音 ( この場合は [d ] ) の調音の後で閉鎖がすぐに完全に解かれるのではなくいったん ( 直前の破裂音と調音位置を同じくする ) 摩擦音の状態になることによって生じる音を言うの子音の表には破擦音の行がないが, その他の記号の欄に二つの記号を結合させて破擦音を示す方法が載っている有声音である有声音を発しているときに指先で喉頭 ( 喉仏 ) のあたりをさわってみるとビリビリと震える感覚を覚えるが, 無声音の場合にはそれがない 9plosive. 閉鎖音 (stop > とも言う破裂音という名称は調音器官の閉鎖が解放されたときの音に着目した呼び名であるが, 現実の言語音声では調音器官が閉鎖したまま解放されないことも珍しくないので, それを考慮すれば閉鎖音のほうが望ましい名称であるとも言えるしかし, の表には plosive と記されている

4 ( 国際音声記号 ) の基礎ユ調音位置上述のとおり, 子音とは声道のどこかでに狭窄が形成され, それによって呼気の流れが妨害を受けることで生じる音である最も大きな狭窄が生じる位置のことを調音位置 ( 又は調音点 ) と呼ぶ輯狭 1 半狭中雷後舌螺通常, 下の調音器官が上昇し, 上の調音器官との間に狭窄を形成する表一 2 ( 前のページ ) を参照 4.3 調音様式狭窄にも様々な形態があり, それを調音様式と呼ぶ表一 3 ( 前のページ ) を参照 4.4 肺臓気流機構以外の子音子音にせよ母音にせよ, その調音には気流が必要不可欠であるほとんどの子音 ( と, すべての母音 ) は肺からの呼気 ( これを肺臓気流と呼ぶ ) によって産出されるが, 肺臓気流以外の気流による子音を言語音として用いる言語もあり, はそれらの子音にも記号を用意している母音の分類母音も三つの基準によって分類されるが, その基準は子音とは異なり, 舌の最高部の前後 ( 舌のうち最も高くなる部分が舌の前のほうか後ろのほうか ), 舌の最高部の上下 ( 舌のうち最も高くなる部分が口腔内の高いところかそれとも低いところか ), 円唇の有無 ( 唇が丸まって前に突き出るという動作を伴うか伴わないか ) である例えば [ i ] という子音は舌の中で前舌が最も高くなり, その前舌が口腔内のかなり高いところまで上がり, 唇の丸めを伴わないので箭筈撲菲酋髻母音と呼ばれる図一 4 は [ 5 ] から転載した母音の表である記の基準に関して前舌, 中舌, 後舌の 3 段階, の基準に関して ( 舌の最高部が高いものから低いものに順に ) 狭, 半狭 j, 半広, 広の 4 段階が区別されている同じ後舌狭の欄に [ Ul ], [ u ] の二つの記号があるが, このような場合は右が円唇母音, 左が非円唇母音である日本語のウの母音は非円唇であるのが特徴とされるので普通 [ IJI ] で書かれる 10 具体的な記号については本稿では省略する Peter Lade foged らによるウェブサイト UCLA PhQnetics Lab Data の中の下記 URL に肺臓気流機構によらない子音の録音が数多くあり, 興味深い http :!7www. phonetics.ucla edu / course! chapter6 / 6aiarstream.htmI 上半広広図一 4 母音の表なお, 狭の行よりもやや低い位置に書かれている [ 1 ][, Y ][ U ] はそれぞれ [ i ][y ][ U ] に比べ,,, て弛緩した発音を示している調音器官の筋肉が弛緩しているので舌が極端な位置を取らないのである 6. 補助記号などには, 現実の言語音の多様性に対応するため多数の補助記号が用意されていの中のごく一部のみを紹介する 6.1 無声 o 0 るここではそ通常の母音は有声音だが無声の母音も発音することが可能である実際, 日本語 ( 東京方言など多くの方言 ) では無声子音に挟まれた母音 [ i ][ UJ ], は規則的に無声化する無声を表す補助記号は [ ] である ( 例 : 靴下 [ k 甲七 si 再 t 它 ] 11 ) 6.2 長い通常よりも時間的に長い調音は国といを右に書いて示されるす日本語などの言語を記述する際, う記号長さが重要な役割を果たこの記号は頻出する ( 例二おばさん [ obes 壱 N ] 12, おばあさん [ obe :sin ] 坂 [ seke ] 作家 [ sekie 亅 13 ),, 6.3 帯気音化 ( 多くの場合無声の ) 破裂音に母音が後続するとき, 調音器官の閉鎖が解かれるのと同時に声帯が 11 圓は図一 2 の子音の表に見当たらないが, その他の記号の一覧 ( 本稿では省略 ) に無声歯茎硬 rl 蓋摩擦音として記載されているこの子音の調音位置は上が歯茎と硬冂蓋の間, 下が舌先と前舌の間であるコ2 母音記号の上の口は鼻音化を表す補助記号である鼻 13 音化母音の調音の際には, 呼気は口腔を通るだけでなく軟口蓋が下がって鼻腔にも抜けるため, 口腔と鼻腔の両方が共鳴腔となる日本語の促音は, 調音音声学的には直前の子音の延長である

5 ヱ 82 振動し始める場合と, 閉鎖が解かれてから声帯が振動し始めるまでに若干の時間のずれがあってその間に空気が吐き出される音のみが聞こえる場合がある後者の場合, その破裂音は帯気音化していると言い, [ h ] という記号でそれを表す ( 例 : 英語 pie[phaa spy, [ spa ) 中国語朝鮮語などでは帯気音化の有無が語の意味の区別に影響する 7. 精密表記と簡略表記, 及び音素表記の記号に補助記号を加えることにより, かなり細かい発音の違いを書き表すことが可能である例えば日本語のみあげるのあは前後の音の影響により [ 渕のように書ける一方, あおいのあは [g] と書くことができる 14 このような詳細な音声表記を精密表記と呼ぶしかし, こうした細かい音の違いを特に説明する場合でない限り, いちいちこれほどの詳細を書き表すのは煩雑に過ぎるそこで, そのときの議論に不必要な詳細な区別は省略した表記をすることのほうがむしろ普通であるこれを簡略表記と言う例えば本稿では日本語のアの母音を [ el という記号で表してきたが, これはその母音が通常は前舌母音 [ 司と後舌母音 [ a ] の中間程度であることを意識した, やや精密な表記である多くの文献では同じ母音を [ a ] で表しているが, これは必ずしもその母音が. 前舌母音であることを主張するものではない同様に本稿の 6.1 節で日本語のクの母音を [ UI ], ッの母音を [ il と記して区別したが, 多くの文献ではどちらも [ ur ] で記されるそれどころか, 通常は非円唇であるということが分かっておりかつ当該文献の中で矛盾のない表記がされている限り, 日本語のウの母音を [ u ] で書いても間違いというわけではないの表では [ r 亅はふるえ音の記号だが, だからと言って英語の red の発音の [ r εd ] という表記の国がふるえ音を表していると考える入は少ないだろう肝要なのは, その時その場で使われているそれぞれの記号の意味を文脈に即して正しく理解することである音声表記と似て非なるものに音素表記がある当該の言語において同じひとつの音として機能する音の集合を ( 仮に現実の音声としては異なっていても ) 一つの音素と呼ぶ最近の英和辞典などでは見出し語の発音を [] でなく / / で示して 14 これらの例の中にある補助記号の説明は省略する日本音響学会誌 66 巻 4 号 (2010 ) いるものが多いが, 言語学では音声表記を [], 音素表記を / / で示す決まりになっている音素は言語ごとに異なるので音素表記は国際的ではあり得ず, 従ってそこで用いられる記号はではない同一音声を異なるレベルで表記した例を二つ挙げるまず朗読音声の例として日本音響学会研究用連続音声データベース Vbl.1 の VOL1 / DAT / CANOOO1 / A / Ael.AD 音声表記 ( 精密 ) [erevrig 早動 p.d%itsi??sib 婁 t 拿並 gib サ ni?h? : 婁? n 啓尋 iτm 勲 Y 碑疊 n 學 gda] 音声表記 ( 簡略 ) [arajulculgend4i 七 suue sulbeted %ibuun :oho :e nefimayetanoda ] 15 音素表記 / arajurugenzituosubetezibunnohorenezima getanoda / 漢字かな混じり表記あらゆる現実をすべて自分の方へねじ曲げたのだ次に講演音声の例として国立国語研究所の日本語話し言葉コーパスの Al1MO ハ音声表記 ( 精密 ) [ ε 頻サ :kx2y2k gijls 壟 A キ : ] 音声表記 ( 簡略 ) [e :kjui:kayakgijuls 立 go : } 音素表記 / erkyurkagakugizj ututjor / 漢字かな混じり表記え一, 旧科学技術庁 8. が前提としていること最後にが明示的に, いる考えを三つほど示しておく又は暗黙に前提としてまず, は言語学的に有意義な情報のみを記述する例えば低くハスキーな男性の声で早口で言ったなどの情報は記述しないこれらの情報は記述不要であるという前提があるまた, 音声が物理的には連続体であることは周知の事実だが, はこれを単音の連続に分節 (seg ment ) できるという前提に立っているそうしないとこのような記号化は不可能である最後に, 子音と母音は区別できるという前提もある英語の yet の最初の音と heed の中央の音は Is 日本語の音素表記には幾つかの流儀があるが, ここでは文献圈に倣う

6 ( 国際音声記号 ) の基礎 183 調音の構えとしては全く同一かも知れないが, 通文献常前者は子音 [j 亅, 後者は母音 [ i ] と記述されるここには音節構造という, 純粋な調音とは別の視点が含まれているこのようには決して完全無欠な記号体系ではないが, その特徴をよく理解して使ったり読んだりすれば, 言語音の記述ッールとして非常に便利なものである録音技術が飛躍的に進歩した現代でもが広く使われ続けている理由はこの便利さと, それから上に述べた三つの前提が実は人間の言語音の性質をよく反映しているということ [1 International Phonetic Association,H α ndbook of the lnternation αl Phonetic Alphabet ( Cambridge UniversityPress,Cambridge, 1999 ). [ 2 ] G,K Pullum,W.A.Ladusaw,Phonetic Symbol Cuide, 2nd ed. ( University of Chicago Press7 Chicago and London, 1996 ), [3 ] 国際音声学会編, 竹林滋, 神山孝夫訳, 国際音声ハ記号ンドブック ( 大修館書店, 東京 2003, ). [4 ] ジェフリー K, プラム 7 ウィリアム A. ラデュサー著一, 土田滋福井, 玲中川, 裕訳世, 界音声記号辞典 ( 三省堂, 東京,2003). [ 5 ] 斎藤純男, 日本語音声学入門改訂版 ( 三省堂, 東京, 2006 ). [6 ] 国際交流基金, 国際交流基金凵本語教授法シリーズ 2 音声を教える ( ひつじ書房, 東京 2009, ). にあるのだろう

Phonetics-Nag-R

Phonetics-Nag-R 1. 音声の性質音声科学への招待松浦年男 ( 北星学園大学 ) 1.1. 音声学の目標 (1) 音の定義 ( 大辞林第 2 版より抜粋 ) 空気水などの振動によって聴覚に引き起こされた感覚の内容またその原因となる空気などの振動 2. 動詞を活用語尾がたになるものとだになるものに分類しましょう 3. たになる動詞とだになる動詞では何が違うか考えましょう (8) a. 言語学的段階

Acoustical Aooustloal Society SOCIety of Japan 178 凵本音響学会誌 66 巻 4 号 (2010),pp 解説 lpa ( 国際音声記号 ) の基礎 言語学 音声学を学んでいない人のために * 木村琢也 ( 清泉女子大学 ) * *

Acoustical Aooustloal Society SOCIety of Japan 178 凵本音響学会誌 66 巻 4 号 (2010),pp 解説 lpa ( 国際音声記号 ) の基礎言語学音声学を学んでいない人のために * 木村琢也 ( 清泉女子大学 ) * *