技術論文ヘモグロビン A1c 値の測定方法間差の現状石黒旭代 1) 池田勝義 1) 山内露子 1) 杉内博幸 3) 1) 熊本大学医学部附属病院中央検査部 ) くまもと森都総合病院臨床検査科 3) 熊本保健科学大学保健学科衛生技術学科要今田龍市 2) 大林光念

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あつみねそや
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1 技術論文ヘモグロビン A1c 値の測定方法間差の現状石黒旭代 1) 池田勝義 1) 山内露子 1) 杉内博幸 3) 1) 熊本大学医学部附属病院中央検査部 ) くまもと森都総合病院臨床検査科 3) 熊本保健科学大学保健学科衛生技術学科要今田龍市 2) 大林光念 1) 西村仁志 1) 安東由喜雄 1) 熊本県熊本市中央区本荘旨熊本県における特定健康診査の結果では HbA1c が基準値 5.6% 以上を呈する受診者の比率が地域によって大幅に異なることが判明したこの原因を究明し是正措置を講じるために HbA1c 測定に関する機器や試薬による測定値の違いについて調査した測定対象はインフォームドコンセントの得られた患者血液検体および標準品 JCCRM411-2 を用いた HPLC 法免疫凝集比濁法酵素法で各検体の HbA1c 値を測定しその結果を比較した測定の結果 HbA1c 5.6%での患者血液における方法間差が最大.3%であった標準品の測定値は HPLC 法で表示値より+.2% 酵素法で +.1%高値であったが免疫凝集比濁法での結果は表示値とほぼ一致していた測定機器試薬の違いが HbA1c 実測値に差異を生じる要因となった可能性があるこの問題を是正するため HbA1c 測定の標準化に向けた早急な取り組みが必要であるキーワードヘモグロビン A1c 標準化 HPLC 法酵素法免疫凝集比濁法査の結果をみると HbA1c NGSP 値が基準値 5.6% 緒言以上を呈する受診者の比率が地域によって大幅に異なりその差は最大 %程度であった Figure 1 ヘモグロビン A1c Hemoglobin A1c HbA1c は今回我々はこのような地域差を生じる原因につい糖尿病の指標として広く用いられているが現状でて究明し是正措置を講じるために HbA1c 測定にデータの施設間差が大きいことも知られているこ関する機器や試薬の違いによる実測値の差異についの問題に対応するため日本糖尿病学会のグリコヘて調査したモグロビンの標準化作業で 1 HbA1c の安定分画 1) のみの測定を行う 2 実測値を標準品表示値で補正 I 材料と方法するなどの提案が行われ標準品の改良が行われたさらに測定法の特異性向上と日本糖尿病学会 1 材料推奨法に測定値を合わせる努力がメーカーにおいてインフォームドコンセントが得られた患者血液なされていることにより日本糖尿病学会が行った検体を用いたまた性別年齢測定機器および HbA1c の 1 回目の精度管理調査で変動係数 % 試薬の違いによって HbA1c 5.6%以上の割合にどの程以上であった施設間差も 2 回目の精度管理調査で度の差異を生じるのかのシミュレーションを目的には変動係数 4%程度まで縮小してきたしかし平成 24 年 4 月から平成 26 年 1 月に当院の検査カそれでもなお平成 22 年の熊本県における特定健康診フェ未病者を対象とした簡易健康診断システム 2) 平成 26 年 6 月 18 日受付平成 26 年 8 月 29 日受理 767 3

2 9 8 保健指導率市町村 Figure 1 平成 22 年の熊本県における市町村別の HbA1c 5.6%以上の比率 Table 1 測定機器および試薬の特徴 HPLC 法酵素法名称測定時間 45 秒 48 秒検体量 3 μl 14 μl 前処理 1, g 5 分遠心 HA-818 サンク HbA1c その他免疫凝集比濁法ノルディア N HbA1c 分分分 6分 6分 12 μl 25 μl 3 μl 1 μl 1 μl 8 g 5 分遠心 1, g 5 分遠心汎用自動分析装置に搭載可能 A1c GEAR K DCA カートリッジ方式を利用した 74 歳の 397 例男性 136 例女性 261 例の HbA1c 値を使用した被験者は連結不 II 結果可能匿名化し測定値を使用した標準品は JCCRM411-2 JDS Lot4 を用いた 2 機器と試薬 1 患者血液検体と標準品による比較を基準とした場合の各測定法の相関 HbA1c の測定には HPLC high performance liquid を Figure 2 に示した患者血液の HbA1c 値の乖離例 chromatography HPLC 法として HA-818 アークはなくいずれの方法間においても相関係数.99 以レイ東ソー当院の日常検査で使上の良好な相関が得られた一方平均値を比較す用を免疫凝集比濁法として A1c GEAR ると HPLC 法酵素法免疫凝集比濁法の順に小 K いずれも協和メデックスおよび DCA シーさくなる傾向にあったまた Sy/x については酵メンスジャパンの各システムを酵素法試薬と素法と免疫凝集比濁法でほとんど差がみられなかっしてノルディア N HbA1c 積水メディカルサンた Figure 2 に示した直線関係式を利用し特定健ク HbA1c アークレイを用いた酵素法の分析に康診査の基準値上限とされている HbA1c 5.6%でのは日立 717s 形自動分析装置を使用した各測定機各測定方法間の HbA1c 値の差異を推測したその結器および試薬の特徴を Table 1 に示した果 Table 2 に示すように HbA1c 値は HA-818 で 5.7%と最大と DCA で 5.4%と最小となり.3%の方法間差を生じた 4 768

3 mean x = 6. mean y = mean x = 6. mean y = y =.943x +.82 r =.996 Sy/x = mean x = 6. mean y = mean x = 6. mean y = y =.97x +.5 r =.996 Sy/x = mean x = 6. mean y = y =.994x -.62 r =.997 Sy/x = y =.9x r =.997 Sy/x = ノルディアN HbAlc mean x = 6. mean y = 6.61 y =.9x +.28 r =.996 Sy/x =.146 DCA 6. サンク HbAlc y = 1.6x +.74 r =.999 Sy/x =.95 Alc GEAR K HA Figure 2 HbA1c 測定方法間の比較 Table 2 単位 % HbA1c 5.6%における各測定方法間の実測値差 HPLC 法酵素法免疫凝集比濁法 HA-818 サンク HbA1c ノルディア N HbA1c A1c GEAR K DCA が特定健康診査 HbA1c 基準値 5.6%の場合の各測定機器試薬の HbA1c 換算値を示す Table 3 標準品 JCCRM411-2 測定結果単位 % HPLC 法酵素法免疫凝集比濁法 HbA1c 認証値拡張不確かさ HLC-723 G8 HA-818 サンク HbA1c ノルディア N HbA1c A1c GEAR K DCA ±.12 ±.14 ±. ±.22 ± 太字アンダーラインは HbA1c の生理的変動から求めた許容誤差 CVA 2.8% 3)を外れた測定値を示す 2 標準品の測定値標準品 JCCRM411-2 の測定結果を Table 3 に示しシミュレーション 1 性別による比較た HbA1c の生理的変動から求めた許容誤差 CVA 受診者の HbA1c 基準値上限 5.6% 以上の割合 2.8% を判断基準とすると HA-818 ノルディアは 53.9% 397 例中 214 例であった男性では N HbA1c および DCA の 4 法で認証 58.8% 136 例中 8 例女性では 51.3% 261 例中値に近い測定値となりその他 3 法の一部の濃度域 134 例が基準値以上となり男女間で %の受診において許容誤差限界を超える結果となった者割合の差異を生じた 2 群の比率には有意差を 3 検査カフェ受診者 397 例の HbA1c 値の比較と認めなかった χ2 = 2.1 p =.156 3) 769 5

4 頻度人 a 当院で使用しているの場合 HbA1c 5.6% 以上の受診者割合 53.9% 頻度人による HbAlc 値 b 最も高い値の測定装置の場合 HbA1c 5.6% 以上の受診者割合 6% 頻度人 HA-818 換算 HbAlc 値 c 最も低い値の測定装置の場合 HbA1c 5.6% 以上の受診者割合 29.2% 換算 HbAlc 値 Figure 3 HbA1c 基準値以上の患者割合についての測定方法別シミュレーション結果 2 年齢による比較受診者を歳毎に区分した 4 群代代器試薬の違いによって最大で 38.3%の受診者割合の差異が認められた Figure 3 代 7 代に分け HbA1c 基準値以上の受診者割合をそれぞれ算出すると代で 39.4% 127 例 III 考察中例代で 55.% 131 例中 72 例代で 65.% 123 例中 8 例 7 代で 75.% 16 例中 12 地域間差の調査を行う予備段階として測定機器例となった年代が上がるにつれ HbA1c 基準値以試薬の違いが HbA1c 実測値と基準値以上を呈する上の受診者割合も増加しその差異は代と 7 代受診者割合に与える影響について検討した HbA1c との間で最小の.% 代と 7 代との間で最大値の地域間差について議論する上では無論母集団の 35.6%であった 4 群の比率には有意差を認めの性別や年齢地域の特色などの要因に十分配慮すた χ = p =.2 る必要があるが本検討の結果からはそれにも増 3 測定機器試薬の違いによる換算値のシミュレーして機器試薬の違いにより生じる差異の影響が大ション結果きいことが明らかとなった 2 を用いた HbA1c 検査結果を Figure 2 今回各測定法はメーカーの協力により適切なメで得られた直線関係式を用い他の測定機器試薬にンテナンスとキャリブレーションが行われた状態でおける値に換算した最も高い測定値が出た測定したにも関わらず測定機器試薬の違いによ HA-818 に換算した時と最も低い測定値の出たり HbA1c.3%の実測値の差異を生じた一方で平に換算した時で HbA1c 基準値以上の受成 22 年度の熊本県精度管理調査 4)では新鮮血液試診者割合をそれぞれ算出すると 6% 397 例中料で最大 1.% 凍結乾燥試料で最大 1.2%の HbA1c 268 例と 29.2% 397 例中 116 例となり測定機値の施設間差が生じている現実の調査では今回 6 77

5 の検討で判明した測定機器試薬の違いに由来する熊本県では年 2 回実施されているコントロール HbA1c 実測値の差異よりも大きな施設間差が生じてサーベイの項目に HbA1c を取り入れ施設間差の把おり HbA1c が実際に測定されている各施設におい握とその是正に取り組むほか市販の管理試料だけて様々な要因に由来する測定誤差が生じている可能でなく実検体を取り入れた調査を行うなど HbA1c 性が高い例えば不十分なメンテナンスや不適切標準化へ向けた新たな取り組みを実施しており今なキャリブレーションの状況が存在し各施設での後も継続したいと考えている測定精度が十分に保たれていないことが考えられるまたその他の誤差要因として検体のサンプリン IV 結語グ位置による影響があげられ採血管の管底 1 mm からのサンプリングと血球の中間層からのサンプ測定機器試薬の違いが HbA1c 実測値に差異を生リングとの測定値の変動幅は最大.5%との報告 5) じる要因となりこのことが特定健診でみられる地もある遠心検体の場合には貧血の有無や赤血球域間差を生みだした可能性があるこの問題を是正の比重差による濃度勾配の影響など測定値に影響するためコントロールサーベイによる詳細な調査を与える因子が多数存在することから遠心をかけと標準物質による精確さの確保など HbA1c 測定のない全血検体と相関するような遠心条件を検討する標準化に向けた早急な取り組みが必要である必要があるさらに HPLC 法では溶血検体の影響を受けないがラテックス法では最大.9%の誤差がみられ溶血による影響は軽視できないとの報告 6) もあるこのような機器のメンテナンスやキャリブレーション方法そして検体の前処理方法などの誤差要因が保健指導率 HbA1c 値 5.6%以上の地域間差 %に関与した可能性がある検査室とメーカーは協力してこの問題解決に取り組む必要があるメーカーは測定原理に関わらず同様の測定値が出るよう測定法や測定値の補正方法の改善を進め今回の検討で判明した測定機器試薬の違いに起因する.3%の HbA1c 実測値の差異を改善する取り組みが必要である我々検査室は施設間差の誤差要因を究明し正しいメンテナンスやキャリブレーションを行い測定方法を統一化するなど HbA1c 標準化へ向けた取り組みを行う必要があるまたこれらの取り組みと合わせて標準謝辞本検討にあたり測定にご協力頂いたアークレイ株式会社協和メデックス株式会社シーメンスジャパン株式会社積水メディカル株式会社東ソー株式会社順不同に深く感謝の意を表します文献 1) 永峰康孝他グリコヘモグロビン HbA1c 測定値の標準化事業の成果と今後の課題医学検査 ) 島健二 HbA1c の標準化 Diabetes Frontier ) 日本臨床衛生検査技師会臨床検査精度管理教本 38 日本臨床検査技師会編東広社東京. 4) 熊本県臨床衛生検査技師会熊本県精度管理調査報告書平成 22 年度熊本県臨床衛生検査技師会編熊本. 5) 柏木健一他 JCCLS CRM-4a を用いた HbA1c 測定の標準化への対応と患者試料における乖離検体の検証機器試薬 ) 中西加代子他新標準物質 JCCLS CRM-4a JDS Lot3 に準拠した HPLC 法およびラテックス法における HbA1c 測定値の評価日本臨床検査自動化学会会誌品のさらなる改良も必要であろう 771 7

6 Technical Article Differences in hemoglobin A1c (HbA1c) levels due to measurement methods Akiyo ISHIGURO 1) Tsuyuko YAMAUCHI 1) Ryuichi IMADA 2) Hitoshi NISHIMURA 1) Katsuyoshi IKEDA 1) Hiroyuki SUGIUCHI 3) Konen OBAYASHI 1) Yukio ANDO 1) 1) Department of Laboratory Medicine, Kumamoto University Hospital (1-1-1, Honjo, Chuo-ku, Kumamoto , Japan) 2) Department of Laboratory Medicine, Kumamoto Shinto General Hospital 3) Department of Medical Technology, Kumamoto Health Science University Summary A specific medical examination in Kumamoto Prefecture demonstrated that the rates of examinees with HbA1c levels above the reference level (5.6%) significantly varied among regions. To find the cause and take corrective action, differences in the measurement results due to instruments and reagents were investigated. Blood samples were taken from patients from whom informed consent was obtained. JCCRM411-2 was used as a reference standard. HbA1c level was measured for each sample using HPLC, turbidimetric immunoassay, and an enzymatic method. The measurements demonstrated a maximum difference of.3% in blood samples from patients with a HbA1c level of 5.6% among the methods. The measurements were.2 and.1% higher by the HPLC and enzymatic methods than that of the reference standard, respectively, and closely corresponded to those by the turbidimetric immunoassay. Different instruments and reagents may have caused the differences in measured HbA1c levels. To solve this problem, efforts should be immediately made to standardize the HbA1c measurement methods. Key words: hemoglobin A1c, standardization, high-performance liquid chromatography, enzymatic method, turbidimetric immunoassay (Received: June 18, 14; Accepted: August 29, 14) 8 772

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法免疫法酵素法原理差による測定値の乖離要因

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法免疫法酵素法原理差による測定値の乖離要因 HbA1c 測定系について ~ 原理と特徴 ~ 一般社団法人日本臨床検査薬協会技術運営委員会副委員長安部正義本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法免疫法酵素法原理差による測定値の乖離要因 HPLC 法 HPLC 法原理高速液体クロマトグラフィー混合物の分析法の一つ固体または液体の固定相 ( 吸着剤 ) 中で液体または気体の移動相 ( 展開剤 ) に試料を加えて移動させ