Vol. 64, 3, 防食塗装システムにおける国際規格の動向為信一郎 a, 青木隆一 a, 田邉弘往 b a 大日本塗料技術開発部門研究部 ( 栃木県大田原市下石上 ) b 大日本塗料技術開発部門 ( 東京都大田区蒲田 5

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いつやちづ
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1 Vol. 6,, 0 5 防食塗装システムにおける国際規格の動向為信一郎 a, 青木隆一 a, 田邉弘往 b a 大日本塗料技術開発部門研究部 ( 856 栃木県大田原市下石上 8 ) b 大日本塗料技術開発部門 ( 005 東京都大田区蒲田 5 ) Te Trend of te International Standards in Corrosion Protective Paint Systems Siniciro TAE a, Ryuici AOKI a and iroyuki TANABE b a Researc Debelopment Department, Tecnical Development Devision Dai Nippon Toryo Co., td.(8, Simoisigami, Otawarasi, Tocigi 856) b Tecnical Development Devision, Dai Nippon Toryo Co., td.(5, Kamata, Otaku, Tokyo 005) Keywords : Corrosion Protection, Protective Paint System, Steel Structures, ISO, NACE. はじめに塗装の重要な目的は, 被塗物を美しく見せる美装と, 被塗物がその置かれた環境の下で長期にわたり機能を維持できるように保護することである特に, 鋼構造物に対して塗装を施すことにより様々な因子から腐食を防ぐことは, 最もポピュラーな防食方法として位置付けられているさらに他の防食方法, 例えば亜鉛めっきや電気防食と併用することにより, それらの持つ機能を一層高めることができる場合もある塗料の組成の中で塗膜となる主な構成成分はバインダーとなる樹脂と顔料であり, 基本的な性能はこの両者の選択による中でも特に用いられる樹脂によって, その塗料の特徴が決定付けられる鋼構造物を腐食環境から護るためには, 多くの場合いろいろな特徴を持つ塗料を組み合わせ, 複層の塗膜を形成して用いる例えば, 犠牲防食作用を持つ防錆顔料として亜鉛末を用いたジンクリッチペイントを最下層の防食層として用い, 中間層として耐久性のよいエポキシ樹脂塗料を, 最上層には耐候性に非常に優れるフッ素樹脂塗料を用いるといった例が上げられるこのような塗料の組み合わせを塗装系あるいは塗装システムという日本における塗料に関する規格としては,JIS K 5600 シリーズ, いわゆる塗料 JIS と呼ばれる規格があるこの規格では塗料に関する一般試験方法と JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料などのように個別塗料の品質を定める製品規格があるしかしながら被塗物を絞ってそれに適用する塗装システムを規定したものはない被塗物を維持管理する各官公庁, 公社や民間では, それぞれ独自に各用途に適した塗装システムに関する規格を定め, 運用している場合が多い例えば, 構造物の防食に関しては鋼道路橋塗装防食便覧 ( 日本道路協会編, 平成 7 年月 ) が広く使用されている国際規格では鋼構造物の塗装による防食に関して例えば ISO 規格が制定されており, これは海外ではもっとも活用されている規格であるといわれている. 防食塗装システムに関する国際規格国際標準として最も一般的な ISO 規格には鋼構造物の防食塗装システムを定めた ISO 9 シリーズがあるこれは, 日本塗料工業会を事務局として日本も参加した ISO/TC5/ SC 委員会での審議を経て 988 年に初版が制定されたものであり, 一部は 007 年に改定されている最近では海外に展開する鋼構造物の建設に際してこの規格に関する案件が増加するなど, 益々その有用性が注目されてきているさらに, 厳しい腐食環境である海洋鋼構造物に関する塗装システムの国際規格として ISO 00 や NACE SP008 がある本稿ではこれらの規格の概要について紹介する ( 表 ).ISO 9 防食塗装システムによる鋼構造物の腐食防食 (Paint & varnises Corrosion protection of steel structures by protective paint systems) ISO 9 は, 塗料メーカー, 設計エンジニア, 顧客, 塗装業者を対象に, 鋼構造物に対する防食塗料および防食塗装システムを選定するための要領について紹介している 987 年の ISO/TC5( 塗料およびワニス ) ブタペスト会議にて鋼構造物に対する防食塗装システムという分科会を設立することが決議されたことを皮切りに,990 年ロッテルダム会議における SC 分科会の設立,99 年オスローにおける第回の会議への日本の初参加を経て,998 年に制定に至った本規格は ISO 9 シリーズと称しているように, 全部で Part から Part 8 まで次の 8 つの部分から成り立っている Part : General introduction Part : Classification of environments Part : Design considerations Part : Types of surface and surface preparation Part 5: Protective paint systems

2 5 解説表面技術特徴適用範囲規格使用環境 ( 腐食カテゴリー ) その他の防食工法の記載防食塗料による鋼構造物の防食塗装系の防食機能塗装現場の特徴づけ構造物のタイプ表面及び素地調整のタイプ環境のタイプ防食塗装システムのタイプ作業のタイプ塗装システムの耐久性 ISO 9 ISO 00 NACE SP008 ( カテゴリー :C,C,C,C, C5I,C5) 水中および土中埋設 ( カテゴリー :Im, Im,Im ) なし,, 表各国際規格の特徴海洋構造物及びその関連構造物の防食塗装石油及びガス産業における海洋構造物の防システム食塗装に関する必要最低条件のガイドライ腐食カテゴリー:C5, 浸漬カテゴリー : ンを与える Im, 温度範囲 : 0 ~ 80, 飛沫帯, 外側の浸漬部, バラスト没水部の塗装系周囲の温度: 最大 50 ( 目ウォータータンク標 ) の海洋構造物で, 化学タンクの外部保護を含む海洋( カテゴリー :C5) 海洋浸漬( カテゴリー :Im) 干満帯飛沫帯( カテゴリー :C5 + Im ) なし飛沫帯外部の浸漬部バラストウォータータンクアルミ溶射, シーラント, ペトロラタム工法, ワックステープなど塗装系の記載ありなしあり性能試験ありありあり Part 6: aboratory performance test metods 期待耐用年数 ( 原文 Te expected life) を最初の主な補修塗 Part 7: Execution and supervision of paint work 装までの期間とし, Part 8: Development of specifications for new work and low() ~ 5 年 maintenance medium() 5 ~ 5 年. ISO 9 Part : 総論 (General introduction) ig() 5 年以上この Part では ISO 9 の導入として規格の適用範囲やの分類ただし, この期待耐用年数は保証期間ではない, 定義, 要求事項などについて記載されている保証期間は, 大抵期待耐用年数より短い, このつに関適用範囲は防食塗装システムによる鋼構造物の腐食防食連性はないとしているであり, 微生物( 海洋付着物, バクテリア, 付着物, 他 ), 化. ISO 9 Part : 環境分類学物質 ( 酸, アルカリ, 有機溶剤, ガス, 他 ), 機械的作用 (Classification of environments) ( 侵食, 他 ), 火などに対する保護は対象外と明確にして塗装システムによる鋼構造物の防食を考えた場合, その腐いる食環境を考慮しなければならないことは言うまでもない適用する分野は構造物の種類, 表面調整の種類, 環 Part では, 腐食環境の分類を定めているこの Part の適用境の種類, 防食塗装システムの種類, 塗装作業の種類, 範囲では鋼構造物が置かれている基本的な環境の分類およ塗装システムの耐久性であり, とくに環境の種類と塗びそれらの腐食性について扱うとしているまた ISO 装システムの耐久性を規定していることはこの規格の特徴 9 では, 特別な大気 ( 例えば化学プラントや冶金プランであるト周辺 ) に分類される環境には対応していないとしている各々の分野の適用範囲は以下の通りである腐食環境として大気腐食と水中および土中埋設腐食構造物の種類: の大きくつ分けて規定を行っている厚さ mm 以上の炭素鋼または低合金鋼とし, 鋼材で補強腐食カテゴリーの分類 ( 抜粋 ) を表, 表に示す大されたコンクリート構造物は適用外気腐食では腐食性を ISO 9 のカテゴリーに従った 5 分表面調整の種類: 類 (C ~ C5) を基本とし, さらに C5 を工業地域と海洋地域コーティングされていない面, 亜鉛, アルミニウムあの分類に分け, 次の 6 カテゴリーに分類しているるいはそれらの合金の溶射面, 溶融亜鉛めっき面, 電気 C: 極めて低い亜鉛めっき面, シュラダイジング面, プレファブリケー C: 低いションプライマーが塗装された面, その他の塗装面 C: 中程度環境の種類: C: 高い大気環境について 6 分類, 水中もしくは土中埋設環境では C5I: 極めて高い ( 工業 ) 分類 C5: 極めて高い ( 海洋 ) 防食塗装システムの種類: この分類方法は単純にその環境を記述しているのではなく, 大気条件下で乾燥硬化する塗料としており, 粉体塗料, 低炭素鋼および亜鉛の初期年間の消耗量によって規定され焼付け塗料, 熱硬化塗料, 乾燥膜厚が mm 以上の塗料, ている具体的な使用環境は例として記載されており, 実タンクのライニング, 化成処理( リン酸塩処理など ) は環境で曝露試験が実施できない場合は環境例によって推測で除外きるとしている塗装作業の種類: また, 水中および土中埋設腐食については, 腐食性を新設および塗り替え定めるのは困難ながらも Im ~ Im のカテゴリーに分塗装システムの耐久性: 類している

3 Vol. 6,, 0 防食塗装システムにおける国際規格の動向 55 表 ISO 9 における大気腐食カテゴリーおよび環境例腐食カテゴリー C very low C low C medium C ig C5I( 工業 ) very ig C5( 海洋 ) very ig 単位面積当たりの重量損失 / 減耗量 ( 曝露初年度 ) 低炭素鋼亜鉛重量損失 g/m 減耗 μm 重量損失 g/m 減耗 μm 屋外 >0 ~ 00 >. ~ 5 >0.7 ~ 5 >0. ~ 0.7 低汚染雰囲気, 農村地域 >00 ~ 00 >5 ~ 50 >5 ~ 5 >0.7 ~. 都市及び工業の雰囲気, 中程度の二酸化汚染雰囲気, 低塩分濃度の海岸 >00 ~ 650 >50 ~ 80 >5 ~ 0 >. ~. 工業地域及び中塩分濃度の海岸温暖な気候における環境の例屋内清浄な環境の保温された建物 ( 例 : 事務所, 店, 学校, ホテル ) 結露が生じる保温のない建物 ( 例 : 倉庫, 体育館 ) 高湿度でやや空気汚染のある生産設備 ( 例 : 食品加工工場, 洗工場, 醸造所, 搾乳場 ) 化学工場, スイミングプール, 海岸の乗船場 >650 ~ 500 >80 ~ 00 >0 ~ 60 >. ~ 8. 高湿度且つ腐食の激しい工業地域建物または結露状態の高汚染領域 >650 ~ 500 >80 ~ 00 >0 ~ 60 >. ~ 8. 高塩分濃度の海岸及び海洋構造物ビルまたは結露状態の高汚染領域表 ISO 9 における水中及び土中埋設環境の腐食カテゴリー例浸漬カテゴリー環境環境及び構造物の例 Im 淡水浸漬河川設備, 水力発電所 Im 海水または汽水浸漬. ISO 9 Part: 設計上の考慮事項 (Design considerations) 水門, 堰堤, 桟橋のような構造物のある港領域, 海洋構造物 Im 土中埋設埋設タンク, 鉄杭, 鉄製配管この Part の適用範囲は防食塗装システムによって塗装される鋼構造物の基本的な基準を扱うとなっている詳細は 5 防食を目的とした基本的な設計基準に手入れのし易さ (Accessibility), 隙間の取り扱い, 沈殿物や水の滞留を防止するための注意事項, エッジ部, 溶接部の欠陥, ボルト結合部分, ボックス構造部および凹部, 切り込み, 補強材, 電解腐食の防止, 取り扱い, 輸送, 組み立ての項目について述べられている. ISO 9 Part : 表面の種類と表面処理 (Types of surface and surface preparation) 塗装にとって表面処理は重要であるいくら高性能な塗料を用いてもそれに適した表面処理が施されなかった場合には, 本来の性能が発揮し得ないこの Part では, 表面処理の方法として, 水, 溶剤及び化学的処理と機械的処理のつに分け, 前者では水洗, 蒸気洗浄, エマルション洗浄, アルカリ洗浄, 溶剤洗浄, 化成処理, ( アルカリ ) 脱膜, 酸洗が, また後者については手工具処理, 電動工具処理, ブラスト処理, 火炎洗浄を挙げている表面処理のグレードとしては全面処理と塗り替えなどで旧塗膜を残した部分処理に分けている全面処理は Sa,St,Fl,Be が, 部分処理は PSa,PSt,Pa と分類し,Annex として表にまとめられている全面処理は基本的には日本でも馴染みのある ISO 850 に従っている一例を表に示す標準調整グレード Sa Sa Sa / Sa St St Fl 素地調整方法ブラスト処理手動処理, または動力工具処理火炎処理 ISO 850 の見本写真に記載の処理グレード B Sa C Sa D Sa B Sa C Sa D Sa A Sa / B Sa / C Sa / D Sa / A Sa B Sa C Sa D Sa B St C St D St B St C St D St A Fl B Fl C Fl D Fl 表 ISO 9 における表面処理の例素地調整に必要な特徴 ( より詳細な素地調整の方法,ISO 850 参照 ) 除去できそうなミルスケール, さび, 塗膜, 異物を除去する大部分のミルスケール, さび, 塗膜, 異物を除外する残っている汚染物質はしっかり付着していることミルスケール, さび, 塗膜, 異物を除去する残っている汚染物質は, スポットや縞のような形でわずかに汚れがある程度にするミルスケール, さび, 塗膜, 異物を除去する表面は金属色がでている除去できそうなミルスケール, さび, 塗膜, 異物は除去する除去できそうなミルスケール, さび, 塗膜, 異物は除去するしかし, 表面は St よりも念入りな素地調整が必要であり, 金属から光沢がでていることが条件である除去できそうなミルスケール, さび, 塗膜, 異物は除去する残っているかすは, 表面の変色したものとする著者注 : 原表では調整グレード前の記号について A,B,C,D は未塗装鋼材表面の初期状態を表す (ISO850 参照 ) との注釈がある 5 適用分野 a) 塗装されていない鋼面の素地調整 b) 記述されている調整グレードに達するまで塗膜を除去する場合の, 塗装された表面の素地調整

4 56 解説表面技術.5 ISO 9 Part 5: 防食塗装システム (Protective paint systems) この規格の中核をなすものの一つである塗装システムについて記載されているこの Part 5 のみ,007 年に改訂版がでているこの Part では, 塗料の種類と塗装系および防食塗装系表が記載されている塗料の種類として各種塗料の記載があり, その中には水系塗料も含まれているまた日本では一般的となったフッ素樹脂塗料は液ポリウレタン樹脂塗料の主剤の例の中にフッ素樹脂の記載があり, ここに含まれている塗装系については, 塗装前処理, 乾燥膜厚, 耐久性等について記述がある塗装系表には, 各種塗装系と腐食環境, 期待耐用年数まとめられている A ~ A8 迄の表があり,A が総括した表となっている A,A7,A8 は複数の腐食環境に対して上塗り塗料の樹脂タイプ別に配列されており, 上塗り塗料の性能を基本として塗装系を選択する場合や, 腐食環境のカテゴリーが良く分からない場合に便利にできているまた,A ~ A6 は特定の腐食カテゴリー別の表で, プライマーに用いる塗料に従って配列されており, 腐食環境が分かっている場合に便利にできている適用する塗装系の例を表 5に示す.6 ISO 9 Part 6: 実験室における性能試験方法 (aboratory performance test metods) この Part では, 実験室における防食塗装系の試験方法および条件について規定しているただし, ここでの試験結果は塗装系選択のための手段であり耐久性を決定するための正確な情報ではないとしているまた Part 5 の塗料では塗料の種類に水系塗料を含んでいるが, 水系塗装システムのいくつかについては, ここにある試験をそのまま適用することはできないとしている表 6に鋼へ適用する塗装系の耐久性試験方法の抜粋を示す.7 ISO 9 Part 7: 塗装作業の実施と監督 (Execution and supervision of paint work) この Part では, 工場 (worksop) あるいは現地における鋼構造物に関する塗装作業の実施と監督について規定しており, 塗装実施の前提条件, 表面処理などの被塗物の条件, 健康安全および環境保護, 保管条件などを記した塗料, 表 6 ISO 96 における鋼材に対する塗装系の試験方法 ISO 9 で定義された腐食カテゴリー C C C C5I C5 Im Im Im 期待耐用年数 ISO 8 ISO 8 ( 耐薬品性 ) ( 水浸漬 ) ,000,000,000,000,000,000 ISO 670 ( 結露 ) ISO 75 ( 塩水噴霧 ) 表 5 ISO 95 腐食環境 C,C,C,C5I,C5 に適用する塗装系の例プライマー上塗り塗装系合計期待耐久性表中で関連する塗装系塗装系 No. 樹脂系 d タイプ a 塗り回数標準膜厚 μm b 樹脂系塗り回数標準膜厚 μm b C 腐食性 low C medium C ig C5I C5 very ig very ig (industry) (marine) A. A. A. A.5 (I) A.5 () A.5 EP 他 80 EP,PUR A.06 A.07 A.6 EP 他 80 EP,PUR 60 A.07 A.08 A.7 EP,PUR,ESI Zn(R) 60 e EP,PUR 60 A. A. A.8 EP 他 80 EP,PUR 5 00 A.09 A.9 EP,PUR,ESI Zn(R) 60 e EP,PUR 00 A. A.0 EP,PUR,ESI Zn(R) 60 e EP,PUR A.5 A5I.0 A5.05 A. EP 他 80 EP,PUR 5 80 A.09 A. EP,PUR 他 50 EP,PUR 00 A5I.0 A5.0 A. EP,PUR,ESI Zn(R) 60 e EP,PUR 0 A5I.05 A5.06 A. EP,PUR 他 80 EP,PUR 0 A5I.0 A5.0 A.5 EP,PUR 他 50 EP,PUR 500 A5.0 A.6 EP,PUR 他 A5.0 A.7 EPC 他 00 EPC 00 A5.08 A.8 EP,PUR Zn(R) 60 e EPC 00 A5.07 プライマー樹脂系液液水性上塗り樹脂系液液水性 EP エポキシ EP エポキシ ESI エチルシリケート PUR ポリウレタン PUR ポリウレタン EPC 変性エポキシ a Zn(R)= ジンクリッチプライマー 5. 参照他 = 種々の防錆的顔料 b 標準膜厚 5. 参照 d 上塗りを Tie coat として推奨 e 選ばれたジンクリッチプライマーによっては標準膜厚が 0 ~ 80 μm の範囲で変動してもよいことがある 6

5 Vol. 6,, 0 防食塗装システムにおける国際規格の動向 57 膜厚や塗装方法などを記した塗装の実施, 塗装管理, リファレンスエリアの章からなる特にリファレンスエリアについては留意が必要であるリファレンスエリアは, 最低限の受け入れられる基準を確立するために, 製造業者または請負業者によって与えられるデータが正しいものかチェックするために, また塗膜の性能が完成後いつでも評価できるようにするために使用する構造物の適切な場所のことであるリファレンスエリアは通常は保障の目的で用いるものではないが, 当事者間で同意された場合はこの目的で用いることができるとしている.8 ISO 9 Part 8: 新設及び補修のための塗装仕様の展開 (Development of specifications for new work and maintenance) この Part は 9 シリーズの Part から Part 7 までの内容を束ね, 防食塗装システム全体で最も大きなボリュームとなっている仕様としてプロジェクトの仕様, 防食塗装システム仕様, 塗装作業仕様, 検査評価仕様が挙げられており, 各々についてその内容がまとめられている.ISO 00 Paint & varnises 海洋構造物に必要とされる防食塗装システムの性能 (Performance requirements for protective Paint systems for offsore and related structures) ISO 9 が鋼構造物一般の防食塗装システムについて詳細に記述しているのに対し,ISO 00 は海洋鋼構造物を対象とした防食塗装システムを選定するためのラボ試験方法, 塗装システムの耐久性を評価するためのラボ試験方法および評価基準が示されている 009 年版が現状の最新版であるこの規格の対象とする腐食カテゴリーは,ISO 9 Part に示す C5( 海洋 ),Im( 海洋浸漬 ), およびこれらを組み合わさった C5+Im( 飛末帯干満帯 ) とし, それぞれに必要なラボ試験方法が記されてある試験項目は海洋には耐エージング試験 ( 紫外線照射, 塩水噴霧および寒熱繰り返しを含むサイクル試験 ), 海洋浸漬部は海水浸漬試験および耐電気防食性を念頭に置いた陰極剥離試験, 飛沫帯干満帯についてはそれぞれの試験を要求している塗装系については適用環境別に, 最小必要条件として, プライマーの種類膜厚, 総合膜厚および付着強度について規定している表 7に性能試験の概要を示すまた, この規格に沿った性能試験についての評価結果について報告されている事例がある 5.NACE SP008 防食塗料による海洋構造物の腐食防食 (Corrosion Control of Offsore Structures by protective Coatings) NACE(National Association of Corrosion Engineers International) の定めた海洋鋼構造物に対する規格で,008 年版が最新である規格の適用範囲としては, 石油およびガス産業取扱施設に関する海洋鋼構造物に対する防食塗装系の最小限のガイドラインを与えるとなっている全体ではの章からなっている ISO 9 定めるような腐食カテゴリーの分類はないが, 塗装システムについては新設と塗り替えそれぞれについて別途に規定し, フランジ部やパイプ支障部などの使用部分について一つの章を割り振る, あるいは使用部分別に塗装仕様を定めるなど, より実際的な内容となっているまた, 性能試験についても記載されているが,ISO 00 とは異なった内容となっている表 8に NACE SP008 における, での鋼構造物新設塗装系の例を示す 6. おわりに防食塗料塗装システムに関する国際規格を中心にその概略について述べたここで述べてきた国際規格は, 先進工業国のみならず開発途上国がその国の社会資本を整備しようとする際の有用な拠り所として多用されるようになってきている例えばオイルガスなどのエネルギー資源の確保はいずれの国においても大きな問題であるが, それらの生産現場は陸上から沿岸へ, 沿岸から海上, さらには深海へと展開してきており, 防食技術の立場から見ると構造物の立地条件はより厳しい方向へと向かっていると感じざるを得ないこれらへの対応を含め, グローバルな視点での確かな技術的展開のためには, 国際的に認められた規格は重要なアイテムとなるまた国際規格が定められる背景には, 従来からある国際的にメジャーな操業会社等の塗装に関する仕様がそれぞれ多岐に渡るため, 国際規格という一つの目安が定まることは, それらに従事する当事者の負担を軽減することに貢献するとも言われている本稿をまとめるに当たり, 例えば ISO 9 シリーズは塗装に携わるものには非常に有用であり, また金属材料の腐食量に従った腐食環境の分類などはもっと活用すべきものであると考えるグローバル化が進む中, 特にここで紹介した防食塗料塗装系を扱う国際規格は益々その重要度を増してい試験表 7 ISO 00 における性能試験の概要カットの付与 7 腐食環境 C5 腐食環境 C5 と Im 組合せ ( 飛沫帯及び干満帯 ) 腐食環境 Im 耐エージング試験 * あり陰極剥離試験 (ISO 57:00) * なし海水浸漬試験 (ISO 8) あり * 原文 Annex A に定める [ISO 507 による紫外線照射及び湿潤 7 ]+[ISO 97 による塩水噴霧 7 ]+[ 0 ] のサイクルテスト * 別段の合意がない限り A 法

6 58 解説表面技術仕様 No. 工程塗装システム CN 50 ~ ( 58 ~ 8 F) 断熱有 / 無 CN ~ 50 (8 ~ 0 F) 断熱無 CN ~ 50 (8 ~ 0 F) 断熱有 CN 50 ~ 50 (0 ~ 8 F) 断熱有 / 無 CN 5 デッキ部と床通常の腐食環境 CN 6 デッキ部と床著しい腐食環境とヘリデッキジックリッチプライマーエポキシポリウレタンエポキシ下塗エポキシポリウレタンアルミ溶射封孔剤 ( エポキシ ) シーラー ( エポキシ ) 無機ジンクリッチプライマーアクリルシリコーンアルミ溶射封孔剤 ( アクリルシリコーン / フェノールエポキシ ) シーラー ( アクリルシリコーン / フェノールエポキシ ) フェノールエポキシフェノールエポキシアルミ溶射封孔剤 ( アクリルシリコーン / フェノールエポキシ ) シーラー ( アクリルシリコーン / フェノールエポキシ ) アルミ溶射薄いシーラー ( エポキシ ) シーラー ( エポキシ ) 無機ジンクリッチプライマーシリコーンシリコーンジンクリッチプライマーハイソリッドエポキシ滑り防止エポキシポリウレタンエポキシ下塗ハイソリッドエポキシ滑り防止エポキシポリウレタンアルミ溶射シーラー ( ポリウレタン ) 乾燥膜厚 μm(mil) 50 75( ) 5 75(5 7) 50 75( ) 5 75(5 7) 5 75(5 7) 50 75( ) 50 75(0 5) 50 75( ) 5 50( ) 50 75(0 5) 00 5( 5) 00 5( 5) 50 75(0 5) 50 75(0 5) 50 75( ) 5 50( ) 5 50( ) 50 75( ) 5 75(5 7) 5 75(5 7) 50 75( ) 50 75( ) 5 75(5 7) 5 75(5 7) 50 75( ) 50 75(0 5) 目標乾燥膜厚 μm(mil) 75() 5(5) 75() 5(5) 5(5) 75() 50(0) 75() 50() 50(0) 5(5) 5(5) 50(0) 50(0) 75() 50() 50() 75() 5(5) 5(5) 75() 75() 5(5) 5(5) 75() 乾燥膜厚に加えない 50(0) 滑り防止厚膜型エポキシベンダーの指定ベンダーの指定表 8 NACE SP008 におけるでの鋼構造物新設塗装系の例ジンクリッチプライマーハイソリッドエポキシ滑り防止エポキシ安全性の高いポリウレタンエポキシ下塗ハイソリッドエポキシ滑り防止エポキシ安全性の高いポリウレタンアルミ / 酸化アルミ合金溶射シーラー ( ポリウレタン ) 50 75( ) 00 00(8 ) 00 00(8 ) 50 75( ) 5 75(5 7) 00 00(8 ) 00 00(8 ) 50 75( ) 00 00( 6) 乾燥膜厚に加えない 75() 50(0) 50(0) 75() 5(5) 50(0) 50(0) 75() 00() 乾燥膜厚に加えない滑り防止厚膜型エポキシベンダーの指定ベンダーの指定く本稿をきっかけとして, 是非各規格の原文に触れ, 詳しい内容を知って頂くことを切に願っている (Received February 6, 0) 文献 ₁ ) 竹本勲 ; 防錆管理, 8, (99). ₂ ) 中尾義一 ; 表面技術, 6, 59(995). ₃ ) 田邉弘往 ; 鋼橋塗装, 6, (), (998). ₄ ) 田邉弘往 ; 鋼橋塗装, 6, (), 9(998). ₅ ) 高瀬勝治 ; 防錆管理, 56, 70(0). ₆ )ISO 9(998). ₇ )ISO 9(998). ₈ )ISO 9(998). ₉ )ISO 9(998). 0)ISO 95(007). )ISO 96(998). )ISO 97(998). )ISO 98(998). ) 高瀬勝治 ; 防錆管理, 56, 9(0). 5)ISO 00(009). 6)NACE SP

鋼道路橋防食便覧目次 A5 判 592 頁本体価格 7,500 円平成 26 年 3 月 31 日初版第 1 刷発行平成 29 年 5 月 30 日第 3 刷発行第 Ⅰ 編共通編第 1 章総則 Ⅰ 総論 Ⅰ 適用の範囲 Ⅰ 用語 Ⅰ-4 第 2 章鋼

鋼道路橋防食便覧目次 A5 判 592 頁本体価格 7,500 円平成 26 年 3 月 31 日初版第 1 刷発行平成 29 年 5 月 30 日第 3 刷発行第 Ⅰ 編共通編第 1 章総則 Ⅰ 総論 Ⅰ 適用の範囲 Ⅰ 用語 Ⅰ-4 第 2 章鋼鋼道路橋防食便覧目次 A5 判 592 頁本体価格 7,500 円平成 26 年 3 月 31 日初版第 1 刷発行平成 29 年 5 月 30 日第 3 刷発行第 Ⅰ 編共通編第 1 章総則 Ⅰ-1 1. 1 総論 Ⅰ-1 1. 2 適用の範囲 Ⅰ-2 1. 3 用語 Ⅰ-4 第 2 章鋼道路橋の腐食 Ⅰ-5 2. 1 鋼の腐食 Ⅰ-5 2. 2 腐食の分類と形態 Ⅰ-6 2. 3 環境と腐食

Vol. 64, 3, 防食塗装システムにおける国際規格の動向 為信一郎 a, 青木隆一 a, 田邉弘往 b a 大日本塗料 技術開発部門研究部 ( 栃木県大田原市下石上 ) b 大日本塗料 技術開発部門 ( 東京都大田区蒲田 5

Vol. 64, 3, 防食塗装システムにおける国際規格の動向為信一郎 a, 青木隆一 a, 田邉弘往 b a 大日本塗料技術開発部門研究部 ( 栃木県大田原市下石上 ) b 大日本塗料技術開発部門 ( 東京都大田区蒲田 5