MRI | 所報 No.52 | タバコ価格を引き上げた時の消費行動変化の見通し

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れれてらわ
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1 90 研究ノート Research Note 研究ノートタバコ価格を引き上げた時の消費行動変化の見通し平野公康神谷伸彦木村文勝要約世界保健機関 (WHO) は喫煙による健康被害を防ぐためにタバコ価格を引き上げる規制強化を求めている我が国の喫煙者数喫煙率はともに減少のトレンドにありタバコ税が引き上げられた際はさらに減少幅が拡大している 2009 年 3 月に実施したアンケート調査からタバコ価格が 4 倍に引き上げられ主要先進国並みに 1 箱 1,200 円になった場合喫煙者の 58% がタバコをやめ 21% が喫煙量を減らすと回答しタバコ消費量は 71% 減少すると見込まれるしかしながらタバコ価格が現在の 1 箱 300 円から 4 倍の 1,200 円に増加するため家計支出のタバコ支出総額は 5,845 億円増加すると予測される現状では価格上昇による総額の減少は期待できないまた喫煙者の行動に関して分析するとタバコ価格の引き上げによってタバコ支出が増える分は外食費飲料 ( 酒ビール等を含む ) 代教養娯楽 ( 旅行を除く ) 費を減少させる傾向が強い逆に値上げを機にタバコ支出を減少させる人はその分を旅行や通信費の増加にあてる傾向が観察されるタバコ税の引き上げは間接税の税収額への影響だけでなく家計支出の変化を通じて広範な影響を及ぼしその増減方向が業種によって異なることは興味深いタバコ税引き上げの政策によって影響を受ける業種への対策として増えた税収の一部を使うなど政策をパッケージ化する議論につながるものである目次 1. 背景及び目的 2. 主要先進国と比較した日本のタバコ事情 3. 喫煙者数及びタバコ消費のトレンド 4. タバコ消費量の価格弾力性 5. タバコ価格変化に伴う喫煙者の消費行動変化 6. タバコ税引き上げの経済影響についての考察

2 タバコ価格を引き上げた時の消費行動変化の見通し 91 Research Note Expected Consumption Behavior Change Caused by an Increase in Tobacco Prices Tomoyasu Hirano, Nobuhiko Kamiya, Fumikatsu Kimura Summary To prevent health hazards caused by smoking, the World Health Organization (WHO) asks for tightening of regulations through an increase in tobacco prices. The number of smokers and smoking rates in Japan are declining and the decline has becoming greater since the tobacco tax was raised. According to a questionnaire survey conducted in March of 2009, 58% of smokers answered that they would quit smoking and 21% would reduce the smoking amount, if the tobacco price was quadrupled to 1,200 yen per box, which is the same level as prices in major advanced countries. Consequently, the amount of tobacco consumption is estimated to decrease by 71%. However, if the tobacco price were quadrupled from the current 300 yen to 1,200 yen, the total spending on tobacco in household expenditure is estimated to increase by billion yen. Under the present circumstances, a decrease in total spending through an increase of prices cannot be expected. According to the analysis of smokers behavior, smokers are more likely to reduce expenses on boarding-out, drinking (including sake, beer, etc.) and culture/entertainment (excluding travel) when spending on tobacco is increased due to an increase in tobacco prices. On the other hand, it is observed that people who take the occasion to cut spending on tobacco are likely to increase expenses in traveling and communication in turn. A rise in tobacco tax not only affects indirect tax revenues but also has extensive effects through change in household expenditure. It is interesting that whether revenues increase or decrease differs by industry, leading to a dispute on packaging of policies such as using some of the tax revenues for taking measures on industries affected by a rise in tobacco tax. Contents 1.Background and Objective 2.Tobacco Circumstances in Japan Compared with Major Advanced Countries 3.Number of Smokers and Tobacco Consumption Trend 4.Price Elasticity of Tobacco Consumption 5.Change in Smokers Consumption Behavior Due to Change of Tobacco Prices 6.Consideration of the Economic Impact of a Rise in Tobacco Tax

3 92 研究ノート Research Note 1 背景及び目的何ごとにもメリットとデメリットがあるタバコ 1 税の引き上げにも両面があり賛否両論があるそこでタバコ税引き上げによる他産業へのプラスマイナスそれぞれの影響を推計しタバコ税引き上げの影響を受ける業種へ税収増の一部を使う政策パッケージの検討議論の端緒を拓くことを目的とした 2 主要先進国と比較した日本のタバコ事情タバコの価格には国たばこ税地方たばこ税たばこ特別税それに消費税がかけられているその合計は円 2008 年 7 月以降であり 1 箱 300 円の標準的な商品であればその割合は 63 になっている 1 しかしながら図 1 のように我が国でのタバコの税金は先進各国の中では低いためにタバコ価格も低いタバコ価格の低さと相まって喫煙率も他の先進諸国と比べて高くなっている 2 世界保健機関 WHO は喫煙による健康被害を防ぐためにタバコ価格を引き上げる規制強化を求めており我が国でも賛成する声は多いその一方で喫煙者やタバコ関係者からは反対の意見が出されている 2008 年末にタバコ税引き上げの議論がなされた時の陳情の様子を伝えるニュース映像から賛成及び反対それぞれのプラカードを見ると賛成たばこ税の引き上げ賛成日本看護協会日本看護連盟反対たばこ販売店を廃業に追い込むたばこ増税に断固反対反対たばこ税増税断固反対葉たばこ農家を見捨てるなが読み取れまさに利益団体間の争いの様相を呈している図 1 主要先進国のタバコ価格マールボロ及び男性喫煙率タバコ価格男性喫煙率 ,133 ノルウェー 1,109 アイルランド米国 NY州 897 英国シンガポールカナダ 733 オーストラリアフランスオランダ 643 スウェーデンフィンランドドイツスイス日本 ,000 1,200 円注年 7 月 1 日現在におけるタバコ 20 本の小売価格カナダはベンソンアンドヘッジス注 2 現地通貨での価格を 2008 年 8 月 2009 年 7 月の平均為替レートを使用して換算注 3 男性喫煙率の米国については全州の平均値作成タバコメーカーへの電話取材参考文献 2 をもとに三菱総合研究所 1 植物学上のタバコも農産物あるいは製品としてのたばこあるいは煙草もすべてタバコとしたただし引用についてはそのままの表記とした

4 タバコ価格を引き上げた時の消費行動変化の見通し喫煙者数及びタバコ消費のトレンド我が国の喫煙者数喫煙率はともに減少のトレンドにあるタバコ消費量はタバコ税引き上げの影響を除くと毎年前年比 2 3% 程度減ってきている日本たばこ産業の調査 [3] によると 2009 年 5 月現在の喫煙者数は 2,601 万人喫煙率は 24.9% と報告されているまた年間のタバコの販売数量は 2,458 億本 (2008 年度 )[4] でありこの数字をもとに計算すると喫煙者は平均して年間 9,450 本すなわち 1 日当たり 1.3 箱 (1 箱 20 本 ) のタバコを吸っていることになるしかしながら喫煙者に対してアンケート調査を実施すると平均して 1 日 0.86 箱という結果が得られた平均して 1 日 1 箱弱という数字はアンケート調査では再現性よく得られる回答であり比較的多く引用されている旧厚生省の調査においても 1 日当たりの喫煙本数の中央値は 11 本から 20 本に入っており同様の傾向がみられる [5] タバコの販売数量から算出した喫煙本数と喫煙者へのアンケート結果から算出した喫煙本数にはおよそ 1.5 倍の乖離があるこれほどの差異となると調査のサンプリングや集計分析における統計の誤差あるいは調査上は表に出ていない未成年者によるタバコの購入などでは説明ができない *2 4. タバコ消費量の価格弾力性我が国の喫煙者数タバコの販売数量はともに減少傾向にある販売数量は毎年約 60 億本 ( 前年比 2 3% 程度 ) のペースで減少しておりタバコ税が引き上げられた時はさらに減少幅が拡大している ( 図 2) 世界保健機関(WHO) は課税率の上昇によるたばこ価格の引き上げは消費を抑え禁煙を促進する最も有効な方法であると主張しているが図 2 はこの世界保健機関 (WHO) の主張の正当性を我が国において裏付けるものであるタバコ税は 2003 年 7 月 2006 年 7 月に 1 箱 20 円ずつ値上げされておりそれぞれのタバコ税増税による販売数量減少への影響は 71 億本 ( 前年比 2.3%) 81 億本 ( 前年比 2.8%) と見積もられるここからタバコ消費量の価格弾力性を求めるととなる世界保健機関 (WHO) の報告 [2] では先進国で 0.4 低中所得国で 0.8 と取りまとめておりこの数値とそれほど違わない結果と考える価格弾力性が 1 よりも絶対値として小さいことはタバコ税引き上げによってタバコ価格が上がると販売額は増える傾向にあることを意味するすなわちタバコの小売マージンが税込み額で定率に決められている状況下においてはタバコ税増税によって販売数量が減 * 2 この原因については喫煙動向が正確に把握されていないため明確に説明することはできない喫煙による健康被害やニコチンの常習性が広く認識されるようになった昨今の状況では喫煙者にはタバコを吸うことに対するやましさが相当程度感じられるアンケート回答のために行動を振り返った時喫煙本数についての設問で設定される選択肢には幅があるためどちらかというと普段の少ない日はなどと都合よく解釈して喫煙本数を少なく回答してしまう心理が働いているのではないかと筆者は考えるまた未成年者による喫煙はたばこ産業の試算による喫煙者数にはカウントされていないことも理由としてあげられる

5 94 研究ノート Research Note 少したとしてもタバコ 1 箱の単価が増加するために販売額は増加しその結果として販売マージンの絶対額は増えることになる陳情の光景で見られたプラカードのたばこ販売店を廃業に追い込むたばこ増税に断固反対という主張は必ずしも経済合理性にもとづいた行動とはいえない図２タバコの販売数量とタバコ税増税の影響億本 3,500 3,400 3,300 タバコ税増税 3,200 3, %減 3,000 タバコ税増税 2,900 2, %減 2,700 2,600 2, 年度作成財務省紙巻たばこの税負担割合等の推移をもとに三菱総合研究所次にタバコ価格を４倍に上げた場合の喫煙者の行動を検討する 2 倍 4 倍と不連続にタバコ価格の大きな引き上げがなされた場合価格弾力性は 1 箱 20 円程度の値上げ時とは異なってくると予想されるタバコ価格を 1,000 円に引き上げた場合税収が増えるのか減るのか見方が分かれているタバコ価格が現在の倍 600 円までは税収の増加が見込まれるがそれ以上になると減収の可能性があるとの報告 6 がある一方でタバコ 1 箱 1,000 円に値上げした場合のタバコ税収額は 3 兆 2,000 億円から 5 兆 9,000 億円の増収になるとの試算 7 もある三菱総合研究所が 2009 年 3 月に実施したインターネットアンケート調査では喫煙者のうちタバコ価格が 2 倍 600 円になると 28% が 4 倍 1,200 円になると 58% がほとんど吸わなくなると回答したまた 1 箱 1,200 円になると喫煙本数を減らすとの回答も 21 あり禁煙と消費の抑制が重なってタバコ消費量は 71% 減少すると予想される一方タバコ価格 1,200 円ではタバコ税が 5 倍以上となるためタバコの販売額は 5,845 億円タバコ税収は 1 兆 5,521 億円増加すると見積もられる 3 先に述べたように喫煙者に対するアンケート調査では喫煙本数の回答が実際の行動よりも少なめに出る傾向がみられることも含みおくと主要先進国並みに 4 倍 1,200 円まで引き上げたとしても税収増となる可能性がさらに高くなるのではないかと考える５タバコ価格変化に伴う喫煙者の消費行動変化タバコ価格の変化は家計支出にも影響を及ぼすタバコ税が引き上げられてタバコ価格 3 タバコ価格引き上げに伴いタバコの需要減から販売数量が減少する数量減自体はタバコ産業にも税収にも比例的に減少をもたらすしかしタバコ産業の単位当たり付加価値率の変化低下よりタバコ税率の変化上昇の方が大きいためタバコ販売額以上に税収が増加することになる

6 タバコ価格を引き上げた時の消費行動変化の見通しが上昇すると総じてみれば前述のようにタバコ支出は増加すると予想されるしかしながら個人でみるとタバコ支出を増やす人が出てくる一方で値上げを機にタバコをやめるかまたは大幅に喫煙本数を減らすことで結果的にはタバコ支出を減らす人も出てくるタバコ支出を増やす人はタバコ代を確保するために他の消費を抑制するもしくは貯蓄額を減らす必要が生じてくる逆にタバコ支出を減らす人は浮いたタバコ代を他の消費や貯蓄に回すことができるようになる図３アンケート調査でタバコ代を増やす人に対してタバコ代が増えた分を穴埋めするために減らす項目を聞いたところ外食費 15.4 飲料酒ビール等を含む 11.7 食料食材弁当代等 10.3 の順であったタバコ代が増えた分を穴埋めする割合についての回答者平均それに対して禁煙やタバコ消費の抑制によってタバコ代を減らす人に対してタバコ代が減った分を回す項目を聞いたところ旅行行楽の費用 14.3% 食料食材弁当代等 14.2% の順であった図 3 タバコ税引き上げによる喫煙者の消費行動の変化喫煙本数 A タバコ代を増やす人減らさないタバコ支出が増加タバコ税引き上げタバコ価格4倍 300円 1,200円減らす現状の1/4 以上に減らす禁煙穴埋めのため外食費飲料酒ビール含む食料食材弁当代タバコ支出外食費 B タバコ代を減らす人タバコ支出が減少浮いたタバコ代を回す旅行行楽食料食材弁当代 5,845億円 1,418億円飲料酒ビール含む 826億円旅行行楽 371億円作成三菱総合研究所６タバコ税引き上げの経済影響についての考察タバコ税が引き上げられてタバコ価格が 4 倍の 1,200 円になった場合タバコへの家計支出の総額は 5,845 億円増加するため他の消費の抑制が生じると見込まれる特に外食産業や飲料酒ビール等を含む産業には 1,418 億円 826 億円というマイナスの影響が予想される一方で旅行行楽への支出が 371 億円増加するなど喫煙の抑制によって支出の増加が期待できる業種もある表１公衆衛生学の分野では喫煙による超過医療費や労働力損失など喫煙者が一消費者として負担しきれずに喫煙者が属している共同体に負担させている社会的損失額を算出してタバコ税増税を議論してきたタバコによる社会的損失額は 7 兆 3,246 億円に達しタバコ税収を大幅に上回っている 8 その報告にもとづき日本学術会議からタバコ税を大幅に引き上げて税収を確保したままタバコ消費量の減少を図る提言がなされている 9 しかしながらタバコ税が引き上げられた場合の喫煙者の消費行動の変化とそれによる家計支出の変化についての研究はほとんどなされてきていないそのような状況の中今回のアンケート調査では全体傾向を把握するには精度の粗いものではあるもののタバコ 95

7 96 研究ノート Research Note のために外食や酒を減らすタバコがやめられたらタバコ代を旅行や通信費に回すという興味深い結果が得られたこのような調査を続けることでタバコ税の引き上げによる間接税の税収額への影響だけでなく家計支出の変化や喫煙の抑制を通じた社会的損失の減少など広範な社会的影響を算出することが可能となり得るまた場合によっては酒やビールの税率を下げて消費の減少を緩和するなどタバコ税引き上げの政策によって影響を受ける業種への対策に増えた税収の一部を使うなど政策をパッケージ化する議論につながるものである本調査は国立がんセンター研究所たばこ政策研究プロジェクトの委託によって行われた表１タバコ税引き上げが家計支出に与える影響 A( タバコ代を増やす人項目 1 食料食材弁当代等 2 菓子代 3 飲料酒ビール等を含む代 4 外食費 5 電気ガス水道代 6 衣類履物の費用 7 タバコ代増加分の減少配分 ①影響額億円 B タバコ代を減らす人タバコ代減少分の増加配分 ②影響額億円合計 ①+② 億円 , , , 交通費電車バス代自動車のガソリン代等通信費電話携帯電話インターネット等旅行行楽の費用 , ,754 2, , ,084 5, 旅行以外の教養娯楽費映画や文化施設スポーツクラブパチンコ等その他貯蓄貯金など合計 551 注１ ①についてはタバコ税増税によるタバコ代増加分9,929億円を100%として家計支出項目ごとにアンケートから得られた家計支出項目別の減少配分を乗じたもの注２ ②についてはタバコ税増税によるタバコ代減少分4,084億円を100%として家計支出項目ごとにアンケートから得られた家計支出項目別の増加配分を乗じたもの作成三菱総合研究所参考文献 1 日本たばこ産業 WEB サイトたばこ税の仕組み 2 世界保健機関 WHO 2008 年世界のたばこの流行に関する報告 MPOWER 政策パッケージ国立がんセンター研究所たばこ政策研究プロジェクト翻訳発行日本たばこ産業 2009 年全国たばこ喫煙者率調査社団法人日本たばこ協会 WEB サイト平成 20 年度紙巻たばこの販売実績厚生省保健医療局平成 10 年度喫煙と健康問題に関する実態調査笹川陽平依田高典たばこ一箱 1000 円 : 大幅な税収効果は見込めない Voice 2008 年 10 月号高橋裕子たばこ 1 箱 1000 円とした場合のたばこ税収に関する中間報告書厚生労働科学研究油谷由美子たばこ税増税の効果影響等に関する調査研究厚生労働科学研究医療経済研究機構日本学術会議要望脱タバコ社会の実現に向けて 2008

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教育費負担に影響を及ぼす諸要因―JGSS-2002データによる分析― 日本版 General Social Surveys 研究論文集 [5] JGSS で見た日本人の意識と行動 JGSS Research Series No.2 The Factors Affecting Expenditure on Education Results of Japanese General Social Surveys (JGSS-2002) Mondo