日本版 KABC-II の取り扱いと検査結果報告についての 注意点 検査者の資格要件については 日本版 KABC-II マニュアル の KABC-II の検査者の要件 に記載されているように 専門性が必要です 認知心理学や教育心理学などの領域はもちろん 臨床家としての能力と規範が求められます それは KABC-II に限ったことではなく WISC-IV や DN-CAS など心理検査を取り扱うに際して共通することです 例えば 日本テスト学会によって テスト規準 として 実施と採点 結果の利用 記録と保管 テスト関係者の責任と倫理 などがまとめられていますが 検査者はそれらを踏まえて適切な対応をしなければならないのです 検査結果を 受検者の保護者など ( 場合によって受検者本人も含む ) に丁寧にわかりやすく説明すると同時に 個々の検査結果はもちろん検査問題などの内容が流出することにならないように 十分に注意しなければなりません ここでは 日本版 KABC-II の取り扱いと検査結果の報告についての注意点を 簡単にまとめます 1 検査用具や記入済み記録用紙の取り扱い検査用具 ( マニュアル 換算表 習得尺度シートや記録用紙を含む ) 記入済み記録用紙は 専門家以外の人に開示してはいけません 専門家以外の人とは 受検者やその保護者 および専門的な研修を受けていない教員などの学校関係者も含みます これらの人々に検査や結果の概要を説明する場合は 検査用具を見せたり 記入済み記録用紙そのものを見せたり複写 ( 複製 ) して渡してはいけません ( 医師や心理専門職者など専門家どうしの情報伝達 カンファレンスなどにおいては例外として認められます ) 2 検査結果の説明と報告書受検者の保護者など専門家以外の人への説明および所見の提示は 総合尺度および各尺度の報告 これら尺度間の比較評価までの内容を基本としてください これらを受検者の臨床状態に照らして 保護者や学校の教員が具体的に理解できるよう説明してください 下位検査の解釈には尺度の解釈以上に専門性を有するので注意し 受検者の特徴を際立って反映していると解釈される場合に できるだけ平易な表現で 具体的に説明してください 報告書のフォームは別添資料 (KABC-II 検査報告書 ) に示します 3 学校で保管する検査結果学校 ( 保育園や幼稚園を含む ) で保管する資料は その資料が誰の目にふれるか あるいは利用される際の利用者の専門レベルが明確でないため 注意を要します 一般的には専門家以外の人の取り扱いと考え 検査用具 ( マニュアル 換算表 習得尺度シートや記録用紙を含む ) 記入済み記録用紙は学校には保管しないことを原則とし 検査結果は保護者に渡す報告書と同様のものを保管するようにしてください 学校に有資格の検査者が在席する場合などに検査用具や記入済み記録用紙などの学校保管を判断されるときは 有資格者と学校管理者の責任と管理のもとで厳重に保管してください 日本版 KABC-II 制作委員会日本 K-ABC アセスメント学会丸善出版株式会社
KABC Ⅱ 検査報告書作成日 : 年月日 1 氏名 : 男 女検査年月日 : 年月日生年月日 : 年月日 ( 歳 ) 検査者 : 学校 学年 : 2 相談内容 ( 主訴 ) 3 検査結果 1) 全般的な知的水準 ( 認知総合尺度 ) および習得度の水準 ( 習得総合尺度 ) 2) 認知面および習得面の特徴 [ カウフマンモデル ] [CHC モデル ] 認知検査 標準得点 信頼区間 (90%) 習得検査 標準得点 信頼区間 (90%) 標準得点 信頼区間 (90%) 認知総合尺度 習得総合尺度 CHC 総合尺度 継次尺度 語彙尺度 長期記憶と検索尺度 同時尺度 読み尺度 短期記憶尺度 計画尺度 書き尺度 視覚処理尺度 学習尺度 算数尺度 流動性知能尺度 ( 数的推論 ) 結晶性知能尺度 ( 計算 ) 尺度 尺度 3) 検査時の様子 4 備考 ( その他の検査結果等 ) 5 総合所見 6 支援方針および内容
カウフマンモデルに基づく検査結果 認知 認知総合尺度と習得総合尺度の比較 継次 習得 同時 算数 認知 語彙 書き 読み 学習 計画 KABC Ⅱ 尺度間の比較 ( 認知尺度 ) KABC Ⅱ 尺度間の比較 ( 習得尺度 ) NW( 84) (116 )NS 認知総合尺度 標準得点 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 継次同時計画学習 習得総合尺度語彙算数 NW( 6) (14 )NS 評価点 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 継 次 数唱 語の配列 手の動作 認知尺度 同時計画学習 顔さがし絵の統合近道さがし模様の構成物語の完成パターン推理語の学習語の学習遅延 習得尺度 語彙算数 表現語彙なぞなぞ理解語彙ことばの読み文の理解ことばの書き文の構成数的推論計算
CHC モデルに基づく検査結果 KABC Ⅱ 尺度間の比較 (CHC 尺度 ) 長期記憶と検索 短期記憶 視覚処理 流動性 推理 結晶性能力 長期記憶と検索 短期記憶 視覚処理 流動性推理 結晶性能力 標準得点 NW( 84) (116 )NS 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 CHC 総合尺度長期記憶と検索短期記憶視覚処理流動性推理結晶性能力 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 NW( 6) (14 )NS 評価点 長期記憶 と検索 語の学習 語の学習遅延 数唱 短期記憶 語の配列 手の動作 顔さがし 視覚処理 近道さがし 模様の構成 流動性 推理 物語の完成 パターン推理 表現語彙 結晶性 能力 なぞなぞ理解語彙数的推論計算 ことばの読み ことばの書き 文の理解 文の構成
用語解説 本報告書で用いられている検査結果の用語には 以下のような意味があります 検査結果の意味を考える時に 参考になさってください 認知総合尺度 全般的な認知処理能力を示しています ここでは 知識や技能の量ではなく 新しい知識や技能を獲得していく時に必要となる基礎的な力を示しています 習得総合尺度 習得総合尺度は 語彙 読み 書き 算数という領域の総合的な力を示しています この尺度は必ずしも学力と一致するものではありませんが 基礎的学力の一部を示していると言えます 継次尺度 継次尺度は 連続した刺激を一つずつ順番に処理する力を示しています 例えば 複数の音声や動作を聞こえた通り または見た通りの順番でどの程度まねることができるか等の力を示しています 同時尺度 同時尺度とは 複数の刺激をまとめて 全体として捉える力を示しています KABC-Ⅱ では 複数の視覚的な情報をまとめる力を示しています 計画尺度 計画尺度とは 課題を解決するために 適切な方法の選択 決定 実行 そして その実行が適切に行われているかどうかをチェックする等の力を示しています 学習尺度 学習尺度とは 新しいことを学ぶ力がどの程度かを示しています KABC-Ⅱ では 視覚的な情報と聴覚的な情報の組み合わせを学習していく力やそれを保持する力を示しています 語彙尺度 語彙尺度とは 語彙に関する力がどの程度かを示しています 具体的には 語彙に関する知識や理解力及び表現力等の力を示しています 読み尺度 読み尺度とは 文字の読みや文の読解力等がどの程度かを示しています 具体的には 平仮名やカタカナ 漢字がどの程度読めるのか また短文や文章はどの程度理解できるのかを示しています 書き尺度 書き尺度とは 文字の書きや作文力がどの程度かを示しています 具体的には 平仮名やカタカナ 漢字がどの程度書けるのか また短文はどの程度書けるのかを示しています 算数尺度 算数尺度とは 計算力や数的な処理の力を示しています 具体的には 加減乗除の計算や算数 数学における文章問題をどの程度解けるかを示しています CHC 総合尺度 CHC 総合尺度は 知的発達の総合的な力を示しています KABC-Ⅱ の 絵の統合 を除くすべての検査を合わせた総合的な力を示しています 長期記憶と検索尺度 長期記憶と検索尺度は 学習した情報を記憶し 必要に応じて その情報を引き出す力を示しています KABC-Ⅱ では 視覚的な情報とその名称に関する記憶と検索の力を示しています 短期記憶尺度 短期記憶尺度とは 短時間の記憶に関する力を示しています 具体的には 聴覚的な刺激や視覚的な記憶 また聴覚的刺激を視覚に変換し 記憶する力を示しています 視覚処理尺度 視覚処理尺度とは 視覚的な情報を正しく捉え 頭の中で変換したり推理したりする力を示しています KABC-Ⅱ では 視覚情報のマッチングや再生等の力を示しています 流動性推理尺度 流動性推理尺度とは 推理力や応用力を用いて 柔軟に新奇な課題を解く力を示しています KABC-Ⅱ では 複数の視覚刺激から推理して 適切なものを選択する力を示しています 結晶性能力尺度 結晶性能力尺度は これまでに修得してきた知識の量を示しています KABC-Ⅱ では 日常で用いられる語彙の理解や表現等に関する力を示しています 尺度 尺度とは 蓄積された数学的知識及び数学的推論に関する能力です KABC-Ⅱ では 四則計算や文章題等の算数の基礎的な力を示しています 尺度 尺度とは 文字や文の及び文の読解能力に関する力を示しています KABC- Ⅱ では 国語の基礎的な学力の程度を示しています