EPID と ImageJ による Winston-Lutz テスト 大阪府立急性期 総合医療センター 谷正司 Winston-Lutz テストは SRS や SBRT の際の QA に用いられるテストです. 発表当時はフィルムで行われていましたが, デジタル化が進み, 現像タイプのフィルムは使用し難くなっています. 現在 GAF クロミックフィルムが使用できますが, 高価でもあり, 簡便とは言えません. 一方で,EPID を用いた方法もいくつか報告されています 1, 2). ここでは,EPID で取得した画像と, フリーソフトウェアの ImageJ を用いた Winston-Lutz テストをご紹介します. 幾何学的条件の担保について EPID 中心はガントリー角度により移動することが考えられます.Winston-Lutz テストの定量的評価において,Field 中心は Ball 中心に対する相対的な位置で計算されますので,EPID が平行移動していると考えれば算出結果に違いはありません. しかしこれ以外に, ガントリー角度による EPID までの距離の変化,EPID 自体の傾斜やねじれが生じることが考えられます. 本稿で紹介する方法は, これらの幾何学的な条件が変動しない事, もしくは許容できる範囲である事が前提になります. また, 照射野の対称度や平坦度も解析結果に影響を与えます. 各装置の特性を十分考慮した上で試されることをお願いします. 使用機器リニアックは Varian Clinac ix,epid は as1000( 有効視野 40.1 30.1 cm, 画素数 1024 768 pixel), テストツールは 3 mmφ のタングステン球と 3 mmφ の発泡スチロール棒を用いて自作しました (Fig.1). 画像解析ソフトは NIH ImageJ 1.47v を使用していますが,Plug-in は使用していません. 座標の算出にはスプレッドシート (Microsoft Excel) を用いています. 小さくても高吸収なタングステン球は RC カーのデフギアに用いるベアリングとして市販されていて (1,200 円 /10 個 ), 模型屋さんで入手することができます. 発泡スチロールの棒は釣り道具屋さんの 自作ウキ コーナーで探してみてください. 解析の都合上,Ball を支えるロッドは極めて低吸収でないと解析結果に影響を及ぼします. レーザーポインタが見やすい Fig. 1 自作テストツールように Ball を白くペイントするのもポイントです. 接着剤によっては発泡スチロールを溶かしますので, エポキシ系の接着剤が適しています. 幾何学的配置 EPID までの距離は 150 cm としました. as1000 は 1pixel あたり 0.392 mm の分解能を持っていますので,1.5 倍拡大で撮影し,1 m の距離に換算した場合 0.261 mm/pixel の分解能となります. 照射野は 2 cm 2 cm,jaw を用いて作成しています (Fig. 2). Fig. 2 幾何学的配置
画像取得照射条件は 6 MV X 線を使用し,10MU の照射を行いました. 今回は Varian AM Maintenance を使用して DICOM 形式で画像を取得していますが,DICOM 以外の画像でも,1 ピクセルあたりの大きさが解っていれば, この後の処理は可能です. また,2 値化処理の閾値 (Threshold) を固定するために EPID での画像取得条件を一定にしておいた方がいいと思われます. 画像読込 File - Import Image Sequence ImageJ への画像読込は ImageSequence で読み込みます. これで,1 つのフォルダに入ったファイルを一度に読込 処理を行えます. SubPixel 処理 Image Adjust Size 読み込んだ画像のままでは EPID 固有の分解能でしか計測ができません. ここで, 計測の最小単位である 1 ピクセ Fig. 3 画像処理のアルゴリズムル以下の計測値も算出できるように SubPixel 処理を行います.SubPixel 処理は画像を使った計測ではよく使われる手法で, 画素数を増やし, 濃度を補間する事により仮想的に分解能を高める処理です 3). 画像補間アルゴリズムには Biliner 法を用いました.Fig. 4 に示した例は 1024 768pixel を 5 倍拡大して 5120 3840pixel にしています. ここで,SubPixel 処理の拡大率を大きくすると,PC の性能によってはハングアップする場合があります. その場合は Canvas Size を用いて解析に必要な部分だけを切り抜いて処理を行います. ピクセルのスケール化 Analyze Set Scale ImageJ には既知のピクセル数に対する距離を用いて, ピクセルサイズを任意の単位に変換する機能 Set Scale があります. この機能を用いて測定結果を 1 m の位置における mm 単位の結果に変換します. Fig. 5 に示した例は幾何学的拡大率を 1.5 倍,SubPixel 処理の拡大率を 5 倍として 1pixel は 0.392 / 1.5 / 5 = 0.0523 mm ここでは 100pixel を 5.23 mm にセットしていることになります. Fig. 4 Resize 輪郭抽出 Image Adjust Threshold 取得した画像を 2 値化し,Field と Ball の輪郭抽出を行います. この時の Threshold は画像取得条件によって異なりますので,Field と Fig. 5 Set Scale Ball の Profile を参考にするといいと思います. ここで,2 点の Threshold を設定することで Field と Ball に分離する事ができます (Fig.7).Fig.6 に示した例は 15300 と 16000 に Threshold を設定しています. 照射時の MU を固定し,EPID での画像取得条件を固定することで, この Threshold も固定することができます. 中心座標の算出 Analyze Analyze Particles 次に Field と Ball の中心座標を求めます. この処理には Analyze Particles という機能を用います.
Fig. 6 プロファイルで閾値を確認し Threshold を設定する Fig. 7 2 値化された画像 Analyze Particles はバイナリーか閾値画像にある対象物をカウントするために用いる機能で, 細胞の個数や大きさを計測するのに用いられます (Fig. 8,Fig. 9). この Result に表示される中心座標は,2 値化後にカウントされたピクセル 1 つ 1 つの座標の平均値を表しています. また, この座標はすでにピクセルサイズのスケール化を行っているため 1 m での実寸位置と考えることができます. Fig. 10 に示した Results は 1 が Gantry:0 の Field,2 が Gantry:0 の Ball の中心位置です. デジタル画像は左上が原点になりますので, この数値は画像左上からの距離になります (Fig. 11). この処理を行う際に Ball を支持しているロッドが高吸収な物質の場合, ロッド側に中心座標がシフトする事が考えられます. 市販のテストツールを使用す Fig. 8 細胞の計測る場合はこの点に注意して使用する事が必要です. Fig. 9 Analyze Particles の設定 Fig. 10 Analyze Particles の Results Fig. 11 デジタル画像の原点は左上 Field 中心と Ball 中心のズレ量の算出 Spreadsheet Analyze Particles の結果をエクセルシートにコピー & ペーストを行います.Ball の中心位置を基準にして Field の中心位置の差を算出します. これが,Field 中心と Ball 中心のズレ量となります. 計算結果の例を示します (Fig.12). グラフにある原点が Ball の中心です. これを基準に照射野の中心がどの方向にどれだけズレているかを視覚的に表しています. IGRT QA への応用 Spreadsheet IGRT QA の場合は Image center と Ball の座標を評価することになります.aS1000 の画素数は 1024 768pixel. SubPixel 処理で 5 倍拡大した場合 5120 3840pixel,Image center 座標は (X,Y) = (2560,1920) となります. この時 1 m の位置で 100pixel が 5.23mm なので Image center の位置は画像左上から X : 5.23 / 100 2560 = 133.888 mm, Y : 5.23 / 100 1920 = 100.416 mm
となります. この位置と Ball の中心位置の差が IGRT におけるズレ量になります 同様に OBI(On-Board Imager) の画像でも解析が可能ですが,pixel size の違いに注意してください. Winston-Lutz Test by ImageJ 2014.2.10 Makiko Nishio Field center compared with Ball Field(mm) Ball(mm) Shift(mm) Coordiate(mm) Gantry X Y X Y X Y Lat(X) Vert(Z) Long(Y) 0 133.140 101.091 133.282 101.301-0.142 0.210-0.142 0.000 0.210 90 133.538 101.676 133.158 101.470 0.380-0.206 0.000-0.380-0.206 180 133.624 102.305 133.501 101.770 0.123-0.535-0.123 0.000-0.535 270 133.297 101.620 133.666 101.531-0.369-0.089 0.000-0.369-0.089 *X G:0 Gun +X Target Z+ Gun G:180 Target Z* Fig. 12 ズレ量の計算例 マクロの作成 Plugins-Macros-Record ImageJ はマクロを記録することができます. 全ての処理をコマンドで行うと面倒ですが, マクロだと短時間で結果が算出できます. また,Threshold や拡大率はマクロの中に書き込む事ができますので, そのたび入力する必要はありません. マクロの記述は TXT ファイルですので, プログラムを作成するほど難しくはありません (Fig.13). 詳しくは, 他の専門書やインターネットで調べてみてください. 特に ImageJ の Download サイトにある Free のマクロファイルや,java プログラミングのサイトが参考になります. Fig. 13 マクロの記述例 ( 一部分のみです ) 参考文献 1)Lei Dong,Almon Shiu,Samuel Tung.Verification of radiosurgery target point alignment with an electronic portal imaging device (EPID).Med. Phys. 1997;24(2):263-267 2)Tarraf Torfeh,Stéphane Beaumont,David Bonnet,et al.digital phantoms for the evaluation of a software used for an automatic analysis of the Winston-Lutz test in image guided radiation
therapy.physics of Medical Imaging 2008; DOI:10.1117/12.768668. 3) http://www.mitutoyo.co.jp/support/service/catalog/07_kogu/r284_4.pdf