国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針(改訂版)

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3. 報告方法 1) 報告はインシデント アクシデントレポートに記載して行う 所属長が 患者影響度レベル の判断を行った上で提出する 2) レベル3b 以上の医療事故発生時には 口頭での報告を優先し 患者の救命措置等に支障が及ばない範囲で 遅滞なく書面による報告を行う 3) 自発的報告がなされるよう

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3 医療安全管理委員会病院長のもと 国府台病院における医療事故防止対策 発生した医療事故について速やかに適切な対応を図るための審議は 医療安全管理委員会において行うものとする リスクの把握 分析 改善 評価にあたっては 個人ではなく システムの問題としてとらえ 医療安全管理委員会を中心として 国府台

国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院医療に係る安全管理のための指針 第 1 趣旨本指針は 医療法第 6 条の10の規定に基づく医療法施行規則第 1 条の11 の規定を踏まえ 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 ( 以下 センター病院 という ) における医療事故防止について組織的に

医療安全管理指針

( 別添様式 2) 喀痰吸引等業務 ( 特定行為業務 ) の提供に係る同意書 下記の内容について十分な説明を受け内容を理解したので 喀痰吸引等業務 ( 特定行為業務 ) の実施に同意いたします 喀痰吸引等 ( 特定行為 ) の種別 口腔内の喀痰吸引該当する ( 実地研修を実施する行為 ) にチェック

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本院における「医療にかかる安全管理のための指針」(以後指針と記載する)を周知していただくために下記の質問への回答をお願い致します

医療安全対策に関する行政評価・監視 結果報告書 第3 行政評価・監視結果 2 国等における医療安全対策の推進 (3) 医療事故情報収集等事業の実効性の確保

責任者 医療安全管理者等をもって構成する (3) 委員会では 医療事故防止対策の検討 医療事故防止のために行う提言 職員に対する指示 啓発 教育 広報などの協議を行い 月 1 回開催するものとする 3 医療安全管理部門の設置 (1) 委員会で決定された方針に基づき 組織横断的に当院内の安全管理を担う

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4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

Ⅰ.1~7.smd

( 様式第 6) 病院の管理及び運営に関する諸記録の閲覧方法に関する書類 病院の管理及び運営に関する諸記録の閲覧方法 計画 現状の別 1. 計画 2. 現状 閲 覧 責 任 者 氏 名 閲 覧 担 当 者 氏 名 閲覧の求めに応じる場所 閲覧の手続の概要 ( 注 ) 既に医療法施行規則第 9 条の

○ 東京医科大学霞ヶ浦病院 医療安全管理指針

する 研究実施施設の環境 ( プライバシーの保護状態 ) について記載する < 実施方法 > どのような手順で研究を実施するのかを具体的に記載する アンケート等を用いる場合は 事前にそれらに要する時間を測定し 調査による患者への負担の度合いがわかるように記載する 調査手順で担当が複数名いる場合には

公立学校共済組合九州中央病院医療安全管理指針 第 1 章医療安全管理に関する基本 1-1( 目的 ) 公立学校共済組合九州中央病院 ( 以下 病院 という ) では 病んでいる人の人権を尊重し 健やかで心豊かな社会をつくるための医療を提供します を基本理念としている この基本理念の実践にあたっては

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3 電子情報処理組織の使用による請求又は光ディスク等を用いた請求により療養の給付費等の請求を行うこと ( 以下 レセプト電子請求 という ) が義務付けられた保険医療機関 ( 正当な理由を有する400 床未満の病院及び診療所を除く なお 400 床未満の病院にあっては 平成 27 年度末までに限る

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(2) 総合的な窓口の設置 1 各行政機関は 当該行政機関における職員等からの通報を受け付ける窓口 ( 以下 通報窓口 という ) を 全部局の総合調整を行う部局又はコンプライアンスを所掌する部局等に設置する この場合 各行政機関は 当該行政機関内部の通報窓口に加えて 外部に弁護士等を配置した窓口を

総会名簿 代表区分 氏 名 現 役 職 名 1. 健康保険 船 員保険及び国民 幸 野 庄 司 健康保険組合連合会理事 健康保険の保険 平 川 則 男 日本労働組合総連合会総合政策局長 者並びに被保険 間 宮 清 日本労働組合総連合会 患者本位の医療を確立する連絡会 委員 者 事業主及び 宮 近 清

医療法人社団恵生会上白根病院 医療安全管理規定 規定第 1 条設置恵生会上白根病院における医療安全管理のため医療安全対策 ( 推進 ) 委員会 医療安全管理室及び医療安全管理委員会を設置する 第 2 条目的医療事故の予防を推進し 病院として患者様に安全な医療サービスを提供することを目的とする そのた

法律 出典 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律 ( 昭和 35 年 8 月 10 日法律第 145 号 ) 政令 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令 ( 昭和 36 年 1 月 26 日政令第 11 号 ) 省令 医薬品 医療機器等の品質

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資料 4 医療等に関する個人情報 の範囲について 検討事項 医療等分野において情報の利活用と保護を推進する観点から 医療等に関する個人情報 の範囲をどのように定めるべきか 個別法の対象となる個人情報としては まずは 医療機関などにおいて取り扱われる個人情報が考えられるが そのほかに 介護関係 保健関

事業者が行うべき措置については 匿名加工情報の作成に携わる者 ( 以下 作成従事者 という ) を限定するなどの社内規定の策定 作成従事者等の監督体制の整備 個人情報から削除した事項及び加工方法に関する情報へのアクセス制御 不正アクセス対策等を行うことが考えられるが 規定ぶりについて今後具体的に検討

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医療安全管理のための

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京都府がん対策推進条例をここに公布する 平成 23 年 3 月 18 日 京都府知事山田啓二 京都府条例第 7 号 京都府がん対策推進条例 目次 第 1 章 総則 ( 第 1 条 - 第 6 条 ) 第 2 章 がん対策に関する施策 ( 第 7 条 - 第 15 条 ) 第 3 章 がん対策の推進

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(2) 電子計算機処理の制限に係る規定ア電子計算機処理に係る個人情報の提供の制限の改正 ( 条例第 10 条第 2 項関係 ) 電子計算機処理に係る個人情報を国等に提供しようとする際の千葉市情報公開 個人情報保護審議会 ( 以下 審議会 といいます ) への諮問を不要とし 審議会には事後に報告するも

関する基本的考え方 2 医療安全管理委員会 ( 委員会を設ける場合について対象とする ) その他の当該病院等の組織に関する基本的事項 3 従業者に対する医療に係る安全管理のための研修に関する基本方針 4 ( 略 ) 5 医療事故等発生時の対応に関する基本方針 ( 医療安全管理委員会 ( 患者を入院さ

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に 正当な理由がない限り無償で交付しなければならないものであるとともに 交付が義務付けられている領収証は 指定訪問看護の費用額算定表における訪問看護基本療養費 訪問看護管理療養費 訪問看護情報提供療養費及び訪問看護ターミナルケア療養費の別に金額の内訳の分かるものとし 別紙様式 4を標準とするものであ

る として 平成 20 年 12 月に公表された 規制改革推進のための第 3 次答申 において 医療機器開発の円滑化の観点から 薬事法の適用範囲の明確化を図るためのガイドラインを作成すべきであると提言したところである 今般 薬事法の適用に関する判断の透明性 予見可能性の向上を図るため 臨床研究におい

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2012/07/01

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「 タイトル 」実施要領(案)

料 情報の提供に関する記録 を作成する方法 ( 作成する時期 記録の媒体 作成する研究者等の氏名 別に作成する書類による代用の有無等 ) 及び保管する方法 ( 場所 第 12 の1⑴の解説 5に規定する提供元の機関における義務 8 個人情報等の取扱い ( 匿名化する場合にはその方法等を含む ) 9

薬事法における病院及び医師に対する主な規制について 特定生物由来製品に係る説明 ( 法第 68 条の 7 平成 14 年改正 ) 特定生物由来製品の特性を踏まえ 製剤のリスクとベネフィットについて患者に説明を行い 理解を得るように努めることを これを取り扱う医師等の医療関係者に義務づけたもの ( 特

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

はじめに 近年 科学や技術の進歩に伴い医療も急速に大きな変貌を遂げつつあるが その成果はわれわれの環境を改善に導くものである一方 それ自体新たな危険を孕むものである 我々医療者には このような進歩や変化に呼応して安全な医療を提供し続けることが求められる しかし 医療事故防止対策とする限り 医療事故を

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個人情報保護規程

( 内部規程 ) 第 5 条当社は 番号法 個人情報保護法 これらの法律に関する政省令及びこれらの法令に関して所管官庁が策定するガイドライン等を遵守し 特定個人情報等を適正に取り扱うため この規程を定める 2 当社は 特定個人情報等の取扱いにかかる事務フロー及び各種安全管理措置等を明確にするため 特

課題名

1 検査の背景 国立大学附属病院は 平成 16 年の国立大学の法人化以降 収支の企業的管理が必要 となり 個々の国立大学附属病院がその経営について独自に責任を負うこととなった そして 医療制度改革等では 国立大学附属病院を含めた病院の役割分担による医 療提供体制の再構築が求められている さらに 医療

(4) インシデント ( ヒヤリ ハット ) ある医療行為が 1 患者には実施されなかったが 仮に実施されたとすれば何らかの被害が予測される場合 2 患者には実施されたが 結果的には被害がなく またその後の観察も不要であった場合等をいう ( 日常診療の現場で ヒヤリ としたり ハッ とした体験をいう

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【資料1】結核対策について

国立病院機構熊本医療センターボランティア 活動受入規程 ( 目的 ) 第 1 条本規程は 国立病院機構熊本医療センター ( 以下 病院 という ) においてボランティア活動を希望する個人又は団体を広く受け入れ円滑に活動できるよう支援し 地域社会とともに患者さまを側面から支援し 病院での療養生活を充実

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社会福祉法人春栄会個人情報保護規程 ( 目的 ) 第 1 条社会福祉法人春栄会 ( 以下 本会 という ) は 基本理念のもと 個人情報の適正な取り扱いに関して 個人情報の保護に関する法律 及びその他の関連法令等を遵守し 個人情報保護に努める ( 利用目的の特定 ) 第 2 条本会が個人情報を取り扱

京都府立医科大学附属病院

患者に被害を及ぼすことはなかったが 日常診療の現場で ヒヤリ としたり ハッ とした経験を有する事例をいう 具体的には ある医療行為が (1) 患者には実施されなかったが 仮に実施されたとすれば 何らかの被害が予測される場合 (2) 患者には実施されたが 結果として患者に被害を及ぼすに至らなかった場

平成19年度 病院立入検査結果について

アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

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社会福祉法人○○会 個人情報保護規程

文書番号

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症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

象を 患者影響度などの状況に応じた報告書を使用し医療安全対策室に報告する 医療安全対策室は報 告された内容をニアミス インシデント 警鐘事例に分類し 適切な対応および集計を行う 安全管理全般の詳細については医療安全管理プログラムに記載する 構成組織および体制 1. 医療安全対策委員会当院における医療

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雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項 第 1 趣旨 この留意事項は 雇用管理分野における労働安全衛生法 ( 昭和 47 年法律第 57 号 以下 安衛法 という ) 等に基づき実施した健康診断の結果等の健康情報の取扱いについて 個人情報の保護に関する法律についての

国立大学附属病院における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン Ⅰ 本ガイドラインの趣旨 基本的考え方 平成 17 年 2 月 1. 本ガイドラインの目的本ガイドラインは 個人情報の保護に関する法律 ( 平成 15 年法律第 57 号 以下 個人情報保護法 という ) の規定に基づき 厚生労働省

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る暴力団及び暴力団員等 ( 以下 暴力団等 という ) の支配を受けてはならない 5 指定居宅サービス事業者等は 省令の規定 ( 規則で定めるものに限る ) による評価の結果を公表するよう努めなければならない 6 指定居宅サービス事業者等は 省令の規定 ( 規則で定めるものに限る ) に規定する研修

5) 輸送の安全に関する教育及び研修に関する具体的な計画を策定し これを適確に実施する こと ( 輸送の安全に関する目標 ) 第 5 条前条に掲げる方針に基づき 目標を策定する ( 輸送の安全に関する計画 ) 第 6 条前条に掲げる目標を達成し 輸送の安全に関する重点施策に応じて 輸送の安全を確 保

年管管発 0928 第 6 号平成 27 年 9 月 28 日 日本年金機構年金給付業務部門担当理事殿 厚生労働省年金局事業管理課長 ( 公印省略 ) 障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて 厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令 ( 平成 2

SGEC 附属文書 理事会 統合 CoC 管理事業体の要件 目次序文 1 適用範囲 2 定義 3 統合 CoC 管理事業体組織の適格基準 4 統合 CoC 管理事業体で実施される SGEC 文書 4 CoC 認証ガイドライン の要求事項に関わる責任の適用範囲 序文

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Transcription:

国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針 ( 改訂版 ) 平成 24 年 6 月 国立大学附属病院長会議常置委員会医療安全管理体制担当校

国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針 ( 改訂版 ) 1. 本指針の目的国立大学附属病院には 質の高い医療の提供のみならず 医療従事者の育成及び新たな診断 治療方法の確立による臨床医学の発展の推進が求められている これらの実践には 患者側の視点に立った安全性の高い医療の提供が不可欠である そのため 各国立大学附属病院においては 医療安全管理体制の確立のために様々な取り組みを進め また 国立大学附属病院長会議では 平成 12 年度から 医療事故防止のための相互チェック ( 平成 19 年度から 医療安全 質向上のための相互チェック に名称変更 ) を実施するとともに 平成 14 年度には医療安全管理協議会を設立し 医療安全に関する情報共有をはかる等 様々な方面から医療安全を推進してきた 医療上の事故等が発生した場合には 社会に対してその事実や改善策を公表することにより 医療安全管理を徹底するだけでなく 他の医療機関での再発防止に資するとともに 医療の透明性を高め 国民からの信頼性の向上に資することが重要である 以上のような責務を果たすことを目的として 国立大学附属病院長会議では 平成 17 年 3 月 3 日に 国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針 ( 以下 公表指針 という ) を策定し 医療上の事故等が発生した場合の公表に関して一定の基準を示した 各国立大学附属病院においては この指針をもとに公表基準を定め 記者会見 自院のホームページ 国立大学病院医療上の事故等包括公表システム等を用いた公表を行ってきたところである 一方 平成 16 年 10 月 1 日からは 医療法施行規則により 特定機能病院等を対象として 医療上の事故等については公益財団法人日本医療機能評価機構 ( 以下 日本医療機能評価機構 という ) への報告が義務付けられ 各国立大学附属病院から これまでに 1,899 件 ( 平成 16 年 10 月 ~ 平成 22 年 10 月 ) の報告が行われている ここに報告された事例は 同機構により集計 分析され 件数 概要 再発防止策等が 医療機関のみならず 国民や行政機関など 広く社会に対して公表されている このように 日本医療機能評価機構を通じた医療上の事故等に関する概要 再発防止策その他の医療安全情報に関する社会的な公表システムが定着し 機能するようになっている点に鑑み 今般 これまでの公表指針に対する見直しを行った ( 改訂後の指針を 以下 本指針 という ) 本指 1

針は 改訂前の公表指針と同様 各国立大学附属病院において 医療上の事故等につき 医療の透明性を高め 国民からの信頼向上をはかるとともに 他医療機関における医療安全管理の徹底及び再発防止に資することを目的として 公表を行うための一定の基準を示すものである なお 本指針の内容は 今後の社会情勢の変化等を踏まえ 見直していく必要がある 2. 本指針における用語本指針で用いられている用語は 次のとおりである (1) 医療上の事故等疾病そのものではなく 医療を通じて発生した患者の有害な事象を言い 医療行為や管理上の過失の有無を問わない 合併症 医薬品による副作用や医療機器 材料による不具合も含む (2) ヒヤリ ハット患者に被害が発生することはなかったが 日常診療の現場で ヒヤリ としたり ハッ とした出来事を言う 具体的には ある医療行為が 1 患者には実施されなかったが 仮に実施されたとすれば 何らかの被害が予測される場合 2 患者には実施されたが 結果的に被害がなく また その後の観察も不要であった場合等を指す (3) 合併症医療行為に際して二次的に発生し 患者に影響を及ぼす事象を言う なお 合併症には予期できるものと予期できないものとがある 3. 公表する医療上の事故等の範囲及び方法公表する医療上の事故等の範囲及び方法については 下記の要領によるものとする ( 以下の区分は 医療法施行規則に定められた登録分析機関 ( 日本医療機能評価機構 ) に対する報告が求められる事故等の範囲につき 事故報告範囲検討会が取りまとめた分類に準拠したものである ) ( 別表 ) (1) 明らかに誤った医療行為又は管理 に起因して 患者が死亡し 若しくは患者に障害が残った事例又は濃厚な処置若しくは治療を要した事例 1 患者死亡 又は重篤で恒久的な障害が残存したもの 医療上の事故等の発生後又は覚知後 可及的速やかに公表する さらに 院内事故調査委員会等で事故原因等を調査した後 その概要 原因及び改善策を自院のホームページに掲載する等により公表す 2

る 2 一過性に 濃厚な処置又は治療を要したもの 病院内の医療安全に関する委員会等で事故原因等を調査した後 その概要 原因及び改善策を自院のホームページに掲載する等により公表する (2) 明らかに誤った医療行為又は管理 は認められないが 医療行為又は管理上の問題に起因して 患者が死亡し 若しくは患者に障害が残った事例又は濃厚な処置若しくは治療を要した事例 ( 医療行為又は管理上の問題に起因すると疑われるものを含み 当該事例の発生を予期しなかったものに限る ) 医療上の事故等に関する情報の登録分析機関である日本医療機能評価機構に報告をし 同機構を通じて公表する (3) 上記 (1) (2) のほか 医療に係る事故の発生の予防及び再発の防止に資すると考えられる警鐘的な事例 ( ヒヤリ ハット事例に該当する事例も含まれる ) 医療上の事故等に関する情報の登録分析機関である日本医療機能評価機構に報告をし 同機構を通じて公表する 4. 公表を判断するプロセスインシデントレポート等により報告された医療上の事故等について 病院内の医療安全に関する委員会等において速やかに検討を行い 院内事故調査委員会等の設置の必要性 検討事例が公表事例に該当するか否かの判断 公表の時期 公表の内容 公表の方法について 医療安全に関する委員会等での意見を踏まえ 病院長が決定する 5. 公表に当たっての留意点公表に当たっては 次の事項に十分留意をする (1) 患者 家族等への配慮公表に際しては 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律 ( 平成 15 年 5 月 30 日法律第 59 号 ) 医療 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン ( 平成 16 年 12 月 24 日厚生労働省 ) 等に基づき 患者 家族等のプライバシーに十分な配慮をし その内容から患者 家族等が特定 識別されないように個人情報を保護するとともに 医療従事者の個人情報の取り扱いにも十分 3

配慮しなければならない 公表に当たっては 患者 家族等の心情や社会的状況に十分配慮するものとする (2) 患者 家族等からの同意医療上の事故等の公表に当たっては 患者 家族等の意思を踏まえ匿名化するとともに 第 3 項 (1) の1 2の自院のホームページに掲載する等により公表する場合は 下記の要領により取り扱うものとする 1 原則として 患者本人及び家族等から同意を得る 2 患者が死亡した場合には 原則として 遺族から同意を得る 3 患者が意識不明の場合や患者に判断能力がない場合には 原則として家族等から同意を得る この場合においても 患者の意識の回復その他患者の判断能力が回復したときは 1の原則により 速やかに 本人への説明を行い 同意を得るよう努める 4 同意を得るに当たっては 公表することのみならず その内容についても十分説明を行わなければならない 5 同意の有無 説明の内容は 診療記録への記載等により記録する 6. その他各国立大学附属病院は その社会的役割を明確にするため 医療上の事故等のみならず 高度医療への取り組みや実例 また医療の質 安全に関わる取り組み事例等についても 積極的に公表していく必要がある 4

原因等 患者重症度 死亡又は重篤な障害残存事例 ( 恒久 ) 濃厚な処置 治療を要した事例 ( 一過性 ) 軽微な処置 治療を要した事例又は影響の認められなかった事例 1. 明らかに誤った医療行為又は管理 に起因して 患者が死亡し 若しくは患者に障害が残った事例又は濃厚な処置若しくは治療を要した事例 発生後又は覚知後 可及的速やかに公表 調査後に 自院のホームページに掲載する等により公表 調査後に 自院のホームページに掲載する等により公表 2. 明らかに誤った医療行為又は管理 は認められないが 医療行為又は管理上の問題に起因して 患者が死亡し 若しくは患者に障害が残った事例又は濃厚な処置若しくは治療を要した事例 ( 医療行為又は管理上の問題に起因すると疑われるものを含み 当該事例の発生を予期しなかったものに限る ) 公益財団法人日本医療機能評価機構への報告を通じて公表 3. 上記 1 2 のほか 医療に係る事故の発生の予防及び再発の防止に資すると考えられる警鐘的な事例 ( ヒヤリハット事例に該当する事例も含まれる ) 参考 : 本表の 患者重症度 と国立大学附属病院医療安全管理協議会において定めた インシデント影響度分類 ( 下記に表記 ) との関係については 患者が死亡 若しくは患者に障害が残った事例や濃厚な処置若しくは治療を要した事例は インシデント影響度分類 のレベル3b 以上にあたる なお 公表事例に該当するか否か 公表の方法等については 個別の事例ごとに 各国立大学附属病院で定めた手続きと基準にのっとって総合的に判断する必要がある レベル傷害の継続性傷害の程度傷害の内容 レベル5 死亡 死亡 ( 原疾患の自然経過によるものを除く ) レベル4b 永続的 中等度 ~ 高度永続的な障害や後遺症が残り 有意な機能障害や美容上の問題を伴う レベル 4a 永続的軽度 ~ 中等度 永続的な障害や後遺症が残ったが 有意な機能障害や美容上の問題は伴わない レベル3b 一過性 高度 濃厚な処置や治療を要した ( バイタルサインの高度変化 人工呼吸器の装着 手術 入院日数の延長 外来患者の入院 骨折など ) レベル3a 一過性 中等度 簡単な処置や治療を要した ( 消毒 湿布 皮膚の縫合 鎮痛剤の投与など ) レベル2 一過性 軽度 処置や治療は行わなかった ( 患者観察の強化 バイタルサインの軽度変化 安全確認のための検査などの必要性は生じた ) レベル1 なし 患者への実害はなかった ( 何らかの影響を与えた可能性は否定できない ) レベル 0 その他 - インシデント影響度分類 エラーや医薬品 医療用具の不具合が見られたが 患者には実施されなかった

国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針 検討会構成員名簿 氏名所属 役職備考 宮崎勝千葉大学医学部附属病院長 国立大学附属病院長会議常置委員会委員長 河野陽一 千葉大学大学院医学研究院教授 国立大学附属病院長会議常置委員会前委員長 門脇孝東京大学医学部附属病院長 太田吉夫小見山智恵子潮見佳男児玉安司福澤正洋 岡山大学病院医療安全管理部長東京大学医学部附属病院看護部長京都大学大学院法学研究科教授三宅坂総合法律事務所弁護士大阪大学医学部附属病院長 国立大学附属病院医療安全管理協議会前会長国立大学附属病院長会議常置委員会医療安全管理体制担当 金倉 譲 大阪大学医学部附属病院副病院長 ( 医療安全担当 ) 国立大学附属病院医療安全管理協議会会長 国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針 検討会公表の範囲 方法の策定に係る作業チームメンバー名簿 氏名所属 役職備考 中島 勧 東京大学医学部附属病院医療安全対策センター長 門野夕峰 清水佳子 東京大学医学部附属病院医療安全対策センター GRM 東京大学医学部附属病院医療安全対策センター GRM 大川 淳 東京医科歯科大学医学部附属病院安全管理対策室長 潮見佳男 児玉安司 中島和江 京都大学大学院法学研究科教授三宅坂総合法律事務所弁護士大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部長 團 寛子 大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部副部長 高橋りょう子 大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部副部長 6