1 肉質改良の切り札 ユメサクラエース 完成 宮崎牧場では デュロック種について 肉質に優れる種豚の作出に取り組んできました このたび 5 年の歳月を経て 本年 7 月にロース芯筋内脂肪含量 (IMF) が6% 以上となる ユメサクラエース を造成し 系統豚として一般社団法人日本養豚協会の認定を受けました その高い能力から 肉質改良の切り札として 今後の利用が期待されます 最終選抜豚のきょうだい豚の体長 1/2 部位 ロース芯断面 ( 当該ロース断面付近の筋 内脂肪含量は 6.3%) - 1 -
たまみつしげ 2 黒毛和種 琴照重 及び褐毛和種 球光重 ETI が優秀な成績を収めて 種雄牛として選抜される 鳥取牧場で作出した黒毛和種の種雄牛 琴照重 が 産子の肥育成績を調べる現場後代検定により選抜され 精液の供給が始まりました 琴照重 は 同時期に検定を実施した種雄牛 23 頭中 脂肪交雑 ( サシ ) の遺伝的能力評価値が優れていました 本牛は全国で活躍する 美津照重 の初の息牛であり 父と同様に今後の活躍が期待されます また 褐毛和種 ( 熊本系 ) について 体外受精技術を活用して作出した種雄牛 球光重 ETI が 現場後代検定において 枝肉重量で歴代トップとなる成績を示し 熊本県の基幹種雄牛として選抜されました 熊本牧場で体外受精技術を活用して生産された種雄牛が選抜されるのは昨年に続き2 年連続となります 脂肪交雑の遺伝的能力評価値 が優れていた 琴照重 枝肉重量で歴代トップとなる 成績を示した 球光重 ETI - 2 -
3 乳用牛 ( ホルスタイン種 ) の遺伝的能力評価方法と総合的な能力を表す 総合指数を刷新 乳用牛の泌乳形質等に係る遺伝的能力評価を行うにあたり 本年 2 月から 多産次変量回帰検定日モデル を導入しました この新たなモデルでは 産次毎に遺伝的能力を比較することが可能となり より効率的な遺伝的改良が期待できます また 4 月に公表された新たな家畜改良増殖目標を踏まえ 泌乳持続性 と 空胎日数 を新たに組み入れた総合指数を開発し 本年 8 月から公表を開始しました 泌乳持続性 が高い乳用牛への改良を進めることにより 1 乳期中の必要エネルギーの変化が小さくなり 飼料利用性の向上や代謝異常等の低減を図ることが可能となることから 生涯生産性の向上に寄与することが期待されます また 必要以上の 空胎期間 の延長を避けることが 繁殖性の向上には重要となります 新しい総合指数を利用することで 乳用牛の遺伝的能力をさらに発揮させることが可能になることから 酪農経営の生産性向上が期待できます - 3 -
4 卓越した産卵性を有しながら産肉性も優れた 岡崎おうはん を利用した 地鶏の作出 地鶏の作出には これまで主に食味 産肉性に優れた品種 系統が利用されてきましたが 増殖のカギとなる産卵性に劣るものが多く これまで普及推進上のネックとなっていました そうした中で 卓越した産卵性を有しながら産肉性も優れた卵肉兼用種 岡崎おうはん を地鶏作出のため雌系として利用する検討が進められてきました 本年 岡山県で雄系を兵庫牧場の 龍軍鶏ごろう 雌系を岡崎牧場の 岡崎おうはん とする銘柄鶏 ( 美膳軍鶏 ) が作出され コマーシャル鶏生産 販売がスタートしました 今後も 産卵性と産肉性の両方に高い能力を有する 岡崎おうはん を利用した地鶏の作出がますます進むものと期待されます - 4 -
5 高い生産性を目指すための飼養管理方法についてマニュアルを作成 鳥取牧場では 牛群の栄養状態を客観的に判断する評価手法として代謝プロファイルテスト ( 血液生化学検査 + ボディーコンディションスコア ) の活用に取り組み 高い受胎率 ( 受精卵移植の受胎率 74.3% (26-27 年成績 )) 等を確保しています 鳥取牧場で取り組んでいる飼養管理について 考え方やその方法を取りまとめたマニュアルを作成 配布しました なお マニュアルでは代謝プロファイルテストによる評価方法について 実際の事例を紹介し解りやすく解説しています 作成 配布した飼養管理マニュアル 鳥取牧場ホームページにも掲載 http://www.nlbc.go.jp/tottori/mpt/mpt-index.htm - 5 -
6 飼料用イネ種子の生産量が過去最高を記録 熊本牧場で増殖を行っている飼料用イネ種子 ミズホチカラ モグモグあおば タチアオバ 及び ミナミユタカ の4 品種について 今年はこれまでの2 倍の10.6haを作付けし 年間生産量の3 倍に当たる約 70トンの飼料用イネ種子の生産が見込まれています 今後 施設をフル稼働して精選 供給を実施していきます 種子の収穫 種子の乾燥 種子の保管 - 6 -
7 家畜繁殖管理における省力化技術の確立 センター本所では 農研機構畜産草地研究所 森永酪農販売ミック事業部等と共同 で 省力繁殖プログラムの導入及び高受胎胚の効率的生産方法の開発を行いました その結果 省力繁殖プログラムの導入により毎日の発情観察が不要となることから 85% の繁殖管理時間を削減できることが分かりました 一方 高受胎胚の効率的生産方法の開発では 受胎率の高い胚を選抜する技術を用い て作出された黒毛和種 OPU-IVP 胚 ( 超音波誘導により卵子を採取し 体外受精 培養を行った胚 ) により 高い受胎率を得られることが分かりました これらの研究をさらに推し進めることにより 家畜繁殖管理における省力化技術の確 立を目指します ( なお 本研究は 農研機構生研センターが実施する 攻めの農林水産業の実現に向 けた革新的技術緊急展開事業 ( うち産学の英知を結集した革新的な技術体系の確立 ) の成果です ) 家畜繁殖管理における省力化技術の確立省力繁殖プログラムの導入実証と高受胎胚の効率的生産方法の開発 育成雌牛 優良和牛雌牛 CIDR +GnRH CIDR CIDR PG 72hr TAI ET TAI (1(1 回目回目 ) ) +GnRH GnRH 1 回目で不受胎の場合 早期妊娠診断 GnRH 実証現地那須共同利用模範牧場 胚移植 (ET) 妊娠診断 (CIDR: 膣留置型フ ロシ ェステロン GnRH: 性腺刺激ホルモン放出ホルモン PG: フ ロスタク ランシ ンF 2α ) 図 1. 繁殖プログラム 高い受胎率 高受胎胚の効率的生産方法の開発 産肉形質の優秀な和牛繁殖雌牛から超音波誘導により卵子を採取 (OPU) し 優良種雄牛精液で体外受精する 培養胚の経時的観察による発育速度 分割様式の客観的指標により 高受胎胚が選別可能となる PG 72hr TAI ET TAI (2 回目 (2 回目 ) ) 10 日前 3 日前 TAI ET 26 日後 32 日後 35 日後 省力繁殖プログラムの導入実証 排卵同期化処理と早期妊娠診断を行い 不受胎牛には再 度排卵同期化処理を行うことで 35 日間で 2 回の繁殖 ( 定時 人工授精 :TAI または胚移植 :ET) が可能となる ( 図 1) 毎日の発情観察が不要となるため 作業時間の大幅な短 縮が可能となり ( 図 2) 繁殖管理コストを削減できる 2 回の TAI で本プログラムにより高い妊娠率を確保できる 時間6 回でOK 120 100 80 60 40 20 集畜回数 集畜 捕獲 妊娠診断 発情診断 ホルモン処理 AI ET 発情発見 0 繁殖プログラム区従来法区図 2. 繁殖管理に係わる作業時間 卵子の採取 (OPU) ( 株 ) 森永酪農販売ミック事業部 付加価値の高い子牛生産を可能とし 国産牛肉の安定生産に寄与する 採取卵子 体外受精 受胎性の高い胚の選別 ( 独 ) 家畜改良センター - 7 -
8 長野支場が引き続き ISTA( 国際種子検査協会 ) の 認定検査所として認定 長野支場が 作物の種子検査について検査技術と検査体制が国際的に高水準であることを認定する 3 年に一度のISTA( 国際種子検査協会 ) の監査を受け 5 回連続で認定検査所として認定されました 今回の監査では 新たに高度な発芽検査技術であるテトラゾリウム検査の認定を取得するとともに 遺伝子組換え種子検査の認定範囲が拡大されました テトラゾリウム検査は短期間で種子の発芽能力を判定できる検査であり 国内では長野支場が唯一認定を受けています ISTA 認定検査所として 今後も高い品質の検査を提供していきます ISTA 監査の様子 - 8 -
9 多くの個体識別情報の検索に対応 国産牛肉の信頼性確保に応える 牛の個体識別制度は牛トレーサビリティ法施行から13 年目を迎えました センターでは 牛の個体識別情報検索サービス により 牛の品種や産地など 国産牛肉の生産履歴情報を提供しています 今年度はこれまでに約 3,200 万頭の個体識別情報が検索され 近年は毎年度連続で3,000 万頭以上の検索に応えています 今年はこの 牛の個体識別情報検索サービス を多くの方々に知ってもらうため 様々なイベントへ積極的に出展したところ 約 1,600 名の方々に家畜改良センターのブースに立ち寄っていただき 個体識別番号による検索体験等に参加していただいた方からは 安心して国産牛肉を購入することができる といったコメントをいただきました 今後も国産牛肉の信頼性確保に努めるため 牛の個体識別情報検索サービス への理解を深める活動を進めていきます 牛の個体識別情報検索サービスの説明 - 9 -
10 地域と連携した鳥獣害対策を積極的に実施 宮崎牧場では 地域協議会 西諸県地域鳥獣被害対策チーム と連携し 関係機関や 生産者の参加を得て 園芸用ポールを利用した簡易電気牧柵に関する研修会を開催しま した この簡易電気牧柵は ホームセンター等において購入できる安価な材料を使用してい ることから 簡単に作成することが可能であり また継続的に取り組める対策です さらに近隣の家畜市場開催日に 鳥獣害対策の資料等を配付するなど 地域と連携し た鳥獣害対策を積極的に実施しました 園芸用ポールを利用した簡易電気牧柵に関する研修会の様子 - 10 -