測されている (7) 医薬品ごとの特徴現時点では 原因医薬品ごとの特徴についての知見は得られていない (8) 副作用発現頻度人口 100 万人当たり年間 1~6 人との報告がある (9) 自然発症の頻度自然発症の頻度は明らかではない 発症の原因としては 医薬品 ( 健康食品を含む ) によるものが多

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ステロイド療法薬物療法としてはステロイド薬の全身療法が基本になります 発症早期すなわち発症後 7 日前後までに開始することが治療効果 副作用抑制の観点から望ましいと考えられす 表皮剥離が全身に及んだ段階でのステロイド薬開始は敗血症等感染症を引き起こす可能性が高まります プレドニゾロンまたはベタメタゾ

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はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

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するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

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(3) 臨床検査値 CRP の上昇 白血球上昇 もしくは白血球減少を含む骨髄障害 肝機能障害 腎機能障害 血尿 血便 感染症に伴う同症候群では 単純ヘルペスなどのウイルス抗体価やマイコプラズマ抗体価の変動を認めることがある (4) 画像検査所見 細隙灯顕微鏡検査により結膜充血 眼脂 偽膜 角結膜上皮障害 上皮欠損 ( 重症では全角膜上皮欠損となる ) 瞼球癒着 睫毛の脱落を認めることがある 呼吸器障害をともなう場合 胸部 X-P 写真 単純胸部 CT で肺水腫 肺炎 間質性肺炎の像をチェックする 上部及び下部消化管粘膜障害をともなう場合 内視鏡検査にて粘膜の炎症所見やびらん 潰瘍をチェックする いずれの場合も各診療科とのチーム医療が重要となる (5) 病理組織所見真皮上層の浮腫と表皮への細胞浸潤 表皮細胞の個細胞壊死の多発と 好酸性壊死に陥った表皮細胞にリンパ球が接着する satellite cell necrosis が認められる 表皮の壊死性変化が進行すると 表皮全層の壊死や表皮 - 真皮間の裂隙 ( 表皮下水疱 ) 形成がみられる (6) 発症機序医薬品 ( ときに感染症 ) により生じた免疫 アレルギー反応により発症すると考えられているが 種々の説が唱えられており 未だ統一された見解はない 病変部では著明な CD8 陽性 T 細胞の表皮への浸潤がみられることから 発症は活性化された細胞傷害性 T リンパ球 (CD8 陽性 T 細胞 ) の表皮細胞攻撃の結果と考えられるが その機序としては 直接的に表皮細胞のアポトーシスを誘導する もしくはこの細胞から産生される IFN-γ やマクロファージから産生される TNF-α が細胞傷害を引き起こすと想定されている また 細胞死を誘導する受容体である Fas と Fas に対するリガンドである Fas ligand (FasL) の異常発現を認め 分子の相互作用によって表皮細胞のアポトーシスが生じるとの考え方もある すなわち 原因薬剤刺激により産生される末梢血単核球由来の可溶性 FasL (sfasl) が表皮細胞の Fas に結合しアポトーシスを誘導することにより SJS/TEN を発症させ得ると推 10

測されている (7) 医薬品ごとの特徴現時点では 原因医薬品ごとの特徴についての知見は得られていない (8) 副作用発現頻度人口 100 万人当たり年間 1~6 人との報告がある (9) 自然発症の頻度自然発症の頻度は明らかではない 発症の原因としては 医薬品 ( 健康食品を含む ) によるものが多いとされ そのほか一部のウイルスやマイコプラズマ感染に伴うものなどがみられる 3. 副作用の判別基準 ( 判別方法 ) (1) 概念発熱を伴う口唇 眼結膜 外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹および皮膚の紅斑で しばしば水疱 表皮剥離などの表皮の壊死性障害を認める 原因の多くは 医薬品である (2) 主要所見 ( 必須 ) 1 皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変 ( 出血性あるいは充血性 ) がみられること 2 しばしば認められるびらん若しくは水疱は 体表面積の 10% 未満であること 3 発熱 (3) 副所見 4 皮疹は非典型的ターゲット状多形紅斑である 5 角膜上皮障害と偽膜形成のどちらかあるいは両方を伴う両眼性の非特異的結膜炎 6 病理組織学的に 表皮の壊死性変化を認める ただし ライエル症候群 (Toxic epidermal necrolysis: TEN) への移行があり得るため 初期に評価を行った場合には 極期に再評価を行う 主要項目の 3 項目を全てみたす場合 SJS と診断する 11

Stevens-Johnson 症候群診断基準 2005 から引用 ( 厚生労働科学研究補助金難治性疾患克服研究事業橋本公二研究班 ) 4. 判別が必要な疾患と判別方法 (1) 多形滲出性紅斑主として四肢伸側 関節背面に円形の浮腫性紅斑を生じる 紅斑は辺縁が堤防上に隆起し 中心部が褪色して標的状となる (target lesion) ときに中心部に水疱形成をみる 病因は単純ヘルペスやマイコプラズマなどの感染症に伴う感染アレルギー 昆虫アレルギー 寒冷刺激 妊娠 膠原病 ( 特に全身性エリテマトーデス ) 内臓悪性腫瘍などがある (2) 多形紅斑型薬疹医薬品服用後に四肢 体幹に浮腫性の紅斑がみられる 発熱や肝機能障害を伴うことがあるが 粘膜疹は伴わないか伴っても軽症である (3) 中毒性表皮壊死症 (TEN) 広範囲な紅斑と 全身の 10% を超える表皮の壊死性障害による水疱 表皮剥離 びらんを認め高熱と粘膜疹を伴う 原因の大部分は医薬品である SJS からの移行があり得る ( 中毒性表皮壊死症 ( 中毒性表皮壊死融解症 ) のマニュアル参照 ) (4) 水痘体幹に大豆大までの浮腫性紅斑としてはじまり すぐに小水疱と化す 新旧の皮疹が混在し 個疹は数日で乾燥して痂皮となる 体幹 顔面に多く 被髪頭部 口腔内 結膜 角膜にも生じる ときに膿疱化する 潜伏期は 10 20 日 成人や免疫の低下した患者では高熱を伴い 脳炎や肺炎などの臓器障害侵襲を認めることがある (5) 薬剤性過敏症症候群 (drug-induced hypersensitivity syndrome:dihs) 医薬品を服用後 通常 2 週間以上経過してから発熱を伴って全身に紅斑丘疹や多形紅斑がみられ 進行すると紅皮症となる 通常粘膜疹は伴わないか軽度であるが ときに口腔粘膜のびらんを認める 全身のリンパ節腫脹 肝機能障害をはじめとする臓器障害 末梢白血球異常 ( 白血球増多 好酸球増多 異型リンパ球の出現 ) がみられる 医薬品の中止後も症状は遷延し 経過中にヒトヘルペスウイルス -6 の再活性化をみる 12

5. 治療方法 まず被疑薬の服用を中止する 厳重な眼科的管理 皮疹部および口唇 外陰部粘膜の局所処置 補液 栄養管理 感染防止が重要である 薬物療法として以下に挙げるものが有効である (1) ステロイド全身投与急性期にはプレドニゾロン換算で 中等症は 0.5~1 mg/kg/ 日 重症例は 1~2 mg/kg/ 日 最重症例はメチルプレドニゾロン 1 g/ 日 (3 日間 ) から開始し 症状に応じて適宜漸減する (2) 高用量ヒト免疫グロブリン静注 (IVIG) 療法重篤な感染症の併発が危惧される場合 もしくは重症例でステロイド療法との併用療法として 通常 5~20 g/ 日 3 日間を 1 クールとして投与する (3) 血漿交換療法ステロイド療法で症状の進行がくい止められない重症例 もしくは重症感染症がある場合 (4) 急性期の眼病変に対しては 眼表面の炎症 瞼球癒着を抑えて眼表面上皮を温存し 眼表面の二次感染を防止する 眼表面の消炎ステロイドの大量全身投与に加えて 眼局所にもステロイドを投与する ベタメタゾンあるいはデキサメタゾンの点眼 (1 日 4 回程度 ) が有効であり 炎症が高度な場合にはベタメタゾン眼軟膏を併用する 感染症予防初診時に結膜嚢培養あるいは分泌物の塗沫及び培養検査を行い 予防的に抗菌点眼薬を投与する 菌を検出すれば薬剤感受性を考慮して抗菌薬を変更する 偽膜除去清潔な綿棒に絡めとるなどの方法で 生じた偽膜を丁寧に除去する ( ただし偽膜除去の効果については一定の見解がなく 現在のところ偽膜は除去するのが好ましいという意見が多数をしめる 完全に除去する 13

必要はないと考えられる ) 癒着解除点眼麻酔下に硝子棒を用いて機械的に瞼球癒着を剥離する 眼圧チェックステロイドを大量に使用する可能性があるため 手指法で眼圧を適宜チェックする 6. 典型的症例概要 症例 10 歳代 男性 ( 初診 ):1999 年 4 月 ( 主訴 ): 発熱 口唇の発赤腫脹 体幹の紅斑 ( 家族歴 ): 特記すべきことはない ( 既往歴 ): てんかん ( 現病歴 ):1999 年 3 月上旬より感冒症状あり 投与開始 投与 20 日目投与 22 日目 てんかん発作予防目的でゾニサミドの服用を開始 眼球結膜充血 口唇の発赤腫脹が出現 38 の発熱と体幹の紅斑が出現し 当科受診 SJSの診断で入院 ゾニサミドの服用中止 ( 入院時現症 ): 口唇腫脹と口唇および口腔粘膜の発赤 びらん ( 図 3 参照 ) 眼結膜の充血 体幹および四肢の大豆大までの紅斑の多発 ( 図 4 参照 ) を認めた 水疱の形成なし 図 3 図 4 14

( 検査所見 ): 入院時 白血球 8200/μL( 好中球 83.5% リンパ球 8.5% 好酸球 3.0%) Hb 14.01 g/dl 総蛋白 7.1 g/dl AST 25 IU/L ALT 14 IU/L LDH 442 IU/L CRP 0.0 mg/dl その他血液生化学 尿一般検査すべて異常なし 経過中マイコプラズマ抗体 単純ヘルペス抗体の上昇なし 心電図および胸部レントゲン検査にて異常なし ( 入院時皮膚病理組織所見 ): 前腕より皮膚生検を施行 表皮ケラチノサイトのアポトーシスの多発と表皮下水疱 真皮上層のリンパ球を主体とする細胞浸潤を認めた ( 図 5 参照 ) 図 5 ( 入院後経過及び治療 ): ベタメタゾン 10 mg/ 日 ( 体重 50 kg) を入院日より 4 日間点滴静注した 紅斑及び口唇口腔粘膜疹は 軽快傾向を示したため以後漸減し 入院 14 日目にはプレドニゾロン 20 mg/ 日に切り替え 入院 20 日目にステロイド薬は中止となった 紅斑はステロイド軟膏外用 口唇はアズレン含有軟膏を塗布した ステロイドの減量中に 両眼に高度の結膜炎を認め ( 図 6 参照 ) 次第に偽膜形成を伴うようになり 眼科医による偽膜除去とステロイドおよび抗菌薬の点眼で軽快した 15