技術論文 2184651 燃料加熱がガソリン噴霧および燃焼特性に及ぼす影響 * - 急速圧縮膨張機関を用いた燃焼特性の解明 - 酒井 雄大 ) 井森 恵太郎 1) 松本 直樹 1) 松村恵理子 2 千田 二郎 2 Effects of Fuel Heating on Gasoline Spray and Combustion -Analysis of Combustion Characteristics with RCEM- Yudai Sakai Keitaro Imori Naoki Matsumoto Eriko Matsumura Jiro Senda Direct fuel injection gasoline engine has higher thermal efficiency and lower emission than port fuel injection gasoline engine. On the other hand, extremely precise control of air-fuel mixture distribution is indispensable. he purpose of this study is to control air-fuel mixture distribution by fuel heating. In this report, effects of fuel heating on spray and combustion characteristics are observed by using RCEM (Rapid compression expansion machine). KEY WORDS: Heat engine, Spark ignition engine, Measurement, Fuel heating (A1). 緒 言 近年, 段階的に厳しくなる自動車の燃費規制に対応するため, ガソリンエンジンにおいては筒内直接噴射技術が導入され始めている (1). 筒内直接噴射型ガソリンエンジン ( 直噴ガソリンエンジン ) は従来のポート内噴射型ガソリンエンジン (PFI ガソリンエンジン ) とは異なり, 燃料をシリンダ内に直接噴射し, 燃焼室内にて混合気の形成を行う. この技術により, 燃料の気化熱による筒内冷却効果や混合気を層状にして少量の燃料で燃焼させる成層希薄燃焼によって高効率化が可能となる. しかしながら, 直噴ガソリンエンジンにおいては混合気分布の制御が必要となり, 非常に緻密な制御が求められる. 成層混合気の形成手法として, 冷間始動時に触媒暖気のためにピストン冠面を利用するウォールガイド制御が行なわれているが, ピストンへの燃料付着およびそれに伴う PM の排出が問題視されている. そこで, 噴霧自身の運動のみを利用したスプレーガイド手法による混合気の分布制御が着目されており, 燃料加熱による噴霧性状の変化を用いた噴霧制御に関する研究がなされている.Min Xu らは減圧沸騰噴霧を利用することでピストン冠面への燃料付着を抑制し HC,CO および PN の低減を確認している. 佐々木らは超臨界状態まで加圧および加熱された噴霧を利用することで 着火遅れ期間の短縮および燃焼率の改善を確認している. 本研究に *217 年 6 月 6 日受理.217 年 5 月 25 日自動車技術会春季学術講演会において発表. 1) 同志社大学大学院 (61-394 京都府京田辺市多々羅都谷 1-3) 2) 同志社大学 (61-394 京都府京田辺市多々羅都谷 1-3) おいては, 直噴ガソリンエンジンを対象とした混合気の時空 間的な制御の実現を目的とし, 燃料加熱を利用した制御手法 が空間成層混合気の形成に適用可能かを評価する. 本報においてはその第一段階として, 吸気行程噴射を想定 し燃料加熱噴霧を用いて均質混合気が形成可能かを評価する. 多孔ノズルを用い, 加熱噴霧の粒径分布を観察するために超 高解像度撮影を行ない, さらに急速圧縮膨張機関 (Rapid compression expansion machine) を用いて燃料加熱が燃焼特性に およぼす影響を把握した. 超高解像度撮影. 実 験 方 法 図 1 に実験装置の概略図を示す. インジェクタには 6 孔ノ ズルを用い, 正面より噴霧を観察した. 定容容器の対面する 2 側面の観察窓は 1 である. 実験における雰囲気圧力は容器 内に窒素を充填することにより調整し, 雰囲気温度について Specialized lens system Speckle reduction device Symmetric-convex lens (f =3mm) Constant volume vessel Large size black - white film Film(8 1inch) Line resolution=2[line/mm] Spatial resolution [µm] Magnification Depth of field 1.85 (9.8) 2.7 [µm] 1 (at 1μm) Nd:YAG laser (λ L = 532 nm, FWHM = 8 ns) Plano-convex lens (f =1,2mm) Beam splitter holder Cooling pipe Heater (4W 8) Delivery Spray pattern Front view Side view Fig.1 Experimental set up of super high spatial resolution photography 自動車技術会論文集 Vol.49,No.6,November 218. 113
は容器側面のヒーターおよび底面のヒーター (MISUMI: MCHS16-5-V2-W25-F5, 側面 4 本, 底面 3 本 ) を用いて調整した. また, 容器側面に取り付けられた攪拌機を回すことにより容器内温度の均一化を図った. 燃料の加熱については, 定容容器上面に取り付けられたインジェクタホルダに挿入されたヒーター (MISUMI : MCHK5-3-V1-W4 8 本 ) を用いて行なった. ヒーターはインジェクタを取り囲むように同一円周上に設置した. 温度制御については, 熱電対を用いてヒーターと温度調節器 (MISUMI:MCS) とを接続し, インジェクタホルダの温度をフィードバックすることにより, 制御を行なった. そのため, 本実験においては, インジェクタホルダの温度を燃料温度と定義した. また, ヒーターによるインジェクタへの熱害が予想されたため, インジェクタのソレノイド部分の温度上昇を防ぐために, 銅管をソレノイド部分に巻き付け, 銅管内に水を循環させることにより冷却を行なった. 燃料の噴射圧力は手動ポンプ (HYPREX;PH-1) を用いて加圧し, アキュムレータ (NACOL:HB-J25MP-LL2-AAC) を介することにより噴射による燃料圧力の低下を防いだ. 噴霧の粒径の詳細な観察を行なうために超高解像度撮影を用いた. 図 1 に超高解像度撮影法で用いた撮影光学系の概略図を示す. 光源には,Nd : YAG レーザー (Spectra Physics : PRO2, 発光半値幅 : 8 ns/pulse) の第 2 高調波 (L = 532nm) を用いた. 発振されたレーザー光はピンホールを介して, 干渉縞を低減するスペックル低減装置 (nano photon : Speckle Reducer SK-11,= 1mm) に入射される. スペックル低減装置より出射されたレーザー光は, 平凸レンズ (f = 2mm), 両凸レンズ (f = 3mm) および平凸レンズ (f = 1mm) の順に通過し集光されながら噴霧に照射される. 噴霧を透過したレーザー光は超高解像度レンズ系により捉えられ, 受光面上に拡大結像される. 本撮影系では受光面に 8 1inch の大判フィルム (FUJI FILM:ACROS1,Line resolution:2 Line/mm) を用いた. 拡大倍率は 2.7 倍とした. なお, 本光学 In/Ex valve Pressure sensor Charge Amplifier 系の空間分解能は解像力チャートを用いて検定した結果, 9.8m であった. また, 超高解像度撮影によって撮影された画像を用いて, 粒径頻度分布について解析を行なった. 粒径頻度分布については,t/tinj = 1. のときの噴霧先端到達距離の.7 倍の位置における噴霧幅方向全域に着目し, 縦 2mm 噴霧幅の代表領域を抽出し, その領域内に存在する液滴の粒径を画像処理により算出した. 表 1 に実験条件を示す. RCEM を用いた燃焼実験本研究の燃焼実験に用いた供試機関は, 直噴ガソリン機関における 1 回の燃焼を模擬することが可能である急速圧縮膨張装置 (RCEM: Rapid Compression Expansion Machine) を用いた. 図 2 に装置の概要図を示す. 本機関の燃焼室形状はパンケーキ型であり, ボア ストロークは 78mm 67mm である. シリンダヘッドには燃焼圧センサ (KISLER:652C) が埋め込まれており, センサで得られた信号をチャージアンプ (KISLER: 518A) により増幅しスコープコーダ (YOKOGAWA:DL85E) に取り込んだ. クランク角度は, 分解能.5deg./pulse のロータリーエンコーダ (OMRON:E6C2-CWZ3E 72P/R 2M) を用いて検出し, スコープコーダにタイムベースとして取り込んだ. 実験前にはシリンダ外壁面および吸気タンクに巻きつけたヒーターと, ヘッドに埋め込まれたヒーターを用いて吸気タンク内の空気温度およびシリンダ壁面の温度が 353K になるまで加熱を行なった. 燃料加熱はヘッドのヒーターによりヘッド全体を加熱することにより行なった. また本実験では, ヘッドに取り付けた, インジェクタホルダに埋め込まれた熱電対より得られた温度を燃料温度と定義した. ピストンヘッドには可視化用の石英ガラスが埋め込まれており, ボトムビュー方式での燃焼の可視化が可能である. ボトムビューでの可視化範囲は, ボア直径 78mm に対して可視化直径 58mm である. また, シリンダヘッドの側面に可視化窓があり, これより点火プラグ周辺の燃焼観察が可能である. 側面の可視化範囲は直径 2mm である. 撮影にはハイスピードカメラ (Vision Research Inc.:Phantom v211) を用い, カメラレンズに紫外域まで可視化可能な UV レンズ (Nikon : UV-15mmF4.5) を用いた. 底面撮影における撮影速度は Quartz glass(φ2mm) Side view Heater Mirror In/Ex Valve bottom view Rotary encoder (72pulse/round) Quartz glass in the piston (Φ58mm/Φ78mm) Intake Air ank EX Vacuum Pump IN Scope coder Fig.2 Experimental set up of Rapid Compression Expansion Machine able 1 Experimental conditions of super high spatial resolution photography est fuel est nozzle iso-octane Multi hole nozzle(6 holes) Ambient gas N 2 Ambient pressure P a [MPa].11(1.15 [kg/m 3 ]) Ambient temperature a [K] 293 Injection pressure Fuel temperature Degree of superheat ΔP inj [MPa] f [K] Δ sat [deg.] Injection quantity Q inj [mm 3 ] Injection duration t inj [ms] 2. 353, 393, 433, 453-19, +21, +61,+81 12.5 1.15 自動車技術会論文集 Vol.49,No.6,November 218. 114
72fps, 画素数は 768 768( 撮影倍率.338 倍, 空間分解能.863mm/pixel) とした. 側面撮影における撮影速度は 72fps, 画素数は 768 768 ( 撮影倍率 1.6 倍, 空間分解能.274mm/pixel) とした. 表 2 に RCEM の諸元および燃焼実験における実験条件を示す. 筒内における初期温度は先述のヒーターを用いて機関を加熱することにより 353K とした. 燃料温度を上げるためにヘッド全体が加熱されているため, 各燃料温度条件において空気の充填効率が異なる. したがって, 各条件において空気過剰率が 1 となるよう噴射量を調整した. 噴射時期および点火時期を固定して燃料温度のみを変化させた. 表 3 に燃料として用いたイソオクタンの物性値を示す. 3. 実験結果および考察 燃料温度が噴霧特性に及ぼす影響ついて図 3 に超高解像度撮影系によって撮影した噴霧画像を示す. なお, 撮影タイミングは t/tinj = 1. とした. 図 3 より, 燃料温度が高い条件ほど噴霧の形状が大きく変化し, 分かれていた 6 本の噴霧が合体して 1 本の噴霧となる傾向にあることが確認できる. ここで, 本実験条件においては, 燃料温度が 393K 以上の条件においては, 減圧沸騰が生じる条件である. 減圧沸騰とは, 燃料がその燃料の飽和蒸気圧以上の状態から飽和蒸気圧以下の雰囲気場に噴射されることにより生じる, 液相から蒸気相への急激な相変化を起こす現象である (6). 実験で使用した燃料であるイソオクタンの大気圧場における沸点は表 3 より 372K であるため, 本実験条件内では, 燃料温度 393K 以上の条件が減圧沸騰領域である. 減圧沸騰は, 飽和蒸気圧と 雰囲気圧力との差である減圧度が大きいほど影響が大きくなり, 蒸気化が活発化される. 本実験においては燃料温度を変化させたため, 燃料温度と飽和温度との差である過熱度が変化し, すなわち減圧度も大きくなる. この影響により, 高燃料温度条件においては, 蒸発潜熱の影響により噴霧間の温度が低下し, 圧力が低下したため 6 本の噴霧が 1 本の噴霧に合体すると考えられる. 図 4 に超高解像度撮影結果を用いて解析した噴霧の粒径分布を示す. 図 4 における噴霧の中心に見られる白い部分は噴霧液滴が過度に集中することによって液滴の判別が困難な領域である. また, 図 5 に図 4 の赤枠で囲まれた代表領域における粒径分布のデータより算出した粒径頻度分布, 算術平均粒径 D1 およびザウタ平均粒径 D32 を示す. 図 4 より, 飽和温度以下の条件である f=353, および過熱度の低い 393K の条件においては,2-3μm の比較的大きな粒径 t/t inj =1. f = 353[K] f = 393[K] f = 433[K] f = 453[K] Fig.3 Super high spatial resolution photography ~1 2~3 2~3 3~ [μm] able 2 Experimental Conditions Combustion Analysis est fuel est nozzle Injection pressure Fuel temperature Injection quantity Injection duration Bore Stroke P inj [MPa] f [K] Q inj [mg] t inj [ms] [mm] iso-octane Multi hole nozzle(6 holes) 2. 353, 393, 433, 453 24.9, 24.2, 23.3, 23. (λ =1.) 2.39, 2.34, 2.3, 2.25 78 67 Displacement volume [cc] 32 Compression ratio [-] 6.68 Engine speed [rpm] 6 Initial ambient pressure P 1 [MPa].11 Initial ambient temperature a [K] 353 Injection timing [CAD ADC] -27 Spark timing [CAD ADC] -15. Valve close timing [CAD ADC] -18 est fuel Density Saturate emperature able 3 Properties of Fuel Critical emperature [K] 544 Critical Pressure Surface ension Kinetic Viscosity ρ a [kg/m 3 ] sat cr [K] σ [N/mm] Lower heating value Q L [kj/kg] iso-octane(ic8) 695 372 P cr [MPa] 2.57 18.8 v f [mm 2 /s].722 47.7 X Droplets Size Distribution [-] Droplets Size Distribution [-].7X 2mm f = 353[K] f = 393[K] f = 433[K] f = 453[K].4.3.2.1.4.3.2.1 Fig.4 Images of droplets size distribution f =353[K] Σn=2346 D 1 =12.5[μm] D 32 =14.5[μm] 1 2 3 4 f =433[K] Σn=9682 D 1 =11.7[μm] D 32 =12.7[μm] 1 2 3 4 Droplets Size Distribution [-] Droplets Size Distribution [-].4.3.2.1.4.3.2.1 f =393[K] Σn=32898 D 1 =12.[μm] D 32 =13.1[μm] 1 2 3 4 f =453[K] Σn=1742 D 1 =11.7[μm] D 32 =12.[μm] 1 2 3 4 Fig.5 Droplets size distribution analyzed from super high spatial resolution photography 自動車技術会論文集 Vol.49,No.6,November 218. 115
が噴霧下流部において多く観測された. また, 粒子が密集し た計測不可能な領域が噴霧の上流域から下流域にかけて存在 する. 一方,f=433, 453K の条件においては, 特に噴霧の下流 部における粗大粒径の数が減少している. また, 燃料温度が 高い条件ほど粗大粒径の数は減少し, 均一な分布となり, 計 測不可能な領域も減少した. ここで, 図 5 の粒径頻度分布に 着目すると, 燃料温度が高い条件ほど小粒径側にピークを持 つ分布となる. また, 平均粒径については燃料温度が高い条 件ほどわずかに平均粒径は小さくなる傾向が見られた. これ は, 減圧沸騰領域においては過熱度が大きくなるほど気泡の 崩壊エネルギが大きくなることにより, 噴霧の微粒化が活発 に行われたためと考えられる. 燃料温度が燃焼特性に及ぼす影響ついて 図 6 および 7 に燃焼実験における火炎の直接撮影画像を示 す. 図 6 は側面窓から撮影した画像を示し, 図 7 は底面から 撮影した画像を示す. 図 6 より燃料温度が 353K および 393K においてピストン冠面において輝炎を伴う燃焼が行われてい る様子が確認できる. これはピストンに衝突した液体燃料が ピストン面で液膜状となり, 蒸発しないまま燃焼が開始され ることによりプール燃焼となり, 激しい輝炎が生じたためで Fuel emperature 353[K] 393[K] 433[K] 453[K] Crank angle [deg. ADC] -15. -7.5. 7.5 15. 22.5 Fig.6 Combustion images taken from the side view あると考えられる. しかしながら, 燃料温度が高い 433K 以上 の条件ではピストン壁面における輝炎は発生していないこと から, 噴霧の蒸気化の促進により, 衝突面積の低下および衝 突後もすでにガス化していたため, 燃料の壁面付着が生じな かったと考えられる. 図 7 より, 燃料温度が高い条件ほど輝 炎と推測される白く光る領域が減少する傾向が見られた. こ れは燃料温度が高いほど減圧沸騰効果により噴霧の蒸気化が 促進され, 均質な混合気が形成されたからであると考えられ る. しかしながら, 燃料温度 453K の条件では逆に輝炎の面 積が 433K の条件よりも増えていることがわかる. これは 3.1 Rate of heat release[j/deg.] 6 4 2-6 Ignition -4-2 2 Crank angle [CAD ADC] f = 353[K] f = 393[K] f = 433[K] f = 453[K] 4 Fig.8 emporal changes in rate of heat release otal heat release [J] 6 5 4 3 2 1-6 Ignition -4-2 2 4 Crank angle [CAD ADC] 6 f = 353[K] f = 393[K] f = 433[K] f = 453[K] Fig.9 emporal changes in total heat release 6 Fuel emperature 353[K] 393[K] 433[K] 453[K] Crank angle [deg. ADC] Field of view Φ58mm -15. -7.5. 7.5 15. 22.5 Fig.7 Combustion images taken from the bottom view Combustion period [ms] 4 3 2 1 3 Main combustion period 1-9% Initial combustion period -1% 35 4 45 5 Fuel temperature [K] Fig.1 Relation between fuel temperature and Combustion period 自動車技術会論文集 Vol.49,No.6,November 218. 116
節で考察した噴霧の干渉に伴い, 局所的に当量比が増加した ためであると考えられる. 図 8 に燃焼実験により得られた各燃料温度における熱発生 率の時間変化をまとめたグラフを, 図 9 に各燃料温度における 累積発熱量の時間変化を示す. 図 8, 9 より燃料温度 353K と比 較すると 393K 以上においては, 熱発生率のピークが進角化し, 等容度の向上とともに燃焼期間が短縮していることがわかる. これは燃料の加熱により, 燃料の蒸気化が促進され空気と速 やかに混合したためであると考えられる. 図 1 に燃焼実験より得られた燃料温度と燃焼期間の関 係をまとめたグラフを示す. 初期燃焼期間は熱発生率の傾き が正に転じてから発熱量が累積熱発生率の 1% に達するまで の時間とした. 主燃焼期間は発熱量が累積発熱量の 1% に達 してから,9% に達するまでの時間とした. 図 1 より累積発 熱量が最大である 393K において主燃焼期間が最も短い傾向 が得られた. また,453K において燃焼期間が最も長期化した. これは燃料の蒸気化に伴い噴霧が希薄化したためであると考 えられる. 本実験においては, 燃料温度によって噴射量が異なるため 図 11 に燃料温度と投入熱量に対する累積発熱量の関係を示 す. 図 11 より燃料温度 393K,433K においては 353K と比 較して投入熱量に対する累積発熱量が高い値を示し, 433K において最大となった. これは前述の通り, 燃料の蒸気化に 伴い空気との混合が促進されためであると考えられる. しか しながら,453K においては効率が低下した. 本実験では多孔 インジェクタを用いており,3.1 節の通り燃料温度が高い条件 では, 多孔インジェクタより噴射された噴霧が干渉し一本化 する傾向が確認されている. そのため, 本実験においても 453K において噴霧間干渉が生じた可能性が高い. したがって, 噴霧間干渉が生じ噴霧体積が減少したため, 周囲との運動量 交換が減少し, 誘引空気量が低下したと考えられる. よって 453K においては誘引空気量が減少により発熱量が低下した と考えられる. otal heat release / Input energy [-].6.5.4.3.2.1 3.497.498.54.489 35 4 45 5 Fuel temperature [K] Fig.11 Relation between fuel temperature and otal heat release / Input energy 結 言 本報では, 燃料加熱による噴霧形状および燃焼特性への影響を把握するため, 超高解像度撮影を用いた粒径計測および RCEM を用いた燃焼解析を行なった. 以下に得られた知見を示す. (1) 過熱度が高い領域においては減圧沸騰が生じ, 噴霧間の圧力が低下するため, 噴霧が一本に合体する傾向が見られる. (2) 過熱度が高い領域においては, 気泡の崩壊エネルギが大きくなることにより, 噴霧の微粒化が活発に行われたため, 均一かつ小粒径な噴霧が形成される. (3) 燃料温度が高い条件においては, 燃料の蒸気化および空気との混合が促進されるため, 燃焼のピーク化が進角化し燃焼速度が速まる. (4) 噴霧間干渉が起こらない燃料温度 433Kにおいて投入熱量に対する累積発熱量が最も高い値を示した. それ以上の条件においては, 噴霧間干渉により誘引空気量が減少したため発熱量が低下したと考えられる. 参 考 文 献 (1) 小池誠 : 直噴ガソリンエンジンにおける混合気形成と燃焼, R&D Review of oyota CRDL, Vol.33, No.4, p.3-14(1998) (2) 中山容子, 白石拓也, 野木利治, 藤枝護 : ガソリン筒内噴射エンジン用燃料噴射システムとその混合気形成方法 : 噴射制御によるエアガイド筒内噴射ガソリンエンジンの燃焼改善, 日本機械学会論文集 B 編,Vol.69,No.686, p.2376-2381(23) (3) Min Xu, David L.S Hung, Jie Yang, Shengqi We:Flash-boiling Spray Behavior and Combustion in a Direct Injection Gasoline Engine, 7 th ERF(216) (4) S. Sasaki, C. D. de Boer, J. Qui, S.Shetty:A Study of Knock-Free Gasoline Engine with Compression Ignition and Diffusive Combustion by Super Critical Fuel Injection (1st Report),Proceedings of 213 JSAE Annual Congress (Spring), No.15-13, p.1-8, JSAE 2135286 (213) (5) 鎌田修次, 勝田圭一, 堀司, 千田二郎, 藤本元 : 高解像度撮影法によるディーゼル噴霧構造の可視化, 微粒化, Vol.17, No.58,p.59-66(28) (6) 千田二郎, 錦織環, 北條義之, 塚本時弘, 藤本元 : 減圧沸騰噴霧の微粒化 蒸発過程のモデリング ( 第 1 報, 噴霧特性の背圧による変化 ), 日本機械学会論文集 (B 編 ),Vol.6,No.578, p.329-333(1994) 自動車技術会論文集 Vol.49,No.6,November 218. 117